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特許異議申立

2019-700229

傾斜シート材、及び、傾斜シート材の製造方法

審判番号
2019-700229
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-240089
登録番号
特許第6397114号(P6397114)
請求日
2019年03月25日
審決日
2020年03月06日
公報発行日
2020年06月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】TBカワシマ株式会社
  • 【権利者代理人】千葉 茂雄
  • 【権利者代理人】堀家 和博
  • 【異議申立人】千種 和子
審判長/審判官
  • 審判長 大島 祥吾
  • 審判官 加藤 友也
  • 審判官 渕野 留香
分類
P1651.113-YAA(B29C) / P1651.121-YAA(B29C) / P1651.537-YAA(B29C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6397114号発明「傾斜シート材、及び、傾斜シート材の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6397114号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕、4及び5について訂正することを認める。 特許第6397114号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6397114号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成29年12月14日の出願であって、平成30年9月7日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年同月26日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、平成31年3月25日に特許異議申立人 千種 和子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、令和1年5月23日付けで取消理由が通知され、同年7月26日に特許権者 TBカワシマ株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年8月9日に特許権者から訂正請求書を補正する手続補正書が提出され、同年同月26日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年9月24日に特許異議申立人から意見書が提出され、同年11月14日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、令和2年1月20日に特許権者から意見書が提出されるとともに訂正請求がされたものである。 なお、令和1年7月26日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 また、特許異議申立人には、すでに意見書の提出の機会が与えられており、令和2年1月20日にされた訂正の請求によって、特許請求の範囲が相当程度減縮され、本件特許異議申立事件において提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても、下記第2ないし6のとおり、特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断したことから、特許異議申立人に対して上記訂正の請求に対する意見書を提出する機会を与えない(審判便覧67-05.5 Pの4.(1))。 第2 訂正の適否について 1 訂正の内容 令和2年1月20日にされた訂正の請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が160°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び/又は、前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく200°以下である広角面部分(6b)が形成されていることを特徴とするシート材。」と記載されているのを、「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材(表面側にパイルを有したシート材を除く)であって、前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成されていることを特徴とするシート材。」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って前記高さ(H)が一様に漸次変化し且つ前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い方向である主漸変方向(L)を有する部分が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のシート材。」と記載されているのを、「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って前記高さ(H)が一様に漸次変化し且つ前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い方向である主漸変方向(L)を有する部分が設けられ、前記主漸変方向(L)を有する部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され、前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層され、前記表皮材(7)は、パイルを有しておらず、前記クッション基材(2)は、合成樹脂フォームであり、この合成樹脂フォームは、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず、前記凹部(3)の平面視形状の少なくとも一部、及び/又は、前記凹部(3)の底の平面視形状の少なくとも一部は、湾曲していることを特徴とするシート材。」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層され、前記クッション基材(2)は、ダブルラッセル編地であり、このダブルラッセル編地は、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出しないことを特徴とする請求項1又は2に記載のシート材。」と記載されているのを、「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され、前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層され、前記クッション基材(2)は、ダブルラッセル編地であり、このダブルラッセル編地は、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず、前記凹部(3)の平面視形状の少なくとも一部、及び/又は、前記凹部(3)の底の平面視形状の少なくとも一部は、湾曲していることを特徴とするシート材。」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層され、前記クッション基材(2)は、ダブルラッセル編地であり、このダブルラッセル編地は、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出しないことを特徴とするシート材。」と記載されているのを、「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層され 、前記クッション基材(2)は、ダブルラッセル編地であり、このダブルラッセル編地は、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず、前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され、前記漸変部(5)の平面視における凹部(3)の底と当該漸変部(5)の境界の少なくとも一部が描く形、及び/又は、前記漸変部(5)の平面視における非凹部(4)と当該漸変部(5)の境界の少なくとも一部が描く形は、湾曲していることを特徴とするシート材。」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に「クッション基材(2)の表面側にエンボス凸部(11)と非エンボス凸部(12)が形成されたエンボス型材(13)を押圧するエンボス工程(E)を有し、前記クッション基材(2)の表面側に凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材を製造する製造方法であって、前記エンボス凸部(11)から非エンボス凸部(12)までに亘って、前記エンボス凸部(11)の頂 からの深さ(D)が漸次変化するエンボス漸変部(14)を設け、前記エンボス工程(E)において、前記エンボス凸部(11)及びエンボス漸変部(14)が前記クッション基材(2)の表面側に当接した状態で、前記エンボス型材(13)を押圧し、前記エンボス漸変部(14)のエンボス凸部(11)の頂寄りの少なくとも一部に、当該エンボス凸部(11)の頂表面とのなす角(θa’)が180°より大きく200°以下であるエンボス広角面部分(15a)が形成され、及び/又は、前記エンボス漸変部(14)の非エンボス凸部(12)寄りの少なくとも一部に、当該非エンボス凸部(12)の表面とのなす角(θb’)が160°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分(15b)が形成されていることを特徴とするシート材の製造方法。」