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特許異議申立

2019-700368

水媒性エポキシ樹脂分散物およびエポキシ硬化剤組成物

審判番号
2019-700368
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2014-561178外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年05月07日
審決日
2019年11月25日
公報発行日
2021年05月28日
結論
請求成立(取消)
当事者
審判長/審判官
分類
P1652.113-ZC (C08L) / P1652.121-ZC (C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第113条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6419579号発明「水媒性エポキシ樹脂分散物およびエポキシ硬化剤組成物」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6419579号の請求項1~6,9~19及び22に係る特許を取り消す。 特許第6419579号の請求項8及び21に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6419579号(請求項の数22。以下,「本件特許」という。)は,平成25年3月9日(パリ条約による優先権主張:平成24年3月9日,米国(US),平成25年3月9日,米国(US))を国際出願日とする特許出願(特願2014-561178号)に係るものであって,平成30年10月19日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は,平成30年11月7日である。)。 その後,令和1年5月7日に,本件特許の請求項1~6,8~19,21及び22に係る特許に対して,特許異議申立人である藤井朋子(以下,「申立人」という。)により,特許異議の申立てがされた。 当審は,令和1年7月16日付けで取消理由を通知し,期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが,特許権者は応答しなかった。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~22に係る発明は,本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~22に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下,それぞれ「本件発明1」等という。また,本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。 【請求項1】 (a)少なくとも1種類のエポキシ樹脂;および (b)前記エポキシ樹脂に基づいて0.1から20重量パーセントまでの界面活性剤を含み, 前記界面活性剤が,ジスチリルフェノール,トリスチリルフェノール,ポリスチレン化フェノール,クミルフェノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される疎水性物質のエトキシ化の後,陰イオン性末端基を生成して得られたものであり, 前記エトキシ化によりエチレンオキシドに由来する単位が1~200付加され, 前記陰イオン性末端基はサルフェート,ホスフェートからなる群から選択される,エポキシ組成物。 【請求項2】 前記陰イオン性末端基がサルフェートであり,対イオンがアンモニウムである請求項1に記載のエポキシ組成物。 【請求項3】 前記エポキシ樹脂がビスフェノールAエポキシ,ビスフェノールAPエポキシ,ビスフェノールAFエポキシ,ビスフェノールBエポキシ,ビスフェノールBPエポキシ,ビスフェノールCエポキシ,ビスフェノールEエポキシ,ビスフェノールFエポキシ,ビスフェノールGエポキシ,ビスフェノールMエポキシ,ビスフェノールSエポキシ,ビスフェノールPエポキシ,ビスフェノールPHエポキシ,ビスフェノールTMCエポキシ,ビスフェノールZエポキシおよびそれらの混合物からなる群から選択される,請求項1または2に記載のエポキシ組成物。 【請求項4】 前記エポキシ樹脂がエポキシアルキド,エポキシアクリル,エポキシシリコン,エポキシシラン,エポキシポリウレタン,およびエポキシポリ尿素からなる群から選択されるエポキシハイブリッドである,請求項1~3のいずれか一項に記載のエポキシ組成物。 【請求項5】 請求項1~4のいずれか一項に記載のエポキシ組成物を含むコーティング組成物。 【請求項6】 請求項1~4のいずれか一項に記載のエポキシ組成物を含む接着剤組成物。 【請求項7】 請求項1~4のいずれか一項に記載のエポキシ組成物を含む給湿組成物。 【請求項8】 請求項1~4のいずれか一項に記載のエポキシ組成物を含む埋込み用組成物。 【請求項9】 請求項1~4のいずれか一項に記載のエポキシ組成物を含むエポキシコンクリートセメント組成物。 【請求項10】 (a)少なくとも1種類のエポキシ硬化剤;および (b)界面活性剤: を含み, 前記界面活性剤が,ジスチリルフェノール,トリスチリルフェノール,ポリスチレン化フェノール,クミルフェノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される疎水性化合物のエトキシ化の後,陰イオン性末端基を生成して得られたものであり, 前記エトキシ化によりエチレンオキシドに由来する単位が1~200付加され, 前記陰イオン性末端基はサルフェート,ホスフェートからなる群から選択される,エポキシ硬化剤組成物。 【請求項11】 前記陰イオン性末端基がサルフェートであり,対イオンがアンモニウムである請求項10に記載のエポキシ硬化剤組成物。 【請求項12】 請求項10または11に記載の組成物であって,前記エポキシ硬化剤がアミドアミン類,ポリアミド類,脂肪族アミン類,修飾脂肪族アミン類,環状脂肪族アミン類,芳香族アミン類,無水物,ケチミン類からなる群から選択される,前記エポキシ硬化剤組成物。 【請求項13】 さらにエポキシ樹脂を含む請求項10~12のいずれか一項に記載のエポキシ硬化剤組成物。 【請求項14】 前記エポキシ樹脂がエポキシハイブリッドである,請求項13に記載のエポキシ硬化剤組成物。 【請求項15】 前記エポキシハイブリッドがエポキシアルキド,エポキシアクリル,エポキシシリコン,エポキシシラン,エポキシポリウレタン,およびエポキシポリ尿素からなる群から選択される,請求項14に記載のエポキシ硬化剤組成物。 【請求項16】 前記エポキシ樹脂が水媒性である請求項13~15のいずれか一項に記載のエポキシ硬化剤組成物。 【請求項17】 さらに水を含み,かつ5%から99.99%までの固形分を含む請求項10~16のいずれか一項に記載のエポキシ硬化剤組成物。 【請求項18】 請求項10~17のいずれか一項に記載のエポキシ硬化剤組成物を含むコーティング組成物。 【請求項19】 請求項10~17のいずれか一項に記載のエポキシ硬化剤組成物を含む接着剤組成物。 【請求項20】 請求項10~17のいずれか一項に記載のエポキシ硬化剤組成物を含む給湿組成物。 【請求項21】 請求項10~17のいずれか一項に記載のエポキシ硬化剤組成物を含む埋込み用組成物。 【請求項22】 請求項10~17のいずれか一項に記載のエポキシ硬化剤組成物を含むエポキシコンクリートセメント組成物。 第3 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要 1 特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由 本件特許の請求項1~6,8~19,21及び22に係る特許は,下記(1)及び(2)のとおり,特許法113条2号に該当する。証拠方法として,下記(3)の甲第1号証~甲第14号証(以下,単に「甲1」等という。)及び参考文献1~5を提出する。 (1)申立理由1(新規性) 本件発明1~6,9~19及び22は,甲1~6のいずれかに記載された発明であり,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1~6,9~19及び22に係る特許は,同法113条2号に該当する。 (2)申立理由2(進歩性) 本件発明1~6,8~19,21及び22は,甲1~6のいずれかに記載された発明及び甲1~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1~6,8~19,21及び22に係る特許は,同法113条2号に該当する。 (3)証拠方法 ・甲1 特開平1-236283号公報 ・甲2 特開2001-11422号公報 ・甲3 特開2009-292923号公報 ・甲4 特開2010-247070号公報 ・甲5 特開2010-90323号公報 ・甲6 特開2004-224979号公報 ・甲7 国際公開第2009/144955号 ・甲8 「プラスチック・機能性高分子材料事典」,産業調査会事典出版センター,2004年2月20日,p.448-465 ・甲9 特開昭62-259832号公報 ・甲10 「プラスチック材料技術読本」,日刊工業新聞社,1999年4月30日,p.162-165 ・甲11 特開平11-13150号公報 ・甲12 特開平10-56267号公報 ・甲13 特開昭48-81998号公報 ・甲14 特開昭51-13896号公報 ・参考文献1 国際公開第2010/041750号 ・参考文献2 特開2006-219511号公報 ・参考文献3 特開2005-179435号公報 ・参考文献4 特開平5-51570号公報 ・参考文献5 特開2002-234917号公報 2 取消理由通知書に記載した取消理由 (1)取消理由1(新規性) 上記1(1)の申立理由1(新規性)と同旨。 なお,当審における職権調査により発見した参考資料は,以下のとおりである。 ・参考資料1 「Industrial Surfactants 産業用界面活性剤 総合カタログ」,第一工業製薬株式会社,p.5-6 ・参考資料2 特開2004-224979号公報 第4 当審の判断 以下に述べるように,本件発明1~6,9~19及び22は,甲1~6のいずれかに記載された発明であり,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1~6,9~19及び22に係る特許は,同法113条2号に該当し,取り消すべきものである。 また,特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項8及び21に係る特許を取り消すことはできない。 1 取消理由1-1(甲1に基づく新規性) (1)甲1に記載された発明 甲1の記載(特許請求の範囲,1頁右下欄16~20行,2頁左上欄8行~右下欄11行,3頁左下欄14行~右下欄10行,3頁右下欄16行~4頁右上欄10行,実施例2,第1表)によれば,特に実施例2の下塗層に着目すると,甲1には,以下の発明が記載されていると認められる。 「ビスフェノールA型828エポキシ樹脂と,アクアトート 5520(ウレタン変性エポキシエマルジョン(東都化成社製))とからなる,エポキシ樹脂 13重量部, ポリアミドアミンからなる硬化剤 7重量部, 普通ポルトランドセメントからなるセメント 40重量部, 硅砂8号からなる骨材 40重量部, ハイテノールNF13(第一工業製薬社製)からなる乳化剤 0.5重量部, ノニオン系界面活性剤(DRA1500(東邦化学工業社製))からなる界面活性剤 5.0重量部, プロナール502(東邦化学工業社製)からなる消泡剤 1.5重量部 ハイメトローズ(信越化学社製)溶液からなる増粘剤 18.0重量部 パリックT(藤沢薬品工業社製)からなる遅延剤 0.5重量部 水 14.0重量部 を含む,上塗層と下塗層とからなる複層防錆塗膜における下塗層。」(以下,「甲1発明」という。) (2)本件発明1について 本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明における「ビスフェノールA型828エポキシ樹脂と,アクアトート 5520(ウレタン変性エポキシエマルジョン(東都化成社製))とからなる,エポキシ樹脂」は,本件発明1における「エポキシ樹脂」に相当する。 甲1発明における「上塗層と下塗層とからなる複層防錆塗膜における下塗層」は,エポキシ樹脂を含む組成物からなるものといえるから,本件発明1における「エポキシ組成物」に相当する。 甲1発明における「ハイテノールNF13(第一工業製薬社製)からなる乳化剤」は,参考資料1によれば,アニオン界面活性剤であり,その化学構造からみて,本件発明1における「ジスチリルフェノール,トリスチリルフェノール,ポリスチレン化フェノール,クミルフェノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される疎水性物質のエトキシ化の後,陰イオン性末端基を生成して得られたものであり,前記エトキシ化によりエチレンオキシドに由来する単位が1~200付加され,前記陰イオン性末端基はサルフェート,ホスフェートからなる群から選択される,」「界面活性剤」に相当するといえる。 そして,甲1発明における「ハイテノールNF13(第一工業製薬社製)からなる乳化剤」の含有割合は,エポキシ樹脂を100重量%としたとき,約3.8重量%(=0.5重量部/13重量部×100)であるから,本件発明1における「エポキシ樹脂に基づいて0.1から20重量パーセントまでの界面活性剤を含み」を満たす。 以上によれば,本件発明1と甲1発明との間に,相違する点はない。 したがって,本件発明1は,甲1に記載された発明である。 (3)本件発明2について 甲1発明における「ハイテノールNF13(第一工業製薬社製)からなる乳化剤」は,その化学構造からみて,本件発明2における「陰イオン性末端基がサルフェートであり,対イオンがアンモニウムである」ものに相当するといえる。 したがって,本件発明2は,甲1に記載された発明である。 (4)本件発明3について 甲1発明における「ビスフェノールA型828エポキシ樹脂」は,本件発明3における「ビスフェノールAエポキシ」である「エポキシ樹脂」に相当する。 したがって,本件発明3は,甲1に記載された発明である。 (5)本件発明4について 甲1発明における「アクアトート 5520(ウレタン変性エポキシエマルジョン(東都化成社製))」は,本件発明4における「エポキシポリウレタン」である「エポキシハイブリッド」である「エポキシ樹脂」に相当する。 したがって,本件発明4は,甲1に記載された発明である。 (6)本件発明5について 甲1発明に係る下塗層は,一種のコーティング組成物といえるから,本件発明5における「コーティング組成物」に相当する。 したがって,本件発明5は,甲1に記載された発明である。 (7)本件発明9について 甲1発明に係る下塗層は,「普通ポルトランドセメントからなるセメント」及び「硅砂8号からなる骨材」を含むものであり,一種のエポキシコンクリートセメント組成物といえるから,本件発明9における「エポキシコンクリートセメント組成物」に相当する。 したがって,本件発明9は,甲1に記載された発明である。 (8)本件発明10について 本件発明10と甲1発明とを対比する。 甲1発明における「ポリアミドアミンからなる硬化剤」は,本件発明10における「エポキシ硬化剤」に相当する。 甲1発明における「上塗層と下塗層とからなる複層防錆塗膜における下塗層」は,エポキシ硬化剤を含む組成物からなるものといえるから,本件発明10における「エポキシ硬化剤組成物」に相当する。 甲1発明における「ハイテノールNF13(第一工業製薬社製)からなる乳化剤」は,上記(2)で本件発明1について述べたのと同様の理由により,本件発明10における「ジスチリルフェノール,トリスチリルフェノール,ポリスチレン化フェノール,クミルフェノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される疎水性化合物のエトキシ化の後,陰イオン性末端基を生成して得られたものであり,前記エトキシ化によりエチレンオキシドに由来する単位が1~200付加され,前記陰イオン性末端基はサルフェート,ホスフェートからなる群から選択される,」「界面活性剤」に相当するといえる。 以上によれば,本件発明10と甲1発明との間に,相違する点はない。 したがって,本件発明10は,甲1に記載された発明である。 (9)本件発明11について 甲1発明における「ハイテノールNF13(第一工業製薬社製)からなる乳化剤」は,上記(3)で本件発明2について述べたのと同様の理由により,本件発明11における「陰イオン性末端基がサルフェートであり,対イオンがアンモニウムである」ものに相当するといえる。 したがって,本件発明11は,甲1に記載された発明である。 (10)本件発明12について 甲1発明における「ポリアミドアミンからなる硬化剤」は,本件発明12における「アミドアミン類」である「エポキシ硬化剤」に相当する。 したがって,本件発明12は,甲1に記載された発明である。 (11)本件発明13~15について 甲1発明における「ビスフェノールA型828エポキシ樹脂と,アクアトート 5520(ウレタン変性エポキシエマルジョン(東都化成社製))とからなる,エポキシ樹脂」は,本件発明13における「エポキシ樹脂」に相当する。 甲1発明における「アクアトート 5520(ウレタン変性エポキシエマルジョン(東都化成社製))」は,本件発明14及び15における「エポキシポリウレタン」である「エポキシハイブリッド」である「エポキシ樹脂」に相当する。 したがって,本件発明13~15は,甲1に記載された発明である。 (12)本件発明16及び17について 甲1発明に係る下塗層は,水を含むものであるから,本件発明16における「エポキシ樹脂が水媒性である」ことに相当する。 甲1発明に係る下塗層は,水を含むものであり,また,その組成からみて,本件発明17における「5%から99.99%までの固形分を含む」を満たす。 したがって,本件発明16及び17は,甲1に記載された発明である。 (13)本件発明18について 甲1発明に係る下塗層は,上記(6)で本件発明5について述べたのと同様の理由により,本件発明18における「コーティング組成物」に相当する。 したがって,本件発明18は,甲1に記載された発明である。 (14)本件発明22について 甲1発明に係る下塗層は,上記(7)で本件発明9について述べたのと同様の理由により,本件発明22における「エポキシコンクリートセメント組成物」に相当する。 したがって,本件発明22は,甲1に記載された発明である。 (15)まとめ 本件発明1~5,9~18及び22は,いずれも,甲1に記載された発明であり,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができないものである。 2 取消理由1-2(甲2に基づく新規性) (1)甲2に記載された発明 甲2の記載(請求項1~4,【0004】,【0007】~【0013】,【0017】,【0026】,実施例1,実施例9,表1,表2)によれば,特に実施例9に着目すると,甲2には,以下の発明が記載されていると認められる。 「変成シリコーン樹脂1(鐘淵化学工業製,商品名MSポリマー203)50重量部, 変成シリコーン樹脂2(鐘淵化学工業製,商品名MSポリマー303)50重量部, エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ製,商品名エピコート828)35重量部, 重質炭酸カルシウム(日東粉化製,商品名NS400)100重量部, 表面処理炭酸カルシウム(白石カルシウム製,商品名白艶華CC)50重量部, アニオン系界面活性剤(第一工業製薬製,商品名ハイテノールNF-13,3核体フェノールエトキシレート(エチレンオキサイド4モル付加)硫酸アンモニウム塩)5重量部, エポキシ樹脂用硬化剤としてのケチミン(2,4,12,14-テトラメチル-5,8,11-トリアザ-4,11-ペンタデカン1モルと,スチレンオキサイド1モルを150℃×1時間加熱反応させて得られたもの。)10重量部, ビニルシランカップリング剤(信越化学工業製,商品名KBM1003)5重量部, エポキシシランカップリング剤(信越化学工業製,商品名KBM403)2重量部, 変成シリコーン樹脂用硬化触媒としてのジブチル錫化合物(三共有機合成製,商品名スタン918)2重量部, を含む,1液湿気硬化型接着剤組成物。」(以下,「甲2発明」という。) (2)本件発明1について 本件発明1と甲2発明とを対比する。 甲2発明における「エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ製,商品名エピコート828)」は,本件発明1における「エポキシ樹脂」に相当する。 甲2発明における「1液湿気硬化型接着剤組成物」は,エポキシ樹脂を含む組成物であるから,本件発明1における「エポキシ組成物」に相当する。 甲2発明における「アニオン系界面活性剤(第一工業製薬製,商品名ハイテノールNF-13,3核体フェノールエトキシレート(エチレンオキサイド4モル付加)硫酸アンモニウム塩)」は,参考資料1によれば,その化学構造からみて,本件発明1における「ジスチリルフェノール,トリスチリルフェノール,ポリスチレン化フェノール,クミルフェノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される疎水性物質のエトキシ化の後,陰イオン性末端基を生成して得られたものであり,前記エトキシ化によりエチレンオキシドに由来する単位が1~200付加され,前記陰イオン性末端基はサルフェート,ホスフェートからなる群から選択される,」「界面活性剤」に相当するといえる。 そして,甲2発明における「アニオン系界面活性剤(第一工業製薬製,商品名ハイテノールNF-13,3核体フェノールエトキシレート(エチレンオキサイド4モル付加)硫酸アンモニウム塩)」の含有割合は,エポキシ樹脂を100重量%としたとき,約14.3重量%(=5重量部/35重量部×100)であるから,本件発明1における「エポキシ樹脂に基づいて0.1から20重量パーセントまでの界面活性剤を含み」を満たす。 以上によれば,本件発明1と甲2発明との間に,相違する点はない。 したがって,本件発明1は,甲2に記載された発明である。 (3)本件発明2について 甲2発明における「アニオン系界面活性剤(第一工業製薬製,商品名ハイテノールNF-13,3核体フェノールエトキシレート(エチレンオキサイド4モル付加)硫酸アンモニウム塩)」は,その化学構造からみて,本件発明2における「陰イオン性末端基がサルフェートであり,対イオンがアンモニウムである」ものに相当するといえる。 したがって,本件発明2は,甲2に記載された発明である。 (4)本件発明3について 甲2発明における「エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ製,商品名エピコート828)」は,本件発明3における「ビスフェノールAエポキシ」である「エポキシ樹脂」に相当する。 したがって,本件発明3は,甲2に記載された発明である。 (5)本件発明6について 甲2発明における「1液湿気硬化型接着剤組成物」は,本件発明6における「接着剤組成物」に相当する。 したがって,本件発明6は,甲2に記載された発明である。 (6)本件発明10について 本件発明10と甲2発明とを対比する。 甲2発明における「エポキシ樹脂用硬化剤としてのケチミン(2,4,12,14-テトラメチル-5,8,11-トリアザ-4,11-ペンタデカン1モルと,スチレンオキサイド1モルを150℃×1時間加熱反応させて得られたもの。)」は,本件発明10における「エポキシ硬化剤」に相当する。 甲2発明における「1液湿気硬化型接着剤組成物」は,エポキシ樹脂用硬化剤を含む組成物であるから,本件発明10における「エポキシ硬化剤組成物」に相当する。 甲2発明における「アニオン系界面活性剤(第一工業製薬製,商品名ハイテノールNF-13,3核体フェノールエトキシレート(エチレンオキサイド4モル付加)硫酸アンモニウム塩)」は,上記(2)で本件発明1について述べたのと同様の理由により,本件発明10における「ジスチリルフェノール,トリスチリルフェノール,ポリスチレン化フェノール,クミルフェノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される疎水性化合物のエトキシ化の後,陰イオン性末端基を生成して得られたものであり,前記エトキシ化によりエチレンオキシドに由来する単位が1~200付加され,前記陰イオン性末端基はサルフェート,ホスフェートからなる群から選択される,」「界面活性剤」に相当するといえる。 