特許訂正審判
2020-390021
携帯電話、Rバッジ、受信装置
- 審判番号
- 2020-390021
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2008-145098
- 登録番号
- 特許第4789092号(P4789092)
- 請求日
- 2020年03月06日
- 審決日
- 2020年06月30日
- 公報発行日
- 2020年10月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】株式会社 モビリティ
- 【請求人代理人】黒田 博道
- 審判長/審判官
- 審判長 仲間 晃
- 審判官 ▲はま▼中 信行
- 審判官 山崎 慎一
- 分類
- P141 .851-Y (G06K) / P141 .841-Y (G06K) / P141 .854-Y (G06K) / P141 .855-Y (G06K) / P141 .856-Y (G06K) / 標準データ:手続:訂正 / 標準データ:41・851-Y (G06K) / 標準データ:41・841 / 標準データ:41・854 / 標準データ:41・855 / 標準データ:41・856 / 標準データ:確定ステータス:1 維持(出訴無し)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第29条第2項、特許法第29条の2、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)、特許情報標準データ(審判)
事件の表示
特許第4789092号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第4789092号の明細書,特許請求の範囲を,本件審判請求書に添付した訂正明細書,訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件特許第4789092号は,2002年(平成14年)4月17日(優先権主張 平成13年4月17日(以下,「優先日」という。))を国際出願日とする出願である特願2002-584251号の一部を平成20年5月7日に新たな特許出願とした特願2008-145098号(以下,「本件特許出願」という。)の請求項1~6に係る発明について,平成23年7月29日に特許権の設定登録がされたものであり,その後,平成30年12月6日に請求された訂正審判により,明細書及び特許請求の範囲が訂正され,この訂正は確定している(以下,当該確定した訂正明細書及び特許請求の範囲を「願書に添付した明細書及び特許請求の範囲」という。)。
本件訂正審判は,令和2年3月6日に請求されたものである(以下,本件訂正審判に係る訂正を「本件訂正」という。)。
第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は,「特許第4789092号の明細書、特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6に訂正することを認める、との審決を求める」というものである。
第3 本件訂正の内容
本件訂正の内容は,次のとおりである。(下線部は訂正箇所を示す。)
1 訂正事項1(特許請求の範囲に係る訂正)
本件特許請求の範囲の請求項1に,
「前記トリガ信号に応答して、Rバッジに対して要求信号を送信する送信手段と、」
と記載されているのを,
「前記トリガ信号に応答して、RFIDインターフェースを有するRバッジに対してRバッジを一意に識別できる識別情報を要求する要求信号を送信する送信手段と、」
に訂正する。
また,請求項1の記載を引用する請求項2~6も,同様に訂正する。
2 訂正事項2(明細書に係る訂正)
本件明細書の段落【0011】に,
「前記トリガ信号に応答して、Rバッジに対して要求信号を送信する送信手段と、」
と記載されているのを,
「前記トリガ信号に応答して、RFIDインターフェースを有するRバッジに対してRバッジを一意に識別できる識別情報を要求する要求信号を送信する送信手段と、」
に訂正する。
第4 当審の判断
1 訂正事項1について
(1)特許請求の範囲の減縮を目的とするものであること
訂正事項1は,訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「Rバッジに対して要求信号を送信する送信手段と、」と記載されているのに対し,ア)「Rバッジ」を「RFIDインターフェースを有する」ものに限定するとともに,イ)「識別情報」を「Rバッジを一意に識別できる」ものに限定し,ウ)さらに,Rバッジに対して送信する「要求信号」を上記「識別情報を要求する」ものに限定するものである。
また,訂正事項1は,訂正前の請求項1を引用する訂正前の特許請求の範囲の請求項2~6に対し,訂正後の請求項2~6が,上記限定がなされた訂正後の請求項1を引用することを通じて,上記と同様の限定をなすものである。
したがって,訂正事項1による訂正は,特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
ア 「RFIDインターフェースを有するRバッジ」
願書に添付した特許請求の範囲の請求項6には,「請求項1乃至4のいずれか1つに記載の携帯電話との間で送受信するためのRFIDインターフェースを有し、前記携帯電話からの要求に応じて前記識別情報を送信する手段を有することを特徴とするRバッジ。」(下線は,説明のために当審で付与した。以下,同様。)と記載されているように,「Rバッジ」が「RFIDインターフェースを有する」ことが明記されている。
また,願書に添付した明細書には,「第1のICアセンブリ130および第2のICアセンブリ140は、無線を利用して互いにデータの送受信が可能なように構成されている。この場合、本願明細書において使用する「無線通信」という用語は、金属端子による電気的な接触を使用せずに行う通信全般を意味し、一例として、非接触自動識別システム(RFID:Radio Frequency Identifycation)で用いられている電磁結合方式、電磁誘導方式、マイクロ波方式、光方式の無線通信があげられる。」(【0025】)との記載,「CPU131は、第1のICアセンブリ130の各構成要素を制御し、CPU141は第2のICアセンブリ140の各構成要素を制御する。無線通信インタフェース部132および142は、それぞれが送信機能と受信機能の両方を有する。この無線通信インタフェース部132および142は、たとえばRFID技術において用いられているようなアンテナやコイルなどを有し、互いにデータの送受信を行うものである。」(【0026】)との記載,「次に、図3を参照すると、第1のICアセンブリを多目的携帯端末300の形で実現し、第2のICアセンブリをRバッジ400の形で実現した例が示されている。多目的携帯端末300はスイッチ301を備え、端末の所有者がスイッチ301を押すことでトリガ信号が生成される。」(【0034】)との記載があり,これらの記載から,第1のICアセンブリおよびRバッジの形で実現した第2のICアセンブリがRFIDで用いられる方式でデータの送受信を行うことが記載されていると認められるところ,このことから,「Rバッジ」が「RFIDインターフェースを有する」ことを読み取ることができる。
したがって,訂正事項1における,「RFIDインターフェースを有するRバッジ」に関する訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「願書に添付した明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものである。
イ 「Rバッジを一意に識別できる識別情報」
(ア)願書に添付した明細書等の「また、図19に示すように、レッドバッジ70に内蔵されたICチップ51には、識別情報をメモリ30の識別情報記憶部35に格納する。識別情報記憶部35はROMなど書換不可能な記録素子で構成されることが望ましい。また、識別情報350は一意に識別できるように割り振ったものである。識別情報350はレッドバッジ70の製造時に、一意となるように書き込むようにしても良い。」(【0107】)との記載から,「識別情報」は,「一意に識別できる」ものであることが認められるが,何を「一意に識別できる」のかについての特定はなされていない。
そこで検討するに,まず,後記(イ)で検討するように,以下の2点は,本件特許出願の優先日における技術常識であった。
a RFタグは,識別情報を記憶するICチップとアンテナからなるものであること(以下,「技術常識a」という。)。
b RFタグは,物品に取り付け又は組み込まれるものであって,当該物品を一意に識別できる情報を記憶しておくことが,RFタグの典型的な使用形態であること(以下,「技術常識b」という。)。
そして,願書に添付した明細書等の「第3の実施の形態における使用者識別システム12は、図15に示すように、携帯端末10と識別情報を記憶する携帯記録素子とで概略構成される。以下、携帯記録素子としてICチップ51とアンテナ22を組み込んだレッドバッジ70を例に説明する。」(【0102】)との記載,及び,「レッドバッジ70に内蔵されたICチップ51には、識別情報をメモリ30の識別情報記憶部35に格納する。・・・また、識別情報350は一意に識別できるように割り振ったものである。識別情報350はレッドバッジ70の製造時に、一意となるように書き込むようにしても良い。」(【0107】)との記載からすると,上記携帯記録素子は,識別情報を記憶するICチップ51とアンテナ22からなるものであり,上記技術常識aに鑑みれば,RFタグに相当するものであると認められる。
また,上記願書に添付した明細書等の記載によれば,識別情報を記憶する携帯記録素子は,レッドバッジ70に組み込まれるものである。
以上から,レッドバッジに組み込まれているのは,識別情報を記憶するRFタグであるといえるから,上記【0107】の記載における「一意に識別できる」「識別情報」は,上記技術常識bに鑑みれば,RFタグが組み込まれた物品である「レッドバッジ」を「一意に識別できる」情報であることが,当該明細書等の記載に接した当業者には理解されるものである。
したがって,訂正事項1における,「Rバッジを一意に識別できる識別情報」に関する訂正は,願書に添付した明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるから,願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(イ)本件特許出願の優先日における技術常識
A 本件特許出願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2000-357847号公報には,次の記載がある。
「【0013】図2は、非接触IDタグの構造の一例を示しており、円盤状の樹脂ホルダ11の中央部には円形の凹部が設けられ、凹部内の底部には電子素子を内蔵したICチップ12及びアンテナコイル13が配設され、その上部は平面となるように樹脂モールド14でカバーされている。ウエハーの厚さが通常300~500μm程度であるのに対して、非接触IDタグ10の厚さは100~120μm程度であり、前述のように、例えば導体パターン間を貫通するスルーホールが開設されているプリント基板の層間接続の工程において、プリント基板の内層部に埋設される。尚、ここではICチップ12が矩形であり、ICチップ12の外周に円形のアンテナコイル13が配設されているが、ICチップ12、アンテナコイル13の形状や配置は適宜変更可能である。また、ICチップとアンテナとを一体的に形成した構成とせずに、図3(A)に示すように、ICチップ12を単体の構成とし、図3(B)に示すように、例えば導電性インクを所要の形状に印刷することによりアンテナ13を当該プリント基板1側に添付しておき、プリント基板の層間接続の工程において、ICチップ12とアンテナ13とを接続すると共に、接着層1a等に埋設する形態、あるいは当該プリント基板1に形成された凹部に嵌設する形態としても良い。
【0014】図4は、非接触IDタグのID情報用メモリの構成を模式図で示しており、本発明の特徴的事項の一つであるID情報用メモリ12Aは、少なくとも当該基板を特定するIDコードが記憶されるROM構成の固定ID部12aと、外部からの指令により当該IDコードを可変可能なRAM組成から成る可変ID部12bとから構成されている。可変ID部12bは複数のメモリセル(例えば24ビット固定長の不揮発性メモリを1メモリセルとして配置した構成)から成っており、各メモリセルは、同図に示すように一列に配置されたメモリセルアレイ12b(m1)~12b(mn)、若しくはマトリクス状に配置されたメモリセルアレイ構造となっている。
【0015】図5は、ID情報用メモリ12Aに記憶されるID情報の一例を示しており、読込み専用の固定ID部12aには、例えば製造段階で少なくともプリント基板を特定するIDコード(プレート番号)が記憶される。可変ID部12bの各メモリセルには、製造段階,流通段階,販売段階において、外部からの指令により少なくとも当該プリント基板を扱う業種を特定する業種毎のIDコード、例えば、どの工場から出荷されて、どの流通経路を経てどの販売店で販売されたと言った経緯(製造/流通/販売の業者,年月等)や、プリント基板に実装された半導体チップ等の電子部品の種類や製造元などを識別するIDコードが記録される。」
「【0018】上述した実施の形態においては、非接触IDタグをプリント基板間の接着層に埋め込む場合を例として説明したが、非接触IDタグの埋設形態はこれに限るものではなく、プリント基板に形成された窪みや穴に埋設する形態のものも本発明に含まれる。」
B 本件特許出願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特表2001-501328号公報には,次の記載がある。
