特許異議申立
2019-700750
車両用自動変速装置
- 審判番号
- 2019-700750
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-150761
- 登録番号
- 特許第6551014号(P6551014)
- 請求日
- 2019年09月19日
- 審決日
- 2020年07月29日
- 公報発行日
- 2021年05月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】アイシン精機株式会社
- 【権利者代理人】小林 脩
- 【権利者代理人】木村 群司
- 【権利者代理人】山本 喜一
- 【異議申立人】大窪 正博
- 審判長/審判官
- 審判長 平田 信勝
- 審判官 田村 嘉章
- 審判官 内田 博之
- 分類
- P1652.16 -ZC (F16H) / P1652.537-ZC (F16H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条の2、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6551014号発明「車両用自動変速装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6551014号の請求項1に係る特許を取り消す。
同請求項2に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
本件特許第6551014号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成27年 7月30日に出願されたものであって、令和 1年 7月12日に特許権の設定登録がされ、令和 1年 7月31日に特許掲載公報が発行され、その後、その請求項1及び2に係る発明の特許について、令和 1年 9月19日に特許異議申立人大窪正博により特許異議の申立てがされた。
これに対して、本件特許の請求項1に係る発明について、令和 2年 3月31日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。
そして、特許異議申立人は特許異議申立書に添付して次の甲第1号証を提出した。
甲第1号証:特開2016-65613号公報(特願2014-195316号)
2 本件特許に係る発明
本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、順に「本件発明1及び2」という。)は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
第1要素、第2要素及び第3要素をそれぞれ有する第1プラネタリ機構、第2プラネタリ機構、第3プラネタリ機構及び第4プラネタリ機構と、
入力軸と、
出力軸と、
第1係合要素、第2係合要素、第1クラッチ、第2クラッチ、第3クラッチ及び第1ブレーキの6つの係合要素と、
前記第1プラネタリ機構の第1要素と固定部材とを連結状態又は係脱可能な連結状態の一方にすることが可能な第1連結部材と、
前記第1プラネタリ機構の第2要素と前記第2プラネタリ機構の第3要素とを連結状態又は係脱可能な連結状態の一方にすることが可能な第2連結部材と、
前記第1プラネタリ機構の第3要素と前記入力軸とを連結状態又は係脱可能な連結状態の一方にすることが可能な第3連結部材と、
前記第2プラネタリ機構の第1要素と前記第3プラネタリ機構の第1要素とを連結状態又は係脱可能な連結状態の一方にすることが可能な第4連結部材と、
前記第3プラネタリ機構の第2要素と前記出力軸とを連結状態又は係脱可能な連結状態の一方にすることが可能な第5連結部材と、
前記第3プラネタリ機構の第3要素と固定部材とを連結状態又は係脱可能な連結状態の一方にすることが可能な第6連結部材と、
前記第4プラネタリ機構の第1要素と前記第2プラネタリ機構の第1要素とを連結状態又は係脱可能な連結状態の一方にすることが可能な第7連結部材と、
前記第4プラネタリ機構の第2要素と前記入力軸とを連結状態又は係脱可能な連結状態の一方にすることが可能な第8連結部材と、
前記第4プラネタリ機構の第3要素と前記出力軸とを連結状態又は係脱可能な連結状態の一方にすることが可能な第9連結部材と、
前記第1ブレーキは、前記第2プラネタリ機構の第2要素を前記固定部材に対し係脱可能とし、
前記第1クラッチは、前記入力軸と前記第2プラネタリ機構の第2要素とを係脱可能に連結し、
前記第2クラッチは、前記第2プラネタリ機構の前記第1要素と前記第2要素と前記第3要素のうちの2つの要素を係脱可能に連結し、
前記第1係合要素は、前記第1連結部材、前記第2連結部材及び前記第3連結部材のうち、1つ選択される第1選択連結部材に配置され、前記第1選択連結部材を前記係脱可能な連結状態にし、
前記第2係合要素は、前記第4連結部材、前記第5連結部材及び前記第6連結部材のうち、1つ選択される第2選択連結部材に配置され、前記第2選択連結部材を前記係脱可能な連結状態にし、
