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特許拒絶査定不服審判

2019-012446

ネットワーク構成方法

審判番号
2019-012446
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-526148外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年09月19日
審決日
2021年01月14日
公報発行日
2021年03月26日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (H04W) / P18 .537-WY (H04W)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015-526148「ネットワーク構成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月15日国際公開、WO2015/004860、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

目次 ▾ 14項目
【理 由】

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、2014年(平成26年)6月20日(優先権主張 2013年7月9日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 7月10日付け 拒絶理由通知書

平成30年 9月 5日   手続補正書、意見書の提出

平成31年 1月10日付け 拒絶理由通知書

平成31年 3月15日   手続補正書、意見書の提出

令和 元年 8月28日付け 拒絶査定

令和 元年 9月19日   拒絶査定不服審判の請求

令和 2年 4月15日付け 拒絶理由通知書

令和 2年 6月11日   手続補正書、意見書の提出

令和 2年 8月 6日付け 拒絶理由通知書

令和 2年10月 8日   手続補正書、意見書の提出

第2 原査定の概要

原査定(令和元年8月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記   (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(進歩性)について

・請求項 1-3

・引用文献等 1および2

<引用文献等一覧>

1.国際公開第2005/034434号

2.特開2005-27280号公報

第3 本願発明

本願の請求項1および2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」および「本願発明2」という。)は、令和2年10月8日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1および2に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
何れのネットワークにも接続されていない第1の通信端末によって実行されるネットワーク構成方法であって、前記第1の通信端末は、移動中に、
周囲に存在する第2の通信端末を探索し、
前記第2の通信端末を発見したとき、前記第2の通信端末から受信した通信メッセージに含まれる第1の情報を記憶し、
続きを表示(全13行)
周囲に存在する第3の通信端末を探索し、
前記第3の通信端末を発見したとき、前記第3の通信端末から受信した通信メッセージに含まれる第2の情報を記憶し、
前記第1の情報および前記第2の情報に基づいて、前記第2の通信端末および前記第3の通信端末のうちからアクセスポイントとして機能している接続済み親端末を接続相手に決定し、
前記決定した接続相手とネットワークを構成し、
前記接続相手の決定では、前記第2の通信端末および前記第3の通信端末が何れも接続済み親端末の場合、前記第1の情報および前記第2の情報に含まれるクライアントのデバイスアドレスの個数を比較することにより、子の数のより多い接続済み親端末を決定し、該決定した子の数がより多い接続済み親端末を前記接続相手に決定する
ネットワーク構成方法。
【請求項2】
前記接続相手の決定では、前記第2の通信端末および前記第3の通信端末が何れもが前記接続済み親端末でない場合、前記第2の通信端末および前記第3の通信端末の何れか一方を前記接続相手に決定する
請求項1に記載のネットワーク構成方法。」

第4 引用例の記載事項及び引用発明

折りたたみ中(クリックで表示)

1.引用例1について

原査定の拒絶理由で引用された国際公開第2005/034434号(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)

「[0021] また、本願発明の更なる目的は、各通信装置がネットワークへ参加(移動による参加、無線の伝搬環境が悪化した状態からの復帰による参加、および、主電源のオンによる参加を含む)し、かつ、各通信装置がネットワークから離脱(移動による離脱、伝搬環境の悪化による離脱、および、主電源のオフによる離脱を含む)する環境下においても、親局機能および/または通信品質制御機能を考慮して親局を選択し得る通信装置、通信装置の動作モード起動方法、通信方法、通信システム、プログラム、および、記憶媒体を提供することにある。」

「[0071]  また、上記モード制御部21は、上記動作モード以外の端末機能情報記憶部23に記憶されている情報も取得し、上記AP/STAモードで制御させる際には、この情報に基づき、親局(AP)として動作させるか、子局(STA)として動作させるかを判断する。」

「[0085] AP(Access Point)固定モードとは、無線通信装置1を親局に設定して、動作制御を行うモードのことである。また、STA(Station)固定モードとは、無線通信装置1を子局に設定して、動作制御を行うモードのことである。さらに、AP/STA(Access Point/Station)モードとは、無線通信装置1を、親局あるいは子局の何れかの局にでも設定可能とし、設定された局として動作制御を行うモードのことである。このAP/STA(Access Point/Station)モードでは、無線通信装置は、先ず子局として起動する。」

