特許拒絶査定不服審判
2020-000891
保冷保温用箱体
- 審判番号
- 2020-000891
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-172643外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年01月23日
- 審決日
- 2021年01月05日
- 公報発行日
- 2021年02月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (B65D) / P18 .537-WY (B65D) / P18 .113-WY (B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-172643「保冷保温用箱体」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月 9日出願公開、特開2017- 47942、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年9月2日の出願であって、令和元年10月18日付けで拒絶査定がされた。これに対し、令和2年1月23日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、令和2年7月31日付けで拒絶理由が通知され、令和2年10月1日に意見書が提出されたものである。
第2 本願発明について
1 本願発明
特許請求の範囲の請求項1~4に係る発明は令和2年1月23日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうち、請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりのものであると認める。
「天面板、底面板、および側面板により収容空間を形成する筐体を有する保冷保温用箱体であって、
前記筐体の前記収容空間側の表面上には、断熱パネルが配置され、
前記側面板の少なくとも一面に配置された前記断熱パネルの、前記収容空間側の表面上には、追加の断熱パネル、収容物固定用ベルト、および保護パネルのいずれかである付加機能部品が装着され、かつ、当該付加機能部品の着脱を可能とするジョイント部を有することを特徴とする保冷保温用箱体。」
2 令和2年7月31日付けで通知した拒絶理由について
令和2年7月31日付けで通知した拒絶理由は、概略以下のとおりである。
(1)(明確性要件)本件出願は、特許請求の範囲の請求項1中の「保護パネル」とは、明細書の【0022】を参照しても、その作用及び構造がどの範囲のものを特定しているのか明確でないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
2.(新規性)本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
3.(進歩性)本件出願の請求項1~4に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2~7に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2003-112786号公報
2.実願昭49-809号(実開昭50-96134号)のマイクロフィルム
3.特表平6-508589号公報
4.特開2006-27625号公報
5.特開2001-72057号公報
6.特開2004-347292号公報
7.特開2015-107825号公報
3 明確性要件について
(1)本願明細書には、保護パネルに関して、以下の記載がある。
・「【0022】
また、付加機能部品として保護パネルを用いる場合、図2に例示する追加断熱材の装着態様と同様に、断熱パネルの収容空間側の表面上に面ファスナーを介して装着することができる。断熱パネルの収容空間側の表面上に保護パネルを装着することで、上記断熱パネルを外部衝撃から防ぐことができる。なお、保護パネルの装着に用いるジョイント部は、上述の面ファスナーに限定されない。
【0023】
保護パネルについては、後述の「B.断熱パネル 1.断熱パネルの構成 (2)その他」の項で説明する保護材と同様とすることができる。」
・「【0062】
上記保護材は、少なくとも断熱パネルの収容空間側表面上に配置されることが好ましく、中でも、断熱パネルの収容空間側表面上および筐体側表面上に配置されることが好ましい。断熱パネルの両面に保護材を配置することで、断熱パネルである真空断熱材の破損等を十分に防ぐことができるからである。特に、後述するように、断熱パネルが筐体の収容空間側の表面に着脱可能に配置される場合に、上記断熱パネルの筐体側表面上にも保護材が配置されることで、着脱時の断熱パネルの破損を防ぐことができる。
【0063】
