特許異議申立
2015-700207
複数の補強バンドを有する環状構造体
- 審判番号
- 2015-700207
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-547458
- 登録番号
- 特許第5719940号(P5719940)
- 請求日
- 2015年11月20日
- 審決日
- 2017年07月13日
- 公報発行日
- 2018年02月23日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
- 【権利者代理人】西島 孝喜
- 【権利者代理人】弟子丸 健
- 【権利者代理人】田中 伸一郎
- 【権利者代理人】井野 砂里
- 【権利者代理人】松下 満
- 【権利者代理人】倉澤 伊知郎
- 【権利者】ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム
- 【権利者代理人】西島 孝喜
- 【権利者代理人】弟子丸 健
- 【権利者代理人】田中 伸一郎
- 【権利者代理人】井野 砂里
- 【権利者代理人】松下 満
- 【権利者代理人】倉澤 伊知郎
- 【異議申立人】岡本 政成
- 審判長/審判官
- 審判長 氏原 康宏
- 審判官 島田 信一
- 審判官 出口 昌哉
- 分類
- P1652.121-ZDB(B29D) / P1652.537-ZDB(B29D) / P1652.561-ZDB(B29D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法113条2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第131条の2第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5719940号発明「複数の補強バンドを有する環状構造体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
平成29年2月27日付け訂正請求において、特許第5719940号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項19、20について訂正することを認める。
特許第5719940号の請求項17、18に係る特許を取り消す。
同請求項19、20に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5719940号の請求項1~20に係る特許についての出願は、平成27年3月27日に特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人岡本政成(以下「特許異議申立人」という。)より請求項17~20に係る特許に対して特許異議の申立てがなされ、平成28年3月2日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年6月7日に意見書の提出及び訂正請求がなされ、同年7月1日付で訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項)、同年8月4日付けで特許異議申立人より意見書が提出され、同年11月21日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である平成29年2月27日に意見書の提出及び訂正請求がなされ、同年3月2日付で訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項)、同年4月5日付けで特許異議申立人より意見書が提出され、同年4月20日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年6月16日に意見書及び手続補正書の提出がなされたものである。
第2 訂正の適否
1 訂正請求及びその手続補正について
1-1 手続補正について
平成29年2月27日付けの訂正請求書(以下「訂正請求書」という。)及びこれに添付した訂正特許請求の範囲は、同年6月16日付けの手続補正書(以下「補正書」ということがある。)により補正されたので、まずは当該補正の適否について検討する。
なお、平成28年6月7日になされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
(1)補正の内容
ア 訂正請求書の2頁20~22行に
『イ 訂正事項2
登録時の請求項17に「前記環状補強構造体の軸方向の幅は、前記ウェブスポークの軸方向の幅よりも大きい」との限定を加える。』とあるのを、
補正書のとおり、
『イ 訂正事項2
登録時の請求項17に「前記環状補強構造体の軸方向の幅は、前記ウェブスポークの軸方向の最小幅よりも大きい」との限定を加える』と補正する。
(2)補正の適否
訂正拒絶理由通知に対する補正は、審判便覧(改訂第16版)の「67-05.3P 4.(3)イ」に定めてあるように、訂正事項の削除、軽微な瑕疵の補正等、訂正請求書の要旨を変更しないもの場合に限り許容されるところ、上記補正は、「幅」を「最小幅」と変更するものであるから、訂正事項の削除、軽微な瑕疵の補正等には該当せず、訂正請求書の要旨を変更するものである。
したがって、上記補正書による補正は、訂正請求書の要旨を変更するものであるから、特許法120条の5第9項で準用する特許法第131条の2第1項の規定に適合しないので、当該補正を認められない。
1-2 訂正請求について
(1)訂正の内容
上記1-1のとおり、訂正請求書及びこれに添付した訂正特許請求の範囲の補正は認められないので、訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を平成29年2月27日付け訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項17~20について訂正することを求めるものである。
