特許異議申立
2019-700736
車両用ホイール
- 審判番号
- 2019-700736
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-236923
- 登録番号
- 特許第6506380号(P6506380)
- 請求日
- 2019年09月12日
- 審決日
- 2020年09月08日
- 公報発行日
- 2020年12月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】中央精機株式会社
- 【権利者代理人】服部 雅紀
- 【異議申立人】太刀掛 祐一
- 審判長/審判官
- 審判長 氏原 康宏
- 審判官 出口 昌哉
- 審判官 島田 信一
- 分類
- P1651.121-YAA(B60B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第5項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6506380号発明「車両用ホイール」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6506380号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、6について訂正することを認める。
特許第6506380号の請求項3~5に係る特許を維持する。
特許第6506380号の請求項1、2及び6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6506380号の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成29年12月11日に出願され、平成31年4月5日にその特許権の設定登録がされ、同年4月24日に特許掲載公報が発行された。
その後、その請求項1~6に係る特許について、令和1年9月12日に特許異議申立人太刀掛祐一(以下「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、令和2年1月16日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年3月19日に訂正請求書及び意見書が提出され、同年4月6日付けで訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項)、これに対して、同年4月28日に特許異議申立人から指定期間1ヶ月延長の上申書が提出され、同年5月26日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和2年3月19日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許第6506380号(以下「本件特許」という。)の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1-6について訂正することを請求するものであり、その内容は以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「前記意匠面は、前記研磨面よりも前記車両外側に突出している突起を有しており、
前記研磨面と前記突起との間には空間がある請求項2に記載の車両用ホイール。」
とあるのを、
「筒状のリム部と、前記リム部の内側に設けられているディスク部とを備える軽合金製の車両用ホイールであって、
前記リム部の車両外側の面および前記ディスク部の車両外側の面から構成されている意匠面の一部は、研磨面を有しており、
前記研磨面は、平坦な面であり、前記車両用ホイールの回転方向と交差する多数の研磨筋目が形成されており、
前記研磨面の周囲に形成された面のうち、少なくとも前記研磨面の縁に接続している接続部分は、前記研磨面に対して車両内側に位置しており、
前記意匠面は、前記研磨面よりも前記車両外側に突出している突起を有しており、
前記研磨面と前記突起との間には空間がある車両用ホイール。」
に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「各前記研磨面の間には空間がある請求項2または3に記載の車両用ホイール。」
とあるのを、
「各前記研磨面の間には空間がある請求項3に記載の車両用ホイール。」
に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に
「前記意匠面は、前記車両用ホイールの回転軸心に垂直な同一平面上において周方向に並ぶ前記研磨面および切削面を有しており、
前記研磨面と前記切削面との間には空間がある請求項2に記載の車両用ホイール。」
とあるのを、
「筒状のリム部と、前記リム部の内側に設けられているディスク部とを備える軽合金製の車両用ホイールであって、
前記リム部の車両外側の面および前記ディスク部の車両外側の面から構成されている意匠面の一部は、研磨面を有しており、
前記研磨面は、平坦な面であり、前記車両用ホイールの回転方向と交差する多数の研磨筋目が形成されており、
前記研磨面の周囲に形成された面のうち、少なくとも前記研磨面の縁に接続している接続部分は、前記研磨面に対して車両内側に位置しており、
前記意匠面は、前記車両用ホイールの回転軸心に垂直な同一平面上において周方向に並ぶ前記研磨面および切削面を有しており、
前記研磨面と前記切削面との間には空間がある車両用ホイール。」
に訂正する。
(6)訂正事項6
明細書の【0006】に
