2020-016922
通信処理システム、通信処理方法、基地局およびその制御プログラム
- 審判番号
- 2020-016922
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-566010外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年12月08日
- 審決日
- 2021年12月14日
- 公報発行日
- 2022年08月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (H04W) / P18 .537-WY (H04W)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 17項目
第1 手続の経緯
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本願は,2018年(平成30年)1月10日(優先権主張 平成29年2月3日)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
令和元年 8月 5日 手続補正書の提出
令和2年 6月22日付け 拒絶理由通知書
令和2年 7月21日 意見書の提出
令和2年 9月 1日付け 拒絶査定
令和2年12月 8日 審判請求書及び手続補正書の提出
令和3年 7月21日付け 拒絶理由通知書(最後)(当審)
令和3年 9月16日 意見書及び手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和2年9月1日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
・請求項1,6ないし10に対して,引用文献1
・請求項2,3に対して,引用文献1ないし3
・請求項4,5に対して,引用文献1ないし4
<引用文献等一覧>
1.国際公開第2016/208097号
2.特開2012-222437号公報
3.Sony,Considerations on ProSe Relays Selection,3GPP TSG-SA WG2 #105 S2-143134,2014年10月 8日
4.米国特許出願公開第2010/0167743号明細書
第3 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明(以下,「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は,令和3年9月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】通信端末と基地局との通信を中継する複数の中継局から前記通信端末が受信した信号の強度を、前記複数の中継局のそれぞれに対応付いた受信信号強度として受信する受信手段と、前記複数の中継局のそれぞれから中継能力の余裕を示す情報を受信して、各中継局に対応付けて記憶する記憶手段と、前記受信信号強度が閾値を超えていて前記基地局と前記通信端末とを中継する候補になる中継局候補が複数ある場合に、前記複数の中継局候補に対応付けて記憶されている、それぞれの中継局候補の前記中継能力の余裕と他の中継局候補の前記中継能力の余裕とを比較して、前記中継能力の余裕がより大きい中継局候補を、前記基地局と前記通信端末とを中継する中継局として選択する選択手段と、続きを表示(全29行)を備える基地局。【請求項2】前記中継能力の余裕を示す情報は、当該中継局のバッテリ残量であり、前記選択手段は、前記バッテリ残量が多い中継局候補を、前記基地局と前記通信端末とを中継する中継局として選択する請求項1に記載の基地局。【請求項3】前記選択手段は、複数の前記中継能力の余裕を示す情報に対して重み付けをして、複数の前記中継能力の余裕を組み合わせることで、前記基地局と前記通信端末とを中継する中継局を選択する、請求項1に記載の基地局。【請求項4】前記通信端末は3GPP TS 23.303 V14.1.0におけるRemote UE(リモートUE)であって、IoTデバイス、MTCデバイスおよびM2Mデバイスを含み、前記基地局はeNBであり、前記中継局はProSe UE-to-NW Relay(リレーUE)であり、前記通信端末による受信信号強度の測定はDiscovery Procedure(ディスカバリ・プロシジャー)に含まれる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基地局。【請求項5】通信端末と基地局との通信を中継する複数の中継局から前記通信端末が受信した信号の強度を、前記複数の中継局のそれぞれに対応付いた受信信号強度として受信する受信ステップと、前記複数の中継局のそれぞれから中継能力の余裕を示す情報を受信して、各中継局に対応付けて記憶手段に記憶する記憶ステップと、前記受信信号強度が閾値を超えていて前記基地局と前記通信端末とを中継する候補になる中継局候補が複数ある場合に、前記複数の中継局候補に対応付けて記憶されている、それぞれの中継局候補の前記中継能力の余裕と他の中継局候補の前記中継能力の余裕とを比較して、前記中継能力の余裕がより大きい中継局候補を、前記基地局と前記通信端末とを中継する中継局として選択する選択ステップと、をコンピュータに実行させる基地局の制御プログラム。