そして、本件訂正における訂正事項は以下のとおりである。
ア 訂正事項1
登録時の請求項17に「前記環状バンドの軸方向の幅は、前記ウェブスポークの軸方向の幅よりも大きく」との限定を加える。
イ 訂正事項2
登録時の請求項17に「前記環状補強構造体の軸方向の幅は、前記ウェブスポークの軸方向の幅よりも大きい」との限定を加える。
ウ 訂正事項3
登録時の請求項19の「前記コアに、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、セラミック、コンクリート、及び有機金属化合物からなる群から選択されるマトリクス材料が含浸される、請求項17に記載の非空気入りホイール。」を独立形式に改める。
エ 訂正事項4
独立形式に改めた請求項19の「前記周方向に沿って延びる内側補強バンド」を、「コードを備え、前記周方向に沿って延びる内側補強バンド」に訂正する。
オ 訂正事項5
独立形式に改めた請求項19の「前記周方向に沿って延び、前記内側補強バンドの半径方向外側に配置される外側補強バンド」を、「コードを備え、前記周方向に沿って延び、前記内側補強バンドの半径方向外側に配置される外側補強バンド」に訂正する。
カ 訂正事項6
独立形式に改めた請求項19に「前記環状バンドのマトリクス材料は継ぎ目のない一体成型品であり、前記内側補強バンド及び前記外側補強バンドを構成するコードは前記環状バンドのマトリクス材料に直接接触している」との限定を加える。
キ 訂正事項7
独立形式に改めた請求項19の「前記コアに、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、セラミック、コンクリート、及び有機金属化合物からなる群から選択されるマトリクス材料が含浸される」を、「前記コアは、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、セラミック、コンクリート、及び有機金属化合物からなる群から選択される含浸されたマトリクス材料を有する」と訂正する。
ク 訂正事項8
登録時の請求項20の「前記コアに、ポリウレタンを含むマトリクス材料が含浸される、請求項17に記載の非空気入りホイール。」を独立形式に改める。
ケ 訂正事項9
独立形式に改めた請求項20の「前記周方向に沿って延びる内側補強バンド」を、「コードを備え、前記周方向に沿って延びる内側補強バンド」に訂正する。
コ 訂正事項10
独立形式に改めた請求項20の「前記周方向に沿って延び、前記内側補強バンドの半径方向外側に配置される外側補強バンド」を、「コードを備え、前記周方向に沿って延び、前記内側補強バンドの半径方向外側に配置される外側補強バンド」に訂正する。
サ 訂正事項11
独立形式に改めた請求項20に「前記環状バンドのマトリクス材料は継ぎ目のない一体成型品であり、前記内側補強バンド及び前記外側補強バンドを構成するコードは前記環状バンドのマトリクス材料に直接接触している」との限定を加える。
シ 訂正事項12
独立形式に改めた請求項20の「前記コアに、ポリウレタンを含むマトリクス材料が含浸される」を、「前記コアは、ポリウレタンを含む含浸されたマトリクス材料を有する」と訂正する。
ス 引用関係の解消の求め
訂正後の請求項19、20の記載については、引用関係の解消を目的とする訂正を含むものであるから、訂正後の請求項19、20の訂正が認められる場合には、請求項19、20は、請求項17、18とは別途訂正することを求める。
(2)訂正の適否
ア 訂正事項1、2について
請求項17に係る訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものではあるが、以下のとおり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正とはいえず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものではないから、訂正後の請求項17及び請求項17を引用する訂正後の請求項18に係る訂正事項1及び2については、訂正を認めることはできない。
(ア)訂正事項2の内容
本件特許の特許請求の範囲の請求項17に「前記環状補強構造体の軸方向の幅は、前記ウェブスポークの軸方向の幅よりも大きい」との限定を加える。
(イ)訂正事項2についての判断
願書に添付した明細書、特許請求の範囲には、「前記環状補強構造体の軸方向の幅は、前記ウェブスポークの軸方向の幅よりも大きい」ことは記載も示唆もされていない。
特許権者は、平成29年2月27日に提出された訂正請求書(7.(3)イ(イ)c)において、訂正事項2の訂正の根拠として、「図11、12には、環状補強構造体1の軸方向(図面左右方向)の幅は、ウェブスポーク420の軸方向の幅よりも大きい様子が明示されている」旨述べている。
しかしながら、図11、12は、特許図面であるところ、設計図面と同一のもとする合理的理由はないから、図11、12の図示内容だけから、直ちに「環状補強構造体の軸方向の幅」と「ウェブスポークの軸方向の幅」の寸法を特定し、大小関係を導くことはできない。
また、図11、12の図示内容に基づいて検討しても、本件明細書の段落【0042】の「図10及び図11をさらに参照すると、ウェブスポーク420は、半径方向の長さL、可撓性バンド405の軸方向の幅に概して対応する軸方向の幅Wを有する実質的にシート状の要素であるが、図11に示すように半径方向に沿って変化する幅Wを含む他の幅Wが用いられてもよい。」との記載を併せみると、ウェブスポーク420は、半径方向の長さLに渡って形成されているところ、該長さLの始端部と終端部(ハブ430及び環状バンド405と接続する部分)に、軸方向の幅Wが半径方向に沿って増大するように変化する箇所が存在する。
そうすると、環状補強構造体に対応する内側補強バンド2及び外側補強バンド3の軸方向の幅は、少なくとも、ウェブスポーク420の当該箇所の幅Wとの比較において小さくなっているから、上記訂正事項2を導くことはできない。
イ 訂正事項3~7について
訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、訂正事項4~6は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、訂正事項7は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるところ、訂正事項3~7は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3~7は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号、第3号又は第4号に該当し、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
ウ 訂正事項8~12について
訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、訂正事項9~11は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、訂正事項12は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるところ、訂正事項8~12は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項8~12は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号、第3号又は第4号に該当し、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
エ 一群の請求項
訂正事項1~12に係る訂正前の請求項17~20について、請求項18~20は直接的又は間接的に請求項17を引用しているものであって、訂正事項1、2によって記載が訂正される請求項17連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項17~20に対応する訂正後の請求項17~20は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 小括
本件訂正請求による訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しないから、訂正後の請求項[17、18]について訂正を認めない。
本件訂正のうち訂正事項3~12は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号、第3号又は第4号に該当し、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。訂正後の請求項19に係る訂正事項3及び訂正後の請求項20に係る訂正事項8は、引用関係の解消を目的とする訂正であって、その訂正は認められるものである。そして、特許権者から、訂正後の請求項19、20について訂正が認められるときは請求項[17、18]とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったこと((1)スを参照。)から、訂正後の請求項19、20について訂正を認める。
第3 本件発明
本件訂正請求のうち、訂正後の請求項[17、18]については訂正を認めず、訂正後の請求項19、20については訂正を認めるから、請求項17~20に係る発明(以下「本件発明17~20」という。)は、次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項17】
半径方向及び周方向を画定する非空気入りホイールであって、
接地接触するトレッド部を支持するための環状バンドであり、前記周方向を中心として延びる環状バンドと、
前記環状バンド内に配置される環状補強構造体であり、
前記周方向に沿って延びる内側補強バンドと、
前記周方向に沿って延び、前記内側補強バンドの半径方向外側に配置される外側補強バンドと、
を備える補強構造体と、
前記内側補強バンドと外側補強バンドの間に少なくとも部分的に配置されるコアであり、前記内側補強バンドと前記外側補強バンドとの間の定位置に形成される材料から構築され、0.75g/cm3以上の密度を有するコアと、
前記環状バンドの半径方向内側に配置されるマウンティングバンドと、
前記環状バンドと前記マウンティングバンドとの間に接続される複数のウェブスポークと、
を備え、
前記環状バンド及び前記複数のウェブスポークはマトリクス材料を含み、前記環状補強構造体は前記マトリクス材料内に埋入されている、非空気入りホイール。
【請求項18】
前記内側補強バンドが、モノフィラメント糸又はマルチフィラメント糸からなる群から選択されたコードからなり、前記コードが、少なくとも3巻きをなす螺旋形に巻かれる、請求項17に記載の非空気入りホイール。
【請求項19】
半径方向及び周方向を画定する非空気入りホイールであって、
接地接触するトレッド部を支持するための環状バンドであり、前記周方向を中心として延びる環状バンドと、
前記環状バンド内に配置される環状補強構造体であり、
コードを備え、前記周方向に沿って延びる内側補強バンドと、
コードを備え、前記周方向に沿って延び、前記内側補強バンドの半径方向外側に配置される外側補強バンドと、
を備える補強構造体と、
前記内側補強バンドと外側補強バンドの間に少なくとも部分的に配置されるコアであり、前記内側補強バンドと前記外側補強バンドとの間の定位置に形成される材料から構築され、0.75g/cm3以上の密度を有するコアと、
前記環状バンドの半径方向内側に配置されるマウンティングバンドと、
前記環状バンドと前記マウンティングバンドとの間に接続される複数のウェブスポークと、
を備え、
前記環状バンド及び前記複数のウェブスポークはマトリクス材料を含み、前記環状補強構造体は前記マトリクス材料内に埋入されており、
