特許拒絶査定不服審判
2020-009029
内視鏡システム
- 審判番号
- 2020-009029
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-147909
- 請求日
- 2020年06月29日
- 審決日
- 2020年12月14日
- 公報発行日
- 2021年02月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】オリンパス株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 森 竜介
- 審判官 伊藤 幸仙
- 審判官 磯野 光司
- 分類
- P18 .121-WY (A61B) / P18 .575-WY (A61B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-147909「内視鏡システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月 2日出願公開、特開2017- 23604、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」と記す。)は、平成27年(2015年)7月27日の出願であって、平成30年5月10日に審査請求がなされ、平成31年3月7日付けで拒絶理由が通知され、令和元年7月10日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月19日付けで最後の拒絶理由が通知され、令和2年1月27日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年3月23日付けで補正の却下の決定がなされるとともに同日付けで拒絶査定されたところ、同年6月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に同日付けで提出された手続補正書により手続補正がなされ、同年9月8日に前置報告がなされたものである。
第2 原査定の概要及び前置報告の概要
原査定(令和2年3月23日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願の請求項1ないし7に係る発明は、以下の引用文献1ないし9に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特表2015-505678号公報
2.特開平11-342135号公報
3.特開2013-212323号公報
4.特開2005-137916号公報
5.特開2012-65698号公報
6.国際公開第2006/112136号
7.特表2003-512085号公報
8.国際公開第2011/158792号
9.特開2005-95478号公報
また、令和2年9月8日になされた前置報告の概要は次のとおりである。
本願の請求項1ないし7に係る発明は、以下の引用文献1ないし10に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。よって、令和2年6月29日付け手続補正は同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
そして、この出願は原査定の理由に示したとおり拒絶されるべきものである。
引用文献等一覧
1.特表2015-505678号公報
2.特開平11-342135号公報
3.特開2013-212323号公報
4.特開2005-137916号公報
5.特開2012-65698号公報
6.国際公開第2006/112136号
7.特表2003-512085号公報
8.国際公開第2011/158792号
9.特開2005-95478号公報
10.特開2001-120568号公報
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって請求項1の「被検部位」を「被検体の鼻腔に係る下鼻甲介を含む所定部位を被検部位とし」と限定し、「前記領域識別処理部は、前記蛍光観察画像に含まれる一部の領域を予め抽出して前記注目領域を設定するとともに、前記蛍光観察画像に含まれる前記一部の領域とは異なる他の一部の領域を予め抽出することにより前記基準領域を設定し、かつ、前記注目領域を新たに設定する度に前記基準領域を新たに設定し」という事項を追加する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「被検体の鼻腔に係る下鼻甲介を含む所定部位を被検部位とし」という事項は、出願当初明細書の段落【0074】に記載されており、「前記領域識別処理部は、前記蛍光観察画像に含まれる一部の領域を予め抽出して前記注目領域を設定するとともに、前記蛍光観察画像に含まれる前記一部の領域とは異なる他の一部の領域を予め抽出することにより前記基準領域を設定し、かつ、前記注目領域を新たに設定する度に前記基準領域を新たに設定し、」という事項は、出願当初明細書の段落【0080】及び【0090】に記載されているから、出願当初明細書に記載された事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1ないし7に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
本願請求項1ないし7に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は、令和2年6月29日提出の手続補正書により手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりである。(下線は補正箇所を表す。)
「【請求項1】
被検体の鼻腔に係る下鼻甲介を含む所定部位を被検部位として当該被検部位を凝固させるための焼灼用エネルギを生成する焼灼用エネルギ生成部と、前記焼灼用エネルギの照射を制御する焼灼制御部と、を有するジェネレータと、
前記ジェネレータに接続され、前記焼灼制御部の制御下に前記焼灼用エネルギ生成部において生成した焼灼用エネルギを前記被検部位に照射する焼灼プローブと、
焼灼される部位を含む前記被検部位を照明する白色光及び該被検部位の組織から蛍光を発生させるための励起光を供給する光源装置と、
前記光源装置からの白色光及び励起光を前記被検部位に向けて照射する照明光学系、該被検部位からの白色光を撮像する白色光撮像系及び当該被検部位の組織から発生した蛍光を撮像する蛍光撮像系を有する撮像装置を内蔵した内視鏡と、
前記撮像装置から出力された画像信号を処理して前記被検部位の白色光観察画像及び蛍光観察画像を生成して出力する画像処理部と、前記蛍光観察画像における所定の基準領域及び焼灼される部位に対応する注目領域をそれぞれ設定する領域識別処理部と、前記被検部位における焼灼状態を判別して判別信号を生成する焼灼判別部と、前記焼灼判別部からの判別信号を受けて前記ジェネレータに指示信号を出力する機能を含む制御部と、を具備するビデオプロセッサと、
を具備し、
前記領域識別処理部は、前記蛍光観察画像に含まれる一部の領域を予め抽出して前記注目領域を設定するとともに、前記蛍光観察画像に含まれる前記一部の領域とは異なる他の一部の領域を予め抽出することにより前記基準領域を設定し、かつ、前記注目領域を新たに設定する度に前記基準領域を新たに設定し、