と記載されているのを、「クッション基材(2)の表面側にエンボス凸部(11)と非エンボス凸部(12)が形成されたエンボス型材(13)を押圧するエンボス工程(E)を有し、前記クッション基材(2)の表面側に凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材を製造する製造方法であって、前記エンボス凸部(11)から非エンボス凸部(12)までに亘って、前記エンボス凸部(11)の頂からの深さ(D)が漸次変化するエンボス漸変部(14)を設け、前記エンボス工程(E)において、前記エンボス凸部(11)及びエンボス漸変部(14)が前記クッション基材(2)の表面側に当接した状態で、前記エンボス型材(13)を押圧し、前記エンボス漸変部(14)のエンボス凸部(11)の頂寄りの少なくとも一部に、当該エンボス凸部(11)の頂表面とのなす角(θa’)が180°より大きく190°以下であるエンボス広角面部分(15a)が形成され、及び、前記エンボス漸変部(14)の非エンボス凸部(12)寄りの少なくとも一部に、当該非エンボス凸部(12)の基部(13a)における表面(13c)とのなす角(θb’)が170°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分(15b)が形成され、前記エンボス漸変部(14)の少なくとも一部に、前記エンボス凸部(11)の頂から非エンボス凸部(12)までの平面視におけるエンボス漸変距離が最も長い部分を有し、前記エンボス漸変距離が最も長い部分が設けられたエンボス漸変部(14)の非エンボス凸部(12)寄りに、当該非エンボス凸部(12)の基部(13a)における表面(13c)とのなす角(θb’)が175°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分(15b)が形成されていることを特徴とするシート材の製造方法。」に訂正する。 (6)訂正事項6 明細書の段落【0006】に「本発明に係るシート材1は、クッション基材2の表面側に、凹部3と非凹部4が形成されたシート材であって、前記凹部3から非凹部4までに亘って、前記凹部3の底からの高さHが漸次変化する漸変部5を有し、前記漸変部5の凹部3の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部3の底表面とのなす角θaが160°以上180°より小さい鈍角面部分6aが形成され、及び/又は、前記漸変部5の非凹部4寄りの少なくとも一部に、当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく200°以下である広角面部分6bが形成されていることを第1の特徴とする。」と記載されているのを、「本発明に係るシート材1は、クッション基材2の表面側に、凹部3と非凹部4が形成されたシート材(表面側にパイルを有したシート材を除く)であって、前記凹部3から非凹部4までに亘って、前記凹部3の底からの高さHが漸次変化する漸変部5を有し、前記漸変部5の凹部3の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部3の底表面とのなす角θaが170°以上180°より小さい鈍角面部分6aが形成され、及び、前記漸変部5の非凹部4寄りの少なくとも一部に、当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく190°以下である広角面部分6bが形成され、前記漸変部5の少なくとも一部に、前記凹部3の底から非凹部4までの平面視における漸変距離Zが最も長い部分を有し、前記漸変距離Zが最も長い部分が設けられた漸変部5の非凹部4寄りに、当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく185°以下である広角面部分6bが形成されていることを第1の特徴とする。」に訂正する。 (7)訂正事項7 明細書の段落【0007】に「本発明に係るシート材1の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、前記漸変部5の少なくとも一部に、前記凹部3から非凹部4までに亘って前記高さHが一様に漸次変化し且つ前記凹部3の底から非凹部4までの平面視における漸変距離Zが最も長い方向である主漸変方向Lを有する部分が設けられている点にある。」と記載されているのを、「本発明に係るシート材1の第2の特徴は、クッション基材2の表面側に、凹部3と非凹部4が形成されたシート材であって、前記凹部3から非凹部4までに亘って、前記凹部3の底からの高さHが漸次変化する漸変部5を有し、前記漸変部5の凹部3の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部3の底表面とのなす角θaが170°以上180°より小さい鈍角面部分6aが形成され、及び、前記漸変部5の非凹部4寄りの少なくとも一部に、当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく190°以下である広角面部分6bが形成され、前記漸変部5の少なくとも一部に、前記凹部3から非凹部4までに亘って前記高さHが一様に漸次変化し且つ前記凹部3の底から非凹部4までの平面視における漸変距離Zが最も長い方向である主漸変方向Lを有する部分が設けられ、前記主漸変方向Lを有する部分が設けられた漸変部5の非凹部4寄りに、当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく185°以下である広角面部分6bが形成され、前記クッション基材2の表面側には、表皮材7が積層され、前記表皮材7は、パイルを有しておらず、前記クッション基材2は、合成樹脂フォームであり、この合成樹脂フォームは、前記表皮材7に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず、前記凹部3の平面視形状の少なくとも一部、及び/又は、前記凹部3の底の平面視形状の少なくとも一部は、湾曲している点にある。」に訂正する。 (8)訂正事項8 明細書の段落【0008】に「本発明に係るシート材1の第3の特徴は、上記第1又は2の特徴に加えて、前記クッション基材2の表面側には、表皮材7が積層され、前記クッション基材2は、ダブルラッセル編地であり、このダブルラッセル編地は、前記表皮材7に覆われて、当該シート材の使用時に露出しない点にある。」と記載されているのを、「本発明に係るシート材1の第3の特徴は、クッション基材2の表面側に、凹部3と非凹部4が形成されたシート材であって、前記凹部3から非凹部4までに亘って、前記凹部3の底からの高さHが漸次変化する漸変部5を有し、前記漸変部5の凹部3の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部3の底表面とのなす角θaが170°以上180°より小さい鈍角面部分6aが形成され、及び、前記漸変部5の非凹部4寄りの少なくとも一部に、当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく190°以下である広角面部分6bが形成され、前記漸変部5の少なくとも一部に、前記凹部3の底から非凹部4までの平面視における漸変距離Zが最も長い部分を有し、前記漸変距離Zが最も長い部分が設けられた漸変部5の非凹部4寄りに、当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく185°以下である広角面部分6bが形成され、前記クッション基材2の表面側には、表皮材7が積層され、前記クッション基材2は、ダブルラッセル編地であり、このダブルラッセル編地は、前記表皮材7に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず、前記凹部3の平面視形状の少なくとも一部、及び/又は、前記凹部3の底の平面視形状の少なくとも一部は、湾曲している点にある。」に訂正する。 (9)訂正事項9 明細書の段落【0009】に「本発明に係るシート材1の第4の特徴は、クッション基材2の表面側に、凹部3と非凹部4が形成されたシート材であって、前記凹部3から非凹部4までに亘って、前記凹部3の底からの高さHが漸次変化する漸変部5を有し、前記クッション基材2の表面側には、表皮材7が積層され、前記クッション基材2は、ダブルラッセル編地であり、このダブルラッセル編地は、前記表皮材7に覆われて、当該シート材の使用時に露出しない点にある。」と記載されているのを、「本発明に係るシート材1の第3の特徴は、クッション基材2の表面側に、凹部3と非凹部4が形成されたシート材であって、前記凹部3から非凹部4までに亘って、前記凹部3の底からの高さHが漸次変化する漸変部5を有し、前記クッション基材2の表面側には、表皮材7が積層され、前記クッション基材2は、ダブルラッセル編地であり、このダブルラッセル編地は、前記表皮材7に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず、前記漸変部5の凹部3の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部3の底表面とのなす角θaが170°以上180°より小さい鈍角面部分6aが形成され、及び、前記漸変部5の非凹部4寄りの少なくとも一部に、当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく190°以下である広角面部分6bが形成され、前記漸変部5の少なくとも一部に、前記凹部3の底から非凹部4までの平面視における漸変距離Zが最も長い部分を有し、前記漸変距離Zが最も長い部分が設けられた漸変部5の非凹部4寄りに、当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく185°以下である広角面部分6bが形成され、前記漸変部5の平面視における凹部3の底と当該漸変部5の境界の少なくとも一部が描く形、及び/又は、前記漸変部5の平面視における非凹部4と当該漸変部5の境界の少なくとも一部が描く形は、湾曲している点にある。」に訂正する。 (10)訂正事項10 明細書の段落【0016】に「本発明に係るシート材の製造方法は、クッション基材2の表面側にエンボス凸部11と非エンボス凸部12が形成されたエンボス型材13を押圧するエンボス工程Eを有し、前記クッション基材2の表面側に凹部3と非凹部4が形成されたシート材を製造する製造方法であって、前記エンボス凸部11から非エンボス凸部12までに亘って、前記エンボス凸部11の頂からの深さDが漸次変化するエンボス漸変部14を設け、前記エンボス工程Eにおいて、前記エンボス凸部11及びエンボス漸変部14が前記クッション基材2の表面側に当接した状態で、前記エンボス型材13を押圧し、前記エンボス漸変部14のエンボス凸部11の頂寄りの少なくとも一部に、当該エンボス凸部11の頂表面とのなす角θa’が180°より大きく200°以下であるエンボス広角面部分15aが形成され、及び/又は、前記エンボス漸変部14の非エンボス凸部12寄りの少なくとも一部に、当該非エンボス凸部12の表面とのなす角θb’が160°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分15bが形成されていることを第1の特徴とする。」