特許拒絶査定不服審判
2020-016511
電子デバイス用マイクロヒンジ
- 審判番号
- 2020-016511
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-225601外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年12月01日
- 審決日
- 2021年08月12日
- 公報発行日
- 2022年02月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】インテル・コーポレーション
- 【請求人代理人】龍華国際特許業務法人
- 分類
- P18 .113-Z (G09F) / P18 .121-Z (G09F) / P18 .575-Z (G09F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第50条の2、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-225601「電子デバイス用マイクロヒンジ」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 4月25日出願公開、特開2019- 66862〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)2月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年(平成26年)3月29日 米国)を国際出願日とする外国語特許出願である特願2016-553368号の一部を平成30年11月30日に新たな特許出願(外国語書面出願)としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年12月 5日 :翻訳文の提出
平成30年12月28日 :手続補正書の提出
令和 2年 1月30日付け:拒絶理由通知書(特許法50条の2の通知 を伴う拒絶理由通知)
令和 2年 5月 1日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 7月20日付け:補正の却下の決定
同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 2年 8月 4日 :原査定の謄本の送達
令和 2年12月 1日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 3年 2月26日付け:前置報告書
令和 3年 5月 7日 :上申書の提出
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年12月1日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についての補正である。本件補正前(平成30年12月28日に提出された手続補正書による補正の後をいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載及び本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ次のとおりである(下線は補正箇所を示す。)。
(1)本件補正前
「【請求項1】
電子デバイスの第1の部分を当該電子デバイスの第2の部分に結合するヒンジであって、
前記ヒンジは、
前記電子デバイスの前記第1の部分に結合する第1のアタッチメントと、
前記電子デバイスの前記第2の部分に結合する第2のアタッチメントと、
第3のアタッチメントを有する、前記第1のアタッチメント及び前記第2のアタッチメントの間の第1のリンクと、
前記第1のアタッチメント及び前記第2のアタッチメントの間の第2のリンクと、
を備え、
前記第2のリンクは、第1の支持部及び第2の支持部を有し、
前記第1のリンクの前記第3のアタッチメントは、前記第1の支持部及び前記第2の支持部の間に受容され、
前記第1のリンクは、前記第1の支持部、前記第2の支持部及び前記第3のアタッチメントを通って延在する軸周りに回転する、ヒンジ。」
(2)本件補正後
「【請求項1】
電子デバイスの第1の部分を当該電子デバイスの第2の部分に結合するヒンジであって、
前記ヒンジは、
前記電子デバイスの前記第1の部分に結合する第1のアタッチメントと、
前記電子デバイスの前記第2の部分に結合する第2のアタッチメントと、
第3のアタッチメントを有する、前記第1のアタッチメント及び前記第2のアタッチメントの間の第1のリンクと、
前記第1のアタッチメント及び前記第2のアタッチメントの間の第2のリンクと、
を備え、
前記第2のリンクは、第1の支持部及び第2の支持部を有し、
前記第1のリンクの前記第3のアタッチメントは、前記第1の支持部及び前記第2の支持部の間に受容され、
前記第1のリンクは、前記第1の支持部、前記第2の支持部及び前記第3のアタッチメントを通って延在する軸周りに回転し、