前記第3クラッチは、前記第7連結部材、前記第8連結部材及び前記第9連結部材のうち、1つ選択される第3選択連結部材に配置され、前記第3選択連結部材を前記係脱可能な連結状態にし、
前記第1係合要素が配置されない前記第1連結部材、前記第2連結部材及び前記第3連結部材を前記連結状態にし、前記第2係合要素が配置されない前記第4連結部材、前記第5連結部材及び前記第6連結部材を前記連結状態にし、前記第3クラッチが配置されない前記第7連結部材、前記第8連結部材及び前記第9連結部材を前記連結状態にし、
前記6つの係合要素のうちの3つの係合要素を係合することにより、前進9速段及び後進1速段を形成する車両用自動変速装置。
【請求項2】
第1要素、第2要素及び第3要素をそれぞれ有する第1プラネタリ機構、第2プラネタリ機構、第3プラネタリ機構及び第4プラネタリ機構と、
入力軸と、
出力軸と、
第1係合要素、第2係合要素、第1クラッチ、第2クラッチ、第3クラッチ及び第1ブレーキの6つの係合要素と、
前記第1プラネタリ機構の第1要素と固定部材とを連結状態又は係脱可能な連結状態の一方にすることが可能な第1連結部材と、
前記第1プラネタリ機構の第2要素と前記第2プラネタリ機構の第3要素とを連結状態又は係脱可能な連結状態の一方にすることが可能な第2連結部材と、
前記第1プラネタリ機構の第3要素と前記入力軸とを連結状態又は係脱可能な連結状態の一方にすることが可能な第3連結部材と、
前記第2プラネタリ機構の第1要素と前記第3プラネタリ機構の第1要素とを連結状態又は係脱可能な連結状態の一方にすることが可能な第4連結部材と、
前記第3プラネタリ機構の第2要素と前記出力軸とを連結状態又は係脱可能な連結状態の一方にすることが可能な第5連結部材と、
前記第3プラネタリ機構の第3要素と固定部材とを連結状態又は係脱可能な連結状態の一方にすることが可能な第6連結部材と、
前記第4プラネタリ機構の第1要素と前記第3プラネタリ機構の第3要素とを連結状態又は係脱可能な連結状態の一方にすることが可能な第7連結部材と、
前記第4プラネタリ機構の第3要素と前記入力軸とを連結状態又は係脱可能な連結状態の一方にすることが可能な第8連結部材と、
前記第4プラネタリ機構の第2要素と前記出力軸とを連結状態又は係脱可能な連結状態の一方にすることが可能な第9連結部材と、
前記第1ブレーキは、前記第2プラネタリ機構の第2要素を前記固定部材に対し係脱可能とし、
前記第1クラッチは、前記入力軸と前記第2プラネタリ機構の第2要素とを係脱可能に連結し、
前記第2クラッチは、前記第2プラネタリ機構の前記第1要素と前記第2要素と前記第3要素のうちの2つの要素を係脱可能に連結し、
前記第1係合要素は、前記第1連結部材、前記第2連結部材及び前記第3連結部材のうち、1つ選択される第1選択連結部材に配置され、前記第1選択連結部材を前記係脱可能な連結状態にし、
前記第2係合要素は、前記第4連結部材、前記第5連結部材及び前記第6連結部材のうち、1つ選択される第2選択連結部材に配置され、前記第2選択連結部材を前記係脱可能な連結状態にし、
前記第3クラッチは、前記第7連結部材、前記第8連結部材及び前記第9連結部材のうち、1つ選択される第3選択連結部材に配置され、前記第3選択連結部材を前記係脱可能な連結状態にし、
前記第1係合要素が配置されない前記第1連結部材、前記第2連結部材及び前記第3連結部材を前記連結状態にし、前記第2係合要素が配置されない前記第4連結部材、前記第5連結部材及び前記第6連結部材を前記連結状態にし、前記第3クラッチが配置されない前記第7連結部材、前記第8連結部材及び前記第9連結部材を前記連結状態にし、
前記6つの係合要素のうちの3つの係合要素を係合することにより、前進9速段及び後進1速段を形成する車両用自動変速装置。」
3 令和 2年 3月31日付け取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
請求項1に係る特許に対して、当審が令和 2年 3月31日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(拡大先願)本件発明1は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた甲第1号証に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)当審の判断
上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件特許の請求項1に係る特許は、この取消理由によって取り消すべきものである。
4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は、特許異議申立書第14-15ページにおいて、本件発明2について、特許法第36条第6項第1号(サポート要件)違反を主張するので、以下に検討する。
(1)特許異議申立人の主張
本件発明2は、その連結形態の一部に、前進5~9速段が成立しない連結形態が含まれている。
本件発明1及び2では、動力は出力軸と連結する第3及び第4プラネタリ機構から出力され、第3プラネタリ機構の第3要素を制動可能にする第2係合要素と第4プラネタリ機構の第2または第3要素を入力軸と連結可能にする第3クラッチが配される。
