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特許拒絶査定不服審判

2020-002772

新規な配列分布を有するブチルゴム

審判番号
2020-002772
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2016-565310
請求日
2020年02月28日
審決日
2022年10月27日
公報発行日
2023年04月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】アランセオ・シンガポール・プライヴェート・リミテッド
  • 【請求人代理人】村山 靖彦
  • 【請求人代理人】実広 信哉
  • 【請求人代理人】阿部 達彦
審判長/審判官
  • 審判長 近野 光知
  • 審判官 杉江 渉
  • 審判官 土橋 敬介
分類
P18 .536-WZ (C08F) / P18 .4 -WZ (C08F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条4項1号特許法39条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第39条第2項、特許法第36条第4項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2016-565310「新規な配列分布を有するブチルゴム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月 5日国際公開、WO2015/164973、平成29年 6月 8日国内公表、特表2017-514952〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 この出願(以下「本願」という。)は、平成27年4月30日を国際出願日(優先権主張、平成26年4月30日、欧州特許庁)とする出願(特願2016-565310号)であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成31年 3月15日付け:拒絶理由通知書 令和 1年 6月25日 :意見書、手続補正書の提出 令和 1年10月23日付け:拒絶査定 令和 2年 2月28日 :審判請求書の提出 令和 3年 6月10日付け:拒絶理由通知書、指令書 令和 3年 9月13日 :意見書、手続補正書の提出 令和 3年11月 1日付け:拒絶理由通知書、指令書 令和 4年 5月 9日 :意見書の提出 第2 本願発明について 本願の請求項1~23に係る発明は、令和3年9月13日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1~23に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明は、以下のとおりである。(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。また、本願の明細書を「本願明細書」という。) 「式(I): F=mA/(1+mA)2 (I) (式中、 - Aは、1H NMRで決定されるコポリマーにおけるイソプレンのイソブチレンに対するモル比であり、 - Fは、13C NMRで決定されるコポリマーにおけるイソブチレン-イソプレン-イソプレンのトリアッド分率であり、 - mは、 [1.28-(0.025×MOC)]≧m≧[1.16-(0.025×MOC))] の範囲内であり、ここで、MOCは、1H NMRで決定されるコポリマーにおけるイソプレンのモル%単位の含量である。) によって規定されるコポリマーの配列分布を有し、 イソブチレン含量が85.0~99.5モル%であり、イソプレン含量が0.5~15.0モル%である、イソブチレン及びイソプレンのコポリマー。」 第3 令和3年11月1日付け拒絶理由通知書における拒絶理由の概要 令和3年11月1日付け拒絶理由通知書における拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。 理由1:(委任省令要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 本件明細書の記載及び令和3年9月13日付け意見書の記載を参酌しても、本願発明のうち「m」が「式(I)」によって「A」及び「F」の値に関連づけられる技術的な意義は明らかではない。本願明細書の段落【0018】には「より均一に分布した架橋部位を有する、すなわちさらに低いm値を有するイソブチレンおよびマルチオレフィンのコポリマー」と記載されているものの、依然として、本願発明のうち「m」が「式(I)」によって「A」及び「F」の値に関連づけられる技術的意義が不明なこともあり、「m」の値が、イソブチレン及びイソプレンのコポリマーにおいてどのような技術的な内容を示す値であるのか、さらに、低い「m値」が何故「より均一に分布した架橋部位を有する」ことを意味するのかも明らかではない。 また、本願発明では、「m」について、「[1.28-(0.025×MOC)]≧m≧[1.16-(0.025×MOC))]」とその範囲が特定されているが、この範囲の上限の「1.28-(0.025×MOC)」及び下限の「1.16-(0.025×MOC)」の範囲内にあること、これらの上限値及び下限値にどのような技術的意義があるのか、発明の詳細な説明をみても明らかではなく、本件明細書の段落【0076】~【0091】の実施例には本願発明の範囲である「コポリマー」は記載されているものの、どのような効果を奏するのかも記載されていないため、本願発明において、「m」が「[1.28-(0.025×MOC)]≧m≧[1.16-(0.025×MOC))]」の範囲に特定されていることの技術的意義は不明確である。 (令和3年11月1日付け拒絶理由通知書の「●理由1(委任省令要件)」「(1)本願発明1について」を参照。) 理由2:(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 本願明細書の段落【0047】~【0071】の記載及び実施例の記載を参酌しても、本願発明の発明特定事項を満たす「イソブチレンおよびイソプレンのコポリマー」を製造するために必要となる製造方法は明らかでなく、当業者に過度の試行錯誤を課すものであると認められるから、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明の発明特定事項を有する「イソブチレンおよびイソプレンのコポリマー」を製造するための具体的な製造方法及び製造条件について、当業者が実施できるように明確かつ十分に記載されているとはいえない。 (令和3年11月1日付け拒絶理由通知書の「●理由2(実施可能要件)」「(2)本願発明1について」を参照。) 理由3:(同日出願)この出願の下記の請求項に係る発明は、同一出願人が同日出願した下記の出願に係る発明と同一と認められるから、この通知書と同日に発送した特許庁長官名による指令書に記載した届出がないときは、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 本願発明は、特願2020-033801号(特開2020-079421号)(以下「同日出願」という。)の請求項1~2を引用する請求項3に係る発明と実質的同一である。 (令和3年11月1日付け拒絶理由通知書の「●理由3(同日出願)」「(2)本願発明1について」を参照。) (なお、同日出願は、本願の一部を、令和2年2月28日に、適法に分割して新たな出願として出願したものである。したがって、同日出願の出願日は、本願の出願日に遡及するとともに、特許法第39条第2項の判断基準日は、本願と同様に、その優先日である平成26年4月30日となる。 同日出願は、令和4年1月18日付け手続補正書により特許請求の範囲が補正され、下記の「第4 本願明細書及び引用文献に記載された事項」「2 同日出願に記載された事項」「(2)同日出願の令和4年1月18日付け手続補正書に記載された事項」に記載のとおり、当該補正前の請求項1~2に請求項3に記載の事項が盛り込まれた。) 第4 本願明細書及び同日出願に記載された事項 1 本願明細書に記載された事項 本願明細書には、以下の事項が記載されている。 (本a)「【技術分野】 【0001】 本発明は、効果的な重合プロセス、および特異な微細構造を有する新規なコポリマーを製造するためのその使用に関する。より詳細には、本発明は、新規な微細構造を有するブチルゴム、好ましくは、2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペンを含む希釈剤中のイソブチレンおよびイソプレンを含むモノマー混合物の共重合によって得ることができるブチルゴムに関する。さらなる側面では、本発明は、そのような新規なコポリマーからハロゲン化によって得ることができるハロゲン化コポリマーに関する。 【背景技術】 【0002】 イソオレフィンから誘導される繰り返し単位を含有するコポリマーは、カルボカチオン重合プロセスによって工業的に製造される。特に、イソブチレンと、より少量のマルチオレフィン(例えば、イソプレンなど)とのコポリマーであるブチルゴムは重要である。 【0003】 イソオレフィンのカルボカチオン重合、およびイソオレフィンとマルチオレフィンとの共重合は、機構的に複雑である。触媒系は、典型的に、2成分、すなわち、開始剤と、ルイス酸(例えば、大規模な商業的なプロセスでしばしば採用されるアルミニウムトリクロライドなど)とからなる。 【0004】 開始剤の例には、プロトン源、例えば、ハロゲン化水素、カルボン酸、および水などが含まれる。 【0005】 開始段階において、イソオレフィンがルイス酸および開始剤と反応してカルベニウムイオンを生成し、いわゆる成長段階において、このカルベニウムイオンがモノマーとさらに反応して新たなカルベニウムイオンを形成する。 【0006】 モノマーの種類、希釈剤または溶媒の種類およびその極性、重合温度、加えてルイス酸と開始剤との特異な組み合わせは、成長段階の化学に影響を与え、したがって成長しつつあるポリマー鎖へのモノマーの組み入れに影響を与える。 【0007】 工業的には一般的に、ブチルゴム、ポリイソブチレンなどを製造するために、希釈剤としての塩化メチル中でのスラリー重合プロセスの利用が一般的に広く受け入れられている。典型的には、この重合プロセスは、低い温度、一般的には-90℃未満の温度で実施される。塩化メチルは、それがモノマーおよび塩化アルミニウム触媒を溶解するが、ポリマー生成物を溶解しないことを含む、様々な理由により採用されている。塩化メチルは、低温重合、ならびにポリマーおよび未反応モノマーからの有効な分離のそれぞれを可能とする好適な凝固点および沸点も有している。塩化メチル中のスラリー重合プロセスは、溶液重合では典型的に最高で20質量%のポリマー濃度しか達成できないのに対し、最高で35質量%までの反応混合物中のポリマー濃度を達成できることを含む多くの追加的な利点を有している。許容可能な比較的低粘度の重合塊が得られることにより、表面熱交換によってより効果的に重合熱を放散させることが可能である。塩化メチル中のスラリー重合プロセスは、高分子量ポリイソブチレンおよびイソブチレン-イソプレンブチルゴムの製造に用いられている。 【0008】 しかし、塩化メチルの使用により採用し得る開始剤の範囲が制限され、さらに、所望の高分子量を得るための重合のための温度範囲が制限されるという事実により、微細構造、特に、ポリマー鎖内のマルチオレフィンの分布における微細構造の多様性が低い生成物がもたらされる。さらに、特に塩化メチル中のスラリー重合は、粒子の凝集および付着物の 影響を受け、重合による発熱の除去が不十分となり、反応器内での反応条件が不均一になるという問題を有する。 【0009】 したがって、開始剤および希釈剤の特異な組み合わせを含む代替的な重合条件を見出すことは、粒子の凝集および反応器の付着物を低減するであろうのみならず、特異な配列分布を有する新規なポリマーを創製することになろう。そのような新規なポリマーは、架橋部位の分布を変化させることによって硬化挙動に影響を与えるための選択肢を広げるものであるため、特に、少なくとも2種のゴムを同時に硬化させる(共硬化)用途において、産業界に強く要請されている。さらに、そのような新規なポリマーは、後重合での改質によって新規なポリマーを製造するための多様な足場ポリマーを入手可能にするであろう。 【0010】 既に上述したとおり、最終的なコポリマーの配列分布は、採用するコモノマーの相対的な反応性を決定する重合条件によって影響を受ける。コポリマーの配列分布は、隣接する構造単位の組合せによって表現することができる。例えば、2つのモノマー単位の特徴付け可能な配列はダイアッド(diad)と呼ばれる。3つのモノマー単位の配列はトリアッド(triad)である。4つの単位の配列はテトラッド(tetrad)と呼ばれるなどである。同一のコモノマーを組み込み、異なる条件で調製されたコポリマーは、コポリマー鎖におけるダイアッド分率(またはトリアッド分率等)により表現されるように、その配列の分布に違いが生じ得る。配列分布およびコモノマー組み込みには、共重合に含まれる化学事象の競合的な性質のため、数学的な確率統計が関連する。この関係の特徴づけに役立つパラメータは、反応性比、ホモ成長(類似のモノマーの付加)と交叉成長(比類似のモノマーの付加)の速度定数比である。同一のコモノマーが組み込まれているが、異なる配列分布を有するコポリマーは、しばしば異なる物性を有する。例えば、「ポリマー鎖の化学微細構造(Chemical Microstructure of Polymer Chains)」、J.L. Koenig, Wiley-Interscience, New York, 1980、および「ポリマー配列決定:炭素-13NMR法(Polymer Sequence Determination: Carbon-13 NMR Method)」、J.C. Randall, Academic Press, 1977を参照されたい。極端だが広く知られている例は、ランダム・コポリマーおよびブロック・コポリマーの物性の比較である。 【0011】 カルボカチオン共重合系において共役ジエンがイソブチレンよりも反応性が低いことは一般に知られている。既知の直線状共役ジエンのうち、イソプレンはイソブチレンとの共重合において、より反応性の高いジエンの1つである。共役ジエンのこのより低い反応性の傾向は、調製されたコポリマー配列分布に発現される。所与のコポリマー組成において、イソプレン単位はコポリマー鎖の他のイソプレン単位の後に続かない傾向を示す。この結果、BII(B=イソブチレン、I=イソプレン)、IIB、およびIIIのトリアッドの分率は、反応性がより高いコモノマーを用いる共重合系と比較して相対的に低い。 【0012】 イソブチレン/イソプレン共重合は、塩素化炭化水素、または炭化水素および塩素化炭化水素の混合物中で行われることが多いため、配列分布を変化させ得る程度は非常に制限されている。この制限の発現は、イソブチレン/イソプレン共重合における既知のイソプレン反応性比を検討することにより見出される。例えば、J. E. Puskasの「カルボカチオン重合(Carbocationic Polymerizations)」、Encyclopedia of Polymer Science and Technology, John Wiley and Sons, New York, 2003を参照されたい。さまざまな重合条件下のイソプレン反応性比の値は1.4未満の範囲であり、調製したコポリマー内にイソプレンが中心にあるトリアッド(BII、IIB、およびIII)が狭い範囲でしか得られないことを示している。 【0013】 欧州特許第1572766号は、希釈剤としてフッ素化炭化水素を用いることによって、ブチルゴムの配列分布を変化させるプロセスが開示されている。特に、欧州特許第1572766号には、式(I): F=mA/(1+mA)2 (I) (式中、 - Aは、1H NMRで決定されるコポリマーにおけるマルチオレフィンのイソオレフィンに対するモル比であり、 - Fは、13C NMRで決定されるコポリマーにおけるイソオレフィン-マルチオレフィン-マルチオレフィンのトリアッド分率である。) に従って算出することができる配列分布パラメータmが、1.10~1.25であるかまたは1.5を超えるコポリマーが記載されている。とりわけ、欧州特許第1572766号の包袋における2007年2月12日に提出されたT.D. Shaffer博士の宣誓書に見ることができるように、パラメータmは、コポリマーに組み入れられたイソプレン含量にも大幅に依存する。例えば、1.1という低いm値は、1,1,1,2-テトラフルオロエタンを希釈剤として用いて15.5モル%のイソプレンを組み入れることによってのみ得ることができる一方、同じ希釈剤中で得られた、例えば3.32モル%の低いイソプレン含量を有するポリマーは、1.3のm値を示す。 【0014】 同じ欧州特許第1572766号は、塩化メチル中で実施される典型的なスラリー重合プロセスでは、(12.7モル%のイソプレン含量で)1.3~(2.55モル%のイソプレン含量で)2.1のm値を有するコポリマーが得られることを開示している。 【0015】 アルカン類または脂肪族媒体を代替的な希釈剤として用いる重合プロセスは、例えば、イソペンタンまたは少量のヘキサンが用いられているカナダ特許第1,019,095号および米国特許第3,361,725号、ならびに、規定の沸点範囲内にある特定の脂肪族成分が希釈剤として用いられている国際公開第2010/006983号および国際公開第2011/089092号から基本的に知られている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0016】 【特許文献1】欧州特許第1572766号 【特許文献2】カナダ特許第1,019,095号 【特許文献3】米国特許第3,361,725号 【特許文献4】国際公開第2010/006983号 【特許文献5】国際公開第2011/089092号 【非特許文献】 【0017】 【非特許文献1】「ポリマー鎖の化学微細構造(Chemical Microstructure of Polymer Chains)」、J.L. Koenig, Wiley-Interscience, New York, 1980 【非特許文献2】「ポリマー配列決定:炭素-13NMR法(Polymer Sequence Determination: Carbon-13 NMR Method)」、J.C. Randall, Academic Press, 1977 【非特許文献3】J. E. Puskasの「カルボカチオン重合(Carbocationic Polymerizations)」、Encyclopedia of Polymer Science and Technology, John Wiley and Sons, New York, 2003 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0018】 しかし、当技術分野において知られているものと比較して、より均一に分布した架橋部位を有する、すなわちさらに低いm値を有するイソブチレンおよびマルチオレフィンのコポリマーを提供する必要性が依然として存在する。 