「 図2は、本発明の使用に適する保安タグ22のサンプルの全般的な詳細を示す。保安タグ22は、当該技術において良く知られているように、保安タグ22が質問機によってモニタされているゾーン内部にある時検出に使用される、受動共振無線周波数(以下RFと略す)回路24を有する。回路24の良く知られた一つのタイプは、コイルアンテナ82、およびコンデンサ84を持つ。保安タグ22への電力は従来の方法でアンテナから得られる。
保安タグ22は、更に保安タグ22に「インテリジェンス」を与える集積回路(IC)26を有する。IC26は回路24に接続されている。IC26は識別データのビットの記憶用に64ビットメモリのようなプログラマブル・メモリ27を有する。IC26はそこに十分な電力が供給される時、64ビットのデータより成るデータ・ストリームを出力する。本発明の一つの実施例において、データ・ストリームは、パルス発生の間、コイルアンテナ82の両端に接続された特別のコンデンサを切り替えることにより一連のデータパルスを作り出す。これはRF回路の共振周波数を変更し、それを動作周波数から離調させる。」(第12頁第7~20行)
「 図1を参照して、小売店舗配送センター14は、空白(ブランク)の(つまりプログラムされていない)保安タグ22を受け取り、適当なプログラミングにより各タグ22に唯一つのシリアル番号、あるいは他のデータを割り当て、タグ22を物品12に取り付け、そして各保安タグ22の番号、あるいはデータをそれぞれの製品に相関させるデータベースを作り出す。もし物品12が、既にタグを付けられ、予め割り当てられたシリアル番号、あるいはデータを付けて配送センター14に到着した場合、プログラミングのステップは排除され、この場合、各物品12に取り付けられたタグ22は質問機で読まれ、相関データベースが作られる。」(第13頁第5~13行)
「 図3は、上述のプロセスによって作られた一連のデータベース記録のサンプルを示す。各記録は保安タグ識別情報(例えば、保安タグ22のシリアル番号)の欄、および製品識別情報の欄を有する。保安タグ識別情報はまた、「物品識別情報」としても参照される。すなわち、シリアル番号は唯一、あるいは準唯一であるので、それは特別な物品を識別するために用いられる。あるいは、先に記述したように、保安タグ22は、唯一ののシリアル番号とは対照的に、製品識別情報の何等かの他の形式を含むことも出来る。」(第14頁第6~12行)
「 (17)保安タグ22は製造時点で物品12に取り付けられてよく、メモリー27はシリアル番号データに追加して製品を識別するデータと共に符号化されてよい。」(第24頁第6~8行)
C 本件特許出願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第99/53457号には,次の記載がある。
「 In accordance with an inventive arrangement, each network asset, for example a work station, is provided with an RFID transponder tag and an electronically erasable and programmable memory (EEPROM) either during, after or as an adjunct to manufacture. Such transponder tags can also be retrofitted to existing network assets which are already in the market place. Computer network assets, such as work stations, file servers, printers, scanners and the like are usually provided with EEPROM's or the like for other purposes, such as for storing an operating system program. The EEPROM used in accordance with the inventive arrangements can be a part of an EEPROM with which a network asset is already manufactured or can be a separate device. The inventive arrangements are not limited to particular kinds of EEPROM devices, the description and acronym being used in a general sense.
An RFID reader/writer, for example a portable device, can be used to program the tag by writing different sets of data thereto. A first set of data can uniquely identify the transponder tag and include, for example, manufacturing site code data and serial number data. This data can be written by the manufacturer of the transponder tag, and can be permanently stored. A second set of data can describe the asset and components within the asset including, for example, model number data, serial number data, and date of manufacture data. Computer network assets can include, for example, processors, work stations, monitors, printers, scanners and network servers. Components can include, for example, hard drives, floppy drives, CD ROM drives, modems, sound boards, memory modules, pre-loaded software and all other equipment or programs which can be sold with or added to a network asset. A third set of data can describe security data including, for example, removal authorization data and predetermined communications sequence completion data. The security data can be used to prevent operation of the asset unless properly connected to the network and can be used to monitor movement of the asset through an interrogation zone of an RFID reader/writer, permitting removal of the asset if authorized and initiating an alarm indicator if removal is unauthorized.
Overall, any asset which can bidirectionally transfer data over a network and any asset or component which can be uniquely identified, usually by a manufacturer's serial number, can be integrated with an RFID tagging system and be a secured asset.」(第1頁第21行~第2頁第28行)
(当審訳: 本願発明の構成によると、各ネットワークアセット、例えばワークステーションは、製造中、製造後、又は製造に付随して、RFIDトランスポンダータグ及び電子的に消去及びプログラム可能なメモリ(EEPROM)を備える。その様なトランスポンダータグは既に市場に出ている既存のネットワークアセットに新たに組み込むこともできる。ワークステーション、ファイルサーバー、プリンター、スキャナー等のようなコンピューターネットワークアセットは、通常EEPROM等をオペレーティングシステムプログラムの格納のような他の目的のために備える。本願発明に従って用いられるEEPROMは、ネットワークアセットがすでに製造されたときに備えるEEPROMの一部又は別の分離した装置とすることができる。本願発明の構成は、特別の種類のEEPROMデバイスに限定されるものではなく、表記及び略語は一般的な意味で用いる。
RFID読取り/書込み装置、例えばポータブル装置を用いて、タグに異なるデータセットを書き込むことによってそのタグをプログラムすることができる。第1のデーターセットはトランスポンダータグを独自に識別することができ、例えば製造場所コード及びシリアル番号データを含むことができる。このデータはトランスポンダータグの製造者によって書き込むことができ、また、永久的に保存することができる。第2のデータセットは、アセット及びそのアセット内のコンポーネント(構成要素)、例えば、型番号データ、シリアル番号データ及び製造データの日付を記述することができる。コンピュータネットワークアセットには例えばプロセッサー、ワークステーション、モニター、プリンター、スキャナー及びネットワークサーバーを含めることができる。コンポーネントには、例えばハードドライブ、フロッピードライブ、CD ROMドライブ、モデム、サウンドボード、メモリーモジュール、予めロードされたソフトウェア及びネットワークアセットとともに又はそれに追加されて販売することができるほかの機器もしくはプログラムを含めることができる。第3のデータセットは、例えば、移動認可データ及び既定の通信シーケンス完了データを含むセキュリティーデータを記述することができる。セキュリティーデータは、ネットワークに適切に接続されない場合にアセットの作動を防止するために用いることができ、また、RFID読取り/書込み装置の呼びかけ領域の中でのアセットの動きを監視するために用いることができ、それにより、認可されている場合にアセットを移動することができ、さらに移動が認可されていない場合に警報表示器を始動させることができる。
結局、ネットワーク上を双方向にデータを移動することができる全てのアセットと、通常製造者のシリアルナンバーによって固有のものとして識別できるすべてのアセット及びコンポーネントとは、RFIDタグ付け装置に統合することができ、保証されたアセットとなる。)
D 本件特許出願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第00/50849号には,次の記載がある。
「5. DEVICE IDENTIFIERS
As indicated in the discussion of Figure 1, event-recording devices of this invention preferably include an identifier tag (reference number 112). Generally, a wireless probe of the sensor device should return a value or other source indicator provided by the ID tag. That value preferably uniquely identifies the particular device providing the report. This allows it to be distinguished from a number or other devices as would be encountered in an array of devices on a system. Preferably, the identifier tags are small devices that contain an identification (ID) code that can be read remotely using the interrogator. In the case of an array of sensors - each associated with a separate item in a system under test - the idea is to sense and store one or more events of interest, such as whether the temperature under a tile exceeded a threshold value during re-entry, and then read it out along with the device's identification code during a subsequent analysis (e.g., a post-flight inspection). The ID code provides a means of automatically logging the data entry corresponding to the status of each ID tag and corresponding item (e.g.,a RLV tile).