【請求項6】通信端末と、基地局と、前記通信端末と前記基地局との通信を中継する複数の中継局と、前記通信端末において、前記複数の中継局から受信した信号の強度を受信信号強度として測定する測定手段と、前記基地局における中継局の選択において、前記受信信号強度が閾値を超えていて前記基地局と前記通信端末とを中継する候補になる中継局候補が複数ある場合に、それぞれの中継局候補の中継能力の余裕と他の中継局候補の前記中継能力の余裕とを比較して、前記中継能力の余裕がより大きい中継局候補を、前記基地局と前記通信端末とを中継する中継局として選択する選択する選択手段と、を備える通信処理システム。【請求項7】通信端末と、基地局と、前記通信端末と前記基地局との通信を中継する複数の中継局と、を有する通信処理システムの通信処理方法であって、前記通信端末において、前記複数の中継局から受信した信号の強度を受信信号強度として測定する測定ステップと、前記基地局における中継局の選択において、前記受信信号強度が閾値を超えていて前記基地局と前記通信端末とを中継する候補になる中継局候補が複数ある場合に、それぞれの中継局候補の中継能力の余裕と他の中継局候補の前記中継能力の余裕とを比較して、前記中継能力の余裕がより大きい中継局候補を、前記基地局と前記通信端末とを中継する中継局として選択する選択する選択ステップと、を含む通信処理方法。」
第4 引用文献,引用発明及び技術的事項
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由で引用され、本願優先日前に公開された引用文献1(国際公開第2016/208097号)には以下の記載がある。(なお,下線は当審で付与した。)
(1)「[0030] 図1の例では、リレーUE2は、UE-to-Network Relayとして動作し、リモートUE1とセルラーネットワーク(基地局3及びコアネットワーク4)の間でのリレー動作をリモートUE1に提供する。言い換えると、リレーUE2は、リモートUE1に関するデータフロー(トラフィック)をリモートUE1とセルラーネットワーク(基地局3及びコアネットワーク4)との間で中継する。これにより、リモートUE1は、リレーUE2及びセルラーネットワーク(基地局3及びコアネットワーク4)を経由して外部ネットワーク6内のノード7と通信することができる。」
(2)「[0037] 図3は、分散リレー選択を伴う手順の一例(処理300)を示している。ブロック301では、リモートUE1及びリレーUE2は、リモートUE1がUE-to-Network Relay又はUE-to-UE RelayとしてのリレーUE2を発見するためのリレーディスカバリ手順を実行する。例えば、いわゆるアナウンスメント・モデル(モデルA)に従って、リレーUE2がディスカバリ信号を送信し、リモートUE1はリレーUE2からのディスカバリ信号を検出することによってリレーUE2を発見してもよい。」
(3)「[0041] 一方、図4は、集中リレー選択の一例(処理400)を示している。ブロック401では、ブロック301と同様に、リモートUE1及びリレーUE2は、リモートUE1がUE-to-Network Relay又はUE-to-UE RelayとしてのリレーUE2を発見するためのリレーディスカバリ手順を実行する。[0042] ブロック402では、リモートUE1は、測定報告を基地局3に送信する。測定報告は、ブロック401で発見された1又は複数のリレーUE2に関し、例えば、D2Dリンク品質(リモートUE1とリレーUE2の間)を含む。D2Dリンク品質は、例えば、受信電力、signal-to-interference plus noise ratio(SINR)、及びデータレート(又はスループット)のうち少なくとも1つを含んでもよい。さらに、測定報告は、既存の測定報告と同様に、リモートUE1と基地局3の間のセルラーリンク品質を含んでもよい。さらに、測定報告は、バックホールリンク品質(基地局3とリレーUE2の間)を含んでもよい。[0043] ブロック402では、基地局3は、報告されたリモートUE1とリレーUE2の間のD2Dリンク品質、報告されたリモートUE1と基地局3の間のリンク品質、及び基地局3とリレーUE2の間のバックホールリンク品質に基づいて、リモートUE1により発見された1又は複数のリレーUE2の中から、適切な少なくとも1つの特定のリレーUE2を選択する。基地局3とリレーUE2の間のバックホールリンク品質は、リモートUE1からの測定報告に含まれてもよい。あるいは、特にUE-to-Network Relayの場合に、バックホールリンク品質は、基地局3が各リレーUE2からアップリンク信号を測定することで取得してもよい。言い換えると、バックホールリンク品質は、各リレーUE2から送信されるアップリンク信号の基地局3での受信品質であってもよい。本実施形態に係るリレー選択基準(relay selection criterion)の詳細については後述する。[0044] ブロック404では、基地局3は、選択された特定のリレーUE2への接続をリモートUE1に指示する。ブロック405では、リモートUE1は、基地局3から指示に従って、特定のリレーUEとone-to-one D2D通信(ダイレクト通信)のためのコネクションを確立する。」