「[0114] 〔実施の形態2〕
本発明の一実施形態について図3から図6に基づいて説明すると以下の通りである。なお、以下の説明では、実施の形態1と同様に、無線通信装置が親局となる場合には、この無線通信装置が通信品質局としても機能する場合について説明する。つまり、無線通信装置は、通信品質制御可能な親局、または、子局としてのみ機能する場合を示す。
[0115] 図3は、本発明の実施の形態に係る無線通信装置51の機能ブロック図である。
[0116] 無線通信装置51は、同図に示すとおり、CPU(Central Processing Unit)61、MEM(Memory)62、送信データバッファ63、受信データバッファ64、無線通信制御部65、変復調部66、親局機能制御部(親局機能制御手段)67、通信品質制御部(通信品質制御手段)68、子局機能制御部(子局機能制御手段)69、アンテナ70、モード制御部(モード制御手段・制御手段)71、モード判定部(判定手段)72、端末機能情報記憶部(記憶手段)73、モード表示部74、モード設定部75、親局監視部(監視手段)76、主電源制御部(電源制御手段)77、および、端末機能情報通知部(通知手段)78を備えている。」

「[0139] ここで、親局リカバリ機能を発揮して通信障害を回復する際のフローについて、図4のフローチャートに基づいて説明する。なお、図4においては、端末機能情報記憶部73に、AP/STAモード(第3動作モード)が記憶されている場合だけではなく、AP/STAモードの代わりにSTA固定モード(第2動作モード)が記憶されている場合も併せて説明する。」

「[0142] S23においてタイムアウトしていない場合には、Deauthenticationフレームを受信したか否かが判断される(S24)。ここで、Deauthenticationフレームとは制御フレームの一種であって、具体的には、無線ネットワークからの離脱命令である。S24において、Deauthenticationフレームを受信しなかった場合には、再度、S21に戻り、ビーコンを受信しているか否かが判断される。
[0143] また、S24において上記Deauthenticationフレームを受信した場合には、親局監視部76は、親局を失った(つまり、親局と通信不能になった)と判断する。また、上記Deauthenticationフレームを受信後、一定時間経過したか否かが判断される(S25)。S25において一定時間経過していない場合には、一定時間が経過するまで待つ。」
「[0147] S27において元の親局を発見できなければ、モード制御部71は子局機能制御部69を介して無線通信制御部65に指示し、元の通信チャネルにおいて代理親局ができているか否かを検索する(S28)。S28の後は、代理親局が発見できたか否かが判断される(S29)。S29において代理親局が発見できたと判断された場合、発見された代理親局が複数台であるか否かが判断される(S30)。なお、このように代理親局が複数台であるか否かを判断する理由は、各無線通信装置間での親局リカバリ機能による処理の開始タイミングのずれや、無線通信伝搬路状況等の影響により同時に複数の代理親局を発見する場合があるためである。
[0148] S30において複数の代理局を発見しなかった場合、つまり、1台の代理親局のみを発見できた場合には、S32に進み、以後、上述したS32以降の一連の処理がなされる。一方、S30において複数台の代理親局が発見された場合には、モード制御部71によって判断した優先度に従って、一番高い優先度を持つ代理親局を判断して参加する代理親局を選択する(S31)。そして、S32に進み、モード制御部71は、子局機能制御部69を介して無線通信制御部65に指示し、該代理親局に参加する処理を行う。なお、優先度については、後述する。」
「[0170] このような優先度の決定を実現するために、各無線通信装置はネットワークに参加している間、予め周囲の無線通信装置と、親局機能の能力および通信品質制御機能の能力についての情報を交換し、これら情報を端末機能情報記憶部73に保存しておく。この場合、自局の親局機能の能力および通信品質制御機能の能力についての情報は、端末機能情報通知部78によって他の無線通信装置に対してデータフレームとして通知しておく。また、端末機能情報記憶部73に保存した周囲の無線通信装置に関する親局機能の能力および通信品質制御機能の能力についての情報を自局の情報と共に、別の無線通信装置へ通知転送してもよい。
[0171] このようにして無線通信装置51が収集した、周囲の無線通信装置に関する親局機能の能力および通信品質制御機能の能力についての情報は、例えば、図6のようになる。
[0172] 同図に示すとおり、端末機能情報記憶部73には、親局機能の能力についての情報として、電力供給状態、設置状態、サポートする伝送速度、サポートする暗号化技術、および、サポートする電力制御技術に関する情報が保存されている。また、通信品質制御機能の能力についての情報として、通信品質保証能力、親局として機能する場合における仕様外の暗号化技術のサポート、および、電力制御技術に関する情報が保存されている。さらに、上記通信品質保証能力の情報としては、無線通信環境の変化に対する対応力、無線通信装置の収容台数、通信品質をサポートできる伝送速度、および、上記対応力、収容台数、伝送速度等の通信品質保証能力を実行するまでの計算速度に関する情報を保存している。また、端末機能情報記憶部73には、無線通信装置51自身のMACアドレス、通信チャネル、現在親局であるか否か、親局の能力があるか否か、および、通信品質制御局として動作可能か否かといった情報もあわせて保存している。そして、これらの情報をもとに、例えば、それぞれの情報に得点を付けておき、その合計点に基づき優先度を決定することができる。」

