審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
商標取消審判

2019-300932

スタジオ

審判番号
2019-300932
法域
商標
審判種別
取消審判(商標取消の審決)
出願番号
商願平11-47541
登録番号
商標登録第4364599号(T4364599)
請求日
2019年12月20日
審決日
2021年04月13日
公報発行日
2021年07月30日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】明石 真
  • 【被請求人】ヤマハ 株式会社
  • 【被請求人代理人】平山 一幸
審判長/審判官
  • 審判長 中束 としえ
  • 審判官 山村 浩
  • 審判官 杉本 克治
分類
T132 .1 -Y (X15)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法50条
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第2条第3項第8号、商標法第50条第1項、商標法第50条第2項、商標法第50条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

上記当事者間の登録第4364599号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

【理 由】 第1 本件商標 本件登録第4364599号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成3年7月25日登録出願、第24類「楽器」を指定商品として、同12年3月3日に設定登録され、その後、同21年12月2日に指定商品を第9類「電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM」及び第15類「楽器」とする指定商品の書換登録がされたものである。 そして、本件審判の請求の登録は、令和2年1月17日になされたものであり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、平成29年(2017年)1月17日から令和2年(2020年)1月16日までの期間(以下「本件要証期間」という。)である。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標の指定商品中、第15類「楽器」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証(以下、証拠の表記に当たっては、「甲(乙)第○号証」を「甲(乙)○」のように、「第」及び「号証」を省略して記載する。)を提出している。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品中、第15類「楽器」(以下「取消請求商品」という。)について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取消しされるべきものである。 2 答弁及び回答書等に対する弁駁 (1)乙1について ア 乙1は、本件要証期間内の使用を証明するものではない。 (ア)乙1のウェブサイトは、被請求人が、2020年2月4日に、インターネット上で閲覧しプリントアウトしたものであり、乙1の左上部に「2020/2/4」の日付が印刷されているが、同日は、本件要証期間内ではない。 (イ)なお、請求人が乙1のウェブサイトのキャッシュ(甲3)を調べたところ、当該ウェブサイトは、2020年1月22日に取得(掲載)されたものであった。2020年1月22日は、本件審判の審判番号通知が被請求人に通知された日であり、被請求人が本件審判の請求があったことを知った日である(甲2)。 イ 乙1が2010年9月15日から「Amazon.co.jp」に継続して掲載されていたかは、不明である。 (ア)被請求人は、乙1のウェブサイトに記載されている「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日2010/9/15」を根拠に、電子ドラムのセット「YAMAHA DTX900 ~STUDIO~」が2010年9月15日から現在まで継続して販売されていたと主張する。 (イ)しかし、甲3のとおり、当該ウェブサイトは2020年1月22日に取得(掲載)されたものであるが、当該ウェブサイトがそれ以前から継続して掲載されていたかは不明である。 (ウ)無効2018-880004号事件について、当該事件の証拠によれば、2014年6月19日付けの口コミが、旧製品に対してなされたものであるにもかかわらず(甲4)、新製品に対しても引き続き掲載されていた(甲5)。 