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特許異議申立

2024-700427

キャスター

審判番号
2024-700427
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-078764
登録番号
7373877
請求日
2024年05月07日
審決日
2024年07月16日
公報発行日
2024年08月30日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社日乃本錠前
  • 【権利者代理人】弁理士法人英知国際特許商標事務所
  • 【異議申立人】木村 いずみ
審判長/審判官
  • 審判長 山本 信平
  • 審判官 北村 亮
  • 審判官 青木 良憲
分類
P1651.121-Y (B60B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7373877号発明「キャスター」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7373877号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7373877号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和5年5月11日を出願日として出願され、令和5年10月26日にその特許権の設定登録がされ、令和5年11月6日に特許掲載公報が発行された。その後、令和6年5月7日に特許異議申立人 木村 いずみ(以下、「申立人」という。)により、請求項1~4に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 請求項1~4に係る発明(以下、請求項1~4に係る発明をそれぞれ「本件発明1」、「本件発明2」、「本件発明3」、「本件発明4」といい、請求項1~4に係る発明をまとめて「本件発明」ということがある。)は、請求項1~4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 被取付体の底部に取り付けられる基台部と、 前記基台部の下部に旋回可能に設けられる本体部と、 前記本体部に緩衝部材を介して設けられる左右一対の車輪と、 を備えたキャスターであって、 前記本体部は、 前記本体部の上面に形成された開口部で開口する略鉛直状に延びる収容凹部と、 前記収容凹部の下部に連通するとともに、前記本体部の左右の側面に貫通する縦長の長孔と、を有し、 前記緩衝部材は、 前記収容凹部内に上下動可能に支持される第1可動部材と、 前記開口部を閉塞する閉塞部材と、 前記第1可動部材と前記閉塞部材との間に配置される弾性体と、を有し、 前記左右一対の車輪は、前記長孔に挿通された車軸の左右の端部にそれぞれ回動自在に連結されるとともに、前記車軸の中央部は、前記第1可動部材に形成された貫通孔に支持され、 上下方向に延びる板状のカバー体と、前記カバー体の内側面から略水平方向に延びる内側円筒部と、を有する左右一対の第2可動部材をさらに備え、 前記第2可動部材は、前記カバー体及び前記内側円筒部に形成された略水平方向に貫通する軸支孔を有するとともに、この軸支孔で前記車軸を挿通して支持し、 前記内側円筒部は、前記本体部の前記長孔に対して上下動可能に設けられるとともに、前記カバー体は、前記長孔を前記側面側から覆うように設けられる ことを特徴とするキャスター。 【請求項2】 前記本体部には、前記側面と前記収容凹部の内面とを水平に貫通する本体側貫通孔が形成され、 前記閉塞部材には、前記本体側貫通孔に連通する閉塞部材側貫通孔が形成され、 前記閉塞部材は、前記閉塞部材側貫通孔と前記本体側貫通孔に挿通された連結ピンにより前記開口部に固定される ことを特徴とする請求項1項記載のキャスター。 【請求項3】 前記内側円筒部の先端部は、前記第1可動部材に形成された前記貫通孔に嵌め合わされて固定されている ことを特徴とする請求項1又は2記載のキャスター。 【請求項4】 前記本体部の前記側面には、前記長孔を取り囲むように凹状に形成された縦長の案内溝が形成されており、 前記カバー体は、前記案内溝に収容されるとともに、上下方向にスライド可能に案内支持されることを特徴とする請求項3記載のキャスター。」 第3 申立理由について 申立理由の概要は以下のとおりである。 