前記環状バンドのマトリクス材料は継ぎ目のない一体成型品であり、前記内側補強バンド及び前記外側補強バンドを構成するコードは前記環状バンドのマトリクス材料に直接接触しており、
前記コアは、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、セラミック、コンクリート、及び有機金属化合物からなる群から選択される含浸されたマトリクス材料を有する、非空気入りホイール。
【請求項20】
半径方向及び周方向を画定する非空気入りホイールであって、
接地接触するトレッド部を支持するための環状バンドであり、前記周方向を中心として延びる環状バンドと、
前記環状バンド内に配置される環状補強構造体であり、
コードを備え、前記周方向に沿って延びる内側補強バンドと、
コードを備え、前記周方向に沿って延び、前記内側補強バンドの半径方向外側に配置される外側補強バンドと、
を備える補強構造体と、
前記内側補強バンドと外側補強バンドの間に少なくとも部分的に配置されるコアであり、前記内側補強バンドと前記外側補強バンドとの間の定位置に形成される材料から構築され、0.75g/cm3以上の密度を有するコアと、
前記環状バンドの半径方向内側に配置されるマウンティングバンドと、
前記環状バンドと前記マウンティングバンドとの間に接続される複数のウェブスポークと、
を備え、
前記環状バンド及び前記複数のウェブスポークはマトリクス材料を含み、前記環状補強構造体は前記マトリクス材料内に埋入されており、
前記環状バンドのマトリクス材料は継ぎ目のない一体成型品であり、前記内側補強バンド及び前記外側補強バンドを構成するコードは前記環状バンドのマトリクス材料に直接接触しており、
前記コアは、ポリウレタンを含む含浸されたマトリクス材料を有する、非空気入りホイール。」
第4 特許異議の申立てについて
1 取消理由の概要
請求項17~20に係る特許に対して平成28年11月21日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)での「第5 当審の判断」の要旨は、次のとおりである。
【判断1】 本件発明17、18は、刊行物1に記載されている発明、刊行物1に記載されている事項、周知技術(刊行物2)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本件発明19、20は、刊行物1に記載されている発明、刊行物1に記載されている事項、周知技術(刊行物2)、周知技術(刊行物5)、周知技術(刊行物3~5)、周知技術(刊行物6,7)、及び周知技術(刊行物8,9)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
記
刊行物1:特開2008-260514号公報
刊行物2:プラスチック加工技術ハンドブック,日刊工業新聞社,1995
年6月12日,152ページ~153ページ,写し
刊行物3:特開平5-77606号公報
刊行物4:特開2007-161054号公報
刊行物5:特開昭59-53209号公報
刊行物6:特開2004-51011号公報
刊行物7:実願昭62-110843号(実開昭64-18117号)のマ
イクロフィルム
刊行物8:特開平2-182501号公報
刊行物9:特表2010-522666号公報
なお、刊行物1~9は、特許異議申立人が提出した甲第1~9号証である。
【判断2】本件発明17~20は、明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。
2 当審の判断
2-1 取消理由通知(審決の予告)の【判断1】について
(1)刊行物1の記載事項及び刊行物1に記載された発明 (下線は当審で付与した。以下同様。)
(1a)「【0001】
本発明は構造的に支持された (structurally supported) 非空気圧タイヤ(non-pneumatic tire)に関するものである。・・・」
(1b)「【0015】
[図1]に示したタイヤ100は地面と接触するトレッド部分105と、このトレッド部分105の放射方向内側に配置された補強された環状バンド110と、この環状バンドを横断する方向にこの環状バンドから放射方向内側へ向って延びたウェブスポーク150と、このウェブスポーク150の放射方向内側端部の所にある取付けバンド160とを有している。タイヤ100はこの取付けバンド160を介してホイール10またはハブに固定される。「横断する方向に延びた」とはウェブスポーク150が軸線方向に整合するか、タイヤの軸線に対して斜めであることを指している。「放射方向内側へ向かって延びた」とはウェブスポーク150がタイヤ軸線に対して放射方向の面内にあるか、この放射方向面に対して斜めであることを意味する。以下で説明するように、複数の第2のウェブスポークを赤道面に配置することもできる。[図7]は本発明の一つの実施例のタイヤの一部の斜視図で、補強された環状バンド110をほぼ横断し、この環状バンドから放射方向内側へ向かって延びたウェブスポーク150を示している。」
(1c)「【0016】
[図2]はタイヤ100とホイール10の赤道面での断面図である。補強された環状バンド110はエラストマーの剪断層120と、このエラストマー剪断層120の放射方向最内側に接着された第1のメンブレン130と、エラストマー剪断層120の放射方向最外側に接着された第2のメンブレン140とから成る。第1および第2のメンブレン130、140の引張りスティフネスはエラストマー剪断層120の剪断スティフネスより高く、補強された環状バンド110が荷重下で剪断変形するようになっている。」
(1d)「【0020】
エラストマー剪断層120は剪断弾性率が約3~約20MPaのエラストマー材料から成る。このエラストマー剪断層120に適した材料には天然ゴムおよび合成ゴム、ポリウレタン、発泡ゴムおよびポリウレタン、セグメント化されたコポリエステルおよびナイロンのブロックコポリマーが含まれる。
・・・」
(1e)「【0023】