前記焼灼判別部は、前記領域識別処理部において設定された、前記蛍光観察画像における前記基準領域と前記注目領域とに係るそれぞれの輝度値に基づいて当該注目領域に対応する焼灼される部位の焼灼状態を判別して当該部位が焼灼完了である場合に前記判別信号を出力し、
前記制御部は、前記判別信号に基づいて、前記ジェネレータにおける前記焼灼制御部に対して焼灼完了に係る指示信号を出力する
ことを特徴とする内視鏡システム。」
なお、本願発明2ないし7の概要は以下のとおりである。
本願発明2ないし7は、本願発明1を減縮した発明である。
第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由及び前置報告に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付与した。以下同じ。)
(1)「【0003】
本件特許出願に開示された実施例は、組織のアブレーション(切除)と視覚化のための方法とシステムに関する。」
(2)「【0048】
本開示の例示的実施例は、アブレーション手術中にRFアブレーション傷を視覚化するシステムと方法に関する。心房細動(AF)を治療するシステムと方法が提供される。
【0049】
心房細動(AF)を治療するシステム、カテーテル、方法が提供される。UV照明源とUVファイバを備えたバルーン案内式カテーテル、蛍光カメラ又は撮像バンドル、及びNADH蛍光を検出するための光学式バンドパスフィルタを用いて、切除された領域と切除されていない領域を特定するために、心臓組織における内因的NADH(fNADH)の蛍光が画像化される。fNADH撮像を用いて切除された領域の間の隙間が特定されるとともに、その隙間が切除される。アブレーション手術中に撮像が行われる。そのサブレーション(切除)手術は、造影剤、トレーサ、又は染料などの化学物質を必要としない。」
(3)「【0059】
いくつかの実施例において、本開示の方法とシステムは、アブレーション手術に関連して使用され、その場合、所望組織の完全なアブレーションが達成されたことをリアルタイムに監視するために利用される。アブレーションは、組織を破壊又は損傷(アブレーション)するために、エネルギー、熱、又は極端な冷気(冷凍)を利用する。例えば、RFアブレーションは、高周波交流から生成される熱を利用して組織を破壊する。冷凍アブレーションは、中空チューブ又は中空ニードル(冷凍プローブ)を使用し、該冷凍プローブを介して冷却された熱電導流体が循環されて組織を凍結し破壊する、種々の臨床に利用される。本開示のシステムと方法は、種々の組織アブレーション(限定的ではないが、RFアブレーション、冷凍アブレーション、音響エネルギーアブレーション、マイクロ波エネルギーアブレーション、超音波アブレーション、化学アブレーション、レーザアブレーション、熱アブレーション、電気アブレーション、その他の熱エネルギーアブレーション又は非熱エネルギーアブレーション)に関連して使用される。そのために、ある実施例では、アブレーション装置110は、組織を破壊するアブレーションの必要のために、組織に向けて前進される。ある実施例では、アブレーション装置110はエネルギー源を有する。エネルギーは、無線周波数エネルギー、マイクロ波エネルギー、電気エネルギー、電磁エネルギー、冷凍エネルギー、レーザエネルギー、超音波エネルギー、音響エネルギー、化学エネルギー、熱エネルギーである。」
(4)「【0077】
蛍光撮影を開始するために、オペレータは、カテーテルの末端部近傍に設けたバルーンを展開する。次に、光源130からの紫外線によってNADHが励起される。フィルタボックスを有する幾つかの実施例では、まず光源からの励起光が、フィルタボックス145内に配置されたダイクロイックミラー(又は、ダイクロイックビームスプリッタ)に当たる。次に、ダイクロイックミラーによって励起光が反射されて、光ファイバを解して試料に送られる。幾つかの実施例では、ミラーは、励起光に対して45°の角度をもって配置され、励起光が90°反射される。幾つかの実施例では、本開示の方法は、約335nm~約380nmの間の励起波長が使用される。
【0078】
組織資料中のNADHが光の励起波長を吸収し、長い波長の光を放出する。この放出光が集められてダイクロイックミラー146を介して送り戻される。したがって、ミラー146は、励起光を反射するように構成されているが、その放出波長を透過する。励起波長の反射は100%ではなく、該波長の一部はダイクロイックミラー146を通過する。同様に、異なる波長の光が透過可能である。また、カメラ135に関連して吸収フィルタを設けてもよい。吸収フィルタは、NADH等の蛍光色素分子からの光の放出波長について選択される。
【0079】
光がフィルタリングされると、その光はカメラで集められる。また、撮像された照明領域がディスプレイ140に表示される(ステップ170)。これは、NADH蛍光を使って撮像領域内のアブレーションされた組織とアブレーションされない組織を識別するために利用される(ステップ175)。別の組織をアブレーションする必要があれば、アブレーションステップに戻ることで以上のプロセスが繰り返される。図3は実行されるステップを順に示しているが、多くのステップが同時に又はほぼ同時に実行される。例えば、アブレーション、撮影、表示は同時に行われ、アブレーションされた組織とアブレーションされていない組織の識別は、組織をアブレーションしながら行われる。
【0080】
ここに開示された方法、システム、装置は、種々の治療に使用される。ここで開示した方法、システム、装置が利用される例示的手技には、限定的ではないが、心房細動、肺疾患マッピング及びアブレーションのための、心臓の診断及び治療、難治性不整脈(例えば、上室性不整脈、心室性不整脈)の治療に利用される。アブレーションされる組織は心筋であるが、本開示の方法は、NADHの豊富なミトコンドリアが多く存在する、骨格筋、肝臓、腎臓、その他組織に同様の効果が得られる。」
(5)「【0096】
図21は、複数の光源2101、2102(異なる波長の光を発振できる。)を支持するように構成された光学ハウジング2100の実施例を示す。異なる波長の光源を設けることで、単一カテーテル又は装置に異なる機能を与えることができる幾つかの実施例では、光源2101は、蛍光撮像用に紫外線を発するように選択される。一方、光源2102は、ユーザが解剖学的ランドマークを見て舵取り(ナビゲーション)できるように、白色光を発するように選択される。束ねることによって、ユーザは、組織をアブレーションする部位にナビゲーションしてアブレーションされた組織を見えるようにするために、同じカテーテルを使用することができる。幾つかの実施例では、同じ波長の複数の光源を用いてもよい。幾つかの実施例では、光学ハウジング2100は、2つ、3つ、それ以上の光源を支持するように構成してもよい。」
(6)「【0111】