Various types of identifier tags are known in the art and may be used with this invention. Examples of ID tags include microchips storing the ID code (e.g., an EPROM), magnetic recording devices, surface acoustic wave devices, electrical circuits providing a plurality of resonant circuits, optical bar codes, and the like. In some cases, the ID tags do not include a unique number but includes other information which may distinguish a device from other similar devices. By way of example, the device's known location may be used to distinguish it from other devices.」(第16頁第18行~第17頁8行)
(当審訳:5.装置識別子:
図1の説明において示したように、本発明のイベント記録装置は、好ましくは、識別子タグ(参照番号112)を含む。一般に、センサ装置の無線プローブは、IDタグが提供する値又はその他のソースインジケータを返すべきである。こうした値は、好ましくは、報告を提供する特定の装置を一意に識別する。これにより、返された値が、システム上の装置群の各値と共に検出された場合にも、その装置を多数の装置から区別できる。好ましくは、識別子タグは、質問器を使用して離れた場所から読み取ることが可能な識別(ID)コードを格納する小型装置である。一群のセンサ-それぞれのセンサがテストしているシステムの別個の項目に関連する場合-においては、この概念では、再突入時にタイルの下の温度が閾値を超えたかどうか等、対象となる1つ以上のイベントが感知及び保存される。そして次に、その後の分析中に(例えば飛行後検査中)、装置の識別コードと共に読み出される。このIDコードは、それぞれのIDタグの状態及び対応する項目(RLVタイル等)のステータスに対応するデータエントリを自動的に記録する手段を提供する。
この技術においては様々なタイプの識別タグが知られており、本発明で使用することができる。IDタグの例には、IDコードを格納するマイクロチップ(EPROM等)と、磁気記録装置と、表面音波装置と、複数の共振回路を提供する電気回路と、光学バーコードと、その他とが含まれる。場合によりは、IDタグは固有の番号を含まず、装置を他の類似する装置から区別可能なその他の情報を含む。例えば、装置の既知の位置を、他の装置からの区別に使用できる。)
「 Figure 2B illustrates a circuit diagram configuration of a commercial low-frequency "rice-grain" RFID tag including a microchip 222 and an antenna 224.」(第18頁第1~2行)
(当審訳: 図2Bは、マイクロチップ222及びアンテナ224を含む市販の低周波「米粒大」RFIDタグの回路図の構成を表している。)
E 上記A~Dの記載から,RFタグは,識別情報を記憶するICチップとアンテナからなるものであること,及び,RFタグは,物品に取り付け又は組み込まれるものであって,当該物品を一意に識別できる情報を記憶しておくことが,RFタグの典型的な使用形態であることは,いずれも,本件特許出願の優先日における技術常識であったことが認められる。
ウ Rバッジに対して「識別情報を要求する要求信号」
願書に添付した明細書等の「まず、携帯端末10を使用する者がキー入力などの携帯端末10を使用するための初動作を行った時点で、制御部40のCPUには割り込みが発生する(S150)。割り込みが発生すると、読み取り開始のコマンドを制御部40から通信制御用IC21に送られる。通信制御用IC21は、読み取り開始のコマンドを受け取るとアンテナ22から発信要求を発信して読み取りを開始する。」(【0117】)との記載,「ここで、制御部40はタイマーに所定の時間t1を設定し(S151)、レッドバッジ70から発信した識別情報350を受信したかチェックする(S152)。時間t1が経過するまで識別情報350の受信したかを繰り返しチェックする(S153)。時間t1が経過しても、レッドバッジ70から識別情報350の受信が完了しない場合は、デフォルトモード1を設定する(S162)。」(【0118】)との記載から,「携帯端末10」は,「発信要求」を発信すると,続けて,「レッドバッジ70」から発信された「識別情報350」を受信しているものと認められるところ,このことから,携帯端末が発信する「発信要求(要求信号)」は,レッドバッジ(Rバッジ)に対して「識別情報を要求する」ものであることを読み取ることができる。
したがって,訂正事項1における,Rバッジに対して「識別情報を要求する要求信号」に関する訂正は,明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
エ 小括
以上のとおりであるから,訂正事項1による訂正は,明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり,特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないこと
訂正事項1は,上記(1)で検討したとおり,訂正前の特許請求の範囲の請求項の記載を限定するものであり,また,発明のカテゴリーを変更するものでもない。
よって,訂正事項1による訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもなく,特許法第126条第6項の規定に適合する。
(4)訂正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであること
上記(1)で検討したとおり,訂正事項1に係る訂正は,特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
ここで,本件特許については,知的財産高等裁判所に,特許権侵害に基づく損害賠償請求事件(令和2年(ネ)第10003号)(以下,「本件侵害訴訟」という。)が係属しており,その原審(東京地方裁判所 平成30年(ワ)第39914号)では,本件訂正前の発明は,進歩性欠如(特許法第29条第2項)及び拡大先願違反(同法第29条の2)があるとして,本件特許は特許無効審判において無効とされるべきであるとの判決がなされている。
そして,請求人は,本件訂正後の発明は,同法第29条第2項及び第29条の2の規定に違反していない旨主張している。
そこで,本件訂正後の発明が同法第29条第2項(進歩性)及び同法第29の2(拡大先願)の規定に違反するものであるか否かについて検討する。
ア 本件訂正後の発明
本件訂正後の請求項1~6に係る発明(以下,それぞれ「訂正発明1」~「訂正発明6」という。)は,訂正後の特許請求の範囲の請求項1~6に記載された以下のとおりのものと認められる
「【請求項1】
RFIDインターフェースを有する携帯電話であって、当該携帯電話のスイッチを押すことで生成されるトリガ信号又はリーダライタから送信されるトリガ信号を、当該携帯電話の所有者が第三者による閲覧や使用を制限し、保護することを希望する被保護情報に対するアクセス要求として受け付ける受付手段と、前記トリガ信号に応答して、RFIDインターフェースを有するRバッジに対してRバッジを一意に識別できる識別情報を要求する要求信号を送信する送信手段と、前記Rバッジより識別情報を受け取って、該受け取った識別情報と当該携帯電話に予め記録してある識別情報との比較を行う比較手段と、前記比較手段による比較結果に応じて前記受付手段で受け付けた前記アクセス要求を許可または禁止するアクセス制御手段とを備え、前記アクセス制御手段は、当該比較手段で前記アクセス要求を許可するという比較結果が得られた場合は、前記アクセス要求が許可されてから所定時間が経過するまでは前記被保護情報へのアクセスを許可することを特徴とする携帯電話。
【請求項2】
前記被保護情報は、プリペイドカード、キャッシュカード、デビッドカード、クレジットカード、定期券、乗車券、電子マネー、鍵、会員権、診察券、健康保険証、身分証明書、アミューズメント施設のチケット、公共施設のチケット、社員証、学生証、通行証、各種証明書発行用カード、図書館の貸出カード、入退室管理カードのうち少なくとも1つに記録されたデータであることを特徴とする請求項1記載の携帯電話。
【請求項3】
請求項1記載の携帯電話であって、アプリケーションプログラムやデバイスドライバをインターネットを経由してダウンロードして新たな機能を追加および/または更新する手段を有することを特徴とする携帯電話。
【請求項4】
前記新たな機能はプリペイドカード、キャッシュカード、デビッドカード、クレジットカード、定期券、乗車券、電子マネー、アミューズメント施設のチケット、公共施設のチケットのうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項3記載の携帯電話。
【請求項5】
請求項4記載の携帯電話との間で送受信するためのRFIDインターフェースを有し、個別情報の発信要求を前記携帯電話に発信する発信手段と、前記携帯電話から受信した個別情報が要求した個別情報であるか否かを判断する判断手段とを有し、前記判断手段で受信した判断情報が、前記要求した個別情報であると判断されたときに、前記携帯電話との間で処理を行うことを特徴とする受信装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の携帯電話との間で送受信するためのRFIDインターフェースを有し、前記携帯電話からの要求に応じて前記識別情報を送信する手段を有することを特徴とするRバッジ。」
イ 特許法第29条第2項(進歩性)
(ア)引用文献
A 引用文献1(甲第2号証)
a 本件特許出願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献であり,甲第2号証として提出された特開平11-55246号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに以下の記載がある。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のような従来の方法では、例えば第三者に携携帯電話あるいはパーソナルコンピュータを盗難されると、設定されたパスワードは試行錯誤を繰り返すことにより破られる場合があり、第三者の使用、内部データの盗用あるいは破壊を防止することは困難であった。
【0004】本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、盗難防止、または内部データの保護を可能にした電子機器およびその制御方法を提供するものである。」
「【0009】図1および図3は本発明の第1の実施の形態である携帯電話用電子機器およびその動作を示す。図1に示すように携帯電話用電子機器は、第1のマイクロプロセッサーユニット(MPU)および第1の強誘電体メモリ(FRAM)を有する第1のデータ読み取り装置2と、第1のアンテナおよび第1のフロントエンドICを有する第1の電波信号送受信装置3と、水晶発振器を有する計時装置4と、キー5とを備えた携帯電話1と、第2のMPUおよび第2のFRAMを有する第2のデータ読み取り装置7と、第2のアンテナおよび第2のフロントエンドICを有する第2の電波信号送受信装置8とを備えたIDカード6とから構成されている。第1の電波信号送受信装置3と計時装置4とキー5との間は導線により接続されている。また、第2のデータ読み取り装置7と、第2の電波信号送受信装置8との間は導線により接続されている。携帯電話1とIDカード6との間のデータの授受は、電波信号Aおよび電波信号Bを介して行われる。」