と記載されているのを、「本発明に係るシート材の製造方法は、クッション基材2の表面側にエンボス凸部11と非エンボス凸部12が形成されたエンボス型材13を押圧するエンボス工程Eを有し、前記クッション基材2の表面側に凹部3と非凹部4が形成されたシート材を製造する製造方法であって、前記エンボス凸部11から非エンボス凸部12までに亘って、前記エンボス凸部11の頂からの深さDが漸次変化するエンボス漸変部14を設け、前記エンボス工程Eにおいて、前記エンボス凸部11及びエンボス漸変部14が前記クッション基材2の表面側に当接した状態で、前記エンボス型材13を押圧し、前記エンボス漸変部14のエンボス凸部11の頂寄りの少なくとも一部に、当該エンボス凸部11の頂表面とのなす角θa’が180°より大きく190°以下であるエンボス広角面部分15aが形成され、及び、前記エンボス漸変部14の非エンボス凸部12寄りの少なくとも一部に、当該非エンボス凸部12の基部13aにおける表面13cとのなす角θb’が170°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分15bが形成され、前記エンボス漸変部14の少なくとも一部に、前記エンボス凸部11の頂から非エンボス凸部12までの平面視におけるエンボス漸変距離が最も長い部分を有し、前記エンボス漸変距離が最も長い部分が設けられたエンボス漸変部14の非エンボス凸部12寄りに、当該非エンボス凸部12の基部13aにおける表面13cとのなす角θb’が175°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分15bが形成されていることを第1の特徴とする。」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1において、「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材」とされていたのを「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材(表面側にパイルを有したシート材を除く)」として、表面側にパイルを有したシート材を除くものとし、「当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が160°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され」「及び/又は」「当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく200°以下である広角面部分(6b)が形成されている」とされていたのを、「当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され」「及び」「当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され」として、角度をさらに限定し、「及び/又は」とされていたのを「及び」として、「又は」という択一的な記載を削除するとともに、「前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され」ているという事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用するものであったのを、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項に改めると共に、訂正前の請求項1において、「当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が160°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され」「及び/又は」「当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく200°以下である広角面部分(6b)が形成されている」とされていたのを、「当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され」「及び」「当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され」として、角度をさらに限定し、「及び/又は」とされていたのを「及び」として、「又は」という択一的な記載を削除するとともに、「前記主漸変方向(L)を有する部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され、前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層され、前記表皮材(7)は、パイルを有しておらず、前記クッション基材(2)は、合成樹脂フォームであり、この合成樹脂フォームは、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず、前記凹部(3)の平面視形状の少なくとも一部、及び/又は、前記凹部(3)の底の平面視形状の少なくとも一部は、湾曲して」いるという事項を追加するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1又は2を引用するものであったのを、訂正前の請求項2を引用するものを削除し、訂正前の請求項1を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項に改めると共に、訂正前の請求項1において、「当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が160°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され」「及び/又は」「当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく200°以下である広角面部分(6b)が形成されている」とされていたのを、「当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され」「及び」「当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され」として、角度をさらに限定し、「及び/又は」とされていたのを「及び」として、「又は」という択一的な記載を削除するとともに、「前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され」ているという事項を追加するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項4に、「前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され、前記漸変部(5)の平面視における凹部(3)の底と当該漸変部(5)の境界の少なくとも一部が描く形、及び/又は、前記漸変部(5)の平面視における非凹部(4)と当該漸変部(5)の境界の少なくとも一部が描く形は、湾曲している」という事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)訂正事項5について 訂正事項5は、訂正前の請求項5において、「当該エンボス凸部(11)の頂表面とのなす角(θa’)が180°より大きく200以下であるエンボス広角面部分(15a)が形成され」「及び/又は」「当該非エンボス凸部(12)の表面とのなす角(θb’)が160以上180°より小さいエンボス鈍角面部分(15b)が形成され」とされていたのを、「当該エンボス凸部(11)の頂表面とのなす角(θa’)が180°より大きく190°以下であるエンボス広角面部分(15a)が形成され」「及び」「当該非エンボス凸部(12)の基部(13a)における表面(13c)とのなす角(θb’)が170°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分(15b)が形成され」として、「基部(13a)における」及び「(13c)」という記載を補いつつ、角度をさらに限定し、さらに、「及び/又は」とされていたのを「及び」として、「又は」という択一的な記載を削除するとともに、「前記エンボス漸変部(14)の少なくとも一部に、前記エンボス凸部(11)の頂から非エンボス凸部(12)までの平面視におけるエンボス漸変距離が最も長い部分を有し、前記エンボス漸変距離が最も長い部分が設けられたエンボス漸変部(14)の非エンボス凸部(12)寄りに、当該非エンボス凸部(12)の基部(13a)における表面(13c)とのなす角(θb’)が175°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分(15b)が形成され」という事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6)訂正事項6ないし10について 訂正事項6ないし10は、訂正事項1ないし5による訂正に伴い、発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項6ないし10は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 むすび 以上のとおり、訂正事項1ないし10は、それぞれ、特許法120条の5第2項ただし書第1、3又は4号に掲げる事項を目的とするものである。 また、訂正事項1ないし10は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 なお、訂正前の請求項2及び3は訂正前の請求項1を引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし3は一群の請求項に該当するものである。そして、訂正事項1ないし3は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 また、訂正事項6ないし10は、願書に添付した明細書についての訂正であるが、当該明細書に係る請求項の全てについて、本件訂正の請求は行われているので、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。 