特許拒絶査定不服審判
2020-002773
ブチルゴムの製造用希釈剤
- 審判番号
- 2020-002773
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-565318
- 請求日
- 2020年02月28日
- 審決日
- 2021年06月21日
- 公報発行日
- 2021年12月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アランセオ・シンガポール・プライヴェート・リミテッド
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 審判長/審判官
- 審判長 佐藤 健史
- 審判官 杉江 渉
- 審判官 加藤 友也
- 分類
- P18 .121-Z (C08F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-565318「ブチルゴムの製造用希釈剤」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月5日国際公開、WO2015/164972、平成29年 6月22日国内公表、特表2017-516891〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
この出願(以下、「本願」という。)は、2015年(平成27年)4月30日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2014年4月30日、欧州特許庁)を国際出願日とする特許出願(特願2016-565318号)であって、以降の手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年 3月20日付け 拒絶理由通知
令和 1年 6月25日 意見書・手続補正書
令和 1年10月23日付け 拒絶査定
令和 2年 2月28日 審判請求書
第2 本願発明について
本願の請求項1~24に係る発明は、令和1年6月25日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1~24に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1は、以下のとおりである。(以下「本願発明」という。なお、本願の明細書を、以下「本願明細書」という。)
「エラストマーの製造方法であって、少なくとも以下の工程:
a)有機希釈剤と少なくとも2種のモノマーとを含む反応媒体を提供し、ここで少なくとも1種のモノマーがイソブテンであり、少なくとも1種のモノマーがイソプレンである工程;
b)開始剤系の存在下で反応媒体中のモノマーを重合させて、コポリマー、および有機希釈剤を含む有機媒体を生成させる工程
を含み、
ここで前記有機希釈剤は、
・48から52体積%の塩化メチル、および
・48から52体積%の1,1,1,2-テトラフルオロエタン
を含み、前記塩化メチルおよび1,1,1,2-テトラフルオロエタンは、有機希釈剤の全体積の90から100体積%を占める、エラストマーの製造方法。」
第3 原査定の理由の概要
原査定における拒絶の理由の概要は、本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないという理由を含むものである。
1.特表2010-522262号公報
第4 本願明細書及び引用文献に記載された事項
1 本願明細書に記載された事項
本願明細書には、以下の事項が記載されている。
(本a)「【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な希釈剤中におけるスラリー法による、ブチルゴムの有効な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム、特にイソオレフィンから誘導される繰返し単位を含有するものは、カルボカチオン重合法によって工業的に製造される。特に重要なのは、イソブチレンとより少量のマルチオレフィン、例えばイソプレンとのエラストマーである。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、適用される低温では、重合速度は典型的には低く、従来技術の方法と比較してより高い処理量を可能にする方法を提供することが望まれている。」
(本b)「【0016】
(モノマー)
この実施態様では、工程a)において、有機希釈剤と少なくとも2種のモノマーとを含む反応媒体が提供され、ここでは少なくとも1種のモノマーがイソオレフィンであり、少なくとも1種のモノマーがマルチオレフィンである。
・・・
【0018】
好適なイソオレフィンの例には、・・・、例えば、イソブテン、・・・が含まれる。好ましいイソオレフィンは、イソブテンである。
本明細書で使用される通り、マルチオレフィンなる語は、共役または非共役の、一つ以上の炭素-炭素二重結合を含む化合物を意味する。
【0019】
好適なマルチオレフィンの例には、イソプレン、・・・が含まれる。
好ましいマルチオレフィンは、イソプレンおよびブタジエンである。イソプレンが特に好ましい。
・・・
【0022】
別の実施形態では、モノマー混合物は、使用される全モノマーの合計質量に基づいて、90質量%から95質量%の範囲の少なくとも1種のイソオレフィンモノマー、並びに、5質量%から10質量%の範囲のマルチオレフィンモノマーを含む。・・・イソオレフィンは好ましくはイソブテンであり、マルチオレフィンは好ましくはイソプレンである。」
(本c)「【0026】
(希釈剤)
一実施形態では、希釈剤は、
・42から58体積%の塩化メチル、および
・42から58体積%の1,1,1,2-テトラフルオロエタン
を含み、前記2つの成分は、合計で希釈剤全体積の90から100体積%、好ましくは95から100体積%、より好ましくは98から100体積%、さらにより好ましくは99から100体積%を占める。
【0027】
別の実施形態においては、希釈剤は、
・45から55容量%の塩化メチル、および
・45から55体積%の1,1,1,2-テトラフルオロエタン
を含み、前記2つの成分は、合計で希釈剤全体積の90から100体積%、好ましくは95から100体積%、より好ましくは98から100体積%、さらにより好ましくは99から100体積%を占める。
【0028】
さらに別の実施形態において、希釈剤は、
・48から52容量%の塩化メチル、および
・48から52体積%の1,1,1,2-テトラフルオロエタン
を含み、前記2つの成分は、合計で希釈剤全体積の96から100体積%、好ましくは98から100体積%、より好ましくは99から100体積%、さらにより好ましくは99.5から100体積%を占める。
【0029】
100体積%までの残部が存在する場合は、これは塩化メチルおよび1,1,1,2-テトラフルオロエタン以外の希釈剤、例えば他のフッ素化または塩素化炭化水素、あるいはフッ素化および塩素化炭化水素、あるいは脂肪族炭化水素を含んでよい。
別の塩素化炭化水素の例には、塩化メチレンまたは塩化エチルが含まれる。」
(本d)「【0034】
(開始剤系)
工程b)において、反応媒体中のモノマーを開始剤系の存在下で重合させ、エラストマー、有機希釈剤、および任意の残留モノマーを含む媒体を生成させる。
【0035】
