特許拒絶査定不服審判
2024-010363
セミクローズ家具
- 審判番号
- 2024-010363
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-014504
- 請求日
- 2024年06月24日
- 審決日
- 2025年12月09日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社イトーキ
- 【請求人代理人】樋口 盛之助
- 審判長/審判官
- 審判長 倉橋 紀夫
- 審判官 横溝 顕範
- 審判官 草野 顕子
- 分類
- P18 .55 -WZ (A47B) / P18 .537-WZ (A47B) / P18 .113-WZ (A47B) / P18 .121-WZ (A47B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第44条第1項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-14504号「セミクローズ家具」拒絶査定不服審判事件〔令和5年5月2日出願公開、特開2023-62002号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 出願分割の経緯の概略
本願は、令和5年2月2日にされた特許法第44条第1項の規定による特許出願であって、平成27年10月2日に出願した特願2015-196518号を最先の出願とする、いわゆる第3世代の分割出願であるところ、出願の分割の経緯は、次のとおりである。なお、括弧内は当該出願の提出日を示す。
最先の出願 :特願2015-196518号(平成27年10月 2日)
第1世代分割 :特願2020-123429号(令和 2年 7月20日)
第2世代分割 :特願2022- 64263号(令和 4年 4月 8日)
第3世代分割(本願):特願2023- 14504号(令和 5年 2月 2日)
2 本願の手続の経緯の概略
本願の出願後の手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 2月20日 :手続補正書、上申書の提出
同年10月27日付け:拒絶理由通知書
令和6年 3月 1日 :意見書、手続補正書の提出
同年 3月13日付け:拒絶査定
同年 6月24日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和7年 4月15日付け:当審における拒絶理由通知書
同年 6月23日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明(本願発明の認定)
本願の請求項1~4に係る発明は、令和7年6月23日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
座と前記座の着座者の背面側を遮蔽する衝立パネルとを有する独立した他の椅子状家具と組合わせて配置されるパネル状のセミクローズ家具であって、
前記他の椅子状家具の着座者を一方向から遮蔽可能な第1のパネル面、及び前記着座者を他の方向から遮蔽可能な第2のパネル面を含むパネルと、
床面において前記パネルを前記他の椅子状家具から独立して移動可能なように当該パネルに配置されるキャスタ又はスライダーと、を備え、
前記第1のパネル面と前記第2のパネル面とは連続しており平面視で挟み角を形成する、
セミクローズ家具。」
第3 当審における拒絶の理由の概要
当審において通知した令和7年4月15日付けの拒絶理由のうちの理由3~5は、次のとおりのものを含むものである。
【理由3】(明確性要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
【理由4】(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
【理由5】(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
<引用文献一覧>
2.特開2006-161286号公報
<拒絶理由と請求項と引用文献の関係>
・理由3(明確性要件)
請求項1~6
・理由4(新規性)及び理由5(進歩性)
請求項 1~6
引用文献 2
第4 当審の判断
1 理由3(明確性要件)について