【課題を解決するための手段】 【0019】 1つの側面では、本発明は、式(I): F=mA/(1+mA)2 (I) (式中、 - Aは、1H NMRで決定されるコポリマーにおけるイソプレンのイソブチレンに対するモル比であり、 - Fは、13C NMRで決定されるコポリマーにおけるイソオレフィン-イソプレン-イソプレンのトリアッド分率であり、 - mは、 [1.30-(0.025×MOC)]≧m≧[1.15-(0.025×MOC))] の範囲であり、ここで、MOCは、1H NMRで決定されるコポリマーにおけるイソプレンのモル%単位の含量である。) によって規定されるコポリマーの配列分布を有するイソブチレンおよびイソプレンのコポリマーを提供する。 【0020】 本発明の範囲は、本明細書に一般的なものであるか好ましいものであるかに関わらず記載した定義、パラメーター、および例示の任意の可能な組み合わせを包含する。 好ましくは、mは、 [1.28-(0.025×MOC)]≧m≧[1.16-(0.025×MOC))] の範囲であり、より好ましくは、 [1.27-(0.025×MOC)]≧m≧[1.17-(0.025×MOC))] の範囲である。 【0021】 1つの実施態様では、本発明のコポリマーにおいて、イソブチレン含量は85.0~99.5モル%であり、イソプレン含量は0.5~15.0モル%である。好ましい実施態様では、イソブチレン含量は88.0~99.0モル%であり、イソプレン含量は1.0~12.0モル%である。 【0022】 特定の実施態様では、イソブチレン含量は86.2~99.5モル%であり、イソプレン含量は0.5~3.8モル%である。好ましくは、イソブチレン含量は86.3~99.0モル%であり、イソプレン含量は1.0~3.7モル%である。 【0023】 別の特定の実施態様では、イソブチレン含量は91.8モル%から96.2モル%未満であり、イソプレン含量は3.8~8.2モル%である。好ましくは、イソブチレン含量は92.0~99.0モル%であり、イソプレン含量は1.0~3.7モル%である。 【0024】 さらに別の特定の実施態様では、イソブチレン含量は88.0モル%から91.8モル%未満までであり、イソプレン含量は8.2~12.0モル%である。好ましくは、イソブチレン含量は90.0~91.0モル%であり、イソプレン含量は9.0~10.0モル%である。」 (本b)「発明を実施するための形態】 【0025】 本明細書において、用語「イソブチレン含量」または「イソプレン含量」は、イソブチレンまたはイソプレンから誘導された繰り返し単位のコポリマー内の含量を指す。 【0026】 本発明のコポリマーは、任意の知られた方法でハロゲン化することができ、新規なハロゲン化コポリマーを得ることができる。 【0027】 したがって、本発明の範囲は、本発明のコポリマーをハロゲン化することによって得ることができるハロゲン化されたコポリマーを包含する。好ましくは、ハロゲン化は、塩素化または臭素化を意味する。」 (本c)「【0047】 本発明の別の側面によれば、本発明の新規なコポリマーの製造方法であって、少なくとも以下の工程a)、b)、およびc): a)希釈剤と、イソブチレンおよびイソプレンを含むモノマー混合物とを、モノマー混合物対希釈剤の質量比5:95~95:5、好ましくは40:60~95:5、より好ましくは45:55~85:15、さらにより好ましくは61:39~80:20で準備して、反応媒体を形成させる工程; b)前記反応媒体中の前記モノマー混合物を、開始剤系の存在下で重合させて、前記コポリマーを含むコポリマー溶液を形成させる工程であって、前記コポリマーが、前記希釈剤と、前記モノマー混合物の残りのモノマーとを含む前記反応媒体中に少なくとも実質的に溶解される、工程;c)前記反応媒体から、前記モノマー混合物の残りのモノマーを分離し、好ましくは追加的に前記希釈剤を分離して、前記コポリマーを得る工程 を含み、好ましくは上記工程a)、b)、およびc)のみからなり、 ここで、工程b)は、 - -95℃から-60℃の範囲、好ましくは-85℃~-60℃の範囲、さらにより好ましくは-82℃~-68℃の範囲の温度で実施され、かつ、 前記希釈剤が、 - 少なくとも95.0質量%、好ましくは少なくとも98.0質量%、より好ましくは少なくとも98.5質量%、さらにより好ましくは少なくとも99.0質量%の1種以上の脂肪族炭化水素であって、1013hPaの圧力で5℃~95℃の範囲の沸点を有するものを含み、 - 最高で1.0質量%、好ましくは0.8質量%未満、より好ましくは0.5質量%未満、なおさらに好ましくは0.2質量%未満のハロゲン化された、特にフッ素化、塩素化、またはフッ素化および塩素化された炭化水素を含み、最も好ましくはハロゲン化された炭化水素を含まない、方法。 【0048】 1つの実施態様では、1013hPaの圧力で5℃~95℃の範囲の沸点を有し、直鎖状である脂肪族炭化水素(n-アルカン)の含量は、85質量%を超えず、好ましくは70質量%を超えず、より好ましくは50質量%を超えず、さらにより好ましくは10~50質量%の範囲である。 【0049】 1つの実施態様では、1013hPaの圧力で5℃~95℃の範囲の沸点を有する環式炭化水素の含量は、25質量%を超えず、好ましくは20質量%を超えず、さらにより好ましくは1~20質量%の範囲である。 【0050】 1つの実施態様では、100質量%までの残りの成分が存在する場合には、残りの成分は、1013hPaの圧力で5℃~95℃の範囲の沸点を有する脂肪族炭化水素からなる。 【0051】 本明細書で使用される場合、「少なくとも実質的に溶解」という用語は、少なくとも70質量%、好ましくは少なくとも90質量%、好ましくは少なくとも95質量%の工程b)により得られたコポリマーが希釈剤に溶解することを意味する。 【0052】 1013hPaの圧力で5℃~95℃の範囲の沸点を有する脂肪族炭化水素の例には、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、n-ヘキサン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,2-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタンが含まれる。 【0053】 工程b)は、重合プロセスを開始することができる開始剤系(例えば、ルイス酸触媒およびプロトン源)の存在下で行われる。本発明に適したプロトン源には、ルイス酸またはルイス酸を含有する組成物に添加されるとプロトン(proton)を生成する任意の化合物が含まれる。 プロトンは、ルイス酸とプロトン源とが反応して、プロトンおよび対応する副生成物を生成する反応から生成され得る。このような反応は、プロトン源とプロトン化された添加剤との反応が、プロトン源とモノマーとの反応と比較してより速い場合に好ましいであろう。 【0054】 プロトン生成反応剤には、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert-ブタノールなどのアルコール、フェノール、チオール、カルボン酸、塩化水素、または臭化物、およびこれらの混合物が含まれる。 水、アルコール、フェノールまたはそれらの任意の混合物が好ましい。 最も好ましいプロトン源は水である。ルイス酸対プロトン源の好ましい比は、一般に、質量で5:1から100:1、または質量で5:1から50:1である。触媒およびプロトン源を含む開始剤系は、好ましくは、反応混合物中に、反応混合物の総質量に基づいて0.02~0.1質量%の量で存在する。 【0055】 アルキルアルミニウムハライドは、本発明による溶液重合反応を触媒するためのルイス酸の特に好ましい部類である。アルキルアルミニウムハライド触媒の例には、メチルアルミニウムジブロマイド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジブロマイド、エチルアルミニウムジクロライド、ブチルアルミニウムジブロマイド、ブチルアルミニウムジクロライド、ジメチルアルミニウムブロマイド、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジブチルアルミニウムブロマイド、ジブチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムセスキブロマイド、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムセスキクロライドおよびこれらの任意の混合物が含まれる。好ましいものは、ジエチルアルミニウムクロライド(Et2AlClすなわちDEAC)、エチルアルミニウムセスキクロライド(Et1.5AlCl1.5すなわちEASC)、エチルアルミニウムジクロライド(EtAlCl2すなわちEADC)、ジエチルアルミニウムブロマイド(Et2AlBrすなわちDEAB)、エチルアルミニウムセスキブロマイド(Et1.5AlBr1.5すなわちEASB)、およびエチルアルミニウムジブロマイド(EtAlBr2すなわちEADB)、およびこれらの任意の混合物である。 【0056】 特に好ましい開始剤系では、触媒は、エチルアルミニウムセスキクロライド、好ましくは等モル量のジエチルアルミニウムクロライドとエチルアルミニウムジクロライドとを好ましくは希釈剤中で混合することによって生成されるエチルアルミニウムセスキクロライドを含む。希釈剤は、好ましくは、共重合反応を行うために使用されるのと同じものである。 【0057】 アルキルアルミニウムハライドを使用する場合、水および/またはアルコール、好ましくは水をプロトン源として使用することが好ましい。1つの実施態様では、水の量は、アルキルアルミニウムハライドのアルミニウム1モル当たり水0.40~4.0モルの範囲、好ましくはアルキルアルミニウムハライドのアルミニウム1モル当たり水0.5~2.5モルの範囲の量であり、好ましくはアルミニウムアルキルハライドのアルミニウム1モル当たり水1~2モルの量である。 【0058】 本発明の1つの実施態様において、工程b)による重合は、重合反応器を用いて行う。適切な反応器は、当業者に公知のものであり、フロースルー重合反応器が含まれる。例は、国際公開第2011/000922号および国際公開第2012/089823号に開示されている。 【0059】 採用されるモノマーは、コポリマーについて上述したモノマーである。 【0060】 モノマーの精製は、適切なモレキュラーシーブまたはアルミナベースの吸着材料を含む吸着カラムを通過させることによって行うことができる。 重合反応への干渉を最小限に抑えるために、反応の毒として作用する水ならびにアルコールおよび他の有機酸素化物などの物質の総濃度は、質量基準で約10ppm未満に低減することが好ましい。 【0061】 工程b)に従う重合は、典型的には、重合後の溶液の固形分が、好ましくは3~20質量%、より好ましくは10~18質量%、さらにより好ましくは12~18質量%、なおさらにより好ましくは14~18質量%、さらにより好ましくは14.5~18質量%、なおさらに好ましくは15~18質量%、最も好ましくは16~18質量%となるように実施される。 【0062】 本明細書において、用語「固形分」または「固形分濃度」は、工程b)に従って、すなわち重合において得られた、最終反応混合物中に存在するポリマーの質量%を指す。 【0063】 1つの実施態様では、工程b)における反応時間は、2分から2時間、好ましくは10分から1時間、より好ましくは20分から45分である。 【0064】 この方法は、バッチ式または連続式で行うことができる。 連続反応が行われる場合、上述した反応時間は平均滞留時間を表す。 【0065】 この反応は、典型的には、メタノールまたはエタノール中1質量%の水酸化ナトリウム溶液などの停止剤によって停止させる。 【0066】 典型的には、最初に使用したモノマーの5質量%~25質量%、好ましくは10質量%~20質量%のモノマー消費後に転化を停止させる。 【0067】 モノマーの転化は、重合中にオンライン粘度計または分光モニタリングによって追跡することができる。工程c)に従って、反応媒体から、モノマー混合物の残留モノマー、および好ましくは追加的に希釈剤を、コポリマーを得るために分離する。 【0068】 そのような分離には、蒸留を使用して、残留モノマーおよび希釈剤を引き続いてまたは一緒に望ましい程度まで除去することができ、押出しを使用しても、例えば、国際公開第2010/03183号および国際公開第2011/117280号に開示されているように、揮発性成分の濃度を無視し得る濃度にまで低下させることができる。種々の沸点の液体を分離するための蒸留プロセスは当技術分野において周知であり、例えば、参照により本明細書に組み入れるEncyclopedia of Chemical Technology、Kirk Othmer、第4版、8~311頁に記載されている。 【0069】 別の実施形態では、使用する希釈剤は、少なくとも95.0質量%、好ましくは少なくとも98.0質量%、より好ましくは少なくとも98.5質量%、さらにより好ましくは少なくとも99.0質量%の1種以上の脂肪族炭化水素であって、圧力1013hPaで45℃~95℃、好ましくは45℃~80℃の範囲の沸点を有し、希釈剤中のコポリマーの溶液を得る工程c)において未反応の残留モノマーを20質量部未満の濃度まで除去することを可能にする脂肪族炭化水素である。 【0070】 この蒸留には、約40個のトレイを採用することがこの程度の分離を達成するのに十分であることが見出されている。 【0071】 一般に、未反応モノマーおよび希釈剤は、本発明の方法の工程a)に別々にまたは一緒にリサイクルすることができる。 【0072】 未反応の残留モノマーを除去した後、工程d)においてコポリマーをハロゲン化することが好ましい。」 (本d)「【実施例】 【0076】 [一般的手順] 全ての重合は、ペンタン冷却浴および反応器および浴温度レコーダーを備えたMBraun MB-200Gドライボックス内で行った。 使用した希釈剤は、MBraun MB-SPS溶媒精製システムを使用して乾燥し、使用のためにドライボックスに直接配管した。 希釈剤は以下からなっていた: -1013hPaの圧力で45℃未満の沸点を有する0.1質量%未満の脂肪族炭化水素、 -1013hPaの圧力で45℃~80℃の範囲の沸点を有する98.7質量%の脂肪族炭化水素、 -1013hPaの圧力で80℃を超える沸点を有する脂肪族炭化水素:100.0質量%までの残量。 【0077】 溶媒中に存在する環状脂肪族炭化水素の総量は、18.7質量%(メチルシクロペンタン、シクロペンタンおよびシクロヘキサン)であった。溶媒中に存在するシクロヘキサンの総量は1.4質量%であった。溶媒中に存在する分岐した非環式脂肪族炭化水素の総量は、34.4質量%(2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン)であった。 【0078】 イソブチレン(すなわちイソブテン)をさらに精製することなく使用した。ヘキサン中1.0Mのエチルアルミニウムジクロライド(EADC)およびヘキサン中1.0Mのジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)を受け取ったまま使用した。イソプレンを不活性雰囲気下、CaH2上で24時間乾燥させた後、真空蒸留して別のフラスコに入れ、次いでドライボックスに導入し、使用するまで2℃で保存した。 【0079】 [開始剤の調製] EASC/H2O触媒のマスターバッチは、ドライボックス内で1Lエルレンマイヤーフラスコを使用して、1.0MのEADC100mLおよび1.0MのDEAC100mLを混合することによって調製した。15分間混合した後、この溶液を800mLの上述した希釈剤で希釈し、撹拌を1時間続けた。次いで、この攪拌した溶液に、4.0mLの脱イオン水を添加した。水を加えた後、溶液を1時間撹拌したままにした。次いで、この溶液を、0.45μmフィルターディスクを用いて濾過した。 【0080】 [重合手順] 一般的な重合手順に続いて、以下の議論において指定した何らかの変更を加えた。500mLの3つ口丸底フラスコを反応温度(-80℃)まで冷却し、上述した希釈剤40mLを添加した。イソブチレン(80mL)を冷却浴中の冷却した目盛り付きシリンダーで計量し、これに、反応器フラスコに添加する前に浴温度に達する時間を与えた。イソプレン(3.75~14mLの範囲)を、室温でピペットを用いて反応フラスコ内に計り入れた。次いで、この溶液を330rpmで撹拌し、温度が安定したら、EASCを反応フラスコにピペットで入れて重合を開始させ、その後さらなる冷却をしなかった。反応を30分間行い、約1質量%のNaOHを含有するエタノール溶液を用いて反応を停止させた。この粗ポリマーセメントをドライボックスから取り出し、約100mLのヘキサンを1.0mLの抗酸化剤溶液(ヘキサン中1質量%のIrganox(登録商標)1076)と共に加えた。次いで、この溶液を約600mLの攪拌エタノール中で凝集させた。ゴムを回収し、60℃の真空オーブンで48時間乾燥させた。収率は質量測定により決定した。 【0081】 [ポリマーの分析] NMRスペクトルは、約5mg/mLの濃度のCDCl3溶液を用いてBruker 500MHz NMR分光計で記録した。10秒の遅延時間を使用して、90°のパルス角で32個のトランジェントを収集した。