さらに、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし5に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕、4及び5について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕、4及び5のとおり訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、令和2年1月20日に提出された訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材(表面側にパイルを有したシート材を除く)であって、 前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、 前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、 前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、 前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、 前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成されていることを特徴とするシート材。 【請求項2】 クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、 前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、 前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、 前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、 前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って前記高さ(H)が一様に漸次変化し且つ前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い方向である主漸変方向(L)を有する部分が設けられ、 前記主漸変方向(L)を有する部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され、 前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層され、 前記表皮材(7)は、パイルを有しておらず、 前記クッション基材(2)は、合成樹脂フォームであり、 この合成樹脂フォームは、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず、 前記凹部(3)の平面視形状の少なくとも一部、及び/又は、前記凹部(3)の底の平面視形状の少なくとも一部は、湾曲していることを特徴とするシート材。 【請求項3】 クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、 前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、 前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、 前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、 前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、 前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され、 前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層され、 前記クッション基材(2)は、ダブルラッセル編地であり、 このダブルラッセル編地は、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず、 前記凹部(3)の平面視形状の少なくとも一部、及び/又は、前記凹部(3)の底の平面視形状の少なくとも一部は、湾曲していることを特徴とするシート材。 【請求項4】 クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、 前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、 前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層され、 前記クッション基材(2)は、ダブルラッセル編地であり、 このダブルラッセル編地は、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず、 前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、 前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、 前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、 前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され、 前記漸変部(5)の平面視における凹部(3)の底と当該漸変部(5)の境界の少なくとも一部が描く形、及び/又は、前記漸変部(5)の平面視における非凹部(4)と当該漸変部(5)の境界の少なくとも一部が描く形は、湾曲していることを特徴とするシート材。 【請求項5】 クッション基材(2)の表面側にエンボス凸部(11)と非エンボス凸部(12)が形成されたエンボス型材(13)を押圧するエンボス工程(E)を有し、前記クッション基材(2)の表面側に凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材を製造する製造方法であって、 前記エンボス凸部(11)から非エンボス凸部(12)までに亘って、前記エンボス凸部(11)の頂からの深さ(D)が漸次変化するエンボス漸変部(14)を設け、 前記エンボス工程(E)において、 前記エンボス凸部(11)及びエンボス漸変部(14)が前記クッション基材(2)の表面側に当接した状態で、前記エンボス型材(13)を押圧し、 前記エンボス漸変部(14)のエンボス凸部(11)の頂寄りの少なくとも一部に、当該エンボス凸部(11)の頂表面とのなす角(θa’)が180°より大きく190°以下であるエンボス広角面部分(15a)が形成され、及び、 前記エンボス漸変部(14)の非エンボス凸部(12)寄りの少なくとも一部に、当該非エンボス凸部(12)の基部(13a)における表面(13c)とのなす角(θb’)が170°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分(15b)が形成され、 前記エンボス漸変部(14)の少なくとも一部に、前記エンボス凸部(11)の頂から非エンボス凸部(12)までの平面視におけるエンボス漸変距離が最も長い部分を有し、 前記エンボス漸変距離が最も長い部分が設けられたエンボス漸変部(14)の非エンボス凸部(12)寄りに、当該非エンボス凸部(12)の基部(13a)における表面(13c)とのなす角(θb’)が175°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分(15b)が形成されていることを特徴とするシート材の製造方法。」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び取消理由(決定の予告)の概要 1 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 平成31年3月25日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 (1)申立理由1(1)(甲第1号証を主引用文献とし、甲第2及び3号証を副引用文献とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由1(2)(甲第1号証に基づく新規性) 本件特許の請求項4に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由1(3)(甲第2号証を主引用文献とし、甲第3号証を副引用文献とする進歩性) 本件特許の請求項5に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4)申立理由2(明確性) 本件特許の請求項2に「漸変距離(Z)が最も長い方向」とあるが、何と比較して「最も長い」のか明確でなく、このことは、本件特許の請求項3についても同様なので、本件特許の請求項2及び3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (5)証拠方法 甲第1号証:特開2017-213865号公報 甲第2号証:国際公開第2016/079816号 甲第3号証:特開2011-88349号公報 (以下、順に「甲1」のようにいう。) 2 令和1年11月14日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要 令和1年11月14日付けで通知した取消理由(決定の予告)(以下、「取消理由(決定の予告)」という。)の概要は次のとおりである。 (参考資料1に基づく新規性) 本件特許の請求項1に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 参考資料1:特開2015-204936号公報 参考資料2:特開2008-169517号公報 参考資料3:特開平6-285278号公報 参考資料4:特許第5757597号公報 (特許掲載公報発行日:平成27年7月29日) (令和1年9月24日に特許異議申立人が提出した意見書に添付された参考資料1ないし4である。) 第5 当審の判断 1 取消理由(決定の予告)について 取消理由(決定の予告)について検討する。 (1)参考資料1ないし4に記載された事項等 ア 参考資料1に記載された事項及び参考1発明 (ア)参考資料1に記載された事項 参考資料1には、「濃淡視感性カーペット」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。 ・「【技術分野】 【0001】 本発明は、屋内外の出入口に置き敷きして出入口を通過する歩行者の靴裏に付着している塵埃を捕捉するために使用されるタフテッドパイル布帛を表面材とするカーペットに関するものである。」 ・「【0008】 そこで本発明は、パイル長Hが5mm以上のタフテッドパイル布帛のパイル面にヘタラシ技法による図柄と同様に視感的濃淡差による図柄模様を描出することを目的とする。」 ・「【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明に係るカーペットは、(1) 熱可塑性合成繊維に成るパイル繊維11で構成されるパイル糸を基布19に差し込んでパイルを形成したパイル布帛を表面材とし、(2) そのパイル面15に、レーザー光線に加熱されてパイル繊維の先端が熱溶融して窪み、その溶融塊が表面に固着した凹部17が形成されており、(3) その凹部に、基布に対して20度以下の傾斜角度θで傾斜し、その傾斜方向Sに傾斜の頂点26から傾斜の底点27へと続く長さLが15mm以上の斜面23が形成されていることを特徴とする(図1~5,図13参照)。 【発明の効果】 【0010】 熱可塑性合成繊維(11)は、加熱されて溶融し溶融塊を形成する過程では、熱溶融した繊維ポリマーに作用する表面張力によって溶融塊が丸味を帯びて脹らみ、その脹らんだ分だけパイル繊維11の先端が短くなって窪みが発生する。 その溶融塊とパイル面のレーザー光線に加熱されない部分の未加熱パイル繊維の先端とは形状が相異し、未加熱パイル繊維の先端に比して太く丸味を帯びた溶融塊は光沢を帯び、溶融塊が固着した凹部17とレーザー光線に加熱されずに残って凹部に対して相対的に隆起している凹部の周囲の凸部18の間には少なくとも光沢差による視感的濃淡が発生する。」 ・「【発明を実施するための形態】 【0014】 本発明において、斜面23の傾斜角度θが20度以下、即ち、傾斜方向Sにおける斜面の頂点26から底面28の底点27に到る傾斜長さLで頂点26から底点27に到る底面28の深さKを除して示される傾斜角度θの正接函数tanθが0.3639702(=tan20°)以下とは、45度以上の傾斜角度をもってパイル層に刻み込まれるV字形切込溝によって描出される所謂”カービング”は、本発明の予期する効果をもたらさず、本発明の対象外になることを意味する。 【0015】 斜面の頂部26と底部27との間の光沢変化と濃淡変化をなだらかにするためには、傾斜角度θを10度以下、即ちtanθ=0.176(=tan10°)以下に、更に好ましくは、傾斜角度θを5度以下、即ちtanθ=0.0875(=tan5°)以下にすることが望ましい。 【0016】 そのように傾斜角度θの少ない凹部は浅く、斜面に分布する溶融塊の粒径が細かく、分布量も少なく、パイル面の真上からは凹部17と凸部18との間の濃淡差が看取されても、視線とパイル面との間の視覚が30度以下となる遠方からは凹部17と凸部18との間の濃淡差は左程看取されず、歩行者が凹部17を通過する過程で凹部17によってパイル面に描かれた図柄が見え隠れする度合いが大きくなり、カーペットの美観が高まる。 【0017】 見え隠れする度合いの大きい図柄は、歩行者の注意を喚起し、塵埃の拭き取りを促す点でもダストコントロールマットに適した塵埃捕捉機能の高いカーペットが得られる。 従って、斜面23の傾斜角度θは凹部17と凸部18との段差(K)が感じられない程度に極僅か、即ち5度(tan5°=0.0875)以下にすることが望ましい。 車椅子やキャリヤカーの移動の妨げにならないようにするには、凹部17と凸部18との段差(K)を5mm以下にすることが望ましい(図1参照)。 原着パイル繊維が形成する溶融塊は、その質量に応じて原着顔料の含有量も変化するので、斜面の頂点26と底点27の間には色相上のなだらかな濃淡差も生じる。 そして斜面23の傾斜角度θに応じて光の反射角度も変化する。 【0018】 このように光沢と濃淡が変化し且つその変化の度合いの異なる斜面23a・23b・23c・23d・23e………が散在し、それらの斜面23の形成されている凹部17と凸部18とでは光沢だけではなく色調にも濃淡差が生じ、それらの間の光沢と濃淡差によって、ヘタラシ図柄と同様の視感的図柄が描出され、カーペットの美観が高まる(図1~5参照)。 凹部の内部の入隅24と出隅25や下坂30と上坂29では光の反射方向が変化するので、歩行者が凹部17の上を通過する過程で目に映るパイル面の美観が刻々変化する(図2参照)。 【0019】 従って、本発明の好ましい第1の実施態様は、傾斜方向Sが異なる複数種類の何れかの斜面23a・23b・23c・23dが内部に形成されている複数種類の凹部17をパイル面15に形成することである。その複数種類の凹部は、傾斜方向Sが異なる複数種類の斜面が一緒に介在する凹部であってもよいし、例えば、ある凹部の斜面は左向き、別の凹部の斜面は右向き、他の別の凹部の斜面は後ろ向きと言うように、傾斜方向Sがそれぞれ異なる複数種類の斜面が個々に介在する複数の凹部であってもよい(図2参照)。」 ・「【産業上の利用可能性】 【0050】 本発明によって得られるパイル布帛は、カーマット(車両足元マット)、ダストコントロールマット、カーペット、タイルカーペット等の敷物類に利用される。」 ・「【符号の説明】 【0051】 11:パイル繊維 14:パイル布帛 15:パイル面 17:凹部 18:凸部 19:基布 20:レーザー光線 23:斜面 24:入隅 25:出隅 26:頂点 27:底点 28:底面 29:上坂 30:下坂 31:走査地帯 32:丘陵 33:区画 53:発振器 54:照射レンズ 55:反射板 56:演算装置 61:スプレー装置 62:乾燥機 63:照射装置 64:洗浄装置 65:乾燥機 81:ボーダー柄 82:連続柄 91:点字標識 E :ボーダー幅 F :ボーダー間隔 G :間隔 H :パイル長 K :深さ L :傾斜長さ R :内接円直径 S :傾斜方向 W :搬送方向の直角方向(幅方向) X :走査方向 Y :直角方向 Z :搬送方向(長さ方向) θ :傾斜角度」 ・「【図1】 」(当審注:時計回りに90度回転させている。) ・「【図2】 」(当審注:時計回りに90度回転させている。) (イ)参考1発明 参考資料1の【0009】並びに図1及び2によると、「斜面23」は、「凹部17」から「凸部18」までに亘って、「凹部17」の「底面28」からの高さが漸次変化しているといえる。 また、参考資料1の【0015】並びに図1及び2によると、「前記斜面23」の「底点27」又は「底面28」寄りの少なくとも一部に、「該凹部17」の「底面28」とのなす角が170°以上180°より小さい角度の部分が形成されているといえる。 さらに、参考資料1の【0015】並びに図1及び2によると、「前記斜面23」の「頂点26」又は「凸部18」寄りの少なくとも一部に、「当該凸部118」の表面とのなす角が180°より大きく190°以下である角度の部分が形成されているといえる。 さらにまた、参考資料1の【0017】並びに図1及び2によると、「前記斜面23」の少なくとも一部に、「凹部17」の「底点27」から「頂点26」までの平面視における傾斜長さが最も長い「下坂30」を有し、傾斜長さが最も長い「下坂30」が設けられた「斜面23」の「凸部18」寄りに、「当該凸部18」の表面とのなす角が180°より大きく185°以下である角度の部分が形成されているといえる。 以上の事項を踏まえ、参考資料1に記載された事項を整理すると、参考資料1には次の発明(以下、「参考1発明」という。)が記載されていると認める。 <参考1発明> 「タフテッドパイル布帛14を表面材とし、そのパイル面15に、凹部17と凸部18が形成されたカーペットであって、 前記凹部17から凸部18までに亘って、前記凹部17の底面28からの高さが漸次変化する斜面23を有し、 前記斜面23の底点27又は底面28寄りの少なくとも一部に、当該凹部17の底面28とのなす角が170°以上180°より小さい角度の部分が形成され、及び、 前記斜面23の頂点26又は凸部18寄りの少なくとも一部に、当該凸部118の表面とのなす角が180°より大きく190°以下である角度の部分が形成され、 前記斜面23の少なくとも一部に、凹部17の底点27から頂点26までの平面視における傾斜長さLが最も長い下坂30を有し、 傾斜長さLが最も長い下坂30が設けられた斜面23の凸部18寄りに、当該凸部18の表面とのなす角が180°より大きく185°以下である角度の部分が形成されているカーペット。」 イ 参考資料2に記載された事項 参考資料2には、「パイル布帛」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【0002】 パイル面を部分的に加熱押圧して凹凸模様を描出することは公知である(例えば、特許文献1参照)。パイル面は、基布に植設されたパイルによって構成されており、パイルがクッション性に富むことから、加熱押圧してセットされた凹部のパイルは、その弾性復元力によって次第に元の直立状態に復元し易く、パイル面に描出された凹凸模様が消失し易い。」 ・「【0007】 そこで本発明は、パイル面に加熱押圧して描出される凹凸模様の凹部の谷底の溶融皮膜を基布に密着させて剥離脱落し難くし、絶えずパイル面が擦られて使用される車両座席の表面材に適したパイル布帛を得ることを目的とする。」 ウ 参考資料3に記載された事項 参考資料3には、「車両椅子張地」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【0008】 【発明の目的】そこで本発明は、パイル面が平らに綺麗に揃い、車両椅子張地としてのクッション性、耐摩耗性、耐光性、染色堅牢度等の物性品質を具備し耐久性に富み、吸湿性を有していて静電気が発生し難くベトツキ蒸れ感を与えない車両椅子張地に適したパイル布帛を得ることを目的とする。」 エ 参考資料4に記載された事項 参考資料4には、「ダストコントロールマット」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【0005】 パイルを加熱溶融して剛直にすれば、パイル層は剣山のように硬くなり、靴裏に付着している塵埃の掻き取り機能が付与されてダストコントロールマットの塵埃捕捉効果は高まるが、素足が触れて負傷する危険であり、パイル自体もクッション性を失って折れ曲がり易くなり、ダストコントロールマットの耐用性が損なわれる。 【0006】 そこで本発明は、クッション性を損なうことなくダストコントロールマットの塵埃捕捉性を高めることを目的とする。」 ・「【0022】 本発明によって得られるパイル布帛は、ダストコントロールマットのほか、カーマット(車両足元マット)、カーペット、タイルカーペット等の敷物類に利用される。」 (2)対比・判断 本件特許発明1と参考1発明を対比する。 参考資料2ないし4によると、パイル布帛はクッション性を有するものであるから、参考1発明における「タフテッドパイル布帛14を表面材とし、そのパイル面15に、凹部17と凸部18が形成されたカーペット」は本件特許発明1における「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材(表面側にパイルを有したシート材を除く)」と、「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材」という限りにおいて一致する。 