(4)「[0087] 本実施形態に係るリレー選択基準は、D2Dリンク品質(リモートUE1とリレーUE2の間)の時間変化に加えて、リレーUE2の負荷に関する他のパラメータを考慮する。リレーUE2の負荷に関するパラメータとして、例えば、各リレーUE2が既にリレーを務めているリモートUE1の数が考慮されてもよい。さらに又はこれに代えて、リレーUE2の負荷に関するパラメータとして、各リレーUE2それ自身の送信データ量(e.g., アップリンク送信データ量、又は送信されるべきアップリンクデータのバッファ量)が考慮されてもよい。これにより、各リレーUE2の負荷状況(又は通信状況)をリレー選択の際に考慮することで、特定のリレーUE2に負荷が集中することを回避でき、複数のリレーUE2の間で負荷を調整することができる。なお、本実施形態に係るリレー選択基準は、第2及び第3の実施形態と同様に、バックホールリンク品質の時間変化をさらに考慮してもよいし、D2Dリンク品質それ自体(品質レベル)及びバックホールリンク品質それ自体(品質レベル)をさらに考慮してもよい。[0088] 図9は、本実施形態に係るリレー選択エンティティ(e.g., リモートUE1、基地局3、又はD2Dコントローラ5)によって行われるリレー選択手順の一例(処理900)を示すフローチャートである。ブロック901での処理は、図5のブロック501、図6のブロック601、又は図7のブロック701における処理と同様である。ブロック902では、リレー選択エンティティは、各リレーUE2の負荷(e.g., 接続済みのリモートUE数、又は送信データ量)を取得する。ブロック903では、リレー選択エンティティは、D2Dリンク品質の時間変化および各リレーUEの負荷を考慮するリレー選択基準に基づいて、1又は複数のリレーUE2の中からリモートUE1に適した少なくとも1つの特定のリレーUE2を選択する。」
引用文献1の上記記載,及び通信分野における技術常識を考慮すると,次のことがいえる。
ア 上記「(1)」の段落[0030]の「リレーUE2は、リモートUE1に関するデータフロー(トラフィック)をリモートUE1とセルラーネットワーク(基地局3及びコアネットワーク4)との間で中継する。」との記載によれば,リレーUE2は,リモートUE1と基地局3との間でデータフロー(トラフィック)を中継するといえる。また,上記「(2)」の段落[0037]の「リレーUE2がディスカバリ信号を送信し、リモートUE1はリレーUE2からのディスカバリ信号を検出することによってリレーUE2を発見してもよい。」との記載,及び上記「(3)」の段落[0042]の「リモートUE1は、測定報告を基地局3に送信する。測定報告は、・・・(中略)・・・D2Dリンク品質(リモートUE1とリレーUE2の間)を含む。D2Dリンク品質は、・・・(中略)・・・受信電力・・・(中略)・・・を含んでもよい。」との記載によれば,リモートUE1はリレーUE2からのディスカバリ信号を検出するものであり,リモートUE1は受信電力を含むD2Dリンク品質を含む測定報告を基地局3に送信するといえる。言い換えると,基地局3は,リレーUE2からのディスカバリ信号を検出したリモートUE1から,受信電力を含むD2Dリンク品質を含む測定報告を受信するといえる。
さらに,上記「(3)」の段落[0043]の「基地局3は、・・・(中略)・・・リモートUE1により発見された1又は複数のリレーUE2の中から、適切な少なくとも1つの特定のリレーUE2を選択する。」との記載によれば,リモートUE1は複数のリレーUE2を発見するものであるといえる。また、上記「(4)」の段落[0087]の「リレー選択基準は、・・・(中略)・・・D2Dリンク品質それ自体(品質レベル)・・・(中略)・・・をさらに考慮してもよい。」との記載によれば,D2Dリンク品質それ自体はリレー選択基準において考慮されるものであるといえる。
してみれば,基地局3は,リモートUE1と基地局3との間でデータフロー(トラフィック)を中継するリレーUE2からのディスカバリ信号を検出したリモートUE1から,受信電力を含むD2Dリンク品質を含む測定報告を受信するものであり,リモートUE1は複数のリレーUE2を発見するものであり,D2Dリンク品質それ自体はリレー選択基準において考慮されるものであるといえる。