請求項1には、「座と前記座の着座者の背面側を遮蔽する衝立パネルとを有する独立した他の椅子状家具と組合わせて配置されるパネル状のセミクローズ家具」、「前記他の椅子状家具の着座者を一方向から遮蔽可能な第1のパネル面、及び前記着座者を他の方向から遮蔽可能な第2のパネル面を含むパネル」、及び「床面において前記パネルを前記他の椅子状家具から独立して移動可能なように当該パネルに配置されるキャスタ又はスライダー」と記載されているが、これらの記載の技術的意味が不明である。
すなわち、本願発明は、「パネル状のセミクローズ家具」というサブコンビネーションと「他の椅子状家具」という他のサブコンビネーションを組合わせてなる全体装置としての発明に対し、組合わせる「パネル状のセミクローズ家具」の発明である。そして、本願の明細書及び図面の記載全て(特に、段落【0023】)を参照すると、「パネル状のセミクローズ家具」と「他の椅子状家具」とは、互いに分離して独立したものであるところ、「他の椅子状家具」が「座と前記座の着座者の背面側を遮蔽する衝立パネルとを有する」こと、「独立した他の椅子状家具と組合わせて配置される」こと、「前記他の椅子状家具の着座者を一方向から遮蔽可能な」こと、「前記着座者を他の方向から遮蔽可能な」こと、及び「床面において前記パネルを前記他の椅子状家具から独立して移動可能な」ことといった、他のサブコンビネーションに関する事項によって、「パネル状のセミクローズ家具」をどのように特定しているのか、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても、当業者が明確に把握できず、発明が不明確となっている。
よって、本願発明は明確でない。
2 理由4、5(新規性、進歩性)について
(1)引用文献2について
当審における拒絶の理由で引用された引用文献2(特開2006-161286号公報;平成18年6月22日出願公開)には以下の事項が記載されている。なお、下線は、当審で付したものである。
ア 引用文献2の記載事項
(ア)「【0001】
本発明は、屋内空間を仕切るための間仕切り壁に関するものである。」
(イ)「【0014】
図1、図2、図3及び図4に屋内空間たるオフィスのパーティションシステムPSを示す。このパーティションシステムPSは主に固定間仕切り壁Wと本実施形態に係るムーバブルパネルMPとによって主に構成されているものである。なお、同図において椅子及びテーブルの配置の一例をそれぞれ示している。
【0015】
ここで、本実施形態に係る移動間仕切り壁たるムーバブルパネルMPは、オフィス空間を仕切るものであって、特に図5に示すように、平面視屈曲又は湾曲した平面視形状をなす自立可能な壁本体たるムーバブルパネル本体1と、当該ムーバブルパネル本体1の下縁に沿った位置に取り付けた複数のキャスタ2とを主に具備することを特徴としているものであるが、このムーバブルパネルMPの詳細な構造については後に詳述する。
【0016】
一方、固定間仕切り壁Wは、それぞれ巾寸法が異なる壁パネルWPを例えば平面視略コの字状に連結させて載置してなるものである。本実施形態では、上述の通り略コの字形すなわち一辺を開放させた矩形状に載置することにより、それぞれの壁パネルWPを互いに支持させ合うことで固定間仕切り壁W自体に自立性を持たせながら、矩形状に配置された固定間仕切り壁Wの内側をミーティング空間として設定している。勿論、固定間仕切り壁Wは図示するような平面視コの字形の他に、種々の態様に配置することが可能である。また例えば、固定間仕切り壁Wには自立性を持たせずに当該固定間仕切り壁Wを構成する壁パネルWPの巾方向の一端側を建築壁等に固定するようにしても良い。」
(ウ)「【0019】
図3及び図4は、略矩形状に仕切られた固定間仕切り壁Wのうち、開放された一辺に沿ってムーバブルパネルMPのメインパネル11を載置することにより、パーティションシステムPSが1つの大きなミーティング空間を構築した態様を示している。」
(エ)「【0022】
ムーバブルパネル本体1は、図5に示すように、巾寸法の比較的大きなメインパネル11と、巾寸法が比較的小さいサブパネル12とを直角に連結することにより主に構成しているものである。さらに詳細には、メインパネル11は1枚の透明板部1Gと1枚のクロス板部1Cとによって主に構成され、サブパネル12は、1枚の透明板部1Gによって主に構成している。
(オ)「【0025】