前記第1のリンクと前記第2のリンクとは、前記第1のアタッチメントと前記第2のアタッチメントとの連結方向に積層される、ヒンジ。」
2 本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した事項である「第1のリンク」及び「第2のリンク」について、「前記第1のリンクと前記第2のリンクとは、前記第1のアタッチメントと前記第2のアタッチメントとの連結方向に積層される」との記載を追加して、その態様を限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討を行う。
3 独立特許要件についての判断
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2)引用文献
以下に示す引用文献1は、原査定の拒絶の理由に引用された文献であり、公開日は本願の優先日より前である。
引用文献1:特開2008-228249号公報
(3)引用文献に記載された発明
ア 引用文献1の記載事項
引用文献1には、以下の記載がある。下線は当合議体が付した。
「【0023】
以下、本発明を折り畳み式携帯電話機に実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
図1乃至図3に示す如く、本発明に係る折り畳み式携帯電話機は、複数の操作キー(11)~(11)を具えた第1筐体(1)と、メインディスプレイ(21)及びサブディスプレイ(22)を具えた第2筐体(2)とを、両筐体(1)(2)の開閉操作に応じてフレキシブルに屈曲するヒンジ機構(3)を介して互いに連結して構成される。
【0024】
該折り畳み式携帯電話機の通話時やメール機能の使用時には、図2に示す如く第1筐体(1)及び第2筐体(2)を略160度の開き角度まで開くことが可能であると共に、不使用時には、図1に示す如く、第1筐体(1)及び第2筐体(2)の表面どうしを互いに突き合わせて2つに折り畳むことが可能となっている。
又、該折り畳み式携帯電話機は、テレビジョン放送の受信機能を具えており、テレビジョン放送の受信時には、図3(a)及び(b)に示す如く、第1筐体(1)及び第2筐体(2)を略320度の開き角度まで開くことにより、該折り畳み式携帯電話機を卓上に設置した状態で、テレビジョン放送の鑑賞が可能となっている。
【0025】
図7に示す如く、ヒンジ機構(3)は、第1筐体(1)と第2筐体(2)を互いに連結すると共に両筐体(1)(2)の開閉操作に応じて屈曲変形するチェーン機構(30)と、該チェーン機構(30)の内部を貫通して両筐体(1)(2)の開閉操作に応じて柔軟に屈曲変形する一対の金属製の薄板(33a)(33b)と、チェーン機構(30)の周囲を覆う柔軟なカバー部材(38)とから構成される。
各薄板(33a)(33b)は、チェーン機構(30)の屈曲変形時に伸縮を生じない中立面から外れた該チェーン機構(30)内の所定位置をそれぞれ貫通している。
図7において、内周側に位置する薄板(33b)は、その一端が第1筐体(1)の基端部に固定されると共に、他端が第2筐体(2)の基端部に形成された溝部(25)に挿入されている。一方、外周側に位置する薄板(33a)は、その一端が第2筐体(2)の基端部に固定されると共に、他端が第1筐体(2)の基端部に形成された溝部(13)に挿入されている。又、各薄板(33a)(33b)の他端には、弾性部材からなる凸部(39a)(39b)がそれぞれ形成されている。
【0026】
第1筐体(1)の溝部(13)には、薄板(33a)の凸部(39a)を係止すべき第1凹部(14a)、第2凹部(14b)及び第3凹部(14c)が、薄板(33a)の長手方向に沿って形成されており、第2筐体(2)の溝部(25)には、薄板(33b)の凸部(39b)
を係止すべき第1凹部(26a)、第2凹部(26b)及び第3凹部(26c)が、薄板(33b)の長手方向に沿って形成されている。
又、チェーン機構(30)の中立面に沿う該チェーン機構(30)の中央部には、第1筐体(1)及び第2筐体(2)の内部に配備された回路基板(12)(24)どうしを互いに電気的に接続するためのフレキシブルフラットケーブル(19)が挿通されている。
【0027】
図4に示す如く、チェーン機構(30)は、チェーン機構(30)の長手方向に沿って交互に配備された複数の内側リンク(32)及び外側リンク(31)と、該長手方向に沿う内側リンク(32)の両端部と外側リンク(31)の両端部とを互いに連結する連結ピン(34)とから構成され、該連結ピン(34)によって、内側リンク(32)と外側リンク(31)とが、該連結ピン(34)を中心として回動可能に連結されている。
【0028】
図5(a)及び(b)に示す如く、外側リンク(31)は、互いに対向する一対のトラック型の側板(31a)(31a)と、両側板(31a)(31a)の間を直線状に伸びる一対の連繋部(31b)(31b)とから構成される。