「【0010】図3は、図1に示す携帯電話用電子機器の動作を表す流れ図である。データ9は、IDカードに記憶されているデータ、データ10およびデータ11は第1のデータ読み取り装置2内に記憶されているデータであり、データ10はパスワードの値に等しいデータである。表1はデータ9、データ10およびデータ11の時間変化を表す表である。データ9とデータ11との和がデータ10に等しい場合にのみ携帯電話1が使用可能である。」
「【0012】携帯電話1の電源を投入した時あるいは通話のためにキー5を押したときに携帯電話1より第1の電波信号送受信装置3を介して電波信号Aを送信する。IDカード6は電波信号Aを受信するとIDカード6にあらかじめ記憶されたデータ9を、電波信号Bを介して自動的に送信する。例として、ここではデータ9の値を4桁の数字3000とする。データ読み取り装置2はデータ9を受信する。一方、携帯電話1はIDカード6への電波信号Aを送信すると同時に使用者に対しパスワードの入力を要求する。パスワードは携帯電話のキー5を用いて入力する。例として、ここではパスワードの値を4桁の数字5432とする。このパスワードは携帯電話1の持主しか知らない。入力されたパスワードはデータ10として第1のデータ読み取り装置2内に記憶される。また、第1のデータ読み取り装置2内にはあらかじめデータ11が記憶されている。例として、ここではデータ11の値を4桁の数字2432とする。ここで、IDカード6より受信したデータ9と、パスワードとして入力されたデータ10と、第1のデータ読み取り装置2内にあらかじめ記憶されたデータ11とを比較し、データ9とデータ11との和がデータ10になる場合にのみ携帯電話1が使用可能である。すなわち、表1に示すように3000+2432=5432となったときにのみ、携帯電話1が使用可能になる。」
「【0013】携帯電話1の電源が投入されている状態のとき、計時装置4は電源が投入されてからの時間を計時する。計時装置4の計時時間をもとに、表1に示すように一定時間、例えば10分ごとに第1のデータ読み取り装置2内にてデータ11を書き換え、同時にIDカード6に電波信号Aを送信し、IDカード6内のデータ9を書き換える。例として、書き換えられる前のデータ9およびデータ11の値をそれぞれ2000、3432、書き換えられた後のデータ9およびデータ11の値をそれぞれ1500、3932とする。そして一定時間、例えば10分ごとにIDカード6に対しデータ9の送信を要求する。携帯電話1とIDカード6との間でデータのやりとりが行われ、データ9とデータ11の和がデータ10になるときは常に携帯電話1を使用可能にする。すなわち、上記の例では2000+3432=1500+3932=5432となる場合にのみ携帯電話1が使用可能になる。携帯電話1とIDカード6の距離が離れていると、IDカード6からデータ9が送信されることはない。ここでデータ9の送信がなければ自動的に電源が切れ、携帯電話1の使用を不可能にする。再び携帯電話1を使用したい場合には、IDカード6を携帯電話1に近づけた後電源をオンし、パスワードを入力することから始めなければならない。従って、IDカード6と携帯電話1との間でデータの授受がある限りパスワードの再入力をする必要はなくなる。」
b 上記aの記載を踏まえると,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「 盗難防止,または内部データの保護を可能にした携帯電話用電子機器における携帯電話1であって,
当該携帯電話用電子機器は,
第1のデータ読み取り装置2と,第1のアンテナおよび第1のフロントエンドICを有する第1の電波信号送受信装置3と,計時装置4と,キー5とを備えた携帯電話1と,
第2のデータ読み取り装置7と,第2のアンテナおよび第2のフロントエンドICを有する第2の電波信号送受信装置8とを備えたIDカード6と
から構成されており,
携帯電話1とIDカード6との間のデータの授受は,電波信号Aおよび電波信号Bを介して行われ,
データ9は,IDカードに記憶されているデータであり,データ10およびデータ11は第1のデータ読み取り装置2内に記憶されているデータであり,
携帯電話1は,携帯電話1の電源を投入した時あるいは通話のためにキー5を押したときに,第1の電波信号送受信装置3を介して電波信号Aを送信し,
IDカード6は,電波信号Aを受信するとIDカード6にあらかじめ記憶されたデータ9を,電波信号Bを介して自動的に送信し,
携帯電話1が備えるデータ読み取り装置2はデータ9を受信し,
一方,携帯電話1は,IDカード6への電波信号Aを送信すると同時に使用者に対しパスワードの入力を要求し,
携帯電話1は,IDカード6より受信したデータ9と,パスワードとして入力されたデータ10と,第1のデータ読み取り装置2内にあらかじめ記憶されたデータ11とを比較し,データ9とデータ11との和がデータ10になる場合にのみ使用可能になるものであって,
計時装置4は電源が投入されてからの時間を計時し,
計時装置4の計時時間をもとに,一定時間ごとに第1のデータ読み取り装置2内にてデータ11を書き換え,同時にIDカード6に電波信号Aを送信し,IDカード6内のデータ9を書き換え,一定時間ごとにIDカード6に対しデータ9の送信を要求し,データ9とデータ11の和がデータ10になるときは常に携帯電話1を使用可能にし,
携帯電話1とIDカード6の距離が離れていると,IDカード6からデータ9が送信されることはなく,データ9の送信がなければ自動的に電源が切れ,携帯電話1の使用を不可能にし,再び携帯電話1を使用したい場合には,IDカード6を携帯電話1に近づけた後電源をオンし,パスワードを入力することから始めなければならないものであり,
従って,IDカード6と携帯電話1との間でデータの授受がある限りパスワードの再入力をする必要はなくなるものである,
携帯電話1。」
B 引用文献2(甲第3号証)
a 本件特許出願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献であり,甲第3号証として提出された特開平10-13942号公報(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに以下の記載がある。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)
「【0006】
【課題を解決するための手段】上述の課題を解決するために、本発明の携帯情報機器は、予め正当な操作者の識別コードを記憶した識別コードメモリと、この識別コードメモリに記憶された識別コードを送出するデータ制御部とを有する識別ユニットと、電源のオン/オフを行なうスイッチと、このスイッチの操作者を確認するキーコードを記憶するキーコードメモリと、このキーコードメモリに記憶されたキーコードに基づき、上記スイッチによる電源オンによって識別コマンドを送出し、このキーコードと上記識別コードとを比較するデータ処理部と、このデータ処理部に上記キーコード及び識別コマンドを入力するキー入力部と、上記データ処理部から送出された識別コマンドを上記識別ユニットへ送出して上記識別コードを受信し、かつ上記データ処理部に送出する送受信部とを備えた情報ユニットとで構成されたことを特徴とする。」
「【0012】本発明の一実施の形態による携帯情報機器の動作は、図1に示すように、携帯電話発信時を例にすると、まず、キー入力部16からキーコード"3935530"を入力してキーコードメモリ12にデータ処理部13が記憶し、かつ送受信部17を介して識別ユニット2のデータ制御部21に送出され、キーコード"3935530"が識別コードとして識別コードメモリ22に記憶される。
【0013】その後、図2の(A)に示すように、正当な操作者が発信操作をする場合、送受信部17を介してデータ処理部13から識別コマンドが送出され(ステップS1)、この識別コマンドをデータ制御部21が受信(ステップS2)して識別コードメモリ22の識別コード"3935530"を送受信部17へ送出し、この識別コード"3935530"とキーコードメモリ12のキーコード"3935530"とをデータ処理部13が比較(ステップS3)して一致すれば発信処理を続行(ステップS4)させ、電話番号を発信することができる。
【0014】一方、図2の(A)に示すように、第三者が発信操作をする場合、送受信部17を介してデータ処理部13から識別コマンドが送出され(ステップS1)、この識別コマンドをデータ制御部21が受信(ステップS2)する識別ユニット2を第三者が所持していないため、識別コード"3935530"とキーコード"3935530"とを比較(ステップS3)できずに発信無視され、あるいは第三者が所持する識別コードが"9564222"の時は、キーコード"3935530"と不一致となり、発信無視(ステップS5)となって電話番号を発信できない。」
b 上記aの記載を踏まえると,引用文献2には,以下の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「 識別ユニットと情報ユニットとで構成される携帯情報機器において,
まず、情報ユニットにおいて、キー入力部16からキーコードを入力してキーコードメモリ12に記憶し、かつ送受信部17を介して識別ユニットに送出し、識別ユニットにおいて、キーコードが識別コードとして識別コードメモリ22に記憶され、
識別コードは,正当な操作者の識別コードであり,
その後、正当な操作者が発信操作をする場合、情報ユニットにおいて、送受信部17を介してデータ処理部13から識別コマンドが送出され、この識別コマンドを識別ユニットのデータ制御部21が受信して識別コードメモリ22の識別コードを情報ユニットの送受信部17へ送出し、この識別コードとキーコードメモリ12のキーコードとをデータ処理部13が比較して、一致すれば発信処理を続行させ、電話番号を発信することができ、
一方、第三者が発信操作をする場合、情報ユニットにおいて、送受信部17を介してデータ処理部13から識別コマンドが送出されるものの、識別コマンドを受信する識別ユニットを第三者が所持していないため、識別コードとキーコードとを比較できずに発信無視され、あるいは、第三者が所持する識別コードが、キーコードと不一致となり、発信無視となって電話番号を発信できない
携帯情報機器。」
(イ)訂正発明1について
A 対比
訂正発明1と引用発明1とを対比する。
a 引用発明1の「携帯電話1」は,訂正発明1の「携帯電話」に相当する。
b 引用発明1は,「第三者に携携帯電話あるいはパーソナルコンピュータを盗難されると,設定されたパスワードは試行錯誤を繰り返すことにより破られる場合があり,第三者の使用,内部データの盗用あるいは破壊を防止することは困難であった」との課題を解決するために(引用文献1の【0003】~【0004】),「内部データの保護を可能にした」ものであるから,引用発明1の当該「内部データ」は,訂正発明1の「携帯電話の所有者が第三者による閲覧や使用を制限し、保護することを希望する被保護情報」に相当する。
また,引用発明1において「携帯電話1の電源を投入」することは,携帯電話1の上記内部データへアクセスを行うために行うものであるから,訂正発明1の「当該携帯電話の所有者が第三者による閲覧や使用を制限し、保護することを希望する被保護情報に対するアクセス要求」を行うことに相当する。
そして,引用文献1には明記されていないが,携帯電話は,電源投入用のキー又はスイッチの操作により電源の投入がなされるのが通常であるところ,当該電源投入用のキー又はスイッチの操作を検知する手段を当然に備えていると認められ,さらに,当該検知は,技術常識に鑑みれば,上記電源投入用のキー又はスイッチの操作に応じて生成された信号を受信することで行われているものと認められるから,当該「信号」は,訂正発明1の「当該携帯電話のスイッチを押すことで生成されるトリガ信号」に相当する。