上記の記載および当業者における技術常識から以下のことがいえる。

ア 引用例1の段落[0116]によれば、無線通信装置は、親局監視部、モード制御部、子局機能制御部を備える。

イ 引用例1の段落[0143]によれば、無線通信装置が備える親局監視部が親局を失ったと判断するのであるから、そのように判断した場合、無線通信装置は、「親局を失った無線通信装置」ということができる。

また、引用例1の段落[0147]および[0148]によれば、無線通信装置が備えるモード制御部の指示により、代理親局に参加する処理を行うのであるから、段落[0143]の記載と併せれば、親局を失った無線通信装置によって実行される代理親局に参加する方法が記載されている。

ウ 引用例1の段落[0021]によれば、通信装置のネットワークへの参加には、移動による参加が含まれるから、無線通信装置は、移動によりネットワークへ参加するといえる。

エ 引用例1の段落[0147]によれば、無線通信装置が備えるモード制御部は、複数の代理親局を検索している。

オ 引用例1の段落[0170]によれば、無線通信装置は、ネットワークに参加している間に、周囲の無線通信装置の通信品質制御機能の能力についての情報を交換し、保存している。

カ 引用例1の段落[0148]によれば、無線通信装置が備えるモード制御部は、優先度に従って、複数の代理親局のうちから代理親局を選択し、選択した代理親局に参加している。また、引用例1の段落[0172]によれば、優先度は、通信品質制御機能の能力についての情報をもとに決定されるといえる。さらに、引用例1の段落[0071]、[0085]よれば、親局はAP(Access Point)として動作するものであるから、代理親局もAP(Access Point)として動作するものである。

キ 引用例1の段落[0148]によれば、無線通信装置が備えるモード制御部は、代理親局の選択では、複数台の代理親局が発見された場合、優先度に従って代理親局を選択している。また、段落[0172]によれば、優先度は、通信品質制御機能の能力についての情報をもとに決定されるといえ、通信品質制御機能の能力についての情報には、収容台数が含まれるものである。

以上を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認められる。

「 親局を失った無線通信装置によって実行される代理親局に参加する方法であって、無線通信装置は、移動によりネットワークへ参加するものであり、
複数の代理親局を検索し、
ネットワークに参加している間に、周囲の無線通信装置の通信品質制御機能の能力についての情報を交換し、保存し、
通信品質制御機能の能力についての情報をもとに決定される優先度に従って、複数の代理親局のうちからAP(Access Point)として動作する代理親局を選択し、選択した代理親局に参加し、
代理親局の選択では、複数台の代理親局が発見された場合、収容台数が含まれる通信品質制御機能の能力についての情報をもとに決定される優先度に従って代理親局を選択する
代理親局に参加する方法。」

2.引用例2について

原査定の拒絶理由で引用された特開2005-27280号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)