図4A、4B、4C、4D,4Eは、血液の無い摘出ラット心臓におけるRFアブレーション傷を示す。最初の実験は、両性の健康ラットから摘出した心臓に行った。心臓は、タイロード溶液で逆かん流した。8つの心臓の心外膜をアブレーションして撮影した。4つの心臓に隣接して2つのアブレーション傷を付けた。心外膜面に傷を付ける位置にあるRFアブレーションプローブの実施例を図4Aに示し、標準的なRFAアブレーションプロトコル後の典型的な傷を図4Bに示す。図4Bに示すように、アブレーションの結果、淡い色に表れた組織の領域として、心外膜面の外観に素早い変化を生じた。その淡い色は、約摂氏60度におけるミオグロビンの変性に対応している。その後、心臓は一定圧力のかん流システム上に置かれ、シングル式又はデュアル式カメラシステムを使って撮影された。図4Cは、fNADHで明らかにされるように、2つの明確なRFアブレーション傷の外観を示し、そこでは部分的な虚血性組織が染みだらけの白色で表れている。図4Cに示すように、fNADH画像により、アブレーションの領域は、周囲のアブレーションされていない心筋に比べて、極めて暗く表れることが分かった。」
上記引用文献1の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「組織のアブレーション(切除)と視覚化のためのシステムにおいて、
心房細動(AF)を治療するシステムであり、
UV照明源とUVファイバを備えたバルーン案内式カテーテル、蛍光カメラ又は撮像バンドル、及びNADH蛍光を検出するための光学式バンドパスフィルタを用いて、切除された領域と切除されていない領域を特定するために、心臓組織における内因的NADH(fNADH)の蛍光が画像化され、
所望組織の完全なアブレーションが達成されたことをリアルタイムに監視するために利用され、
アブレーションはレーザアブレーションであり、
光源130からの紫外線によってNADHが励起され、光ファイバを解して試料に送られ、組織資料中のNADHが光の励起波長を吸収し、長い波長の光を放し、
カメラ135に関連して吸収フィルタを設けてもよく、吸収フィルタは、NADH等の蛍光色素分子からの光の放出波長について選択されるものであり、光がフィルタリングされると、その光はカメラで集められ、
撮像された照明領域がディスプレイ140に表示され、NADH蛍光を使って撮像領域内のアブレーションされた組織とアブレーションされない組織を識別するために利用され、
別の組織をアブレーションする必要があれば、アブレーションステップに戻ることで以上のプロセスが繰り返され、
アブレーション、撮影、表示は同時に行われ、アブレーションされた組織とアブレーションされていない組織の識別は、組織をアブレーションしながら行われ、
異なる波長の光源を設けることで、単一カテーテル又は装置に異なる機能を与えることができ、光源2101は、蛍光撮像用に紫外線を発するように選択され、一方、光源2102は、ユーザが解剖学的ランドマークを見て舵取り(ナビゲーション)できるように、白色光を発するように選択され、束ねることによって、ユーザは、組織をアブレーションする部位にナビゲーションしてアブレーションされた組織を見えるようにするために、同じカテーテルを使用することができ、
fNADH画像により、アブレーションの領域は、周囲のアブレーションされていない心筋に比べて、極めて暗く表れる、
システム。」
2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由及び前置報告に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0010】
【発明の実施の形態】以下、この発明の各実施の形態を図面に基づいて説明する。図1~図4は第1の実施形態を示し、図1及び図2は内視鏡下手術器械としての高周波処置具の全体構成図である。図1及び図2に示すように、高周波処置具としてのバイポーラ鉗子1には患者の体腔内に挿入される細長い挿入部2と、この挿入部2の先端部に配置され、体腔内で生体組織を把持、剥離、凝固するための通電可能な処置部3と、挿入部2の基端部に連結された操作部4とが設けられている。」
(2)「【0095】したがって、高周波焼灼前に組織の硬さを硬さセンサ186によって検知し、また高周波焼灼後組織の硬さを硬さセンサ186によって検知することにより、組織が所定の硬さによったときに高周波出力を停止して過剰焼灼を防止できる。」
上記引用文献2の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「内視鏡下手術器械としての高周波処置具において、
高周波焼灼前に組織の硬さを硬さセンサ186によって検知し、また高周波焼灼後組織の硬さを硬さセンサ186によって検知することにより、組織が所定の硬さによったときに高周波出力を停止して過剰焼灼を防止できる
高周波処置具。」
3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由及び前置報告に周知技術を示す文献として引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る蛍光観察装置1について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る蛍光観察装置1は、図1に示されるように、体内に挿入される細長い挿入部2と、光源(励起光源、照明光源)3と、該光源3からの励起光および照明光を挿入部2の先端から被写体Aに向けて照射する照明ユニット4と、挿入部2の先端に設けられ、被写体Aである生体組織の画像情報を取得する撮像ユニット5と、挿入部2の基端側に配置され、撮像ユニット5により取得された画像情報を処理する画像処理部6と、該画像処理部6により処理された画像を表示する表示部7とを備えている。
【0017】
光源3は、キセノンランプ9と、該キセノンランプ9から発せられた光から、励起光および照明光(例えば、波長帯域400~740nm)を切り出すフィルタ10と、フィルタ10により切り出された励起光および照明光を集光するカップリングレンズ11を備えている。
【0018】
照明ユニット4は、挿入部2の長手方向のほぼ全長にわたって配置され、カップリングレンズ11によって集光された励起光および照明光を導光するライトガイドファイバ12と、挿入部2の先端に設けられ、ライトガイドファイバ12によって導光されてきた励起光および照明光を拡散させて、挿入部2の先端面に対向する被写体Aに照射する照明光学系13とを備えている。
【0019】
撮像ユニット5は、被写体Aの所定の観察範囲からの光を集光する対物レンズ14と、該対物レンズ14によって集光された光のうち、励起波長以上の光(励起光および蛍光)を反射し、励起波長より短い波長の白色光を透過するダイクロイックミラー15と、該ダイクロイックミラー15により反射された蛍光およびダイクロイックミラー15を透過した白色光をそれぞれ集光する2つの集光レンズ16,17と、集光レンズ16,17によって集光された白色光および蛍光を撮影するCMOSのような2個の撮像素子(参照画像取得部、蛍光画像取得部)18,19とを備えている。図中、符号20は、ダイクロイックミラー15によって反射された光のうち励起光を遮断する(例えば、波長帯域760~850nmの光だけを透過する)励起光カットフィルタである。
【0020】