1Hについての化学シフトは、TMS(δ=0)を基準としてppm単位で報告した。 【0082】 [配列パラメーターmの決定] モノマーの組み込みは、1H-NMR分光法によって決定した。NMR測定は、500MHzに相当する電界強度で得た。1H-NMRスペクトルは、Bruker Avance NMR分光計システムで、ポリマーのCDCl3溶液を用いて室温で記録した。すべての化学シフトは、TMSを基準とした。 【0083】 トリアッド配列分布は、Bruker Avance NMR分光計を用いて、125.7MHzの電界強度および50℃の温度での13C NMR分光測定から得られた。ポリマー試料をCDCl3(1.5質量%/体積のクロム(III)アセチルアセトネートを緩和剤として含有するもの)に、6~8質量%の濃度で溶解させた。90度のパルス、3.0秒の繰り返し時間(recycle delay)および2.133秒の取得時間で自由誘導減衰を集めた。各データセットは、30,007Hzの掃引幅と30,000回のスキャン/トランジェントから構成されている。全ての化学シフトはテトラメチルシランを基準とした。 【0084】 データの加工は、TopSpin 2.1を使用して行った。 【0085】 イソプレントリアッド共鳴は、C. Corno、A. Proni、A. Priola、およびS. Cesca、Macromolecules 1980,13,1092、ならびに、JL White、TD Shaffer、CJ RuffおよびJP Cross、Macromolecules 1995, 28,3290(いずれも参照により本明細書に組み入れる)で報告された情報に従って割り当てた。 【0086】 各トリアッド構造について、4級炭素および3級炭素の共鳴が観測された。BII(B=イソブチレン、I=イソプレン)オレフィントリアッド分率を、4級および3級の各タイプの炭素について計算した。例えば、3級炭素のBIIの値は、BIIの3級炭素の積分とIIBの3級炭素の積分の平均を、BIB、BII、IIB、およびIIIトリアッドのすべての3級炭素の積分の合計で割ることによって計算した。定義上、BIIトリアッド分率はIIBトリアッド分率と等しくなければならない。各炭素タイプ(3級および4級)についてBIIトリアッド分率を計算したら、これらの値を平均し、コポリマーに組み込まれたイソプレンの量との比較に使用した。 表1に示すように、各イソプレンの共鳴ごとに積分を計算した。 【0087】 【表1】 [図:0001395539000001.jpg] 【0088】 コポリマーに組み込まれたイソプレンのモル%に対するBII分率(すべてのイソプレン中心トリアッドの百分率として表される)のプロットを作成し、以下に記載する。 【0089】 パラメーターmの値を、式1を使用して各サンプルについて決定し、表2に記載した。 【0090】 【表2】 [図:0001395539000002.jpg] 【0091】 [実施例5]:ハロゲン化 実施例2で分離したゴム溶液を、パイロットスケールハロゲン化装置を使用してハロゲン化した。10%の量の追加の溶媒を、分離したゴム溶液に、粘度を低下させるために添加した。この分離したゴム溶液中で、1.6%の臭素を含有する臭素化されたブチルポリマーが生成した。次いで、このハロゲン化された分離されたゴム溶液を、従来技術の乾燥および仕上げ技術を用いて最終品を得た。」 2 同日出願に記載された事項 (1)同日出願の明細書に記載された事項 同日出願の特許請求の範囲、明細書には、以下の事項が記載されている。なお、以下の摘記事項の他、分割出願の明細書の記載は、本願の明細書の記載と同一である。 (同a)「【請求項1】 式(I): F=mA/(1+mA)2 (I) (式中、 - Aは、1H NMRで決定されるコポリマーにおけるイソプレンのイソブチレンに対するモル比であり、 - Fは、13C NMRで決定されるコポリマーにおけるイソオレフィン-イソプレン-イソプレンのトリアッド分率であり、 - mは、 [1.30-(0.025×MOC)]≧m≧[1.15-(0.025×MOC))] の範囲内であり、ここで、MOCは、1H NMRで決定されるコポリマーにおけるイソプレンのモル%単位の含量である。) によって規定されるコポリマーの配列分布を有するイソブチレンおよびイソプレンのコポリマー。 【請求項2】 mが、 [1.28-(0.025×MOC)]≧m≧[1.16-(0.025×MOC))] の範囲内である、請求項1に記載のコポリマー。 【請求項3】 mが、 [1.27-(0.025×MOC)]≧m≧[1.17-(0.025×MOC))] の範囲内である、請求項1に記載のコポリマー。 【請求項4】 イソブチレン含量が85.0~99.5モル%であり、イソプレン含量が0.5~15.0モル%である、好ましくは、イソブチレン含量が88.0~99.0モル%であり、イソプレン含量が1.0~12.0モル%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のコポリマー。 【請求項5】 イソブチレン含量が86.2~99.5モル%であり、イソプレン含量が0.5~3.8モル%である、好ましくは、イソブチレン含量が86.3~99.0モル%であり、イソプレン含量が1.0~3.7モル%である、請求項1~4のいずれか一項に記載のコポリマー。 【請求項6】 ハロゲン化された、請求項1~5のいずれか一項に記載のコポリマー。 【請求項7】 前記ハロゲン化されたコポリマーのハロゲンの量が、前記ハロゲン化されたコポリマーの0.1~8.0質量%の範囲、好ましくは0.5~4質量%の範囲、より好ましくは0.8~3質量%の範囲、さらにより好ましくは1.2~2.5質量%の範囲、なおさらにより好ましくは1.5~2.5質量%の範囲、最も好ましくは1.8~2.3質量%の範囲である、請求項6に記載のハロゲン化されたコポリマー。 【請求項8】 請求項1~5のいずれか一項に記載のコポリマーの製造方法であって、少なくとも以下の工程a)、b)、およびc): a)希釈剤と、イソブチレンおよびイソプレンを含むモノマー混合物とを、モノマー混合物対希釈剤の質量比5:95~95:5、好ましくは40:60~95:5、より好ましくは45:55~85:15、さらにより好ましくは61:39~80:20で準備して、反応媒体を形成させる工程; b)前記反応媒体中の前記モノマー混合物を、開始剤系の存在下で重合させて、前記コポリマーを含むコポリマー溶液を形成させる工程であって、前記コポリマーが、前記希釈剤と、前記モノマー混合物の残りのモノマーとを含む反応媒体中に少なくとも実質的に溶解される、工程; c)前記反応媒体から、前記モノマー混合物の残りのモノマーを分離し、好ましくは追加的に前記希釈剤を分離して、前記コポリマーを得る工程 を含み、好ましくは上記工程a)、b)、およびc)のみからなり、 ここで、工程b)は、 - -95℃から-60℃の範囲、好ましくは-85℃~-60℃の範囲、さらにより好ましくは-82℃~-68℃の範囲の温度で実施され、かつ、 前記希釈剤が、 - 少なくとも95.0質量%、好ましくは少なくとも98.0質量%、より好ましくは少なくとも98.5質量%、さらにより好ましくは少なくとも99.0質量%の1種以上の脂肪族炭化水素であって、1013hPaの圧力で5℃~95℃の範囲の沸点を有するものを含み、 - 最高で1.0質量%、好ましくは0.8質量%未満、より好ましくは0.5質量%未満、なおさらに好ましくは0.2質量%未満のハロゲン化された、特にフッ素化、塩素化、またはフッ素化および塩素化された炭化水素を含み、最も好ましくはハロゲン化された炭化水素を含まない、方法。 【請求項9】 前記希釈剤の、1013hPaの圧力で5℃~95℃の範囲の沸点を有し、直鎖状である脂肪族炭化水素(n-アルカン)の含量が、85質量%を超えず、好ましくは70質量%を超えず、より好ましくは50質量%を超えず、さらにより好ましくは10~50質量%の範囲である、請求項8に記載の方法。 【請求項10】 前記希釈剤の、1013hPaの圧力で5℃~95℃の範囲の沸点を有する環式炭化水素の含量が、25質量%を超えず、好ましくは20質量%を超えず、さらにより好ましくは1~20質量%の範囲である、請求項8または9に記載の方法。 【請求項11】 前記開始剤系が、エチルアルミニウムセスキクロライド、好ましくは当量のジエチルアルミニウムクロライドおよびエチルアルミニウムジクロライドを好ましくは希釈剤中で混合することによって発生させたエチルアルミニウムセスキクロライドを含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。 【請求項12】 前記開始剤系のプロトン源として、水および/またはアルコール、好ましくは水を使用する、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。 【請求項13】 請求項6または7に記載のハロゲン化されたコポリマーを製造する方法であって、少なくとも以下の工程: - 請求項8~12のいずれか一項で定義した工程a)およびb);ならびに - c)前記モノマー混合物の残りのモノマーを分離する工程;および - d)ハロゲン化工程 を含む、方法。 【請求項14】 ハロゲン化工程を、元素状塩素(Cl2)または元素状臭素(Br2)をハロゲン化剤として使用して実施する、請求項13に記載の方法。 【請求項15】 請求項1~5のいずれか一項に記載のコポリマーおよび/または請求項6または7に記載のハロゲン化されたコポリマーを含む、硬化されているかまたは硬化されていないポリマー製品。」 (同b)「【技術分野】 【0001】 本発明は、効果的な重合プロセス、および特異な微細構造を有する新規なコポリマーを製造するためのその使用に関する。より詳細には、本発明は、新規な微細構造を有するブチルゴム、好ましくは、イソブチレンおよびイソプレンを含むモノマー混合物の共重合によって得ることができるブチルゴムに関する。さらなる側面では、本発明は、そのような新規なコポリマーからハロゲン化によって得ることができるハロゲン化コポリマーに関する。 ・・・ 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0018】 しかし、当技術分野において知られているものと比較して、より均一に分布した架橋部位を有する、すなわちさらに低いm値を有するイソブチレンおよびマルチオレフィンのコポリマーを提供する必要性が依然として存在する。 【課題を解決するための手段】 【0019】 1つの側面では、本発明は、式(I): F=mA/(1+mA)2 (I) (式中、 - Aは、1H NMRで決定されるコポリマーにおけるイソプレンのイソブチレンに対するモル比であり、 - Fは、13C NMRで決定されるコポリマーにおけるイソオレフィン-イソプレン-イソプレンのトリアッド分率であり、 - mは、 [1.30-(0.025×MOC)]≧m≧[1.15-(0.025×MOC))] の範囲であり、ここで、MOCは、1H NMRで決定されるコポリマーにおけるイソプレンのモル%単位の含量である。) によって規定されるコポリマーの配列分布を有するイソブチレンおよびイソプレンのコポリマーを提供する。 【0020】 本発明の範囲は、本明細書に一般的なものであるか好ましいものであるかに関わらず記載した定義、パラメーター、および例示の任意の可能な組み合わせを包含する。 好ましくは、mは、 [1.28-(0.025×MOC)]≧m≧[1.16-(0.025×MOC))] の範囲であり、より好ましくは、 [1.27-(0.025×MOC)]≧m≧[1.17-(0.025×MOC))] の範囲である。 【0021】 1つの実施態様では、本発明のコポリマーにおいて、イソブチレン含量は85.0~99.5モル%であり、イソプレン含量は0.5~15.0モル%である。好ましい実施態様では、イソブチレン含量は88.0~99.0モル%であり、イソプレン含量は1.0~12.0モル%である。」 (2)同日出願の令和4年1月18日付け手続補正書に記載された事項 同日出願は、本願の審決時における最新の手続補正書である令和4年1月18日付け手続補正書により特許請求の範囲の請求項1~23が補正され、そのうち、請求項1~2として、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 式(I): F=mA/(1+mA)2 (I) (式中、 - Aは、1H NMRで決定されるコポリマーにおけるイソプレンのイソブチレンに対するモル比であり、 - Fは、13C NMRで決定されるコポリマーにおけるイソブチレン-イソプレン-イソプレンのトリアッド分率であり、 - mは、 [1.28-(0.025×MOC)]≧m≧[1.15-(0.025×MOC)] の範囲内であり、ここで、MOCは、1H NMRで決定されるコポリマーにおけるイソプレンのモル%単位の含量である。) によって規定されるコポリマーの配列分布を有し、 イソブチレン含量が85.0~99.5モル%であり、イソプレン含量が0.5~15.0モル%である、イソブチレンおよびイソプレンのコポリマー。 【請求項2】 mが、 [1.27-(0.025×MOC)]≧m≧[1.16-(0.025×MOC)]の範囲内である、請求項1に記載のコポリマー。」 第5 本願明細書における先行技術文献の記載及びこれらから把握される周知技術について 1 本願明細書における先行技術文献の記載事項 本願明細書の(本a)の段落【0016】には、先行技術文献として、【特許文献1】~【特許文献5】が記載されている。これらの【特許文献1】~【特許文献5】の文献、及び、文献のパテントファミリーである文献には、以下の事項が記載されている。 (1)先行技術文献1に記載された事項 本願明細書の(本a)の段落【0016】において【特許文献1】として記載された欧州特許第1572766号と同じ国際特許出願の国内公表公報である特表2006-511693号(特願2005-510046号)(以下、「先行技術文献1」という。)は、当該欧州特許公報の記載内容と実質的に同じであり日本語翻訳文に相当するといえるところ、当該国内公表公報には、以下の事項が記載されている。なお、本願明細書の(本a)の段落【0013】~【0014】においても、【特許文献1】である欧州特許第1572766号は引用されている。 また、(先1e)において、特願2005-510046号の特許設定登録時の特許請求の範囲の記載を示す。 (先1a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 イソオレフィンおよびマルチオレフィンを含むコポリマーであって、下記式 F=mA/(1+mA)2 (式中、mはコポリマー配列分布パラメータであり、Aはコポリマーにおけるマルチオレフィンのイソオレフィンに対するモル比であり、およびFはコポリマーにおけるイソオレフィン-マルチオレフィン-マルチオレフィン・トリアッド断片であり、mは1.5よりも大きい。)で定義されるコポリマー配列分布を有することを特徴とするコポリマー。 ・・・ 【請求項10】 イソブチレンおよびイソプレンを含むコポリマーであって、下記式 F=mA/(1+mA)2 (式中、mはコポリマー配列分布パラメータであり、Aはコポリマーにおけるイソプレンのイソブチレンに対するモル比であり、およびFはコポリマーにおけるイソブチレン-イソプレン-イソプレン・トリアッド断片であり、mは1.5よりも大きい。)で定義されるコポリマー配列分布を有することを特徴とするコポリマー。 ・・・ 【請求項18】 イソオレフィンおよびマルチオレフィンを含むコポリマーであって、下記式 F=mA/(1+mA)2 (式中、mはコポリマー配列分布パラメータであり、Aはコポリマーにおけるマルチオレフィンのイソオレフィンに対するモル比であり、およびFはコポリマーにおけるイソオレフィン-マルチオレフィン-マルチオレフィン・トリアッド断片であり、mは1.10から1.25である。)で定義されるコポリマー配列分布を有することを特徴とするコポリマー。 【請求項19】 前記mが1.15から1.20であることを特徴とする請求項18に記載のコポリマー。 【請求項20】 前記mが1.15から1.25であることを特徴とする請求項18に記載のコポリマー。 【請求項21】 前記mが1.20であることを特徴とする請求項18に記載のコポリマー。 【請求項22】 前記マルチオレフィンが共役ジエン、好ましくはイソプレンであることを特徴とする請求項18から21のいずれか1項に記載のコポリマー。 ・・・ 【請求項27】 イソブチレンおよびイソプレンを含むコポリマーであって、下記式 F=mA/(1+mA)2 (式中、mはコポリマー配列分布パラメータであり、Aはコポリマーにおけるイソプレンのイソブチレンに対するモル比であり、およびFはコポリマーにおけるイソブチレン-イソプレン-イソプレン・トリアッド断片であり、mは1.10から1.25である。)で定義されるコポリマー配列分布を有することを特徴とするコポリマー。 【請求項28】 前記mが1.15から1.20であることを特徴とする請求項27に記載のコポリマー。 【請求項29】 前記mが1.15から1.25であることを特徴とする請求項27に記載のコポリマー。 【請求項30】 前記mが約1.20であることを特徴とする請求項27に記載のコポリマー。 【請求項31】 前記イソプレンの含有量が0.5モル%より大きいことを特徴とする請求項27から30のいずれか1項に記載のコポリマー。 【請求項32】 前記イソプレンの含有量が1.0モル%より大きいことを特徴とする請求項27から30のいずれか1項に記載のコポリマー。 【請求項33】 前記イソプレンの含有量が2.5モル%より大きいことを特徴とする請求項27から30のいずれか1項に記載のコポリマー。 【請求項34】 前記イソプレンの含有量が5.0モル%より大きいことを特徴とする請求項27から30のいずれか1項に記載のコポリマー。 【請求項35】 イソオレフィン好ましくはイソブチレン、マルチオレフィン、1または2種以上のルイス酸、1または2種以上の開始剤、および1または2種以上の水素化フッ素化炭素を含む希釈剤を接触させる工程を含むプロセスにより製造されたコポリマーであって、下記式 F=mA/(1+mA)2 (式中、mはコポリマー配列分布パラメータであり、Aはコポリマーにおけるマルチオレフィンのイソオレフィンに対するモル比であり、およびFはコポリマーにおけるイソオレフィン-マルチオレフィン-マルチオレフィン・トリアッド断片であり、mは1.5よりも大きいか、または1.10から1.25である。)