各側板(31a)(31a)の長手方向の両端部には、連結ピン(34)が嵌入されるべき嵌入孔(35)(35)がそれぞれ形成されると共に、両連繋部(31b)(31b)にはそれぞれ、図4に示す各薄板(33a)(33b)が挿通されるべきガイド孔(36)(36)が開設されている。又、図7に示すフレキシブルフラットケーブル(19)は、両連繋部(31b)(31b)の間の空隙(37)内に挿通されることになる。
【0029】
又、図6(a)及び(b)に示す如く、内側リンク(32)は、互いに対向する一対のトラック型の側板(32a)(32a)と、両側板(32a)(32a)の間を直線状に伸びる一対の連繋部(32b)(32b)とから構成される。
各側板(32a)(32a)の長手方向の両端部には、連結ピン(34)が嵌入されるべき嵌入孔(35)(35)がそれぞれ形成されると共に、両連繋部(32b)(32b)にはそれぞれ、図4に示す各薄板(33a)(33b)が挿通されるべきガイド孔(36)(36)が開設されている。又、図7に示すフレキシブルフラットケーブル(19)は、両連繋部(32b)(32b)の間の空隙(37)内に挿通されることになる。
【0030】
図7は、携帯電話機の閉状態を示しており、この状態で、内周側の薄板(33b)の一端に設けられた凸部(39b)が、第2筐体(2)の溝部(25)の先端部側に形成された第1凹部(26a)に係合すると共に、外周側の薄板(33a)の一端に設けられた凸部(39a)が、第1筐体(1)の溝部(13)の基端部側に形成された第3凹部(14c)に係合して、図1に示す如く、第1筐体(1)及び第2筐体(2)の表面どうしを互いに突き合わせて2つに折り畳んだ状態に保持されている。
【0031】
図1及び図7に示す閉状態から、通話或いはメール機能を利用すべく、両筐体(1)(2)に開操作が加えられると、内周側の薄板(33b)の凸部(39b)が、溝部(25)の第1凹部(26a)に押圧され、該第1凹部(26a)から離脱する方向に弾性変形する。同時に、外周側の薄板(33a)の凸部(39a)が、溝部(13)の第3凹部(14c)に押圧され、該第3凹部(14c)から離脱する方向に弾性変形する。
これにより、内周側の薄板(33b)の凸部(39b)と第1凹部(26a)との係合、及び外周側の薄板(33a)の凸部(39a)と第3凹部(14c)との係合が共に解除され、両薄板(33a)(33b)の溝部(25)(13)内でのスライドが可能となる。
【0032】
そして、開操作に応じてチェーン機構(30)が屈曲し、これに伴う両筐体(1)(2)の開き角度の変化に応じて、図7に示す内周側の薄板(33b)の一端が、基端部側に向けて第2筐体(2)の溝部(25)内をスライドすると共に、外周側の薄板(33b)の一端が、先端部側に向けて第1筐体(1)の溝部(13)内をスライドすることになる。
両筐体(1)(2)の開き角度が略160度に至ると、図8に示す如く、内周側の薄板(33b)の凸部(39b)は、第2筐体(2)の溝部(25)の中央部に形成された第2凹部(26b)との対向位置に達し、弾性復帰して該第2凹部(26b)と係合する。同時に、外周側の薄板(33a)の凸部(39a)は、第1筐体(1)の溝部(13)の中央部に形成された第2凹部(14b)との対向位置に達し、弾性復帰して該第2凹部(14b)と係合する。
この結果、両筐体(1)(2)は、通話或いはメール機能の使用に適した図2に示す開き角度姿勢に保持されることになる。
【0033】
図2及び図8に示す通話或いはメール機能の使用に適した開き角度姿勢から、テレビジョン放送を鑑賞すべく、両筐体(1)(2)に更に開操作が加えられると、内周側の薄板(33b)の凸部(39b)が、溝部(25)の第2凹部(26b)に押圧され、該第2凹部(26b)から離脱する方向に弾性変形する。同時に、外周側の薄板(33a)の凸部(39a)が、溝部(13)の第2凹部(14b)に押圧され、該第2凹部(14b)から離脱する方向に弾性変形する。
これにより、内周側の薄板(33b)の凸部(39b)と第2凹部(26b)との係合、及び外周側の薄板(33a)の凸部(39a)と第2凹部(14b)との係合が共に解除され、両筐体(1)(2)の開閉に応じた両薄板(33a)(33b)の屈曲変形が許容されることになる。
【0034】
そして、開操作に応じてチェーン機構(30)が屈曲し、これに伴う両筐体(1)(2)の開き角度の変化に応じて、図8に示す内周側の薄板(33b)の一端が、基端部側に向けて第2筐体(2)の溝部(25)内をスライドすると共に、外周側の薄板(33b)の一端が、先端部側に向けて第1筐体(1)の溝部(13)内をスライドすることになる。
両筐体(1)(2)の開き角度が略320度に至ると、図9に示す如く、内周側の薄板(33a)の凸部(39a)が、第1筐体(1)の溝部(13)の先端部に形成された第1凹部(14a)と対向位置に達し、弾性復帰して該第1凹部(14a)と係合する。同時に、外周側の薄板(33b)の凸部(39b)が、第2筐体(2)の溝部(25)の基端部に形成された第3凹部(26c)との対向部に達し、弾性復帰して該第3凹部(26c)と係合する。