1 申立理由1 請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 2 申立理由2 請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 3 申立理由3 請求項3及び4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3及び4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 4 証拠方法 甲第1号証:登録実用新案第3176328号公報 甲第2号証:登録実用新案第3067668号公報 甲第3号証:特開平11-123904号公報 甲第4号証:実願平3-33509号(実開平4-120499号)のマイクロフィルム 甲第5号証:登録実用新案第3195358号公報 甲第6号証:特開平9-156303号公報 第4 各甲号証について 1 甲第1号証:登録実用新案第3176328号公報 (1)甲第1号証の記載事項(下線は当審で付した。以下同様。) ア「【0013】 以下、本考案を実施するための形態について、図1ないし図6を参照しながら説明する。図1は本考案におけるキャスターの模式的な側面断面図、図2は図1のX-X線における模式的な断面図、図3はキャスターヘッドの模式的な断面図、図4はガイド部材を示す斜視図、図5,6はキャスターの動作説明図である。図1,2において、1は本考案の一実施形態のキャスターであり、前記キャスター1は、図1,2に1点鎖線で示す鞄等のボディB底面に固定されるベース2と、前記ベース2に回転自在に取付けられるキャスターヘッド3と、前記キャスターヘッド3に回転可能に軸支される車輪5とによって構成されている。図1に示す2aはベース2から垂下・突出する支軸であり、その基端部はベース2に埋設されている。また、図1及び図3(a)に示す3aはキャスターヘッド3にその垂直方向に沿って穿孔された挿通孔であり、この挿通孔3aにベース2の支軸2aを挿通することにより、キャスターヘッド3はベース2に対して回転自在に取付けられる。 【0014】 図1ないし図3において、4はキャスターヘッド3に付設した緩衝手段である。緩衝手段4は、図1ないし図3で示すように、キャスターヘッド3と一体的に形成した中空状の収納部41と、前記収納部41内に収納されるガイド部材42及び上部,下部の各弾性部材43,44によって構成されている。収納部41の側壁(図3(b)の左右における壁)には、高さ方向(垂直方向)に沿って縦長な長孔41aが設けられている。ガイド部材42は、図4で示すように、水平方向に延びる中空状の円筒部42aと、前記円筒部42aから直交方向(上下方向)に突設された円柱状の固定部42b,42cとを備えて略十字状に形成されている。そして、前記ガイド部材42は、円筒部42aの両端を収納部41側壁の長孔41aから外方へ突出させた状態で前記収納部41内に収納されており、前記長孔41aに沿って垂直方向に昇降可能となっている。 【0015】 上部弾性部材43はコイルばねからなり、図1,2で示すように、ガイド部材42上方において、その上端を収納部41上部から垂設した固定部41bに、下端をガイド部材42上部の固定部42bにそれぞれ固定した状態で伸縮可能に介挿されている。また、下部弾性部材44は、上部弾性部材43よりも寸法の短いコイルばねからなり、図1,2で示すように、ガイド部材42下方において、その上端をガイド部材42下部の固定部42cに、下端を収納部41下部から上向きに突設した固定部41cにそれぞれ固定した状態で伸縮可能に介挿されている。即ち、ガイド部材42は、上部及び下部弾性部材43,44によって上下方向から支承された状態で収納部41内に収納され、前記上部及び下部弾性部材43,44の弾性力によるつり合いが取れた位置において保持される。なお、前記上部及び下部弾性部材43,44としては、コイルばねを用いるのが最も好ましいが、下部弾性部材44は、上部弾性部材43の弾性力により下方に付勢されるガイド部材42を緩衝的に受け止めることが可能であれば、コイルばね以外の部材(例えばゴム等)を用いるようにしてもよい。 【0016】 なお、車輪5が固定される車軸5aを、上部及び下部弾性部材43,44によって上下方向から支承されるガイド部材42の円筒部42aに回転可能に挿通することにより、前記車輪5はキャスターヘッド3に対し回転可能に、かつ緩衝的に軸支される。」 イ「【0022】 なお、本考案においては、ベース2に基端部を埋設した支軸2aに対し、キャスターヘッド3を回転自在に取付けたキャスター1に実施した場合を一例として説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、ベースを有することなく、支軸を直接鞄等のボディ底面に固定可能としたキャスターに実施した場合でも同様の効果を発揮する。また、本考案においては、双輪式のキャスター1に実施した場合を一例として説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、単輪式のキャスター等に実施した場合でも同様の効果を発揮する。」 