以上によれば,本件発明10と甲2発明との間に,相違する点はない。 したがって,本件発明10は,甲2に記載された発明である。 (7)本件発明11について 甲2発明における「アニオン系界面活性剤(第一工業製薬製,商品名ハイテノールNF-13,3核体フェノールエトキシレート(エチレンオキサイド4モル付加)硫酸アンモニウム塩)」は,上記(3)で本件発明2について述べたのと同様の理由により,本件発明11における「陰イオン性末端基がサルフェートであり,対イオンがアンモニウムである」ものに相当するといえる。 したがって,本件発明11は,甲2に記載された発明である。 (8)本件発明12について 甲2発明における「エポキシ樹脂用硬化剤としてのケチミン(2,4,12,14-テトラメチル-5,8,11-トリアザ-4,11-ペンタデカン1モルと,スチレンオキサイド1モルを150℃×1時間加熱反応させて得られたもの。)」は,本件発明12における「ケチミン類」である「エポキシ硬化剤」に相当する。 したがって,本件発明12は,甲2に記載された発明である。 (9)本件発明13について 甲2発明における「エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ製,商品名エピコート828)」は,本件発明13における「エポキシ樹脂」に相当する。 したがって,本件発明13は,甲2に記載された発明である。 (10)本件発明19について 甲2発明における「1液湿気硬化型接着剤組成物」は,本件発明19における「接着剤組成物」に相当する。 したがって,本件発明19,甲2に記載された発明である。 (11)まとめ 本件発明1~3,6,10~13及び19は,いずれも,甲2に記載された発明であり,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができないものである。 3 取消理由1-3(甲3に基づく新規性) (1)甲3に記載された発明 甲3の記載(請求項1~3,【0007】,【0009】,【0051】,【0162】,【0163】,【0168】~【0171】,実施例29,実施例31)によれば,特に実施例31に着目すると,甲3には,以下の発明が記載されていると認められる。 「カチオン基を含有する水溶性高分子水溶液として,カチオン基である第一級アミンを含有するアリルアミン重合体(日東紡績株式会社製,商品名:PAA-05)を20.2重量%水溶液としたもの2重量部, カチオン基を含有しない水溶性高分子水溶液として,ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製,商品名:PVA117)を10.6重量%水溶液としたもの35重量部, カチオン基を含有しない水性エマルジョンとして,エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョン(住友化学工業株式会社製,商品名:スミカフレックス400HQ,固形分55.0重量%)28重量部, カチオン基を含有しない水性ラテックスとして,スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス(日本エイアンドエル株式会社製,商品名:SR-130,固形分49.0重量%)10重量部, 充填剤として炭酸カルシウム(東洋ファインケミカル株式会社製,商品名:ホワイトンP-30)25重量部, 該充填剤の分散剤として第四級アンモニウム塩を含むカチオン系分散剤(第一工業製薬株式会社製,商品名:カチオーゲンES-L)0.5重量部, を混合して調製した,主剤に, 硬化剤として,分子内にエポキシ基を2個以上含有するエポキシ化合物である,下記の多官能エポキシ化合物の分散液10重量部を添加,撹拌して,調製,製糊した,水性接着剤組成物。 多官能エポキシ化合物の分散液は,かくはん機,還流冷却器,滴下ロート及び温度計を取り付けた反応容器に水67重量部を投入して,反応容器中の温度を80℃に上げた後,グリシジルメタクリレート(GMA)75重量部,ブチルアクリレート(But-A)75重量部,水125重量部,乳化剤(日本乳化剤株式会社製,商品名:ニューコール707-SF,30重量%水溶液)10重量部からなるモノマー混合物と,過硫酸アンモニウム5重量%水溶液15部とを別々の滴下槽より2時間かけて滴下し,滴下終了後,反応容器中の温度を80℃とし,該温度で1時間重合して得られた,固形分が50重量%であり,B型粘度計で測定した粘度が140mPa・sである,分散液である。」(以下,「甲3発明」という。) (2)本件発明1について 本件発明1と甲3発明とを対比する。 甲3発明における「分子内にエポキシ基を2個以上含有するエポキシ化合物である,」「多官能エポキシ化合物の分散液」における「多官能エポキシ化合物」は,本件発明1における「エポキシ樹脂」に相当する。 甲3発明における「水性接着剤組成物」は,多官能エポキシ化合物を含む組成物であるから,本件発明1における「エポキシ組成物」に相当する。 甲3発明における多官能エポキシ化合物の分散液に含まれる「乳化剤(日本乳化剤株式会社製,商品名:ニューコール707-SF,30重量%水溶液)」は,参考文献5(【0016】)及び参考資料2(【0037】)によれば,アニオン性界面活性剤であり,その化学構造からみて,本件発明1における「ジスチリルフェノール,トリスチリルフェノール,ポリスチレン化フェノール,クミルフェノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される疎水性物質のエトキシ化の後,陰イオン性末端基を生成して得られたものであり,前記エトキシ化によりエチレンオキシドに由来する単位が1~200付加され,前記陰イオン性末端基はサルフェート,ホスフェートからなる群から選択される,」「界面活性剤」に相当するといえる。 そして,甲3発明における多官能エポキシ化合物の分散液に含まれる「乳化剤(日本乳化剤株式会社製,商品名:ニューコール707-SF,30重量%水溶液)」の固形分の含有割合は,多官能エポキシ化合物を100重量%としたとき,2重量%(=10重量部×(30/100)/(75重量部+75重量部)×100)であるから,本件発明1における「エポキシ樹脂に基づいて0.1から20重量パーセントまでの界面活性剤を含み」を満たす。 以上によれば,本件発明1と甲3発明との間に,相違する点はない。 したがって,本件発明1は,甲3に記載された発明である。 (3)本件発明2について 甲3発明における「乳化剤(日本乳化剤株式会社製,商品名:ニューコール707-SF,30重量%水溶液)」は,その化学構造からみて,本件発明2における「陰イオン性末端基がサルフェートであり,対イオンがアンモニウムである」ものに相当するといえる。 したがって,本件発明2は,甲3に記載された発明である。 (4)本件発明4について 甲3発明における「分子内にエポキシ基を2個以上含有するエポキシ化合物である,」「多官能エポキシ化合物の分散液」における「多官能エポキシ化合物」は,グリシジルメタクリレート(GMA)とブチルアクリレート(But-A)を含むモノマー混合物を用いて得られたものであるから,本件発明4における「エポキシアクリル」である「エポキシハイブリッド」である「エポキシ樹脂」に相当する。 したがって,本件発明4は,甲3に記載された発明である。 (5)本件発明5について 甲3には,「さらに,本実施形態の水性接着剤組成物は,コーティング用組成物,塗料用組成物,セメント混和剤としても用いることができる。」(【0051】)との記載があるから,甲3には,甲3発明に係る水性接着剤組成物をコーティング用組成物として用いる発明についても,実質的に記載されていると認められる。 したがって,本件発明5は,甲3に記載された発明である。 (6)本件発明6について 甲3発明における「水性接着剤組成物」は,本件発明6における「接着剤組成物」に相当する。 したがって,本件発明6は,甲3に記載された発明である。 (7)本件発明10について 本件発明10と甲3発明とを対比する。 甲3発明における「カチオン基を含有する水溶性高分子水溶液として,カチオン基である第一級アミンを含有するアリルアミン重合体(日東紡績株式会社製,商品名:PAA-05)を20.2重量%水溶液としたもの」は,多官能エポキシ化合物を硬化させるものと解されるから,本件発明10における「エポキシ硬化剤」に相当する。 