「研磨面は、平坦な面であり、車両用ホイールの回転方向と交差する多数の研磨筋目が形成されている。」
とあるのを、
「研磨面は、平坦な面であり、車両用ホイールの回転方向と交差する多数の研磨筋目が形成されている。
研磨面の周囲に形成された面のうち、少なくとも研磨面の縁に接続している接続部分は、研磨面に対して車両内側に位置している。
本発明の第1の態様では、意匠面は、研磨面よりも車両外側に突出している突起を有しており、研磨面と突起との間には空間がある。
本発明の第2の態様では、意匠面は、車両用ホイールの回転軸心に垂直な同一平面上において周方向に並ぶ研磨面および切削面を有しており、研磨面と切削面との間には空間がある。」
に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(8)訂正事項8
明細書の【発明の名称】に
「車両用ホイールおよびその製造方法」
とあるのを
「車両用ホイール」
に訂正する。
(9)訂正事項9
明細書の段落【0001】に
「本発明は、軽合金製の車両用ホイールおよびその製造方法に関する。」
とあるのを
「本発明は、軽合金製の車両用ホイールに関する。」
に訂正する。
(10)訂正事項10
明細書の段落【0005】に
「その目的は、これまでにない新しい意匠性を有する車両用ホイール、およびその製造方法を提供することである。」
とあるのを
「その目的は、これまでにない新しい意匠性を有する車両用ホイールを提供することである。」
に訂正する。
(11)訂正事項11
明細書の段落【0009】の記載を削除する。
前記訂正事項1~5に係る本件訂正は、一群の請求項〔1~5〕に対して請求されたものである。また、前記訂正事項6、8~11に係る明細書に係る本件訂正は、一群の請求項〔1~5〕について請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1、2及び7について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1、2及び7は、それぞれ、訂正前の請求項1、2及び6を削除する訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
請求項を削除する訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(2)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3は、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1を引用する請求項2を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1及び2の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
請求項間の引用関係を解消する訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(3)訂正事項4について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項4は、訂正前の請求項4が訂正前の請求項2又は3を引用する記載であったものを、訂正事項2により削除する請求項2の記載を引用しないようにする訂正であり、訂正事項3との整合を図り択一的な記載の下位概念の一つを選択したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
択一的な記載の下位概念の一つを選択する訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(4)訂正事項5について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項5は、訂正前の請求項5が訂正前の請求項1を引用する請求項2を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1及び2の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
請求項間の引用関係を解消する訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(5)訂正事項6、8~11について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項6は、訂正事項1~5により訂正された特許請求の範囲の請求項1~5の記載と明細書の記載の整合性を図るための訂正であり、また、訂正事項8~11は、訂正事項7により訂正前の請求項6に係る「製造方法」の発明が削除されたことに伴い、発明の概要等における「製造方法」に関連する記載を削除することで、訂正後の特許請求の範囲と明細書の記載の整合性を図るための訂正であり、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
上記(1)~(4)の各イのとおりであり、訂正事項6、8~11は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
3 独立特許要件
本件においては、訂正前の全ての請求項1~6について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1~6にそれぞれ係る訂正事項1~5及び7に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