で定義されるコポリマー配列分布を有することを特徴とするコポリマー。 ・・・ 【請求項42】 前記マルチオレフィンが共役ジエン、好ましくはイソプレンであることを特徴とする請求項35に記載のコポリマー。」 (先1b)「【技術分野】 【0001】 本願は、2002年12月20日出願の米国仮出願第60/435,061号、2003年4月21日出願の米国仮出願第60/464,187号、および2003年6月17日出願の米国仮出願第60/479,081号の優先権を主張し、これらの出願による開示は参照により取り込まれる。 【0002】 本発明は、水素化フッ素化炭化水素(hydrofluorocarbons)を含有する希釈剤を含む新しい重合プロセス、およびそれらの新しい配列分布を有する新規なポリマーの製造への利用に関する。特に本発明は、新しい配列分布を有する、イソオレフィン、好ましくはイソブチレン、およびマルチオレフィン、好ましくは共役ジエン、さらに好ましくはイソプレンのコポリマーに関する。 【背景技術】 【0003】 イソオレフィン・ポリマーをカルボカチオン重合プロセスにより調製する。特に、少量のイソプレンとイソプチレンとの共重合体であるブチルゴムは重要である。ブチルゴムは、高分子量のブチルゴムを調製するために、イソブチレンが99.5重量%を超える純度を有し、イソプレンが98.0重量%を超える純度を有することが一般的に要求される低温カチオン重合により作られる。 ・・・ 【0015】 イソブチレンおよびイソプレンの共重合は溶液またはスラリー中で行われてきた。溶液重合では、モノマー、触媒および調製されたコポリマー用の溶媒として働く塩素化炭化水素、または炭化水素および塩素化炭化水素の混合物がよく用いられる。代表的な例は塩化エチル/ヘキサン混合物である。スラリー重合においては、塩素化炭化水素、通常は塩化メチルがモノマーおよび触媒用の溶媒として用いられるが、生成されるコポリマーは希釈剤に不溶性である。 【0016】 調製されたコポリマーの配列分布、すなわちポリマー鎖に沿ったモノマー単位の並び方の特性は、用いられたコモノマーの実質的な反応性と同様に、重合条件によっても影響を受ける。コポリマーの配列分布は、近接する構造単位の組み合わせによって表現することができる。例えば、2つのモノマー単位の特徴付けられる配列はダイアッド(diad)と呼ばれる。3つのモノマー単位の配列はトリアッド(triad)である。4つの単位の配列はテトラッド(tetrad)と呼ばれるなどである。同じコモノマーを取り込み、異なる条件で調製したコポリマーは、コポリマー鎖におけるダイアッド(またはトリアッド等)により表現されるように、配列の分布に違いが生じ得る。配列分布およびコモノマー取り込みは、共重合に含まれる化学事象の競争的な性質のために数学的に確率統計に関連する。この関連の特徴づけに役立つパラメータは、反応性比、ホモ成長(類似のモノマーの添加)と交叉成長(比類似のモノマーの添加)の速度定数比である。同じコモノマーの取り込みによるが、異なる配列分布を有するコポリマーは、しばしば異なる物性を有する。例えば、「ポリマー鎖の化学微細構造(Chemical Microstructure of Polymer Chains)」、ジェイ・エル・ケーニッヒ著、ウィリー・インターサイエンス社(ニューヨーク、1980年)、および「ポリマー配列決定:カーボン-13NMR法(Polymer Sequence Determination: Carbon-13 NMR Method)」、ジェイ・シー・ランダル著、アカデミック・プレス社(1977年)を参照されたい。極端だが明確な実験例は、ランダム・コポリマーおよびブロック・コポリマーの物性の比較である。 【0017】 カルボカチオン共重合系において共役ジエンがイソブチレンよりも反応性が低いことは一般に知られている。既知の直線状共役ジエンのうち、イソプレンはイソブチレンとの共重合において、より反応性を有するジエンの1つである。共役ジエンの低反応性に対するこの傾向は、調製されるコポリマー配列分布に表現されている。ある与えられたコポリマーの組成において、イソプレン単位はコポリマー鎖の他のイソプレン単位に従う傾向を示さない。結局、BII(B=イソブチレン、I=イソプレン)、IIBおよびIIIのトリアッド断片は、より反応性のコモノマーを有する系に比べると相対的に低い。 【0018】 イソブチレン/イソプレン共重合は塩素化炭化水素、または炭化水素および塩素化炭化水素の混合物中でよく行われるため、配列分布が変化し得る程度は非常に制限されている。この制限を表現するものは、イソブチレン/イソプレン共重合において既知のイソプレン反応性比を検討することにより見出される。例えば、ジェイ・イー・パスカス(J.E.Puskas)著、「カルボカチオン重合(Carbocationic Polymerization)」(ポリマー科学技術百科事典)、(DOI:10.1002/0471440264.pst040)、ジョン・ウィリー・アンド・サン社(ニューヨーク、2003年)を参照されたい。様々な重合条件下、イソプレン反応性比の値rIPは、調整されるコポリマーにおけるトリアッド断片(BII、IIBおよびIII)が集中した利用可能なイソプレンの狭い範囲を示す1.4以下に低下する。ある与えられたコモノマー取り込みで、トリアッド断片が集中した異なる濃度のイソプレンの重合系を見出すことは、交叉結合部位および官能基を同時に導入するために好適なコポリマーを調製するのに望ましい。 ・・・ 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0020】 ゴムを製造するために典型的に用いられる商業ベースの反応槽は、ポンプ撹拌羽根を備え、高速の循環速度を有する10~30リッターを超える容積のよく撹拌された容器である。重合およびポンプはいずれも熱を発生し、スラリーを低温に保つために、反応系には熱を除去する能力が必要とされる。しかしながら、これらの特許には、望ましい商業的プロセスを実施するためのポリマー粒子の凝集に関する多くの課題に満足すべき言及はなされてきていない。 【0021】 したがって、粒子の凝集および/または塩化メチルのような塩化炭化水素の量を減少させる新しい重合系を創るために、代替できる希釈剤または混合する希釈剤を見出すことが望ましい。そのような新しい重合系は、プロセスのパラメータ、条件、または成分について妥協する必要なしに、および/または、生産性/生産量および/または高分子量ポリマーの製造能力を犠牲にする必要なしに、粒子の凝集および反応槽の汚染を減少させるだろう。さらに、前述のプロセスに関わる新規ポリマーを見出すことにより、世界的に増加するエラストマーへの需要に応えることに役立ち、および/または新しい目的への利用応用を提供するだろう。」 (先1c)「【0091】 モノマーおよびポリマー ・・・ 【0095】 また、好ましいポリマーには、1)イソブチレンおよびアルキルスチレン、および2)イソブチレンおよびイソプレンのコポリマーが含まれる。 【0096】 1つの態様において、ブチルポリマーはコモノマー混合物を反応することにより調製され、この混合物は少なくとも(1)イソブテンのようなC4~C6イソオレフィンのモノマー成分、(2)マルチオレフィン、または共役ジエンのモノマー成分を含む。前記イソオレフィンは、1つの態様において全コモノマー混合物重量の70~99.5重量%、他の態様において85~99.5重量%の範囲である。さらに他の態様において前記イソオレフィンは92~99.5重量%の範囲である。前記共役ジエン成分は、1つの態様において30~0.5重量%、他の態様において15~0.5重量%存在する。さらに他の態様において8~0.5重量%のコモノマー混合物が共役ジエンである。前記C4~C6イソオレフィンは、1以上のイソブテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ペンテン、および4-メチル-1-ペンテンであり得る。前記マルチオレフィンは、イソプレン、ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、β-ピネン、ミルセン、6,6-ジメチルフルベン、ヘキサジエン、シクロペンタジエン、およびピペリレンのようなC4~C14共役ジエンであり得る。本発明のブチルゴム・ポリマーの1つの態様においては85~99.5重量%のイソブチレンを15~0.5重量%のイソプレンと反応することにより、さらに他の態様においては95~99.5重量%のイソブチレンを5~0.5重量%のイソプレンと反応することにより得られる。次の表は上記重量%がモル%としてどのように表されるかを示している。 【0097】 【表1】 [図:0001395539000003.jpg] 【0098】 本発明の目的のために、イソオレフィンおよびマルチオレフィンおよびモル%またはマルチオレフィンのコポリマー取り込みは、下記のコポリマー配列分布式で記載され、コポリマー配列分布パラメータmで特徴付けられる。 F=mA/(1+mA)2 (式中、mはコポリマー配列分布パラメータであり、 Aはコポリマーにおけるマルチオレフィンのイソオレフィンに対するモル比であり、および Fはコポリマーにおけるイソオレフィン-マルチオレフィン-マルチオレフィン・トリアッド断片である。) 【0099】 この式による最適合により、各希釈剤におけるイソオレフィンおよびマルチオレフィンの重合のためのm値が得られる。 【0100】 特定の態様において、mは1.5より大きく、または2.0より大きく、または2.5より大きく、または3.0より大きく、または3.5より大きい。 【0101】 他の態様において、mは1.10から1.25であり、または1.15から1.20であり、または1.15から1.25であり、またはmは約1.20である。」 (先1d)「【0212】 実施例 重合は、外部電気駆動撹拌機により駆動されるガラス撹拌軸上のテフロンタービン撹拌羽根を装備したガラス反応容器で行った。ガラス容器の大きさと形態は各一群の実施例で示している。反応容器の頭部には撹拌軸、熱電対(thermocoupe)、開始剤/共開始剤の添加のために入り口がある。反応容器は、ドライボックスのペンタンまたはイソヘキサン浴に組み立て反応容器を浸すことにより、下記表に挙げられた望ましい反応温度まで冷却される。撹拌炭化水素浴の温度は±2℃に制御された。反応媒体と接触する液体中の全ての器具は、使用前に120℃で乾燥し、窒素雰囲気下で冷却した。イソブチレン(マテソン(Matheson)社またはエクソン・モービル社製)および塩化メチル(エアプロダクツ社製)は、酸化バリウムを含むステンレススチール・カラムをガスで通過させることにより乾燥し、濃縮し、ドライボックス内に液体として回収した。別に、塩化メチルはシリカゲルおよびモレキュラーシーブを含むステンレススチール・カラムをガスで通過させることにより乾燥した。両物質は濃縮し、ドライボックス内に液体として回収した。イソプレン(アルドリッチ社製)は水素化カルシウム上で乾燥し、アルゴン雰囲気下で蒸留した。パラ-メチルスチレン(アルドリッチ社製)は水素化カルシウム上で乾燥し、真空状態下で蒸留した。TMPCl(2-クロロ-2,4,4-トリメチルペンタン)は、ジエチルエーテル中で2,4,4-トリメチルペンテン-1および2.0モル/L塩酸水溶液から調製した。TMPClは使用前に蒸留した。塩酸(アルドリッチ社製、純度99%)ストック溶液は、望ましい量の塩酸ガスをMeCl中に溶解し重量で2-3%濃度まで到達させて調製した。-95℃で透明無色の液体として回収された水素化フッ素化炭素はそのまま用いた。-95℃で曇っているまたは不溶物がある水素化フッ素化炭素は使用前に蒸留した。そのまま用いたプロパン(アルドリッチ社製)は濃縮されており、液体として用いた。二塩化アルキルアルミニウム(アルドリッチ社製)は炭化水素溶液として用いた。これらの溶液はいずれも市販品であるか、またはニートの二塩化アルキルアルミニウムから調製した。 【0213】 スラリー重合は、モノマーおよびコモノマーを液化水素化フッ素化炭素中に重合温度で溶解し、800から1000rpmの予め決められた撹拌速度で撹拌することにより行った。プロセッサー制御電気撹拌モータは、撹拌速度を5rpm内にコントロールして用いた。開始剤/共開始剤溶液は、水素化フッ素化炭素中、または小規模実験の利便のために、少量の塩化メチル中のいずれかに調製した。開始剤/共開始剤溶液は、希釈剤(各実施例で特定した)に開始剤を溶解し、撹拌しながら1.0Mハロゲン化アルキルアルミニウム溶液を添加することにより調製した。開始剤/共開始剤溶液は素早く用いた。開始剤/共開始剤溶液は、冷却したガラスのパスツール・ピペット、または500mLガラス反応容器用の被覆された滴下漏斗を任意に用いて重合反応に滴下した。第二または第三の開始剤/共開始剤溶液の添加が実施例において特記される場合には、第一のバッチと容量および濃度で同等の新しく調製された第二または第三の開始剤/共開始剤溶液のバッチのことを示す。ゴム粒子の物理的状態および汚染状態は、各触媒バッチの添加終了後に撹拌軸を停止し移動させて、冷却したスパチュラで粒子を探査することにより調べた。撹拌を再開し、反応は100mLより多くのメタノールを加えることにより停止させた。換算はポリマーに変換したモノマー重量として行った。 ・・・ 【0219】 前記イソプレン・トリアッド共鳴は、マクロモルキュールズ(Macromolecules)、1980年、第13巻、1092頁においてシー・コルノ(C. Corno)、エイ・プロニ(A. Proni)、エイ・プリオラ(A. Priola)およびエス・セスカ(S. Cesca)によって、およびマクロモルキュールズ、1995年、第28巻、3290頁においてジェイ・エル・ホワイト(J. L. White)、ティー・ディー・シェイファー(T. D. Shaffer)、シー・ジェイ・ラフ(C. J. Ruff)およびジェイ・ピー・クロス(J. P. Cross)によって報告された情報にしたがって帰属させた。これらの両方の情報は参照により本発明に取り込まれる。それぞれのトリアッド構造について、4級炭素および3級炭素共鳴が観察された。前記BII(B=イソブチレン、I=イソプレン)オレフィン・トリアッド断片は、4級および3級のそれぞれのタイプの炭素について計算された。例えば、3級炭素についてのBII値は、BII3級炭素およびIIB3級炭素の積分の平均をBIB、BII、IIBおよびIIIトリアッドについての全ての3級積分の合計で除することにより計算した。定義より、BIIトリアッド断片はIIBトリアッド断片と等しくなければならない。一旦、BIIトリアッド断片が4級および3級のそれぞれのタイプの炭素について計算されると、これらの値は平均され、コポリマーに取り込まれたイソプレン量と比較するために用いられる。コポリマーに取り込まれたモル%イソプレンに対するBII断片がプロット(例えば100×BII断片のように、トリアッドに集中した全イソプレンの百分率として表される)され、下記のように表される。 【0220】 本発明の目的のために、BIIトリアッド断片およびコポリマーに取り込まれたモル%イソプレンの間の関係は、下記のコポリマー配列分布式で記載され、コポリマー配列分布パラメータmで特徴付けられる。 FBII=mA/(1+mA)2 (式中、mはコポリマー配列分布パラメータであり、 Aはコポリマーにおけるイソプレンのイソブチレンに対するモル比[IP]/[IB]であり、および FBIIはコポリマーにおけるBIIトリアッド断片である。) 【0221】 この式による最適合により、各希釈剤におけるイソブチレンおよびイソプレンの重合のためのm値が得られる。 【0222】 13C NMR分光法により得られたデータは、最適化のためのコポリマー配列分布式に繰り返し溶液によって最適化した。この式による最適合により、各希釈剤におけるイソブチレンおよびイソプレンの重合のためのm値が得られる。 【0223】 様々なNMR法はコモノマーの取り込みおよびコポリマーにおける配列分布の決定に用いられてきた。これらの多くの方法は本発明のポリマーに適用できる。ポリマーの特性決定へのNMRスペクトロメトリーの応用をまとめた概説的な文献は、エイチ・アール・クリヘルドルフ(H.R.Kricheldorf)著、ポリマー・イヤーブック(エイチ・ジー・エリアス(H.G.Elias)およびアール・エー・ペトリック(R.A.Pethrick)編、ハーウッド・アカデミック出版、ニューヨーク、1984年、249-257頁)であり、本発明に参照により取り込まれる。 【0224】 表1には、水素化フッ素化炭素および塩化メチル(CH3Cl)(実験例10)および対照としてのプロパン(実験例11)中、-90から-95℃で実行された重合の結果を掲載する。100mLガラス製のミニ樹脂容器をこれらの実験例に用いた。TMPCl(2-クロロ-2,4,4-トリメチルペンタン)をこれらの実験例の開始剤として用いた。 [図:0001395539000004.jpg] 【0225】 いずれの水素化フッ素化炭素を用いた重合においても、ゴム粒子は結果として反応容器壁および撹拌軸に付着しなかった。撹拌を停止すると、粒子は液体表面に浮遊していた。反応温度近くで試験した際に、冷却したスパチュラで押し付けることにより粒子は硬いものであることが明らかとなった。塩化メチルにおける重合では、結果として粒子は反応容器壁および撹拌軸に付着した。冷却したスパチュラで探査することにより粒子は明らかにゴム状であった。プロパンにおける重合は、結果として二相液-液反応であった。より軽い相はプロパンリッチであったのに対し、高濃度相は明らかにポリマーリッチであった。 【0226】 実験例12-14 -50から-55℃で実施した重合の結果を表2に示した。実験例13および14は比較例である。100mLガラス製のミニ樹脂容器をこれらの実験例に用いた。TMPCl(2-クロロ-2,4,4-トリメチルペンタン)をこれらの実験例の開始剤として用いた。 【表4】 [図:0001395539000005.jpg] 【0227】 ジフルオロメタンにおける重合では、室温で冷却したスパチュラで探査することにより明らかなように硬いゴム状の物性を示すゴム粒子が得られた。反応容器壁および撹拌軸には明らかに少量の汚れがあった。これに比べて、塩化メチルにおける重合では、結果として反応容器壁および撹拌軸のいずれにも粘着性のポリマー被膜が見られた。