これを本件審判に当てはめれば、乙1のウェブサイトに掲載されている「取り扱い開始日」が、乙1に掲載されている製品「YAMAHA DTX900 ~STUDIO~」と同一の製品についての取り扱い開始日であるか否かは、乙1だけでは不明である。 (エ)加えて、仮に、乙1のウェブサイトに掲載されている製品「YAMAHA DTX900 ~STUDIO~」が、その取り扱い開始日の2010年9月15日にAmazonのウェブサイトに掲載されていたとしても、乙1のウェブサイトが2020年2月4日に存在していることを理由に、当該ウェブサイトが取り扱い開始日から、その印刷日まで継続して掲載されていたことの証拠にはならない。 (オ)さらに、乙1に掲載されている「取り扱い開始日」の2010年9月15日の製品名が、「YAMAHA DTX900 ~STUDIO~」であるのに対し、乙2(2015年8月作成)の製品名は「STUDIO-900」であり、乙3(2020年2月11日印刷)の製品名は「STUDIO」である。 被請求人が答弁書において主張するとおり、これらは同じ製品であり、当該製品の製品名は、年の経過と共に変化している。 かかる事実に鑑みれば、乙1のウェブサイトが2010年9月15日から2020年2月4日まで、製品名が全く変えられずに継続して掲載されていたと考えることには無理がある。 (カ)以上のとおり、乙1に記載されている「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日2010/9/15」を根拠とするのみでは、乙1のウェブサイトが2010年9月15日から2020年2月4日まで、「Amazon.co.jp」に継続して掲載されていたものであるのかは、不明である。 ウ 請求人が乙1のウェブサイトを「Wayback Machine」で確認したところ、当該ウェブサイトは、2020年4月6日分が保存されるだけであった(甲11)。被請求人が主張するように、乙1のウェブサイトが、2010年から継続して掲載されているのであれば、もっと多く保存されているはずである。 さらにいえば、乙1に掲載されている電子ドラムセットの「ドラムトリガーモジュール」は、生産完了品の「DTX900」であるところ(甲13)、この後継品の「DTX900M」が2013年に発売されたこと(甲14)を考慮すると、「DTX900」の生産完了時期は、2013年4月頃と推測される。 そうすると、乙1のウェブサイトは、「DTX900」が発売開始された2010年3月頃から、生産終了となった2013年頃まではウェブサイト上に掲載されていたが、その後削除され、被請求人が乙1のウェブサイトを印刷した2020年2月4日頃に、再度掲載されたように思われる。なお、被請求人の令和2年9月28日付け回答書によれば、被請求人は、本件審判請求書の副本を同年1月27日に受領した。 (2)乙2について ア 被請求人が答弁書で主張するとおり、乙2のカタログが「2015年8月作成」のものであるとすれば、2015年8月は、本件要証期間内ではないので、乙2は、本件要証期間内の使用を証明するものではない。 イ 請求人は、甲6ないし10として、乙2が作成された2015年8月以降のカタログを提出する。 甲6ないし9は、株式会社ヤマハミュージックジャパンの2016年10月から2018年7月に作成されたカタログ「YAMAHA/ELECTRONIC DRUMS/DTX/drums」等の写しであり、乙2が作成された年の翌年から作成されているにもかかわらず、「Choose Your Style」のページには、「STUDIO-900」なるドラムセットは掲載されていない。なお、当該カタログの他のページにも、「STUDIO-900」なるドラムセットは掲載されていないし、商標「STUDIO」も使用されていない。 また、甲10は、株式会社ヤマハミュージックジャパンのカタログ「Yamaha System Drums/GENERAL CATALOG 2019-2020」の写しであり、2020年3月16日にダウンロードしたものである。当該カタログは、本件審判の請求をした2019年12月に作成されている。それにもかかわらず、当該カタログの「Choose Your Style」のページには、「STUDIO-900」なるドラムセットは掲載されていない。なお、当該カタログの他のページにも、「STUDIO-900」なるドラムセットは掲載されていないし、商標「STUDIO」も使用されていない。 ウ 以上のとおり、乙2のカタログによれば、「STUDIO-900」なるドラムセットは、2015年8月頃に販売されていたことがうかがえるが、それ以降に作成されたカタログ(甲6ないし10)には、一切掲載されていない。 よって、「STUDIO-900」なるドラムセットが、乙2が作成された2015年8月以降に販売されていたか否かは、不明である。 (3)乙3について ア 被請求人が答弁書で主張するとおり、乙3のウェブサイトは、2020年2月11日に被請求人がインターネット上で閲覧しプリントアウトしたものであり、乙3の左上部に「2020/2/11」の日付が印刷されている。 