4 本件訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするもの、同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするもの、及び、同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、6について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正請求により訂正された請求項1~6に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】
筒状のリム部と、前記リム部の内側に設けられているディスク部とを備える軽合金製の車両用ホイールであって、
前記リム部の車両外側の面および前記ディスク部の車両外側の面から構成されている意匠面の一部は、研磨面を有しており、
前記研磨面は、平坦な面であり、前記車両用ホイールの回転方向と交差する多数の研磨筋目が形成されており、
前記研磨面の周囲に形成された面のうち、少なくとも前記研磨面の縁に接続している接続部分は、前記研磨面に対して車両内側に位置しており、
前記意匠面は、前記研磨面よりも前記車両外側に突出している突起を有しており、
前記研磨面と前記突起との間には空間がある車両用ホイール。
【請求項4】
前記車両用ホイールの回転軸心に垂直な同一平面上に複数の前記研磨面があり、
各前記研磨面の間には空間がある請求項3に記載の車両用ホイール。
【請求項5】
筒状のリム部と、前記リム部の内側に設けられているディスク部とを備える軽合金製の車両用ホイールであって、
前記リム部の車両外側の面および前記ディスク部の車両外側の面から構成されている意匠面の一部は、研磨面を有しており、
前記研磨面は、平坦な面であり、前記車両用ホイールの回転方向と交差する多数の研磨筋目が形成されており、
前記研磨面の周囲に形成された面のうち、少なくとも前記研磨面の縁に接続している接続部分は、前記研磨面に対して車両内側に位置しており、
前記意匠面は、前記車両用ホイールの回転軸心に垂直な同一平面上において周方向に並ぶ前記研磨面および切削面を有しており、
前記研磨面と前記切削面との間には空間がある車両用ホイール。
【請求項6】(削除)」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1、2、4及び6に係る特許に対して、当審が令和2年1月16日付けの取消理由通知書で特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
[理由1]
本件特許の請求項1、2、4及び6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当する。
よって、その請求項1、2、4及び6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである
[理由2]
本件特許の請求項1、2、4及び6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物1~5に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
よって、その請求項1、2、4及び6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
[刊行物等一覧]
1:CARTOP MOOK Audi×af imp.3,
(株)交通タイムズ社,2013年12月30日発行,p.101
2:特開2015-33919号公報
3:登録実用新案第3011902号公報
4:特開平10-309636号公報
5:特開2017-100536号公報
上記1~5の刊行物等(以下それぞれ「引用文献1~5」という。)は、それぞれ順に、特許異議申立人太刀掛祐一(以下「特許異議申立人」という。)が提出した、甲第1号証、甲第2号証、当審が提示する刊行物(異議2019-700735号事件で特許異議申立人が提出した甲第3号証)、特許異議申立人が提出した、甲第4号証、甲第3号証である。
2 当審の判断
上記第2で述べたとおり、本件訂正により、本件訂正前の請求項1、請求項2、請求項2を引用する請求項4、及び、請求項6は、削除されたから、上記1の取消理由通知書に記載した取消理由は解消した。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
[理由]
本件特許の請求項3及び5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物1~4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
よって、その請求項3及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
[刊行物等一覧]
1:CARTOP MOOK Audi×af imp.3,
(株)交通タイムズ社,2013年12月30日発行,p.101
2:特開2015-33919号公報
3:特開2017-100536号公報
4:特開平10-309636号公報
上記1~4の刊行物等(以下それぞれ「引用文献1~4」という。)は、特許異議申立人が提出した、甲第1~4号証である。
2 当審の判断
2-1 引用文献に記載された事項及び発明
(1)引用文献1について
(1-1)引用文献1に記載された事項