メンブレン130、140の補強要素は従来タイヤのベルト補強材として使用されている任意の材料、例えばスチール、アラミドのモノフィラメントまたはコードや、その他の高モジュラス織布で作ることができる。図示した実施例のタイヤの場合、この補強材は直径が0.28mmの4本のスチールワイヤコード(4×0.28)である。
好ましい実施例では、第1のメンブレンが2つの補強層131、132を有し、第2のメンブレン140も2つの補強層141、142を有する。」
(1f)「【0025】
第1の好ましい実施例では、第1のメンブレン130の層131および132はタイヤ赤道面に対して約10~約45°の角度をなす基本的に互いに平行なコードを有する。各層のコードは互いに反対方向を向いている。同様に、外側のメンブレン140も赤道面に対して10~45°の角度を成す基本的に互いに平行なコードを含む層141および142を有する。しかし、メンブレン内の互いに対を成す2つの層のコードが互いに等しい角度で逆方向を向いている必要は必ずしもなく、例えば、互いに対を成す2つの層のコードをタイヤ赤道面に対して非対称にすることもできる。」
(1g)「【0040】
本発明の好ましい実施例では、ウェブスポーク150は引張り弾性係数が高い材料、すなわち引張り弾性係数が約10~100Mpaの材料で作られる。ウェブスポークは必要に応じて補強できる。さらに、ウェブスポーク材料は30%歪みを与えた後に初めの長さに戻る弾性挙動を示し、且つ、4%歪みを与えたときに一定の応力を示さなければならない。さらに、関連した運転条件でタンジェントΔが0.1を越えない材料が望ましい。これらの要求条件を満足する市販のゴムまたはポリウレタン材料を見つけることができる。本発明者はクロンプトン社のユニロイヤルケミカル部門(コネチカット州、ミドルベリー)の商標ビラタン(Vibrathane)B836のウレタンがウェブスポークに適していることを発見した。」
(1h)「【0042】
変形例では、環状バンド110およびハブまたはホイール10の構造材料および取付け方法に応じて、別体の取付けバンド160または境界バンド170を無くして、ウェブスポークを環状バンドとホイールとに直接接着することもできる。例えば、環状バンドまたはホイールまたはハブのいずれかが同一材料またはコンパチブルな材料で形成されている場合には、ウェブスポークを環状バンドまたはホイールと一体成形することによって一段階でタイヤを製造することができる。この場合には取付けバンド160および/または境界バンド170をホイールまたは環状バンドの一部として一体成形する。さらに、[図8]に示すように、例えばホイール10の溝152と係合する各ウェブスポークの内側端部に拡大部分151を設けて、ウェブスポーク150をホイールに機械的に連結することもできる。」
(1i)刊行物1の段落【0013】以降は、実施例の説明であるところ、摘記事項(1d)には、「エラストマー剪断層120は剪断弾性率が約3~約20MPaのエラストマー材料から成る。このエラストマー剪断層120に適した材料には天然ゴムおよび合成ゴム、ポリウレタン、発泡ゴムおよびポリウレタン、セグメント化されたコポリエステルおよびナイロンのブロックコポリマーが含まれる。」と記載されているから、天然ゴムから成るエラストマー剪断層120が実施例として開示されているといえる。
以上の摘記事項、図示内容、及び認定事項を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されている。
「非空気圧タイヤであって、
地面と接触するトレッド部分105と、前記トレッド部分105の放射方向内側に配置された補強された環状バンド110と、
前記環状バンド110は、天然ゴムから成るエラストマー剪断層120と、前記エラストマー剪断層120の放射方向最内側に接着され、赤道面に対して約10~約45°の角度をなす基本的に互いに平行なコードを有する第1のメンブレン130と、前記エラストマー剪断層120の放射方向最外側に接着され、赤道面に対して約10~約45°の角度をなす基本的に互いに平行なコードを有する第2のメンブレン140とから成り、
前記環状バンド110を横断する方向に前記環状バンド110から放射方向内側へ向って延びたウェブスポーク150と、前記ウェブスポーク150の放射方向内側端部の所にある取付けバンド160と
を備えた非空気圧タイヤ。」
(2)対比・判断
(2-1)本件発明17について
ア 対比
本件発明17と刊行物発明とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、
(ア)後者の「非空気圧タイヤ」は、前者の「非空気入りホイール」に相当するところ、半径方向及び周方向を画定することは明らかであるから、後者の「非空気圧タイヤ」は、前者の「半径方向及び周方向を画定する非空気入りホイール」に相当する。
(イ)後者の「地面と接触するトレッド部分105」は前者の「接地接触するトレッド部」に相当する。
(ウ)後者の「前記トレッド部分105の放射方向内側に配置された補強された環状バンド110」と前者の「接地接触するトレッド部を支持するための環状バンドであり、前記周方向を中心として延びる環状バンド」とは、「接地接触するトレッド部を支持するための環状部材であり、前記周方向を中心として延びる環状部材」という限りで共通する。
(エ)後者の「ウェブスポーク150」及び「取付けバンド160」は、構造的に前者の「ウェブスポーク」及び「マウンティングバンド」にそれぞれ相当し、後者の「前記ウェブスポーク150の放射方向内側端部の所にある取付けバンド160」と前者の「前記環状バンドの半径方向内側に配置されるマウンティングバンド」とは、「前記環状部材の半径方向内側に配置されるマウンティングバンド」という限度で共通し、後者の「前記環状バンド110を横断する方向に前記環状バンド110から放射方向内側へ向って延びたウェブスポーク150」と前者の「前記環状バンドと前記マウンティングバンドとの間に接続される複数のウェブスポーク」とは「前記環状部材と前記マウンティングバンドとの間に接続される複数のウェブスポーク」という限度で共通する。