甲3発明における「水性接着剤組成物」は,エポキシ硬化剤を含む組成物といえるから,本件発明10における「エポキシ硬化剤組成物」に相当する。 甲3発明における多官能エポキシ化合物の分散液に含まれる「乳化剤(日本乳化剤株式会社製,商品名:ニューコール707-SF,30重量%水溶液)」は,上記(2)で本件発明1について述べたのと同様の理由により,本件発明10における「ジスチリルフェノール,トリスチリルフェノール,ポリスチレン化フェノール,クミルフェノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される疎水性化合物のエトキシ化の後,陰イオン性末端基を生成して得られたものであり,前記エトキシ化によりエチレンオキシドに由来する単位が1~200付加され,前記陰イオン性末端基はサルフェート,ホスフェートからなる群から選択される,」「界面活性剤」に相当するといえる。 以上によれば,本件発明10と甲3発明との間に,相違する点はない。 したがって,本件発明10は,甲3に記載された発明である。 (8)本件発明11について 甲3発明における「乳化剤(日本乳化剤株式会社製,商品名:ニューコール707-SF,30重量%水溶液)」は,上記(3)で本件発明2について述べたのと同様の理由により,本件発明11における「陰イオン性末端基がサルフェートであり,対イオンがアンモニウムである」ものに相当するといえる。 したがって,本件発明11は,甲3に記載された発明である。 (9)本件発明12について 甲3発明における「カチオン基を含有する水溶性高分子水溶液として,カチオン基である第一級アミンを含有するアリルアミン重合体(日東紡績株式会社製,商品名:PAA-05)を20.2重量%水溶液としたもの」は,本件発明12における「脂肪族アミン類」である「エポキシ硬化剤」に相当する。 したがって,本件発明12は,甲3に記載された発明である。 (10)本件発明13~15について 甲3発明における「分子内にエポキシ基を2個以上含有するエポキシ化合物である,」「多官能エポキシ化合物の分散液」における「多官能エポキシ化合物」は,本件発明13における「エポキシ樹脂」に相当する。 甲3発明における「分子内にエポキシ基を2個以上含有するエポキシ化合物である,」「多官能エポキシ化合物の分散液」における「多官能エポキシ化合物」は,上記(4)で本件発明4について述べたのと同様の理由により,本件発明14及び15における「エポキシアクリル」である「エポキシハイブリッド」である「エポキシ樹脂」に相当する。 したがって,本件発明13~15は,甲3に記載された発明である。 (11)本件発明16及び17について 甲3発明に係る水性接着剤組成物は,水を含むものであるから,本件発明16における「エポキシ樹脂が水媒性である」ことに相当する。 甲3発明に係る水性接着剤組成物は,水を含むものであり,また,その組成からみて,本件発明17における「5%から99.99%までの固形分を含む」を満たす。 したがって,本件発明16及び17は,甲3に記載された発明である。 (12)本件発明18について 上記(5)で述べたとおり,甲3には,甲3発明に係る水性接着剤組成物をコーティング用組成物として用いる発明についても,実質的に記載されていると認められる。 したがって,本件発明18は,甲3に記載された発明である。 (13)本件発明19について 甲3発明における「水性接着剤組成物」は,本件発明19における「接着剤組成物」に相当する。 したがって,本件発明19は,甲3に記載された発明である。 (14)まとめ 本件発明1,2,4~6及び10~19は,いずれも,甲3に記載された発明であり,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができないものである。 4 取消理由1-4(甲4に基づく新規性) (1)甲4に記載された発明 甲4の記載(請求項1,2,【0008】,【0010】,【0058】~【0065】,製造例1,実施例8,表1)によれば,特に製造例1及び実施例8に着目すると,甲4には,以下の発明が記載されていると認められる。 「EM-0526(商品名,旭電化社製,ウレタン変性エポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂エマルション,固形分45%,固形分当たりのエポキシ当量378,SP値9.8)135質量部, 下記のアクリルエマルションA 40質量部, JR605(商品名,テイカ社製,チタン白,平均1次粒子径250nm,比重4.1)15質量部, 体質顔料(比重2.7の炭酸カルシウム)152質量部, 消泡剤(SNデフォーマーA63,商品名,サンノプコ社製)2質量部, 分散剤(DISPER BYK-190,商品名,BYK社製)5質量部, 増粘剤(アデカノールUH-420,商品名,旭電化社製)5質量部, 造膜助剤(TEXANOL,商品名,イーストマンケミカル社製,2,2,4-トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート)2質量部, 水 20質量部, を撹拌混合して得られたベース塗料に, 硬化剤として,EH203(商品名,旭電化社製,変性ポリアミン,固形分あたりの活性水素当量130)15質量部, を配合,撹拌して得られた,プライマー塗料C8。 アクリルエマルションAは,容量2リットルの4つ口フラスコに脱イオン水300質量部,Newcol 707SF(商品名,日本乳化剤社製,ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤,不揮発分30%)0.1質量部を加え,窒素置換後,85℃に保ち,この中に下記組成をエマルション化してなるプレエマルションのうち3質量%分及び下記触媒水溶液のうち30質量%分を添加し,攪拌し,添加20分後から下記プレエマルションの97質量%分と下記触媒水溶液の70質量%分を4時間かけて滴下し,滴下終了後,脱イオン水56質量部を加え,これをさらに2時間80℃に保持した後,40℃以下に降温し,次いでアンモニア水でpH8~9に調整して得られた,固形分50%,SP値9.47である,アクリルエマルションAである。 ≪プレエマルション≫ 脱イオン水 287質量部,メタクリル酸 8質量部,スチレン 496質量部,n-ブチルアクリレート 120質量部,アクリル酸 16質量部,ヒドロキシエチルメタクリレート 120質量部,1,6ヘキサンジオールジアクリレート 40質量部,Newcol 707SF 53質量部 ≪触媒水溶液≫ 過硫酸アンモニウム 1.5質量部,脱イオン水 120質量部」(以下,「甲4発明」という。) (2)本件発明1について 本件発明1と甲4発明とを対比する。 甲4発明における「EM-0526(商品名,旭電化社製,ウレタン変性エポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂エマルション,固形分45%,固形分当たりのエポキシ当量378,SP値9.8)」における「ウレタン変性エポキシ樹脂」は,本件発明1における「エポキシ樹脂」に相当する。 甲4発明における「プライマー塗料C8」は,ウレタン変性エポキシ樹脂を含む組成物であるから,本件発明1における「エポキシ組成物」に相当する。 甲4発明におけるアクリルエマルションAに含まれる「Newcol 707SF(商品名,日本乳化剤社製,ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤,不揮発分30%)」は,参考文献5(【0016】)及び参考資料2(【0037】)によれば,その化学構造からみて,本件発明1における「ジスチリルフェノール,トリスチリルフェノール,ポリスチレン化フェノール,クミルフェノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される疎水性物質のエトキシ化の後,陰イオン性末端基を生成して得られたものであり,前記エトキシ化によりエチレンオキシドに由来する単位が1~200付加され,前記陰イオン性末端基はサルフェート,ホスフェートからなる群から選択される,」「界面活性剤」に相当するといえる。 