また、参考1発明における「前記凹部17から凸部18までに亘って、前記凹部17の底面28からの高さが漸次変化する斜面23」は本件特許発明1における「前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)」に相当し、以下同様に、「前記斜面23の底点27又は底面28寄りの少なくとも一部に、当該凹部17の底面28とのなす角が170°以上180°より小さい角度の部分が形成され」は「前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され」に、「前記斜面23の頂点26又は凸部18寄りの少なくとも一部に、当該凸部118の表面とのなす角が180°より大きく190°以下である角度の部分が形成され」は「前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され」に、「前記斜面23の少なくとも一部に、凹部17の底点27から頂点26までの平面視における傾斜長さLが最も長い下坂30を有し、 傾斜長さLが最も長い下坂30が設けられた斜面23の凸部18寄りに、当該凸部18の表面とのなす角が180°より大きく185°以下である角度の部分が形成されている」は「前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、 前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成されている」に、それぞれ相当する。 したがって、両者は、次の点で一致する。 <一致点> 「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、 前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、 前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、 前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、 前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、 前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成されているシート材。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点1> 「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材」に関して、本件特許発明1においては、「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材(表面側にパイルを有したシート材が除く)」であるのに対し、参考例1発明においては、「タフテッドパイル布帛14を表面材とし、そのパイル面15に、凹部17と凸部18が形成されたカーペット」である、すなわち表面側にパイルを有したシート材である点。 そして、相違点1は実質的な相違点であることは明らかである。 したがって、本件特許発明1は、参考1発明、すなわち参考資料1に記載された発明であるとはいえない。 (3)取消理由(決定の予告)についてのむすび したがって、本件特許の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、取消理由(決定の予告)によっては、本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。 2 特許異議申立ての理由について (1)甲1ないし3に記載された事項等 ア 甲1に記載された事項等 甲1は、「表皮材及び構造体並びに表皮材の製造方法」に関するものである。 甲1の図1、3、4、8及び9によると、甲1の「基布層(2)」の「凹状の熱変形部(4)」の周囲の部分は、凹状となっていないことから、「非凹部」であるといえる。 また、甲1の【0025】並びに図1、3、4、8及び9によると、「基布層(2)」は、「非凹部」の表面から「凹状の熱変形部(4)」の中心に向かって徐々に「基布層(2)」の厚みが小さくなっていることから、「凹状の熱変形部(4)」から「非凹部」までに亘って、「凹状の熱変形部(4)の底からの高さが漸次変化する漸変部」を有しているといえる。 さらに、甲1の【0025】並びに図1、3、4、8及び9によると、「基布層(2)」は、「表皮層(3)」に覆われて、「表皮材(1)」の使用時に露出しないといえる。 以上の事項を踏まえて、甲1の【0006】、【0007】、【0010】ないし【0013】、【0022】ないし【0027】、【0034】、【0036】及び【0040】並びに図1、3、4、8及び9に記載された事項を整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1発明> 「クッション性を有する基布層(2)の一面側に、凹状の熱変形部(4)と非凹部が形成された表皮材(1)であって、 前記凹状の熱変形部(4)は、前記非凹部までに亘って、前記凹状の熱変形部(4)の底からの高さが漸次変化する漸変部を有し、 前記基布層(2)の一面側には、表皮層(3)が積層され、 前記基布層(2)は、ダブルラッセル編み機を用いて編成された立体編み地であり、 この基布層(2)は、前記表皮層(3)に覆われて、前記表皮材(1)の使用時に露出しない表皮材(1)。」 イ 甲2に記載された事項等 甲2は、「座席用表皮材、座席用表皮材の製造方法、及びエンボスロール」に関するものである。 甲2の図10及び11によると、甲2の「座席用表皮材P」の「凹部60」の周囲の部分は、凹状となっていないことから、「非凹部」であるといえる。 また、甲2の[0063]ないし[0066]、[0068]ないし[0070]及び図10によると、「座席用表皮材P」は、「凹部60」の底面から「非凹部」の表面に向かって厚みが緩やかに増加する傾斜面が形成されているから、「凹部60」から「非凹部」までに亘って、「凹部60の底からの高さが漸次変化する漸変部」を有しているといえ、「型押部51」は、「型押部51」の「頂面56」から「ベース面52」に向かって高さが低くなっている「斜面53」が形成されているから、「型押部51」の「頂面56」から「ベース面52」までに亘って、「型押部51の頂面56からの深さが漸次変化する漸変部」を有しているといえる。 さらに、甲2の[0052]に「第2加熱押圧部21bの水平距離、つまり、第1加熱押圧部21a端部と非加熱押圧部22端部との水平距離をcとすると、第2加熱押圧部31bの形状は、例えば、 0.2≦(a-b)/c≦2   ・・・・・ (2) の関係式を満たしている。」と記載され、tan-10.2=11°及びtan-12=63°であり、180°-11°=169°、360°-169°=191°、180°-63°=117°及び360°-117°=243°という計算が成り立つから、甲2の図7に記載された「第1加熱押圧部21a」と「第2加熱押圧部21b」のなす角度は、117℃以上169°以下となり、第2実施形態の場合にこの角度と対応する「型押部51」の「頂面56」と「傾斜面53」とのなす角度は、191°以上243°以下となる。 さらにまた、甲2の図1、5、6、10及び11によると、「クッション材4」は、「表地2」に覆われて、「座席用表皮材P」の使用時に露出しないといえる。 以上の事項を踏まえて、甲2の[0002]、[0008]、[0027]ないし[0033]、[0035]ないし[0038]、[0041]ないし[0046]、[0049]、[0063]ないし[0066]、[0068]ないし[0070]、[0074]及び図1ないし11に記載された事項を整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。 <甲2発明> 「クッション材4の表地2側に型押部51とベース面52が形成されたエンボスロール50を押圧する工程を有し、前記クッション材4の表地2側に凹部60と非凹部が形成された座席用表皮材Pを製造する製造方法であって、 前記型押部51からベース面52までに亘って、前記型押部51の頂面56からの深さが漸次変化する漸変部を設け、 前記押圧する工程において、 前記型押部51及び型押部51の漸変部が前記クッション材4の表面側に当接した状態で、前記型押部51を押圧し、 前記型押部51の漸変部の前記型押部51の頂面56寄りの少なくとも一部に、当該型押部51の頂面56の表面とのなす角が191°以上243°以下である部分が形成されている座席用表皮材Pを製造する製造方法。」 ウ 甲3に記載された事項 甲3には、「多層繊維構造体およびそれからなるフィルターろ材」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【請求項1】 下層、中間層、上層の少なくとも3層からなる多層繊維構造体であって、中間層が直径10~500nmの超極細繊維からなる繊維構造体、上層と下層が直径1~100μmの繊維からなる不織布であり、エンボス加工により上層と下層とが部分的に熱圧着しており、熱圧着により形成された凹部の断面において、底部より上開口部が大きく、凹部の側面に接する接線と底部とのなす角度が140~170°であることを特徴とする多層繊維構造体。」 ・「【0023】 さらに多層繊維構造体の全面積に対する熱圧着している凹部の底部分の面積比率は1~15%が好ましく、3~8%がより好ましい。該当部分の面積比率が1%未満の場合には、十分な接着強度が得られず、多層繊維構造体の取扱性に劣る。一方、該当部分の面積比率が15%を超える場合には、圧力損失が高くなるため、好ましくない。上記凹部の底部分の形状は特に限定されるものではなく、円形、楕円形、長方形等が上げられる。」 ・「【0031】 上層または下層の繊維構造体の上に超極細繊維の繊維構造体からなる中間層を形成した後、さらにその上に反対の層を積層、すなわち上層の繊維構造体上に中間層を形成した場合はその上に下層を、下層の繊維構造体上に中間層を形成した場合はその上に上層を積層し、これらをエンボス加工により、部分的に熱圧着する。エンボスロール温度は、上層および/または下層に含まれる熱可塑性繊維あるいは樹脂の融点±20℃となる温度領域が好ましく、該融点±10℃の温度領域がより好ましい。 