しかし、2020年2月11日は、本件要証期間内ではない。 イ 乙3のウェブサイトに掲載された電子ドラムセットは、乙8及び乙9に掲載されている電子ドラムセットと同一である。 ここで、請求人が「Wayback Machine」で確認したところ、乙3のウェブサイトは、2020年4月21日と同年9月25日の2回保存されただけであった(甲18)が、乙8及び乙9は、2011年3月26日から2017年10月23日の間に63回保存されていた(甲12)。加えて、ウェブサイトのアドレスが、乙3と、乙8及び乙9とは異なっており、しかも、乙8及び乙9のウェブサイトには新着情報が掲載されているが、乙3のウェブサイトにはそれが掲載されていない。さらに、「Wayback Machine」によれば、乙8及び乙9のウェブサイトが最後に保存されたのが2017年10月23日であり(甲12)、乙3が最初に保存されたのが2020年4月21日である(甲18)。 以上によれば、乙8及び乙9のウェブサイトは、2011年3月26日頃開設されたが、その後、2017年10月23日頃閉鎖され、乙3の印刷日である2020年2月11日頃に新たに開設されたものと思われる。なお、被請求人の令和2年9月28日付け回答書によれば、被請求人は、本件審判請求書の副本を同年1月27日に受領した。 (4)乙7について 乙7に掲載されている電子ドラムセットに使用される「トリガーモジュール」は、既に生産完了となった「DTX900」であり、また、「Wayback Machine」で確認すると、当該ウェブサイトは、2020年9月28日分が保存されるだけである(甲17)。 さらに、乙7の出品者は、乙1の出品者と同一である。 そうすると、乙7のウェブサイトは、乙1のウェブサイトと同様に、「DTX900」が発売開始された2010年頃から、生産終了となった2013年頃まではウェブサイト上に掲載されていたが、その後削除され、被請求人が乙7のウェブサイトを印刷した2020年9月28日頃に、再度掲載されたように思われる。 (5)乙8及び乙9について 不使用取消審判における不使用の事実は、元来、請求人が証明しなければならなかった。しかし、請求人が不使用の事実を証明することは極めて困難である一方、商標権者は、その商標を使用しているかどうかを最もよく知っているから、使用をしていることの証明も容易にできる。そこで、昭和50年の改正によって、商標使用の挙証責任を、審判の被請求人たる商標権者が負うこととなった。すなわち「商標権者であれば商標使用の証明を容易にできる」との趣旨により、挙証責任の転換が行われた。 これに対し、被請求人が提出した証拠は、いずれも信ぴょう性を甚だ欠如している。乙1、乙3及び乙7のウェブサイトは、いずれも本件要証期間内に掲載されていたものではない。 つまり、被請求人は、「商標権者であれば商標使用の証明を容易にできる」にもかかわらず、これら信ぴょう性の疑わしい証拠しか提出できなかったのであり、そのことは、本件商標を使用した商品の販売は、既に本件要証期間前に完了しており、本件要証期間内における販売実績等を示す証拠がなかったからではないかと思われる。そうすると、本件審判において後から提出された乙8及び乙9のウェブサイトが本件要証期間内に存在していたとしても、それは、既に販売が終了した状態で、形としてウェブサイト上に残っていただけのものにすぎない。 このように、乙8及び乙9のウェブサイトは、販売行為を伴わない名目的な使用を示すものであって、商標法第2条第3項第8号に該当する使用には当たらない。 (6)まとめ 以上のとおり、被請求人が提出した証拠は、本件要証期間内の本件商標の使用を証明するものではない。 第3 被請求人の主張 被請求人は、結論同旨の審決を求めると主張し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙1ないし10を提出している。 1 答弁の理由 被請求人は、本件要証期間内に日本国内において、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、取消請求商品について使用をしている。 (1)本件商標の使用事実 ア 乙1は、「amazon.co.jp」のウェブサイトの抜粋である。ここに掲載され販売されている電子ドラムに、「YAMAHA DTX900 ~STUDIO~」の商品名が表示されている。「YAMAHA DTX900 ~STUDIO~」の表示は電子ドラムの写真の右側に添えて見出し的に表示されており、写真に示されている商品の標章を示すことは明らかである。また、当該ページには、価格及び発送予定が表示されており、さらに「この商品は、イケベ楽器店が販売、発送します。」との表示があることから、被請求人のディーラーの一つである株式会社池部楽器店(以下「イケベ楽器店」という。)が、被請求人の電子ドラムを当該ページ上で実際にオンライン販売していることが分かる。 