この結果、両筐体(1)(2)は、図3(a)及び(b)に示す如く、メインディスプレイ(21)を外側に向けて卓上に設置することが可能な状態に保持されることになる。」
「【図1】
[図:0001381417000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001381417000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001381417000003.jpg]
」
「【図4】
[図:0001381417000004.jpg]
」
「【図5】
[図:0001381417000005.jpg]
」
「【図6】
[図:0001381417000006.jpg]
」
「【図7】
[図:0001381417000007.jpg]
」
「【図8】
[図:0001381417000008.jpg]
」
「【図9】
[図:0001381417000009.jpg]
」
【0027】~【0029】、図5及び図6を参酌しつつ図4を見ると、外側リンク(31)及び内側リンク(32)を連結したチェーン機構(30)は、外側リンク(31)の一対の側板(31a)(31a)の間に内側リンク(32)の一対の側板(32a)(32a)が入り、一対の側板(31a)(31a)と一対の側板(32a)(32a)が一部重なり合う状態で連結ピン(34)により連結されることで、外側リンク(31)及び内側リンク(32)が互いに回動可能であることが見てとれる(以下「図4記載事項」という。)。
【0025】を参酌しつつ図7~9を見ると、外側リンク(31)のうち最も第1筐体(1)に近い部材は第1筐体(1)に連結され、外側リンク(31)のうち最も第2筐体(2)に近い部材は第2筐体(2)に連結されることが見てとれる(以下「図7~9記載事項」という。)。
イ 引用発明の認定
引用文献1の前記アの記載事項をまとめると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「折り畳み式携帯電話機の第1筐体(1)と第2筐体(2)を連結するヒンジ機構(3)を構成するチェーン機構(30)であって(【0023】、【0025】)、
ヒンジ機構(3)は、第1筐体(1)と第2筐体(2)を互いに連結すると共に両筐体(1)(2)の開閉操作に応じて屈曲変形するチェーン機構(30)から構成され(【0025】)、
チェーン機構(30)は、チェーン機構(30)の長手方向に沿って交互に配備された複数の内側リンク(32)及び外側リンク(31)と、該長手方向に沿う内側リンク(32)の両端部と外側リンク(31)の両端部とを互いに連結する連結ピン(34)とから構成され、該連結ピン(34)によって、内側リンク(32)と外側リンク(31)とが、該連結ピン(34)を中心として回動可能に連結され(【0027】)、
外側リンク(31)は、互いに対向する一対のトラック型の側板(31a)(31a)と、両側板(31a)(31a)の間を直線状に伸びる一対の連繋部(31b)(31b)とから構成され、各側板(31a)(31a)の長手方向の両端部には、連結ピン(34)が嵌入されるべき嵌入孔(35)(35)がそれぞれ形成され(【0028】)、
内側リンク(32)は、互いに対向する一対のトラック型の側板(32a)(32a)と、両側板(32a)(32a)の間を直線状に伸びる一対の連繋部(32b)(32b)とから構成され、各側板(32a)(32a)の長手方向の両端部には、連結ピン(34)が嵌入されるべき嵌入孔(35)(35)がそれぞれ形成され(【0029】)、
外側リンク(31)の一対の側板(31a)(31a)の間に内側リンク(32)の一対の側板(32a)(32a)が入り、一対の側板(31a)(31a)と一対の側板(32a)(32a)が一部重なり合う状態で連結ピン(34)により連結されることで、外側リンク(31)及び内側リンク(32)が互いに回動可能であり(図4記載事項)、
外側リンク(31)のうち最も第1筐体(1)に近い部材は第1筐体(1)に連結され、外側リンク(31)のうち最も第2筐体(2)に近い部材は第2筐体(2)に連結される(図7~9記載事項)、
チェーン機構(30)。」
(4)対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「折り畳み式携帯電話機」、「第1筐体(1)」及び「第2筐体(2)」は、それぞれ、本件補正発明の「電子デバイス」、「第1の部分」及び「第2の部分」に相当する。
そして、引用発明の「チェーン機構(30)」は、「ヒンジ機構(3)」を構成する要素であって、「第1筐体(1)と第2筐体(2)を互いに連結する」ものであるから、本件補正発明の「ヒンジ」に相当する。
よって、本件補正発明と引用発明は、「電子デバイスの第1の部分を当該電子デバイスの第2の部分に結合するヒンジ」である点で一致する。