ここで、メインパネル11とサブパネル12とを連結機構Cを介して直角に連結することにより、ムーバブルパネル本体1は他に脚などを取り付けることなく自立し得るものとなっている。・・・また、メインパネル11とサブパネル12を直角に、即ち平面視L字形に連結している連結機構Cは、例えばコーナーポストCPを介してパネル同士を例えば平面視T字形、やX字形に連結することや、メインパネル11の他端に他のパネルを連結してコの字形等にも連結し得るものであるが、この連結機構Cの構造は周知のものであるので、ここにおける詳細な説明は省略する。」
(カ)「【0038】
以上のように、本実施形態に係る移動間仕切り壁たるムーバブルパネルMPは、壁本体たるムーバブルパネル本体1が平面視L字形状といった自立可能な平面視形状をとることにより、他の構造物とは独立して他に脚などを取り付けることなく自立させたものとしている。特に本実施形態では、同じくパーティションシステムPSを構成する固定間仕切り壁WとムーバブルパネルMPとの意匠、寸法といった仕様を共通させることによって、例えば従前からあるキャスタ付の脚を取り付けた間仕切り等を別途採用する場合とは異なり、パーティションシステムPSが、使用者に違和感を覚えさせない、統一感のある空間を形成したものとしている。このムーバブルパネル本体1の下縁に沿って取り付けられている複数のキャスタ2とを具備しているので、ムーバブルパネルMP自体を任意の箇所へ移動させることが可能であるため、限られたオフィス内を多様に仕切ることが可能となっている。」
(キ)図4は以下に示すとおりである。
「
[図:0001431734000001.jpg]
」
イ 引用文献2からの認定事項
(ア)段落【0022】の「ムーバブルパネル本体1は、図5に示すように、巾寸法の比較的大きなメインパネル11と、巾寸法が比較的小さいサブパネル12とを直角に連結することにより主に構成しているものである。」との記載、段落【0025】の「また、メインパネル11とサブパネル12を直角に、即ち平面視L字形に連結している」という記載、及び図4を参照すると、ムーバブルパネル本体1はメインパネル11、及びサブパネル12を含み、メインパネル11とサブパネル12は連続しており平面視でL字状をなすことが認められる。
(イ)前記(ア)、段落【0015】、図4を参照すると、「ムーバブルパネルMP」が具備する「ムーバブルパネル本体1」は、「メインパネル11」と「サブパネル12」という2つのパネルにより構成されるものであるから、「ムーバブルパネルMP」は「パネル状」であることは明らかである。
(ウ)段落【0038】の「このムーバブルパネル本体1の下縁に沿って取り付けられている複数のキャスタ2とを具備しているので、ムーバブルパネルMP自体を任意の箇所へ移動させることが可能であるため、限られたオフィス内を多様に仕切ることが可能となっている。」との記載、及び図4から、ムーバブルパネルMPは、床面においてムーバブルパネル本体1を任意の箇所へ移動させることが可能なように、ムーバブルパネル本体1の下縁に沿って取り付けられる複数のキャスタ2を備えていることが認められる。
ウ 引用発明2
前記ア、イから、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているといえる。
「略矩形状に仕切られた固定間仕切り壁Wのうち、開放された一辺に沿って載置することにより、パーティションシステムPSが1つの大きなミーティング空間を構築するパネル状のムーバブルパネルMPであって、
メインパネル11、及びサブパネル12を含むムーバブルパネル本体1と、
床面において前記ムーバブルパネル本体1を任意の箇所へ移動させることが可能なように、ムーバブルパネル本体1の下縁に沿って取り付けられる複数のキャスタ2と、を備え、
前記メインパネル11と前記サブパネル12は連続しており平面視でL字状をなす、
ムーバブルパネルMP。」
(2)本願発明について
ア 対比
本願発明と引用発明2とを対比する。
(ア)後者の「略矩形状に仕切られた固定間仕切り壁Wのうち、開放された一辺に沿って載置することにより、パーティションシステムPSが1つの大きなミーティング空間を構築するパネル状のムーバブルパネルMP」は、一定程度閉鎖されたミーティング空間を構築するための家具の一種といえるから、前者の「座と前記座の着座者の背面側を遮蔽する衝立パネルとを有する独立した他の椅子状家具と組合わせて配置されるパネル状のセミクローズ家具」とは、「パネル状のセミクローズ家具」である点で共通する。