「【0012】
請求項1の発明は、Bluetoothネットワークを構築するBluetooth装置からマスタを選択するBluetoothマスタ選択方法であって、前記マスタになり得るそれぞれのBluetooth装置が問合せ(Inquiry)により接続可能なBluetooth装置の機器アドレスを取得するステップと、前記マスタになり得るそれぞれのBluetooth装置が前記取得した機器アドレスを有するそれぞれのBluetooth装置から必要な評価情報を取得するステップと、前記評価情報の所定の評価方法に基づき前記マスタとなるBluetooth装置を決定するステップとを含む。」
「【0032】
請求項11の発明は、請求項1または2記載のBluetoothマスタ選択方法において、前記評価情報の所定の評価方法は、マスタになり得るそれぞれのBluetooth装置が取得した接続可能なBluetooth装置の機器アドレスののべ発見数が最大であるBluetooth装置をマスタと決定する。
【0033】
上記構成によれば、マスタになり得るそれぞれのBluetooth装置が取得した機器アドレスのべ発見数を互いに比較することで、自動的に無線接続が安定するBluetooth機器の接続数が最大になるBluetooth装置をマスタとして選択することができる。」

第5 対比・判断

1.本願発明1について

本願発明1と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「親局を失った無線通信装置」は、何れのネットワークにも接続されていないことは明らかであるから、本願発明1の「何れのネットワークにも接続されていない第1の通信端末」に相当する。

(2)引用発明において、「周囲の無線通信装置の通信品質制御機能の能力についての情報」(下線は当審で付与した。)を用いて複数の代理親局のうちからAPとして動作する代理親局を選択していることを勘案すると、引用発明の「複数の代理親局」は、「周囲の無線通信装置」の中に含まれるものである。そうすると、引用発明の「複数の代理親局を検索し」は、本願発明1の「周囲に存在する第2の通信端末を探索し」および「周囲に存在する第3の通信端末を探索し」に相当する。

(3)引用発明の「無線通信装置」は、「通信品質制御機能の能力についての情報」をもとに「複数の代理親局のうちからAP(Access Point)として動作する代理親局を選択」するものであるから、引用発明の「通信品質制御機能の能力についての情報」は、本願発明1の「第1の情報」および「第2の情報」に相当する。

また、引用発明の「無線通信装置」は、「周囲の無線通信装置の通信品質制御機能の能力についての情報を交換し、保存」するものであるから、上記「通信品質制御機能の能力についての情報」は、「周囲の無線通信装置」の中の「複数の代理親局」から受信した通信メッセージに含まれ、無線通信装置に記憶されることは明らかである。

そうすると、引用発明において、交換された「周囲の無線通信装置の通信品質制御機能の能力についての情報」は、本願発明1の「第2の通信端末から受信した通信メッセージに含まれる第1の情報」および「第3の通信端末から受信した通信メッセージに含まれる第2の情報」に相当する。

以上を踏まえると、引用発明の「ネットワークに参加している間に、周囲の無線通信装置の通信品質制御機能の能力についての情報を交換し、保存し」は、「第2の通信端末から受信した通信メッセージに含まれる第1の情報を記憶し」、および、「第3の通信端末から受信した通信メッセージに含まれる第2の情報を記憶し」という点で本願発明1と共通する。

ただし、「第2の通信端末から受信した通信メッセージに含まれる第1の情報を記憶」するのが、本願発明1では「第2の通信端末を発見したとき」であり、「第3の通信端末から受信した通信メッセージに含まれる第2の情報を記憶」するのが、本願発明1では「第3の通信端末を発見したとき」であるのに対し、引用発明ではいずれも「ネットワークに参加している間」である点で相違する。

(4)引用発明の「代理親局」は、本願発明1の「親端末」に相当すること、および、上記(3)で説示した対応関係を考慮すると、引用発明の「通信品質制御機能の能力についての情報をもとに決定される優先度に従って、複数の代理親局のうちからAP(Access Point)として動作する代理親局を選択し」は、「前記第1の情報および前記第2の情報に基づいて、前記第2の通信端末および前記第3の通信端末のうちからアクセスポイントとして機能している親端末を接続相手に決定し」の点で本願発明1と共通する。