引用文献1の101ページには、写真が掲載されているとともに、以下の事項が記載されている(下線は当審が付与した。以下同様である。)。
(1a)
「国産鍛造ゆえに可能な緻密で高度な表面処理
ホイールの世界は日進月歩。新たな製法や造型が生み出される一方で、表面処理の方法もまた、ありとあらゆる仕様が世に送り出されている。
GATE‘Sがプロデュースする国産鍛造ホイールブランド、ヴァルケンは、その独自性の高いデザインと個性的な表面処理でスタイルアップシーンをリードしている。
例えば、同ブランドの名を冠した『ヴァルケン・ブラッシュド』は、直径30φのリーフブラッシュドがディスク全面に渡って施されるというもの。ひとつひとつ職人の手によって磨かれ、この文様が描き出される。」(101ページ右上欄)
(1b)
「新作となる『ブラッシュ・アノダイズド・マット・ブラック』は、バレル研磨後にブラッシング研磨を行い、さらにヘアライン加工を施した上でアノダイズド加工をするという、手間の掛かった処理。4つの工程を経て、ようやく仕上がるわけだ。
色についても独自のこだわりがある。『ヴァルケン・ブラック』では、単なる塗装ではなく、アルマイト着色と呼ばれる手法で色づけがなされている。表面を平滑に整える鍛造だからこそ活きる表面加工なのだ。
その他、多彩なディスクやリムのバリエーションを用意して、輸入車に絶対的な個性を与えるべく待ち受けている。他とは違う足もとを生み出すヴァルケン、見逃す手はない!」(101ページ右中欄)
(1c)
「DMT FORGED
← ヴァルケン・ブラッシュド×ダイヤカットリムの組み合わせ。円形のブラッシュド模様が独特の風合い醸し出す。ホールの側面をサンディング処理することで、深みのある表情を実現した。」(101ページ右下欄)
(1d)
異議申立人が提出した101ページは、以下のとおりである。
(1-2)引用文献1に記載された発明
引用文献1の101ページについて、以下のことがいえる。
ア
特許異議申立人は、引用文献1の101ページの下側に示される、「DTM FORGED」という製品を写した写真(以下「写真」という。)に、「D」「S」「C」及び「R」の文字と引き出し線を付しているから(摘記(1d)参照)、当審は、必要に応じてこれらの文字等を使用する。
このDが示すディスクを、以下「ディスクD」という。同様に、「スポークS」、「リムR」という。
イ
写真は、車両用のホイールの写真であることが明らかであり(摘記(1b)の「輸入車」という記載も参照)、当該写真によると、リムRが筒状であること、及び、ディスクDがリムRの内側に設けられ、スポークSを有していることが、明らかである。
このことを踏まえると、写真から、筒状のリムRと、筒状のリムRの内側に設けられ、スポークSを有している、ディスクDとを備える車両用ホイールが、看取できる。
ウ
写真のディスクDに刻まれた各種の文字や模様、及び、摘記(1c)の「独特の風合いを醸し出す」及び「深見のある表情」という記載を参照すると、写真が、車両外側の意匠面を撮影したものであることが、明らかである。
そして、写真から、意匠面は、筒状のリムRの車両外側の面及びディスクDの車両外側の面から構成されていることが、看取できる。
エ
写真のスポークSについて、以下のことがいえる。
(ア)
スポークSは複数設けられており、各スポークSの形状は、スポーク単体の全体の形状が把握できる「DTM FORGED」という文字が刻まれているスポークの形状を見ると、Y字状であることが明らかである。
(イ)
また、周方向に隣り合うY字状のスポークSの間には、楕円状の空間が形成されていることが、明らかである。
(ウ)
上記(ア)及び(イ)を踏まえると、写真から、楕円状の空間が周方向に介在することにより周方向に間隔を隔てた複数のY字状のスポークSが看取できる。
(エ)
各スポークSは、車両外側の面を備え、各スポークSの車両外側の面には、模様が形成されていることが明らかであり、この模様は、写真右上に位置している101ページ右下欄(摘記(1c))の「DTM FORGED」を説明する「円形のブラッシュド模様」という記載を参照すると、円形のブラッシュド模様であると認められる。
(オ)
写真から、各スポークSが、車両外側の面(上記(エ)参照)の縁と、楕円状の空間(上記(イ)参照)とに接する車両内側に凹んだ部分とを備えていることが、看取できる。
(カ)
上記(ア)、(エ)、(オ)及びイを踏まえると、ディスクDが有する各Y字状のスポークS(上記イ及び(ア))は、複数の円形のブラッシュド模様が形成された、車両外側の面(上記(エ))と、複数の円形のブラッシュド模様が形成された車両外側の面の縁と楕円状の空間とに接する車両内側に凹んだ部分(上記(オ))とを備えるものと認められる。
オ
したがって、上記ア~エ、摘記(1a)~(1c)及び写真(摘記(1d))から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「筒状のリムRと、筒状のリムRの内側に設けられ、楕円状の空間が周方向に介在することにより周方向に間隔を隔てた複数のY字状のスポークSを有しているディスクDとを備える車両用ホイールであって、
意匠面は、筒状のリムRの車両外側の面及びディスクDの車両外側の面から構成され、
ディスクDが有する各Y字状のスポークSは、複数の円形のブラッシュド模様が形成された、車両外側の面と、複数の円形のブラッシュド模様が形成された車両外側の面の縁と楕円状の空間とに接する車両内側に凹んだ部分とを備える、
車両用ホイール。」
(2)引用文献2について
引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(2a)
「【0012】