そして,甲4発明におけるアクリルエマルションA中での,Newcol 707SF(商品名,日本乳化剤社製,ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤,不揮発分30%)の含有量は,53.1質量部(=0.1質量部+53質量部)であるところ,甲4発明に係るプライマー塗料C8中でのアクリルエマルションAの含有量は,40質量部であるから,当該プライマー塗料中での含有量に換算すると,約1.31質量部(=53.1質量部×40質量部/(300質量部+0.1質量部+(287質量部+8質量部+496質量部+120質量部+16質量部+120質量部+40質量部+53質量部)+(1.5質量部+120質量部)+56質量部))となる。 そうすると,甲4発明に係るプライマー塗料C8における「Newcol 707SF(商品名,日本乳化剤社製,ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤,不揮発分30%)」の固形分の含有割合は,EM-0526(商品名,旭電化社製,ウレタン変性エポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂エマルション,固形分45%,固形分当たりのエポキシ当量378,SP値9.8)におけるウレタン変性エポキシ樹脂の含有量60.75質量部(=135質量部×45/100)を100重量%としたとき,約0.65重量%(=約1.31質量部×(30/100)/60.75質量部×100)であるから,本件発明1における「エポキシ樹脂に基づいて0.1から20重量パーセントまでの界面活性剤を含み」を満たす。 以上によれば,本件発明1と甲4発明との間に,相違する点はない。 したがって,本件発明1は,甲4に記載された発明である。 (3)本件発明2について 甲4発明における「Newcol 707SF(商品名,日本乳化剤社製,ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤,不揮発分30%)」は,その化学構造からみて,本件発明2における「陰イオン性末端基がサルフェートであり,対イオンがアンモニウムである」ものに相当するといえる。 したがって,本件発明2は,甲4に記載された発明である。 (4)本件発明4について 甲4発明における「EM-0526(商品名,旭電化社製,ウレタン変性エポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂エマルション,固形分45%,固形分当たりのエポキシ当量378,SP値9.8)」における「ウレタン変性エポキシ樹脂」は,本件発明4における「エポキシポリウレタン」である「エポキシハイブリッド」である「エポキシ樹脂」に相当する。 したがって,本件発明4は,甲4に記載された発明である。 (5)本件発明5について 甲4発明における「プライマー塗料C8」は,本件発明5における「コーティング組成物」に相当する。 したがって,本件発明5は,甲4に記載された発明である。 (6)本件発明10について 本件発明10と甲4発明とを対比する。 甲4発明における「硬化剤として,EH203(商品名,旭電化社製,変性ポリアミン,固形分あたりの活性水素当量130)」は,本件発明10における「エポキシ硬化剤」に相当する。 甲4発明における「プライマー塗料C8」は,硬化剤を含む組成物であるから,本件発明10における「エポキシ硬化剤組成物」に相当する。 甲4発明におけるアクリルエマルションAに含まれる「Newcol 707SF(商品名,日本乳化剤社製,ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤,不揮発分30%)」は,上記(2)で本件発明1について述べたのと同様の理由により,本件発明10における「ジスチリルフェノール,トリスチリルフェノール,ポリスチレン化フェノール,クミルフェノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される疎水性化合物のエトキシ化の後,陰イオン性末端基を生成して得られたものであり,前記エトキシ化によりエチレンオキシドに由来する単位が1~200付加され,前記陰イオン性末端基はサルフェート,ホスフェートからなる群から選択される,」「界面活性剤」に相当するといえる。 以上によれば,本件発明10と甲4発明との間に,相違する点はない。 したがって,本件発明10は,甲4に記載された発明である。 (7)本件発明11について 甲4発明における「Newcol 707SF(商品名,日本乳化剤社製,ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤,不揮発分30%)」は,上記(3)で本件発明2について述べたのと同様の理由により,本件発明11における「陰イオン性末端基がサルフェートであり,対イオンがアンモニウムである」ものに相当するといえる。 したがって,本件発明11は,甲4に記載された発明である。 (8)本件発明12について 甲4発明における「硬化剤として,EH203(商品名,旭電化社製,変性ポリアミン,固形分あたりの活性水素当量130)」は,少なくとも,本件発明12における「脂肪族アミン類」,「環状脂肪族アミン類」,「芳香族アミン類」及び「ケチミン類」のいずれかである「エポキシ硬化剤」に相当すると解される。 したがって,本件発明12は,甲4に記載された発明である。 (9)本件発明13~15について 甲4発明における「EM-0526(商品名,旭電化社製,ウレタン変性エポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂エマルション,固形分45%,固形分当たりのエポキシ当量378,SP値9.8)」における「ウレタン変性エポキシ樹脂」は,本件発明13における「エポキシ樹脂」に相当する。 甲4発明における「EM-0526(商品名,旭電化社製,ウレタン変性エポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂エマルション,固形分45%,固形分当たりのエポキシ当量378,SP値9.8)」における「ウレタン変性エポキシ樹脂」は,本件発明14及び15における「エポキシポリウレタン」である「エポキシハイブリッド」である「エポキシ樹脂」に相当する。 したがって,本件発明13~15は,甲4に記載された発明である。 (10)本件発明16及び17について 甲4発明に係るプライマー塗料C8は,水を含むものであるから,本件発明16における「エポキシ樹脂が水媒性である」ことに相当する。 甲4発明に係るプライマー塗料C8は,水を含むものであり,また,その組成からみて,本件発明17における「5%から99.99%までの固形分を含む」を満たす。 したがって,本件発明16及び17は,甲4に記載された発明である。 (11)本件発明18について 甲4発明における「プライマー塗料C8」は,本件発明18における「コーティング組成物」に相当する。 したがって,本件発明18は,甲4に記載された発明である。 (12)まとめ 本件発明1,2,4,5及び10~18は,いずれも,甲4に記載された発明であり,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができないものである。 5 取消理由1-5(甲5に基づく新規性) (1)甲5に記載された発明 甲5の記載(請求項1~3,【0007】,【0008】,【0031】,【0054】,【0055】,【0112】,【0118】~【0121】,【0131】~【0136】,製造例6,製造例7,実施例1,比較例1,表2,表5,表6)によれば,特に,製造例6,製造例7,実施例1及び比較例1に着目すると,甲5には,以下の発明が記載されていると認められる。 「水性脂肪酸変性アクリル樹脂No.1 80質量部, 下記の水性脂肪酸変性エポキシ樹脂 20質量部, Additol VWX-4940(日本サイテック製,商品名,Co/Zr/Ba=3%/5%/3% 金属量(%)) 3質量部, 顔料分散ペーストNo.1 98質量部, 水分散性アクリル樹脂No.1 10質量部, Tinuvin 1130 2質量部, Tinuvin 292 1質量部, エチレングリコールモノブチルエーテル 5質量部, をディスパーで攪拌しながら脱イオン水を加えて混合して得られた,固形分44%の水性塗料No.1。 