上記「STUDIO」の使用についてさらに詳しく説明すると、そもそも電子ドラムは構成する打楽器や音源モジュールなどを自由に組み合わせて、一つの電子ドラムセットとして組み立て演奏するものであるが、被請求人は、従来よりドラムパッドやシンバル等をあらかじめ所定の種類と数で組み合わせてセット商品にしたものを数種に分類したうえで販売している。これらのセット商品にはセットごとに個別の名称(標章)が付けられており、そのうちの一つが、乙1に示されている「STUDIO」である。この点については、乙1の写真右側の商品説明中にも、「~STUDIO~/練習スタジオやライブハウスで多くみられる2タム3シンバルのスタンダードなセットです。ジャンルを選ばずご使用頂けます。」との記載がある。 イ 乙2は、被請求人の子会社である株式会社ヤマハミュージックジャパンのカタログ「Yamaha System Drums/CATALOG2015」であるが、電子ドラムのセットの「STUDIO-900」が掲載されている。当該カタログ中には、セット内容の詳細と販売価格が明示されており、当該商品を販売目的で広告宣伝を行っていることは明らかである。なお、乙2に掲載されている商品写真は、乙1に掲載されている商品写真と同一であり、同じ内容の商品について「STUDIO-900」の名称が表示されていることが分かる。 ウ 乙3は、被請求人のウェブサイトからの抜粋である。この2ページ目(2/5)に電子ドラムセットの「STUDIO」が掲載されている。このウェブサイトからも被請求人自身で「STUDIO」を提供していることが明白である。ここには、セット内容の詳細と販売価格を明示していることから、当該商品を販売目的で広告宣伝を行っていることは明らかである。なお、乙3に掲載されている商品写真及びセット内容の詳細は、乙1に掲載されている商品写真、並びに乙2に掲載されている商品写真及びセット内容の詳細と同一であり、同じ内容の商品について「STUDIO」の名称を統一して使用していることが分かる。 エ 以上の乙1ないし3から明らかなように、被請求人は、自身で、又は子会社やディーラーを通じて、日本国内において、電子ドラムのセットを「STUDIO」の商標で広告宣伝し、販売している。 (2)本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用 乙1ないし3における「STUDIO」及び「STUDIO-900」の商標と本件商標とが「社会通念上同一と認められる商標」であることについて説明する。 まず、乙2の「STUDIO-900」の商標において、「-900」の部分は単に商品記号・符号を表す識別力のない付記的な部分にすぎず、識別標識として機能するのは「STUDIO」であることは明らかである。よって、以下、「STUDIO」と本件商標の比較を行う。 本件商標は「STUDIO\スタジオ」(以下、「\」は改行を意味する。)の上下二段併記の構成であるのに対して、乙1ないし3の商標は「STUDIO」であり、片仮名表記の「スタジオ」の有無で相違している。しかしながら、「STUDIO」の英単語は我が国において非常によく知られた用語で、元来の意味のまま日本語化し「スタジオ」の称呼と観念で日常的に使用されていることから、乙1ないし3の商標「STUDIO」と本件商標「STUDIO\スタジオ」とは称呼・観念を同一にするということができる。 すなわち、乙1ないし3の商標は、本件商標と同一の称呼及び観念を生ずるから、本件商標「STUDIO\スタジオ」と自他商品の識別標識として同一の機能を果たしている。 よって、乙1ないし3の「STUDIO」の商標は、本件商標「STUDIO\スタジオ」と社会通念上同一と認められるものである。 (3)取消請求商品についての使用 乙1ないし3の商標「STUDIO」又は「STUDIO-900」を表示した商品は、乙1ないし3から明らかなように、電子ドラムのセットである。 そして、特許庁による「『商品及び役務の区分』に基づく類似商品・役務審査基準」(乙4)によれば、第15類には「電気式及び電子式の楽器」が含まれること、及び「ドラム」や「ドラム用スティック」は、第15類「楽器」に含まれることが明示されている。 よって、上記の「STUDIO」又は「STUDIO-900」の使用は、取消請求商品である「楽器」についての使用であることは明らかである。 (4)本件要証期間内の使用 乙1は、被請求人が2020年2月4日に、インターネット上で閲覧、プリントアウトしたものなので、左上部に「2020/2/4」の日付が印刷されており、この日付の時点で電子ドラムのセット「STUDIO」を、池部楽器店から購入できることを示している。また、令和2年3月4日時点で同じURLを確認しても、同じ商品が同じ価格で掲載されている。 一方、乙1の2ページ目(2/4)の中央より少し下の「商品の情報」の「登録情報」の項目には、「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日2010/9/15」と表示されている。