イ 引用発明は、「外側リンク(31)の一対の側板(31a)(31a)の間に内側リンク(32)の一対の側板(32a)(32a)が入り、一対の側板(31a)(31a)と一対の側板(32a)(32a)が一部重なり合う状態で連結ピン(34)により連結される」ものである。
ここで、「内側リンク(32)」の一部が「外側リンク(31)」の一部に入る形で「連結ピン(34)」により連結される構造からみると、引用発明における「一対の側板(32a)(32a)」を有する「内側リンク(32)」は、本件補正発明における「第3のアタッチメントを有する」「第1のリンク」に相当し、引用発明における「一対の側板(31a)(31a)」を有する「外側リンク(31)」は、本件補正発明における「第1の支持部及び第2の支持部を有」する「第2のリンク」に相当する。
そうすると、引用発明において、「外側リンク(31)の一対の側板(31a)(31a)の間に内側リンク(32)の一対の側板(32a)(32a)が入」ることは、本件補正発明において、「前記第1のリンクの前記第3のアタッチメントは、前記第1の支持部及び前記第2の支持部の間に受容され」ることに相当する。
ウ 引用発明の「外側リンク(31)のうち最も第1筐体(1)に近い部材」は、「第1筐体(1)に連結され」るものであるから、本件補正発明の「前記電子デバイスの前記第1の部分に結合する第1のアタッチメント」に相当する。
また、引用発明の「外側リンク(31)のうち最も第2筐体(2)に近い部材」は、「第2筐体(2)に連結され」るものであるから、本件補正発明の「前記電子デバイスの前記第2の部分に結合する第2のアタッチメント」に相当する。
エ 引用発明の「内側リンク(32)」は、「外側リンク(31)のうち最も第1筐体(1)に近い部材」と「外側リンク(31)のうち最も第2筐体(2)に近い部材」の間に存在する。よって、前記イも考慮すると、引用発明の「内側リンク(32)」は、本件補正発明の「第3のアタッチメントを有する、前記第1のアタッチメント及び前記第2のアタッチメントの間の第1のリンク」に相当する。
オ 引用発明の「外側リンク(31)」のうち、「最も第1筐体(1)に近い部材」と「最も第2筐体(2)に近い部材」の間に存在する部材は、前記イも考慮すると、本件補正発明の「前記第1のアタッチメント及び前記第2のアタッチメントの間の第2のリンク」であって、「第1の支持部及び第2の支持部を有」するものに相当する。
カ 引用発明の「チェーン機構(30)」は、「複数の内側リンク(32)及び外側リンク(31)」から構成されるものであるところ、前記ア~オの対応関係から、本件補正発明と引用発明は、「前記ヒンジは、前記電子デバイスの前記第1の部分に結合する第1のアタッチメントと、前記電子デバイスの前記第2の部分に結合する第2のアタッチメントと、第3のアタッチメントを有する、前記第1のアタッチメント及び前記第2のアタッチメントの間の第1のリンクと、前記第1のアタッチメント及び前記第2のアタッチメントの間の第2のリンクと、を備え、前記第2のリンクは、第1の支持部及び第2の支持部を有し、前記第1のリンクの前記第3のアタッチメントは、前記第1の支持部及び前記第2の支持部の間に受容され」る点で一致するといえる。
キ 引用発明は、「一対の側板(31a)(31a)と一対の側板(32a)(32a)が一部重なり合う状態で連結ピン(34)により連結されることで、外側リンク(31)及び内側リンク(32)が互いに回動可能であ」るものである。
ここで、引用発明の「内側リンク(32)」は、「連結ピン(34)」を軸として回動するものであり、「連結ピン(34)」は、「一対の側板(31a)(31a)と一対の側板(32a)(32a)」が重なり合う部分を貫通している。そして、前記ウで検討したとおり、引用発明において「一対の側板(31a)(31a)と一対の側板(32a)(32a)」が重なり合う部分は、本件補正発明における「第1の支持部及び第2の支持部」及び「第3のアタッチメント」に相当する。
よって、本件補正発明と引用発明は、「前記第1のリンクは、前記第1の支持部、前記第2の支持部及び前記第3のアタッチメントを通って延在する軸周りに回転」する点で一致する。
(5)一致点及び相違点
前記(4)の対比の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
ア 一致点
「電子デバイスの第1の部分を当該電子デバイスの第2の部分に結合するヒンジであって、
前記ヒンジは、
前記電子デバイスの前記第1の部分に結合する第1のアタッチメントと、
前記電子デバイスの前記第2の部分に結合する第2のアタッチメントと、
第3のアタッチメントを有する、前記第1のアタッチメント及び前記第2のアタッチメントの間の第1のリンクと、
前記第1のアタッチメント及び前記第2のアタッチメントの間の第2のリンクと、
を備え、
前記第2のリンクは、第1の支持部及び第2の支持部を有し、
