特許拒絶査定不服審判
2020-003173
ディスクアレイ装置、ディスクアレイシステム、制御方法、および、制御プログラム
- 審判番号
- 2020-003173
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-177653外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年03月06日
- 審決日
- 2020年12月18日
- 公報発行日
- 2021年04月30日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-177653「ディスクアレイ装置、ディスクアレイシステム、制御方法、および、制御プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月16日出願公開、特開2017- 54303〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続きの経緯
本願は,平成27年9月9日の出願であって,令和1年6月5日付けで拒絶理由が通知され,令和1年8月2日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ,令和1年11月29日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされ,これに対して令和2年3月6日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は,令和2年3月6日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,以下のとおりのものである。
なお,符号A~Dは説明のため当審で付与したものであり,以下,構成A~構成Dと称する。
「【請求項1】
A データ書き込み用ストライプであるデータストライプを包含する複数のディスク装置と、
B 前記複数のデータストライプに対するパリティ書き込み用ストライプであるパリティストライプを包含するディスク装置と、
C1 前記複数のデータストライプの何れかへの書き込み命令を取得し、
C2 更新対象ストライプおよび前記パリティストライプにデータが書き込まれていなければ、
C3 前記更新対象ストライプに0データである所定データが書き込まれているとみなし、
C4 書き込み命令のデータである更新対象データを修正せずに修正後のデータとし、修正後のデータを前記更新対象ストライプに書き込み、かつ、
C5 0データである所定パリティデータ、前記所定データおよび前記更新対象データに基づいて前記パリティストライプに書き込むデータを生成し、
C6 生成した前記データをパリティとして前記パリティストライプに書き込む制御手段と、
D を備えるディスクアレイ装置。」
なお、審判請求時の補正は、請求項1,3,5の「更新対象データを修正後のデータとし」を「更新対象データを修正せずに修正後のデータとし」と補正するものであり,この補正は,「修正後のデータ」を明確にするものであるから,特許法17条の2第5項4号の明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当すると判断した。
第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由2は,この出願の請求項1-9に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
引用文献1:特開平6-75708号公報
第4 引用文献
1 引用文献1
(1)原査定の拒絶の理由2で引用された,本願の出願前に,頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平6-75708号公報(平成6年3月18日公開,以下,「引用文献1」という。)には,以下の事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同様。)
「【0006】RAIDレベル4
パリティディスクを固定で使用し、データをグループ中のデータディスクにブロックインタリーブして記録する。レベル3との違いはインタリーブ単位が異なり、ブロック単位で記録するため小量データのアクセスが多い場合により向いている。」