したがって、本件発明17と刊行物発明とは、
「半径方向及び周方向を画定する非空気入りホイールであって、
接地接触するトレッド部を支持するための環状部材であり、前記周方向を中心として延びる環状部材と、
前記環状部材の半径方向内側に配置されるマウンティングバンドと、
前記環状部材と前記マウンティングバンドとの間に接続される複数のウェブスポークと、
を備えた非空気入りホイール。」の点で一致し、以下の点で相違する。
〔相違点1〕
「環状部材」に関し、
本件発明17は「接地接触するトレッド部を支持するための環状バンドであり、前記周方向を中心として延びる環状バンドと、前記環状バンド内に配置される環状補強構造体であり、前記周方向に沿って延びる内側補強バンドと、前記周方向に沿って延び、前記内側補強バンドの半径方向外側に配置される外側補強バンドと、を備える補強構造体と、前記内側補強バンドと外側補強バンドの間に少なくとも部分的に配置されるコアであり、前記内側補強バンドと前記外側補強バンドとの間の定位置に形成される材料から構築され、0.75g/cm3以上の密度を有するコアと」を備え、「前記環状バンド及び前記複数のウェブスポークはマトリクス材料を含み、前記環状補強構造体は前記マトリクス材料内に埋入されている」のに対し、
刊行物発明は、「前記トレッド部分105の放射方向内側に配置された補強された環状バンド110」であり、「前記環状バンド110は、天然ゴムから成るエラストマー剪断層120と、前記エラストマー剪断層120の放射方向最内側に接着され、赤道面に対して約10~約45°の角度をなす基本的に互いに平行なコードを有する第1のメンブレン130と、前記エラストマー剪断層120の放射方向最外側に接着され、赤道面に対して約10~約45°の角度をなす基本的に互いに平行なコードを有する第2のメンブレン140とから成」る点。
イ 判断
相違点1について 検討する。
刊行物発明の環状バンド110は、「天然ゴムから成るエラストマー剪断層120と、前記エラストマー剪断層120の放射方向最内側に接着され、赤道面に対して約10~約45°の角度をなす基本的に互いに平行なコードを有する第1のメンブレン130と、前記エラストマー剪断層120の放射方向最外側に接着され、赤道面に対して約10~約45°の角度をなす基本的に互いに平行なコードを有する第2のメンブレン140とから成」るものであるところ、構造的には、刊行物発明の「前記エラストマー剪断層120の放射方向最内側に接着され、赤道面に対して約10~約45°の角度をなす基本的に互いに平行なコードを有する第1のメンブレン130と、前記エラストマー剪断層120の放射方向最外側に接着され、赤道面に対して約10~約45°の角度をなす基本的に互いに平行なコードを有する第2のメンブレン140」は本件発明17の「前記周方向に沿って延びる内側補強バンドと、前記周方向に沿って延び、前記内側補強バンドの半径方向外側に配置される外側補強バンドと、を備える補強構造体」に対応するものといえる。
また、刊行物発明の「天然ゴムから成るエラストマー剪断層120」は、本件発明17の内側補強バンド及び外側補強バンドに対応する第1のメンブレン130及び第2のメンブレン140の間にあるといえるから、本件発明17の「前記内側補強バンドと外側補強バンドの間に少なくとも部分的に配置されるコア」に対応し、かつ「天然ゴム」の比重は刊行物2の「表4.8 ゴムの諸特性」に示されるように、0.92であることは技術常識であるから、本件発明17の「前記内側補強バンドと前記外側補強バンドとの間の定位置に形成される材料から構築され、0.75g/cm3以上の密度を有するコア」であることを充足しているといえる。
そうすると、刊行物発明の「環状バンド110」は、構造的には、本件発明17の「環状補強構造体」に対応するものといえる。
そうすると、上記相違点1は、結局、本件発明17は、「前記環状バンド及び前記複数のウェブスポークはマトリクス材料を含」むのに対し、刊行物発明の環状バンド110及びウェブスポーク150はマトリクス材料を含むか明らかでない点に由来し、これに加えて、本件発明17では、「前記環状バンド内に配置される環状補強構造体であり、」「前記環状補強構造体は前記マトリクス材料内に埋入されている」ことをさらに特定事項としていることである。
刊行物発明の環状バンド110及びウェブスポーク150はマトリクス材料を含むか明らかでない点に関し、刊行物1の摘記事項(1g)には「ウレタンがウェブスポークに適している」ことが記載されるとともに、摘記事項(1h)には「環状バンド110およびハブまたはホイール10の構造材料および取付け方法に応じて、別体の取付けバンド160または境界バンド170を無くして、ウェブスポークを環状バンドとホイールとに直接接着することもできる。例えば、環状バンドまたはホイールまたはハブのいずれかが同一材料またはコンパチブルな材料で形成されている場合には、ウェブスポークを環状バンドまたはホイールと一体成形することによって一段階でタイヤを製造することができる。この場合には取付けバンド160および/または境界バンド170をホイールまたは環状バンドの一部として一体成形する。」と記載されていることによれば、刊行物1には、「ウェブスポークを環状バンドと一体成形すること」が記載されているといえる。(以下「刊行物1に記載されている事項1」という。)
刊行物発明において、刊行物発明の「環状バンド110」と「ウェブスポーク150」との接続手段は当業者が適宜選択し得るところ、当該接続手段として、上記刊行物1に記載されている事項1を適用することに格別の技術的困難性はない。
そして、当該手段を用いた場合には、環状バンド110及びウェブスポーク150はマトリクス材料を含むことになり、環状バンド110の周囲にウェブスポーク150を形成するウレタン等のマトリックス材料が周囲を取り囲むことになるから、環状バンド110はマトリクス材料内に埋入されるという構造が得られることになる。