画像処理部6は、撮像素子18により取得された白色光画像情報S1から白色光画像(参照画像)G1を生成する白色光画像生成部21と、撮像素子19により取得された蛍光画像情報S2から蛍光画像G2を生成する蛍光画像生成部22と、撮像素子19の蛍光に対する感度を調節する感度調節部23と、感度調節部23により撮像素子19に設定された感度に応じて表示モードを択一的に切り替える表示切替部24と、蛍光画像G2から病変部を抽出して該病変部の位置を示すマーカMを作成する抽出部25と、白色光画像G1と蛍光画像G2または抽出部25により作成されたマーカMとを重畳した重畳画像Gを生成する重畳画像生成部26とを備えている。」
上記引用文献3の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「蛍光観察装置1において、
体内に挿入される細長い挿入部2と、光源(励起光源、照明光源)3と、該光源3からの励起光および照明光を挿入部2の先端から被写体Aに向けて照射する照明ユニット4と、挿入部2の先端に設けられ、被写体Aである生体組織の画像情報を取得する撮像ユニット5と、挿入部2の基端側に配置され、撮像ユニット5により取得された画像情報を処理する画像処理部6と、該画像処理部6により処理された画像を表示する表示部7とを備え、
白色光画像G1と蛍光画像G2または抽出部25により作成されたマーカMとを重畳した重畳画像Gを生成する重畳画像生成部26とを備える、
蛍光観察装置1。」
4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由及び前置報告に周知技術を示す文献として引用された上記引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
本発明は、体内組織をアブレーションするためのアブレーションエネルギーを用いるアブレーション器具システムに一般に関する。より具体的には本発明は、エネルギー供給機構と協同して、アブレーションエネルギーをガイド装置に沿って選択された方向に導く、あらかじめ形成されたガイド装置に関する。」
(2)「【0124】
さらに他の構成においては、アブレーション器具は、器官に造影剤を注射するルーメンを含みえる。例えば造影剤は、通常の血管造影法で肺静脈構造の視覚化を促進する。これの手法においてはX線透視法が使われるので、これは冠状動脈内処置において重要である。もちろん前提として、X線透視法でアブレーション処置中に、スライドするエネルギー伝達部の近位端および遠位端部と共に、シースの形状および遠位端が視覚化されることがある。アブレーション要素だけでなく、アブレーションシースがエネルギー伝達部27を導くパスをも電気生理学者が識別できることは大切なことである。
【0125】
他の視覚化手法は、ガイドシースに沿って間隔を置いて配置されその位置および形状を認識する放射線に対して不透過な複数のマーカーを利用することである。放射線不透過な要素を適用することによってシースの形状が映し出される。この要素は金属のリングであるか、またはプラチナのように生体適合性があり放射線について非常に不透過であるロウ付けでありえる。放射線不透過な要素の他の例は、ベリリウムを含有する材料のような放射線不透過なポリマーの応用である。同様に放射線不透過なマーカーは、エネルギー伝達部27の近位端、中位端および遠位端に沿って配置され、処置がX線透視のもとで行われるときに、エネルギー伝達部の視覚化および位置づけを促進しえる。
【0126】
アブレーションシースの遠位端部の認識を促進するために、蛍光不透過な要素が遠位端に配置されえる。このアイディアの他の応用例は、異なる不透過性をアブレーションシースおよびエネルギー伝達部27に持たせることがある。例えば、エネルギー伝達部は、後者が用いられるとき、アブレーションシースよりも不透過であり、アブレーションシースは経中隔シースよりも不透過である。」
上記引用文献4の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献4には、次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。
「体内組織をアブレーションするためのアブレーションエネルギーを用いるアブレーション器具システムにおいて、アブレーションシースの遠位端部の認識を促進するために、蛍光不透過な要素が遠位端に配置された、システム。」
5.引用文献5について
原査定の拒絶の理由及び前置報告に周知技術を示す文献として引用された上記引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
本発明は、画面を見ながら処置具を用いて行われる被観察部の手術を支援する手術支援システムおよびそれを用いた手術支援方法に関するものである。」
(2)「【0050】
本実施形態の手術支援システムを構成する処置具は、例えば図5Aに示すような鉗子6である。図5Aに示す鉗子6は、被観察部を挟持したり、所定の処置を施したりする作動部6aと、作動部6aが設けられた、細い円柱形状からなる柄部分6bと、操作者が作動部6aの動作を行うための操作部6cとを備えている。そして、鉗子6の先端部分の作動部6aには、図5Bに示すように、代表点抽出用のマーカMが設けられている。マーカMの色は、特に限定されないが、通常画像上で腹腔内における識別を容易にするため血液の色等を考慮して、生体内における存在量が少ない色相範囲を選択することが好ましく、例えばL*a*b*(CIE)表色系で表した場合、(34,80,-106)~(40,-20,-14)の範囲の色相が好ましい。また、マーカMの色は、特に青色が好ましい。また、マーカMは、蛍光画像上で腹腔内における識別を容易にするため、750nm以上800nm以下の近赤外の励起光の照射によって800nm以上850nm以下の蛍光を発する蛍光材料を含ませて形成することもできる。例えばこのような蛍光材料としては、後述するICGなどの蛍光薬剤や自家蛍光の波長帯域と同じ波長帯域の蛍光を発する材料を用いることが望ましい。なお、マーカのない鉗子を用いることもできる。このような場合には、処置具の代表点を抽出する抽出部は、鉗子6の作動部6aの全体を画像認識し、その中から代表点を抽出することとなる。」
上記引用文献5の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献5には、次の発明(以下「引用発明5」という。)が記載されていると認められる。
「画面を見ながら処置具を用いて行われる被観察部の手術を支援する手術支援システムにおいて、鉗子6の先端部分の作動部6aには、代表点抽出用のマーカMが設けられており、マーカMは、蛍光画像上で腹腔内における識別を容易にするため、750nm以上800nm以下の近赤外の励起光の照射によって800nm以上850nm以下の蛍光を発する蛍光材料を含ませて形成した、システム。」
6.引用文献6について
原査定の拒絶の理由及び前置報告に周知技術を示す文献として引用された上記引用文献6には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「[0001] 本発明は磁界発生素子と磁界検出素子とを用いて手術を支援する手術支援装置及び処置支援装置に関する。」