ウ 「 [図:0001413375000001.jpg] 」図1 エ「 [図:0001413375000002.jpg] 」図2 オ「 [図:0001413375000003.jpg] 」図3 カ「 [図:0001413375000004.jpg] 」図4 キ 上記アの【0013】及びウの【図1】からみて、キャスターヘッド3は、ベース2から垂下・突出する支軸2aを挿通することによりベース2に回転自在に取り付けられることが記載されているから、キャスターヘッド3はベース2の下部に回転自在に取付けられると認められる。 ク 上記アの【0014】並びにウの【図1】、エの【図2】及びオの【図3】からみて、キャスターヘッド3は略鉛直状に延びる収納部41を有すると認められる。 ケ 上記アの【0014】並びにエの【図2】及びオの【図3】からみて、長孔41aは、収納部41の高さ方向のほぼ全てに亘って形成されていることから、少なくとも収納部41の下部と連通し、収納部41と一体に形成されたキャスターヘッド3の左右側面を縦長に貫通していると認められる。 コ 上記イの【0022】及びエの【図2】からみて、双輪式のキャスター1はキャスターヘッド3を介して左右一対の車輪5が設けられると認められる。 (2)甲第1号証に記載された発明 甲第1号証には、上記(1)からみて、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「鞄等のボディB底面に固定されるベース2と、 前記ベース2の下部に回転自在に取り付けられるキャスターヘッド3と、 前記キャスターヘッド3に緩衝手段4を介して設けられる左右一対の車輪5と、 を備えたキャスター1であって、 前記キャスターヘッド3は、 略鉛直状に延びる収納部41と、 前記収納部41の下部に連通するとともに、前記キャスターヘッド3の左右の側面に貫通する縦長の長孔41aと、を有し、 前記緩衝手段4は、 前記収納部41内に垂直方向に昇降可能に収納されるガイド部材42と、 前記ガイド部材42と収納部41上部から垂設した固定部41bとの間に配置される弾性部材43と、を有し、 前記左右一対の車輪5は、前記長孔41aに挿通された車軸5aの左右の端部にそれぞれ固定されるとともに、前記車軸5aの中央部は、前記ガイド部材42に備えられた円筒部42aに軸支されるキャスター1。」 2 甲第2号証:登録実用新案第3067668号公報 甲第2号証(【0001】、【0007】等)には、以下の技術的事項(以下、「甲2技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「スリーブ10内には上端部に開口部を有する鉛直状に伸びる収容部が形成され、収容部内にはコイルスプリング9により緩衝されるキャスター軸3が配置され、開口部はキャップボルト11で閉塞するように構成されている車椅子用キャスター。」 3 甲第3号証:特開平11-123904号公報 甲第3号証(【0008】~【0014】、【0023】、【0031】、【図1】、【図2】、【図5】等)は、以下の技術的事項(以下、「甲3技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「キャスター1の支持ヨーク3の左右の側壁部30に穿設された略長方形状の長孔31に摺動子33が前後に摺動可能に取り付けられており、一対の摺動子33は車輪5をカラー7を介して軸支する車軸4の両端に固定され、長孔31と摺動子33との間にはコイルスプリングSが介設され、摺動子33を常時、長孔31の前方向側へ付勢し、前後方向に移動する摺動子に車輪を取り付けることによって、車輪に加わる外的衝撃力で後方へかかる力を付勢手段で受けて緩衝する技術。」 4 甲第4号証:実願平3-33509号(実開平4-120499号)のマイクロフィルム 甲第4号証(【0009】、【図1】等)には、以下の技術的事項(以下、「甲4技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「ヒンジブラケット部10c、10cは灰皿本体10の側面と内面とを水平に貫通するヒンジ孔を有する技術。」 5 甲第5号証:登録実用新案第3195358号公報 甲第5号証(段落【0001】、【0020】、【0021】、【0023】、【0025】、【0028】、【0032】、【図1】~【図3】等)には、以下の技術的事項(以下、「甲5技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「移動体に装着されるキャスタであって、車軸12を支持する軸受部材3及び切り替え部材4が、緩衝部材である圧縮コイルばね5と共に略鉛直状に延びる収容凹部(フレーム穴部2c)に収納され、フレーム2の上面に形成された孔部には、切り替え部材4が下方から上動しないように当て止めされており、さらに上方からダイヤル6が切替部材4に固定されることにより孔部を閉塞しており、使用に際しては車輪11からの接地面の凹凸の入力により圧縮コイルバネ5が伸縮し、衝撃を緩衝し、ブレーキ部2dに接触した場合には、環状のブレーキ凹部11aが作用して車輪11にブレーキをかけるように構成されたキャスタ。」 