<第1実施形態>
図1,2に示すように、本実施形態における車両用ホイール1は、車両への装着状態における車内側に配置されるリム3と、リム3の車外側に接合されたディスク5とを備えている。ディスク5は、リム3と別体に構成されている。」
(2b)
「【0015】
図3に示すように、ディスク5の周縁部19は、車外側に配置されて径方向に沿って延在する車外側壁部(第1壁部)31と、車外側壁部31の径方向外側端から車内側に向けて突出した突起部33と、車外側壁部31の径方向内側端から車内側に向けて延在する径方向内側壁部(第2壁部)35と、が一体に形成されてなる。車外側壁部31の表面31aは、車外側に面して平坦に形成された意匠面を構成している。この表面31aは、ディスク5の表面に沿って流れる空気流を、表面31a上において表面31aに平行な流れに整流することができる程度に平坦であればよい。従って、「平坦」には、エッチングやレーザー刻印等により表面31aに模様を付するための浅い凹凸等や装飾目的の浅い凹凸等を形成した場合も含まれる。なお、本実施形態では、車外側壁部31の表面31aは、中心軸Cに略垂直な平面を構成しており、スポーク部17の径方向外側端部における車外側の表面17aと略面一になっている。
・・・
【0032】
機械加工工程S14では、接合工程S13により組み立てたホイール1の表面に切削加工を施して、ホイール1を所定の寸法、形状に整える。具体的には、切削工具の刃先を、ホイール1の表面に突き当てつつ周方向に相対移動させて、ホイール1の表面を切削する。そして、ホイール1の径方向外側面を切削する際は、少なくとも重ね合わせ部LJに対応する領域を、摩擦攪拌接合により生じた接合痕ごと切削する。これによりホイール1の表面から接合痕を除去し、平滑な面を形成する。なお、機械加工工程S14では、上記切削加工の他に、穴あけ加工を施したり、表面に模様を付するための凹凸等を形成したり、バリ取り、面取り、表面研磨等を施したりしてもよい。」
(2c)
「【0055】
上記実施形態では、マグネシウム合金またはアルミニウム合金の鋳造材、鍛造材からなるリム3およびディスク5を例示した・・・」
(3)引用文献3について
引用文献3には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(3a)
「【0001】
本発明は、レーザ照射により表面にレーザマーキングが形成された車両用ホイールに関する。」
(3b)
「【0010】
図1は、実施例のホイール10の正面図である。また、図2(a)は、図1に示すホイール10の線分A-Aの断面図であり、図2(b)は、図1に示すホイール10の線分B-Bの断面図である。ホイール10は、ディスク12、スポーク14およびリム16を有する。ホイール10は、タイヤを装着されて車輪を構成し、車軸に連結される。
・・・
【0031】
図5(b)に示すスポーク14の主表面224には、幅方向に沿って凸部220が形成される。図6に示すように凸部220は、金属材料からなる本体部226を突出させて形成され、スポーク14の主表面224より突出する。レーザマーキング部222の第1端部222aは凸部220に隣接せず、第2端部222bは凸部220に隣接する。
【0032】
図5(b)および図6に示すレーザマーキング部222は、主表面224上の第1端部222aをレーザ照射の始点230aとし、凸部220上をレーザ照射の終点230bとしている。図6に示すように、主表面224には本体部226の表面に沿って4層の塗装が施されているが、レーザマーキング部222では塗装部が消失されて3層になっている。
【0033】
このように、レーザ照射の終点230bは、図5(a)に示す凹部120に限られず、図5(b)に示す凸部220であってよい。凸部220では、レーザ光軸方向における凸部220とレーザ照射部との間隔が主表面224とレーザ照射部の間隔より小さくなるため、塗装部をレーザ光の焦点から位置ずれさせて、塗装部に穴があくことを防ぐことができる。
【0034】
図5(a)および図5(b)に示すように、レーザマーキング部が凹んで形成されるため、ホイール10の表面に形成した凹部120または凸部220に連なってレーザマーキング部を施すことで立体的な意匠を設けることができる。また、凸部220にレーザマーキング部222を連なることで、凹凸を有する立体的な表面を形成することができる。
【0035】
図7は、第3変形例のレーザマーキング部322について説明するための図である。第3変形例のスポーク314は、図3に示すスポーク14と比べて、両縁に凹部でなく凸部320が形成される点で異なる。
【0036】
レーザマーキング部322の第1端部322aおよび第2端部322bは、主表面324の両縁に達し、凸部320に隣接する。レーザ照射の始点330aおよび終点330bはレーザマーキング部322の延長上に設定され、凸部320の上に設定される。これにより、主表面324にレーザ照射の終点330bを設定して、塗装部に穴あきが形成されることを防ぐことができる。スポーク14の両縁に凸部320を設けることでスポーク14の剛性を高めることができる。
【0037】
図8は、第4変形例のレーザーマーキング部422について説明するための図である。第4変形例のレーザーマーキング部422は、図3に示すレーザマーキング部22と比べて、環状に形成される点で異なる。レーザーマーキング部422は、連続する線を一周させたものである。スポーク414には、主表面424と色が異なる環状のレーザマーキング部422が複数形成される。
【0038】