特にカチオン重合によって得られるエラストマーのための開始剤系は、典型的には、少なくとも1種のルイス酸および少なくとも1種の開始剤を含む。
【0036】
(ルイス酸)
・・・
【0037】
さらに適切なルイス酸には、式M(m)X(3-m)(式中、Mは第13族元素であり、Xはハロゲンであり、RはC1からC12アルキル、・・・からなる群より選択される一価の炭化水素基であり;mは1または2である)で表される化合物が含まれる。
【0038】
このような化合物の例には、・・・、エチルアルミニウムジクロライド、・・・、及びこれらの混合物を含む。好ましいのは、・・・、エチルアルミニウムジクロライド(EtAlCl2またはEADC)、・・・およびこれらの混合物である。
・・・
【0061】
(開始剤)
本発明に有用な開始剤は、選択されたルイス酸と複合して、モノマーと反応することにより成長するポリマー鎖を形成する錯体をもたらすことのできる、開始剤である。
【0062】
好ましい実施形態において、開始剤は、水、ハロゲン化水素、・・・、アルコール、・・・、第三級アルキルエーテル、第三級アラルキルエーテル、・・・からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含む。
【0063】
好ましいハロゲン化水素開始剤には、塩化水素、臭化水素、およびヨウ化水素が含まれる。特に好ましいハロゲン化水素は塩化水素である。
・・・
【0069】
本発明において有用なアルコールには、メタノール、・・・が含まれる。・・・
【0078】
別の特に好ましい開始剤系では、ルイス酸はエチルアルミニウムジクロライドであり、好ましくは希釈剤中にある。
・・・
【0081】
別の実施形態では、塩化水素の量は、ハロゲン化アルキルアルミニウムのアルミニウム1モル当たりの塩化水素が0.10から1モルの範囲であり、好ましくは、ハロゲン化アルキルアルミニウムのアルミニウム1モル当たりの塩化水素が0.2から0.5モルの範囲である。」
(本e)「【0082】
(重合条件)
一実施形態では、使用される有機希釈剤及びモノマーは、実質的に水を含まない。本明細書中における実質的に水を含まないとは、反応媒体の総質量に基づいて50ppm未満、好ましくは30ppm未満、より好ましくは20ppm未満、さらにより好ましくは10ppm未満、まださらに好ましくは5ppm未満と定義される。
【0083】
当業者は、例えば開始剤として作用することを意図して添加されたものでない、付加的な量の水によって開始剤系が影響されることが確かにないように、有機希釈剤及びモノマー中の水分含量を低くする必要のあることを認識している。
【0084】
工程a)および/またはb)は、連続法またはバッチ法で実施してよく、連続法が好ましい。
・・・
【0093】
前記方法は、バッチ式でも、または連続的に実施しても良い。連続反応が行われるされる場合は、上述の反応時間は、平均滞留時間を表す。
・・・
【0095】
別の実施形態では、反応は、工程c)における水性媒体との接触によってクエンチされるが、前記水性媒体は、一実施形態では、20℃で1013hPaにおいて測定し、5から10、好ましくは6から9、より好ましくは7から9のpH値を有して良い。
・・・
【0099】
典型的には、工程c)では、モノマー混合物の残留モノマーが、好ましくはさらに希釈剤が、反応媒体から、好ましくは蒸留によって少なくとも部分的に除去されてエラストマーが得られる。」
(本f)「【実施例】
【0107】
実験:
(重合のための一般操作)
全ての重合は、乾燥した不活性雰囲気中で行った。バッチ反応は、外部の電動攪拌機によって駆動されるオーバーヘッドの4ブレードステンレススチールインペラーを備えた600mLのステンレススチール製反応容器内で行った。反応温度は熱電対によって測定した。反応器を、組み立てた反応器をペンタン冷却浴に浸漬することにより、表に記載された所望の反応温度に冷却した。攪拌した炭化水素浴の温度を±2℃に制御した。反応媒体と液体接触するすべての装置を、使用前に、150℃で少なくとも6時間乾燥させ、真空-窒素雰囲気置換チャンバ(vacuum-nitrogen atmosphere alternating chamber)内で冷却した。
【0108】
製造設備から高純度のイソブテンと塩化メチルを受け取り、そのまま使用した。ヒドロフルオロカーボン1,1,1,2-テトラフルオロエタン(純度99.9%超)(HFC-134a、Genetron@ 134a)を受け取ったまま使用した。すべてを凝縮し、ドライボックス内に液体として回収した。
イソプレン(Sigma-Aldrich、純度99.5%超)を、活性化した3Aモレキュラーシーブ上で数日間乾燥させ、窒素下で蒸留した。ヘキサン中のエチルアルミニウムジクロライドの1.0M溶液(Sigma-Aldrich)を受け取ったまま使用した。
HCl/CH2Cl2の溶液を、無水のHClガス(Sigma-Aldrich、純度99%)を、無水CH2Cl2(VWR)を含む予め乾燥させたSure/Steal(登録商標)ボトルに通気することによって調製した。次いで、HCl/CH2Cl2の溶液を、0.1NのNaOH(VWR)標準溶液を用いて滴定し、その濃度を決定した。
【0109】
スラリー重合は、冷却された600mLのステンレススチール反応容器にイソブテン、イソプレン、及び(各実施例において特定される)希釈剤を重合温度で仕込むことにより行われ、500から900 rpmの規定の攪拌速度で攪拌した。
【0110】
開始剤系を塩化メチル中で調製した。開始剤系は、HCl/CH2Cl2溶液を希釈して塩化メチルのアリコートとし、エチルアルミニウムジクロライドの1.0M溶液をモル比が1:4のHCl:EADCに加えた後に穏やかに攪拌することによって、反応容器と同様の条件下で準備した。開始剤/共開始剤溶液は即座に使用され、冷却したガラスパスツールピペットを使用して重合に添加された。反応を5分間進行させ、エタノール溶液中1%の水酸化ナトリウム2mLの添加により停止させた。転化は、ポリマーの単離及び真空乾燥の後に、重合の間にポリマーに転化されたモノマーの質量%として報告される。
【0111】
(ラマン分光法)
・・・
【0112】
(特性評価):・・・
【0113】
ポリマーの分子量は、Waters 2690/5 Separations ModuleおよびWaters 2414 屈折率検出器を使用するGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって測定した。テトラヒドロフランを、一連の3つのAgilent PLゲル10μm Mixes-B LS300×5.7mmカラムと共に、溶出液(0.8mL/分、35℃)として使用した。
【0114】
(実施例1から5)
一連の重合を、純粋塩化メチル、純粋1,1,1,2-テトラフルオロエタン、および、様々なブレンド比の1,1,1,2-テトラフルオロエタンと塩化メチル中、-95℃で行った。すべての重合は、以上の記述と矛盾なく行った。重合は、希釈剤180mL、イソブテン20mL、およびイソプレン0.6mL(2.3mol%)を用いて行った。開始剤系溶液は、80mLの塩化メチル中に、11mLの0.18M HCl/CH2Cl2溶液およびエチルアルミニウムジクロライド(EADC)の1.0Mヘキサン溶液8mLを添加することによって調製した。実施例1から5の全ての重合のために、5mlの前記開始剤系溶液を使用した。
【0115】