(イ)後者の「メインパネル11」及び「サブパネル12」は、前者の「第1のパネル面」及び「第2のパネル面」にそれぞれ相当し、後者の「ムーバブルパネル本体1」は、前者の「パネル」に相当する。
(ウ)後者の「床面において前記ムーバブルパネル本体1を任意の箇所へ移動させることが可能なように、ムーバブルパネル本体1の下縁に沿って取り付けられる複数のキャスタ2」は、前者の「床面において前記パネルを前記他の椅子状家具から独立して移動可能なように当該パネルに配置されるキャスタ又はスライダー」との対比において、「床面において前記パネルを移動可能なように当該パネルに配置されるキャスタ」の点で共通する。
(エ)後者の「前記メインパネル11のパネル面と前記サブパネル12のパネル面とは連続しており平面視でL字状をなす」ことは、前者の「前記第1のパネル面と前記第2のパネル面とは連続しており平面視で挟み角を形成する」ことに相当する。
そうすると、本願発明と引用発明2は、
「パネル状のセミクローズ家具であって、
第1のパネル面、及び第2のパネル面を含むパネルと、
床面において前記パネルを移動可能なように当該パネルに配置されるキャスタと、を備え、
前記第1のパネル面と前記第2のパネル面とは連続しており平面視で挟み角を形成する、
セミクローズ家具。」
である点で一致し、以下の点で一応相違する。
(相違点)
「セミクローズ家具」に関し、
本願発明は、「座と前記座の着座者の背面側を遮蔽する衝立パネルとを有する独立した他の椅子状家具と組合わせて配置され」、第1パネル面が「前記他の椅子状家具の着座者を一方向から遮蔽可能」であり、第2パネル面が「前記着座者を他の方向から遮蔽可能」であり、パネルは「前記他の椅子状家具から独立して」移動可能であるのに対し、
引用発明2は、セミクローズ家具としてのこれらの事項が特定されているか不明な点。
イ 判断
相違点について検討する。
本願発明は「セミクローズ家具」であると認められるところ、前記第4の1で述べたとおり、「座と前記座の着座者の背面側を遮蔽する衝立パネルとを有する独立した他の椅子状家具と組合わせて配置される」という事項、第1パネル面が「前記他の椅子状家具の着座者を一方向から遮蔽可能」であり、第2パネル面が「前記着座者を他の方向から遮蔽可能」であり、パネルは「前記他の椅子状家具から独立して」移動可能であるという他のサブコンビネーションに関する事項は、本願発明の「セミクローズ家具」の構造、機能等を何ら特定するものではない。
この場合、これらの事項は、本願発明の「セミクローズ家具」を特定するための意味を有しないものである(審査基準第III部第2章第4節4.1.2 「他のサブコンビネーション」に関する事項が、「他のサブコンビネーション」のみを特定する事項であって、請求項に係るサブコンビネーションの発明の構造、機能等を何ら特定していない場合、4.2.2 請求項中に記載された「他のサブコンビネーション」に関する事項がサブコンビネーションの発明の構造、機能等を何ら特定していない場合を参照。)。
そうすると、本願発明の「セミクローズ家具」と引用発明2の「ムーバブルパネルMP」とは、記載上、表現上の相違があるものの、構造、機能等に差異はないから、上記相違点として示した事項は、本願発明と引用発明2の実質的な相違点ではない。
なお、仮に、上記相違点として示した事項が、本願発明のセミクローズ家具の大きさを一定程度特定しているとしても、引用発明2のムーバブルパネルMPは、ミーティング空間を構築するものであり、本願発明のセミクローズ家具と同程度の大きさであることは、当業者であれば十分理解できる。
したがって、本願発明は、引用発明2である。
仮に両者に相違点があるとしても微差であり、本願発明は、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 意見書における請求人の主張について
令和7年6月23日に提出された意見書における請求人の主張は、要するに、本願発明は、「椅子状家具」と「パネル状の家具」とがペアとなり、一つの家具として用いられるセミクローズ家具に構成されるものであるから、引用文献2のムーバブルパネル本体1、又はそのパネル本体同士の組合せ配置の開示が、本願の「椅子状家具」とペアとなるように配置される「パネル状の家具」とによるセミクローズ家具を示唆しているとは言えない、というものである。