したがって、刊行物発明において、上記相違点1に係る本件発明17の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本件発明17の作用効果も、刊行物発明、刊行物1に記載されている事項1及び技術常識(刊行物2)から当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本件発明17は、上記刊行物発明、刊行物1に記載されている事項1及び技術常識(刊行物2)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2-2)本件発明18について
ア 対比
本件発明18と刊行物発明とを対比すると、上記相違点1に加え、以下の相違点2で相違する。
〔相違点2〕
「内側補強バンド」に関し、
本件発明18は、「モノフィラメント糸又はマルチフィラメント糸からなる群から選択されたコードからなり、前記コードが、少なくとも3巻きをなす螺旋形に巻かれる」のに対し、
刊行物発明は、「赤道面に対して約10~約45°の角度をなす基本的に互いに平行なコードが使用され」る点。
イ 判断
相違点1については上記(2-1)イで検討済みであるので、相違点2について 検討する。
刊行物1の摘記事項(1e)には、「補強要素は、・・・スチール、アラミドのモノフィラメントまたはコードや、その他の高モジュラス織布で作ることができる。」と記載されているように、補強要素として、モノフィラメントを使用することが記載されている。(以下「刊行物1に記載されている事項2」という。)
また、刊行物発明は「赤道面に対して約10~約45°の角度をなす基本的に互いに平行なコードを有する」ものであるから螺旋形に巻かれるコードを使用することが示唆されているといえるところ、タイヤの環状部材の補強構造として用いられるコードにおいて、少なくとも3巻きをなす螺旋形に巻かれるコードを使用することは、刊行物3(段落【0016】~段落【0018】及び【図1】に示された「有機繊維コード」を参照。)、刊行物4(段落【0063】及び【図1】に示された「複数本のコード」を参照。)及び刊行物5(5ページ左上欄14行~同右上欄2行及びFIG.3に示された「環状のらせん状のコイル圧縮要素36」を参照。)に示されるように従来周知の技術であり、刊行物発明に刊行物1に記載されている事項2及び上記周知技術(刊行物3~5)を適用し、上記相違点2に係る本件発明18の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、本件発明18は、上記刊行物発明、刊行物1に記載されている事項1,2、技術常識(刊行物2)及び周知技術(刊行物3~5)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2-3)本件発明19について
ア 対比
上記(2-1)アで述べた対比関係から、本件発明19と刊行物発明とは、
「半径方向及び周方向を画定する非空気入りホイールであって、
接地接触するトレッド部を支持するための環状部材であり、前記周方向を中心として延びる環状部材と、
前記環状部材の半径方向内側に配置されるマウンティングバンドと、
前記環状部材と前記マウンティングバンドとの間に接続される複数のウェブスポークと、
を備えた非空気入りホイール。」の点で一致し、以下の点で相違する。
〔相違点3〕
「環状部材」に関し、
本件発明19は「接地接触するトレッド部を支持するための環状バンドであり、前記周方向を中心として延びる環状バンドと、前記環状バンド内に配置される環状補強構造体であり、コードを備え、前記周方向に沿って延びる内側補強バンドと、コードを備え、前記周方向に沿って延び、前記内側補強バンドの半径方向外側に配置される外側補強バンドと、を備える補強構造体と、前記内側補強バンドと外側補強バンドの間に少なくとも部分的に配置されるコアであり、前記内側補強バンドと前記外側補強バンドとの間の定位置に形成される材料から構築され、0.75g/cm3以上の密度を有するコアと」を備え、「前記環状バンド及び前記複数のウェブスポークはマトリクス材料を含み、前記環状補強構造体は前記マトリクス材料内に埋入されており、前記環状バンドのマトリクス材料は継ぎ目のない一体成型品であり、前記内側補強バンド及び前記外側補強バンドを構成するコードは前記環状バンドのマトリクス材料に直接接触している」のに対し、
刊行物発明は、「前記トレッド部分105の放射方向内側に配置された補強された環状バンド110」であり、「前記環状バンド110は、天然ゴムから成るエラストマー剪断層120と、前記エラストマー剪断層120の放射方向最内側に接着され、赤道面に対して約10~約45°の角度をなす基本的に互いに平行なコードを有する第1のメンブレン130と、前記エラストマー剪断層120の放射方向最外側に接着され、赤道面に対して約10~約45°の角度をなす基本的に互いに平行なコードを有する第2のメンブレン140とから成」る点。
〔相違点4〕
「コア」に関し、
本件発明19は、「熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、セラミック、コンクリート、及び有機金属化合物からなる群から選択される含浸されたマトリクス材料を有する」のに対し、
刊行物発明は、構造的に「コア」に対応する「エラストマー剪断層120」は、「天然ゴムから成る」点。
イ 判断
事案に鑑み、先に相違点4について検討する。
刊行物1の摘記事項(1d)に、エラストマー剪断層120に適した材料として天然ゴムのほか発泡ゴムが挙げられている。
刊行物発明において、エラストマー剪断層120を形成する材料を「天然ゴム」に代えて「発泡ゴム」を使用するとともに、上記(2-1)イで述べたように、刊行物発明の「環状バンド110」と「ウェブスポーク150」との接続手段は当業者が適宜選択し得るところ、当該接続手段として、上記刊行物1に記載されている事項1を適用することに格別の技術的困難性はないから、「環状バンド110」と「ウェブスポーク150」とを一体成型品とすることは当業者が想到し得る範囲といえる。