入力軸からの動力は直接第4プラネタリ機構に入力可能となる通路と前置変速機構を通って第3及び第4プラネタリ機構に入力可能となる通路の2通りが本件発明1にはあるが、本件発明2では前置変速機構を通る通路が第3プラネタリ機構にしか入力可能とならない。
第3クラッチが締結され第2係合要素が解放される前進5、6、7、8、9速段では、入力軸からの上記2個の通路からの2種の回転規制で出力軸の回転が決定される。本件発明1では第4プラネタリ機構の2個の構成要素に2種の回転が入力され残りの1個の構成要素が出力軸に連結されるから問題はないが、本件発明2では第4プラネタリ機構の第3要素に入力軸の回転が入力され、第3プラネタリ機構の第1要素に前置変速機構を通るもう1種の入力軸の変速回転が入力されるため、第3及び第4プラネタリ機構の各2個の構成要素が連結されて4要素の一体化した連結体となった状態にしなければ第3及び第4プラネタリ機構の出力軸に連結された構成要素から動力は出力されない。
<本件発明2の成立しない2種の連結形態>
1)第2係合要素を第3プラネタリ機構の第2要素(キャリア)と出力軸の間にクラッチとして配置した連結形態。
第3プラネタリ機構の第2要素(キャリア)と第4プラネタリ機構の第2要素(キャリア)の連結が絶たれ、4要素の連結体とならない。
2)第2係合要素を第3プラネタリ機構の第1要素(サンギア)と第2プラネタリ機構の第1要素の間にクラッチとして配置した連結形態。
前置変速機構を通るもう1種の入力軸の変速回転が入力されない。
(2)当審の判断
上記特許異議申立人の主張は次のとおり理由がない。
上記主張は「第3クラッチが締結され第2係合要素が解放される前進5、6、7、8、9速段では、入力軸からの上記2個の通路からの2種の回転規制で出力軸の回転が決定される。」ことを前提としたものといえるところ、当該前提は図3に係る「図2の第1具体例の各変速段におけるブレーキ及びクラッチの作動状態を示す図」(願書に添付した明細書の段落【0010】)に基づくものであって、第1実施形態すなわち本件発明1のブレーキ及びクラッチの作動状態を前提としており、本件発明2のブレーキ及びクラッチの作動状態を前提としているとはいえない。つまり、図3は、「図2の第1具体例の各変速段におけるブレーキ及びクラッチの作動状態を示す図」ではあるものの、本件発明2のブレーキ及びクラッチの作動状態図であるといえないからである。
そうすると、上記特許異議申立人の主張は、適切なものとはいえず、採用できるものでない。
そして、本件発明2のブレーキ及びクラッチの作動状態の個別具体例が願書に添付した明細書に明記されているとはいえないものの、例えば「第1、第2係合要素M1,M2、第1、第2、第3クラッチCL1,CL2,CL3、第1ブレーキB1との6つの係合要素のうちの3つの係合要素を選択的に係合することにより、第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P1,P2,P3,P4の要素の回転を規制することにより、前進9速段、後進1速段の変速段を形成することができる」(段落【0047】)と記載されているところ、本件発明2において、その連結形態の一部に、前進5~9速段が成立しない連結形態が含まれているといえる記載もない。
なお、願書に添付した明細書の段落【0047】、【0050】及び【0052】には、本件発明2の実施形態である第2実施形態に関し、「図3に示す様に、第1、第2係合要素M1,M2、第1、第2、第3クラッチCL1,CL2,CL3、第1ブレーキB1との6つの係合要素のうちの3つの係合要素を選択的に係合することにより、第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P1,P2,P3,P4の要素の回転を規制することにより、前進9速段、後進1速段の変速段を形成することができる。」というような記載があり、段落【0055】には「図3に示す様に、第1、第2、第3クラッチCL1,CL2、CL3、第1、第2及び第3ブレーキB1,B2,B3との6つの係合要素のうちの3つの係合要素を選択的に係合することにより、・・・」と記載されているものの、ここでいう「図3に示す様に」とは、「図3の様なブレーキ及びクラッチの作動状態を示す図の様に」といったことを意味すると理解できる。
よって、上記特許異議申立人の主張は採用することができない。
5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によって、本件特許の請求項1に係る特許を取り消すべきものである。
また、特許異議申立書に記載された申立理由によっては、本件特許の請求項2に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に本件特許の請求項2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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