特許拒絶査定不服審判
2020-016317
配列特異性およびDNA-結合親和度が変更された、合理設計メガヌクレアーゼ
- 審判番号
- 2020-016317
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-246447外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年11月27日
- 審決日
- 2022年04月11日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】デューク大学
- 【請求人代理人】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
- 分類
- P18 .14 -Z (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-246447「配列特異性およびDNA-結合親和度が変更された、合理設計メガヌクレアーゼ」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月23日出願公開、特開2019- 77698〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 本願の経緯
本願は、平成18年10月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年10月18日、米国)を国際出願日とする特願2008-536805号の一部を、平成24年5月14日に新たな特許出願である特願2012-110691号とし、さらにその一部を平成24年6月1日に新たな特許出願である特願2012-125663号とし、さらにその一部を平成28年8月30日に新たな特許出願である特願2016-167826号とし、さらにその一部を平成29年9月15日に新たな特許出願である特願2017-177739号とし、さらにその一部を平成30年12月28日に新たな特許出願としたものであって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
平成31年 1月25日 :手続補正書
令和 1年11月22日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 7月21日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 2年11月27日 :審判請求書
令和 2年12月23日 :審判請求書の手続補正書(方式)
第2 本願発明
平成31年1月25日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、以下のとおりである。
「【請求項1】
野生型I-CREIメガヌクレアーゼと比べ、少なくとも一つの認識配列半分部位に対する特異性が変更された組み換えメガヌクレアーゼを用いて、真核細胞において遺伝子治療によりヒトの疾患を治療する方法であって、
前記組み換えメガヌクレアーゼは、配列番号1のI-CREIメガヌクレアーゼの残基2-153に対し少なくとも85%の配列類似性を有するポリペプチドを含み、かつ、
配列番号2、配列番号3、配列番号4及び配列番号5から成る群より選ばれるI-CREIメガヌクレアーゼ認識配列内の半分部位と、少なくとも1塩基対異なる認識配列半分部位に対して特異性を有し、
排外的修飾ではない表5の少なくとも一つの修飾を含む、方法。」(以下「本願発明」という。)
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の理由の一つは、本願発明の方法は人間を手術、治療又は診断する方法に該当するから、特許法第29条第1項柱書の産業上利用することができる発明に該当しないというものである。
第4 当審の判断
(1)発明の詳細な説明の記載
本願の発明の詳細な説明には、次の記載がある(下線は当審による。以下、同様)。
摘記ア
「【0165】
6. 遺伝子治療法
本発明の局面は、遺伝子治療のための、組み換えメガヌクレアーゼの使用を可能とする。本出願で用いる「遺伝子治療」という用語は、その構造及び/又は機能において欠陥的である遺伝子又は遺伝子調整配列と置換するために、患者の中に、少なくとも一つの遺伝子の機能的コピー又は遺伝子調整配列、例えば、プロモーター、エンハンサー又はサイレンサーを導入することを含む治療処置を意味する。さらに、「遺伝子治療」という用語は、有害遺伝子または調整要素に対し、該遺伝子の発現を下げるか又は除去するために為される修飾を指すことが可能である。遺伝子治療は、先天性病態、患者の生涯に亘る特定の遺伝子座位における突然変異または損傷による病態又は感染生物体による病態を治療するために実行することが可能である。」
摘記イ
「【0169】
多くの例において、病態の原因である標的細胞又は細胞集団に対し適切な遺伝子配列を方向づけることが望ましい。治療薬の、このような標的指向は、健康な細胞が、治療薬によって標的とされることを防ぐ。これは、治療の効力を増し、一方では、治療が、健康な細胞に及ぼす可能性のある、有害となる可能性のある作用を下げる。」
(2)判断
本願発明には、「真核細胞において遺伝子治療によりヒトの疾患を治療する方法」と記載されているところ、「真核細胞において」という記載について検討する。
上記摘記イには、「病態の原因である標的細胞又は細胞集団に対し適切な遺伝子配列を方向づけることが望ましい。」と記載されており、これは、適切な遺伝子配列を方向付ける標的となる細胞又は細胞集団は、病態の原因であることを記載するものである。そして、この標的となる「細胞」は、「真核細胞」を含むものであり、この病態の原因である「真核細胞」は病態を有する人間の中に含まれていることを排除するものではない。
次に、本願発明の「遺伝子治療によりヒトの疾患を治療する方法」という記載について検討する。
上記摘記アには、「『遺伝子治療』という用語は、その構造及び/又は機能において欠陥的である遺伝子又は遺伝子調整配列と置換するために、患者の中に、少なくとも一つの遺伝子の機能的コピー又は遺伝子調整配列、例えば、プロモーター、エンハンサー又はサイレンサーを導入することを含む治療処置を意味する。」と記載されていることから、「遺伝子治療」とは、「患者の中」に「少なくとも一つの遺伝子の機能的コピー又は遺伝子調整配列」を導入して、「その構造及び/又は機能において欠陥的である遺伝子又は遺伝子調整配列」を置換することにより、患者を治療することを意味するものである。そして、この「患者」には、人間が含まれることは明らかである。
また、上記摘記アには、「遺伝子治療は、先天性病態、患者の生涯に亘る特定の遺伝子座位における突然変異または損傷による病態又は感染生物体による病態を治療するために実行することが可能である。」と記載されていることからみても、本願発明の「遺伝子治療」とは、病態を有する患者を治療することを意味しており、この「患者」には、人間が含まれることは明らかである。
そうすると、本願発明の「遺伝子治療」とは、治療の対象として、人間を含むものである。
そして、本願発明の「ヒトの疾患を治療する方法」という記載は、字義どおり、人間の疾患を治療する方法に他ならない。
してみれば、本願発明の「真核細胞において遺伝子治療によりヒトの疾患を治療する方法」は、人間を治療する方法を含むものである。
以上のことから、本願発明は、人間を治療する方法に該当するから、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。
(3)審判請求人の主張について
請求人は、令和2年12月23日付けの審判請求書の手続補正書(方式)において、本願発明は人間を適用対象として含まないことから、人間を手術、治療または診断する方法の発明に該当しない旨主張する。
しかしながら、上記(2)で説示したように、本願発明における「真核細胞」は病態を有する人間の中に含まれていることを排除するものではなく、本願発明における「遺伝子治療」の対象は、人間を含むものであり、本願発明の「ヒトの疾患を治療する方法」という記載は、字義どおり、人間の疾患を治療する方法に他ならない以上は、本願発明は、人間を治療する方法に該当する。
よって、請求人の主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項柱書の「産業上利用することができる発明」に該当せず、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
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