しかしながら、刊行物1には、上記「発泡ゴム」が、マトリクス材料を含浸し得る性質を有する旨の記載や示唆はされていない。また、「発泡ゴム」に関し、刊行物6の請求項4には「潤滑剤を含浸した発泡ゴム」が記載されている(以下「刊行物6に記載されている事項」という。)が、他方、刊行物7の5ページ11行~17行には「独立気泡を有する発泡ゴムでは、合成樹脂の侵入を押し止めること」(以下「刊行物7に記載されている事項」という。)が記載されているから、刊行物1にエラストマー剪断層120に適した材料として「発泡ゴム」が記載されていることだけをもって、該エラストマー剪断層120がマトリクス材料を全体的に含浸し得る性質を有するとまではいえない。
そうすると、一体成形されるタイヤが溶融マトリックス材料により射出成形されることが刊行物8及び刊行物9に示されるように従来周知であり、かつ、該溶融マトリックス材料として、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、セラミック、コンクリート、及び有機金属化合物からなる群から選択されたとしても、環状バンド110とウェブスポーク150とを一体成型品とする際に、ウェブスポーク150を形成する当該マトリックス材料が発泡ゴムで形成されるエラストマー剪断層120に全体的に含浸するとまではいえない。
したがって、刊行物発明において、上記相違点4に係る本件発明19の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
以上のとおり、本件発明19は刊行物発明と相違点3、4において相違するものであるところ、少なくとも相違点4に係る本件発明19の構成は当業者にとって容易想到とはいえないものであるから、その余の相違点を検討するまでもなく、本件発明19は、刊行物発明、刊行物1に記載されている事項1、技術常識(刊行物2)、周知技術(刊行物3~5)、刊行物6,7に記載されている事項及び周知技術(刊行物8,9)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2-4)本件発明20について
ア 対比
上記(2-1)アで述べた対比関係から、本件発明20と刊行物発明とは、
「半径方向及び周方向を画定する非空気入りホイールであって、
接地接触するトレッド部を支持するための環状部材であり、前記周方向を中心として延びる環状部材と、
前記環状部材の半径方向内側に配置されるマウンティングバンドと、
前記環状部材と前記マウンティングバンドとの間に接続される複数のウェブスポークと、
を備えた非空気入りホイール。」の点で一致し、上記相違点3に加えて以下の相違点5で相違する。
〔相違点5〕
「コア」に関し、
本件発明20は、「ポリウレタンを含む含浸されたマトリクス材料を有する」のに対し、
刊行物発明は、構造的に「コア」に対応する「エラストマー剪断層120」は、「天然ゴムから成る」点。
イ 判断
事案に鑑み、先に相違点5について検討する。
ウェブスポーク150を形成する溶融マトリックス材料としてポリウレタンを含むマトリクス材料を使用し、「環状バンド110」と「ウェブスポーク150」とを一体成型品として成形したとしても、上記相違点4で検討したように、当該マトリクス材料が発泡ゴムで形成されるエラストマー剪断層120に全体的に含浸するとまではいえない。
したがって、刊行物発明において、上記相違点5に係る本件発明20の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
以上のとおり、本件発明20は刊行物発明と相違点3、5において相違するものであるところ、少なくとも相違点5に係る本件発明20の構成は当業者にとって容易想到とはいえないものであるから、その余の相違点を検討するまでもなく、本件発明20は、刊行物発明、刊行物1に記載されている事項1、技術常識(刊行物2)、周知技術(刊行物3~5)、刊行物6,7に記載されている事項及び周知技術(刊行物8,9)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2-2 取消理由通知(審決の予告)の【判断2】について
上記訂正事項7、12の訂正により、「コア」の構成が明確になったので請求項19、20の記載の不備は解消した。また、請求項17の「0.75g/cm3以上の密度を有するコア」との発明特定事項は明確である。
2-3 取消理由通知(審決の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許異議申人は、本件発明17は、「非空気入りホイール」という物の発明であるが、本件発明17には、「前記環状補強構造体は前記マトリクス材料内に埋入されている」と記載され、その製造方法が記載されているので、本件発明17は明確でない旨主張している。
しかしながら、本件発明17の「前記環状補強構造体は前記マトリクス材料内に埋入されている」は、「環状補強構造体」の単に状態を示すことにより構造を特定しているものといえるから、不明確とはいえない。
したがって、特許異議申立人による上記主張は理由がない。
第6 むすび
以上のとおり、本件発明17は、刊行物発明、刊行物1に記載されている事項1、技術常識(刊行物2)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明18は、刊行物発明、刊行物1に記載されている事項1,2、技術常識(刊行物2)及び周知技術(刊行物3~5)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明17、18に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件発明19、20に係る特許については、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件発明19、20に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2015-700207