6 甲第6号証:特開平9-156303号公報 甲第6号証(段落【0001】、【0020】、【0021】、【0023】、【0025】、【0028】、【0032】、【図1】~【図3】等)には、以下の技術的事項(以下、「甲6技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「円盤形状の防塵カバー3を備えた車輪4を回転自在に取り付けた防塵カバー付キャスターにおいて、前記防塵カバー3を車輪4の左右両側にブッシュを介在させて装着した防塵カバー付きキャスター。」 第5 当審の判断 1 申立理由(進歩性)について (1)本件発明1について ア 甲第1号証に記載された発明との対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明における「鞄等のボディB底面」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件発明1における「被取付体の底部」に相当し、同様に、「固定される」は、「取り付けられる」に、「ベース2」は、「基台部」に、「回転自在」は、「旋回可能」に、「取り付けられる」は、「設けられる」に、「キャスターヘッド3」は、「本体部」に、「緩衝手段4」は、「緩衝部材」に、「車輪5」は、「車輪」に、「キャスター1」は、「キャスター」に、「収納部41」は、「収容凹部」に、「縦長な長孔41a」は、「縦長の長孔」に、「垂直方向に昇降可能に収納される」は、「上下動可能に支持される」に、「ガイド部材42」は、「第1可動部材」に、「弾性部材43」は、「弾性体」に、「車軸5a」は、「車軸」に、「固定される」は、「連結される」に、「備えられた」は、「形成された」に、「円筒部42a」は、「貫通孔」に、「軸支」は、「支持」に、それぞれ相当する。 また、甲1発明における「前記ガイド部材42と収納部41上部から垂設した固定部41bとの間に配置される弾性部材43」は、収容凹部41上部から垂設した固定部41bが収納部41内の弾性部材43の上部を支持する支持部であると認められるから、本件発明1の「前記第1可動部材と前記閉塞部材との間に配置される弾性体」と「前記第1可動部材と支持部との間に配置される弾性体」という限りにおいて共通する。 (イ)一致点、相違点 したがって、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点で一致し、相違点1~3で相違する。 一致点 「被取付体の底部に取り付けられる基台部と、 前記基台部の下部に旋回可能に設けられる本体部と、 前記本体部に緩衝部材を介して設けられる左右一対の車輪と、 を備えたキャスターであって、 前記本体部は、 略鉛直状に延びる収容凹部と、 前記収容凹部の下部に連通するとともに、前記本体部の左右の側面に貫通する縦長の長孔と、を有し、 前記緩衝部材は、 前記収容凹部内に上下動可能に支持される第1可動部材と、 前記第1可動部材と支持部との間に配置される弾性体と、を有し、 前記左右一対の車輪は、前記長孔に挿通された車軸の左右の端部にそれぞれ回動自在に連結されるとともに、前記車軸の中央部は、前記第1可動部材に形成された貫通孔に支持されるキャスター。」 相違点1 本件発明1は、収容凹部が、本体部の上面に形成された開口部と、前記開口部を閉塞する閉塞部材とを備え、弾性体が第1可動部材と前記閉塞部材との間に配置されるのに対し、甲1発明では、収納部41の上面に開口部が形成されず、閉塞部材を備えていないから、弾性体が前記第1可動部材と前記閉塞部材との間に配置されていない点。 相違点2 本件発明1は、上下方向に延びる板状のカバー体と、前記カバー体の内側面から略水平方向に延びる内側円筒部と、を有する左右一対の第2可動部材をさらに備えているのに対し、甲1発明では、そのような部材を備えていない点。 相違点3 本件発明1は、前記第2可動部材は、前記カバー体及び前記内側円筒部に形成された略水平方向に貫通する軸支孔を有するとともに、この軸支孔で前記車軸を挿通して支持し、前記内側円筒部は、前記本体部の前記長孔に対して上下動可能に設けられるとともに、前記カバー体は、前記長孔を前記側面側から覆うように設けられるのに対し、甲1発明は、第2可動部材を設けていないから長孔を前記側面側から覆うカバー体を備えていない点。 イ 判断 事案に鑑み、上記相違点2について検討する。 甲3技術的事項は上記第4の3のとおりであるが、甲第3号証の【0011】~【0015】並びに【図1】、【図2】及び【図5】からみて、甲3技術的事項の「摺動子33」、「コイルスプリングS」は、本件発明1の「第1可動部材31」、「弾性体32」にそれぞれ相当する。そして摺動子33の内側面には係止片7a、8aを介してカラー7、8が係止され、カラー7、8には車輪が軸支される。 甲1発明において、ガイド部材42及び弾性部材43に代えて甲3技術的事項の摺動子33及びコイルスプリングSを適用することの可否を検討する。 