「【0010】図20は例えば上記特開平2-236714号公報に示された従来のアレイ型ディスク駆動装置を示す構成図であり、図において、1はホストコンピュータ、2はホストコンピュータとアレイコントローラ間のバッファとなるホストインターフェース(以下、ホストI/Fという)、3はアレイコントローラ全体を制御するマイクロプロセッサ、4はメモリ、5は冗長データを生成及びデータの復元をするEORエンジン、6は上記ホストI/F2、マイクロプロセッサ3、メモリ4及びEORエンジン5を共通に接続するデータバス、7はCEパネル、8はチャネルコントローラで、CEパネル7及び複数のチャネルコントローラ8も上記データバス6に接続されている。9はディスク装置、10はチャネルで、ディスク装置9がチャネル10を介して上記チャネルコントローラ8に接続される。11はスタンバイディスク、12は予備チャネルで、複数台のスタンバイディスク11が共通の予備チャネル12を介して上記チャネルコントローラ8に接続される。13は複数台のディスク装置9及びスタンバイディスク1を制御するアレイコントローラである。」
「【0011】図21はRAIDの冗長データの生成に関する説明をする図である。図21に示すように5台のディスクの内1台のディスクのデータは他の4台のディスクのデータの冗長データ(パリティ)を記憶するようになっている。パリティは4台のディスクのデータのエクスクルーシブOR(XOR)の演算によって計算される。即ちパリティディスクPのパリティデータはディスク0とディスク1とディスク2とディスク3のデータのXORをとったものである。このようなパリティを冗長データとして持つことにより例えばディスク0のデータが何らかの障害により読めない場合にはディスク1とディスク2とディスク3とパリティディスクPのデータのエクスクルーシブOR(XOR)をとったデータがディスク0のデータとして復元することが可能になる。なお、パリティの計算は前述したように4台のディスクのデータのXORをとることにより生成できるが、別な方法としてデータを書き込もうとするディスクの古いデータと現在パリティディスクに記録されている現在のパリティデータをリードして新しいデータと古いデータと現在のパリティデータの3つのデータのXORを計算して新しいパリティデータとする場合もある。その方法を図22を用いて説明する。例えばディスク2に対して新しいデータDN(2)を記録しようとする場合には、先ず古いデータをディスク2からDO(2)として読み込。む同時にパリティディスクから現在のパリティデータをDO(P)をリードしてくる。そして、DN(2)とDO(2)とDO(P)の3つのデータのXORを計算して新しいパリティデータDN(P)とする。そして新しいデータDN(2)をディスク2に記録する。最後に新しいパリティデータDN(P)をパリティディスクに記録する。」
「【0013】次に図20に示したシステムの動作について説明する。図20において、ホストコンピュータ1とのデータの記憶再生はすべてホストI/F2を介して成され、データの記憶時にはホストコンピュータ1からの命令及びデータは一旦データバス6を介してメモリ4に記憶される。データの再生時にはメモリ4に準備されたデータがホストI/F2を介してホストコンピュータ1に伝送される。以下RAIDレベル5における動作について、図20、図24を用いて説明する。データの記憶時にメモリ4に記憶されたデータをマイクロプロセッサ3がデータブロックに分割し、データ書き込みディスク装置及び冗長データ書き込みディスク装置を決定する。RAIDレベル5では、冗長データの更新のために書き込みに該当するデータブロックの旧データが必要なため、書き込みに先立ち、読みだし動作が実施される。データの転送はメモリ4、チャネル8間をデータバス6を介して行われ、上記データ転送に同期してEORエンジン5にて冗長データが生成される。」
「【0038】【実施例】実施例1.第1の発明に係るアレイ型記録装置の一実施例を図1に基づいて説明する。図において、20はデータブロックのサイズを記録しておくための領域テーブルである。その他の1~13は従来例で説明したものと同一あるいは相当部分を示しており、ここでは説明を省略する。ただし、メモリ4には、ホストコンピュータ1からホストインターフェース2を経由してディスク装置に書き込もうとしているデータが一時記録されると共に、そのデータのサイズから領域テーブルに登録されたデータブロックのサイズを参照して、記録しようとしているデータがおさまるようなサイズのデータブロックを選択する選択ルーチンが記録されているものとする。この選択ルーチンはMPU3によって実行される。」
「【0040】また、図においてD1,D2,D3,D4はデータあるいは冗長データを記録するための4つのディスクをそれぞれ示しており、各ブロック1から12はデータブロックを示している。前述したようにブロック1から6はそれぞれのディスクにおいて512バイトのブロックサイズを有している。またブロック7から10は1kバイトのサイズを有している。さらにブロック11から12は2kバイトのブロックサイズを有している。」