(2)「[0059] 本実施例では、図18に示すように、管腔臓器形状検出装置3の検出装置21は、血管と外科用ツール100との接近状態に応じて、高周波焼灼装置103の出力を制御ケーブル300を介して制御する。その他の構成は実施例2と同じである。
[0060] このように構成された本実施例の作用について説明する。
[0061] 図19に示すように、ステップS1~ステップS18までは、実施例22と同じであって、本実施例では、ステップS18の警告表示処理後に、ステップS21にて検出装置21は、 プローブ像とツール先端との距離Lが、所定の距離L0より短い限界最小距離Lmin未満になったかどうか判断する。この限界最小距離Lmin未満と判断すると、ステップS22にて検出装置21は、制御ケーブル300を介して高周波焼灼装置103の出力停止の制御を行う。
[0062] その他の処理は実施例2と同じであって、この処理をステップS19にて手技の終了を検知するまで繰り返す。
[0063] このように本実施例では、実施例2の効果に加え、血管と外科用ツール100の先端 が所定の距離L0より短い限界最小距離Lmin未満になると、高周波焼灼装置103の出力を停止することができる。」
上記引用文献6の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献6には、次の発明(以下「引用発明6」という。)が記載されていると認められる。
「磁界発生素子と磁界検出素子とを用いて手術を支援する手術支援装置において、
管腔臓器形状検出装置3の検出装置21は、血管と外科用ツール100との接近状態に応じて、高周波焼灼装置103の出力を制御ケーブル300を介して制御するものであり、
血管と外科用ツール100の先端 が所定の距離L0より短い限界最小距離Lmin未満になると、高周波焼灼装置103の出力を停止することができる、
手術支援装置。」
7.引用文献7について
原査定の拒絶の理由及び前置報告に周知技術を示す文献として引用された上記引用文献7には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0012】
(発明の開示)
本発明においては、組織の特性における変化の正確な測定を提供する方法および装置の提供に焦点が当てられている。本発明による方法および装置は、限定する意図はないが、蛍光発光、吸収、反射、偏光異方性、および位相変調を含む2つ以上の光学モダリティ(分光学的手法)を組み合わせて組織の変化に関連する形態学的変化と生物化学的変化とを分離し、それにより、当該組織の状態の正確な診断を提供する。各種の分光学的手法に従って得られた測定値は、診断目的に合わせて最良の診断結果を得るために、等しく重み付けすること、あるいは各種の方法において重み付けすることが可能である。たとえば、患者の年齢、ホルモン代謝、粘膜の粘稠度、循環系および神経系といった被検組織に特有の特徴に基づいて結果に重み付けを行うことが考えられる。」
(2)「【0128】
組織特性の変動性のため、標的組織が病気にかかっているか否かを正確に判定するには、標的組織の測定値と、同じ患者の正常組織の測定値を比較することが必要になる。既知の正常細胞の測定は、標的組織の測定と並行して、または、同時に行うのが望ましい。これにより、正常組織の測定値は、それからの変動を病気と解釈することが可能な、正常性の基準の働きをする。基準測定値に達するため、いくつかの方法を用いることが可能である。
【0129】
まず、皮膚の色素沈着(母斑)、または、結腸のポリープのような視覚的特徴を利用して、潜在的な異常領域を識別することが可能である。これらの潜在的に異常な、視覚的に明確に識別できる領域を包囲する、複数領域の正規化または平均化スペクトルを利用して、基準測定値を設定することが可能である。さらに、基準測定値は、異常な視覚的に明確に識別される領域で得られた測定値と比較することが可能である。
【0130】
視覚的特徴に基づく正常領域と異常領域の測定は、測定装置自体のイメージング機能を用いて自動化することが可能である。」
上記引用文献7の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献7には、次の発明(以下「引用発明7」という。)が記載されていると認められる。
「蛍光発光、吸収、反射、偏光異方性、および位相変調を含む2つ以上の光学モダリティ(分光学的手法)を組み合わせて組織の変化に関連する形態学的変化と生物化学的変化とを分離し、それにより、当該組織の状態の正確な診断を提供する装置において、
組織特性の変動性のため、標的組織が病気にかかっているか否かを正確に判定するために、既知の正常細胞の測定は、標的組織の測定と並行して、または、同時に行い、標的組織の測定値と、同じ患者の正常組織の測定値を比較し、
視覚的特徴に基づく正常領域と異常領域の測定は、測定装置自体のイメージング機能を用いて自動化することが可能である、
装置。」
8.引用文献8について
原査定の拒絶の理由及び前置報告に周知技術を示す文献として引用された上記引用文献8には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「[0001] 本発明は、超音波を用いて吸引を行う超音波吸引システム及び超音波吸引方法に関する。」
(2)「[0053] このため、本実施形態においては、以下のように予め(実質的に)ミストが発生していない状態での観察画像を取得して基準となる基準画像を設定し、以後の観察画像を基準の観察画像と比較して、所定以上の変化を検出した場合には、所定値を超えるミストが発生した観察画像であると判定し、その判定結果から所定値を超えるミストの発生に対応したミスト判定信号を生成する構成にしている。」
上記引用文献8の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献8には、次の発明(以下「引用発明8」という。)が記載されていると認められる。
「超音波を用いて吸引を行う超音波吸引システムにおいて、予め(実質的に)ミストが発生していない状態での観察画像を取得して基準となる基準画像を設定し、以後の観察画像を基準の観察画像と比較して、所定以上の変化を検出した場合には、所定値を超えるミストが発生した観察画像であると判定し、その判定結果から所定値を超えるミストの発生に対応したミスト判定信号を生成する、システム。」
9.引用文献9について
原査定の拒絶の理由及び前置報告に周知技術を示す文献として引用された上記引用文献9には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
本発明は、医療用画像間の比較に用いられる医療用画像処理装置、医療用画像処理方法及び医療用画像処理プログラムに関する。」
(2)「【0006】
時間をおいて複数の医療用画像を撮影する場合、撮影装置の経時的な特性変化によって画像に表れる濃淡、色彩、倍率、歪等の特徴量が変化してしまうことがある。例えば、胃潰瘍の患者の治療経過を知るために時間をおいて撮られた複数の胃カメラの画像を対比する場合、胃の内壁のどの程度の領域がどの程度赤くただれているのか等の画像上の特徴量を撮影装置の経時的な特性変化の影響を取り除いて比較することが必要となる。X線画像やMRI画像等の他の種類の医療用画像においても同様である。