金属材料からなる本体部426の表面を環状に凹ませた環状凹部432を形成することで、環状凹部432の中央には環状凹部432より突出する凸部420が形成される。レーザ照射では、環状凹部432の底に焦点を合わせ、環状凹部432上に始点430aを設定し、凸部420に終点430bを設定する。レーザ照射装置は、環状凹部432上に始点430aからレーザ光を照射し、環状凹部432に沿って1周りして照射位置を凸部420上の終点430bに移動して、レーザ照射を終える。凸部420では、レーザ光軸方向における凸部420とレーザ照射部との間隔が、環状凹部432より小さくなるため、レーザ光の焦点を位置ずれさせて、塗装部に穴があくことを防ぐことができる。
【0039】
図9は、第5変形例のレーザーマーキング部522について説明するための図である。図9に示す第5変形例のスポーク514は、図3に示すスポーク14と比べて、凹部520を溝状に形成した点で異なる。
【0040】
凹部520は、スポーク514の主表面524側で幅方向の両側に位置し、長手方向に沿って形成され、主表面524より凹む。レーザマーキング部522の第1端部522aおよび第2端部522bは、凹部520にそれぞれ隣接する。レーザマーキング部522は、凹部520の間の主表面524を幅方向に貫通するように形成される。レーザ照射では始点530aおよび終点530bが、凹部520上にそれぞれ設定される。これにより、レーザマーキング部522の第1端部522aおよび第2端部522bがスポーク14の両縁に達しないため、欠ける可能性を低減できる。」
(3c)
図5~9は、以下のとおりである。
(4)引用文献4について
引用文献4には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(4a)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、軽合金鋳造ホイールの製造方法に関し、特にメッキ処理を施す軽合金鋳造ホイールの表面処理方法に関する。」
(4b)
「【0006】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の望ましい実施例に係る軽合金鋳造ホイールの製造方法を図1~図4を参照して説明する。図1は第1実施例に係る軽合金
鋳造ホイールの製造工程図を示している。・・・」
(4c)
「【0008】次に、(4)の工程である第2ショットブラスト工程である。この、第2ショットブラスト工程は図4(ロ)に示すように、第1ショットブラスト工程において、鋳物表面付近のピンホール3を確実に潰すことができたとしても、どうしても大きな粒径のショット材を使用することから表面の凹凸が大きくなってしまい、その後の工程である、意匠面2等のバフ研磨工程で時間がかかってしまい効率的でないため、鋳物表面を平滑にするために行われる。次の工程は、(5)の意匠面切削工程である。この工程では、図2に示すような自動車にホイールを装着した場合、表側から見える部分2(通常この部分を意匠面という。)を中心にNC旋盤等により切削加工を行う。
【0009】次に、(6)の工程において、この意匠面を主として、後にメッキ処理を行う部分のバフ研磨を行い、メッキ処理が品質よく行われように下地処理を行う。そして、(7)のメッキ処理工程によってメッキを施した軽合金鋳造ホイールの製造を完了させる。図2は、本発明の第2実施例に係わる軽合金鋳造ホイールの製造ホイールの工程図を示している。第2実施例が第1実施例と違うところは第1、第2ショットブラスト工程を鋳造工程後、熱処理工程前においたことである、こうすることによって、熱処理前という鋳物表面がやわらかい状態でショットブラストをおこなうため、ピンホールをより確実につぶすことができる。」
2-2 対比・判断
2-2-1 本件発明3について
(1)対比
本件発明3と引用発明とを対比する。
ア
引用発明の「筒状のリムR」、「筒状のリムRの内側に設けられ、楕円状の空間が周方向に介在することにより周方向に間隔を隔てた複数のY字状のスポークSを有しているディスクD」及び「車両用ホイール」は、それぞれ、本件発明3の「筒状のリム」、「前記リム部の内側に設けられているディスク部」及び「車両用ホイール」に相当する。
イ
上記アを踏まえると、引用発明の「筒状のリムRの車両外側の面及びディスクDの車両外側の面から構成され」る「意匠面」は、本件発明3の「前記リム部の車両外側の面および前記ディスク部の車両外側の面から構成されている意匠面」に相当する。
ウ
引用発明の「円形のブラッシュド模様」は、摘記(1b)の「ブラッシング研磨」という記載を参照すると、研磨によってできる円形の模様といえる。
そうすると、引用発明の「ディスクDが有する各Y字状のスポークS」が「備える」、「複数の円形のブラッシュド模様が形成された、車両外側の面」は、研磨面といえるし、また、上記イを踏まえると、意匠面の一部といえる。
エ
上記ア~ウを踏まえると、引用発明の「意匠面は、筒状のリムRの車両外側の面及びディスクDの車両外側の面から構成され、ディスクDが有する各Y字状のスポークSは、複数の円形のブラッシュド模様が形成された、車両外側の面」「を備える」構成は、本件発明3の「前記リム部の車両外側の面および前記ディスク部の車両外側の面から構成されている意匠面の一部は、研磨面を有して」いる構成に相当する。
オ
引用発明の「ディスクDが有する各Y字状のスポークS」が「備える」「複数の円形のブラッシュド模様が形成された車両外側の面の縁と楕円状の空間とに接する車両内側に凹んだ部分」は、「ブラッシュド模様が形成された」「車両外側の面の縁と楕円状の空間とに接する」から、研磨面(上記ウ参照)の周囲に形成された面であり、研磨面の縁に接続している接続部分となっていることが明らかであるし、「車両内側に凹ん」でいるから、研磨面に対して車両内側に位置しているといえる。