上記保護材は、接着剤や粘着剤、両面テープ等を用いて断熱パネル上に配置してもよく、上記保護材と上記断熱パネルとの間に接着性の充填材を充填し、上記充填材を介して断熱パネル上に配置してもよい。接着性の充填材としては、例えば、発泡ウレタン接着剤、硬質ウレタンフォーム等が挙げられる。」
(2)そして、本願明細書には、「保護パネル」が、どのようなものであるのか、具体的な記載はない。
そうすると、上記記載を総合すると、「保護パネル」は、断熱パネルを外部衝撃から防ぐものと解されるが、ここでいう外部衝撃がどのようなものであるのかは記載されていない。
そこで、本願発明の保冷保温用箱体は、保護パネルが取り付けられた状態でないと保護パネルが何ら作用しないことに鑑みれば、外部衝撃とは、保冷保温用箱体からみて外部からの衝撃とも解され、保護パネルが断熱パネルの内側に設けられること、及びジョイント部(【0017】~【0019】)の例示を参酌すると、断熱パネルの内側に設けた保護パネルが、保冷保温用箱体からみて外部からの衝撃を防止できるとは理解できない。
一方、本願明細書には、「断熱パネルの両面に保護材を配置することで、断熱パネルである真空断熱材の破損等を十分に防ぐことができる」(【0062】)との記載も有り、「保護パネル」が外部からの衝撃を防ぐものに限定されているともいえない。
(3)また、断熱パネルの内側に「パネル」を設ければ、保冷保温用箱体からみて内部からの衝撃の防止効果を有することは、明らかである。
(4)そうすると、本願発明の「保護パネル」は、その文言どおり、断熱パネル及び保冷保温用箱体を何らかの障害から保護するパネルであると解するのが相当である。
(5)したがって、「保護パネル」は、不明確であるとまではいえない。
4 新規性、進歩性について
(1)引用文献1
引用文献1には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は持ち運びの容易な高性能保冷容器に関するものである。」
(イ)「【0005】
【発明の実施の形態】図1(a)~(c)にもとづいてまず全体構成について概略説明する。本発明にかかわるキャンバス製保冷容器Aは、使用時には略直方体又は立方体をなし、折りたたみ可能な本体部1と、本体部1の1側面上部に取付けた蓋部4とからなる外袋1と、本体部1の内側4周面と底を覆う5枚の断熱パネル2ならびに蓋部内に封入される1枚の断熱パネルと、さらに断熱パネル2内に装着する例えば防水シートを溶着して作製し、使用時には立方体又は直方体状になる内袋3(図3)よりなっている。なお外袋の本体部1の上部の蓋部4は外袋の本体部1の上部一辺に縫い付けられている。この蓋部4内には前記外袋の本体部1の内側底部に置かれる断熱パネル2と同一構造のものが封入される。」
(ウ)「【0008】外袋の本体部1の上部に設けた蓋部4は保冷のため断熱パネル2を内蔵している。本体部1の開口部周縁には断熱パネル2の上部と接合する帯状の面ファスナー8が設けられている。又断熱パネル2の内外側上部にも内袋の上部に設けた面ファスナー8と同様の帯状の面ファスナー8が取付けられている。面ファスナーはベルクロ、ジッパーなどで良い。蓋部4は本体部1の上部一辺に縫製加工で結合され、縫製される辺を除いて本体部1の側面上部を被うフランジ部9が一体に設けられている。フランジ部9には本体部と結合する為の面ファスナー8が数個所設けられている。」
(エ)「【0014】
【発明の効果】1)縫製によって結合された本体部と蓋部とで構成される外袋と、外袋内側及び蓋部内の断熱パネルとで構成し、不使用時には、折りたたんで、緊締用のベルトで緊締し、小容積にして持運びかつ保管できるので便利である。
2)組立は断熱パネルの挿入と面ファスナーによる固定で可能故、容易に構成できる。
3)外袋の本体部又は内袋は水密性の材料を使用しているので、水洩等の心配なく、安心して使用できる。
4)側部断熱パネルはその両側端を45°に形成したので、組立時、隣接する側部断熱パネルの45°をなした側端部と密接し、両者間に隙間なく、直角に組込むことができ、保冷効果上好適である。」
(オ)「【図2】
」
(カ)「【図3】
」
(2)引用発明
上記記載を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「使用時には略直方体又は立方体をなし、折りたたみ可能な本体部1と、本体部1の1側面上部に取付けた蓋部4とからなる外袋1と、本体部1の内側4周面と底を覆う5枚の断熱パネル2ならびに蓋部内に封入される1枚の断熱パネルと、さらに断熱パネル2内に装着する例えば防水シートを溶着して作製し、使用時には立方体又は直方体状になる内袋3よりなるキャンバス製保冷容器Aであって、
本体部1の開口部周縁には断熱パネル2の上部と接合する帯状の面ファスナー8が設けられており、断熱パネル2の内外側上部にも内袋の上部に設けた面ファスナー8と同様の帯状の面ファスナー8が取付けられているキャンバス製保冷容器A。」
(3)本願発明と引用発明の対比・判断