すなわち、乙1に掲載の電子ドラムのセットは、2010年9月15日から「amazon.co.jp」に掲載されて販売開始され、現時点でも依然として販売が続けられていることが分かる。 さらに、乙2のカタログの裏表紙には「2015年8月作成」の記載があり、この時点で既に被請求人子会社により電子ドラムのセット「STUDIO-900」が提供され、販売されていたことが分かる。また、乙3は、表紙の左上部に「2020/2/11」の日付が印刷されているように、2020年2月11日に閲覧、プリントアウトしたものであり、このウェブサイトでは、電子ドラム「STUDIO」を今日まで被請求人の商品として継続的に宣伝広告していることが分かる。 以上のことから、本件審判の請求の登録日は2020年1月17日であるが、この3年前よりも以前から現時点に渡るまで、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付した商品が、インターネット上のサイトやカタログに掲載され、販売されていることは明白である。 (5)まとめ 以上により、被請求人が、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、取消請求商品である「楽器」について、本件要証期間内に日本国内において使用していた事実が十分明らかとなったものと考える。 したがって、本件商標は商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録が取消されるべきものではない。 2 令和2年4月15日付け上申書における主張 乙5は、被請求人のディーラーの一つであるイケベ楽器店が、「YAMAHA DTX900 ~STUDIO~」の名称で電子ドラムセット商品を2010年から現在まで継続して販売していることを、イケベ楽器店秋葉原店のドラム販売責任者が証明した書類であり、「Amazon」のショッピングサイトも含まれていることから、乙1を補足するものである。 乙6は、イケベ楽器店秋葉原店の公式サイトである。 3 令和2年8月24日付け審尋に対する同年9月28日付け回答書における主張 被請求人が提出した証拠からは、本件要証期間内における本件商標の使用の事実を確認できない旨の合議体からの審尋に対し、被請求人は要旨以下のとおり回答した。 (1)本件商標の本件要証期間内の使用について 被請求人は、主に乙1及び乙5により、本件商標の本件要証期間内の使用が確認できると考える。 ア 乙1のウェブサイトでは、被請求人のディーラーの一つであるイケベ楽器店が電子ドラムセットの「STUDIO」を販売しており、需要者はこのウェブサイト上で氏名、住所、支払方法等の情報を入力し手続きをすることにより、当該商品を購入することができる。この乙1におけるイケベ楽器店の行為は、商標法第2条第3項第8号に規定する行為に該当する。 乙1の2ページ目の「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日 2010/9/15」との記載から、「Amazon」では、当該商品が本件要証期間後に販売開始されたものでなく、それ以前の少なくとも2010年より販売されていたものであることが分かる。乙1がプリントアウトされたのは2020年2月4日であるが、これは、請求人より本件審判の請求書の副本が被請求人に送達されたのが同年1月24日(受領日1月27日)であったため、本件商標の使用状況を確認するため被請求人によりプリントアウトされたからであり、このことは、少なくとも2010年より乙1のウェブサイトに掲載されて現在に至るまで「STUDIO」の商標を表示した商品がインターネット上で広告され販売されていることを証するものである。よって、乙1に掲載の電子ドラムセット「STUDIO」は、2010年9月15日から「amazon.co.jp」に掲載されて販売開始され、現時点まで継続的に広告掲載され販売されていると考えるのが自然である。 そして、乙5のイケベ楽器店の秋葉原店ドラム販売責任者による「商品販売状況に関する証明書」は、乙1のインターネット上での広告使用の事実を確認補足するため、追加で提出したものである。 イ これに対し、審尋は、乙5について、本件要証期間内に実店舗及びAmazonを含むショッピングサイトにおいて、当該商品が販売及び掲載されていたことを客観的に裏付ける証左がない、としている。 しかしながら、乙5においては、第三者であるイケベ楽器店により、電子ドラムセットの「YAMAHA DTX900 ~STUDIO~」を、発売年の2010年以降、本件要証期間内も含め、現在まで継続して実店舗及びショッピングサイトで販売していること、「Amazon」でも、取扱い開始日である2010年9月15日より現在に至るまで継続して掲載していること、が明確に供述されており、当該ドラムセットが本件要証期間内に販売されていなかったと考える方に無理がある。 