「【0048】実施例4.上記実施例1から3においてはRAIDのレベル5の場合について説明したが、例えば、図4に示すようにRAIDのレベル4の場合でもかまわない。図4に示すようにディスクD4が冗長ディスクとなり、冗長データが記載されている領域として定義されている場合でも、各ブロックを異なるサイズに分割して、前述した実施例1から3のようにして使用することが可能である。」
「【0057】実施例7.次に、第3の発明に係るアレイ型記録装置の一実施例について、図7に基づいて説明する。図7において、30はディスク装置のデータブロックが使用されているかいないかという使用状態を記録するための使用状態テーブルである。その他の1~13については従来例で説明したものと同一あるいは相当部分を示しているためここでは説明を省略する。」
「【0066】次に、ディスクD3について説明する。ディスクD3はディスクD1とD2に記録されるデータのパリティを記録するための冗長ディスクである。ブートレコードFATディレクトリのパリティを計算して記録するとともにデータエリアのパリティを計算して記録することになる。ただしディスクD1とD2のデータ部分が存在しない部分に関してはパリティは記録されていない。このデータが存在していない部分にはパリティを計算して記録していないところがこの実施例の特徴である。従来はディスクシステムを初期化する場合にはディスクD1,D2を例えば初期値0で初期化し、ディスクD3をディスクD1とD2の初期化したデータオール0に基づいてパリティを計算して記録していたが、この実施例ではディスクシステムを初期化することをやめてしまう。従って、データがディスクに書き込まれた場合にその書き込まれた部分に対してだけパリティを計算してディスクD3に記録し、データが書き込まれていない部分に関してはパリティも存在しないことになる。例えば、パリティP1~P7はディスクD1とD2のデータから生成されるが、パリティP8、P9はディスクD2のデータのみから生成され、パリティP10はディスクD1のデータのみから生成される。また、ディスクD1とD2がともにデータなしの場合は、パリティは生成されない。」
「【0073】実施例10.次に、実施例7に示したアレイ型ディスク装置のいくつかの動作例を図12を用いて説明する。例えば、ディスクD1にデータD11を記録する場合にはFATにその旨を登録してディスクD1にデータD11を記録する。ディスクD1にデータD11が登録された場合には、そのパリティとしてディスクD4にD1(当審注:「D1」は「P1」の誤記である。)というパリティが記録されることになるが、ディスクD2とディスクD3にはまだなにも記録されていない状態においてはデータD11の冗長データとしてP1はD11から生成されることになる。次に、D11が記録された状態でD21が記録される場合について説明する。従来であればデータD21のサイズWの部分に相当するディスクD4の部分Sのデータを読み込む必要があるが、この実施例ではディスクD4のパリティP1のXの部分のみのパリティを読み込むことになる。そして、データD21のUの部分とディスクD4のP1のXの部分のXORを計算したものがディスクD4のP1のX部分に新たなパリティP1Xとして記録されることになる。また、ディスクD4のYの部分にはデータD21のVのデータと同じものがパリティP1Yとして記録されることになる。従来であればディスクD2のデータD21の書き込まれるべき部分Wの旧データを読み込むと共に、ディスクD4のSの部分を読み込み、冗長データを計算し、データD21をディスクD3に書き込むと共に計算した冗長データをディスクD4に書き込むという作業をしなければならなかったのに対し、この実施例ではディスクD4のX部分を読み込み、その後ディスクD2にデータD21を書き込むと共に冗長データP1XとP1YをSの部分に書き込むという作業で終了することが可能になる。別な言葉でいえばディスクD2のWの部分の組み込みを省略できると共にディスクD4のYの部分の読み込みを省略することが可能になる。」
「
【図4】」
「
【図7】」
「
【図12】」
(2)ここで,引用文献1の実施例1(【0038】,【0040】)は,データブロックのサイズを記録しておくための領域テーブル20以外は,従来例(【0006】,【0010】,【0011】,【0013】)で説明したものと同一であり,実施例4(【0048】,【図4】)は,実施例1から3のRAIDのレベル4の場合を説明したものであり,実施例10(【0073】,【図12】)は,実施例7(【0057】,【0066】)のアレイ型記録装置の動作例を説明したものであり,また,図12は,実施例7のRAIDのレベル4の場合を説明していると認められることからすると,引用文献1には,「従来例の構成を含み,RAIDのレベル4で動作し,実施例10に動作例が説明されている実施例7のアレイ型記録装置」である次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