希釈剤溶媒にポリマーはほとんど「懸濁」していなかった。プロパンによる重合実験では、-95℃における実験(表1、実験例11)と感知できる差異は認められなかった。反応容器には2相が認められた。高濃度相はポリマーリッチであり、より軽い相はプロパンリッチであった。プロパン希釈剤存在下におけるポリマーは、塩化メチルを用いた例で形成されたポリマーよりかなり粘着性が低かった。 【0228】 実験例15-21 表3に水素化フッ素化炭素/塩化メチル混合物において-95℃で行った重合の結果の一覧を示した。100mLガラス製のミニ樹脂容器をこれらの実験例に用いた。TMPCl(2-クロロ-2,4,4-トリメチルペンタン)をこれらの実験例の開始剤として用いた。 【表5】 [図:0001395539000006.jpg] 【0229】 実験例22-25 -55℃で行った重合の結果を表5に示した。開始剤/共開始剤溶液の2つのバッチを各実験例に用いた。100mLガラス製のミニ樹脂容器をこれらの実験例に用いた。TMPCl(2-クロロ-2,4,4-トリメチルペンタン)をこれらの実験例の開始剤として用いた。 【表6】 [図:0001395539000007.jpg] 【0230】 実験例26 -95℃で二塩化メトキシアルミニウムを用いて重合を行った。開始剤/共開始剤溶液は-35℃で0.93μLの無水メタノールを2.6mLの液体1,1,1,2-テトラフルオロエタンに溶解することにより調製した。この溶液に23μLの1.0モル/L二塩化エチルアルミニウムのプロパン溶液を添加した。この溶液を10分間撹拌した。第二溶液は同様にして調製した。各溶液に3.2μLの2-クロロ-2,4,4-トリメチルペンタンを撹拌しながら添加し、-95℃に冷却した。両溶液を冷却したピペットを用いて重合溶液に滴下した。100mLガラス製のミニ樹脂容器をこれらの実験例に用いた。 【表7】 [図:0001395539000008.jpg] 【0231】 実験例27 表6に1,1,1,2-テトラフルオロエタンおよび1,1-ジフルオロエタンの85/15(容量/容量)混合物において-95℃で行った重合の結果の一覧を示した。この実験は、30mLの希釈剤、5.4mLのイソブチレン、0.26mLのイソプレンを用いて行い、2.6mL塩化メチルにおいて3.2μLのTMPClおよび32.0μLの1.0M二塩化メチルアルミニウム(MADC)のヘキサン溶液を用いて調製した開始剤/共開始剤溶液を用いた。100mLガラス製のミニ樹脂容器をこれらの実験例に用いた。 【表8】 [図:0001395539000009.jpg] ・・・ 【0234】 実験例32-37 表8に、比較として水素化フッ素化炭素および塩化メチルにおいて-95℃で行った重合の結果の一覧を示した。実験例36および37は比較例である。これらの実験例には三口500mLガラス反応容器を用いた。各重合の前に、10重量%のモノマーを含む300mLのモノマー供給原料を冷却した反応容器に充填した。開始剤/共開始剤のモル比は1/3にコントロールされ、濃度はMeCl中0.1重量%EADCと設定された。開始剤/共開始剤溶液は重合混合物に滴下され、添加速度は反応温度が4℃を超えて上昇しないように制御された。添加する開始剤/共開始剤溶液の量はそれぞれ望ましいモノマーの変換対象に依存した。 【表10】 [図:0001395539000010.jpg] 【0235】 表8の実験例により、CHF2CF3およびCH3CHF2において、EADC/HCl開始剤系を用いて高分子量のブチルゴムが生成されることが証明された。CHF2CF3およびCH3CHF2において生成されるブチルポリマーの分子量は、同様の条件下、同様の変換率でMeClにおいて生成されるポリマーよりも有意に大きかった。CHF2CF3およびCH3CHF2のいずれにおいて生成されブチルポリマーのポリ分散性も、同様の実験条件下でMeClにおいて生成されたポリマーよりも狭く、最も可能性のあるポリ分散性の2.0に近かった。MeClにおいて生成されたコポリマーにおけるイソプレン取り込みは、CHF2CF3およびCH3CHF2より低下していた。CHF2CF3およびCH3CHF2のいずれにおいて生成されるポリマースラリー粒子も、同様の条件下、MeClにおいて生成されるポリマースラリー粒子よりも取り扱う間、有意に非粘着性であった。 【0236】 実験例38-44 表9に、比較として水素化フッ素化炭素および塩化メチルにおいて-95℃で行ったイソブチレンおよびp-メチルスチレンの重合の結果の一覧を示した。実験例41および42は比較例である。これらの実験例には三口500mLガラス反応容器を用いた。各重合の前に、10重量%のモノマーを含む300mLのモノマー供給原料を冷却した反応容器に充填した。開始剤/共開始剤のモル比は1/3にコントロールされ、濃度はMeCl中0.1重量%EADCと設定された。開始剤/共開始剤溶液は重合混合物に滴下され、添加速度は反応温度が4℃を超えて上昇しないように制御された。添加する開始剤/共開始剤溶液の量はそれぞれ望ましいモノマーの変換対象に依存した。 【表11】 [図:0001395539000011.jpg] 【0237】 表9の実験例により、CHF2CF3において、EADC/HCl開始剤系を用いてMeCl希釈剤において生成されたコポリマーと匹敵する分子量のイソブチレン-PMSコポリマーが生成されることが証明された。CHF2CF3において調製されたイソブチレン/p-メチルスチレン・コポリマーは非常に高い分子量を示す。コポリマーへのpMSの取り込みは、同様の反応条件下、同様のモノマー供給原料組成物を用いてMeClにおいてよりもCHF2CF3において有意に高かった。さらに、CHF2CF3におけるポリマースラリー粒子は、MeClにおいてよりもCHF2CF3において有意に非粘着性になった。 【0238】 実験例45-47 表10に、CHF2CF3およびCH3CHF2の80/20混合物(容量で)おいて-95℃で行ったイソブチレン/p-メチルスチレンの共重合の結果の一覧を示した。これらの実験例には三口500mLガラス反応容器を用いた。各重合の前に、10重量%のモノマーを含む300mLのモノマー供給原料を冷却した反応容器に充填した。開始剤/共開始剤のモル比は1/3にコントロールされ、濃度はMeCl中0.1重量%EADCと設定された。開始剤/共開始剤溶液は重合混合物に滴下され、添加速度は反応温度が4℃を超えて上昇しないように制御された。添加する開始剤/共開始剤溶液の量はそれぞれ望ましいモノマーの変換対象に依存した。 【表12】 [図:0001395539000012.jpg] 【0239】 表10の実験例により、重合希釈剤としてのCHF2CF3およびCH3CHF2の混合物において、高分子量のイソブチレン-イソプレン・コポリマーおよびイソブチレン-pMSコポリマーが生成されることが証明された。CHF2CF3/CH3CHF2混合物におけるポリマースラリー粒子は、前述の純粋なCHF2CF3またはCH3CHF2希釈剤と同様に非粘着性の外観を有することがわかっている。 ・・・ 【0252】 実験例142-146 表17に、CHF2CF3において-95℃で行ったイソブチレン/イソプレンの共重合の結果の一覧を示した。このイソブチレン/イソプレン供給原料比を各実験で変化させた。これらの実験例には三口500mLガラス反応容器を用いた。各重合の前に、10重量%のモノマーを含む300mLのモノマー供給原料を冷却した反応容器に充填した。開始剤/共開始剤のモル比は1/3にコントロールされ、濃度はMeCl中0.1重量%EADCと設定された。開始剤/共開始剤溶液は重合混合物に滴下され、添加速度は反応温度が4℃を超えて上昇しないように制御された。添加する開始剤/共開始剤溶液の量はそれぞれ望ましいモノマーの変換対象に依存した。 【表19】 [図:0001395539000013.jpg] 【0253】 これらの実験例により、高いイソプレン取り込みにより高分子量のコポリマーが調製されることが証明された。スラリー粒子の凝集は水素化フッ素化炭素において有意に低減した。これらのイソブチレン/イソプレン・コポリマーのGPC追跡により、5モル%を超えるイソプレンを含む実験例146においてさえも、ゲル生成または架橋のシグナルが認められなかった。本発明により生成された高ジエンのイソブチレン/イソプレン・ポリマーは、次にハロブチルポリマーを生成するために標準の確立されたハロゲン化プロセスによってハロゲン化された。 ・・・ 【0260】 95℃において異なるイソブチレン/イソプレン・コモノマー比を用いて、イソブチレンおよびイソプレンの共重合を行った。全ての共重合を30mLの希釈剤および4.0mLのイソブチレンを用いて行った。イソプレンの量を変動させて6つの共重合を3種の異なる希釈剤中で行った。各希釈剤用の6つの異なるイソプレン濃度を調製するためにモノマー溶液に添加したイソプレン量は0.11、0.27、0.41、0.57、0.89、および1.27mLであった。実験例149用のコポリマーは塩化メチル中で調製した。実験例149は比較例である。実験例150用のコポリマーは1,1,1,2-テトラフルオロエタン中で調製した。実験例151用のコポリマーは1,1-ジフルオロエタン中で調製した。実験例152用のコポリマーは1,1-ジフルオロメタン中で調製した。実験例150、151、および152は本発明の実施例である。8mLの各希釈剤に、12.6μLの0.93モル/L塩化水素のCHF2CF3溶液、および35.4μLの1.0モル/L塩化エチルアルミニウムのヘキサン溶液を加えることにより調製した開始剤/共開始剤溶液を用いてコポリマーを調製した。モノマー溶液を800rpmで撹拌し、-92℃以下の温度を維持するために開始剤/共開始剤溶液を滴下して加えることにより10合を行った。メタノールで重合を停止し、ポリマーを回収し、室温真空中でポリマーを乾燥させることによりコポリマーを分離した。ポリマーは分析を行うまで冷凍機で保存した。実験例149、150、および151用の前記BII断片のデータ(百分率で表された)を図4に示す。上述のコポリマー配列分布式の繰り返し最適化により、これらの実験例について計算された配列分布パラメータmの比較を表26に、-95℃における希釈剤の誘電定数値とともに示した。 【表28】 [図:0001395539000014.jpg] 」 (先1e)「【請求項1】 イソブチレン、イソプレン、1または2種以上のルイス酸、1または2種以上の開始剤、および1,1-ジフルオロエタンまたは1,1-ジフルオロメタンを含む希釈剤を接触させる工程を含むプロセスにより製造されたコポリマーであって、下記式 F = mA/(1+mA)2 (式中、mはコポリマー配列分布パラメーターであり、Aはコポリマーにおけるイソプレンのイソブチレンに対するモル比であり、およびFはコポリマーにおけるイソブチレン-イソプレン-イソプレン・トリアッド断片の含有率であり、mは1,1-ジフルオロエタンについて2.3であり、1,1-ジフルオロメタンについて1.9である。)で定義されるコポリマー配列分布を有することを特徴とするコポリマー。 【請求項2】 前記1または2種以上のルイス酸が、独立して、三塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、二塩化エチルアルミニウム、セスキ塩化エチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、二塩化メチルアルミニウム、セスキ塩化メチルアルミニウム、塩化ジメチルアルミニウム、三フッ化砒素、および四塩化チタンで構成される群から選択され、前記1または2種以上の開始剤が、独立してHCl、H2O、メタノール、(CH3)3CCl、C6H5C(CH3)2Cl、2-クロロ-2,4,4-トリメチルペンタン、および2-クロロー2-メチルプロパンで構成される群から選択されることを特徴とする請求項1 に記載されたコポリマー。 【請求項3】 前記ルイス酸が二塩化エチルアルミニウムであり、開始剤がHClであることを特徴とする、請求項1に記載されたコポリマー。 【請求項4】 イソプレン含有量が0.5モル%より大きいことを特徴とする請求項1から3のいずれかの請求項に記載されたコポリマー。 【請求項5】 イソプレン含有量が1.0モル%より大きいことを特徴とする請求項1から3のいずれかの請求項に記載されたコポリマー。 【請求項6】 イソプレン含有量が2.5モル%よりも大きいことを特徴とする請求項1から3のいずれかの請求項に記載されたコポリマー。 【請求項7】 イソプレン含有量が5.0モル%よりも大きいことを特徴とする請求項1から3のいずれかの請求項に記載されたコポリマー。 【請求項8】 イソプレン含有量が2.4から10.83モル%であることを特徴とする請求項1から3のいずれかの請求項に記載されたコポリマー。」 (2)先行技術文献2に記載された事項 本願明細書の(本a)の段落【0016】において【特許文献2】として記載されたカナダ特許第1019095号明細書(以下「先行技術文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。 (先2a)「Example 5 ・・・ The thus prepared solution of the catalyst was diluted in a 8-fold quantity cyclohexane and used for the copolymerization of isobutylene and isoprene. A solution of comonomers in cyclohexane containing 47.7 per cent by volume of isobutylene and 0.3 per cent by volume of isoprene. ・・・」(第14頁第23行~第15頁第13行) (当審訳:実施例5 ・・・ このように調整された触媒溶液は、8倍量のシクロヘキサンにより希釈され、イソブチレンとイソプレンの共重合に使用された。シクロヘキサン中の共重合される単量体の溶液は47.7%のイソブチレンと0.3%のイソプレンを含むものであった。・・・) (3)先行技術文献3に記載された事項 本願明細書の(本a)の段落【0016】において【特許文献3】として記載された米国特許第3361725号明細書(以下「先行技術文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。 (先3a)「What is claimed is; 1. A process for preparing solution butyl rubber polymers having viscosity average molecular weights >450,000 which comprises contacting a C4 to C8 mono-olefin monomer with a C4 to C14 multi-olefin monomer at temperatures ranging from about -125 to -50°F. in the presence of an aliphatic hydrocarbon diluent and a catalyst mixture comprising a major amount of a dialkylaluminium halide and a minor amount of a monoalkylaluminium dihalide.」(第6欄第57~66行) (当審訳:粘度平均分子量が45,000超のブチルゴムポリマー溶液の調製方法であって、C4-C8のモノオレフィンとC4-C14のマルチオレフィンを、脂肪族炭化水素と、多量のジアルキルアルミニウムハロゲン化物と少量のモノアルキルアルミニウムのジハロゲン化物の混合物の存在下で-125~-50°Fの範囲の温度で、脂肪族炭化水素と、多量のジアルキルアルミニウムハロゲン化物と少量のモノアルキルアルミニウムのジハロゲン化物の混合物の存在下で接触させることを含む、方法) (先3b)「Example 1 ・・・ The polymerization solution was prepared by mixing 98 wt. parts of isobutylene and 2 wt. parts of isoprene in 20wt. parts of n-hexane solvent (99.5+% purity) at -100°F.・・・」(第5欄第1~17行) (当審訳:実施例1 ・・・ 重合溶液は、-100°Fで20重量のn-ヘキサン溶液(95%以上の純度)中に、98重量%のイソブチレンと2重量%のイソプレンを混合することにより調製した。 ・・・) (4)先行技術文献4に記載された事項 本願明細書の(本a)の段落【0016】において【特許文献4】として記載された国際公開第2010/006983号の国内公表である特表2011-528053号(以下「先行技術文献4」という。)は当該国際公開公報の記載内容と実質的に同じであり日本語翻訳文に相当するといえるところ、当該国内公表公報には、以下の事項が記載されている。 (先4a)「【請求項1】 共通脂肪族媒体中での溶液重合と、それによって得られるゴムの後続のハロゲン化とのための統合された方法であって、少なくとも a)- 圧力1013hPaにおいて45℃から80℃の範囲の沸点を有する1種類または複数種類の脂肪族炭化水素を少なくとも50重量%含む共通脂肪族媒体と、 - 少なくとも1種類のイソオレフィンモノマー及び少なくとも1種類のマルチオレフィンモノマーを含むモノマー混合物とを、 - モノマー混合物対共通脂肪族媒体の質量比40:60から95:5で含む媒体を準備するステップ、 b)前記媒体中で前記モノマー混合物を重合させて、前記共通脂肪族媒体と前記モノマー混合物の残留モノマーとを含む媒体中に少なくとも実質上溶解しているゴムポリマーを含むゴム溶液を形成するステップ、 c)前記モノマー混合物の残留モノマーを前記ゴム溶液から分離して、前記ゴムポリマーと前記共通脂肪族媒体とを含む分離されたゴム溶液を形成するステップ、及び d)前記分離されたゴム溶液中で前記ゴムポリマーをハロゲン化するステップ を含む、方法。 