したがって、引用発明の「ディスクDが有する各Y字状のスポークSは」、「複数の円形のブラッシュド模様が形成された車両外側の面の縁と楕円状の空間とに接する車両内側に凹んだ部分」「を備える」構成は、本件発明3の「前記研磨面の周囲に形成された面のうち、少なくとも前記研磨面の縁に接続している接続部分は、前記研磨面に対して車両内側に位置して」いる構成に相当する。
以上から、本件発明3と引用発明との一致点及び相違点ないし一応の相違点は、以下のとおりである。
<一致点3>
「筒状のリム部と、前記リム部の内側に設けられているディスク部とを備える車両用ホイールであって、
前記リム部の車両外側の面および前記ディスク部の車両外側の面から構成されている意匠面の一部は、研磨面を有しており、
前記研磨面の周囲に形成された面のうち、少なくとも前記研磨面の縁に接続している接続部分は、前記研磨面に対して車両内側に位置している車両用ホイール。」
<相違点3-1>
「車両用ホイール」が、本件発明3は、「軽合金製の」車両用ホイールであるのに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。
<相違点3-2>
本件発明3は、「前記研磨面は、平坦な面であり、前記車両用ホイールの回転方向と交差する多数の研磨筋目が形成されて」いる構成を備えるのに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。
<相違点3-3>
本件発明3は、「前記意匠面は、前記研磨面よりも前記車両外側に突出している突起を有しており、前記研磨面と前記突起との間には空間がある」構成を備えるのに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。
(2)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点3-1について
(ア)
引用文献1の写真から認識できる光沢や見栄えから、当業者であれば、引用発明の車両用ホイールが、アルミなどの軽合金製であると理解することもできる。
したがって、相違点3-1は、実質的な相違点とはいえない。
(イ)
仮に、相違点3-1が実質的な相違点であったとしても、リムとディスクとを備えている車両用ホイールを軽合金製とすることは、例示するまでもない周知技術(必要であれば、引用文献2の「マグネシウム合金またはアルミニウム合金の鋳造材、鍛造材からなるリム3およびディスク5」(摘記(2c))、引用文献4の「軽合金鋳造ホイール」(摘記(4a))を参照)であって、この周知技術に鑑みることで、引用発明において、車両用ホイールを軽合金製とすることで、上記相違点3-1に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。
イ 相違点3-2について
引用文献1の写真から認識できる光沢や見栄えから、当業者であれば、引用発明の「ディスクDが有する各Y字状のスポーク」が「備える」、「複数の円形のブラッシュド模様が形成された、車両外側の面」は、平坦な面であると理解することもできるし、また、当該「複数の円形のブラッシュド模様」は、車両用ホイールの回転方向と交差する多数の研磨筋目を形成していると理解することもできる。
したがって、相違点3-2は、実質的な相違点とはいえない。
ウ 相違点3-3について
(ア)
引用文献1の写真によると、「意匠面」である「筒状のリムRの車両外側の面」は、他の「意匠面」である「ディスクDの車両外側の面」よりも車両外側に位置していることが明らかであるものの、「筒状のリムR」の外周側に意匠面は存在しないから、「筒状のリムR」は、意匠面から突出しているといえず、そもそも突起の態様をしていない。
また、「ディスクDの車両外側の面」と「筒状のリムR」との間には空間は、存在していない。
令和2年5月26日付けの意見書の4ページ22~25行において、特許異議申立人は、「甲第5号証の写真から認識できる光沢や見栄えから、リムRの内周部とディスクDの外周部との境目に、深い溝状の空間Kが形成されていることが看取でき、この空間Kは、各スポークSの研磨面S1と『突起』であるリムRの内周部との間に位置している。」と主張する。
しかしながら、上記のとおり「筒状リムR」は突起の態様をしておらず、リムRは突起ではないから、リムRの内周部も突起ではない。
また、甲第1号証(引用文献1)や甲第5号証の写真において、リムRの内周部とディスクDの外周部との境目は、これらの部品の装着部分であると理解でき、装着部分にわざわざ空間を設けるようなことはしない(このことは、技術常識である。)から、当該境目に、特許異議申立人が主張する空間K(凹部)は存在していないと理解できる。
したがって、特許異議申立人の上記主張を採用することはできず、引用文献1は、「意匠面は、研磨面よりも車両外側に突出している突起を有しており、前記研磨面と前記突起との間には空間がある」構成を備えていないから、引用発明を、当該構成を有するものとして認定することはできない。
(イ)
引用文献2~4には、車両用ホールに関する技術が記載されているところ、引用文献2は、平坦な意匠面に浅い凹凸を形成するものであるが、研磨面を備えておらず(摘記(2a)参照)、引用文献3は、意匠面に溝や凹凸を設けるものであるが、研磨面を備えておらず(摘記(3b)参照)、引用文献4は、ショットブラスト行程を有する意匠面の表面処理に関するものであり(摘記(4a)、(4c)参照)、上記相違点3-3に係る本件発明3の構成、すなわち、「意匠面は、研磨面よりも車両外側に突出している突起を有しており、前記研磨面と前記突起との間には空間がある」構成は、上記のいずれの引用文献にも記載も示唆もされていない。