イ 上記「(4)」の段落[0088]の「リレー選択エンティティ(e.g., リモートUE1、基地局3、又はD2Dコントローラ5)によって行われるリレー選択手順の一例(処理900)を示す・・・(中略)・・・リレー選択エンティティは、各リレーUE2の負荷(e.g., 接続済みのリモートUE数、又は送信データ量)を取得する。・・・(中略)・・・リレー選択エンティティは、D2Dリンク品質の時間変化および各リレーUEの負荷を考慮するリレー選択基準に基づいて、1又は複数のリレーUE2の中からリモートUE1に適した少なくとも1つの特定のリレーUE2を選択する。」との記載によれば,基地局3は,各リレーUE2の負荷を取得するものであり,負荷はリレー選択基準において考慮されるものであるといえる。
ウ 上記「(4)」の段落[0088]の「リレー選択エンティティ(e.g., リモートUE1、基地局3、又はD2Dコントローラ5)によって行われるリレー選択手順の一例(処理900)を示す・・・(中略)・・・リレー選択エンティティは、D2Dリンク品質の時間変化および各リレーUEの負荷を考慮するリレー選択基準に基づいて、1又は複数のリレーUE2の中からリモートUE1に適した少なくとも1つの特定のリレーUE2を選択する。」との記載によれば,基地局3は,リレー選択基準に基づいて複数のリレーUE2の中からリモートUE1に適した少なくとも1つの特定のリレーUE2を選択するものであるといえる。
したがって,上記「ア」ないし「ウ」を総合すると,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という)が記載されていると認められる。
「リモートUE1と基地局3との間でデータフロー(トラフィック)を中継するリレーUE2からのディスカバリ信号を検出したリモートUE1から,受信電力を含むD2Dリンク品質を含む測定報告を受信するものであり,リモートUE1は複数のリレーUE2を発見するものであり,D2Dリンク品質それ自体はリレー選択基準において考慮されるものであり,各リレーUE2の負荷を取得するものであり,負荷はリレー選択基準において考慮されるものであり,リレー選択基準に基づいて複数のリレーUE2の中からリモートUE1に適した少なくとも1つの特定のリレーUE2を選択するものである,基地局3。」
2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由で引用され,本願優先日前に公開された引用文献2(特開2012-222437号公報)には,以下の事項が記載されている。(なお,下線は当審で付与した。)
「【0195】管理サーバ10の接続処理部101は、参加要求情報から、端末IDと、周辺端末IDと、中継器IDと、リンク品質を抽出する。接続処理部101は、それらの情報をセットで端末管理テーブル111に登録するよう、テーブル処理部105に指示する(S601)。【0196】接続処理部101は、中継器管理テーブル112を参照し、参加要求情報に記載の中継器30のうち、収容可能端末数が「0」より大きい中継器30が存在するか否かを判定する(S602)。【0197】収容可能端末数が「0」より大きい中継器30が1つ以上存在する場合(S602:YES)、接続処理部101は、それらの中継器30のうち、収容可能端末数が最も多い中継器30を参加要求元の端末40の接続先として選択する(S603)。なお、接続処理部101は、リンク品質が最も良い中継器30を選択してもよいし、中継回数が最も少ない中継器30を選択してもよいし、あるいは、それらを組み合わせて最適な中継器30を選択してもよい。」
上記記載によれば,引用文献2には,次の技術的事項が記載されていると認められる。
「管理サーバ10の接続処理部101は、収容可能端末数が「0」より大きい中継器30が1つ以上存在する場合、それらの中継器30のうち、収容可能端末数が最も多い中継器30を参加要求元の端末40の接続先として選択する。」
3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由で引用され,本願優先日前に公開された引用文献3(Sony,Considerations on ProSe Relays Selection(当審仮訳:ProSeリレー選択についての検討),3GPP TSG-SA WG2 #105 S2-143134,2014年10月 8日)には,以下の事項が記載されている。(なお,下線は当審で付与した。)
「a) In the UE-network relay selection the UE should select a relay that can provide the best connectivity to the network (type and available bandwidth). This is especially important in a large file transfer or in a video streaming scenario.」(第3頁第23行ないし第25行)
(当審仮訳:a) UE-ネットワークのリレー選択では,UEは,ネットワークへの最適な接続(タイプと利用可能な帯域幅)を提供できるリレーを選択すべきである。このことは大きなファイル転送やビデオストリーミングのシナリオでは特に重要である。)