してみると,引用発明1が当然に備えると認められる上記「検知する手段」は,携帯電話1の電源投入用のキー又はスイッチの操作に応じて生成された信号を,内部データに対するアクセス要求として受け付けるものであるといえるから,訂正発明1の「当該携帯電話のスイッチを押すことで生成されるトリガ信号を、当該携帯電話の所有者が第三者による閲覧や使用を制限し、保護することを希望する被保護情報に対するアクセス要求として受け付ける受付手段」に相当する。
c 引用発明1の「携帯電話1」は,「IDカード6より受信したデータ9と,パスワードとして入力されたデータ10と,第1のデータ読み取り装置2内にあらかじめ記憶されたデータ11とを比較し,データ9とデータ11との和がデータ10になる場合にのみ使用可能となる」ものであるから,「データ9」及び「データ11」は,いずれも識別情報であるといえる。
そして,引用発明1の「携帯電話1」は,「第1の電波信号送受信装置3を介して電波信号Aを送信し」,これに対し,「IDカード6」は,「電波信号Aを受信するとIDカード6にあらかじめ記憶されたデータ9を,電波信号Bを介して自動的に送信し」,さらに,「携帯電話1が備えるデータ読み取り装置2はデータ9を受信」するものであるから,上記「IDカード6」は,識別情報である「データ9」をあらかじめ記憶しているといえる。
他方,訂正発明1の「携帯電話」は,「Rバッジに対して」「識別情報を要求する要求信号を送信」し,「前記Rバッジより識別情報を受け取」るものであるから,当該「Rバッジ」は,当然に上記「識別情報」を記憶しているものと認められる。
してみれば,訂正発明1の「Rバッジ」と引用発明1の「IDカード6」とは,後記する点で相違するものの,「識別情報を記憶する媒体」(以下,「識別情報記憶媒体」という。)である点において共通する。
また,引用発明1の「電波信号A」は,「IDカード6」に対して送信される信号であって,上記「データ9」を要求する信号であるといえ,上記の検討も踏まえると,「識別情報記憶媒体」に対して識別情報を要求する信号であるといえるから,訂正発明1の「要求信号」に相当する。
d 引用発明1は,「携帯電話1の電源を投入した時あるいは通話のためにキー5を押したときに,第1の電波信号送受信装置3を介して電波信号Aを送信」するものであり,これに対し,「IDカード6」は,「電波信号Aを受信するとIDカード6にあらかじめ記憶されたデータ9を,電波信号Bを介して自動的に送信」するものであるところ,引用発明1の「第1の電波信号送受信装置3」は,「携帯電話1の電源を投入した」ことに応じて「IDカード6」に対して「電波信号Aを送信」する送信手段といえる。
そして,上記bで検討したとおり,引用発明1においては,携帯電話1の電源を投入したことの検知を,電源投入用のキー又はスイッチの操作に応じて生成された信号を受信することで行われているものと認められ,当該「信号」は,訂正発明1の「当該携帯電話のスイッチを押すことで生成されるトリガ信号」に相当するものである。
してみると,引用発明1の「第1の電波信号送受信装置3」は,電源投入用のキー又はスイッチの操作に応じて生成された信号に応答して,IDカード6に対してデータ9を要求する電波信号Aを送信する送信手段といえるから,上記cでの検討も踏まえると,訂正発明1の「送信手段」と引用発明1の「第1の電波信号送受信装置3」とは,「トリガ信号に応答して、識別情報記憶媒体に対して識別情報を要求する要求信号を送信する送信手段」である点において共通する。
e 引用発明1の「携帯電話1」は,「IDカード6より受信したデータ9と,パスワードとして入力されたデータ10と,第1のデータ読み取り装置2内にあらかじめ記憶されたデータ11とを比較」するものであるところ,当該比較を行うための手段を当然に備えているものと認められ,また,当該「比較を行うための手段」は,「IDカード6より受信したデータ9」及び「パスワードとして入力されたデータ10」と「第1のデータ読み取り装置2内にあらかじめ記憶されたデータ11」とを比較するものであるといえる。
また,引用発明1の「携帯電話1」は,「第1のデータ読み取り装置2」を備え,「データ11」は,「第1のデータ読み取り装置2内にあらかじめ記憶された」ものであり,また,上記cで検討したとおり,「データ11」は識別情報であることからすると,当該「データ11」は,携帯電話1にあらかじめ記憶された識別情報であるといえるから,引用発明1の「データ11」は,訂正発明1の「当該携帯電話に予め記録してある識別情報」に相当する。
そして,引用発明1において,「IDカード6は,電波信号Aを受信するとIDカード6にあらかじめ記憶されたデータ9を,電波信号Bを介して自動的に送信し,携帯電話1が備えるデータ読み取り装置2はデータ9を受信」するものであり,上記cで検討したとおり,「データ9」は,識別情報であるといえるから,当該「データ9」は,IDカード6より受け取った識別情報であると認められ,上記cでの検討も踏まえると,訂正発明1の「Rバッジより」「受け取った識別情報」と,引用発明1の「データ9」とは,「識別情報記憶媒体」より「受け取った識別情報」である点で共通する。
してみると,引用発明1が当然に備えているものと認められる上記「比較を行うための手段」は,IDカード6よりデータ9を受け取って,該受け取ったデータ9及びパスワードとして入力されたデータ10と,携帯電話1にあらかじめ記憶された識別情報であるデータ11との比較を行うものであるといえるから,訂正発明1の「比較手段」と引用発明1の上記「比較を行うための手段」とは,後記する点で相違するものの,「前記識別情報記憶媒体より識別情報を受け取って」「当該携帯電話に予め記録してある識別情報との比較を行う比較手段」である点において共通する。
f 引用発明1の「携帯電話1」は,上記eで検討した「比較を行うための手段」による比較の結果,「データ9とデータ11との和がデータ10になる場合にのみ使用可能になるものであ」るところ,データ9とデータ11との和がデータ10にならない場合は使用不可能になるものであるから,上記比較の結果に応じて,携帯電話1を使用可能または不可能にする制御手段を当然に備えているものと認められる。そして,上記「携帯電話1を使用可能または不可能にする」ことは,上記bでの検討を踏まえると,訂正発明1の「前記受付手段で受け付けた前記アクセス要求を許可または禁止する」ことに相当する。
してみれば,引用発明1が当然に備えていると認められる上記「制御手段」は,上記「比較を行うための手段」による比較の結果に応じて,携帯電話1を使用可能または不可能にするものであって,携帯電話1への「アクセス要求」を制御するものであるといえるから,訂正発明1の「アクセス制御手段」と引用発明1の上記「制御手段」とは,後記する点で相違するものの,「前記比較手段による比較結果に応じて前記受付手段で受け付けた前記アクセス要求を許可または禁止するアクセス制御手段」である点において共通する。
g 訂正発明1の「携帯電話」と引用発明1の「携帯電話1」とは,上記b~fでの検討も踏まえると,後記する点で相違するものの,「受付手段と、」「送信手段と、」「比較手段と、」「アクセス制御手段とを備える」点において共通する。
h 以上から,訂正発明1と引用発明1とは,以下の点で一致し,また,相違する。
(一致点ア)
「 携帯電話であって、当該携帯電話のスイッチを押すことで生成されるトリガ信号を、当該携帯電話の所有者が第三者による閲覧や使用を制限し、保護することを希望する被保護情報に対するアクセス要求として受け付ける受付手段と、前記トリガ信号に応答して、識別情報記憶媒体に対して識別情報を要求する要求信号を送信する送信手段と、前記識別情報記憶媒体より識別情報を受け取って、該受け取った識別情報と当該携帯電話に予め記録してある識別情報との比較を行う比較手段と、前記比較手段による比較結果に応じて前記受付手段で受け付けた前記アクセス要求を許可または禁止するアクセス制御手段とを備えることを特徴とする携帯電話。」
(相違点ア-1)
訂正発明1の「携帯電話」及び「Rバッジ」は,いずれも「RFIDインターフェースを有する」ものであるのに対し,引用発明1の「携帯電話1」及び「IDカード6」については,そのような特定がなされていない点。
(相違点ア-2)
「識別情報記憶媒体」は,訂正発明1においては,「Rバッジ」であるのに対し,引用発明1においては,「IDカード6」である点。
(相違点ア-3)
訂正発明1の「識別情報」は,識別情報記憶手段である「Rバッジ」を「一意に識別できる」ものであるのに対し,引用発明1の「データ9」については,識別情報記憶手段である「IDカード6」を一意に識別できることは特定されていない点。
(相違点ア-4)
訂正発明1の「比較手段」は,「Rバッジより」「受け取った識別情報」と「当該携帯電話に予め記録してある識別情報」との比較を行うものであるのに対し,引用発明1は,「IDカード6」から受信した「データ9」と携帯電話1に「予め記憶されたデータ11」の2つのデータのみではなく,これらに,使用者がパスワードとして入力した「データ10」を加えた3つのデータの比較を行うものである点。
(相違点ア-5)
訂正発明1の「前記アクセス制御手段」は,「当該比較手段で前記アクセス要求を許可するという比較結果が得られた場合は、前記アクセス要求が許可されてから所定時間が経過するまでは前記被保護情報へのアクセスを許可する」ものであるのに対し,引用発明1は,そのような特定がなされていない点。
B 判断
上記相違点について検討する。事案に鑑み,相違点ア-3について先に検討する。
a 訂正発明1の「Rバッジを一意に識別できる識別情報」の技術的意義
(a)本来的な技術的意義
訂正発明1の「識別情報」は,「Rバッジを一意に識別できる」ものであるが,その本来的な技術的意義について検討すると,次のとおりである。
上記(2)イ(ア)での検討によれば,訂正発明1の「識別情報」は,Rバッジ(レッドバッジ)に組み込まれたRFタグ(携帯記録素子)に記憶される識別情報であって,当該RFタグが組み込まれた物品であるRバッジを一意に識別するための識別情報であるものと認められる。
すなわち,訂正発明1の「識別情報」の本来的な技術的意義は,願書に添付した明細書等の記載及び本件特許出願の優先日における技術常識を考慮すれば,その字句どおり,「Rバッジ」自体を一意に識別するために用いられる情報であることにあると当業者には理解されるものである。
(b)本件発明の特徴
訂正発明1の「Rバッジを一意に識別できる識別情報」は,上記(a)で述べた本来的な技術的意義を有するものであると理解されるところ,本来的には,携帯電話の正当な使用者を識別するための情報ではなく,当該携帯電話の正当な使用者の認証に使用されることも想定されていないものである。
これに対し,訂正発明1は,願書に添付した明細書等に「レッドバッジに組み込んだ携帯記録素子の識別情報を確認して携帯端末10の使用を可能にすることができ、正当な使用者にのみ使用を許可することができる」(【0127】)と記載されるように,上述のような,本来的には携帯電話の正当な使用者を識別するための情報ではない「Rバッジを一意に識別できる識別情報」を,携帯電話の正当な使用者を認証するために用いるものであり,この点に,訂正発明1の技術的特徴があると認められるものである。
b 容易想到性
上記a(a)で検討した本件訂正発明1の「識別情報」の本来的な技術的意義を踏まえ,引用発明1から上記相違点ア-3に係る構成に容易に想到できたか否かについて検討する。
引用発明1は,「データ9」に関し,「使用者に対しパスワードの入力を要求し,携帯電話1は,IDカード6より受信したデータ9と,パスワードとして入力されたデータ10と,第1のデータ読み取り装置2内にあらかじめ記憶されたデータ11とを比較し,データ9とデータ11との和がデータ10になる場合にのみ使用可能になる」ものであるところ,引用発明1の「データ9」は,「データ9とデータ11との和」が,使用者を識別する正しいパスワードとなるように設定されるものと認められるから,本来的に使用者を識別するための情報であるといえ,訂正発明1の「識別情報」とは本来的な技術的意義を異にするものである。