【0032】 また、熱圧着により形成された凹部の断面において、底部より上開口部が大きく、凹部の側面に接する接線と底部とのなす角度を140~170°とするには、図2にエンボスロールに設けられた多数の円錐台形状凸部のうち1つ凸部断面の概略図を示すが、この図に示したエンボス角度θ’を約50~80°に設計することで上記範囲とすることができる。また、多層繊維構造体の全面積に対する凹部の底部の面積の比率は、エンボスの頂上部の面積を所望の面積となるようエンボス形状を設計することで前述した望ましい範囲とすることができる。さらに、多層繊維構造体の厚みに対する凹部の底部の厚みの比率は、上下ロールのクリアランスを調整することによって前述した望ましい範囲とすることができる。」 ・「【0042】 次にこの積層体を、多数の凸部分を有し、加熱された彫刻ローラ(上ローラ)と平滑な耐熱性樹脂ローラ(下ローラ)を用いて、上ローラの表面温度を160℃、上下ローラ間の線圧を0.5t/30cm、クリアランス0.7mmの条件で、エンボス加工を行い、上層および下層を熱圧着させた。前記加熱ローラは、多数の凸部分を有する彫刻ロールであり、1つの該凸部は円錐台形状、すなわち、凸部断面が図2に示す台形でかつ凸部の頂上部が円形である形状を有し、1つの凸部頂上部の面積が0.2cm2、図2に示す凸部断面のエンボス角度θ’が55°であり、多層繊維構造体の全面積に対する、エンボス凸部の頂上部の合計面積、すなわち、多層繊維構造体に形成された熱圧着している凹部底部の合計面積の比率が8%となるローラを使用した。結果を表1に示す。」 (2)申立理由1(1)(甲第1号証を主引用文献とし、甲第2及び3号証を副引用文献とする進歩性)について ア 本件特許発明1について (ア)対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明における「クッション性を有する基布層(2)」は本件特許発明1における「クッション基材(2)」に相当し、以下、同様に、「一面側」は「表面側」に、「凹状の熱変形部(4)」は「凹部(3)」に、「非凹部」は「非凹部(4)」に、「表皮材(1)」は「シート材」に、「前記凹状の熱変形部(4)の底からの高さが漸次変化する漸変部」は「前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)」に、それぞれ相当する。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、 前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有するシート材。」 そして、次の点で相違する。 <相違点1-1> 「シート材」に関して、本件特許発明1においては、「(表面側にパイルを有したシート材を除く)」と特定されているのに対して、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点1-2> 本件特許発明1においては、「前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、 前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、 前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、 前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成されている」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 (イ)判断 事案の鑑み、相違点1-2から検討する。 甲1の図8及び9からみて、甲1発明において、「漸変部」の「凹状の熱変形部(4)」の底寄りの一部が「凹状の熱変形部(4)」の底表面とのなす角が170°以上180°より小さい鈍角面部分を形成しているとはいえない。 また、甲2の図7に記載された「第1加熱押圧部21a」と「第2加熱押圧部21b」のなす角度は、117℃以上169°以下であるから、甲2には、表皮材の凹部と漸変部のなす角を170°以上180°より小さい鈍角面部分とすることは記載も示唆もされていない。 さらに、甲3は、そもそも、表皮材に関する文献ではなく、当然のことながら、表皮材の凹部と漸変部のなす角を170°以上180°より小さい鈍角面部分とすることは記載も示唆もされていない。 したがって、甲1発明において、甲2及び3に記載された事項を適用して、相違点1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「凹部から非凹部にかけてのグラデーション」などを実現できる(本件特許明細書の【0018】)という格別顕著な効果を奏するものである。 よって、相違点1-1について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明並びに甲2及び3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件特許発明2について (ア)対比 本件特許発明2と甲1発明を対比するに、両者の間には、本件特許発明1と甲1発明との間と同様の相当関係が成り立つ。 また、甲1発明における「表皮層(3)」は本件特許発明2における「表皮材(7)」に相当する。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、 前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、 前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層されているシート材。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点2-1> 本件特許発明2においては、「前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、 前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、 前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って前記高さ(H)が一様に漸次変化し且つ前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い方向である主漸変方向(L)を有する部分が設けられ、 前記主漸変方向(L)を有する部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点2-2> 本件特許発明2においては、「前記表皮材(7)は、パイルを有しておらず、 前記クッション基材(2)は、合成樹脂フォームであり、 この合成樹脂フォームは、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点2-3> 本件特許発明2においては、「前記凹部(3)の平面視形状の少なくとも一部、及び/又は、前記凹部(3)の底の平面視形状の少なくとも一部は、湾曲している」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 (イ)判断 まず、相違点2-1について検討する。 上記ア(イ)と同様であり、甲1発明において、甲2及び3に記載された事項を適用して、相違点2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明2は本件特許発明1と同様に「凹部から非凹部にかけてのグラデーション」などを実現できるという格別顕著な効果を奏するものである。 よって、相違点2-2及び2-3について検討するまでもなく、本件特許発明2は甲1発明並びに甲2及び3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 本件特許発明3について (ア)対比 本件特許発明3と甲1発明を対比するに、両者の間には、本件特許発明1と甲1発明との間と同様の相当関係が成り立つ。 また、甲1発明における「表皮層(3)」は本件特許発明3における「表皮材(7)」に相当し、「ダブルラッセル編み機を用いて編成された立体網み地」である「基布層(2)」は「ダブルラッセル網地」である「クッション基材(2)」に相当する。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、 前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、 前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層され、 前記クッション基材(2)は、ダブルラッセル編地であり、 このダブルラッセル編地は、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出しないシート材。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点3-1> 本件特許発明3においては、「前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、 前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、 前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、 前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点3-2> 本件特許発明3においては、「前記凹部(3)の平面視形状の少なくとも一部、及び/又は、前記凹部(3)の底の平面視形状の少なくとも一部は、湾曲している」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 (イ)判断 まず、相違点3-1について検討する。 上記ア(イ)と同様であり、甲1発明において、甲2及び3に記載された事項を適用して、相違点3-1に係る本件特許発明3の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明3は本件特許発明1と同様に「凹部から非凹部にかけてのグラデーション」などを実現できるという格別顕著な効果を奏するものである。 