Ramanプローブを、反応の進行を観察するために反応媒体中に直接設置した。結果を表1にまとめる。
【0116】
【表1】
【0117】
実施例1から5の転化および反応デルタTを、図1および図2に示す。v/v比が50/50の塩化メチルおよび1,1,1,2-テトラフルオロエタンについて、反応中の最も大きな温度上昇、しかるに最も高い重合速度が観察されること、及び製造されたブチルゴムの収量もこの希釈率で最高であることは、明らか且つ驚くべきである。図1に示されるように、観察された温度上昇および転化率は、塩化メチルまたはHFC-134Aの比が100%にまで増加するにつれて、減少する。これは、重合反応器のスループットを最大化するための連続スラリー製造法にとって重要な利点である。
【0118】
これに加え、塩化メチルとHFC-134Aとの様々な比率で実施されたスラリー重合反応によって製造されたブチルゴムは、50/50の塩化メチルおよび1,1,1,2-テトラフルオロエタンについて、最小の多分散性(PDI)を示した。図3に示されるように、塩化メチルまたはHFC-134Aの増加により、多分散性がより大きな生成物が得られる。狭い分子量分布は、加工特性に優れた材料を生成し得ることから、これはタイヤインナーライナー化合物を製造するための混合操作に有利である。」
(本g)「【図1】
【図2】
【図3】
」
2 引用文献に記載された事項
本願の優先日前である平成22年7月1日に頒布された刊行物である特表2010-522262号公報(上記「引用文献1」と同じ。以下においても、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(引1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のモノマーを重合してイソオレフィンポリマー及びコポリマーを製造する重合方法において、
1以上のモノマーと、希釈剤と、触媒系とを含む重合媒体中の、1以上のモノマーを重合する工程を備え;希釈剤が1以上のハロゲン化炭化水素から成り;
触媒系が1以上のルイス酸と、1以上の開始剤及び1以上の多形態形成剤を含む複数の改質剤とを含有し;
重合媒体中の1以上の多形態形成剤の濃度を、イソオレフィンポリマー及びコポリマーの制御されたMWDが2.0より大きくなるように調整する、重合方法。
・・・
【請求項18】
希釈剤が、塩化エチル、塩化メチル、塩化メチレン、CHCl3、CCl4、塩化ノルマルブチル、クロロベンゼン、およびこれらの組合せから成る群から選択される、請求項1から17のいずれか1項に記載の重合方法。
【請求項19】
希釈剤がさらに、炭化水素、非反応性オレフィン、および/または、不活性ガスのいずれかを含む、請求項1から18のいずれか1項に記載の重合方法。
【請求項20】
希釈剤が、1以上のハイドロフルオロカーボン(HFC)を含む、請求項1から19のいずれか1項に記載の重合方法。
【請求項21】
希釈剤が、希釈剤の全重量に対し15から100容積%のHFCを含む、請求項20に記載の重合方法。
・・・」
(引1b)「【技術分野】
【0001】
この発明は、触媒系に多形態形成剤を用いて多分散性または分子量分布(MWD)を制御する、新規な重合方法及び重合システムに関する。
【背景技術】
【0002】
イソオレフィンポリマーは、カルボカチオン重合プロセスで製造される。特に重要なものは、イソブチレンと少量のイソプレンとの共重合体のブチルゴムである。ブチルゴムは低温カチオン重合によって製造される。低温カチオン重合では一般に、高分子量のブチルゴムを製造するために、純度>99.5wt%のイソブチレンと、純度>98.0wt%のイソプレンとが必要とされる。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この発明は、本願で多形態形成剤と呼ぶ新規な触媒系改質剤を用いる新規な重合システム、及びプロセスを提供するものである。多形態形成剤は、触媒系を改質して、異なる重合速度、すなわち、異なる成長速度、連鎖移動速度、停止反応速度を有する複数の異なる活性触媒種の形成を促進、もしくは擬態し、多形態形成剤が異なる比率で存在するとき、異なる多分散性が示される。
多形態形成剤は、酸素分子、カルコゲン含有化合物から選択され、例えば有機酸素含有化合物、及びこの酸素含有化合物に対応する硫黄化合物が含まれる。
希釈剤中でルイス酸と開始剤を用いたイソオレフィンモノマーの重合において、多形態形成剤はポリマー製品の分子量分布特性(MWDを含む)を調整する制御手段として用いられる。」
(引1c)「【0043】
<モノマー及びポリマー>
本願の重合システムで重合されるモノマーには、この発明により重合可能な全ての炭化水素モノマーが含まれる。
好ましいモノマーには、1以上のオレフィン、α-オレフィン、二置換オレフィン、イソオレフィン、共役ジエン、非共役ジエン、スチレン系および/または置換されたスチレン系、及びビニルエーテルが含まれる。
・・・
【0046】
好ましいポリマーには、本願に開示する全てのモノマーのホモポリマーが含まれる。
ホモポリマーの例として、・・・などが挙げられる。また、好ましいポリマーには、1)・・・、及び2)イソブチレンとイソプレンのコポリマーが含まれる。」
(引1d)「【0049】
<ルイス酸>
好ましい実施形態では、ルイス酸(共開始剤または触媒とも呼ばれる)は、周期律表の第4,5,13,14及び15族の金属のルイス酸であり、周期律表の第4,5,13,14及び15族の金属のルイス酸には、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、チタン、ジルコニウム、スズ、バナジウム、砒素、アンチモニー、及びビスマスが含まれる。
当業者であれば、これらの元素のいくつかはこの発明に適していることを理解できるであろう。ひとつの実施形態では、金属はアルミニウム、ホウ素、及びチタンであり、アルミニウムが好ましい。
・・・
【0058】
特に好ましいルイス酸は、イソブチレンコポリマーのカチオン重合に適したものであり、・・・、エチルアルミニウムジクロリド、・・・等が挙げられ、エチルアルミニウムジクロリドと、・・・が好ましい。」
(引1e)「【0060】
<多形態形成剤>
この発明の多形態形成剤には、ルイス酸と開始剤とから成るカルボカチオン重合触媒系中の触媒錯体を改質または一部改質して、異なる重合速度を有する複数の異なる活性触媒錯体種の形成を促進、もしくは擬態することができる元素または化合物が含まれる。
・・・
【0061】
多形態形成剤は、酸素分子、カルコゲン含有化合物から選択され、有機酸素含有化合物、及びこの酸素含有化合物に対応する硫黄化合物が含まれる。
・・・
【0062】
この発明で用いられる酸素含有化合物には、置換または非置換のエーテル、ケトン、アルデヒド、アルコール、エステル、カルボン酸等が含まれる。酸素含有化合物は、1個から12個の炭素原子を有し、好ましくは1個から8個の炭素原子、より好ましくは2個から5個の炭素原子を有する。
・・・
【0068】
ひとつの実施形態では、1以上の有機酸素含有化合物は、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、イソプロピルプロピルエーテル、アセトン、及びメチルエチルケトンから選択される。
【0069】