ただし、接続相手に決定する親端末に関し、本願発明1では、「接続済み親端末」であるのに対し、引用発明の「代理親局」は接続済みであるか特定されていない点で相違する。

また、接続相手の決定に関し、本願発明1では、「前記第2の通信端末および前記第3の通信端末が何れも接続済み親端末の場合、前記第1の情報および前記第2の情報に含まれるクライアントのデバイスアドレスの個数を比較することにより、子の数のより多い接続済み親端末を決定し、該決定した子の数がより多い接続済み親端末を前記接続相手に決定する」のに対し、引用発明では、その旨の特定がなされていない点で相違する。

(5)引用発明において、無線通信装置が代理親局に参加することによりネットワークが構成されることは明らかであるから、引用発明の「選択した代理親局に参加し」は、本願発明の「前記決定した接続相手とネットワークを構成し」に相当する。

そうすると、引用発明の「親局を失った無線通信装置によって実行される代理親局に参加する方法」は、本願発明1と同様に、「何れのネットワークにも接続されていない第1の通信端末によって実行されるネットワーク構成方法」といえる。

ただし、ネットワークを構成するための各処理を、本願発明1では「移動中」に行うのに対し、引用発明では、移動によりネットワークへ参加するものではあるが、移動中に各処理を行うことまでは特定されていない点で相違する。

以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点および相違点は、次のとおりである。

(一致点)

「 何れのネットワークにも接続されていない第1の通信端末によって実行されるネットワーク構成方法であって、前記第1の通信端末は、
周囲に存在する第2の通信端末を探索し、
前記第2の通信端末から受信した通信メッセージに含まれる第1の情報を記憶し、
周囲に存在する第3の通信端末を探索し、
前記第3の通信端末から受信した通信メッセージに含まれる第2の情報を記憶し、
前記第1の情報および前記第2の情報に基づいて、前記第2の通信端末および前記第3の通信端末のうちからアクセスポイントとして機能している親端末を接続相手に決定し、
前記決定した接続相手とネットワークを構成する
ネットワーク構成方法。」

(相違点1)

「第2の通信端末から受信した通信メッセージに含まれる第1の情報を記憶」するのが、本願発明1では「第2の通信端末を発見したとき」であり、「第3の通信端末から受信した通信メッセージに含まれる第2の情報を記憶」するのが、本願発明1では「第3の通信端末を発見したとき」であるのに対し、引用発明ではいずれも「ネットワークに参加している間」である点。

(相違点2)

接続相手に決定する親端末に関し、本願発明1では、「接続済み親端末」であるのに対し、引用発明の「代理親局」は接続済みであるか特定されていない点

(相違点3)

接続相手の決定に関し、本願発明1では、「前記第2の通信端末および前記第3の通信端末が何れも接続済み親端末の場合、前記第1の情報および前記第2の情報に含まれるクライアントのデバイスアドレスの個数を比較することにより、子の数のより多い接続済み親端末を決定し、該決定した子の数がより多い接続済み親端末を前記接続相手に決定する」のに対し、引用発明では、その旨の特定がなされていない点。

(相違点4)

ネットワークを構成するための各処理を、本願発明1では「移動中」に行うのに対し、引用発明では、移動によりネットワークへ参加するものではあるが、移動中に各処理を行うことまでは特定されていない点。

事案に鑑みて、上記相違点3について先に検討する。

原査定で引用された引用例2には、上記第4で摘記した記載によれば、「Bluetoothネットワークを構築するBluetooth装置からマスタを選択するBluetoothマスタ選択方法であって、マスタになり得るそれぞれのBluetooth装置が取得した機器アドレスのべ発見数を互いに比較すること、マスタになり得るそれぞれのBluetooth装置が取得した接続可能なBluetooth装置の機器アドレスののべ発見数が最大であるBluetooth装置をマスタと決定する」という技術的事項が記載されている。

しかしながら、引用例2に記載の「接続可能なBluetooth装置の機器アドレスののべ発見数」は、相違点3に係る本願発明1の発明特定事項のうち「クライアントのデバイスアドレスの個数」という発明特定事項とは異なるものである。そうすると、相違点3に係る本願発明1の発明特定事項のうち「前記第1の情報および前記第2の情報に含まれるクライアントのデバイスアドレスの個数を比較することにより、子の数のより多い接続済み親端末を決定し、該決定した子の数がより多い接続済み親端末を前記接続相手に決定する」という発明特定事項は、引用例2にも記載も示唆もされておらず、当該技術分野において周知技術であるともいえない。