【請求項2】 前記ゴムがブチルゴムであり、前記モノマー混合物がイソブテン及びイソプレンを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 共通C6脂肪族媒体中での溶液重合と、ブチルゴムの後続のハロゲン化とのための統合された方法であって、 a)少なくともイソオレフィンモノマー及びマルチオレフィンモノマーを含むモノマー混合物をモノマー混合物対媒体の質量比61:39から80:20で混ぜ合わせた前記C6共通脂肪族媒体を収容した溶液重合反応器を準備するステップ、 b)前記溶液重合反応器内で前記モノマー混合物を重合させて、前記媒体中に溶解したブチルゴムポリマーを含み、かつ前記モノマー混合物の残留モノマーを含むゴム溶液を形成するステップ、 c)前記モノマー混合物を前記ゴム溶液から分離して、前記媒体中に前記ブチルゴムポリマーを含む分離されたゴム溶液を形成するステップ、及び d)前記分離されたゴム溶液中で前記ブチルゴムポリマーをハロゲン化するステップ を含む、方法。 ・・・ 【請求項8】 前記イソオレフィンがイソブチレンを含み、かつ前記マルチオレフィンがイソプレンを含む、請求項3に記載の方法。」 (先4b)「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、ブチルゴムの溶液重合とそれに続くハロゲン化の両方に共通の媒体を使用する統合された方法に関する。より詳細には本発明は、未反応モノマーを除去するための中間蒸留を伴うブチルゴムの溶液重合及びハロゲン化の両方に対してC6溶媒などの共通脂肪族媒体を使用する方法に関する。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 重合とハロゲン化の両方の共通溶媒を使用する方法、特に所望の分子量において高いゴムの固形物レベルを可能にするような粘度の許容範囲内で機能する方法に対する必要性はまだ残っている。この方法は、望ましくない副産物の形成を軽減するためにハロゲン化の前に溶媒から残留モノマーを分離することを可能にしなければならない。」 (先4c)「【0041】 [実施例] 実施例1.粘度 図2は、重合媒体、開始モノマー含量、固形物レベル、及び温度の関数としての溶液粘度を示す。Vladykin等(Polymer Science U.S.S.R.Vol.29,No.2,pp.354~363,1987)の方法を用いて計算した値を図2上に示す。これらの値は、450kg/モルの重量平均分子量を有するポリマーを基準にする。しかしながらVladykin等の教示は、iC4を最高50%まで含むヘキサン、イソペンタン、及びこれらの混合物に限られている。それらの値を図2中に破線として示す。より高い初期モノマーレベルを有する供給材料を用いて生成されたゴム溶液の粘度を、より低いモノマーレベルについてのVladykinの教示からの予想と比較するために、実際の重合実験からの溶液を用いて粘度測定を行った。次いでこのデータを、より広範囲の固形物レベルに適用されるようにVladykinの方法を用いて延長させた。これらの値を図2中に実線として示す。この溶液粘度データがカナダ特許第1,019,095号明細書中にもまた示されていることは注目する価値がある。しかしながらこのデータは、100℃におけるムーニー粘度70単位について与えられており、これはおよそ615kg/モルの重量平均分子量に相当し、したがって図2中に示したデータとは比較できない。当業者は、これらの従来技術のポリマーの溶液の場合、450kg/モルの重量平均分子量を有するポリマーと比べて著しく高い溶液粘度の値を予想するはずである。 【0042】 この方法の実施に当たっては、反応器中で十分な熱の除去を起こさせ、かつ従来の重合設備を用いて溶液をポンプでくみ上げることが依然として可能であるような十分に低い目標粘度を達成しつつ、できるかぎり高い固形物レベルを得ることが望ましい。一般にこの目標粘度は、2000cP未満、また表面伝熱を利用する場合には1000cP未満であるべきである。モノマーが存在しない場合の、純粋なイソペンタン(シリーズ1)及び純粋なヘキサン(シリーズ3)における-80℃でのゴム溶液の粘度を図2上に示す。望ましい特性を有するポリマーを得るのに必要な温度としてカナダ特許第1,019,095号明細書中の幾つかの箇所に-80℃の温度が記載されているので、比較のために、およそ-80℃の温度が選択された。純粋なヘキサンに溶かした溶液は、イソペンタンに溶かした溶液よりも固形分の全範囲にわたって高い粘度を有することが分かる。これらの溶液がiC4モノマーを50%(シリーズ2及びシリーズ4それぞれで)含む場合、すべての固形物レベルで粘度の低下が起こる。イソペンタンを溶媒として使用する場合(シリーズ2)には実際に役立つ約16%の固形物レベルで2000cP未満の目標粘度を得ることができるが、ヘキサンを使用する場合(シリーズ4)にはこの目標粘度を満たす最大固形物レベルは約14%である。この効果は目標粘度を1000cPまで下げると悪化し、その場合イソペンタンでは約14%の、またヘキサンでは約12%の最大固形分を生ずる。 しかしながら、前述のように統合ハロゲン化法では溶媒としてヘキサン(C6)を用いて操業することが望ましい。 【0043】 反応器供給材料における高い初期モノマーレベルの利点は、図2中のシリーズ5に見ることができる。同じ-80℃の温度では、C6溶媒での高いモノマーレベルは、C5溶媒及び低いモノマーレベルを用いた場合(シリーズ2)と本質的に同じ粘度特性をもたらす。モノマーレベルが高いほど目標分子量をより高い重合温度で得ることを可能にすることが実験室の実験で実証されたため、高いモノマーレベルはさらなる利点を有することが分かった。450kg/モルの目標分子量を-65℃で得ることができ、これが図2のシリーズ6に示すようにさらに一層有利な粘度特性を生じさせることがパイロット規模の試験で分かった。2000cPの極限粘度の場合、これは反応器から吐出される流れの中のおよそ18%の固形分を可能にし、また1000cPの極限粘度の場合、その固形分はおよそ16%であることができる。より高い温度で操業する追加の利点はエネルギー需要量の低下であり、それは工程経済性を向上させ、かつ環境影響を低減する。ヘキサン中の固形分16~18%において分子量約450kg/モルのポリマーを生産するための最適工程操作条件は、温度約-65℃においてモノマー約66%である。この工程パラメータの組合せは、以前に公表されたデータを用いて予測することができず、それは、目標とする溶液粘度及びポリマーの分子量に合わせながら、溶媒の選択、モノマー対溶媒比、反応温度、及び固形分を実験により最適化することにより得られた。 【0044】 実施例2.重合及び蒸留 図1で述べたこの方法の重要な要素を、連続モードで動作する総容量2リットルの反応器を用いてパイロット規模で機能させた。反応器への供給材料は、3.87kg/時のiC4、0.09kg/時のiC5、及び2.0kg/時のヘキサンであり、これらはモノマー/ヘキサンの質量比66:34を与えた。使用した反応温度は-65℃であり、ポリマーを16重量%含む溶液を生成した。この材料は、約440kg/モルの重量平均分子量及び約1.7モル%のイソプレン含量を有した。反応器からの溶液を、40段の棚を有する蒸留塔に送り、ゴム溶液からモノマーの分離を行った。溶液を42℃に予熱し、塔の底部でリボイラーを用いて113℃の下部温度を維持した。還流凝縮器を用いて塔頂流の一部を塔の上部へ戻し、そこで36℃の温度を維持した。塔中で行われる分離の結果、その分離されたゴム溶液中に10ppm未満の残留イソプレンモノマーと、塔頂モノマー流中に1.2%のヘキサンとが残った。分離されたモノマーは精製され、次いで溶液重合反応器に再び導入された。ヘキサン溶媒に溶けた分離ゴム溶液は、補充ヘキサン溶媒の添加による通常の手段によって臭素化を達成することが可能なようなものであった。 ・・・ 【0046】 実施例4.再生モノマー及び再生C6溶媒を用いた重合 実施例2の工程を、純粋な塔頂流がハロゲン化ブチルゴムの乾燥及び仕上げのステップから得られる再生C6溶媒の添加により増加した状態で作動させる。次いで反応器を動作させ、実施例2で述べたゴム溶液と類似のゴム溶液を生成する。 【0047】 実施例5.再生モノマー及び再生溶媒を用いた重合 実施例4の工程を、共通脂肪族媒体として市販の工業用ヘキサンを用いて作動させる。この工業用ヘキサンは、 ● 圧力1013hPaにおいて45℃未満の沸点を有するブタン類及びペンタン類2.0重量%、 ● 圧力1013hPaにおいて45℃から80℃の範囲の沸点を有するペンタン類及びヘキサン類97.5重量%、 ● 圧力1013hPaにおいて80℃を超える沸点を有するヘキサン類、ヘプタン類、及びオクタン類0.5重量% からなっていた。 有機金属触媒である活性ルイス酸をこの工業用ヘキサン中に溶解し、微量の水によって活性化させた。」 (先4d)「【図2】 [図:0001395539000015.jpg] 」 (5)先行技術文献5に記載された事項 本願明細書の(本a)の段落【0016】において【特許文献5】として記載された国際公開第2011/089092号の国内公表である特表2013-517362号(以下「先行技術文献5」という。)は当該国際公開公報の記載内容と実質的に同じであり日本語翻訳文に相当するといえるところ、当該国内公表公報には、以下の事項が記載されている。 (先5a)「【請求項1】 a) ・ 1013hPaの圧力で45℃~80℃の範囲に沸点を有する1種以上の脂肪族炭化水素を少なくとも50重量%含む共通脂肪族媒体であって、さらに、25重量%未満の環状脂肪族炭化水素含有率を有する共通脂肪族媒体、ならびに ・ 少なくとも1種のイソオレフィンモノマー、及び少なくとも1種のマルチオレフィンモノマーを含み、且つその他の共重合性モノマーを全く含まないか又は少なくとも1種含むモノマー混合物 を、40:60~99:1のモノマー混合物対共通脂肪族媒体の質量比でを含む反応媒体を準備する工程と、 b)前記モノマー混合物を前記反応媒体内で重合させて、前記共通脂肪族媒体および前記モノマー混合物の残存モノマーを含む前記媒体中に少なくとも実質的に溶解しているゴムポリマーを含むゴム溶液を形成させる工程と; c)前記モノマー混合物の残存モノマーを前記ゴム溶液から分離して、前記ゴムおよび前記共通脂肪族媒体を含む分離されたゴム溶液を形成させる工程と、 d)前記分離されたゴム溶液中のゴムを、ハロゲン化剤を用いてハロゲン化する工程と を少なくとも含む、ハロゲン化ゴムの製造方法。 【請求項2】 前記ゴムがブチルゴムである、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記モノマー混合物が、80.0重量%~99.9重量%の範囲の少なくとも1種のイソオレフィンモノマーおよび0.1重量%~20.0重量%の範囲の少なくとも1種のマルチオレフィンモノマーを含む、請求項1または2に記載の方法。 【請求項4】 前記イソオレフィンモノマーがイソブテンであり、前記マルチオレフィンモノマーがイソプレンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。」 (先5b)「【技術分野】 【0001】 本発明は、溶液重合およびその後のゴムのハロゲン化の両方のために、特有の組成の共通脂肪族媒体を用いる、ハロゲン化ゴム、特にクロロ-およびブロモブチルゴムのエネルギー効率の良い、環境上好ましい製造方法に関する。より具体的には、本発明は、未反応モノマーの中間除去を伴う、ゴムの溶液重合およびハロゲン化の両方のために共通の脂肪族媒体を用いる方法に関する。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 従って、エネルギー消費および原材料消費を著しく減らし、そして所望の分子量において高いゴム固形分レベルを可能にするために、粘度の許容される範囲内で実施される、ハロブチルゴムの効率の良い、環境上好ましい製造方法が依然として必要とされている。この方法は、望ましくない副生成物の形成を低減するために、ハロゲン化の前に、溶媒から残存モノマーを分離することをさらに可能にしなければならない。」 (先5c)「【実施例】 【0075】 実施例1-重合および蒸留 図1に記載されるプロセスの重要な要素を、連続モードで運転する2リットルの総容量の反応器を使ってパイロット規模で操作した。反応器への供給物は、66:34のモノマー/共通脂肪族媒体の質量比を与える3.87kg/hのイソブテン、0.09kg/hのイソプレン、および2.0kg/hの下記のとおりの共通脂肪族媒体であった。用いた反応温度は-65℃であり、16重量%の固形分を有する溶液が生成した。この材料は、約440kg/モルの重量平均分子量および約1.7モル%のイソプレン含有率を有していた。反応器からの溶液を40トレイの蒸留塔に供給し、ゴム溶液からのモノマーの分離を行った。溶液を42℃に予熱し、リボイラーを塔底で用いて113℃の塔底温度を維持した。還流冷却器を用いてオーバーヘッド流れの一部を、36℃のそこでの温度を維持する塔頂に戻した。塔で達成される分離は、分離されたゴム溶液中に10ppm未満の残存イソプレンモノマー、そしてオーバーヘッドモノマー流れ中に約1%の共通脂肪族媒体の成分を残した。分離されたモノマーを精製し、次に溶液重合反応器に再導入した。共通脂肪族媒体中の分離されたゴム溶液は、追加の共通脂肪族媒体を添加して従来法によって臭素化を成し遂げることができるようなものであった。 【0076】 上記共通脂肪族媒体は、 ・1013hPaの圧力で45℃より低い沸点を有する0.1重量%未満のブタンおよびペンタン、 ・1013hPaの圧力で45℃~80℃の範囲の沸点を有する98.7重量%のペンタンおよびヘキサン、 ・1013hPaの圧力で80℃より高い沸点を有する100.0重量%までの残りの量のヘキサン、ヘプタンおよびオクタン からなっていた。 【0077】 溶媒中に存在する環状脂肪族炭化水素の総量は18.7重量%(メチルシクロペンタン、シクロペンタン、およびシクロヘキサン)であった。溶媒中に存在するシクロヘキサンの総量は1.4重量%であった。溶媒中に存在する分枝状の、非環状脂肪族炭化水素の総量は34.4重量%(2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン)であった。 【0078】 有機金属触媒、エチルアルミニウムセスキクロリドを、上記の共通脂肪族媒体に溶解させ、痕跡量の水で活性化させた。」 2 先行技術文献1~5から把握される周知技術 先行技術文献1~5の上記摘記事項からは、以下の周知技術が把握される。 ア 「イソブチレン含量が85.0~99.5モル%であり、イソプレン含量が0.5~15.0モル%である、イソブチレンおよびイソプレンのコポリマー」について 先行技術文献1の(先1c)の段落【0096】、(先1d)の段落【0234】の【表10】、【0236】の【表11】、【0238】の【表12】、【0252】の【表19】、段落【0260】~【0260】の【表28】、先行技術文献2の(先2a)、先行技術文献3の(先3b)、先行技術文献4の(先4d)、先行技術文献5の(先5c)の記載からみて、「イソブチレン含量が85.0~99.5モル%であり、イソプレン含量が0.5~15.0モル%である、イソブチレンおよびイソプレンのコポリマー」は、本願の優先日前からよく知られたコポリマーであるといえる。 イ 溶媒(希釈剤)としての「ヘキサン」について 先行技術文献3の(先3b)の段落【0044】及び【0047】、先行技術文献4の(先4d)の段落【0047】、先行技術文献5の(先5c)の段落【0076】の記載からみて、「イソブチレン及びイソプレンのコポリマー」の重合にあたり、溶媒(希釈剤)として、「ヘキサン」を用いることも本願の優先日前からよく知られた技術であるといえる。 第6 当審の判断 1 理由1(委任省令要件)について (1)特許法第36条第4項第1号(委任省令要件)について 特許法第36条第4項は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定され、その第1号において、「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載したものであること。」と規定している。 特許法第36条第4項第1号の「経済産業省令で定めるところ」について、特許法施行規則第24条の2には、「特許法第三十六条第四項第一号の経済産業省令で定めることによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない」と規定している。 当該要件は、いわゆる委任省令要件を規定したものであって、その内容に関して、「特許・実用 新案審査基準」(平成27年9月)には、以下の記載がある。 「1.概要 第36条第4項第1号で委任する経済産業省令(特許法施行規則第24条の2)では、発明がどのような技術的貢献をもたらすものであるかが理解でき、また審査及び調査に役立つように、発明が解決しようとする課題、その解決手段などの、「当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」を、明細書の発明の詳細な説明に記載すること(以下この章において「委任省令要件」という。)が規定されている。 発明をするということは技術的思想を創作することであるから、出願時の技術水準に照らして発明がどのような技術上の意義を有するか(どのような技術的貢献をもたらしたか)を理解できるように、発明の詳細な説明に記載されることが重要である。そして、発明の技術上の意義が理解されるためには、どのような技術分野において、どのような未解決の課題があり、それをどのようにして解決したかという観点からの記載が発明の詳細な説明においてされることが、有用である。 また、技術開発のヒントを得ること又は有用な特許発明を利用することを目的として特許文献を調査する場合には、解決しようとしている課題に着目すれば容易に調査をすることができる。さらに、発明の進歩性の有無を判断する場合には、解決しようとする課題が共通する先行技術文献が公知であればその発明の進歩性が否定される根拠となり得るが、審査の対象となっている出願の発明の詳細な説明にも先行技術文献にもこのような課題が記載されていれば、その判断が出願人及び第三者にも容易になる。 このような趣旨により、委任省令要件についての規定が設けられている。」 「(2) 実施可能要件は、特許の付与の代償として社会に対し発明がどのように実施されるかを公開することを保証する要件であるから、この要件を欠いた出願について特許が付与された場合には、権利者と第三者との間で著しく公平を欠くことになる。 