ひとつの実施形態では、1以上の有機酸素含有化合物は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール異性体、及びイソブタノール異性体から選択されるアルコールから成る。
【0070】
別の実施形態では、1以上の有機酸素含有化合物は、メタノール、ジメチルエーテル、アセトン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、及びメチルエチルケトンから選択される。」
(引1f)「【0073】
<開始剤>
この発明で用いる開始剤は、適切な希釈剤中において選択されたルイス酸と錯体を形成し、オレフィンと急速に反応してオレフィン鎖を成長させる錯体となり得るものである。
・・・
【0077】
好ましい実施形態では、開始剤はハロゲン化水素、カルボン酸、カルボン酸ハライド、スルホン酸、アルコール、フェノール、三級アルキルハライド、三級アラルキルハライド、三級アルキルエステル、三級アラルキルエステル、三級アルキルエーテル、三級アラルキルエーテル、アルキルハライド、アリールハライド、アルキルアリールハライド、アリールアルキル酸ハライドのうちの、いずれか1以上である。
・・・
【0078】
好ましいハロゲン化水素開始剤には、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素が含まれる。特に好ましいハロゲン化水素は、塩化水素である。
・・・
【0087】
この発明に用いられる触媒組成物は、
(1)ルイス酸共開始剤、及び(2)少なくとも1の開始剤(多形態形成剤であってもよい)と、少なくとも1の多形態形成剤(改質剤であってもよい)とを含む少なくとも2種類の改質剤からなる。」
(引1g)「【0097】
<希釈剤>
この発明の希釈剤には、ハロゲン化炭化水素、特に塩化および/またはフッ化炭化水素等が含まれる。
・・・
【0105】
HFCを希釈剤として用いる場合、HFCは希釈剤の全容積に対する割合は、1から100容積%であり、あるいは、下限値が5, 10, 15, 20, 25, 30, 35, 40, 45, 50, 55, 60, 65, 70, 75, 80, 85, 90, 95, 97, 98, または99容積%である。
好ましい実施形態では、HFCは1以上の塩化炭化水素と組み合わせて用いられる。別の好ましい実施形態では、HFCはジフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1-ジフルオロエタン、1,1,1-トリフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、及びこれらの混合物から成る群から選択される。」
(引1h)「【0111】
<重合プロセス>
図1は、この発明の非限定的実施形態の重合システムまたはプロセスの模式図である。
ライン10からのイソブチレン、ライン12からのコモノマー、貯槽14からの希釈剤14a、及びライン16からの多形態形成剤が、供給物混合装置18において混合される。多形態形成剤が添加される点を除き、供給物混合装置18は公知である。
必要に応じて不純物を除くために、イソブチレン、および/またはコモノマーを供給物混合装置18へ送る前に乾燥し分留することは、一般に公知である。
触媒調合ユニット20は、開始剤22とルイス酸24とを混合し、この触媒錯体を希釈剤貯槽14から供給される所定量の希釈剤14bで希釈するための公知の装置を備える。所望により、任意成分の多形態形成剤を、ライン26から触媒調合ユニット20へ導入することができる。
【0112】
モノマーは供給物混合装置18からライン28を経由し、任意にチラー30を通して重合反応器32へ供給される。同様に、触媒錯体は触媒調合ユニット20からライン34を経由し、任意にチラー36を通して重合反応器32へ供給される。
この発明は連続及びバッチプロセスで実施することができる。さらに、反応器32にはプラグフロー反応器、および/または、撹拌槽反応器を用いることができる。チラー30と36は任意に設けることができ、供給物混合装置18、および/または触媒調合ユニット20の上流または下流に設けることができる。
・・・
【0115】
反応器32からのポリマーを含有する流出液56は、所望により、ライン58から供給されるスチームまたは熱水等の失活媒体により失活させることができる。次に、ポリマー回収ユニット60において、例えばフラッシュタンクまたはストリッパー中で、失活媒体の熱を利用して希釈剤と未反応モノマーを蒸発させることにより、ポリマーをスラリーから分離する。
蒸発した蒸気ストリーム62は、希釈剤回収ユニット64で乾燥、分留されて、再循環希釈剤流れ66と、同様に再循環される回収モノマー流れ68と、1以上の多形態形成剤または水ストリーム70とが得られる。
・・・
ポリマー回収ユニット60、希釈剤回収ユニット64、及び最終工程74に用いられる装置と方法は公知である。
・・・
【0119】
この発明は、モノマー、希釈剤、触媒及び酸素含有化合物を反応器32に投入し、次に重合反応を生じさせて(例えば失活させて)完了させた後、ポリマーを回収するバッチ反応器で実施することもできる。
【0120】
反応器32内にある反応したモノマーは、スラリーの一部を構成する。ひとつの実施形態では、スラリー中の固形分は10vol%以上、別の実施形態では25vol%以上で、75vol%未満である。あるいは、1から70vol%、5から70vol%、10から70vol%、15から70vol%、20から70vol%、25から70vol%、30から70vol%、または40から70vol%の範囲である。
【0121】
一般に、連続流撹拌機付タンク型反応器32が用いられる。反応器32は、通常ターボミキサーやインペラー等の効率的な撹拌手段、及び外部冷却ジャケット、および/または、内部冷却管および/またはコイル等の、重合熱を除熱して所定の反応温度を維持するための手段、及びモノマー、希釈剤、触媒及び多形態形成剤の(個別または組合せられた)供給手段(例えばライン28とライン34の各末端に設けられた入口パイプ)、及び温度測定手段、反応器からポリマー、希釈剤、及び未反応モノマーを抜き出して貯蔵ドラムまたは失活タンク(図示せず)へ移送するオーバーフローまたはアウトフロー配管を備える。
反応器32から、空気と水分がパージされていることが好ましい。当業者であれば、装置の構成と操作方法を理解できるであろう。
・・・
【0132】
反応器32での全滞留時間は、例えば触媒活性及び触媒濃度、モノマー濃度、供給物注入速度、生産速度、反応温度、及び目標分子量によって異なり、一般的には約数秒から5時間、典型的には約10から60分である。滞留時間に影響する要因には、モノマー及び希釈剤供給速度及び反応器の全容積が含まれる。」
(引1i)
【0135】
ひとつの実施形態では、カチオン重合可能なモノマーの重合(例えばイソブチレンとイソプレンの重合によるブチルゴムの製造)はいくつかの工程からなる。
・・・
【0136】
ひとつの実施形態では、この発明により得られるポリマーは、分子量分布が約2から5で、不飽和度がモノマー100モルにつき0.5から2.5モルの、ポリイソブチレン/イソプレン(ブチルゴム)である。・・・」
(引1j)「【実施例】
【0141】
重合は、実験室スケールの連続反応器を用いて行なった。この反応器はステンレス製であり、モノマー及び供給触媒を導入可能で、また製造されたポリマーを連続的に取り出せるように設計されていた。混合は、ステンレス製シャフトに取り付けられた三枚の撹拌翼を有し、外部電気モーターで駆動されるインペラーを用いて行なった。
