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特許拒絶査定不服審判

2019-012130

分光センサ、及びそれを採用した分光器

審判番号
2019-012130
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-095890外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年09月12日
審決日
2020年04月06日
公報発行日
2020年10月30日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (G01J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015- 95890「分光センサ、及びそれを採用した分光器」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月 3日出願公開、特開2015-215351〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成27年5月8日(パリ条約による優先権主張 2014年5月9日 韓国、2014年8月5日 韓国)の出願であって、平成30年11月30日付けで拒絶理由が通知され、平成31年3月4日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年(令和元年)5月24日付けで拒絶査定されたところ、同年9月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1~19に係る発明は、平成31年3月4日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1~19に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「共振波長帯域が互いに異なる複数のナノアンテナを具備するナノアンテナ・アレイ部と、 前記複数のナノアンテナからの光をそれぞれ検出する複数の光検出器を具備する光検出器アレイ部と、を含み、 前記複数のナノアンテナのそれぞれは、 第1誘電体層と、前記第1誘電体層より大きい屈折率を有する第2誘電体層とが第1方向に沿って交互積層された積層構造と、前記積層構造を貫通して形成された複数のナノホールと、を含む上部ナノ構造層と、 第3誘電体層と、前記第3誘電体層より大きい屈折率を有する第4誘電体層と、が第1方向に沿って交互積層された積層構造と、前記積層構造を貫通して形成された複数のナノホールと、を含む下部ナノ構造層と、 前記上部ナノ構造層と下部ナノ構造層との間に配置され、誘電物質からなる中間層と、 を含み、 前記中間層は、前記第1誘電体層、前記第2誘電体層、前記第3誘電体層、および前記第4誘電体層の各層と材質が異なるか、または厚さが異なる、分光センサ。」 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、概略、次のとおりのものである。 本願発明は、本願の最先の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1.特開2008-191097号公報 引用文献2.特開2006-78985号公報(周知技術を示す文献) 引用文献3.特開2011-22432号公報(周知技術を示す文献) 引用文献4.国際公開第2007/029714号(周知技術を示す文献) 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1について (1)引用文献1の記載 引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。 (引1ア) 「【課題を解決するための手段】 【0014】 請求項1に係る発明は、透過スペクトルが順次異なる複数の微小フィルターを列状に配置してなり、一定の透過波長帯域を有するユニットフィルターを一列或いは複数列有する複合型の分光フィルターと、個々の前記微小フィルターに光学的に対応した画素を有し、微小フィルターを透過した光を受光する光電変換素子と、を有することを特徴とする分光計測器である。 本発明は、分光計測装置における分光器の中心的部品として、透過スペクトルがわずかずつ異なる多数の微小波長フィルターを共通の基板面上に並列配置した構造のフィルタを用い、また光度計として光電変換素子(例えば、イメージセンサー)を用い、両者を組み合わせた機器構成とすることで上記の問題の解決を図るものである。 【0015】 ・・・ 請求項3に係る発明は、前記微小フィルターは、被計測光の波長の2倍程度の距離以内では屈折率が周期的ないし準周期的に変化していることを特徴とする請求項1又は2記載の分光計測器である。光の波長のおおむね2分の1程度の間隔で屈折率が周期的に変動している構造体をフォトニック結晶と呼ぶ。被計測光の波長の2倍程度の距離範囲はその屈折率変動の数周期分を含むことになり、局所的にフォトニック結晶としての性質を期待できる。膜構造が単なる平坦な多層膜から、基板面内にも屈折率の変調のあるフォトニック結晶になることで、基板面内での光のブラッグ反射を反映した光の伝搬モードとストップバンドが新たに発生する。この新たに生じたストップバンドを利用することで、光の透過スペクトルを、単なる平坦な誘電体多層膜構造の透過スペクトルから効率的にシフトさせることができる。 請求項4に係る発明は、前記分光フィルターは、周期的な凹凸を持つ基板の上に2種類以上の物質を周期的に順次積層し、その積層全体の中の少なくとも一部分にスパッタエッチングを単独で、または成膜と同時に用いることにより周期的な構造を形成してなる多層膜構造をその一部に含む構造体からなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の分光計測器である。 