他方、委任省令要件が規定されている趣旨は、発明の技術上の意義を明らかにし、審査、調査等に役立てるというものである。 したがって、委任省令要件については以下のように取り扱う。 a あえて記載を求めると発明の技術上の意義についての正確な理解をむしろ妨げることになるような発明と認められる場合には、上記(1)に述べたように、課題及びその解決手段が記載されなくても差し支えない。 また、発明の属する技術分野について、既存の技術分野が想定されていない場合には、請求項に係る発明の属する新規な技術分野が記載されていれば足りる。 b 上記a 以外の場合に、当業者が明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて、請求項に係る発明の属する技術分野の理解又は課題及びその解決手段の理解をすることができない出願については、委任省令要件違反とする。 例えば、発明特定事項に数式又は数値を含む場合であって、当業者が明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて、発明の課題とその数式又は数値による特定との実質的な関係を理解することができず、発明の課題の解決手段を理解できない場合には、発明の技術上の意義が不明であり、委任省令要件違反に該当する。」 以下の検討では、本願発明1は、発明特定事項に数式を含むものであり、当業者が明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて、発明の課題とその数式又は数値による特定との実質的な関係を理解することができるか否かについても考慮して検討する。 (2)本願発明について ア 本願発明について 本願発明は、 「式(I): F=mA/(1+mA)2 (I) (式中、 - Aは、1H NMRで決定されるコポリマーにおけるイソプレンのイソブチレンに対するモル比であり、 - Fは、13C NMRで決定されるコポリマーにおけるイソブチレン-イソプレン-イソプレンのトリアッド分率であり、 - mは、 [1.28-(0.025×MOC)]≧m≧[1.16-(0.025×MOC))] の範囲内であり、ここで、MOCは、1H NMRで決定されるコポリマーにおけるイソプレンのモル%単位の含量である。) によって規定されるコポリマーの配列分布を有し、 イソブチレン含量が85.0~99.5モル%であり、イソプレン含量が0.5~15.0モル%である、イソブチレン及びイソプレンのコポリマー。」 を発明特定事項とするものであり、このうち、「イソブチレン含量が85.0~99.5モル%であり、イソプレン含量が0.5~15.0モル%である、イソブチレン及びイソプレンのコポリマー」であることについては、上記「第4 本願明細書及び引用文献に記載された事項」「3 本願明細書における先行技術文献に記載された事項」「(6)先行技術文献1~5に記載された周知技術」アで述べたとおり、本願の優先日前からよく知られたコポリマーであるといえるから、本願発明においては、 「式(I): F=mA/(1+mA)2 (I) (式中、 - Aは、1H NMRで決定されるコポリマーにおけるイソプレンのイソブチレンに対するモル比であり、 - Fは、13C NMRで決定されるコポリマーにおけるイソブチレン-イソプレン-イソプレンのトリアッド分率であり、 - mは、 [1.28-(0.025×MOC)]≧m≧[1.16-(0.025×MOC))] の範囲内であり、ここで、MOCは、1H NMRで決定されるコポリマーにおけるイソプレンのモル%単位の含量である。) によって規定されるコポリマーの配列分布を有」すること(以下「本願発明の「m」値に関する事項」という。)が、背景技術、特に先行技術文献の記載内容からみて、本願発明の唯一の特徴点であるといえる。 (3)本願発明の課題について 本願発明の課題は、上記摘記(本a)の記載からみて、段落【0018】に記載される「当技術分野において知られているものと比較して、より均一に分布した架橋部位を有する、すなわちさらに低いm値を有するイソブチレンおよびマルチオレフィンのコポリマーを提供する」ことであると解される。 (4)判断 ア 本願発明の「m」の技術的意義について 本願発明の「m」値に関する事項については、先行技術文献1には記載されているものの、先行技術文献3~5には記載されておらず、「イソブチレン及びイソプレンのコポリマー」を表す物性として、本願の出願当時において、汎用の物性を示す値であるとはいえない。 (ア)本願明細書における「m」に関する記載について 本願発明の「m」値に関する事項について、本願明細書の記載を確認すると、上記摘記(本a)の段落【0010】からは「式(I)」の「Fは、13C NMRで決定されるコポリマーにおけるイソオレフィン-イソプレン-イソプレンのトリアッド分率」について、「同一のコモノマーを組み込み、異なる条件で調製されたコポリマーは、コポリマー鎖におけるダイアッド分率(またはトリアッド分率等)により表現されるように、その配列の分布に違いが生じ得る」こと、段落【0011】からは「異なる配列分布を有するコポリマーは、しばしば異なる物性を有する」こと、「イソプレンはイソブチレンとの共重合において・・・BII(B=イソブチレン、I=イソプレン)、IIB、およびIIIのトリアッドの分率は、反応性がより高いコモノマーを用いる共重合系と比較して相対的に低い」ことは読み取れる。 また、本願の先行技術について、本願明細書の(本a)の段落【0013】からは「欧州特許第1572766号は、希釈剤としてフッ素化炭化水素を用いることによって、ブチルゴムの配列分布を変化させるプロセスが開示されている。・・・に従って算出することができる配列分布パラメータmが、1.10~1.25であるかまたは1.5を超えるコポリマーが記載されている」こと、「例えば、1.1という低いm値は、1,1,1,2-テトラフルオロエタンを希釈剤として用いて15.5モル%のイソプレンを組み入れることによってのみ得ることができる一方、同じ希釈剤中で得られた、例えば3.32モル%の低いイソプレン含量を有するポリマーは、1.3のm値を示す」ことは読み取れる。 これらの背景技術を前提として、本願明細書の(本a)の段落【0018】の記載からは、本願発明の課題は「当技術分野において知られているものと比較して、より均一に分布した架橋部位を有する、すなわちさらに低いm値を有するイソブチレンおよびマルチオレフィンのコポリマーを提供する必要性が依然として存在する」ことであることは読み取ることができる。 また、本件明細書の(本d)には、実施例1~5として、本願発明の「m」値に関する事項を満たす「イソブチレン及びイソプレンのコポリマー」は記載されている。 しかしながら、本件明細書には、実施例も含めて、本願発明の「m」値に関する事項について、「式(I)」によって「A」と「F」とに関連づけられる「m」値自体の技術的意義、「m」値自体は何を示す値であるのか、また、それに付随して、 ・本願発明の式(I)で特定される「m」値自体は、どれほどの範囲の値を取り得るものであるのか、 ・本願発明の上記課題「さらに低いm値を有するイソブチレンおよびマルチオレフィンのコポリマーを提供する」ことと関連して、「より均一に分布した架橋部位を有する」ことと「さらに低いm値」との関係、すなわち、「m値」が低いほど、何故「より均一に分布した架橋部位を有する」ことになるのか、 ・背景技術・先行技術、例えば、先行技術文献3~5のコポリマーにおける「イソブチレン及びイソプレンのコポリマー」の「m」値はどの程度のものであり、本願発明の「m」値の範囲は特異性を有するものであるのか否か 等を把握することができず、本願明細書の記載をみても、本願発明の「m」値の技術的意義を理解することはできない。 (イ)先行技術文献1における「m」に関する記載について 本願発明の「A」と「F」とに関連づけられる「m」値に関して、本願明細書の段落【0013】~【0014】で引用されている先行技術文献1の記載も確認すると、(先b)の段落【0016】からは、「同じコモノマーを取り込み、異なる条件で調製したコポリマーは、コポリマー鎖におけるダイアッド(またはトリアッド等)により表現されるように、配列の分布に違いが生じ得る。配列分布およびコモノマー取り込みは、共重合に含まれる化学事象の競争的な性質のために数学的に確率統計に関連する。この関連の特徴づけに役立つパラメータは、反応性比、ホモ成長(類似のモノマーの添加)と交叉成長(比類似のモノマーの添加)の速度定数比である。同じコモノマーの取り込みによるが、異なる配列分布を有するコポリマーは、しばしば異なる物性を有する」こと、段落【0017】からは「既知の直線状共役ジエンのうち、イソプレンはイソブチレンとの共重合において、より反応性を有するジエンの1つである。共役ジエンの低反応性に対するこの傾向は、調製されるコポリマー配列分布に表現されている。ある与えられたコポリマーの組成において、イソプレン単位はコポリマー鎖の他のイソプレン単位に従う傾向を示さない。結局、BII(B=イソブチレン、I=イソプレン)、IIBおよびIIIのトリアッド断片は、より反応性のコモノマーを有する系に比べると相対的に低い」こと、段落【0018】からは「イソブチレン/イソプレン共重合は塩素化炭化水素、または炭化水素および塩素化炭化水素の混合物中でよく行われるため、配列分布が変化し得る程度は非常に制限されている。・・・様々な重合条件下、イソプレン反応性比の値rIPは、調整されるコポリマーにおけるトリアッド断片(BII、IIBおよびIII)が集中した利用可能なイソプレンの狭い範囲を示す1.4以下に低下する。ある与えられたコモノマー取り込みで、トリアッド断片が集中した異なる濃度のイソプレンの重合系を見出すことは、交叉結合部位および官能基を同時に導入するために好適なコポリマーを調製するのに望ましい」ことは読み取れる。 しかしながら、先行技術文献1のこれらの記載からも、上記の本願発明の「m」値自体の技術的意義及びそれに付随する事項の技術的意義を理解することができない。 イ 本願発明の「m」値の上限・下限として、「[1.28-(0.025×MOC)]≧m≧[1.16-(0.025×MOC)]」としたことの技術的意義について 本願明細書には、(本a)の段落【0019】及び【0020】に、「[1.28-(0.025×MOC)]≧m≧[1.16-(0.025×MOC)]」(以下「m」値に関する不等式」という。)、より好ましい範囲として、「[1.27-(0.025×MOC)]≧m≧[1.17-(0.025×MOC))]」が記載されているのみであり、これらの不等式の上限及び下限の技術的意義については、何ら記載されていない。 また、先行技術文献1にも、本願発明の「m」値に関する不等式については何ら記載されておらず、その技術的意義を理解することはできない。 ウ 本願発明の「m」値と本願発明の課題との関係について 以上のとおり、本願明細書及び先行技術文献1の記載をみても、また、出願時の技術常識を踏まえても、本願発明の「m」値及び「m」値に関する不等式の技術的意義を理解することができない。 そして、本願発明の「m」値及び「m」値に関する不等式の技術的意義を理解できないため、上記本願発明の課題である「当技術分野において知られているものと比較して、より均一に分布した架橋部位を有する、すなわちさらに低いm値を有するイソブチレンおよびマルチオレフィンのコポリマーを提供する」こととの関連も理解することができないから、本願明細書は、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されているとはいえない。 (4)請求人の意見書における主張について ア 令和3年9月13日付け意見書における請求人の主張について (ア)令和3年6月10日付け拒絶理由通知書(以下、「当該拒絶理由通知書」という。)において、「本願発明1の「式(I)」で求められる「m」について、本願明細書の段落【0013】では「配列パラメータ」としているが、当該「式(I)」自体にどのような技術的意義があるのか」「発明の詳細な説明をみても明らかではない」と指摘した。 当該指摘に対して、請求人は、令和3年9月13日付け意見書において、「式(I)は、コポリマーにおけるイソブチレン-イソプレン-イソプレンのトリアッド分率(F)、コポリマーにおけるイソプレンのイソブチレンに対するモル比、及びコポリマーにおけるイソプレンのモル%単位の含量に関する経験式です」、「したがって、架橋部位の均一性の指標として、m値はコポリマーの特性を表すものであり、経験的に式(I)を通してF、A及びMOCと関連しています」とののみ回答した。 しかしながら、請求人は、「式(i)」について実質的に「経験式です」と述べるにとどまり、どのような「経験」に基づくものか何ら説明はなされることがなく、結局のところ、本願発明のうち「m」が「式(I)」によって「A」及び「F」の値に関連づけられる技術的な意義について何ら具体的な説明がなされていないから、依然として、「m」が「式(I)」によって「A」及び「F」の値に関連づけられる技術的意義は明らかではない。 (イ)また、当該拒絶理由通知書において、「「式(I)」で求められ「配列パラメータ」とされる「m」はどのような技術的意義を有するものか、発明の詳細な説明をみても明らかではない」、「本願明細書の段落【0018】には「より均一に分布した架橋部位を有する、すなわちさらに低いm値を有するイソブチレンおよびマルチオレフィンのコポリマー」と記載されているが、本願発明1で特定される「m」が何故「より均一に分布した架橋部位を有する」ことを意味するのかも明らかでない」と指摘した。 当該指摘に対して、請求人は、当該意見書において、「当初明細書の段落[0018]に記載したとおり、式(I)においてさらに低いm値は、ポリマーでより均一に分布した架橋部位を示します。当業者に知られているとおり、架橋部位の均一性に優れることは、ポリマー中の特性がより均一であることにつながり、これはポリマーから物品を製造する際に望ましく、物品が均一な特性を有することとなります」と回答した。 しかしながら、当該意見書で述べられているとおり、本願明細書の段落【0018】には「より均一に分布した架橋部位を有する、すなわちさらに低いm値を有するイソブチレンおよびマルチオレフィンのコポリマー」と記載されているものの、依然として、本願発明のうち「m」が「式(I)」によって「A」及び「F」の値に関連づけられる技術的意義が不明なこともあり、「m」の値がどのような技術的意義、すなわち、イソブチレン及びイソプレンのコポリマーにおいてどのような技術的な内容を示す値であるのか、さらに、低い「m値」が何故「より均一に分布した架橋部位を有する」ことを意味するのかも明らかではない。 (ウ)さらに、当該拒絶理由通知書において、「本願発明1では、「m」について、「[1.28-(0.025×MOC)]≧m≧[1.16-(0.025×MOC)]」とその範囲が特定されているが、この範囲の上限の「1.28-(0.025×MOC)」及び下限の「1.16-(0.025×MOC)」の範囲内にあること、これらの上限値及び下限値にどのような技術的意義があるのか、発明の詳細な説明をみても明らかではないため、「(0.025×MOC)」自体の技術的意義も不明である」と指摘したが、当該指摘に対しては、請求人から回答がなかった。 そこで、本願発明のうち「m」が「式(I)」によって「A」及び「F」の値に関連づけられる技術的意義、イソブチレン及びイソプレンのコポリマーにおいてどのような技術的な内容を示す値であるのか、さらに、低い「m」値が何故「より均一に分布した架橋部位を有する」ことを意味するのか、本願発明の「m」値の上限の「1.28-(0.025×MOC)」及び下限の「1.16-(0.025×MOC)」の範囲の上限値及び下限値の技術的意義について、再度確認するため、上記「第3 令和3年11月1日付け拒絶理由通知書における拒絶理由の概要」で示した拒絶理由を再度通知した。 イ 令和4年5月9日付け意見書における請求人の主張について 令和4年5月9日付け意見書において、請求人は、 「式(1)はコポリマーにおけるイソブチレン-イソプレン-イソプレンのトリアッド分率(F)、コポリマーにおけるイソプレンのイソブチレンに対するモル比、及びコポリマーにおけるイソプレンのモル%単位の含量に関する、実験データから得られた経験式です(例えば、欧州特許第1572766B2を参照)。そして「m」の値は、架橋部位の分布の均一性に関連します。しかしながら、なぜこの関係式が作用するのか、なぜ「m」が架橋部位の分布の均一性に関連するのか、及びなぜ「m」の値が架橋部位の分布の均一性を意味する以上に、物理的及び/又は化学的意味を有するか否かについては特許クレームとしては関係がないものです。 関係があるのは、「m」が架橋部位の分布の均一性を意味することであり、これは経験的に示されてきております。その理由を理解することができるか否かは式(1)が作用することとは関係がありません。特許出願は当業者が実施することができるように発明の詳細な説明を記載すべきものですが、なぜ発明が作用するかについては記載する必要はありません」 と主張している。 しかしながら、上記「(1)特許法第36条第4項第1号について」で述べたとおり、特許法第36条第4項第1号及び特許法施行規則第24条の2においては、いわゆる実施可能要件のほか、「発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載」するとする委任省令要件についても規定している。 上記「(2)本願発明について」「ア 本願発明について」でも述べたとおり、本願発明の「m」値に関する事項は、本願明細書の(本a)の背景技術、特に先行技術文献の記載内容からみて、本願発明の唯一の特徴点であるにもかかわらず、上記「(3)判断」で述べたとおり、「イソブチレン及びイソプレンのコポリマー」を表す物性として、本願の出願当時において、汎用の物性を示す値であるとはいえないものである。 そして、上記「(3)判断」において述べたとおり、本願発明の課題は「当技術分野において知られているものと比較して、より均一に分布した架橋部位を有する、すなわちさらに低いm値を有するイソブチレンおよびマルチオレフィンのコポリマーを提供する」ことであると解されるところ、本願明細書には、本願発明の「m」値に関する事項と本願発明の当該課題との関係が十分に記載されていない他、先行技術文献3~5の「イソブチレンおよびマルチオレフィンのコポリマー」の「m」値に関する情報も記載されておらず、(本e)の実施例においても、単に、本願発明の「m」値に関する事項を満たす「イソブチレンおよびマルチオレフィンのコポリマー」の製造例を示すのみで、例えば、従来技術(先行技術)を示す比較例も何ら示されていないため、本願明細書の記載は、当業者が明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて、請求項に係る発明の属する技術分野の理解又は課題及びその解決手段の理解をすることができるものとはいえない。 