引用文献3(摘記(3b)、図5~9(摘記(3c))参照)について補足すると、図5~6において、レーザマーキング部222は、凸部220に対して一部しか存在しておらず、本件発明3の空間に対応するとはいえなし、図8の凸部420は主表面424から突出するものではないし、図9の主表面524は突起を備えていないから、上記の上記相違点3-3に係る本件発明3の構成を備えるものではない。
(ウ)
上記(ア)及び(イ)から、引用発明に引用文献2~4に記載された技術を適用しても、上記相違点3-3に係る本件発明3の構成にはならない。
エ 小括
したがって、本件発明3は、引用発明及び引用文献2~4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2-2-2 本件発明4について
本件発明4は、上記第2で述べたとおり、本件訂正により、本件発明3の発明特定事項を全て備えるものとなったから、上記2-2-1と同様に、本件発明4は、引用発明及び引用文献2~4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2-2-3 本件発明5について
(1)対比
本件発明5と引用発明とを対比する。
上記2-2-1(1)ア~オと同様である。
以上から、本件発明5と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点5>
「筒状のリム部と、前記リム部の内側に設けられているディスク部とを備える車両用ホイールであって、
前記リム部の車両外側の面および前記ディスク部の車両外側の面から構成されている意匠面の一部は、研磨面を有しており、
前記研磨面の周囲に形成された面のうち、少なくとも前記研磨面の縁に接続している接続部分は、前記研磨面に対して車両内側に位置している車両用ホイール。」
<相違点5-1>
「車両用ホイール」が、本件発明5は、「軽合金製の」車両用ホイールであるのに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。
<相違点5-2>
本件発明5は、「前記研磨面は、平坦な面であり、前記車両用ホイールの回転方向と交差する多数の研磨筋目が形成されている」構成を備えるのに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。
<相違点5-3>
本件発明5は、「前記意匠面は、前記車両用ホイールの回転軸心に垂直な同一平面上において周方向に並ぶ前記研磨面および切削面を有しており、前記研磨面と前記切削面との間には空間がある」構成を備えるのに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。
(2)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点5-1及び5-2について
相違点5-1及び相違点5-2は、相違点3-1及び相違点3-2と同様であるから、それぞれ、上記2-2-1(2)ア及びイと同様である。
イ 相違点5-3について
(ア)
引用文献2~4には、車両用ホールに関する技術が記載されているところ、引用文献2は、平坦な意匠面に浅い凹凸を形成するものであるが、研磨面及び切削面を備えておらず(摘記(2a)参照)、引用文献3は、意匠面に溝や凹凸を設けるものであるが、研磨面及び切削面を備えておらず(摘記(3b)参照)、引用文献4は、ショットブラスト行程を有する意匠面の表面処理に関するものであり(摘記(4a)、(4c)参照)、上記相違点3-3に係る本件発明3の構成、すなわち、「前記意匠面は、前記車両用ホイールの回転軸心に垂直な同一平面上において周方向に並ぶ前記研磨面および切削面を有しており、前記研磨面と前記切削面との間には空間がある」構成は、上記のいずれの引用文献にも記載も示唆もされていない。
(イ)
引用文献1において(特に意匠面において)切削面を特定することはできないから、引用発明において、研磨面と切削面の位置の関係を特定することはできないし、上記(ア)で述べたとおりである(特に、研磨面と切削面との間には空間がある構成は、上記のいずれの引用文献にも記載も示唆もされていない。)から、引用発明に引用文献2~4に記載された技術を適用しても、上記相違点5-3に係る本件発明5の構成にはならない。
ウ 小括
したがって、本件発明5は、引用発明及び引用文献2~4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2-2-4 まとめ
したがって、本件発明3~5は、引用発明及び引用文献2~4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件発明3~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項3~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項3~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項1、2及び6に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項1、2及び6に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-700736