なお,符号a-iは,説明のために当審にて付したものである。以下「構成a」-「構成i」という。
「a RAIDレベル4であって,データをブロック単位で記録し,
b メモリ4を有するアレイコントローラ13を備え,
c パリティの計算は,データを書き込もうとするディスクの古いデータと現在パリティディスクに記録されている現在のパリティデータをリードして新しいデータと古いデータと現在のパリティデータの3つのデータのXORを計算して新しいパリティデータとし,
d データの記憶時にはホストコンピュータ1からの命令及びデータは一旦データバス6を介してメモリ4に記憶される,
e アレイ型記録装置であって,
f データあるいは冗長データを記録するための4つのディスクD1,D2,D3,D4はそれぞれデータブロックを示すブロック1から12を有し,
g RAIDのレベル4の場合,ディスクD4が冗長ディスクであり,
h 従来はディスクシステムを初期化する場合にはディスクを初期値0で初期化し、初期化したデータオール0に基づいてパリティを計算して記録していたのに対して,ディスクシステムを初期化することをやめてしまい,
i ディスクD1にデータD11が登録された場合には、そのパリティとしてディスクD4にP1というパリティが記録されることになるが、ディスクD2とディスクD3にはまだなにも記録されていない状態においてはデータD11の冗長データとしてP1はD11から生成されることになり,D11が記録された状態でD21が記録される場合,ディスクD4のYの部分にはデータD21のVのデータと同じものがパリティP1Yとして記録されることになり,従来であればディスクD2のデータD21の書き込まれるべき部分Wの旧データを読み込むと共に、ディスクD4のSの部分を読み込み、冗長データを計算し、データD21をディスクD3に書き込むと共に計算した冗長データをディスクD4に書き込むという作業をしなければならなかったのに対し、ディスクD4のX部分を読み込み、その後ディスクD2にデータD21を書き込むと共に冗長データP1XとP1YをSの部分に書き込むという作業で終了することが可能になる,
e アレイ型記録装置。」
第5 対比
1 本願発明と引用発明とを対比する。
(1)構成Aについて
構成fによれば,引用発明は,「D1」,「D2」,「D3」,「D4」の「データあるいは冗長データを記録するための4つのディスク」を備えている。
構成gによれば,引用発明は,「RAIDのレベル4の場合」,「ディスクD4」が「冗長ディスク」であるので,その他の「D1」,「D2」,「D3」の3つの「ディスク」は,「データ」「を記録するための」ものであるといえる。
また,構成fによれば,引用発明の「ディスク」は,「ブロック」を有している。本願の明細書の段落【0004】を参照すれば,「書き込む単位」を「ストライプ」と呼んでいるが,構成aによれば,引用発明の「ブロック」は,「記録」する「単位」であるので,本願発明の「ストライプ」に相当する。
したがって,引用発明の,「データ」「を記録するための」「ブロック」を有する「D1」,「D2」,「D3」の3つの「ディスク」は,本願発明の「データ書き込み用ストライプであるデータストライプを包含する複数のディスク装置」に相当する。
(2)構成Bについて
引用発明の「冗長データ」は,本願発明の「パリティ」に相当する。
また,構成f,gによれば,引用発明の「ディスクD4」は,「冗長データを記録するための」「冗長ディスク」である。
また,構成fによれば,引用発明の「ディスク」は,「ブロック」を有している。
上記(1)の検討を参照すれば,引用文献の「ブロック」は,本願発明の「ストライプ」に相当する。
したがって,引用発明の,「冗長データを記録するための」「ブロック」を有する「ディスクD4」は,本願発明の「複数のデータストライプに対するパリティ書き込み用ストライプであるパリティストライプを包含するディスク装置」に相当する。
(3)構成C1について
構成d,f,gによれば,引用発明の,「D1」,「D2」,「D3」の3つの「ディスク」への「データの記憶時」の「命令及びデータ」は,本願発明の「複数のデータストライプの何れかへの書き込み命令」に相当する。
構成dによれば,引用発明は,「ホストコンピュータ1からの命令及びデータ」を「メモリ4に記憶」しているところ,その前に,「ホストコンピュータ1からの命令及びデータ」を「取得」していることは明らかである。
(4)構成C2について
構成iによれば,引用発明の,「D11が記録された状態でD21が記録される場合,」「データD21のVのデータ」が「記録」される「ディスクD2」の「ブロック」は,「データ」が「記録」される対象のものであるので,本願発明の「更新対象ストライプ」に相当する。