【0007】
しかしながら、従来の医療においては、撮影装置の経時的な特性変化の影響を医師は自己の経験に基づいて主観的に取り除いて診療を行うしかなかった。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を鑑み、複数の医療用画像間の変化を適切に比較することを支援することができる医療用画像処理装置、医療用画像処理方法及び医療用画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決できる本発明は、複数の医療用画像内における比較対象領域の画像の特徴量を比較することを支援する医療用画像処理装置であって、患部の画像と共に基準用被写体の画像を含む医療用画像を取得する医療用画像取得手段と、前記医療用画像取得手段において取得された医療用画像から基準用被写体の画像領域を抽出し、当該基準用被写体の画像領域における画像の特徴量に基づいて当該医療用画像の比較対象領域における画像の特徴量を補正する画像補正手段と、を含むことを特徴とする。」
上記引用文献9の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献9には、次の発明(以下「引用発明9」という。)が記載されていると認められる。
「医療用画像間の比較に用いられる医療用画像処理装置において、患部の画像と共に基準用被写体の画像を含む医療用画像を取得する医療用画像取得手段と、前記医療用画像取得手段において取得された医療用画像から基準用被写体の画像領域を抽出し、当該基準用被写体の画像領域における画像の特徴量に基づいて当該医療用画像の比較対象領域における画像の特徴量を補正する画像補正手段と、を含む装置。」
10.引用文献10について
前置報告に引用された上記引用文献10には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば、アレルギー性鼻炎の手術的治療として、鼻内粘膜に対する下鼻甲介粘膜切除等に用いられる鼻腔内治療用レーザプローブに関する。」
(2)「【0024】図8は第1の開示例であり,レーザプローブと鼻腔鏡とを組み合せて鼻腔内粘膜を処置している状態を示す。鼻腔鏡21は内視鏡接眼部22を有する本体部23と、この本体部23に設けられ、先端部に観察窓24aを有する硬性の挿入部24とからなり,本体部23にはライトガイド接続部25とガイド管保持部26が設けられている。
【0025】鼻腔鏡21のガイド管保持部26にはレーザプローブ27を挿通可能なガイド管28が保持されている。このガイド管28は鼻腔鏡21の挿入部24に沿って並設され,先端部28aは挿入部24の先端近傍まで延長され,基端部28bは湾曲して本体部23の側部に設けられている。このガイド管28の基端部28bにはゴムキャップ29を有する鉗子孔30が設けられ、この鉗子孔30からレーザプローブ27をガイド管28に挿通できるようになっている。
【0026】従って,鉗子孔30からガイド管28にレーザプローブ27を挿通し、レーザプローブ27の先端部27aをガイド管28の先端開口から突出した状態で,鼻腔鏡21の挿入部24を鼻孔9から鼻腔10に挿入し、鼻腔鏡21によって鼻腔10内を観察しながらレーザプローブ27の先端部27aを鼻腔内粘膜11に対向させる。
【0027】そして、鼻腔鏡21によって鼻腔10内を観察しながらレーザプローブ27の先端部27aの出射端からレーザ光Lを照射すると,レーザ光Lは鼻腔内粘膜11に対して非接触で照射し、鼻腔内粘膜11の目的部位に確実にレーザ光Lを照射して焼灼できる。」
上記引用文献10の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献10には、次の発明(以下「引用発明10」という。)が記載されていると認められる。
「アレルギー性鼻炎の手術的治療として、鼻内粘膜に対する下鼻甲介粘膜切除等に用いられる鼻腔内治療用レーザプローブ鼻腔鏡とを組み合せて鼻腔内粘膜を処置する装置において、
鼻腔鏡21は内視鏡接眼部22を有する本体部23と、この本体部23に設けられ、先端部に観察窓24aを有する硬性の挿入部24とからなり、本体部23にはライトガイド接続部25とガイド管保持部26が設けられており、
鼻腔鏡21のガイド管保持部26にはレーザプローブ27を挿通可能なガイド管28が保持され、このガイド管28は鼻腔鏡21の挿入部24に沿って並設され、先端部28aは挿入部24の先端近傍まで延長され、基端部28bは湾曲して本体部23の側部に設けられており、このガイド管28の基端部28bにはゴムキャップ29を有する鉗子孔30が設けられ、この鉗子孔30からレーザプローブ27をガイド管28に挿通できるようになっており、鉗子孔30からガイド管28にレーザプローブ27を挿通し、レーザプローブ27の先端部27aをガイド管28の先端開口から突出した状態で、鼻腔鏡21の挿入部24を鼻孔9から鼻腔10に挿入し、鼻腔鏡21によって鼻腔10内を観察しながらレーザプローブ27の先端部27aを鼻腔内粘膜11に対向させ、鼻腔鏡21によって鼻腔10内を観察しながらレーザプローブ27の先端部27aの出射端からレーザ光Lを照射すると、レーザ光Lは鼻腔内粘膜11に対して非接触で照射し、鼻腔内粘膜11の目的部位に確実にレーザ光Lを照射して焼灼できる、
装置。」
第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)引用発明1との対比
上記「第2 原査定の概要及び前置報告の概要」より令和2年3月23日付け拒絶査定では、引用文献1ないし9から、本願の請求項1ないし7に係る発明は当業者が容易になしえたことであると認定していることから、本願発明1を、引用発明1と比較する。
ア 引用発明1の「蛍光撮像用に紫外線を発するように選択され」た「光源2101」と「ユーザが解剖学的ランドマークを見て舵取り(ナビゲーション)できるように、白色光を発するように選択され」た「光源2102」は、本願発明1における「焼灼される部位を含む前記被検部位を照明する白色光及び該被検部位の組織から蛍光を発生させるための励起光を供給する光源装置」に相当する。
イ 引用発明1の「UV照明源とUVファイバを備えたバルーン案内式カテーテル」は、「蛍光カメラ又は撮像バンドル、及びNADH蛍光を検出するための光学式バンドパスフィルタを用いて、切除された領域と切除されていない領域を特定するために、心臓組織における内因的NADH(fNADH)の蛍光が画像化され」るものであり、「光源2101」と「光源2102」を備えて「束ねることによって、ユーザは、組織をアブレーションする部位にナビゲーションしてアブレーションされた組織を見えるようにするために、同じカテーテルを使用することができ」るよう「単一カテーテル又は装置に異なる機能を与える」ものであるから、本願発明1における「前記光源装置からの白色光及び励起光を前記被検部位に向けて照射する照明光学系、該被検部位からの白色光を撮像する白色光撮像系及び当該被検部位の組織から発生した蛍光を撮像する蛍光撮像系を有する撮像装置を内蔵した内視鏡」に相当する。