また,引用発明1は,「一定時間ごとに第1のデータ読み取り装置2内にてデータ11を書き換え」るのに合わせてIDカード6内の当該「データ9」もまた一定時間ごとに書き換えるものであるから,引用発明1の「データ9」が,(訂正発明1の「識別情報」のように)IDカード6を「一意に識別できる」ものたり得ないことが明らかである。そして,引用発明1において,上記のとおりデータ11及びデータ9を一定時間ごとに書き換えることの技術的意義は,「第三者がIDカードを持ってきて携帯電話に近づけた後電源を投入し,パスワードを入力しても,IDカード内のデータ9が,データ9とデータ11の和がデータ10であるという関係を満たさないので携帯電話の使用が不可能である」(引用文献1の【0014】)ようにすることであるところ,上記「データ9」を,IDカード6を「一意に識別できる」ものに構成変更すると,上記「データ9」は一定時間ごとに書き換えないものとなり,その結果,上記技術的意義が損なわれることになるから,そのような構成変更を行うことについて阻害要因があるというべきである。
したがって,引用発明1を出発点として上記相違点ア-3に係る構成に想到することは,当業者といえども,容易になし得たものではない。
念のため,引用発明2についても検討すると,引用発明2は,引用発明1と同様に,識別ユニットから送出される識別コードと情報ユニットに記憶されているキーコードとの比較結果に応じて携帯電話の発信処理を行うことができる又はできないようにするものであるが,当該「識別コード」は,「正当な操作者の識別コード」であり,本来的には当該正当な操作者を識別するための情報であるから,訂正発明1の「識別情報」とはその技術的意義が異なるものである。また,当該「識別コード」は,まず,情報ユニットにおいてキー入力部16から入力され,かつ送受信部17を介して識別ユニットに送出されたキーコードを識別コードメモリ22に記憶したものであるところ,情報ユニットにおいて入力されるキーコードの内容がそのままその内容となるものであり,入力されるキーコードの内容によって変化するものであるから,この点においても,本来的に識別ユニット自体を「一意に識別できる」ものではない。したがって,引用発明2は,「一意に識別できる」構成を有していないから,仮に,引用発明1に引用発明2を適用したとしても,訂正発明1の「Rバッジを一意に識別できる識別情報」の構成に至らないことが明らかである。
よって,引用発明1において,「IDカード6より受信するデータ9」を,当該IDカード6を一意に識別できる識別情報とすることは,当業者といえども,引用発明1及び引用発明2から容易に想到することはできない。
C 小括
したがって,上記相違点ア-1,ア-2,ア-4及びア-5について判断するまでもなく,訂正発明1は,当業者であっても,引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ウ)訂正発明2~6について
訂正発明2~6は,上記アで認定したとおり,本件訂正後の請求項2~6が直接的又は間接的に本件訂正後の請求項1を引用するものであるところ,訂正発明1の発明特定事項を全て有し,上記相違点ア-3に係る「Rバッジを一意に識別できる識別情報」と同一の構成を備えるものであるから,上記(イ)で検討したのと同じ理由により,当業者であっても,引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
ウ 特許法第29条の2(拡大先願)
(ア)先の出願(甲第1号証に係る特許出願)
A 甲第1号証である特開2001-245354号公報に係る特許出願であって,本件特許出願の優先日前の他の特許出願である特願2000-56204号(以下,「引用先願」という。)は,その発明をした者と本件特許出願の発明者が同一ではなく,また本件特許出願の時において,本件特許出願の出願人がその出願人と同一でもない。そして,引用先願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「当初明細書等」という。)には,以下の記載がある。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)
「【0028】次に、図2を参照しながら動作について説明する。図2はこの発明の実施の形態1による携帯電話機の自動ダイヤルロックシステムの動作を示したフローチャートである。
【0029】まず、携帯電話機10の特定(正規)の使用者あるいはサービス提供者等は、あらかじめ設定された所定のID情報を、携帯電話機10のコード記憶回路16とロック解除装置20のID情報記憶回路21に、図示しないROMライタ等を介して入力し記憶させる。尚、携帯電話機10のコード記憶回路16へのID情報の入力は、入力装置14を介して行うようにしても良い。また、携帯電話機10の電源投入時、携帯電話機10はロック状態であるものとする。
【0030】さて、携帯電話機10に電源が投入されると(ステップST1)、携帯電話機10の認証装置17は乱数を生成し、制御部11に供給する。制御部11は、この乱数をロック解除コードとしてコード記憶回路16に記憶する(ステップST2)。コード記憶回路16にロック解除コードが記憶されると、認証装置17はID情報と電源投入時に記憶されたロック解除コードを、コード記憶回路16から読み出し、認証演算(任意の算術演算等)を実施し(ステップST3)、該認証演算の結果を制御部11に供給する。前記認証演算の結果の供給を受けた制御部11は、該認証演算の結果(第1の認証演算結果)をコード記憶回路16に記憶する。
【0031】次に、携帯電話機使用者により、発信またはメモリダイヤル等の個人情報へのアクセス等の操作を行うべく、入力装置14のキーボードより、一連のキー操作によるデータの入力(動作処理要求等)が行われると、この一連のキー操作によるデータの入力に対応する操作内容が制御部11に供給(通知)される。制御部11は、入力装置14から前記操作内容が供給されたタイミングにて、コード記憶回路16よりロック解除コードを読み出してロック解除コード送信部12に供給する。ロック解除コード送信部12は、ロック解除コードを微弱電波にのせ、携帯電話機使用者が所持している(身に付けている)ロック解除装置20に送信する(ステップST4,5)。
【0032】ロック解除装置20のロック解除コード受信部22は、携帯電話機10から微弱電波で送信されたロック解除コードを受信すると、該ロック解除コードを認証装置23に供給する。このロック解除装置20の認証装置23は、ロック解除コードが供給(受信)された時点で、ID情報記憶回路21にあらかじめ記憶されているID情報を読み出し、該ID情報と受信したロック解除コードとで認証演算を行い(ステップST6)、該認証演算の結果を認証結果送信部24に供給する。また、認証結果送信部24は認証装置23より供給された認証演算の結果(第2の認証演算結果)を、携帯電話機10に送信する。(ステップST7)
【0033】なお、携帯電話機10におけるロック解除コード送信部12の送信出力及びロック解除装置20におけるロック解除コード受信部22の受信感度は、例えば、障害物(遮蔽物)の無い状態での電波の到達距離が、1m程度となるように調整しておく。また、ロック解除装置20の認証装置23で用いる認証演算アルゴリズムは、携帯電話機10の認証装置17の認証演算アルゴリズムと同一のものを用いるものとする。」
「【0034】次に、携帯電話機10の認証結果受信部18は、ロック解除装置20から微弱電波で送信された認証演算の結果(第2の認証演算結果)を受信すると、制御部11に供給する。制御部11は、コード記憶回路16に既に記憶されている認証演算の結果(第1の認証演算結果)を読み出して、受信した認証演算の結果(第2の認証演算結果)との比較認証(認証処理による認証判定)を行う(ステップST8)。
【0035】制御部11は、比較認証の結果が一致していた場合、前記ステップST4におけるキー入力は、特定の使用者(使用が許可されている携帯電話機使用者)によるキー入力であるものと判断し、ロック解除状態とし、前記ステップST4にて入力装置14から入力された発信操作及びメモリダイヤル等の操作を有効として(ステップST9)、発信処理等を継続する(一連のキー入力による処理が完了するまでの処理の継続を可能とする)。
【0036】一方、携帯電話機10のコード記憶回路16に記憶されたID情報とロック解除装置20のID情報記憶回路21に記憶されたID情報とが異なっていたり、或いは、携帯電話機10の認証装置17における認証アルゴリズムとロック解除装置20の認証装置23における認証アルゴリズムが異なっていた場合(携帯電話機10とロック解除装置20の対応がとれていない場合)等によって、前記比較認証の結果が不一致となった場合、制御部11は、前記ステップST4におけるキー入力が、特定の使用者でない者(使用が許可されていない携帯電話機使用者)によるキー入力であると判断し、ロック解除は行わず、前記ステップST4にて入力された操作を無効として破棄し(ステップST10)、例えば、表示部15に、前記ステップST4にて入力された発信操作またはメモリアクセス操作が無効である旨の表示を行う。
【0037】また、制御部11は、許可された発信処理(発信、メモリダイヤル等の個人情報へのアクセス操作等)が実施中、新たに入力装置14から通知(入力)された操作に対しては、ロック状態として扱う。さらに、許可された発信処理が完了した後、新たに入力装置14から通知された操作に対しては、制御部11は、再びロック解除コードをロック解除装置20に送信して認証処理を実施する。すなわち、一旦、ダイヤルロックが解除された操作に対し、一連の処理が完了するまでの期間についてのみ、キー入力された一連の処理要求に対する動作の継続が可能となる。」
「【0047】さらに、認証処理においては、ロック解除コードを、所定の数値(コード)ではなく乱数により生成し、該ロック解除コードとID情報とから、携帯電話機10とロック解除装置20それぞれにおいて認証演算することで、それぞれの認証演算の結果(第1及び第2の認証演算結果)を得、これによって認証処理を行っているので、例えば、ロック解除装置20より出力される認証演算の結果(第2の認証演算結果)を、治具(ロック解除装置をエミュレートする装置)等により不正に生成することが難しくなり、携帯電話機10の第三者による不正使用をより未然に防止する効果が得られる。」
「【0050】この発明によれば、第1の認証演算結果を、携帯電話機の電源投入時に、該携帯電話機内部にて生成された所定のロック解除コードと、あらかじめ携帯電話機内部に記憶されている特定の使用者を示すID情報とで、所定の認証演算を行うことにより生成し、第2の認証演算結果を、ロック解除装置内部にて前記携帯電話機より供給されたロック解除コードと、あらかじめロック解除装置内部に記憶されている前記特定の使用者を示すID情報とで、前記所定の認証演算を行うことにより生成するように構成したので、前記第1または第2の認証演算結果を不正に生成(模倣)することを困難とすることができるという効果がある。」
B 上記Aの記載を踏まえると,引用先願の当初明細書等には,以下の発明(以下,「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。
「 自動ダイヤルロックシステムにおける携帯電話機10であって,
まず,携帯電話機10の特定(正規)の使用者あるいはサービス提供者等は,あらかじめ設定された所定のID情報を,携帯電話機10のコード記憶回路16とロック解除装置20のID情報記憶回路21に,入力し記憶させ,
前記ID情報は,特定の使用者を示すID情報であり,