・・・
この反応器の温度制御は、不活性雰囲気下のグローブボックス内で、ペンタンまたはイソヘキサン浴に反応器を浸して、各実施例に示す所望の反応温度に冷却することにより行なった。この炭化水素浴を撹拌し、温度を、±2℃で制御した。反応媒体と液接触する全ての装置は、使用する前に120℃で乾燥させ、窒素雰囲気下で乾燥させた。
イソブチレン(Matheson社製、またはExxonMobil社製)及び塩化メチル(Air Gas社製)の乾燥は、これらのガスを3本の酸化バリウム入りステンレス製カラムに通して乾燥させ、グローブボックス中で凝縮させ、生じた液を回収することにより行なった。または、塩化メチルの乾燥は、液状の塩化メチルにトリエチルアルミニウムを低温で添加し、次にこの溶液から塩化メチルをそれ自身の蒸気圧で蒸発させることにより蒸留して行なった。
1,1,1,2-テトラフルオロエタン(134a)(National Refrigerants社製)の乾燥は、ガスを3本の3Åのモレキュラーシーブ入りステンレス製カラムに通して乾燥させ、グローブボックス中で凝縮させ、生じた液を回収することにより行なった。
イソプレン(Aldrich社製)は使用する前に蒸留するか、またはそのまま使用した。
HCl溶液は、塩化メチルまたは134aを用い、この凝縮液に低温下で気体状のHCl (Aldrich社製、純度99%)を溶解させて調製した。この溶液中のHCl濃度は、標準的な滴定法で測定した。以下の実施例で、「ブレンド」と呼ぶ希釈剤組成物は134aと塩化メチルの50/50wt/wt混合物である。
【0142】
スラリー共重合反応は、先ず供給モノマーと供給触媒を調製して行なった。
供給モノマーはイソブチレン、イソプレン、選択された希釈剤、及び任意成分の他の酸素含有化合物から成り、ガラス製または金属製容器内で調製した。
重合実験1、及び3から11の供給モノマーはイソブチレンを20wt%含有するものであった。
・・・
イソプレンは、イソブチレンに対し2.8モル%となるように供給モノマーに添加した。
メタノールを故意に添加した場合は、供給モノマー中の濃度が表1に示した値になるように供給モノマーに添加した。
表1と図2で用いた用語の定義は以下の通りである。
MeOH = メタノール;DME = ジメチルエーテル;Et2O = ジエチルエーテル;DIPE = ジイソプロピルエーテル;MEK = メチルエチルケトン;134a = 1,1,1,2-テトラフルオロエタン;MeCl = 塩化メチル;ブレンド = 134aとMeClの50/50wt/wt混合物;IB =イソブチレン
【0143】
重合実験4から11で用いた塩化メチルは、そのガスを前記の乾燥剤に通して乾燥させたものである。微量のメタノール、ジメチルエーテル、及びアセトンは、この乾燥剤では完全に除去されず、塩化メチル中に残存する。
塩化メチル中のこれらの成分の残存量はガスクロマトグラフィー(GC)で測定した。GCで求めたこれらの有機酸素含有化合物の分析値は、最終的供給原料中におけるこれらの成分の全濃度の計算に用いた。これらの実施例について、全酸素含有化合物濃度を表1に示す。
重合実験12から15で用いた塩化メチルは、トリエチルアルミニウムで処理された液状塩化メチルから蒸発させて得たものである。この方法では、有用なメタノール、ジメチルエーテル、及びアセトンが除去される。このため、表1に示すように、これらの重合実験で用いられた塩化メチルはこれらの酸素含有化合物を、故意に添加されない限り、含有していない。これは表1に示されている。HFC 134aは、これらの酸素含有化合物を含有しない。
【0144】
供給触媒は、共重合反応毎に別々の容器で調製した。供給触媒は、所定量の前記HCl溶液、エチルアルミニウムジクロリド(EADC)炭化水素溶液、及び任意成分の有機酸素含有化合物を添加して調製した。全ての実施例において、供給触媒中のEADC/HClモル比は3.0であった。
・・・
【0145】
また、重合を開始するために、開始供給モノマーを調製して反応器へ投入した。この開始供給モノマー中のイソブチレンモノマー濃度は、10wt%であった。またこの開始供給モノマーに、イソブチレンに対し2.8モル%のイソプレンを添加した。全ての供給原料を、グローブボックス中の前記炭化水素浴を用いて、反応器と同じ温度まで冷却した。
塩化メチル中での重合は、反応器温度約-95℃±3℃で行なった。134a、またはブレンド中での重合は、反応器温度約-75±3℃で行なった。
重合開始前に、炭化水素浴の温度を数度下げ、炭化水素浴と反応器内容物の初期温度差を付けた。反応器に触媒を導入して共重合反応を開始した。反応器と炭化水素浴の温度差が一定になるように触媒の流量を調整して、その重合実験の目標重合温度を達成した。任意に、目標重合温度を達成するために、炭化水素浴の温度を下げた。
ポリマー粒子(スラリー粒子)の沈殿が生じたことで反応の開始を確認した約10分後に、追加の供給モノマーを容器から反応器に導入した。重合実験は、容器中の供給モノマーが無くなるか、あるいは予定量の供給モノマーが消費されるまで行なった。一般に、平均モノマー転換率は75%を超えており、95%に達することもあった。
【0146】
重合実験の終了直前に、反応器から分子量測定用のポリマーのサンプルを採取した。このサンプルは、各実験の安定した重合条件下で製造された製品のサンプルである。このポリマーサンプルを、サイズ排除クロマトグラフィーで分析し、数平均分子量、重量平均分子量、及びMWDを求めた。本願に示す各実験のMWDは、重量平均分子量を数平均分子量で割った値である。
・・・
【0149】
表1の各実験のデータは、表1に示した条件下、すなわち各希釈剤種と有機酸素含有化合物濃度の条件下で、少なくとも3回重合を行った結果の平均値である。
平均モノマー供給速度と、平均MWDのデータは、その条件下で行なった全実験結果の単純平均値である。
・・・
【表1】
」
(引1k)「【図1】
」
(引1l)「【図2】
」
第5 当審の判断
1 引用文献1に記載された発明
引用文献1の上記摘記(引1j)の段落【0145】には、
「重合を開始するために、開始供給モノマーを調製して反応器へ投入した。この開始供給モノマー中のイソブチレンモノマー濃度は、10wt%であった。またこの開始供給モノマーに、イソブチレンに対し2.8モル%のイソプレンを添加した。全ての供給原料を、グローブボックス中の前記炭化水素浴を用いて、反応器と同じ温度まで冷却した。重合開始前に、炭化水素浴の温度を数度下げ、炭化水素浴と反応器内容物の初期温度差を付けた。反応器に触媒を導入して共重合反応を開始した。・・・ポリマー粒子(スラリー粒子)の沈殿が生じたことで反応の開始を確認した約10分後に、追加の供給モノマーを容器から反応器に導入した。重合実験は、容器中の供給モノマーが無くなるか、あるいは予定量の供給モノマーが消費されるまで行なった」ことが記載されており、
(引1j)の段落【0149】の記載及び【表1】の「重合実験5」に着目すると、「希釈剤」として「ブレンド」を用いたこと、「MeOH」を「5.7wppm」、「DME」を「1.2wppm」、「アセトン」を「0.2wppm」含むものであることが記載され、段落【0142】の「MeOH = メタノール;DME = ジメチルエーテル・・・ブレンド = 134aとMeClの50/50wt/wt混合物」の記載からみて、「ブレンド」は「134aとMeClの50/50wt/wt混合物」であり、「MeOH」は「メタノール」であり、「DME」は「ジメチルエーテル」であるといえる。また、「MeOH」、「DME」及び「アセトン」は(引1e)(特に段落【0070】を参照)の記載からみて「有機酸素含有化合物」であるといえる。