ウ 引用発明1の「組織のアブレーション(切除)と視覚化のためのシステム」では「切除された領域と切除されていない領域を特定するために、心臓組織における内因的NADH(fNADH)の蛍光が画像化され」「撮像された照明領域がディスプレイ140に表示され、NADH蛍光を使って撮像領域内のアブレーションされた組織とアブレーションされない組織を識別するために利用され、」ていることから、本願発明1の「前記撮像装置から出力された画像信号を処理して前記被検部位の」「蛍光観察画像を生成して出力する画像処理部と、」「を具備するビデオプロセッサ」と同等の機能を備えている。
エ 引用発明1の「バルーン案内式カテーテル」を備えた「心房細動(AF)を治療する」「組織のアブレーション(切除)と視覚化のためのシステム」は、本願発明1の「内視鏡システム」に相当する。
すると、本願発明1と、引用発明1とは、次の点で一致する。
<一致点>
「焼灼される部位を含む前記被検部位を照明する白色光及び該被検部位の組織から蛍光を発生させるための励起光を供給する光源装置と、
前記光源装置からの白色光及び励起光を前記被検部位に向けて照射する照明光学系、該被検部位からの白色光を撮像する白色光撮像系及び当該被検部位の組織から発生した蛍光を撮像する蛍光撮像系を有する撮像装置を内蔵した内視鏡と、
前記撮像装置から出力された画像信号を処理して前記被検部位の蛍光観察画像を生成して出力する画像処理部と、を具備するビデオプロセッサと、
を具備した内視鏡システム。」
一方で、両者は、次の点で相違する。
<相違点1>
本願発明1は「被検体の鼻腔に係る下鼻甲介を含む所定部位を被検部位として当該被検部位を凝固させるための焼灼用エネルギを生成する焼灼用エネルギ生成部と、前記焼灼用エネルギの照射を制御する焼灼制御部と、を有するジェネレータと、前記ジェネレータに接続され、前記焼灼制御部の制御下に前記焼灼用エネルギ生成部において生成した焼灼用エネルギを前記被検部位に照射する焼灼プローブ」を備えるのに対し、引用発明1は「心房細動(AF)を治療する」ための「組織のアブレーション(切除)」を行う「レーザアブレーション」を備える点。
<相違点2>
「ビデオプロセッサ」において、本願発明1は、「前記撮像装置から出力された画像信号を処理して前記被検部位の白色光観察画像及び蛍光観察画像を生成して出力する画像処理部と、前記蛍光観察画像における所定の基準領域及び焼灼される部位に対応する注目領域をそれぞれ設定する領域識別処理部と、前記被検部位における焼灼状態を判別して判別信号を生成する焼灼判別部と、前記焼灼判別部からの判別信号を受けて前記ジェネレータに指示信号を出力する機能を含む制御部と」を備え、「前記領域識別処理部は、前記蛍光観察画像に含まれる一部の領域を予め抽出して前記注目領域を設定するとともに、前記蛍光観察画像に含まれる前記一部の領域とは異なる他の一部の領域を予め抽出することにより前記基準領域を設定し、かつ、前記注目領域を新たに設定する度に前記基準領域を新たに設定し、前記焼灼判別部は、前記領域識別処理部において設定された、前記蛍光観察画像における前記基準領域と前記注目領域とに係るそれぞれの輝度値に基づいて当該注目領域に対応する焼灼される部位の焼灼状態を判別して当該部位が焼灼完了である場合に前記判別信号を出力し、前記制御部は、前記判別信号に基づいて、前記ジェネレータにおける前記焼灼制御部に対して焼灼完了に係る指示信号を出力する」ものであるのに対し、引用発明1では「NADH蛍光を使って撮像領域内のアブレーションされた組織とアブレーションされない組織を識別するために」「撮像された照明領域がディスプレイ140に表示され」る処理を行うものである点。
(2)引用発明1との相違点の判断
上記「(1)」で記載した各相違点について判断する。
ア 相違点1について
(ア)引用発明1では、「心臓組織における内因的NADH(fNADH)の蛍光が画像化され」「fNADH画像により、アブレーションの領域は、周囲のアブレーションされていない心筋に比べて、極めて暗く表れる」ことが示されている。すなわち引用発明1のシステムは、心臓の心筋をアブレーションするシステムである。また、引用発明1は「バルーン案内式カテーテル」であることから、心臓の内部に挿入してアブレーションを行うシステムである。
(イ)よって、引用発明1を何の変更もせずに鼻腔に係る下鼻甲介を含む所定部位を焼灼するのに用いることは、困難であると認められる。
(ウ)また、引用発明10に「鼻内粘膜に対する下鼻甲介粘膜切除等に用いられる鼻腔内治療用レーザプローブ鼻腔鏡とを組み合せて鼻腔内粘膜を処置する装置」が開示されているとしても、引用発明1の「バルーン案内式カテーテル」を鼻腔内に適用するには、形状、機能、アブレーション性能などを変更する必要があり、その変更により引用発明1の心臓の心筋をアブレーションする機能は失われることとなるから、引用発明1を鼻腔内に適用するための各種変更は当業者が適宜なしうる設計的事項とは認められない。
(エ)さらに、引用発明2ないし9には、鼻腔内の焼灼を行う技術については開示されていないことから、引用発明2ないし9に開示された技術を適用しても、上記相違点1に係る発明特定事項を導き出すことは、当業者が容易になしえたこととは認められない。
(オ)以上のことから、上記相違点1に係る発明特定事項を引用発明1ないし10から当業者が導き出すことはできない。
イ 相違点2について
(ア)引用発明1では、「アブレーション、撮影、表示は同時に行われ、アブレーションされた組織とアブレーションされていない組織の識別は、組織をアブレーションしながら行われ」るものであり、「fNADH画像により、アブレーションの領域は、周囲のアブレーションされていない心筋に比べて、極めて暗く表れる」ことは開示されているが、「アブレーションされた組織とアブレーションされていない組織の識別」の具体的な技術については開示されていない。引用発明1の開示内容から、蛍光画像の輝度によりアブレーションの領域と、周囲のアブレーションされていない心筋との区別ができることは示唆されているものの、上記相違点2に係る発明特定事項の技術については開示も示唆も無い。
(イ)また、引用発明2には、高周波焼灼前後の組織の硬さを測定して、焼灼の高周波出力を停止する技術が、引用発明6には、画像上で血管と外科用ツールとの距離が限界最小距離未満になると高周波焼灼装置の出力を停止する技術が、引用発明7には、視覚的特徴に基づく正常領域と異常領域の測定は、測定装置自体のイメージング機能を用いて自動化する技術が、それぞれ開示されているが、上記相違点2に係る発明特定事項の技術は開示されていない。
(ウ)そして、引用発明3ないし5、8ないし10には、上記相違点2に係る発明特定事項の技術は開示も示唆もされていない。
(エ)以上のことから、上記相違点2に係る発明特定事項を引用発明1ないし10から当業者が導き出すことはできない。
(3)引用発明10との対比
上記「第2 原査定の概要及び前置報告の概要」より令和2年9月8日付け前置報告では、引用文献1ないし10から、本願の請求項1ないし7に係る発明は当業者が容易になしえたことであると認定していることから、本願発明1を、引用発明10と比較する。