上記記載によれば,引用文献3には,次の技術的事項が記載されていると認められる。
「UE-ネットワークのリレー選択では,UEは,ネットワークへの最適な接続(タイプと利用可能な帯域幅)を提供できるリレーを選択すべきである。」
4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由で引用され,本願優先日前に公開された引用文献4(米国特許出願公開第2010/0167743号明細書)には,以下の事項が記載されている。(なお,下線は当審で付与した。)
(1)「[0027]・・・(中略)・・・The selection of UEs to act as relay stations may be based on various criteria.[0028]In one design, the eNB may select a set of UEs with good channel conditions for the eNB to act as relay stations.」
(当審仮訳:[0027]・・・(中略)・・・リレー局として動作するUEの選択は,種々の基準に基づいてもよい。
[0028]1つの設計では,eNBは,eNBに対する良好なチャネル条件を持つUEの1つのセットをリレー局として動作するよう選択してもよい。)
(2)「[0030]・・・(中略)・・・UEs with good power supply capability may report this capability to the eNB. The eNB may then select all or a subset of the UEs with good power supply capability to act as relay stations.」
(当審仮訳:[0030]・・・(中略)・・・良好な電力供給能力を有するUEは,この能力をeNBに報告してもよい。その後,基地局は,中継局として動作するように良好な電力供給能力を有するUEのすべて又はサブセットを選択してもよい。)
上記記載によれば,引用文献4には,次の技術的事項が記載されていると認められる。
「リレー局として動作するUEの選択は,種々の基準に基づいてもよく,eNBは,eNBに対する良好なチャネル条件を持つUEの1つのセットをリレー局として動作するよう選択してもよく,良好な電力供給能力を有するUEは,この能力をeNBに報告してもよく,基地局は,中継局として動作するように良好な電力供給能力を有するUEのすべて又はサブセットを選択してもよい。」
第5 対比及び判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
ア 引用発明の「リモートUE1」は本願発明1の「通信端末」に含まれ,引用発明の「基地局3」は本願発明1の「基地局」に相当する。また,引用発明の「データフロー(トラフィック)」は本願発明1の「通信」に含まれる。そして,引用発明の「リモートUE1と基地局3との間でデータフロー(トラフィック)を中継する」ことは,本願発明1の「通信端末と基地局との通信を中継する」ことに含まれるから,引用発明の「リレーUE2」は,本願発明1の「中継局」に含まれる。
イ 引用発明の「リレーUE2からのディスカバリ信号を検出したリモートUE1から,受信電力を含むD2Dリンク品質を含む測定報告を受信するもの」であることについて,リモートUE1がディスカバリ信号を検出する際に,ディスカバリ信号を受信することは明らかであり,「受信電力」が,リモートUE1がディスカバリ信号を受信した際の受信電力であることも明らかである。そして,引用発明の「受信電力」は本願発明1の「信号の強度」に含まれる。そうすると,引用発明の「リモートUE1」からの測定報告に含まれるD2Dリンク品質に含まれる「受信電力」は,本願発明1の「前記通信端末が受信した信号の強度」に含まれる。
そして,引用発明の「リレーUE2からのディスカバリ信号を検出したリモートUE1から,受信電力を含むD2Dリンク品質を含む測定報告を受信するものであり,リモートUE1は複数のリレーUE2を発見するもの」であることについて,リモートUE1はディスカバリ信号を検出して複数のリレーUE2を発見するのであるから,「受信電力を含むD2Dリンク品質」が複数のリレーUE2のそれぞれに対応付いていることは明らかである。また,引用発明において「D2Dリンク品質それ自体はリレー選択基準において考慮されるもの」であり,「基地局3」が「リレー選択基準に基づいて複数のリレーUE2の中からリモートUE1に適した少なくとも1つの特定のリレーUE2を選択する」のであるから,「基地局3」が複数のリレーUE2の中からD2Dリンク品質を考慮して特定のリレーUE2を選択するために,リモートUE1から,複数のリレーUE2のそれぞれに対応付いた受信電力を含むD2Dリンク品質を含む測定報告を受信すること,言い換えれば,リモートUE1からの測定報告を,複数のリレーUE2のそれぞれに対応付いた受信電力を含むD2Dリンク品質として受信することは明らかである。さらに,引用発明の「基地局3」が,「受信電力を含むD2Dリンク品質を含む測定報告を受信する」ための手段を備えることも明らかである。