前記第1のリンクの前記第3のアタッチメントは、前記第1の支持部及び前記第2の支持部の間に受容され、
前記第1のリンクは、前記第1の支持部、前記第2の支持部及び前記第3のアタッチメントを通って延在する軸周りに回転する、ヒンジ。」
イ 相違点
本件補正発明は、「前記第1のリンクと前記第2のリンクとは、前記第1のアタッチメントと前記第2のアタッチメントとの連結方向に積層される」ものであるのに対して、引用発明は、「内側リンク(32)」と「外側リンク(31)」が「第1筐体(1)」と「第2筐体(2)」の間で連結されているものの、「前記第1のアタッチメントと前記第2のアタッチメントとの連結方向に積層される」という構成を有するか不明である点。
(6)相違点についての判断
ア 「積層」の意味について
(ア)辞書的な意味
広辞苑第七版によると、「積層」の意味は「複数の層を積み重ねること。」である。さらに、「層」の意味は「かさなりをなすものの一つ。」である。
よって、本件補正発明における「積層」の辞書的な意味は「複数の物を積み重ねること」であると認められる。
(イ)外国語明細書における意味
本願の明細書において「積層」という用語が使用されているのは【0053】のみであり、外国語明細書の対応箇所とともに摘記すると、次のとおりである。
「【0053】
図4を参照すると、図4は、マイクロヒンジ26の実施形態を示す簡略化された正投影図である。いくつかのリンク32は、共に積層され、ベース部12、ディスプレイ部14、及び/又はキーボード部16の厚さとなってよい。例えば、ベース部12、ディスプレイ部14、及び/又はキーボード部16が比較的薄い場合、ベース部12、ディスプレイ部14、及び/又はキーボード部16が比較的厚い場合よりも、より少ないリンク32が共に積層されるために必要とされる。」
(外国語明細書の[0053])
「
[図:0001381417000010.jpg]
」
以上より、「積層」は「stack」の訳語であることは明らかであり、「stack」は、「複数の物を積み重ねること」を示す単語である。
(ウ)明細書及び図面を考慮して解釈した意味
前記(ア)及び(イ)より、「積層」の意味は明らかであるが、さらに念のため、本願の明細書及び図面を考慮してその意味を認定する。
本願の明細書において「積層」という用語が使用されているのは、前記(イ)で摘記した【0053】のみである。また、図4は次のとおりである。
「【図4】
[図:0001381417000011.jpg]
」
図4には、複数のリンク32が積み重ねられている状態が示されており、「積層」がその他の特殊な意味を持つことは記載も示唆もされていない。
よって、本件補正発明における「積層」の意味は、明細書及び図面を考慮して解釈しても、「複数の物を積み重ねること」であると認められる。
(エ)小括
前記(ア)~(ウ)より、「積層」という用語は、辞書的な意味においても、外国語明細書における意味においても、明細書及び図面を考慮して解釈した意味においても、単に「複数の物を積み重ねること」を示す程度のものであると認められる。
よって、前記相違点の「前記第1のリンクと前記第2のリンクとは、前記第1のアタッチメントと前記第2のアタッチメントとの連結方向に積層される」は、「前記第1のリンクと前記第2のリンクとは、前記第1のアタッチメントと前記第2のアタッチメントとの連結方向に積み重ねられる」の意味であると認められる。
以上の認定に基づき、相違点について判断を行う。
イ 引用発明について
(ア)引用発明は、「複数の内側リンク(32)及び外側リンク(31)」で構成された「チェーン機構(30)」であって、「外側リンク(31)の一対の側板(31a)(31a)の間に内側リンク(32)の一対の側板(32a)(32a)が入り、一対の側板(31a)(31a)と一対の側板(32a)(32a)が一部重なり合う状態」であるものである。(前記(3)イ)。
(イ)そして、このような状態のチェーン機構(30)は、引用文献1の図7~9に示されたように、第1筐体(1)から第2筐体(2)に向かって、外側リンク(31)の一対の側板(31a)(31a)の間に内側リンク(32)の一対の側板(32a)(32a)が入り、当該内側リンク(32)の一対の側板(32a)(32a)が次の外側リンク(31)の一対の側板(31a)(31a)の間に入り、当該次の外側リンク(31)の一対の側板(31a)(31a)の間に次の内側リンク(32)の一対の側板(32a)(32a)が入り・・・というように、複数の内側リンク(32)及び外側リンク(31)が一部重なり合って次々と連結されたものである。
(ウ)一部が重なり合って次々と連結されたものは、連結方向に「積み重ねられ」たものといえるから、引用発明は、「前記第1のリンクと前記第2のリンクとは、前記第1のアタッチメントと前記第2のアタッチメントとの連結方向に積み重ねられる」ものである。
したがって、前記相違点は、実質的な相違点ではない。
(7)審判請求人の主張について
ア 審判請求書について