ア 引用発明10の「レーザプローブ27」は「レーザプローブ27の先端部27aを鼻腔内粘膜11に対向させ、鼻腔鏡21によって鼻腔10内を観察しながらレーザプローブ27の先端部27aの出射端からレーザ光Lを照射すると、レーザ光Lは鼻腔内粘膜11に対して非接触で照射し、鼻腔内粘膜11の目的部位に確実にレーザ光Lを照射して焼灼できる」ものであるから、本願発明1における「被検体の鼻腔に係る下鼻甲介を含む所定部位を被検部位として当該被検部位を凝固させるための焼灼用エネルギ」「を前記被検部位に照射する焼灼プローブ」に相当する。
イ 引用発明10の「鼻腔鏡21」は、本願発明1における「内視鏡」に相当する。
ウ 引用発明10の「アレルギー性鼻炎の手術的治療として、鼻内粘膜に対する下鼻甲介粘膜切除等に用いられる鼻腔内治療用レーザプローブ鼻腔鏡とを組み合せて鼻腔内粘膜を処置する装置」は、本願発明1における「内視鏡システム」に相当する。
すると、本願発明1と、引用発明10とは、次の点で一致する。
<一致点>
「被検体の鼻腔に係る下鼻甲介を含む所定部位を被検部位として当該被検部位を凝固させるための焼灼用エネルギを前記被検部位に照射する焼灼プローブと、
内視鏡と、
を備えた内視鏡システム。」
一方で、両者は、次の点で相違する。
<相違点3>
焼灼プローブにおいて、本願発明1は、「被検体の鼻腔に係る下鼻甲介を含む所定部位を被検部位として当該被検部位を凝固させるための焼灼用エネルギを生成する焼灼用エネルギ生成部と、前記焼灼用エネルギの照射を制御する焼灼制御部と、を有するジェネレータ」を備え、焼灼プローブでは「前記ジェネレータに接続され、前記焼灼制御部の制御下に前記焼灼用エネルギ生成部において生成した焼灼用エネルギを前記被検部位に照射する」のに対し、引用発明10は「レーザプローブ27」を備えるが、レーザ源やレーザ照射制御について明記が無い点。
<相違点4>
内視鏡において、本願発明1は、「焼灼される部位を含む前記被検部位を照明する白色光及び該被検部位の組織から蛍光を発生させるための励起光を供給する光源装置と、前記光源装置からの白色光及び励起光を前記被検部位に向けて照射する照明光学系、該被検部位からの白色光を撮像する白色光撮像系及び当該被検部位の組織から発生した蛍光を撮像する蛍光撮像系を有する撮像装置を内蔵した」ものであるのに対し、引用発明10の鼻腔鏡21は、上記発明特定事項を備えていない点。
<相違点5>
本願発明1は、「前記撮像装置から出力された画像信号を処理して前記被検部位の白色光観察画像及び蛍光観察画像を生成して出力する画像処理部と、前記蛍光観察画像における所定の基準領域及び焼灼される部位に対応する注目領域をそれぞれ設定する領域識別処理部と、前記被検部位における焼灼状態を判別して判別信号を生成する焼灼判別部と、前記焼灼判別部からの判別信号を受けて前記ジェネレータに指示信号を出力する機能を含む制御部と、を具備するビデオプロセッサ」であり、「前記領域識別処理部は、前記蛍光観察画像に含まれる一部の領域を予め抽出して前記注目領域を設定するとともに、前記蛍光観察画像に含まれる前記一部の領域とは異なる他の一部の領域を予め抽出することにより前記基準領域を設定し、かつ、前記注目領域を新たに設定する度に前記基準領域を新たに設定し、前記焼灼判別部は、前記領域識別処理部において設定された、前記蛍光観察画像における前記基準領域と前記注目領域とに係るそれぞれの輝度値に基づいて当該注目領域に対応する焼灼される部位の焼灼状態を判別して当該部位が焼灼完了である場合に前記判別信号を出力し、前記制御部は、前記判別信号に基づいて、前記ジェネレータにおける前記焼灼制御部に対して焼灼完了に係る指示信号を出力する」ビデオプロセッサを備えるのに対し、引用発明10は、上記発明特定事項を備えていない点。
(4)引用発明10との相違点の判断
上記「(3)」で記載した各相違点について判断する。
ア 相違点3について
(ア)組織を焼灼するレーザプローブのレーザ発生技術及び照射制御技術は、引用発明1においてもレーザアブレーションがなされているように本願の出願日前において周知の技術と認められる。
(イ)よって、引用発明10の「レーザプローブ27」においても、明示はなくとも、レーザ源を備えレーザ照射制御を行っていると認められる。ゆえに、上記相違点3は実質的な相違点ではない。
イ 相違点4について
(ア)内視鏡において、白色光と、励起光を照射し、通常画像と蛍光画像を得る技術及び通常画像と蛍光画像を撮影し表示する技術は、引用発明1に開示されている。
(イ)よって、引用発明10の鼻腔鏡21に、引用発明1に開示された白色光と、励起光を照射し、通常画像と蛍光画像を得る技術及び通常画像と蛍光画像を撮影し表示する技術を適用して、上記相違点4に係る発明特定事項とすることは、当業者ならば容易になしえたことである。
ウ 相違点5について
相違点5は、上記「(1)」及び「(2)」で検討した「相違点2」の発明特定事項と同一の発明特定事項であるから、上記「(2)」で検討したのと同様に、上記相違点5に係る発明特定事項を引用発明1ないし10から当業者が導き出すことはできない。
(5)小括
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1ないし10に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
2.本願発明2ないし7について
本願発明2ないし7も、本願発明1の上記相違点2または相違点5に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明1ないし10に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
第7 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1ないし7は、上記「第6 対比・判断」で検討した相違点2または相違点5に係る発明特定事項である「前記撮像装置から出力された画像信号を処理して前記被検部位の白色光観察画像及び蛍光観察画像を生成して出力する画像処理部と、前記蛍光観察画像における所定の基準領域及び焼灼される部位に対応する注目領域をそれぞれ設定する領域識別処理部と、前記被検部位における焼灼状態を判別して判別信号を生成する焼灼判別部と、前記焼灼判別部からの判別信号を受けて前記ジェネレータに指示信号を出力する機能を含む制御部と、を具備するビデオプロセッサ」であり、「前記領域識別処理部は、前記蛍光観察画像に含まれる一部の領域を予め抽出して前記注目領域を設定するとともに、前記蛍光観察画像に含まれる前記一部の領域とは異なる他の一部の領域を予め抽出することにより前記基準領域を設定し、かつ、前記注目領域を新たに設定する度に前記基準領域を新たに設定し、前記焼灼判別部は、前記領域識別処理部において設定された、前記蛍光観察画像における前記基準領域と前記注目領域とに係るそれぞれの輝度値に基づいて当該注目領域に対応する焼灼される部位の焼灼状態を判別して当該部位が焼灼完了である場合に前記判別信号を出力し、前記制御部は、前記判別信号に基づいて、前記ジェネレータにおける前記焼灼制御部に対して焼灼完了に係る指示信号を出力する」ビデオプロセッサを備えるものとなっており、上記「第6 対比・判断」で検討したとおり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1ないし9に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-009029