してみれば,本願発明1の「通信端末と基地局との通信を中継する複数の中継局から前記通信端末が受信した信号の強度を、前記複数の中継局のそれぞれに対応付いた受信信号強度として受信する受信手段」を備える「基地局」と,引用発明の「リモートUE1と基地局3との間でデータフロー(トラフィック)を中継するリレーUE2からのディスカバリ信号を検出したリモートUE1から,受信電力を含むD2Dリンク品質を含む測定報告を受信するものであり,リモートUE1は複数のリレーUE2を発見するものであり,D2Dリンク品質それ自体はリレー選択基準において考慮されるもの」である「基地局3」とは,通信端末と基地局との通信を中継する複数の中継局から前記通信端末が受信した信号の強度を,前記複数の中継局のそれぞれに対応付いた受信信号強度として受信する受信手段を備える基地局である点で共通する。
ウ 引用発明の「基地局3」は,「リレー選択基準に基づいて複数のリレーUE2の中からリモートUE1に適した少なくとも1つの特定のリレーUE2を選択するもの」である。ここで,「リレーUE2」は「リモートUE1と基地局3との間でデータフロー(トラフィック)を中継する」ものであり,「受信電力を含むD2Dリンク品質」それ自体は「リレー選択基準において考慮されるもの」であることを考慮すれば,「基地局3」は,「受信電力を含むD2Dリンク品質」が考慮される「リレー選択基準に基づいて」,「リモートUE1と基地局3との間でデータフロー(トラフィック)を中継する」「リレーUE2を選択するもの」といえる。そして,引用発明の「基地局3」が,「リレー選択基準に基づいて複数のリレーUE2の中からリモートUE1に適した少なくとも1つの特定のリレーUE2を選択する」ための手段を備えることは明らかである。
してみれば,本願発明1の「前記受信信号強度が閾値を超えていて前記基地局と前記通信端末とを中継する候補になる中継局候補が複数ある場合に、前記複数の中継局候補に対応付けて記憶されている、それぞれの中継局候補の前記中継能力の余裕と他の中継局候補の前記中継能力の余裕とを比較して、前記中継能力の余裕がより大きい中継局候補を、前記基地局と前記通信端末とを中継する中継局として選択する選択手段」を備える「基地局」と,引用発明の「リレー選択基準に基づいて複数のリレーUE2の中からリモートUE1に適した少なくとも1つの特定のリレーUE2を選択するものである」,「基地局3」とは,受信信号強度に基づいて,基地局と通信端末とを中継する中継局を選択する選択手段を備える基地局である点で共通する。
したがって,上記「ア」ないし「ウ」を総合すれば,本願発明1と引用発明は,以下の点で一致し,また相違する。
<一致点>
「通信端末と基地局との通信を中継する複数の中継局から前記通信端末が受信した信号の強度を、前記複数の中継局のそれぞれに対応付いた受信信号強度として受信する受信手段と、受信信号強度に基づいて、基地局と通信端末とを中継する中継局を選択する選択手段と、を備える基地局。」
<相違点>
本願発明1は,基地局が「前記複数の中継局のそれぞれから中継能力の余裕を示す情報を受信して、各中継局に対応付けて記憶する記憶手段」を備え,選択手段が,「前記受信信号強度が閾値を超えていて前記基地局と前記通信端末とを中継する候補になる中継局候補が複数ある場合に、前記複数の中継局候補に対応付けて記憶されている、それぞれの中継局候補の前記中継能力の余裕と他の中継局候補の前記中継能力の余裕とを比較して、前記中継能力の余裕がより大きい中継局候補を、前記基地局と前記通信端末とを中継する中継局として選択する」ものであるのに対して,引用発明においては当該発明特定事項について特定されていない点。
(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
上記「第4」の「2」ないし「4」に説示したとおり,引用文献2には「管理サーバ10の接続処理部101は、収容可能端末数が「0」より大きい中継器30が1つ以上存在する場合、それらの中継器30のうち、収容可能端末数が最も多い中継器30を参加要求元の端末40の接続先として選択する。」という技術的事項が記載されており,引用文献3には「UE-ネットワークのリレー選択では,UEは,ネットワークへの最適な接続(タイプと利用可能な帯域幅)を提供できるリレーを選択すべきである。」という技術的事項が記載されており,引用文献4には「リレー局として動作するUEの選択は,種々の基準に基づいてもよく,eNBは,eNBに対する良好なチャネル条件を持つUEの1つのセットをリレー局として動作するよう選択してもよく,良好な電力供給能力を有するUEは,この能力をeNBに報告してもよく,基地局は,中継局として動作するように十分な電力供給能力を有するUEのすべて又はサブセットを選択してもよい。」という技術的事項が記載されている。