甲1発明のガイド部材42及び弾性部材43は、収納部41内にそれぞれ一つ配置され、その左右端部に車輪5が配置されているのに対し、甲3技術的事項の摺動子33及びコイルスプリングSはキャスターの左右に一対配置され、互いの内側に車輪が配置されている。甲1発明と甲3技術的事項とはキャスターに対する車輪の位置が異なっており、甲1発明におけるガイド部材42に甲3技術的事項における摺動子33を適用しようとすると、甲3技術的事項において車輪が配置されるカラー7、8がキャスターに対して内側に配置され、キャスターの外側で車輪を保持できず、甲1発明が機能しなくなるから、甲1発明に甲3技術的事項を適用することには阻害要因がある。 次に、仮に車輪の配置による阻害要因がないものとして、甲1発明のガイド部材42に加えて、甲3技術的事項の摺動子33を適用することの可否を検討する。 甲1発明のガイド部材42を付勢する弾性部材43は、側壁に長孔41aが設けられた収納部41内に配置されているのに対し、甲3技術的事項の摺動子33を付勢するコイルスプリングSは、支持ヨーク3の左右端部に位置する長孔31内に配置されている。甲1発明に甲3技術的事項を適用した構成では、甲3技術的事項の摺動子33及びコイルスプリングSは、甲1発明における収納部41の側壁に設けられた長孔41a内に配置されることになるが、その場合、甲1発明の弾性部材43及び甲3技術的事項のコイルスプリングSは外部に露出された状態となる。 ここで、甲第6号証(特開平9-156303号公報)により「キャスターにおいて防塵することにより各種機能を維持する」という課題及び課題解決のための構成が従来より周知技術として存在するとしても、甲第3号証には、キャスターを防塵することに関する記載はないし、摺動子33をキャスター内部を防塵する手段として用いることの記載もなく、摺動子33をキャスター内部を防塵する手段として機能しているとも認められないから、甲3技術的事項の摺動子33を甲1発明においてキャスター内部を防塵する手段として用いる動機付けはない。また、甲3技術的事項では、摺動子33はスプリングSによって付勢力が付与されており、それによって車輪5に加わる外的な衝撃力を緩衝している。そうすると、甲3技術的事項における摺動子33は、甲1発明におけるガイド部材42と同様の機能を担っているから、甲1発明において、ガイド部材42の外側に長孔41aに沿って摺動子33及び外部に露出されたコイルスプリングSを追加して配置することは、当業者であれば通常行わない事項である。 以上から、甲1発明に甲3技術的事項を適用して上記相違点2に係る本件特許の発明特定事項は、当業者といえども容易に想到し得たことではない。さらに、上記相違点2に係る本件特許の発明特定事項は、本件特許の出願前に周知の技術ではなく、当業者が適宜なし得た設計的事項でもない。 また、上記第4の2のとおり、甲2技術的事項は、本件発明1の板状のカバー体と内側円筒部とを有する左右一対の第2可動部材に相当する部材を備えるものではない。 同様に上記第4の5のとおり、甲5技術的事項における軸受部材3は、圧縮コイルばね5によって付勢され、車輪軸12を支持する部材であるが、板状のカバー体を有していないし、左右一対配置されていない。また甲5技術的事項における切り替え部材4は、甲第5号証の図1から湾曲された板状の凸部4aを一対備えることが見て取れるが、内側円筒部を備えていない。したがって、甲5技術的事項は、本件発明1の板状のカバー体と内側円筒部とを有する左右一対の第2可動部材に相当する部材を備えるものではない。 以上から、甲1発明に甲2技術的事項または甲5技術的事項を適用したとしても上記相違点2に係る本件特許の発明特定事項は、当業者といえども容易に想到し得たことではない。 ウ 小括 したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2) 本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに本件発明2~本件発明4で新たに特定される発明特定事項を含むものである。 そして、本件発明1に対して述べた理由に加えて、上記第4の4のとおり、甲4技術的事項は、本件発明1の板状のカバー体と内側円筒部とを有する左右一対の第2可動部材に相当する部材を備えるものではないから、甲1発明に甲4技術的事項を適用したとしても上記相違点2に係る本件特許の発明特定事項は、当業者といえども容易に想到し得たことではない。 したがって、本件発明2~4は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明~甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700427

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