よって、相違点3-2について検討するまでもなく、本件特許発明3は甲1発明並びに甲2及び3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 エ 本件特許発明4について (ア)対比 本件特許発明4と甲1発明を対比するに、両者の間には、本件特許発明3と甲1発明との間と同様の相当関係が成り立つから、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、 前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、 前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層され、 前記クッション基材(2)は、ダブルラッセル編地であり、 このダブルラッセル編地は、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出しないシート材。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点4-1> 本件特許発明4においては、「前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、 前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、 前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、 前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点4-2> 本件特許発明4においては、「前記漸変部(5)の平面視における凹部(3)の底と当該漸変部(5)の境界の少なくとも一部が描く形、及び/又は、前記漸変部(5)の平面視における非凹部(4)と当該漸変部(5)の境界の少なくとも一部が描く形は、湾曲している」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 (イ)判断 まず、相違点4-1から検討する。 上記ア(イ)と同様であり、甲1発明において、甲2及び3に記載された事項を適用して、相違点4-1に係る本件特許発明4の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 したがって、甲1発明において、甲2及び3に記載された事項を適用して、相違点4-1に係る本件特許発明4の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明4は本件特許発明1と同様に「凹部から非凹部にかけてのグラデーション」などを実現できるという格別顕著な効果を奏するものである。 よって、相違点4-2について検討するまでもなく、本件特許発明4は甲1発明並びに甲2及び3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 オ 申立理由1(1)についてのむすび したがって、申立理由1(1)によっては、本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。 (3)申立理由1(2)(甲第1号証に基づく新規性)について ア 対比・判断 本件特許発明4と甲1発明を対比するに、両者は上記(2)エ(ア)のとおりの一致点並びに相違点4-1及び4-2を有する。 そして、上記相違点4-1及び4-2のうち、少なくとも相違点4-1は実質的な相違点であるから、本件特許発明4は甲1発明であるとはいえない。 イ 申立理由1(2)についてのむすび したがって、申立理由1(2)によっては、本件特許の請求項4に係る特許を取り消すことはできない。 (4)申立理由1(3)(甲第2号証を主引用文献とし、甲第3号証を副引用文献とする進歩性)について ア 対比 本件特許発明5と甲2発明を対比する。 甲2発明における「クッション材4」は本件特許発明5における「クッション基材(2)」に相当し、以下、同様に、「表地2側」は「表面側」に、「型押部51」は「エンボス凸部(11)」に、「ベース面52」は「非エンボス凸部(12)」に、「エンボスロール50」は「エンボス型材(13)」に、「押圧する工程」は「押圧するエンボス工程(E)」に、「凹部60」は「凹部(3)」に、「非凹部」は「非凹部(4)」に、「座席用表示材P」は「シート材」に、「型押部51の頂面56からの深さが漸次変化する漸変部」は「エンボス凸部(11)の頂からの深さ(D)が漸次変化するエンボス漸変部(14)」に、それぞれ相当する。 したがって、両者は次の点で一致する。 「クッション基材(2)の表面側にエンボス凸部(11)と非エンボス凸部(12)が形成されたエンボス型材(13)を押圧するエンボス工程(E)を有し、前記クッション基材(2)の表面側に凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材を製造する製造方法であって、 前記エンボス凸部(11)から非エンボス凸部(12)までに亘って、前記エンボス凸部(11)の頂からの深さ(D)が漸次変化するエンボス漸変部(14)を設け、 前記エンボス工程(E)において、 前記エンボス凸部(11)及びエンボス漸変部(14)が前記クッション基材(2)の表面側に当接した状態で、前記エンボス型材(13)を押圧するシート材の製造方法。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点5> 本件特許発明5においては、「前記エンボス漸変部(14)のエンボス凸部(11)の頂寄りの少なくとも一部に、当該エンボス凸部(11)の頂表面とのなす角(θa’)が180°より大きく190°以下であるエンボス広角面部分(15a)が形成され、及び、 前記エンボス漸変部(14)の非エンボス凸部(12)寄りの少なくとも一部に、当該非エンボス凸部(12)の基部(13a)における表面(13c)とのなす角(θb’)が170°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分(15b)が形成され、 前記エンボス漸変部(14)の少なくとも一部に、前記エンボス凸部(11)の頂から非エンボス凸部(12)までの平面視におけるエンボス漸変距離が最も長い部分を有し、 前記エンボス漸変距離が最も長い部分が設けられたエンボス漸変部(14)の非エンボス凸部(12)寄りに、当該非エンボス凸部(12)の基部(13a)における表面(13c)とのなす角(θb’)が175°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分(15b)が形成されている」と特定されているのに対し、甲2発明においては、「前記漸変部の前記型押部51の頂寄りの少なくとも一部に、当該型押部51の頂表面とのなす角が191°以上243°以下である部分が形成されている」と特定されている点。 イ 判断 そこで、相違点5について検討する。 甲2発明の「前記漸変部の前記型押部51の頂寄りの少なくとも一部に、当該型押部51の頂表面とのなす角が191°以上243°以下である部分が形成されている」という特定事項における「191°以上243°以下」は、本件特許発明5の「前記エンボス漸変部(14)のエンボス凸部(11)の頂寄りの少なくとも一部に、当該エンボス凸部(11)の頂表面とのなす角(θa’)が180°より大きく190°以下であるエンボス広角面部分(15a)」という特定事項における「180°より大きく190°以下」と、重ならないし、甲2には、「191°以上243°以下」に代えて「180°より大きく190°以下」とすることの動機付けとなるような記載もない。 また、甲3は、そもそも、表皮材に関する文献ではなく、当然のことながら、座席用表皮材を製造するエンボスロールにおいて、エンボス漸変部のエンボス凸部の頂寄りの少なくとも一部に、当該エンボス凸部の頂表面とのなす角が180°より大きく190°以下であるエンボス広角面部分を形成することは記載も示唆もされていない。 したがって、甲2発明において、甲3に記載された事項を適用して、相違点5に係る本件特許発明5の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明5は「凹部から非凹部にかけてのグラデーション」などを実現できる(本件特許明細書の【0018】)という格別顕著な効果を奏するものである。 よって、本件特許発明5は甲2発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 申立理由1(3)についてのむすび したがって、申立理由1(3)によっては、本件特許の請求項5に係る特許を取り消すことはできない。 (5)申立理由2(明確性)について ア 明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 そこで、検討する。 イ 明確性要件の判断 本件特許明細書の【0043】の「尚、一様な略平面である漸変部5の平面視において、凹部3から非凹部4までに亘って高さHが一様に漸次変化し且つ凹部3の底3aから非凹部4までの漸変距離Zが最も長い方向を、主漸変方向Lとする。」及び【0044】の「その他、凹部3の底3aから、当該底3aを囲む非凹部4までの漸変距離Zが何れの方向でも略同じ場合(凹部3の底3aを囲む漸変部5の平面視形状の内形と外形が、当該底3aの平面視形状と略相似である場合など)には、何れの方向も主漸変方向Lとなるため、1個の漸変部5が主漸変方向Lのみを有することとなる。」という記載によると、本件特許の請求項2に記載された「前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って前記高さ(H)が一様に漸次変化し且つ前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い方向である主漸変方向(L)を有する部分が設けられ」における「漸変距離(Z)が最も長い方向」がそれよりも長い方向がないことを意味していることは当業者に明らかである。 また、本件特許の請求項3に記載された「前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し」における「漸変距離(Z)が最も長い部分」がそれよりも長い部分がないことを意味していることも当業者に明らかである。 したがって、本件特許発明2及び3に関して、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 ウ 申立理由2についてのむすび したがって、申立理由2によっては、本件特許の請求項2及び3に係る特許を取り消すことはできない。 第6 結語 上記第5のとおり、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は取消理由(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2019-700229

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