「供給モノマー」について、(引1j)の段落【0142】には「供給モノマーはイソブチレン、イソプレン、選択された希釈剤、及び任意成分の他の酸素含有化合物から成」ること、「重合実験1、及び3から11の供給モノマーはイソブチレンを20wt%含有するものであ」り、「イソプレンは、イソブチレンに対し2.8モル%となるように供給モノマーに添加」するものであることが記載され、
「希釈剤」について、(引1j)の段落【0141】には「「ブレンド」と呼ぶ希釈剤組成物は134aと塩化メチルの50/50wt/wt混合物」、「1,1,1,2-テトラフルオロエタン(134a)」と記載されている。
「触媒」は、(引1j)の段落【0144】の「供給触媒は、所定量の前記HCl溶液、エチルアルミニウムジクロリド(EADC)炭化水素溶液・・・」の記載からみて、「HCl溶液、エチルアルミニウムジクロリド(EADC)炭化水素溶液」であるといえる。
また、「供給モノマー」である「イソブチレン」、「イソプレン」について、(引1b)の段落【0002】及び(引1i)の記載からみて、これらの重合により「ブチルゴム」が製造されるといえる。
以上を踏まえると、引用文献1には、
「重合を開始するために、開始供給モノマーを調製して反応器へ投入し、
この開始供給モノマー中のイソブチレンモノマー濃度は、10wt%であり、
またこの開始供給モノマーに、イソブチレンに対し2.8モル%のイソプレンを添加し、
全ての供給原料を、グローブボックス中の前記炭化水素浴を用いて、反応器と同じ温度まで冷却し、
重合開始前に、炭化水素浴の温度を数度下げ、炭化水素浴と反応器内容物の初期温度差を付け、
反応器に触媒を導入して共重合反応を開始し、
ポリマー粒子(スラリー粒子)の沈殿が生じたことで反応の開始を確認した約10分後に、追加の供給モノマーを容器から反応器に導入し、
供給モノマーはイソブチレンを20wt%含有するものであり、
イソプレンはイソブチレンに対し2.8モル%となるように供給モノマーに添加し、
重合実験を、容器中の供給モノマーが無くなるか、あるいは予定量の供給モノマーが消費されるまで行なったブチルゴムの製造方法であって、
供給モノマーは、イソブチレン、イソプレン、希釈剤、及び任意成分の他の酸素含有化合物から成り、
希釈剤は、1,1,1,2-テトラフルオロエタンと塩化メチルの50/50wt/wt混合物であり、
任意成分の他の酸素含有化合物は、メタノールを5.7wppm、ジメチルエーテルを1.2wppm、アセトンを0.2wppmであり、
触媒は、HCl溶液、エチルアルミニウムジクロリド(EADC)炭化水素溶液を含む、
ブチルゴムの製造方法」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
2 本願発明と引用発明との対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「イソブチレン」と本願発明の「イソブテン」は同じ化合物であるから、引用発明の「イソブチレン」及び「イソプレン」は、本願発明の「少なくとも1種のモノマーがイソブテンであり、少なくとも1種のモノマーがイソプレン」である「2種のモノマー」であるといえる。
また、引用発明の「イソブチレン」及び「イソプレン」の重合により得られる「ブチルゴム」は、本願明細書の(本a)の段落【0002】の「ゴム、特にイソオレフィンから誘導される繰返し単位を含有するものは、カルボカチオン重合法によって工業的に製造される。イソブチレンとより少量のマルチオレフィン、例えばイソプレンとのエラストマーである」の記載からみて、「エラストマー」であるといえる。
引用発明の「1,1,1,2-テトラフルオロエタンと塩化メチルの50/50wt/wt混合物」である「希釈剤」は、本願発明の「塩化メチル」及び「1,1,1,2-テトラフルオロエタン」を含む「有機希釈剤」に相当するといえる。
また、引用発明の「希釈剤」である「1,1,1,2-テトラフルオロエタンと塩化メチルの50/50wt/wt混合物」は、他の成分を含んでいないことから、本願発明と同様に、「塩化メチルおよび1,1,1,2-テトラフルオロエタンは、有機希釈剤の全体積の90から100体積%を占める」ものであるといえる。
そうすると、引用発明の「重合を開始するために、開始供給モノマーを調製して反応器へ投入し、
この開始供給モノマー中のイソブチレンモノマー濃度は、10wt%であり、
またこの開始供給モノマーに、イソブチレンに対し2.8モル%のイソプレンを添加し」、「供給モノマーは、イソブチレン、イソプレン、希釈剤・・・から成り、希釈剤は、1,1,1,2-テトラフルオロエタンと塩化メチルの50/50wt/wt混合物」である工程は、
本願発明の「a)有機希釈剤と少なくとも2種のモノマーとを含む反応媒体を提供し、ここで少なくとも1種のモノマーがイソブテンであり、少なくとも1種のモノマーがイソプレンである工程」、「ここで前記有機希釈剤は、
・塩化メチル、および
・1,1,1,2-テトラフルオロエタン
を含み、前記塩化メチルおよび1,1,1,2-テトラフルオロエタンは、有機希釈剤の全体積の90から100体積%を占める」に相当するといえる。
本願発明の「開始剤系」について、本願明細書の(本d)の段落【0035】には「特にカチオン重合によって得られるエラストマーのための開始剤系は、典型的には、少なくとも1種のルイス酸および少なくとも1種の開始剤を含む」と記載されており、「開始剤系」とは「1種のルイス酸および少なくとも1種の開始剤を含む」ものであるといえる。
また、本願明細書の(本d)の段落【0037】~【0038】には「ルイス酸」について「エチルアルミニウムジクロライド(EtAlCl2またはEADC)」を用いること、段落【0062】~【0063】には「開始剤」について「塩化水素」を用いることが記載されており、(本f)の段落【0114】には、「開始剤系溶液は、80mLの塩化メチル中に、11mLの0.18M HCl/CH2Cl2溶液およびエチルアルミニウムジクロライド(EADC)の1.0Mヘキサン溶液8mLを添加することによって調製した」ことも記載されている。
一方、引用発明の「触媒」は、「HCl溶液」及び「エチルアルミニウムジクロリド(EADC)炭化水素溶液」を含むものであり、「HCl溶液」中の「HCl」(塩化水素)は(引1f)及び本願明細書の上記摘記からみて「開始剤」であり、「エチルアルミニウムジクロリド(EADC)炭化水素溶液」中の「エチルアルミニウムジクロリド(EADC)」は(引1d)及び本願明細書の上記摘記からみて「ルイス酸」であるといえるから、引用発明の「触媒」は本願発明の「開始剤系」に相当するといえる。
また、引用文献1の(引1h)の段落【0115】の「反応器32からのポリマーを含有する流出液56は、所望により、ライン58から供給されるスチームまたは熱水等の失活媒体により失活させることができる。次に、ポリマー回収ユニット60において、例えばフラッシュタンクまたはストリッパー中で、失活媒体の熱を利用して希釈剤と未反応モノマーを蒸発させることにより、ポリマーをスラリーから分離する」の記載からみて、重合反応後の「流出液56」には「ポリマー」、「希釈剤」、「未反応モノマー」を含んでいるといえることから、引用発明において「重合実験を、容器中の供給モノマーが無くなるか、あるいは予定量の供給モノマーが消費されるまで行」うと、共重合(コポリマー)である「ポリマー」と「希釈剤」を含む「有機流体」である「流出液」が生成するといえる。