よって、当業者といえども、引用発明において、上記相違点3に係る「前記第2の通信端末および前記第3の通信端末が何れも接続済み親端末の場合、前記第1の情報および前記第2の情報に含まれるクライアントのデバイスアドレスの個数を比較することにより、子の数のより多い接続済み親端末を決定し、該決定した子の数がより多い接続済み親端末を前記接続相手に決定する」ものとすることは、容易に想到し得たとはいえない。

したがって、上記相違点1、2および4について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明および引用例2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2について

本願発明2も、本願発明1の「前記第2の通信端末および前記第3の通信端末が何れも接続済み親端末の場合、前記第1の情報および前記第2の情報に含まれるクライアントのデバイスアドレスの個数を比較することにより、子の数のより多い接続済み親端末を決定し、該決定した子の数がより多い接続済み親端末を前記接続相手に決定する」という同一の発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明および引用例2に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 原査定について

審判請求時の補正により、本願発明1および2は「前記第2の通信端末および前記第3の通信端末が何れも接続済み親端末の場合、前記第1の情報および前記第2の情報に含まれるクライアントのデバイスアドレスの個数を比較することにより、子の数のより多い接続済み親端末を決定し、該決定した子の数がより多い接続済み親端末を前記接続相手に決定する」という発明特定事項を有するものとなっているから、上記「第5」の「1.」及び上記「第5」の「2.」のとおり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用例1および2に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

第7 当審拒絶理由について

当審では、特許請求の範囲の記載に対して、下記の点で、特許法第36条第6項第1号および特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない旨、拒絶の理由を通知した。

請求項1には、「前記第2の通信端末から受信した通信メッセージに含まれる第1の情報を記憶し」と、「前記第3の通信端末から受信した通信メッセージに含まれる第2の情報を記憶し」との記載があるところ、当該通信メッセージは、プローブ応答以外の通信メッセージを含みうる。そして、そのような「前記第1の情報および前記第2の情報」に「基づいて、前記第2の通信端末および前記第3の通信端末のうちからアクセスポイントとして機能している接続済み親端末を接続相手に決定」するものである。

一方、請求項1には「前記接続相手の決定では、前記第2の通信端末および前記第3の通信端末が何れも接続済み親端末の場合、プローブ応答に含まれるクライアントのデバイスアドレスの個数を比較することにより、子の数のより多い接続済み親端末を決定し、該決定した子の数がより多い接続済み親端末を前記接続相手に決定する」との記載があり、「前記第1の情報および前記第2の情報」に含まれない「プローブ応答に含まれるクライアントのデバイスアドレスの個数」との情報に基づき接続相手を決定するものとも解され、これは技術的に矛盾する。

よって、請求項1に係る発明は明確でない。

また、そのような事項は、発明の詳細な説明に記載も示唆もされていない。

請求項1を引用する請求項2についても同様である。

よって、請求項1-2に係る発明は、明確でなく、発明の詳細な説明に記載したものでない。

これに対し、令和2年10月8日に提出された手続補正書により、補正前の「前記接続相手の決定では、前記第2の通信端末および前記第3の通信端末が何れも接続済み親端末の場合、プローブ応答に含まれるクライアントのデバイスアドレスの個数を比較することにより、子の数のより多い接続済み親端末を決定し、該決定した子の数がより多い接続済み親端末を前記接続相手に決定する」は、「前記接続相手の決定では、前記第2の通信端末および前記第3の通信端末が何れも接続済み親端末の場合、前記第1の情報および前記第2の情報に含まれるクライアントのデバイスアドレスの個数を比較することにより、子の数のより多い接続済み親端末を決定し、該決定した子の数がより多い接続済み親端末を前記接続相手に決定する」と補正されたことにより、この拒絶理由は解消した。

第8 むすび

以上のとおり、本願発明1および2は、当業者が引用発明および引用例2に記載された技術的事項に基いて容易に発明することができたものではない。

したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

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2019-012446

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