ウ そもそも、インターネット上の掲載については、その性質からして、過去の掲載を遡って確認したり、定期的にプリントアウトしてストックしたりしておくことは実務では不可能であり、また掲載期間を明確に示すような情報を掲載していることもまれであるため、既存の書類や情報だけでは、過去の掲載を示す証拠の入手は不可能な場合が多々ある。そうとすると、その代わりに、掲載の事実や状況について実情を把握している販売店などの関係者に供述してもらい、それを証拠とすることは至当なことである。 乙5は、第三者が供述していること、及び販売社の担当者により押印された正式な書類であることからみて、イケベ楽器店が、発売年の2010年以降、本件要証期間内も含めて、現在まで継続して、実店舗及びAmazonを含むショッピングサイトにおいて、「YAMAHA DTX900 ~STUDIO~」を販売及び掲載していたことを、十分に客観的に裏付ける証左といえる。 (2)令和2年4月13日付け弁駁書に対する反論 ア 請求人は、乙1のウェブサイトのキャッシュ(甲3)の作成日(2020年1月22日)が本件審判の審判番号通知が被請求人に通知された日であって、被請求人が本件審判の請求があったことを知った日である旨主張しているが、同日は、当該通知が特許庁より発送された日であり、被請求人がこれを受領するのは早くても翌日以降である。 さらに、この事実は、被請求人が本件審判の請求があったことを知った日よりも前の2020年1月22日の時点で、既に、乙1のウェブサイトには、電子ドラムセットの「STUDIO」が掲載されていた、ということを証する。 イ 請求人は、乙2のカタログ(2015年8月作成)以降のカタログには、「STUDIO-900」なるドラムセットは掲載されていないと主張する。 電子ドラムセット「STUDIO」は、乙2のカタログ作成の後に、次のモデルが発表され最新モデルではなくなったため、2016年以降のカタログには掲載されていないが、新しいモデルが出ても、直ちに旧モデルを廃番として切り替えるようなことはなく、電子ドラムセット「STUDIO」の愛用者は、引き続きその構成品を交換したり補充したり、あるいはその音質や弾き心地などにより、旧モデルを購入することがあり得るから、たとえ新版カタログに掲載されていなくても販売継続することは不自然なことではない。 (3)追加証拠の提出及び主張 イケベ楽器店は、「Amazon」以外にも、「YAHOO!ショッピング」でも電子ドラムセット「STUDIO」を販売している(乙7)。 4 令和2年10月1日付け上申書における主張 被請求人は、前記3のとおり、令和2年9月28日付け回答書を提出したが、本件商標が本件要証期間内に使用されたことを立証する追加証拠が準備できたので、乙8及び乙9として提出する。 乙8及び乙9は、「Wayback Machine」を用いて検索し取得した被請求人のウェブサイトのアーカイブであり、乙8の2ページ目には、電子ドラムセットの「STUDIO」が掲載されている。乙8及び乙9は、2017年4月8日時点及び同年6月9日時点の当該ページの表示状態を示すものである。 なお、「Wayback Machine」は、「インターネットアーカイブ」によって保存された過去のウェブサイトを閲覧できるサービス(ツール)であり(乙10)、国立国会図書館のインターネット資料収集保存事業でも利用しているツールであることから、信頼性は高いといえる。 以上のとおり、本件要証期間内に、被請求人が、電子ドラムセットの「STUDIO」を自身のウェブサイトに掲載していたことが証明されたものと考える。そして、当該ウェブサイトではセット内容の詳細と販売価格を明示していることから、乙8及び乙9における被請求人の行為は、商標法第2条第3項第8号に規定する「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。 第4 当審の判断 1 認定事実 被請求人提出に係る証拠及び同人の主張によれば、次の事実が認められる。 (1)インターネットアーカイブに保存され、「Wayback Machine」を用いて取得された平成29年(2017年)4月8日及び同年6月9日時点における本件商標の商標権者(以下「商標権者」という。)のウェブサイト(これらをまとめて、以下「本件ウェブサイト」という。)には、「CHOOSE YOUR STYLE」の見出しの下、「STUDIO」の欧文字からなる商標(以下「使用商標」という。)が表示され、また、使用商標の表示の下、電子ドラムセット(以下「本件ドラムセット」という。)の画像、本件ドラムセットを構成する16品目の型番、種類及び価格並びに本件ドラムセットの合計価格が記載(以下、この記載内容を「本件記載内容」という。)されている(乙8及び乙9)。 (2)商標権者の令和2年(2020年)2月11日を印刷日とするウェブサイト(抜粋)には、「CHOOSE YOUR STYLE」の見出しの下、使用商標が表示され、本件ドラムセットの画像及びその記載内容を本件記載内容と同じくする本件ドラムセットが掲載されている(乙3)。 (3)前記(1)及び(2)によれば、商標権者は、本件ドラムセットを自身のウェブサイトに、平成29年(2017年)4月8日及び同年6月9日に掲載していたことが推認でき、また、令和2年(2020年)2月11日に掲載したことが認められる。 2 判断 前記1において認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。 (1)使用商標について 本件商標は、別掲のとおり、「STUDIO」の欧文字と「スタジオ」の片仮名を二段に横書きしてなるものであるところ、下段の片仮名は上段の欧文字の読みを表したものと理解されることから、本件商標の欧文字と片仮名は「スタジオ」の称呼及び観念を共通にする。一方、使用商標である「STUDIO」は、本件商標の欧文字部分とそのつづりを共通にするものであるから、本件商標が二段併記等の構成からなる場合であって、上段及び下段等の各部が観念を同一にするときの、一方の使用であり、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。 (2)使用者について 使用商標が表示されている本件ウェブサイトは、商標権者のウェブサイトであるから、使用商標の使用者は商標権者である。 (3)使用商品について 使用商品は、本件ドラムセット(以下「使用商品」という。)であるところ、ドラムセットは音楽の演奏の際に用いられる商品であるから、使用商品は、取消請求商品である「楽器」の範ちゅうに属する商品である。 (4)使用時期及び使用行為について 前記1(1)のとおり、本件ウェブサイトには、使用商標の表示の下、使用商品の画像及び価格等の商品情報が掲載されており、当該商品は、その販売のために商標権者のウェブサイトに掲載されていたものといえ、本件ウェブサイトにおいて、使用商品が商標権者により販売のために広告されていたものと推認することができる。 そして、本件ウェブサイトが存在した平成29年(2017年)4月8日及び同年6月9日は、本件要証期間内である。 (5)小括 以上によれば、被請求人である商標権者は、本件要証期間内において、取消請求商品である「楽器」の範ちゅうに属する本件ドラムセットに関する広告を内容とする情報に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して電磁的方法により提供したと認めることができる。 そして、この行為は、商標法第2条第3項第8号にいう「商品に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。 3 請求人の主張について (1)請求人は、乙3のウェブサイトと本件ウェブサイト(乙8及び乙9)とは、「Wayback Machine」で確認される保存回数や保存時期が異なり、さらに、ウェブサイトのアドレスや新着情報の掲載の有無でも異なるところ、これらによれば、「Wayback Machine」で確認される本件ウェブサイトが最後に保存された時点及び乙3のウェブサイトが最初に保存された時点からみて、本件ウェブサイトは、2011年3月26日頃開設されたが、その後、2017年10月23日頃閉鎖され、乙3の印刷日である2020年2月11日頃に新たに開設されたものと思われる旨主張する。 しかしながら、乙3の印刷日(令和2年(2020年)2月11日)と乙8及び乙9の保存日(平成29年(2017年)4月8日及び同年6月9日)との間には、2年以上の開きがあるところ、ウェブサイトのアドレスやその掲載内容に、時期により多少の差が生じることは一般にあり得ることであるし、また、本件ウェブサイトには、その掲載日前に係る新着情報が継続して掲載されていることからみても不自然な点はない。 そして、本件記載内容が、2017年10月23日頃から2020年2月11日頃までの期間に、本件ウェブサイト及び乙3のウェブサイトのいずれについても「Wayback Machine」により確認されないとしても、そのことをもって、直ちに、本件記載内容が、その期間に、これらのウェブサイトのいずれにも掲載されていないことを認めるに足りる証拠はない。 そうすると、請求人が主張する事実をもって、前記1及び2の認定判断が左右されるとはいえない。 なお、請求人による、本件ウェブサイトは、2011年3月26日頃開設されたが、その後、2017年10月23日頃閉鎖されたと思われる旨の主張は、それ自体をみると、前記1(3)の認定に沿うものであるから、その意味からも、請求人の主張を採用することはできない。 (2)請求人は、被請求人が、「商標権者であれば商標使用の証明を容易にできる」にもかかわらず、本件審判の審理において、乙8及び乙9を提出する前には、信ぴょう性の疑わしい証拠しか提出できなかったとした上で、このことは、本件商標を使用した商品の販売は、既に本件要証期間前に完了し、本件要証期間内における販売実績等を示す証拠がなかったことを意味しており、よって、乙8及び乙9のウェブサイトは、販売行為を伴わない名目的な使用を示すものにすぎない旨主張する。 