そうすると、引用発明の「反応器に触媒を導入して共重合反応を開始し、
ポリマー粒子(スラリー粒子)の沈殿が生じたことで反応の開始を確認した約10分後に、追加の供給モノマーを容器から反応器に導入し、
供給モノマーはイソブチレンを20wt%含有するものであり、
イソプレンはイソブチレンに対し2.8モル%となるように供給モノマーに添加し、
重合実験を、容器中の供給モノマーが無くなるか、あるいは予定量の供給モノマーが消費されるまで行」う工程は、本願発明の「b)開始剤系の存在下で反応媒体中のモノマーを重合させて、コポリマー、および有機希釈剤を含む有機媒体を生成させる工程」に相当するといえる。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「エラストマーの製造方法であって、少なくとも以下の工程:
a)有機希釈剤と少なくとも2種のモノマーとを含む反応媒体を提供し、ここで少なくとも1種のモノマーがイソブテンであり、少なくとも1種のモノマーがイソプレンである工程;
b)開始剤系の存在下で反応媒体中のモノマーを重合させて、コポリマー、および有機希釈剤を含む有機媒体を生成させる工程
を含み、
ここで前記有機希釈剤は、
・塩化メチル、および
・1,1,1,2-テトラフルオロエタン
を含み、前記塩化メチルおよび1,1,1,2-テトラフルオロエタンは、有機希釈剤の全体積の90から100体積%を占める、エラストマーの製造方法。」
という点で一致するが、以下の点で相違する。
相違点1:「有機希釈剤」中の「塩化メチル」及び「1,1,1,2-テトラフルオロエタン」の割合について、本願発明では、「塩化メチル」が「48から52体積%」、「1,1,1,2-テトラフルオロエタン」が「48から52体積%」であるのに対して、引用発明では、「1,1,1,2-テトラフルオロエタン」と「塩化メチル」の割合が「50/50wt/wt」である点。
相違点2:「反応媒体」中に、引用発明には「メタノールを5.7wppm、ジメチルエーテルを1.2wppm、アセトンを0.2wppm」を含むのに対し、本願発明では、そのような特定がない点。
(2)判断
上記相違点1及び2についてそれぞれ検討する。
(ア)相違点1について
引用発明においては「希釈剤」として「1,1,1,2-テトラフルオロエタン」と「塩化メチル」の割合が「50/50wt/wt」、すなわち、「1,1,1,2-テトラフルオロエタン」を50重量%含むもの、すなわち、重量換算で「1,1,1,2-テトラフルオロエタン」と「塩化メチル」の割合を1:1としたものを用いているところ、引用文献1の(引1g)の段落【0105】には、「ハイドロフルオロカーボン」である「HFCを希釈剤として用いる場合」について、「HFCは希釈剤の全容積に対する割合は、1から100容積%であり、あるいは、下限値が5,・・・, 45, 50, 55, ・・・, または99容積%である」こと及び「好ましい実施形態では、HFCは1以上の塩化炭化水素と組み合わせて用いられる。別の好ましい実施形態では、HFCは・・・、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、及びこれらの混合物から成る群から選択される」ことが記載されており、「HFC」を希釈剤の全容積に対して「50容積%」すなわち「50体積%」とすること、すなわち、「HFC」を「50体積%」、「塩化炭化水素」を「50体積%」で用いることも開示されている。
また、一般に流体は温度により体積が変化するものであるところ、「1,1,1,2-テトラフルオロエタン」と「塩化メチル」の2つの流体を「容器」や「反応器」に供給する際に、温度により変化する重量比に応じて供給するよりも、体積比を決定して供給した方が容易に流量を制御できるといえるから、引用発明において、「1,1,1,2-テトラフルオロエタン」を「50体積%」とし、「塩化メチル」を「50体積%」として供給することは当業者が容易に想到し得たことといえる。
(イ)相違点2について
本願発明は、「反応媒体」について「有機希釈剤と少なくとも2種のモノマーとを含む反応媒体」と、他の成分を含み得るものとなっており、本願発明の文言上、引用発明の「供給モノマー」中に「メタノールを5.7wppm、ジメチルエーテルを1.2wppm、アセトンを0.2wppm」を含む態様も包含しているといえるから、この点は相違点であるとはいえない。
また、本願明細書の(本d)の段落【0061】~【0062】、【0069】には、「供給モノマー」ではなく「開始剤」ではあるが、「メタノール」等の「アルコール」や「エーテル」を「開始剤」として用いることができることも記載されているから、本願発明においても、重合反応を「アルコール」や「エーテル」を含んだ系で行う態様も包含しているといえる。
さらに、引用発明において、「酸素含有化合物」である「メタノール」、「ジメチルエーテル」、「アセトン」は、「供給モノマー」中に合計で僅か7.1wppm(重量ppm)、すなわち、7.1×10-4%しか含まれておらず、また、(引1j)の段落【0141】の「塩化メチル(Air Gas社製)の乾燥は、これらのガスを3本の酸化バリウム入りステンレス製カラムに通して乾燥させ、グローブボックス中で凝縮させ、生じた液を回収することにより行なった」、段落【0143】の「重合実験4から11で用いた塩化メチルは、そのガスを前記の乾燥剤に通して乾燥させたものである。微量のメタノール、ジメチルエーテル、及びアセトンは、この乾燥剤では完全に除去されず、塩化メチル中に残存する。・・・これらの実施例について、全酸素含有化合物濃度を表1に示す」との記載からみて、引用発明における「メタノール」、「ジメチルエーテル」、「アセトン」は「塩化メチル」にごく微量に含まれる不純物成分であるといえる。
一方、本願明細書の(本f)の段落【0108】には「製造設備から高純度のイソブテンと塩化メチルを受け取り、そのまま使用した」と記載されており、本願明細書の実施例においても、「メタノール」、「ジメチルエーテル」、「アセトン」をごく微量の不純物として含む蓋然性が高いといえる。
以上のことを勘案しても、相違点2は実質的な相違点であるとはいえない。
(ウ)本願発明の効果について
本願発明は、「エラストマーの製造方法」について「高い処理量を可能にする方法を提供」することを課題とするものであり(本願明細書の(本a)を参照)、本願発明の効果について、本願明細書の(本f)の段落【0117】、【0118】には「v/v比が50/50の塩化メチルおよび1,1,1,2-テトラフルオロエタンについて、反応中の最も大きな温度上昇、しかるに最も高い重合速度が観察されること、及び製造されたブチルゴムの収量もこの希釈率で最高であることは、明らか且つ驚くべきである」こと、「塩化メチルとHFC-134Aとの様々な比率で実施されたスラリー重合反応によって製造されたブチルゴムは、50/50の塩化メチルおよび1,1,1,2-テトラフルオロエタンについて、最小の多分散性(PDI)を示した」ことが記載され、段落【0116】の【表1】をみると、「希釈剤」が「50/50の塩化メチルおよび1,1,1,2-テトラフルオロエタン」である「実施例3」において、転化率が「89質量%」、「Mw/Mn」が「3.3」であったことが記載されている。