しかし、上記イで述べたように、本願発明は「セミクローズ家具」であり、「椅子状家具」とペアとなるように配置される点については、「セミクローズ家具」の単なる使用方法を記載したにすぎず、「椅子状家具」に関する記載事項、例えば衝立パネルを有する点や、当該椅子状家具の着座者をどのように遮蔽するかという点、当該椅子状家具から独立して移動可能である点については、本願発明の「セミクローズ家具」を特定するための意味を何ら有していないものである。
したがって、請求人の主張を採用することはできない。
(3)予備的見解
上記(2)で述べたように、本願発明の他の椅子状家具に関する事項は、「セミクローズ家具」を特定するための意味を有しないものであるが、仮に、本願発明の他の椅子状家具に関する事項の一部又は全部が、セミクローズ家具の構造、機能等を特定する事項であると解したとして、以下、予備的見解を示す。
ア 引用文献2からの追加の認定事項
前記(1)イに加え、以下の点が認定できる。
段落【0014】の「このパーティションシステムPSは主に固定間仕切り壁Wと本実施形態に係るムーバブルパネルMPとによって主に構成されているものである。なお、同図において椅子及びテーブルの配置の一例をそれぞれ示している。」との記載、段落【0016】の「一方、固定間仕切り壁Wは、それぞれ巾寸法が異なる壁パネルWPを例えば平面視略コの字状に連結させて載置してなるものである。本実施形態では、上述の通り略コの字形すなわち一辺を開放させた矩形状に載置することにより、それぞれの壁パネルWPを互いに支持させ合うことで固定間仕切り壁W自体に自立性を持たせながら、矩形状に配置された固定間仕切り壁Wの内側をミーティング空間として設定している。」との記載、段落【0019】の「図3及び図4は、略矩形状に仕切られた固定間仕切り壁Wのうち、開放された一辺に沿ってムーバブルパネルMPのメインパネル11を載置することにより、パーティションシステムPSが1つの大きなミーティング空間を構築した態様を示している。」との記載、及び図1~4を参照すると、「略矩形状に仕切られ、自立性を持った固定間仕切り壁Wの開放された一辺に沿ってムーバブルパネルMPを載置することにより、パーティションシステムPSの内側に椅子及びテーブルが配置された1つの大きなミーティング空間」を構築すると認められる。
イ 引用発明2’
前記ア及び前記(1)ウから、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明2’」という。)が記載されているといえる。
「略矩形状に仕切られ、自立性を持った固定間仕切り壁Wの開放された一辺に沿ってムーバブルパネルMPを載置することにより、パーティションシステムPSの内側に椅子及びテーブルが配置された1つの大きなミーティング空間を構築するムーバブルパネルMPであって、
ムーバブルパネルMPは、
メインパネル11、及びサブパネル12を含むムーバブルパネル本体1と、
床面において前記ムーバブルパネル本体1を任意の箇所へ移動させることが可能なように、ムーバブルパネル本体1の下縁に沿って取り付けられる複数のキャスタ2と、を備え、
前記メインパネル11と前記サブパネル12は連続しており平面視でL字状をなす、
ムーバブルパネルMP。」
ウ 他の椅子状家具に関する事項の内、「独立した他の椅子状家具と組合わせて配置される」こと、「前記他の椅子状家具の着座者を一方向から遮蔽可能な」こと、「前記着座者を他の方向から遮蔽可能な」こと、及び「床面において前記パネルを前記他の椅子状家具から独立して移動可能な」ことが、セミクローズ家具の構造、機能等を特定する場合
前記イ及び前記(2)を踏まえ、本願発明と引用発明2’とを対比する。
(ア)後者の「椅子」はムーバブルパネルMPと独立していることが明らかであるから、前者の「独立した他の椅子状家具」に相当し、後者の「椅子及びテーブルが配置された1つの大きなミーティング空間」を構築する「ムーバブルパネルMP」は、前者の「独立した他の椅子状家具と組合わせて配置されるパネル状のセミクローズ家具」に相当する。