水性脂肪酸変性エポキシ樹脂は,反応容器に,亜麻仁油脂肪酸280質量部,jER828(商品名,ジャパンエポキシレジン社製,液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂,エポキシ当量185)185質量部及びテトラエチルアンモニウムブロマイド0.23質量部を入れ,攪拌しながら反応温度140℃で反応させ,残存カルボキシル基の量がほぼなくなるまで反応を行い,脂肪酸変性エポキシ樹脂が得られ,その後,Newcol707SF19質量部を該反応容器に入れ,ディスパーにて2000rpmで攪拌しながら,脱イオン水620部を滴下して得られた,固形分が40%の水性脂肪酸変性エポキシ樹脂である。」(以下,「甲5発明1」という。) 「水性脂肪酸変性アクリル樹脂No.1 80質量部, 下記の水性エポキシ樹脂 20質量部, Additol VWX-4952(日本サイテック製,商品名,Co/Mn/Zr=3%/5%/3% 金属量(%)) 5質量部, 顔料分散ペーストNo.1 98質量部, 水分散性アクリル樹脂No.1 10質量部, Tinuvin 1130 2質量部, Tinuvin 292 1質量部, エチレングリコールモノブチルエーテル 5質量部, をディスパーで攪拌しながら脱イオン水を加えて混合して得られた,固形分44%の水性塗料No.11。 水性エポキシ樹脂は,反応容器に,jER828(商品名,ジャパンエポキシレジン社製,液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂,エポキシ当量185)185質量部を入れ,攪拌しながら反応温度140℃で反応させ,エポキシ樹脂が得られ,その後,Newcol707SF7質量部を該反応容器に入れ,ディスパーにて2000rpmで攪拌しながら,脱イオン水230部を滴下して得られた,固形分が40%の水性エポキシ樹脂である。」(以下,「甲5発明2」という。) (2)本件発明1について 本件発明1と甲5発明1及び甲5発明2とを対比する。 甲5発明1における「水性脂肪酸変性エポキシ樹脂」及び甲5発明2における「水性エポキシ樹脂」は,本件発明1における「エポキシ樹脂」に相当する。 甲5発明1における「水性塗料No.1」及び甲5発明2における「水性塗料No.11」は,エポキシ樹脂を含む組成物であるから,本件発明1における「エポキシ組成物」に相当する。 甲5発明1における水性脂肪酸変性エポキシ樹脂及び甲5発明2における水性エポキシ樹脂に含まれる「Newcol707SF」は,参考文献5(【0016】)及び参考資料2(【0037】)によれば,その化学構造からみて,本件発明1における「ジスチリルフェノール,トリスチリルフェノール,ポリスチレン化フェノール,クミルフェノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される疎水性物質のエトキシ化の後,陰イオン性末端基を生成して得られたものであり,前記エトキシ化によりエチレンオキシドに由来する単位が1~200付加され,前記陰イオン性末端基はサルフェート,ホスフェートからなる群から選択される,」「界面活性剤」に相当するといえる。 そして,甲5発明1における「Newcol707SF」は,甲3(【0170】)及び甲4(【0059】)によれば,固形分が30重量%であるところ,その含有割合は,水性脂肪酸変性エポキシ樹脂を100重量%としたとき,約1.2重量%(=19質量部×(30/100)/(185質量部+280質量部)×100)であるから,本件発明1における「エポキシ樹脂に基づいて0.1から20重量パーセントまでの界面活性剤を含み」を満たす。 また,同様に,甲5発明2における「Newcol707SF」の含有割合は,水性エポキシ樹脂を100重量%としたとき,約1.1重量%(=7質量部×(30/100)/185質量部×100)であるから,本件発明1における「エポキシ樹脂に基づいて0.1から20重量パーセントまでの界面活性剤を含み」を満たす。 以上によれば,本件発明1と甲5発明1及び甲5発明2との間に,相違する点はない。 したがって,本件発明1は,甲5に記載された発明である。 (3)本件発明2について 甲5発明1及び甲5発明2における「Newcol707SF」は,その化学構造からみて,本件発明2における「陰イオン性末端基がサルフェートであり,対イオンがアンモニウムである」ものに相当するといえる。 したがって,本件発明2は,甲5に記載された発明である。 (4)本件発明3について 甲5発明2における「水性エポキシ樹脂」は,本件発明3における「ビスフェノールAエポキシ」である「エポキシ樹脂」に相当する。 したがって,本件発明3は,甲5に記載された発明である。 (5)本件発明4について 甲5発明1における「水性脂肪酸変性エポキシ樹脂」は,本件発明4における「エポキシアルキド」である「エポキシハイブリッド」である「エポキシ樹脂」に相当する。 したがって,本件発明4は,甲5に記載された発明である。 (6)本件発明5について 甲5発明1における「水性塗料No.1」及び甲5発明2における「水性塗料No.11」は,本件発明5における「コーティング組成物」に相当する。 したがって,本件発明5は,甲5に記載された発明である。 (7)まとめ 本件発明1~5は,いずれも,甲5に記載された発明であり,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができないものである。 6 取消理由1-6(甲6に基づく新規性) (1)甲6に記載された発明 甲6の記載(請求項1~3,【0013】,【0015】,【0036】,【0037】,実施例4,7,16,表4,表5)によれば,特に実施例4,7及び16に着目すると,甲6には,以下の発明が記載されていると認められる。 「エピクロン7200(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製))60質量部, エピコート807(ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製))22質量部, アニオン系界面活性剤であるニューコール707SF(多環フェノールエチレンオキサイド7モル付加物硫酸エステルアンモニウム塩(日本乳化剤(株)製))15重量部, ISEO(イソステアリルアルコールエチレンオキサイド6モル付加物(青木油脂工業(株)製))3質量部, を含むサイズ剤。」(以下,「甲6発明1」という。) 「エポライト4000(水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル(共栄社化学(株)製))60質量部, エピコート828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製))22質量部, アニオン系界面活性剤であるニューコール707SF(多環フェノールエチレンオキサイド7モル付加物硫酸エステルアンモニウム塩(日本乳化剤(株)製))15重量部, ISEO(イソステアリルアルコールエチレンオキサイド6モル付加物(青木油脂工業(株)製))3質量部, を含むサイズ剤。」(以下,「甲6発明2」という。) 「エピコート828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製))41質量部, エピコート1001(ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製))41質量部, アニオン系界面活性剤であるニューコール707SF(多環フェノールエチレンオキサイド7モル付加物硫酸エステルアンモニウム塩(日本乳化剤(株)製))15重量部, ISEO(イソステアリルアルコールエチレンオキサイド6モル付加物(青木油脂工業(株)製))3質量部, を含むサイズ剤。」(以下,「甲6発明3」という。) (2)本件発明1について 本件発明1と甲6発明1,甲6発明2及び甲6発明3とを対比する。 