しかしながら、引用文献1の(引1f)の段落【0145】には「一般に、平均モノマー転換率は75%を超えており、95%に達することもあった」と記載されており、引用発明においても、高いモノマー転化率を達成できているといえ、また高いモノマー転化率は高い重合速度を示唆するといえる。さらに、(引1f)の【表1】の重合実験5みると「平均Mw/Mn」が「3.3」であったことも記載されており、本願明細書の上記実施例3と同程度のものとなっている。
したがって、本願発明の効果は、引用文献1の記載から当業者の予測の範囲内であるといえ、引用発明に比べて、格別顕著なものと評価することはできない。
(3)まとめ
したがって、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 請求人の主張
(ア)審判請求書における審判請求人の主張
令和2年2月28日付け審判請求書において、請求人は、以下の点について主張している。
なお、令和1年6月25日付け意見書においても、請求人は同様の主張をしている。
主張1:「本願発明は、有機希釈剤が48から52体積%の塩化メチル、及び48から52体積%の1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含むものです。 ここで、塩化メチルの密度は1.003g/mlであり、液状1,1,1,2-テトラフルオロエタンの密度は1.206g/mlであることに留意しますと、引用文献1に記載された50/50wt/wtのブレンドは、54.6体積%の1,1,1,2-テトラフルオロエタンと45.4体積%の塩化メチルのブレンドに相当します。これは本願請求項1に規定する範囲からは外れるものであり、少なくともこの点において本願各請求項に係る発明は、引用文献1に記載された発明とは相違するものです。また、引用文献1には希釈剤に含まれるハイドロフルオロカーボンの量として、15から100容積%という量が記載されていますが(引用文献1の請求項21等)、この量は非常に広く、多様なブレンド比率の希釈剤を包含してしまうものです。これに対し、本願発明では48から52体積%の塩化メチル、及び48から52体積%の1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含むことを規定しており、本願発明の効果が確認された非常に狭い範囲に限定されています。引用文献1のように非常に広い範囲の開示からは本願発明を実質的に開示しているとは言えず、引用文献1の実施形態からも相違する範囲であることは明らかです。」
主張2:「引用文献1に触れた当業者は、48から52体積%の塩化メチル、及び48から52体積%の1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含む有機希釈剤を使用することによる本願発明の効果を予測することも困難です。例えば本願実施例で実証している大きな温度上昇及び高い重合速度、並びに狭い分子量分布が得られることは、本願発明で見出した有利な効果です・・・。今回実験した比率の中で最も転嫁率が高く、デルタTも大きくなりました(図1)。また、モノマー転化も高く(図2)、これらの結果は重合反応器のスループットを最大化するために非常に重要な利点となり得るものです。さらに、図3で示すとおり分子量分布も最も狭く、これは改善された加工特性をもたらし得るものであり、タイヤインナーライナー化合物を製造するための混合操作に有利なものです(段落[0118])」
(イ)主張1についての検討
上記主張1について、引用発明における「1,1,1,2-テトラフルオロエタンと塩化メチルの50/50wt/wt混合物」である「希釈剤」は「塩化メチルの密度は1.003g/mlであり、液状1,1,1,2-テトラフルオロエタンの密度は1.206g/ml」との前提に立てば、請求人の主張のとおり、「54.6体積%の1,1,1,2-テトラフルオロエタンと45.4体積%の塩化メチルのブレンド」となり、本願発明の「有機希釈剤は、・48から52体積%の塩化メチル、および・48から52体積%の1,1,1,2-テトラフルオロエタン」を含むものとは異なるといえる。
しかしながら、上記2(2)(ア)で検討したとおり、引用発明は、「希釈剤」として「1,1,1,2-テトラフルオロエタン」と「塩化メチル」の割合が「50/50wt/wt」と重量比であるものの1:1で用いることが記載されており、また、引用文献1の(引1g)の段落【0105】には、「HFCは希釈剤の全容積に対する割合は、1から100容積%であり、あるいは、下限値が5,・・・, 45, 50, 55, ・・・, または99容積%である」と「HFC」を希釈剤の全容積に対して「50容積%」すなわち「50体積%」とすることも開示されている。さらに、「1,1,1,2-テトラフルオロエタン」と「塩化メチル」の2つの流体を「容器」や「反応器」に供給する際に、温度により変化する重量比に応じて供給するよりも、体積比を決定して供給した方が、容易に流量を制御できるといえるから、引用発明において、「1,1,1,2-テトラフルオロエタン」と「塩化メチル」の割合を重量比で1:1とするのではなく、体積比で1:1である「50体積%」で供給することは当業者が容易に想到し得たことといえる。
したがって、請求人の主張1を採用することはできない。
(ウ)主張2についての検討
上記主張2について、上記2(2)(ウ)で検討したとおり、引用文献1の(引1f)の段落【0145】には「一般に、平均モノマー転換率は75%を超えており、95%に達することもあった」と記載されており、引用発明においても、高いモノマー転化率を達成できているといえ、また高い重合速度を示唆するといえる。さらに、(引1f)の【表1】の重合実験5みると「平均Mw/Mn」が「3.3」であったことも記載されており、本願明細書の上記実施例3と同程度のものとなっているから、本願発明の効果を格別顕著なものと評価することはできない。
また、本願明細書の実施例の結果をみても、【図1】の「重合転化率」について「MeCl/R134a」が「50/50」の場合と「25/75」の場合の「転化率」はそれぞれ「89%」と「88%」と大きな差はなく、これらの傾向をみれば、引用発明の「MeCl/R134a」が「45.4/54.5」の場合はより差が小さくなることが読み取れる。
本願明細書の【図2】の「モノマー転化速度」をみても「MeCl/R134a」が「50/50」の場合と「25/75」の場合に大きな差はなく、これらの傾向をみれば、引用発明の「MeCl/R134a」が「45.4/54.5」の場合はより差が小さくなることが読み取れる。
本願明細書の【図3】の「MeCl/R134a」が「50/50」の場合の「Mw/Mn」の値は、引用発明である引用文献1の実施例5の「平均Mw/Mn」と同じ「3.3」である。
したがって、本願明細書の実施例を検討しても、本願発明の効果は、引用発明に比べて顕著なものと評価することはできない。
以上のとおり、請求人の主張2も採用することはできない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余のことについて検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-002773