携帯電話機10に電源が投入されると,携帯電話機10は乱数を生成し,この乱数をロック解除コードとしてコード記憶回路16に記憶し,ID情報とロック解除コードを,コード記憶回路16から読み出し,認証演算(任意の算術演算等)を実施し,該認証演算の結果(第1の認証演算結果)をコード記憶回路16に記憶し,
次に,携帯電話機使用者により,発信またはメモリダイヤル等の個人情報へのアクセス等の操作を行うべく,一連のキー操作によるデータの入力(動作処理要求等)が行われると,この一連のキー操作によるデータの入力に対応する操作内容が制御部11に供給(通知)され,ロック解除コード送信部12は,ロック解除コードを微弱電波にのせ,携帯電話機使用者が所持している(身に付けている)ロック解除装置20に送信し,
ロック解除装置20は,携帯電話機10から微弱電波で送信されたロック解除コードを受信すると,ID情報記憶回路21にあらかじめ記憶されているID情報を読み出し,該ID情報と受信したロック解除コードとで認証演算を行い,認証演算の結果(第2の認証演算結果)を,携帯電話機10に送信し,
ロック解除装置20及び携帯電話機10の認証演算の認証演算アルゴリズムは同一であり,
携帯電話機10におけるロック解除コード送信部12の送信出力及びロック解除装置20におけるロック解除コード受信部22の受信感度は,例えば,障害物(遮蔽物)の無い状態での電波の到達距離が,1m程度となるように調整されており,
次に,携帯電話機10は,ロック解除装置20から微弱電波で送信された認証演算の結果(第2の認証演算結果)を受信すると,制御部11は,コード記憶回路16に既に記憶されている認証演算の結果(第1の認証演算結果)を読み出して,受信した認証演算の結果(第2の認証演算結果)との比較認証(認証処理による認証判定)を行い,
制御部11は,比較認証の結果が一致していた場合,特定の使用者(使用が許可されている携帯電話機使用者)によるキー入力であるものと判断し,ロック解除状態とし,入力された発信操作及びメモリダイヤル等の操作を有効として(ステップST9),発信処理等を継続し(一連のキー入力による処理が完了するまでの処理の継続を可能とする),
一方,比較認証の結果が不一致となった場合,特定の使用者でない者(使用が許可されていない携帯電話機使用者)によるキー入力であると判断し,ロック解除は行わず,入力された操作を無効として破棄し,
制御部11は,許可された発信処理(発信,メモリダイヤル等の個人情報へのアクセス操作等)が実施中,新たに入力装置14から通知(入力)された操作に対しては,ロック状態として扱い,さらに,許可された発信処理が完了した後,新たに入力装置14から通知された操作に対しては,制御部11は,再びロック解除コードをロック解除装置20に送信して認証処理を実施し,すなわち,ダイヤルロックが解除された操作に対し,一連の処理が完了するまでの期間についてのみ,キー入力された一連の処理要求に対する動作の継続が可能となる
携帯電話機10。」
(イ)訂正発明1について
A 対比
訂正発明1と先願発明とを対比する。
a 先願発明の「携帯電話機10」は,訂正発明1の「携帯電話」に相当する。
b 先願発明の「メモリダイヤル等の個人情報」は,訂正発明1の「当該携帯電話の所有者が第三者による閲覧や使用を制限し、保護することを希望する被保護情報」に相当する。
c 先願発明における「一連のキー操作」を行うことは,訂正発明1の「スイッチを押すこと」に相当する。
また,先願発明の「制御部11」は,「携帯電話機使用者により,発信またはメモリダイヤル等の個人情報へのアクセス等の操作を行うべく,一連のキー操作によるデータの入力(動作処理要求等)が行われると,この一連のキー操作によるデータの入力に対応する操作内容が」「供給(通知)され」るものであるところ,当該「供給(通知)」は,技術常識に鑑みれば,一連のキー操作に応じて生成された信号を受信することで行われているものと認められ,当該「信号」が,訂正発明1の「当該携帯電話のスイッチを押すことで生成されるトリガ信号」に相当する。
よって,先願発明の「制御部11」は,一連のキー操作に応じて生成された信号を,メモリダイヤル等の個人情報へのアクセス要求として受け付けるものであるといえるから,上記bでの検討も踏まえると,訂正発明1の「当該携帯電話のスイッチを押すことで生成されるトリガ信号を、当該携帯電話の所有者が第三者による閲覧や使用を制限し、保護することを希望する被保護情報に対するアクセス要求として受け付ける受付手段」に相当する。
d 先願発明の「携帯電話機10」は,「ロック解除装置20から微弱電波で送信された認証演算の結果(第2の認証演算結果)を受信すると,制御部11は,コード記憶回路16に既に記憶されている認証演算の結果(第1の認証演算結果)を読み出して,受信した認証演算の結果(第2の認証演算結果)との比較認証(認証処理による認証判定)を行」うものであるから,当該「第1の認証演算結果」及び「第2の認証演算結果」は,いずれも識別情報であるといえる。
そして,先願発明において,「携帯電話機10」の「ロック解除コード送信部12」は,「ロック解除コードを微弱電波にのせ,携帯電話機使用者が所持している(身に付けている)ロック解除装置20に送信し」,これに対し,「ロック解除装置20」は,「携帯電話機10から微弱電波で送信されたロック解除コードを受信すると,」「認証演算の結果(第2の認証演算結果)を,携帯電話機10に送信」するものであるから,先願発明の「ロック解除装置20」は,「第2の認証演算結果」を携帯電話機10に送信するものである。
他方,訂正発明1の「携帯電話」は,「Rバッジに対して」「識別情報を要求する要求信号を送信し」,「前記Rバッジより識別情報を受け取」るものであるから,訂正発明1の「Rバッジ」も,当然に携帯電話に対し上記「識別情報」を送信しているものと認められる。
してみれば,訂正発明1の「Rバッジ」と先願発明の「ロック解除装置20」とは,後記する点で相違するものの,「識別情報を送信する装置」(以下,「識別情報送信装置」という。)である点において共通する。
また,先願発明の,携帯電話機10から送信される「微弱電波」は,「ロック解除装置20に」に対して送信される信号であって,上記「第2の認証演算結果」を要求する信号であるといえ,上記の検討も踏まえると,「識別情報送信装置」に対して識別情報を要求する信号であるといえるから,訂正発明1の「要求信号」に相当する。
e 先願発明は,「次に,携帯電話機使用者により,発信またはメモリダイヤル等の個人情報へのアクセス等の操作を行うべく,一連のキー操作によるデータの入力(動作処理要求等)が行われると,この一連のキー操作によるデータの入力に対応する操作内容が制御部11に供給(通知)され,ロック解除コード送信部12は,ロック解除コードを微弱電波にのせ,携帯電話機使用者が所持している(身に付けている)ロック解除装置20に送信」するものであるところ,先願発明の「ロック解除コード送信部12」は,「一連のキー操作」に応じて「ロック解除装置20」に対して「微弱電波を送信」する送信手段といえる。
そして,上記cで検討したとおり,先願発明においては,一連のキー操作によるデータの入力に対応する操作内容の「供給(通知)」を,当該一連のキー操作に応じて生成された信号を受信することで行われているものと認められ,当該「信号」は,訂正発明1の「当該携帯電話のスイッチを押すことで生成されるトリガ信号」に相当するものである。
してみると,先願発明の「ロック解除コード送信部12」は,一連のキー操作に応じて生成された信号に応答して,ロック解除装置20に対して第2の認証演算結果を要求する微弱電波を送信する送信手段といえるから,上記dでの検討も踏まえると,訂正発明1の「送信手段」と先願発明の「ロック解除コード送信部12」とは,後記する点で相違するものの,「前記トリガ信号に応答して、識別情報送信装置に対して識別情報を要求する要求信号を送信する送信手段」である点において共通する。
f 先願発明の「制御部11」は,「携帯電話機10」が,「ロック解除装置20から微弱電波で送信された認証演算の結果(第2の認証演算結果)を受信すると」「携帯電話機10のコード記憶回路16に既に記憶されている認証演算の結果(第1の認証演算結果)を読み出して,受信した認証演算の結果(第2の認証演算結果)との比較認証(認証処理による認証判定)を行」うものであるところ,「第2の認証演算結果」と「第1の認証演算結果」とを比較する比較手段であるといえる。
また,上記「第1の認証演算結果」は,「携帯電話機10のコード記憶回路16に既に記憶されている」ものであることから,携帯電話機10に既に記憶されているものであるといえ,また,上記dで検討したとおり,識別情報であるところ,当該「第1の認証演算結果」は,携帯電話機10に既に記憶されている識別情報であるといえるから,先願発明の「第1の認証演算結果」は,訂正発明1の「当該携帯電話に予め記録してある識別情報」に相当する。
さらに,上記「第2の認証演算結果」は,ロック解除装置20から受信したものであり,また,上記dで検討したとおり,識別情報であるところ,当該「第2の認証演算結果」は,ロック解除装置20から受信した識別情報であるといえるから,上記dでの検討も踏まえると,訂正発明1の「Rバッジより」「受け取った識別情報」と,先願発明の「第2の認証演算結果」とは,「識別情報送信装置」より「受け取った識別情報」である点で共通する。
してみると,先願発明の「制御部11」は,ロック解除装置20から第2の認証演算結果を受信し,該受信した第2の認証演算結果と,携帯電話機10に既に記憶されている第1の認証演算結果との比較を行う比較手段であるといえるから,訂正発明1の「比較手段」と先願発明の「制御部11」とは,後記する点で相違するものの,「前記識別情報送信装置より識別情報を受け取って、該受け取った識別情報と当該携帯電話に予め記録してある識別情報との比較を行う比較手段」である点で共通する。
g 先願発明の「制御部11」は,上記fで検討した「比較手段」といえる制御部11による比較の結果,「比較認証の結果が一致していた場合,特定の使用者(使用が許可されている携帯電話機使用者)によるキー入力であるものと判断し,ロック解除状態とし,入力された発信操作及びメモリダイヤル等の操作を有効として(ステップST9),発信処理等を継続し(一連のキー入力による処理が完了するまでの処理の継続を可能とする),一方,比較認証の結果が不一致となった場合,特定の使用者でない者(使用が許可されていない携帯電話機使用者)によるキー入力であると判断し,ロック解除は行わず,入力された操作を無効として破棄」するものである。すなわち,上記「キー入力」は,上記cで検討したとおり,「携帯電話使用者が発信またはメモリダイヤル等の個人情報へのアクセス等の操作を行うべく」行うものであるといえ,そして,上記のロック解除を行ったり行わなかったりすることは,当該「アクセス等の操作」を許可または禁止することであることが明らかであるから,先願発明の「制御部11」は,アクセス等の操作の許可または禁止の制御を行うアクセス制御手段であるといえる。そして,当該アクセス等の操作の許可または禁止の制御を行うことは,上記cでの検討を踏まえると,訂正発明1の「前記受付手段で受け付けた前記アクセス要求を許可または禁止する」ことに相当する。
してみれば,先願発明の「制御部11」は,比較手段としての制御部11による比較の結果に応じて,キー入力により行われるメモリダイヤル等の個人情報へのアクセス等の操作の許可または禁止の制御を行うアクセス制御手段であるといえるから,上記c及びfでの検討も踏まえれば,訂正発明1の「前記比較手段による比較結果に応じて前記受付手段で受け付けた前記アクセス要求を許可または禁止するアクセス制御手段」に相当する。