甲6発明1,甲6発明2及び甲6発明3における「エピクロン7200(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製))」,「エピコート807(ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製))」,「エポライト4000(水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル(共栄社化学(株)製))」,「エピコート828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製))」,「エピコート1001(ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製))」は,本件発明1における「エポキシ樹脂」に相当する。 甲6発明1,甲6発明2及び甲6発明3における「サイズ剤」は,エポキシ樹脂を含む組成物であるから,本件発明1における「エポキシ組成物」に相当する。 甲6発明1,甲6発明2及び甲6発明3における「アニオン系界面活性剤であるニューコール707SF(多環フェノールエチレンオキサイド7モル付加物硫酸エステルアンモニウム塩(日本乳化剤(株)製))」は,参考文献5(【0016】)及び参考資料2(【0037】)によれば,その化学構造からみて,本件発明1における「ジスチリルフェノール,トリスチリルフェノール,ポリスチレン化フェノール,クミルフェノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される疎水性物質のエトキシ化の後,陰イオン性末端基を生成して得られたものであり,前記エトキシ化によりエチレンオキシドに由来する単位が1~200付加され,前記陰イオン性末端基はサルフェート,ホスフェートからなる群から選択される,」「界面活性剤」に相当するといえる。 そして,甲6発明1,甲6発明2及び甲6発明3における「アニオン系界面活性剤であるニューコール707SF(多環フェノールエチレンオキサイド7モル付加物硫酸エステルアンモニウム塩(日本乳化剤(株)製))」は,甲3(【0170】)及び甲4(【0059】)によれば,固形分が30重量%であるところ,その含有割合は,エポキシ樹脂を100重量%としたとき,約5.5重量%(=15質量部×(30/100)/82質量部×100)であるから,本件発明1における「エポキシ樹脂に基づいて0.1から20重量パーセントまでの界面活性剤を含み」を満たす。 以上によれば,本件発明1と甲6発明1,甲6発明2及び甲6発明3との間に,相違する点はない。 したがって,本件発明1は,甲6に記載された発明である。 (3)本件発明2について 甲6発明1,甲6発明2及び甲6発明3における「アニオン系界面活性剤であるニューコール707SF(多環フェノールエチレンオキサイド7モル付加物硫酸エステルアンモニウム塩(日本乳化剤(株)製))」は,その化学構造からみて,本件発明2における「陰イオン性末端基がサルフェートであり,対イオンがアンモニウムである」ものに相当するといえる。 したがって,本件発明2は,甲6に記載された発明である。 (4)本件発明3について 甲6発明1,甲6発明2及び甲6発明3における「エピコート807(ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製))」,「エピコート828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製))」,「エピコート1001(ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製))」は,本件発明3における「ビスフェノールFエポキシ」又は「ビスフェノールAエポキシ」である「エポキシ樹脂」に相当する。 したがって,本件発明3は,甲6に記載された発明である。 (5)本件発明5について 甲6発明1,甲6発明2及び甲6発明3における「サイズ剤」は,本件発明5における「コーティング組成物」に相当する。 したがって,本件発明5は,甲6に記載された発明である。 (7)まとめ 本件発明1~3及び5は,いずれも,甲6に記載された発明であり,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができないものである。 7 申立理由2(進歩性) (1)甲1~6に記載された発明 甲1~6には,上記1(1),2(1),3(1),4(1),5(1),6(1)で認定したとおりの甲1発明~甲6発明3が記載されていると認められる。 (2)本件発明8について 本件発明8と甲1発明~甲6発明3とを対比すると,上記1(2),2(2),3(2),4(2),5(2),6(2)での対比と同様に,いずれもエポキシ組成物に関するものといえるが,本件発明8は,「埋込み用組成物」であるのに対して,甲1発明~甲6発明3は,「埋込み用組成物」ではない点で相違する。 上記相違点について検討すると,甲1~6のいずれにも,甲1発明~甲6発明3に係るエポキシ組成物を埋込み用組成物に用いることについては,何ら記載されておらず,また,甲7~14にも,甲1発明~甲6発明3に係る特定の成分を含むエポキシ組成物を埋込み用組成物に用いることについては記載されていないから,甲1発明~甲6発明3に係るエポキシ組成物を埋込み用組成物に用いることが動機付けられるとはいえない。 この点,申立人は,甲11及び12には,エポキシ樹脂を埋込み用樹脂とすることが記載され,また,甲12には,埋込み用樹脂として,コーティングに用いる樹脂と同じ樹脂を用いる旨,粘度が適当で接着力を有する樹脂を用いる旨が記載されているから,甲1~6におけるコーティング組成物として用いられるエポキシ組成物を,埋込み用組成物とすることは,当業者が容易に想到すると主張する。 しかしながら,上記のとおり,甲11及び12には,甲1発明~甲6発明3に係る特定の成分を含むエポキシ組成物を埋込み用組成物に用いることについては記載されていないから,甲11及び12の記載に基づいて,甲1発明~甲6発明3に係るエポキシ組成物を埋込み用組成物に用いることが動機付けられるとはいえない。 そうすると,甲1発明~甲6発明3において,エポキシ組成物を「埋込み用組成物」に用いることが,当業者が容易に想到することができたということはできない。 したがって,本件発明8は,甲1~6のいずれかに記載された発明及び甲1~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明21について 本件発明21と甲1発明~甲6発明3とを対比すると,上記1(2),(8),2(2),(6),3(2),(7),4(2),(6),5(2),6(2)での対比と同様に,いずれもエポキシ硬化剤組成物(又はエポキシ組成物)に関するものといえるが,本件発明21は,「埋込み用組成物」であるのに対して,甲1発明~甲6発明3は,「埋込み用組成物」ではない点で相違する。 上記相違点について検討すると,上記(2)で本件発明8について述べたのと同様の理由により,甲1発明~甲6発明3に係るエポキシ硬化剤組成物(又はエポキシ組成物)を埋込み用組成物に用いることが動機付けられるとはいえない。 そうすると,甲1発明~甲6発明3において,エポキシ硬化剤組成物(又はエポキシ組成物)を「埋込み用組成物」に用いることが,当業者が容易に想到することができたということはできない。 したがって,本件発明21は,甲1~6のいずれかに記載された発明及び甲1~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり,本件発明1~6,9~19及び22は,甲1~6のいずれかに記載された発明であり,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1~6,9~19及び22に係る特許は,同法113条2号に該当し,取り消すべきものである。 また,特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項8及び21に係る特許を取り消すことはできない。 また,他に本件特許の請求項8及び21に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり決定する。

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2019-700368

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