審判請求人は令和2年12月1日付け審判請求書の「4.」「(2)」「(b)構成上の相違」において、「前記第1のリンクと前記第2のリンクとは、前記第1のアタッチメントと前記第2のアタッチメントとの連結方向に積層される」という構成が引用文献1に記載されていない旨の主張をしている。
しかしながら、前記(5)で検討したとおり、「前記第1のリンクと前記第2のリンクとは、前記第1のアタッチメントと前記第2のアタッチメントとの連結方向に積層される」という構成は、本件補正発明と引用発明の相違点であるものの、前記(6)で検討したとおり、実質的な相違点ではないから、審判請求人の主張は採用することができない。
イ 上申書について
(ア)審判請求人は令和3年5月7日付け上申書の「2.」「(b)構成上の相違」において、次の主張をしている。
「しかしながら、本願発明において、第1のリンクと第2のリンクとは、「積層」の本来の意味通りに積み重なって互いに当接している。例えば、実施形態においては、リンク32における結合リンクアタッチメント52(第3のアタッチメントに相当)の側の部分が第1のリンクであり、アタッチメント支持部58(第1の支持部、第2の支持部に相当)の側の部分が第2のリンクであり、これらの第1のリンクおよび第2のリンクはヒンジの結合方向において互いに当接している。
これに対し、引用発明1では、内側リンク32および外側リンク31が間隙を介して並べられているに過ぎず、積層されてはいない。」
(イ)しかしながら、「第1のリンク」と「第2のリンク」が「当接」していることは、本件補正後の請求項1に記載されておらず、本願の明細書及び図面にも、「複数のリンク32」が「当接」していることは明示されていないので、審判請求人の主張は請求項の記載に基づくものではない。
(ウ)仮に、請求項1の「積層」という用語に「当接」するという意味が含まれていたとしても、引用発明において、「連結ピン(34)」によって連結される「内側リンク(32)」と「外側リンク(31)」は互いに「当接」するものと認められるし、そうでないとしても、隣接する「内側リンク(32)」と「外側リンク(31)」を、筐体の開閉操作に応じて屈曲変形するために、互いに「当接」するように構成することは、当業者にとって自明な設計変更というべきである。
(エ)また、本願の図4のような複数の連結駒からなるフレキシブルな機構は、以下に示す特開平4-352902号公報や特開2005-312709号公報に記載されているように周知技術であるところ、このような周知の機構を引用発明に適用し、連結駒どうしの遊びを適宜調整して、互いに「当接」したものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
「特開平4-352902号公報の【図1】
[図:0001381417000012.jpg]
」
「特開2005-312709号公報の【図1】
[図:0001381417000013.jpg]
」
(オ)したがって、審判請求人の主張は採用することができない。
(8)独立特許要件についての判断のまとめ
よって、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができず、また、引用発明又は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 むすび
以上検討のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記第2で説示したとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1(1)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
本願発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができず、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
引用文献1:特開2008-228249号公報(前掲)
3 引用文献に記載された発明等
引用文献1には、前記第2の3(3)イにおいて記載したとおりの引用発明が記載されている。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明から「前記第1のリンクと前記第2のリンクとは、前記第1のアタッチメントと前記第2のアタッチメントとの連結方向に積層される」という構成を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明は、前記第2の3(5)アで示した一致点で一致し、両者に相違点はない。
よって、本願発明は、引用文献1に記載された発明であり、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができず、また、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-016511