h 先願発明において,「制御部11」は,「許可された発信処理(発信,メモリダイヤル等の個人情報へのアクセス操作等)が実施中,新たに入力装置14から通知(入力)された操作に対しては,ロック状態として扱い,さらに,許可された発信処理が完了した後,新たに入力装置14から通知された操作に対しては,制御部11は,再びロック解除コードをロック解除装置20に送信して認証処理を実施し,すなわち,ダイヤルロックが解除された操作に対し,一連の処理が完了するまでの期間についてのみ,キー入力された一連の処理要求に対する動作の継続が可能となる」ところ,先願発明の「制御部11」は,メモリダイヤル等の個人情報へのアクセス等の操作について,ダイヤルロックが解除された場合,当該操作に対し,一連の処理が完了するまでの期間についてのみ,キー入力された一連の処理要求に対する動作の継続が可能となるように制御を行うものであるといえる。
ここで,上記「メモリダイヤル等の個人情報へのアクセス等の操作について,ダイヤルロックが解除された場合」とは,上記f及びgでの検討を踏まえれば,比較手段としての制御部11の比較の結果により,当該操作を許可する場合であるといえ,また,上記「当該操作に対し,キー入力された一連の処理要求に対する動作の継続が可能となるように制御を行う」ことは,上記c,f及びgでの検討を踏まえれば,上記メモリダイヤル等の個人情報へのアクセス等の操作に対し要求される一連の処理を許可することであるといえ,さらに,上記「操作に対し,一連の処理が完了するまでの期間」は,「所定時間」ということができる。
してみると,先願発明の「制御部11」は,比較手段としての制御部11によりメモリダイヤル等の個人情報へのアクセス等の操作を許可するという比較の結果が得られた場合,所定時間についてのみ,メモリダイヤル等の個人情報へのアクセス等の操作に対し要求される一連の処理を許可するアクセス制御手段であるといえるから,上記b,c,f,及びgでの検討を踏まえれば,さらに,訂正発明1の「当該比較手段で前記アクセス要求を許可するという比較結果が得られた場合は、前記アクセス要求が許可されてから所定時間が経過するまでは前記被保護情報へのアクセスを許可するアクセス制御手段」に相当する。
j 訂正発明1の「携帯電話」と先願発明の「携帯電話機10」とは,上記c及びe~hでの検討も踏まえると,後記する点で相違するものの,「受付手段と、」「送信手段と、」「比較手段と、」「アクセス制御手段とを備える」点において共通する。
k 以上から,訂正発明1と先願発明とは,以下の点で一致し,また,相違する。
(一致点イ)
「 携帯電話であって、当該携帯電話のスイッチを押すことで生成されるトリガ信号を、当該携帯電話の所有者が第三者による閲覧や使用を制限し、保護することを希望する被保護情報に対するアクセス要求として受け付ける受付手段と、前記トリガ信号に応答して、識別情報送信装置に対して識別情報を要求する要求信号を送信する送信手段と、前記識別情報送信装置より識別情報を受け取って、該受け取った識別情報と当該携帯電話に予め記録してある識別情報との比較を行う比較手段と、前記比較手段による比較結果に応じて前記受付手段で受け付けた前記アクセス要求を許可または禁止するアクセス制御手段とを備え、前記アクセス制御手段は、当該比較手段で前記アクセス要求を許可するという比較結果が得られた場合は、前記アクセス要求が許可されてから所定時間が経過するまでは前記被保護情報へのアクセスを許可することを特徴とする携帯電話。」
(相違点イ-1)
訂正発明1の「携帯電話」及び「Rバッジ」は,いずれも「RFIDインターフェースを有する」ものであるのに対し,先願発明の「携帯電話機10」及び「ロック解除装置20」は,互いに電波を用いた近距離無線通信を行うものであるが,「RFIDインターフェースを有する」との明示的な特定はなされていない点。
(相違点イ-2)
「識別情報送信装置」は,訂正発明1においては,「Rバッジ」であるのに対し,先願発明においては,「ロック解除装置20」である点。
(相違点イ-3)
訂正発明1の「識別情報」は,「Rバッジを一意に識別できる」ものであるのに対し,先願発明の「第2の認証演算結果」は,ロック解除装置20において,あらかじめ設定された特定の使用者を示し,ID情報記憶回路21にあらかじめ記憶されているID情報と,携帯電話機10の電源投入時に生成された乱数であって,携帯電話機10から受信したロック解除コードとで行った認証演算の結果であり,「ロック解除装置20を一意に識別できる」ことは特定されていない点。
B 判断
上記Aで検討したとおり,訂正発明1と先願発明の間には相違点があるところ,両発明が実質同一であるか否か,すなわち,上記相違点が,課題解決のための具体化手段における微差であるか否かについて検討する。事案に鑑み,相違点イ-3について先に検討する。
先願発明における「第2の認証演算結果」は,携帯電話機使用者が「特定の使用者(使用が許可されている携帯電話機使用者)」であるかどうかを認証するために用いられる識別情報であって,「特定の使用者を示すID情報」に基づいて生成されるものであるところ,その技術的意義は,当該特定の使用者を一意に識別するための情報であることにあると認められるから,本来的にロック解除装置20を一意に識別できる情報であるとはいえないことが明らかである。また,上記の認証に用いる識別情報として,当該識別情報を送信するロック解除装置20を一意に識別できる情報を用いることは,本件特許出願の優先日における周知技術又は慣用技術であると認めるに足りる証拠はないから,上記相違点イ-3は,課題解決のための具体化手段における微差であるとはいえない。
仮に,認証に用いる識別情報として,当該識別情報を送信するロック解除装置2を一意に識別できる情報を用いることが, 本件特許出願の優先日における周知技術であったとしても,上記相違点イ-3は,やはり課題解決のための具体化手段における微差であるとはいえない。すなわち,先願発明は,携帯電話機10及びロック解除装置の双方において,携帯電話機10の特定(正規)の使用者あるいはサービス提供者等によりそれぞれに入力されあらかじめ記憶されている所定のID情報と,携帯電話機10の電源投入時に生成された乱数であるロック解除コードとで同一の認証演算アルゴリズムによる認証演算を行うとする複雑な認証機構を有するが,上記仮に周知技術とする,識別情報を送信するロック解除装置2を一意に識別できる情報を認証に用いる構成を先願発明に付加すると,ロック解除装置2から受信するロック解除装置2を一意に識別できる情報と携帯電話機10にあらかじめ記録した情報を単に比較するだけで認証を行い得るようになり,上記複雑な認証機構は不要となることから,先願発明への上記周知技術の付加は,認証機構を単純化することができるという新たな効果を奏するものとなるからである。さらに,先願発明において上記複雑な認証機構を有するそもそもの趣旨は,「ロック解除装置20より出力される認証演算の結果(第2の認証演算結果)を、治具(ロック解除装置をエミュレートする装置)等により不正に生成することが難しくなり、携帯電話機10の第三者による不正使用をより未然に防止する効果が得られ」(【0047】),当該効果により,第2の認証演算結果を治具等により不正に生成することを防止するとの課題を解決していることにあると認められるが,先願発明に上記周知技術を付加することにより上記複雑な認証機構を置き換えてしまうと,当該課題を解決し得ないことになるから,この点においても,上記相違点イ-3は,課題解決のための具体化手段における微差であるとはいえない。
C 小活
したがって,上記相違点イ-1及びイ-2について判断するまでもなく,訂正発明1は,引用先願の当初明細書等に記載された発明と同一ではなく,実質同一であるともいえない。
(ウ)訂正発明2~6について
訂正発明2~6は,上記アで認定したとおり,本件訂正後の請求項2~6が直接的又は間接的に本件訂正後の請求項1を引用するものであるところ,訂正発明1の発明特定事項を全て有し,上記相違点イ-3に係る「Rバッジを一意に識別できる識別情報」と同一の構成を備えるものであるから,上記(イ)で検討したのと同じ理由により,引用先願の当初明細書等に記載された発明と同一ではなく,実質同一であるともいえない。
エ 小括
以上のとおりであるから,訂正発明1~訂正発明6に記載の発明は,本件特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから,訂正事項1による訂正は,特許法第126条第7項の規定に適合する。
2 訂正事項2について
(1)訂正の目的
訂正事項2による訂正は,訂正事項1による特許請求の範囲の訂正に伴い,特許請求の範囲と整合させるために行う明細書の訂正であり,他の記載との関係において不合理を生じている記載を正す場合に該当するから,特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内であること
訂正事項2による訂正は,訂正事項1による特許請求の範囲の訂正に伴い,特許請求の範囲と整合させるために行う明細書の訂正であり,その内容は,訂正事項1と実質的に同じである。
よって,上記1(2)で検討したのと同様に,訂正事項2による訂正は,願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり,特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないこと
訂正事項2による訂正は,訂正事項1による特許請求の範囲の訂正に伴い,特許請求の範囲と整合させるために行う明細書の訂正であり,その内容は,訂正事項1と実質的に同じである。また,そのため,訂正事項2による訂正により請求項に記載された事項の解釈に影響を与えるものでもない。
よって,上記1(3)で検討したのと同様に,訂正事項2による訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもなく,特許法第126条第6項の規定に適合する。
3 本件特許に対する情報提供について
本件特許に対する情報提供として,本件侵害訴訟の被控訴人及び原審被告(以下,「本件刊行物等提出者」という。)により,令和2年3月19日に刊行物等提出書の提出がなされた。その趣旨は,本件侵害訴訟の原審では,本件特許には進歩性欠如及び拡大先願違反があると判断され,本件特許は特許無効審判において無効とされるべきであるとの判決がなされており,本件刊行物等提出者が本件侵害訴訟の控訴審において主張する無効理由は本件訂正審判においても妥当であるところ,本件訂正審判の審理においても検討されることを希望するというものである。
そこで,この点について検討すると,本件侵害訴訟の原審における進歩性欠如及び拡大先願違反があるとの判断は,それぞれ,引用文献1に記載された引用発明1及び引用文献2に記載された引用発明2,並びに,引用先願の当初明細書等に記載された先願発明に基づきなされており,また,本件刊行物等提出者の控訴審における進歩性欠如及び拡大先願違反の主張も,それぞれ,上記引用発明1及び上記引用発明2,並びに,上記先願発明に基づくものとなっている。
しかしながら,上記1(4)イ及び上記1(4)ウで検討したとおり,「Rバッジを一意に識別できる識別情報」の構成を備える訂正発明1~6は,引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明できたものではなく,また,先願発明と実質同一ではない。
なお,本件刊行物等提出者は,その主張において,引用発明1の「データ9」,引用発明2の「キーコード」,及び,先願発明の「第2の認証演算結果」は,それぞれ,引用発明1の「IDカード6」,引用発明2の「識別ユニット」,及び,先願発明の「ロック解除装置20」を「一意に識別できる」ものである旨主張しているが,この点についての当審の判断は,上記1(4)イ及び上記1(4)ウで示したとおりである。
第5 むすび
以上のとおりであるから,本件訂正は,特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし,かつ,同条第5項ないし第7項の規定に適合する。
よって,結論のとおり審決する。
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2020-390021