構成iによれば,引用発明の,「D11が記録された状態でD21が記録される場合,」「パリティP1Y」が「記録」される「ディスクD4」の「ブロック」は,本願発明の「パリティストライプ」に相当する。
構成hによれば,引用発明は,「ディスクシステムを初期化するのをやめてしま」っているので,引用発明の「まだなにも記録されていない状態」は,本願発明の「データが書き込まれていな」いという状態に相当する。
したがって,引用発明の,「D11が記録された状態でD21が記録される場合,」「データD21のVのデータ」が「記録」される「ディスクD2」の「ブロック」および「パリティP1Y」が「記録」される「ディスクD4」の「ブロック」に「まだなにも記録されていない状態」は,本願発明の「更新対象ストライプおよび」「パリティストライプにデータが書き込まれていな」いという状態に相当する。
(5)構成C3について
構成c,h,iによれば,「従来であれば」,「パリティP1Y」は,「新しいデータ」である「データD21のVのデータ」と,「古いデータ」である「データD21のVのデータ」が「書き込まれるべき部分」のデータと,「現在のパリティデータ」である「パリティP1Y」が「書き込まれるべき部分」のデータの3つのデータの「XOR」の処理によって「生成」されていたところ,引用発明では,「データD21のVのデータ」のみから「パリティP1Y」が「生成」されていることからみて,引用発明は,「データD21のVのデータ」が「書き込まれるべき部分」と,「パリティP1Y」が「書き込まれるべき部分」に,「初期値0」が「書き込まれているとみなし」ており,これにより,本来であれば,「データD21のVのデータ」と,「データD21のVのデータ」が「書き込まれるべき部分」に「書き込まれているとみな」された「初期値0」と,「パリティP1Y」が「書き込まれるべき部分」に「書き込まれているとみな」された「初期値0」の3つのデータの「XOR」によって「生成」される「パリティP1Y」として,結果的に同じ値になる「データD21のVのデータ」を用いているものと認められる。
ここで,引用発明の,「データD21のVのデータ」が「書き込まれるべき部分」に「書き込まれているとみな」された「初期値0」は,本願発明の「更新対象ストライプ」の「0データである所定データ」に相当する。
したがって,引用発明と本願発明とは,「更新対象ストライプに0データである所定データが書き込まれているとみなし」ている点で一致する。
(6)構成C4について
構成d,iによれば,引用発明の,「データの記憶時」の「ホストコンピュータ1からの」「データ」は,「データの記憶時」の「ホストコンピュータ1からの命令」と共に「メモリ4に記憶」され,その後,「ディスク」に「記録」される対象の「データ」であるので,本願発明の「書き込み命令のデータである更新対象データ」に相当する。
構成iによれば,引用発明は「ディスクD2」に「データD21のVのデータ」を「記録」しているところ,引用発明は「ホストコンピュータ1からの」「データ」を「ディスクD2」に「データD21のVのデータ」として「記録」するまでに,「データ」を修正していないから,「ホストコンピュータ1からの」「データ」を「修正せずに」「ディスクD2」に「記録」される「データD21のVのデータ」「とし」ているといえる。
したがって,引用発明の「データD21のVのデータ」は,本願発明の「更新対象データを修正せずに修正後のデータ」としたデータに相当し,引用発明の「ディスクD2」に「データD21のVのデータ」を「記録」することは,本願発明の「修正後のデータを」「更新対象ストライプに書き込」むことに相当する。
(7)構成C5について
上記(5)の検討を参照すれば,引用発明の,「パリティP1Y」が「書き込まれるべき部分」に「書き込まれているとみな」された「初期値0」および「データD21のVのデータ」が「書き込まれるべき部分」に「書き込まれているとみな」された「初期値0」は,それぞれ本願発明の「0データである所定パリティデータ」および「0データである」「所定データ」に相当する。
引用発明の「データD21のVのデータ」および「パリティP1Y」は,それぞれ本願発明の「更新対象データ」および「パリティストライプに書き込むデータ」に相当する。
構成iによれば,引用発明は,「データD21のVのデータ」を「パリティP1Y」としているので,「データD21のVのデータ」「に基づいて」「パリティP1Y」を「生成」しているといえる。
したがって,引用発明と本願発明とは,下記の点で相違するものの,“更新対象データに基づいて”“パリティストライプに書き込むデータを生成”する点で共通する。