しかしながら,少なくとも,上記相違点のうち,選択手段が「前記受信信号強度が閾値を超えていて前記基地局と前記通信端末とを中継する候補になる中継局候補が複数ある場合に、前記複数の中継局候補に対応付けて記憶されている、それぞれの中継局候補の前記中継能力の余裕と他の中継局候補の前記中継能力の余裕とを比較して、前記中継能力の余裕がより大きい中継局候補を、前記基地局と前記通信端末とを中継する中継局として選択する」ものであるという発明特定事項は,当該引用文献2ないし引用文献4には記載も示唆もされておらず,また通信分野における周知技術であるともいえない。
よって,引用発明において,上記相違点に係る構成とすることは,当業者といえども,容易に想到し得たとはいえない。
したがって,本願発明1は,当業者であっても,引用発明並びに引用文献2ないし引用文献4に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 本願発明2ないし7について
本願発明2ないし4は,本願発明1の発明特定事項を全て備えるものであり,本願発明1と同様の理由により,本願発明2ないし4は,当業者であっても引用発明並びに引用文献2ないし引用文献4に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
また,本願発明5は,本願発明1に対応する「基地局」の「制御プログラム」に関する発明であり,本願発明1の発明特定事項に対応する発明特定事項を全て備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても引用発明並びに引用文献2ないし引用文献4に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
また,本願発明6は,「通信端末」と「基地局」と「複数の中継局」とを備える「通信処理システム」の発明であり,少なくとも,本願発明1の相違点のうち,選択手段が「前記受信信号強度が閾値を超えていて前記基地局と前記通信端末とを中継する候補になる中継局候補が複数ある場合に、前記複数の中継局候補に対応付けて記憶されている、それぞれの中継局候補の前記中継能力の余裕と他の中継局候補の前記中継能力の余裕とを比較して、前記中継能力の余裕がより大きい中継局候補を、前記基地局と前記通信端末とを中継する中継局として選択する」ものであることに対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても引用発明並びに引用文献2ないし引用文献4に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
また,本願発明7は,本願発明6に対応する方法の発明であり,本願発明6の発明特定事項に対応する発明特定事項を全て備えるものであるから,本願発明6と同様の理由により,当業者であっても引用発明並びに引用文献2ないし引用文献4に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
第6 原査定についての判断
令和3年9月16日にされた手続補正により,本願発明1ないし7はいずれも,少なくとも,選択手段が「前記受信信号強度が閾値を超えていて前記基地局と前記通信端末とを中継する候補になる中継局候補が複数ある場合に、前記複数の中継局候補に対応付けて記憶されている、それぞれの中継局候補の前記中継能力の余裕と他の中継局候補の前記中継能力の余裕とを比較して、前記中継能力の余裕がより大きい中継局候補を、前記基地局と前記通信端末とを中継する中継局として選択する」ものであるという発明特定事項,又は対応する発明特定事項を備えるものとなっている。してみれば,上記「第5」の「1」及び「2」で説示したとおり,当業者であっても,本願発明1,本願発明4ないし本願発明7は,引用発明に基いて,本願発明2及び本願発明3は,引用発明並びに引用文献2ないし引用文献4に記載された技術的事項に基いて,それぞれ容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって,原査定の理由を維持することはできない。
第7 当審拒絶理由について
当審では,令和3年7月21日付けで,発明の詳細な説明には,令和2年12月8日提出の手続補正書に記載の請求項2のように,「前記複数の中継局のそれぞれから」,中継局の能力情報として「中継能力の余裕を示す情報」である「当該中継局にさらに接続可能な通信端末の数」を受信することは記載されておらず,また,発明の詳細な説明には,令和2年12月8日提出の手続補正書に記載の請求項3のように,「前記複数の中継局のそれぞれから」,中継局の能力情報として「中継能力の余裕を示す情報」である「当該中継局のさらに使用可能な伝送帯域幅」を受信することは記載されていない(特許法第36条第6項第1号)との拒絶の理由を通知しているが,令和3年9月16日にされた手続補正により,当該請求項2及び請求項3が削除された結果,この拒絶理由は解消した。
第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-016922