ア 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「本体部1」と「蓋部4」とは、その機能及び構造から、本願発明の「筐体」に相当し、同様に「断熱パネル2」は「断熱パネル」に相当し、「面ファスナー8」は「ジョイント部」にそれぞれ相当する。
(イ)引用発明の「キャンバス製保冷容器A」は、「使用時には略直方体又は立方体をなし、」「内側4周面と底」を有する「本体部1」と「蓋部4」とを有するから、本願発明の「天面板、底面板、および側面板により収容空間を形成する筐体を有する保冷保温用箱体」に相当する。
(ウ)引用発明の「本体部1の開口部周縁には断熱パネル2の上部と接合する帯状の面ファスナー8が設けられており、断熱パネル2の内外側上部にも内袋の上部に設けた面ファスナー8と同様の帯状の面ファスナー8が取付けられている」ことは、本体部1の収容空間側の表面上に、帯状面ファスナー8により断熱パネル2が取り付けられることであるから、本願発明の「前記筐体の前記収容空間側の表面上には、断熱パネルが配置され」ることに相当する。
(エ)引用発明の「本体部1の開口部周縁には断熱パネル2の上部と接合する帯状の面ファスナー8が設けられており、断熱パネル2の内外側上部にも内袋の上部に設けた面ファスナー8と同様の帯状の面ファスナー8が取付けられている」ことは、「例えば防水シートを溶着して作製」した内袋が付加機能部品であるといえ、本体部1の側面の断熱パネル2の収納空間側の表面上に、帯状面ファスナー8により内袋が取り付けられることであるから、本願発明の「前記側面板の少なくとも一面に配置された前記断熱パネルの、前記収容空間側の表面上には、」「付加機能部品が装着され、かつ、当該付加機能部品の着脱を可能とするジョイント部を有すること」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「天面板、底面板、および側面板により収容空間を形成する筐体を有する保冷保温用箱体であって、
前記筐体の前記収容空間側の表面上には、断熱パネルが配置され、
前記側面板の少なくとも一面に配置された前記断熱パネルの、前記収容空間側の表面上には、付加機能部品が装着され、かつ、当該付加機能部品の着脱を可能とするジョイント部を有することを特徴とする保冷保温用箱体。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点>
付加機能部品について、本願発明は、「追加の断熱パネル、収容物固定用ベルト、および保護パネルのいずれかである」のに対して、引用発明は、防水シートを溶着して作製し、使用時には立方体又は直方体状になる内袋である点。
イ 当審の判断
上記相違点について検討する。
本願発明の「保護パネル」は、パネルであるから、板状のものである。
一方、引用発明の「内袋」は、袋であるから、図3から5面を有することが看取できるとしても、板状であるとはいえない。
そして、「内袋」は「防水シート」からなるものであるから、防水することからなる保護の作用を有するといえ、防水シートであるから、収容空間からの断熱パネルへの衝撃防止の作用もあるといえるが、「袋」と「パネル」は、異なることが明らかであるから、上記相違点は、実質的な相違点である。
また、内袋をパネルで形成することを、当業者が容易に想到し得たとする理由はない。
さらに、引用文献2の「ベルト14」、引用文献3(5頁左上欄17行~左下欄15行)の「内部ベルト5」や「留め具31」、引用文献4(【0005】、【0006】、図14)の「内袋103」、引用文献5の「仕切板8」を設けることが周知であるとしても、当該部材を断熱パネルの表面上に設けることまでを当業者が容易に想到し得たとは、いえない。
そして、本願発明は、上記相違点に係る事項を有することで、「収容空間にて、所望の内容積および一定の断熱性を確保しつつ、収容物の種類や収容に際し要求される機能に応じた付加機能部品を装着することができ、また、付加機能部品の不要時における上記収容空間の収容効率の向上が図れるといった作用効果を奏する。」(【0012】)という格別の効果を有する。
(4)むすび
したがって、本願発明は、引用発明であるとはいえず、引用発明及び引用文献2~7記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)請求項2~4に係る発明について
請求項2~4に係る発明は、本願発明の発明特定事項を実質的に全て備え、さらに限定を加える発明であるから、上記(3)で検討したのと同様の理由により、引用発明及び引用文献2~7記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第3 まとめ
以上のとおり、請求項1~4に係る発明は、特許法第29条第1項第3号、第29条第2項及び第36条第6項第2号の規定を満たし、また他に拒絶の理由を発見しないから、本願は特許すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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