(イ)前記(ア)、段落【0024】の「サブパネル12は図5に示すように、本実施形態ではメインパネル11に後述するコーナーポストCPを介して直角に固定された状態で連結された透明板部1Gを主体としてなるものとしているが、勿論クロス板部1Cを用いて構成したものであっても良い。」との記載、段落【0026】の「また本実施形態では視認性・採光性を向上させるために透明板gを採用したが、透明度の有無によって限定されるものではなく、例えば透明度を有さずに特定の色彩或いは模様を有するものを採用しても良い。」との記載、及び図4から、メインパネル11及びサブパネル12は、着座者への視線を遮る位置に配置され、かつ透明度を有さないものであり、また、「前記メインパネル11と前記サブパネル12は連続しており平面視でL字状をなす」から、後者の「ムーバブルパネルMP」が備えた「メインパネル11、及びサブパネル12を含むムーバブルパネル本体1」は、前者の「前記他の椅子状家具の着座者を一方向から遮蔽可能な第1のパネル面、及び前記着座者を他の方向から遮蔽可能な第2のパネル面を含むパネル」に相当する。
(ウ)後者の「床面において前記ムーバブルパネル本体1を任意の箇所へ移動させることが可能なように、ムーバブルパネル本体1の下縁に沿って取り付けられる複数のキャスタ2」は、椅子から独立して移動可能とするものであるから、前者の「床面において前記パネルを前記他の椅子状家具から独立して移動可能なように当該パネルに配置されるキャスタ」に相当する。
(エ)後者の「前記メインパネル11のパネル面と前記サブパネル12のパネル面とは連続しており平面視でL字状をなす」ことは、前者の「前記第1のパネル面と前記第2のパネル面とは連続しており平面視で挟み角を形成する」ことに相当する。
そうすると、本願発明と引用発明2’とは、
「独立した他の椅子状家具と組合わせて配置されるパネル状のセミクローズ家具であって、
前記他の椅子状家具の着座者を一方向から遮蔽可能な第1のパネル面、及び前記着座者を他の方向から遮蔽可能な第2のパネル面を含むパネルと、
床面において前記パネルを前記他の椅子状家具から独立して移動可能なように当該パネルに配置されるキャスタと、を備え、
前記第1のパネル面と前記第2のパネル面とは連続しており平面視で挟み角を形成する、
セミクローズ家具。」
である点で一致する。なお、前者の他の椅子状家具が「座と前記座の着座者の背面側を遮蔽する衝立パネルとを有する」点は、「他の椅子状家具」の構造を特定する事項であり、「セミクローズ家具」の構造、機能等を特定する事項でないことが明らかである。
そうすると、両者に相違点はない。
したがって、本願発明は、引用発明2’である。
仮に両者に相違点があるとしても微差であり、本願発明は、引用発明2’に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ さらに、「他の椅子状家具」が「座と前記座の着座者の背面側を遮蔽する衝立パネルとを有する」ものであることが、セミクローズ家具の構造、機能等を特定する場合
前記イ及びウ、前記(2)を踏まえ、本願発明と引用発明2’とを対比する。
後者の「自立性を持った固定間仕切り壁W」は、引用文献2の[0016]の記載事項及び図4の図示内容から椅子の背面側を遮蔽する衝立状のものであるといえるから、前者の「衝立パネル」に相当し、後者の「自立性を持った固定間仕切り壁W」及び「椅子」は前者の「座と前記座の着座者の背面側を遮蔽する衝立パネルとを有する」「他の椅子状家具」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明2’とは、全ての点で一致し、相違点はない。
したがって、本願発明は、引用発明2’である。
仮に、本願発明の他の椅子状家具が座と衝立パネルを一体的に有する家具であると解して、そのような点は引用発明2’が有していないという相違点があるとしても、座と衝立パネルを一体的に有する家具は、例えば、特開2015-85107号公報(拒絶査定時の引用文献1、特に段落【0074】、図14参照)、特許第4537691号公報(拒絶査定時の引用文献2、特に段落【0020】、図3参照)等に示されるように、慣用技術であることから、本願発明は、引用発明2’に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
また、本願発明は、引用発明2であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項又は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-010363