(8)構成C6について
構成iによれば,引用発明の,「生成」した「パリティP1Y」を「ディスクD4」の「ブロック」に「記録」することは,本願発明の「生成した」「データをパリティとして」「パリティストライプに書き込」むことに相当する。
構成bによれば,引用発明の「アレイコントローラ」は,本願発明の「制御手段」に対応する。
(9)構成Dについて
構成eによれば,引用発明の「アレイ型記録装置」は,本願発明の「ディスクアレイ装置」に対応する。
2 上記(1)から(9)の検討内容を踏まえると,本願発明と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
(一致点)
「データ書き込み用ストライプであるデータストライプを包含する複数のディスク装置と、
前記複数のデータストライプに対するパリティ書き込み用ストライプであるパリティストライプを包含するディスク装置と、
前記複数のデータストライプの何れかへの書き込み命令を取得し、更新対象ストライプおよび前記パリティストライプにデータが書き込まれていなければ、前記更新対象ストライプに0データである所定データが書き込まれているとみなし、書き込み命令のデータである更新対象データを修正せずに修正後のデータとし、修正後のデータを前記更新対象ストライプに書き込み、かつ、前記更新対象データに基づいて前記パリティストライプに書き込むデータを生成し、生成した前記データをパリティとして前記パリティストライプに書き込む制御手段と、
を備えるディスクアレイ装置。」
(相違点)
「パリティストライプに書き込むデータを生成」する際に,本願発明は,「0データである所定パリティデータ」、「0データである」「所定データ」および「更新対象データ」に基づいて「生成」しているのに対して,引用発明は,「データD21のVのデータ」(「更新対象データ」)のみに基づいて「生成」している点。
第6 判断
1 相違点について
XORによってパリティを生成するに当たり,「所定データ」および「所定パリティデータ」が「0データ」の場合,本願発明の,「所定パリティデータ」,「所定データ」および「更新対象データ」に基づいて生成(つまり,XORを実行して生成)する方法であっても,引用発明の,「データD21のVのデータ」(「更新対象データ」)のみに基づいて生成(つまり,XORを実行しないで生成)する方法であっても,同じ値が得られることは明らかである。
ここで,本願発明の方法では,「更新対象ストライプおよびパリティストライプにデータが書き込まれてい」るか否かによらず,パリティを生成する処理を同一(書き込まれている場合も,書き込まれていない場合も,XORを実行して生成)にすることができるから,プログラムの可読性が高い一方,引用発明の方法では,「更新対象ストライプおよびパリティストライプにデータが書き込まれてい」るか否かによって,パリティを生成する処理を別々(書き込まれている場合はXORを実行して生成,書き込まれていない場合はXORを実行しないで生成)にしなければならないから,プログラムの可読性が低いといえる。
他方で,本願発明の方法では,「更新対象ストライプおよびパリティストライプにデータが書き込まれていな」い場合でも,XORを実行しないとパリティが生成できないので,処理に掛かる時間が長い一方,引用発明の方法では,「更新対象ストライプおよびパリティストライプにデータが書き込まれていな」い場合は,XORを実行せずにパリティが生成できるので,処理に掛かる時間が短いともいえる。
そして,プログラミングの技術分野においては,同じ値(「パリティストライプに書き込むデータ」)が得られる複数の方法がある場合に,条件(「更新対象ストライプおよびパリティストライプにデータが書き込まれてい」るか否か)によらず処理を同一にする方法を採用するか,条件によって処理を別々にする方法を採用するかは,プログラムの可読性と処理に掛かる時間の長さを考慮して,当業者が適宜選択し得る設計的事項である。
そうすると,引用発明において,処理時間の短縮とプログラムの可読性のうちのプログラムの可読性を優先させることで,「0データである所定パリティデータ」,「0データである」「所定データ」および「データD21のVのデータ」(「更新対象データ」)に基づいて,「パリティストライプに書き込むデータを生成」するように構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。
そして,上記相違点を総合的に勘案しても,本願発明の奏する作用効果は,引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
第7 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2020-003173