したがって、請求人の当該主張を採用することはできない。 (5)まとめ 以上のとおり、本願の発明の詳細の記載は、その主要な構成である本願発明の「m」値に関する事項について、その技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されているとはいえないから、特許法第36条第4項第1号、特許法施行規則第24条の2に規定される要件を満たしているとはいえない。 2 理由2(実施可能要件)について (1)特許法第36条第4項第1号について 特許法第36条第4項は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定され、その第1号において、「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載したものであること。」と規定している。 特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明のいわゆる実施可能要件を規定したものであって、物の発明では、その物を作り、かつ、その物を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載が無い場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。 以下、この観点から検討する。 (2)判断 ア 本願明細書の一般的記載について 本願明細書の一般的記載としては、「本発明の新規なコポリマーの製造方法」として、段落【0047】~【0052】、【0058】~【0071】に、「イソブチレンおよびイソプレンのコポリマー」の製造方法・製造条件、特に「希釈剤」について記載され、段落【0053】~【0057】には「開始剤系」や「触媒」について多様なものが記載され、【0072】~【0074】に「ハロゲン化」について記載されているものの、上記に摘記した先行技術文献3~5の記載事項に照らして、ここで記載された内容はあくまで一般的なイソブチレン及びイソプレンのコポリマーの製造方法が記載されているに過ぎず、本願発明の上記「m」値に関する事項を満たす「イソブチレンおよびイソプレンのコポリマー」を得るための具体的な指針(製造方法・製造条件に関する指針)が記載されているとはいえない。また、本願発明の上記「m」値に関する事項を満たす「イソブチレンおよびイソプレンのコポリマー」を得るための製造方法・製造条件は本願の出願日当時の技術常識であるとはいえないから、ここで記載された製造方法のうち、どの条件(例えば、具体的にどのような開始剤、触媒、溶媒など)を採用すれば、本願発明の発明特定事項を満たす「イソブチレンおよびイソプレンのコポリマー」が得られるのか明らかでない。 イ 本願明細書の具体的記載(実施例)について 本願明細書の段落【0076】~【0091】の実施例では、実施例1~5として、本願発明の上記「m」値に関する事項を満たす「イソブチレンおよびイソプレンのコポリマー」の具体的な製造例が記載されており、実施例1~5の「イソブチレンおよびイソプレンのコポリマー」は、「イソブチレン」及び「イソプレン」の含量のみが異なり、その他の製造方法・製造条件は同じであるもののみである。(令和3年9月13日付け意見書において、請求人は、「実施例1から5に関して、製造方法はいずれも全て同じであり、イソプレンの量のみが異なっています。一般的な重合手順は当初明細書の段落[0080]に記載されています。3.75~14mLの範囲でイソプレンの量のみが異なっていることも記載されています。したがって、3.75mLのイソプレンを使用した場合が実施例1であり、14mLのイソプレンを使用した場合が実施例5に対応します。実施例2~4については、当業者であればイソプレンの各モル%に基づいて、容易にその量を特定することができるものです」と説明した。) しかしながら、本願明細書には、「イソブチレン」及び「イソプレン」の含量のみが異なる実施例のみを示すにとどまり、他の条件を変更した実施例や比較例は示されておらず、本件明細書に記載の多様な製造方法・製造条件(開始剤、触媒、溶媒など)のうち、どの条件を採用すれば、本願発明の発明特定事項を満たす「イソブチレンおよびイソプレンのコポリマー」が得られるのか明らかでない。 さらに、実施例1~5において用いられた「希釈剤」について、段落【0076】には、 「希釈剤は以下からなっていた: -1013hPaの圧力で45℃未満の沸点を有する0.1質量%未満の脂肪族炭化水素、 -1013hPaの圧力で45℃~80℃の範囲の沸点を有する98.7質量%の脂肪族炭化水素、 -1013hPaの圧力で80℃を超える沸点を有する脂肪族炭化水素:100.0質量%までの残量。」 と記載され、段落【0077】には、 「溶媒中に存在する環状脂肪族炭化水素の総量は、18.7質量%(メチルシクロペンタン、シクロペンタンおよびシクロヘキサン)であった。溶媒中に存在するシクロヘキサンの総量は1.4質量%であった。溶媒中に存在する分岐した非環式脂肪族炭化水素の総量は、34.4質量%(2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン)であった」と記載されている。 「希釈剤」の成分について、段落【0077】に記載の「18.7質量%」の「環状脂肪族炭化水素」と、「1.4質量%」の「シクロヘキサン」、「34.4質量%」の「非環式脂肪族炭化水素」を合計しても100質量%にはならず、溶媒中の残りの45.5質量%の成分が何か明らかでないため、「希釈剤」の具体的な化合物の種類及びそれらの配合割合が明らかではなく、実施例でさえ、当業者が再現可能に実施できるように記載されているとはいえない。 ウ 判断 上記「ア 本願明細書の一般的記載について」及び「イ 本願明細書の具体的記載(実施例)について」での検討を踏まえると、本願明細書の段落【0047】~【0071】の記載及び実施例の記載を参酌しても、本願発明の上記「m」値に関する事項を満たす「イソブチレンおよびイソプレンのコポリマー」を製造するために必要となる製造条件、具体的な指針は明らかでなく、また、実施例においても使用した「希釈剤」が十分に明らかではない。 そうすると、本願明細書の段落【0047】~【0071】に記載された製造方法・製造条件を採用しても、結局のところ、製造条件に関する具体的な指針がない中で、製造条件を少しずつ変更しながら製造した「イソブチレンおよびイソプレンのコポリマー」について、段落【0081】~【0086】に記載された方法に従って、1つ1つ本願発明の上記「m」値に関する事項を満たすか否かを確認する必要があり、当業者に過度の試行錯誤を課すものであると認められる。 したがって、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明の発明特定事項を有する「イソブチレンおよびイソプレンのコポリマー」を製造するための具体的な製造方法及び製造条件について、当業者が実施できるように明確かつ十分に記載されているとはいえない。 (3)請求人の意見書における主張について 令和4年5月9日付け意見書において、請求人は、実施例1~5において用いられた「希釈剤」について、 「ヘキサンが脂肪族炭化水素中でブチルゴムの重合を行う際に使用された希釈剤です。ヘキサンは様々な異性体を含む脂肪族炭化水素の混合物であり、参考資料1でその異性体を示します。明細書の記載は、n-ヘキサン以外の希釈剤中に含まれる様々な脂肪族炭化水素成分について含量を記載したものです。また、当業者であればn-ヘキサンが様々な異性体を含むものであることを理解することができます」と主張している。 しかしながら、本願明細書(特に、段落【0076】~【0077】)には、実施例1~5で用いた「希釈剤」が「ヘキサン」及びその「様々な異性体を含む脂肪族炭化水素」であることは明確に記載されていないから、当該主張を直ちに採用することはできない。 また、仮に、当該主張を採用したとしても、上記「1 理由1(委任省令要件)について」で検討したとおり、本願発明の上記「m」値に関する事項の技術的意義は明らかでなく、また、本願発明の上記「m」値に関する事項と本願明細書の段落【0047】~【0071】に記載された製造方法・製造条件との関係も明らかではなく、依然として、段落【0047】~【0071】に記載された製造方法・製造条件にしたがって製造した「イソブチレンおよびイソプレンのコポリマー」であっても、段落【0081】~【0086】に記載された方法に従って、1つ1つ本願発明の上記「m」値に関する事項を満たすか否かを確認する必要があり、当業者に過度の試行錯誤を課すものであると認められる。 したがって、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明の発明特定事項を有する「イソブチレンおよびイソプレンのコポリマー」を製造するための具体的な製造方法及び製造条件について、当業者が実施できるように明確かつ十分に記載されているとはいえないから、請求人の上記主張を採用することはできない。 (仮に、実施例1~5で用いた「希釈剤」が「ヘキサン」及びその「様々な異性体を含む脂肪族炭化水素」であるとの主張を採用した場合には、上記「第4 本願明細書及び引用文献に記載された事項」「3 本願明細書における先行技術文献に記載された事項」「(6)先行技術文献1~5に記載された周知技術」アで述べたとおり、先行技術文献3の(先3b)、先行技術文献4の(先4c)の実施例5、先行技術文献5の(先5c)の実施例1においても、「ヘキサン」主体の「希釈剤」を用いていることから、本願発明の課題である「当技術分野において知られているものと比較して、より均一に分布した架橋部位を有する、すなわちさらに低いm値を有するイソブチレンおよびマルチオレフィンのコポリマーを提供する」(段落【0018】)ことを解決し得るものかどうかは不明確なものとなる。 仮に、本願明細書の段落【0018】の記載を所与のものとし本願発明と先行技術文献3~5の実施例の「コポリマー」とは異なるものと前提とした場合は、「希釈剤」の構成が類似であることから、先行技術文献3~5の「コポリマー」も含めて、段落【0047】~【0071】に記載された製造方法・製造条件にしたがって製造した「イソブチレンおよびイソプレンのコポリマー」について、1つ1つ逐次本願発明の上記「m」値に関する事項を満たすか否かを逐次確認する必要があることになる。) (4)まとめ 以上のとおり、本願の発明の詳細な説明の記載は、本願発明について当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第4項第1号に規定される要件を満たしているとはいえない。 3 理由3(同日出願)について (1)同日出願の特許請求の範囲の記載について 同日出願の令和4年1月18日付け手続補正書(本審決決裁時の最新の補正書)には、請求項1として、以下の発明が記載されているといえる。 「【請求項1】 式(I): F=mA/(1+mA)2 (I) (式中、 - Aは、1H NMRで決定されるコポリマーにおけるイソプレンのイソブチレンに対するモル比であり、 - Fは、13C NMRで決定されるコポリマーにおけるイソブチレン-イソプレン-イソプレンのトリアッド分率であり、 - mは、 [1.28-(0.025×MOC)]≧m≧[1.15-(0.025×MOC))] の範囲内であり、ここで、MOCは、1H NMRで決定されるコポリマーにおけるイソプレンのモル%単位の含量である。) によって規定されるコポリマーの配列分布を有し、 イソブチレン含量が85.0~99.5モル%であり、イソプレン含量が0.5~15.0モル%である、イソブチレンおよびイソプレンのコポリマー。」 また、請求項1を引用する請求項2の発明として、以下の発明が記載されているといえる。 「式(I): F=mA/(1+mA)2 (I) (式中、 - Aは、1H NMRで決定されるコポリマーにおけるイソプレンのイソブチレンに対するモル比であり、 - Fは、13C NMRで決定されるコポリマーにおけるイソブチレン-イソプレン-イソプレンのトリアッド分率であり、 - mは、 [1.27-(0.025×MOC)]≧m≧[1.16-(0.025×MOC))] の範囲内であり、ここで、MOCは、1H NMRで決定されるコポリマーにおけるイソプレンのモル%単位の含量である。) によって規定されるコポリマーの配列分布を有し、 イソブチレン含量が85.0~99.5モル%であり、イソプレン含量が0.5~15.0モル%である、イソブチレンおよびイソプレンのコポリマー。」 (2)判断 本願発明と同日出願の請求項1に係る発明とを対比すると、「m」について、両者は、 「イソブチレン含量が85.0~99.5モル%であり、イソプレン含量が0.5~15.0モル%である、イソブチレンおよびイソプレンのコポリマー」である点で一致し、 「式(I): F=mA/(1+mA)2 (I) (式中、 - Aは、1H NMRで決定されるコポリマーにおけるイソプレンのイソブチレンに対するモル比であり、 - Fは、13C NMRで決定されるコポリマーにおけるイソブチレン-イソプレン-イソプレンのトリアッド分率」である「m」について、 本願発明では「[1.28-(0.025×MOC)]≧m≧[1.16-(0.025×MOC))]であるのに対し、 同日出願の請求項1に係る発明では「[1.28-(0.025×MOC)]≧m≧[1.15-(0.025×MOC))]」と、 「下限」が本願発明では「[1.16-(0.025×MOC))]」、同日出願の請求項1では「[1.15-(0.025×MOC))]」と僅かに異なる点でのみ相違する。 本願と同日出願とは明細書の記載は同一であるため解決しようとする課題及び実施例も同一であり、本願明細書の(本a)の段落【0019】~【0020】及び同日出願の段落【0019】~【0020】をみても上記相違点に係るそれぞれの下限値の技術的意義については何ら記載されておらず、さらに、上記相違点は、明らかに「m」の範囲が重複していることから、実質的な相違点とはいえない。 また、本願発明と同日出願の請求項2に係る発明とを対比すると、両者は、 「イソブチレン含量が85.0~99.5モル%であり、イソプレン含量が0.5~15.0モル%である、イソブチレンおよびイソプレンのコポリマー」である点で一致し、 「式(I): F=mA/(1+mA)2 (I) (式中、 - Aは、1H NMRで決定されるコポリマーにおけるイソプレンのイソブチレンに対するモル比であり、 - Fは、13C NMRで決定されるコポリマーにおけるイソブチレン-イソプレン-イソプレンのトリアッド分率」である「m」について、 本願発明では「[1.28-(0.025×MOC)]≧m≧[1.16-(0.025×MOC))]であるのに対し、同日出願の請求項3に係る発明では「[1.27-(0.025×MOC)]≧m≧[1.16-(0.025×MOC))]」と、「上限」が僅かに異なる点でのみ相違する。 本願と同日出願とは明細書の記載は同一であるため解決しようとする課題及び実施例も同一であり、本願明細書の(本a)の段落【0019】~【0020】及び同日出願の段落【0019】~【0020】をみても上記相違点に係る上限値の技術的意義については何ら記載されておらず、さらに、上記相違点は、明らかに「m」の範囲が重複していることから、実質的な相違点とはいえない。 したがって、本願発明は、同日出願の請求項1~2に係る発明と実質的同一である。 (3)請求人の意見書における主張について 令和3年11月1日付け拒絶理由通知書において、「第3 令和3年11月1日付け拒絶理由通知書における拒絶理由の概要」「理由3:(同日出願)」に記載した内容の拒絶理由を示すとともに、「<当審からの審尋>」として、「(6)上記理由「●理由3(同日出願)」に関連して、当該意見書において、「同日出願である特願2020-033801号につきましては、本願の発明を特許するとの審決を賜ることとなりましたら、放置又は取下げを予定しております」と述べていますが、本願は、同日出願が放棄又は取下げ等がされるか、あるいは、同日出願の請求項に記載されていない構成が追加される補正がなされる等本願発明と同日出願が実質的に同一にならないように補正がされない限り、特許法第39条第2項の拒絶理由は解消しませんので、ご留意下さい」と指摘した。 当該指摘に対して、請求人は、令和4年5月9日付け意見書において、「先の意見書にも記載したとおり、同日出願である特願2020-033801号につきましては、本願の発明を特許するとの審決を賜ることとなりましたら、放置又は取下げを予定しております」と主張している。 しかしながら、上記「(2)判断」で検討したとおり、本願発明と同日出願の請求項1~2に係る発明は実質的に同一であり、また、令和3年11月1日付け拒絶理由通知書と同日に発送した特許庁長官名による指令書に記載した届出もなかったため、依然として、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることはできない。 (4)まとめ 以上のとおり、本願発明は、同日出願の請求項1~2に係る発明と同一と認められ、また、上記拒絶理由通知書と同時に発送した指令書に記載した届出もなされなかったため、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。 第7 むすび 以上のとおり、本願は、発明の詳細な説明の記載が、本願発明について特許法第36条第4項第1号の規定(委任省令要件、実施可能要件)に適合するものではなく、また、特許法第39条第2項の規定(同日出願)により特許を受けることができないものである。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、また、その余のことについて検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2020-002772

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