しかしながら、被請求人は、請求人の弁駁及び合議体からの審尋に対して、本件商標の使用の事実を補充する新たな証拠として乙8及び乙9を提出したものと認められ、また、本件ウェブサイトにおいて、使用商品が販売のために掲載されていたものといえることは、前記2(4)のとおりである。 (3)したがって、請求人の主張は、いずれも採用できない。 4 むすび 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者が、その請求に係る商品に含まれる使用商品について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしたことを証明したということができる。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2019-300932

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ出願・登録の審決1件(出願 商願平11-47541、登録 4364599)
  • 2019-300931取消審判 / 2021-04-13 / 請求不成立スタジオ
    同じ登録番号
同じ当事者の審決100件(ヤマハ 株式会社、明石 真)
  • 2019-300931取消審判 / 2021-04-13 / 請求不成立スタジオ
    同じ当事者: ヤマハ 株式会社、明石 真
  • 2020-300166取消審判 / 2021-04-13 / 請求不成立スタジオ
    同じ当事者: ヤマハ 株式会社、明石 真
  • 2019-300930取消審判 / 2020-04-07 / 請求成立(取消)セッション
    同じ当事者: ヤマハ 株式会社、明石 真
  • 2026-300093取消審判 / 2026-05-27 / 請求成立(取消)インスピレーション
    同じ当事者: ヤマハ 株式会社
  • 2026-300097取消審判 / 2026-05-12 / 請求成立(取消)ワイエムエイ
    同じ当事者: ヤマハ 株式会社
同じ根拠条文の審決1,451件(50条)
  • 2018-300184取消審判 / 2018-12-03 / 請求不成立ヤイバジャパン、ハジャパン、ジンジャパン、ジャパニーズスウオードモデル、ジャパニ…
    共通の条文: 50条
  • 2014-300541取消審判 / 2017-03-28 / 請求成立(取消)クルーソン、クルソン
    共通の条文: 50条
  • 2025-300396取消審判 / 2026-06-16 / 請求不成立エルビイエス
    共通の条文: 50条
  • 2025-300576取消審判 / 2026-06-15 / 請求成立(取消)アイプラス、プラス
    共通の条文: 50条
  • 2025-300440取消審判 / 2026-05-28 / 請求不成立ラクティブ
    共通の条文: 50条
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)7件(1・X15)
  • 2018-300184取消審判 / 2018-12-03 / 請求不成立ヤイバジャパン、ハジャパン、ジンジャパン、ジャパニーズスウオードモデル、ジャパニ…
    共通の審決分類: 1・X15
  • 2018-300032取消審判 / 2018-05-10 / 請求成立(取消)カタナ
    共通の審決分類: 1・X15
  • 2018-300033取消審判 / 2018-05-01 / 請求成立(取消)カタナジャパン、トージャパン、カタナ、トー、ニホントー、ジャパニーズソード、ソー…
    共通の審決分類: 1・X15
  • 2018-300025取消審判 / 2018-04-27 / 請求成立(取消)フェイス、フェース
    共通の審決分類: 1・X15
  • 2016-300893取消審判 / 2017-04-28 / 請求成立(取消)シクェンシャルサーキットインコーポレーション、シクェンシャルサーキット、シクエン…
    共通の審決分類: 1・X15
同じ・似た商標の審決20件(スタジオ)
  • 2024-300706取消審判 / 2025-08-12 / 請求成立(取消)ミニスダジオ、スタジオ
    同じ商標: スタジオ
  • 2019-300931取消審判 / 2021-04-13 / 請求不成立スタジオ
    同じ商標: スタジオ
  • 2020-300166取消審判 / 2021-04-13 / 請求不成立スタジオ
    同じ商標: スタジオ
  • 2020-300248取消審判 / 2020-08-17 / 請求成立(取消)スタジオ
    同じ商標: スタジオ
  • 2019-300176取消審判 / 2019-07-02 / 請求成立(取消)スタジオ
    同じ商標: スタジオ

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存