請求項5に係る発明は、途中に厚みの異なる層を挿入してファブリ・ペロー干渉計構成とし帯域通過型の微小フィルターとしたことを特徴とする請求項4記載の分光計測器である。 請求項6に係る発明は、前記分光フィルターは、2種類以上の誘電体からなる多層膜に溝または孔の列を形成することで屈折率の変調を実現してある請求項1ないし3のいずれか1項記載の分光計測器である。 ・・・ 請求項13に係る発明は、前記光電変換素子は、CCD、CMOS又は化合物半導体型のイメージセンサーであることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項記載の分光計測機器である。 請求項14に係る発明は、前記微小フィルターの領域と前記画素とは同じ大きさであることを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項記載の分光計測器である。 ・・・ 【0017】 またイメージセンサーは好ましくはCCDやCMOS(相補型金属酸化物半導体)、あるいは化台物半導体から成るセンサーの1次元もしくは2次元アレイを使用する。 【0018】 複合型分光フィルターを構成する個々の微小波長フィルターの透過スペクトルはその構成材料の屈折率と周期構造の形状で規定されるが、周期形状は電子線リソグラフィ技術等の汎用の半導体微細加工プロセスによって形成することができる。微小波長フィルターを基板面内でどのように配置するかは電子線描画やステッパによる描画時のレイアウト次第で高い自由度を持って決めることができる。この複合型分光フィルターの微小フィルター要素とイメージセンサーの画素が空間的に対応するように両者を組み合わせる。これは微小フィルターの寸法をイメージセンサーの画素ピッチと一致させて作製しておいた上で両者を直接張り合わせてもよいし、イメージセンサー上に直接波長フィルター膜となる周期構造を形成してもよい。また両者を適当なリレー光学系を介して光学的に対応付けてもよい。」 (引1イ) 「【0026】 イメージセンサーの画素と対応することになる単位波長フィルター領域202の内部では格子のパターンは一様であるが、別の領域内ではまた別のパターンを描画する。すなわち線列や孔列の配置間隔や配置方向を適宜変化させる。次に現像後の基板をドライエッチ加工し、レジスト上の格子パターンを下地の基板に転写する。こうして凹凸付き基板が出来上がる。続いてこの基板上に、rfマグネトロン・スパッタ法によって複数種類の誘電体層203を交互に積層する。可視波長向けのフィルター用には、例えば石英(屈折率約1.47)と五酸化タンタル(屈折率約2.1)を材料に用いることができる。」 (引1ウ) 「【実施例1】 【0035】 (自己クローニング型周期構造) 自己クローニング型フォトニック結晶による複合型分光フィルターの実施例を示す。 図8は複合型分光フィルターの一部を拡大して描いたものであり、3つの微小フィルター領域が並べて配置されている様子を示している。3つの微小フィルターは連続しており、同時に一体的に形成されている。 以下に形成手順の例を示す。 石英ガラス基板801の上に電子線リソグラフィとドライエッチングによって周期的な溝の列を形成する。本例では、3つの微小波長フィルター領域における溝の間隔p1、p2、p3はそれぞれ230nm、252nm、270nmである。 【0036】 次に、この溝列付き基板801にrfバイアススパッタリングで五酸化ニオブ(屈折率2.28)の層802と石英(屈折率1.47)の層803とを交互に20周期、計40層積層する。層の厚みはいずれも120nmとする。スパッタ成膜の条件、すなわちrf電力、基板に印加するバイアス電圧、成膜中の圧力、酸素ガスの圧力などを適当に調整することであり、図8に示すように定常な三角波状の多層膜が形成される。これらの値の一例は次のとおりである。五酸化ニオブについてはrf電力380W、バイアス電力0W、ガス圧力2mTorr、石英についてはrf電力380W、バイアス電力20W、ガス圧力6mTorrである。 【0037】 以上のようにして形成された微小波長フィルターの、TE波に対する透過スペクトルを図9に示す。ここでいうTE波とは基板面に垂直に入射する光のうち、電界の振動方向が溝に平行である波を指す。いずれの領域も波長の短い波は反射し、波長の長い光を透過させる長波長透過の特性を示すが、その開始波長(カットオフ波長)が異なっている。同じ要領で、溝列の間隔pを様々な値に変えた領域を多数並べることで、カットオフ波長が空間的に少しずつシフトした微小フィルターの列を構成することができる。 【0038】 隣接するセンサー画素間の受光強度の差を計算すれば、隣接するフィルターのカットオフ波長の間に含まれるスペクトルの積分値が得られる。この差分演算処理を隣接画素間で実行していく手段を設けておくことで、短波長側から長波長側までのスペクトルの形状を詳細に求めることができる。 【0039】 上で示した3種類の微小波長フィルター領域の、別の波長帯におけるTE波の透過スペクトルを図10に示す。この波長域ではいずれも短波長透過型のフィルター特性を示す。このようにフィルターの基本特性は凹凸付き多層膜の各方向の周期と波長の相対的な大小関係で決まるので、面内の凹凸周期を適宜設計することで、ある波長帯に対し様々な透過特性を持ったフィルターを一つの基板面内に多数並列して作製することが可能である。 【0040】 ここでは基板に石英ガラスを用いた実施例を示したが、本発明を実施する手段としてはこの材料に限定されるものではない。基板材料は使用する波長域で透明であり、かつスッパッタ成膜に耐える機械的、化学的強度を有しているものであれば他のガラス材料や結晶材料、有機材料でも構わない。また多層膜の構成材料としてここでは五酸化ニオブと石英を取り上げたが、材料もこれらに限定されるものではない。 可視波長域では他に五酸化タンタルや窒化シリコン、酸化ハフニウム、アルミナなどが使用できる。近赤外から短波長赤外領域では高屈折材料としてシリコンやゲルマニウムなどが使用できる。 【0041】 また、各層の膜厚や面内の溝間隔の数値は上述の値に限定されるものではない。測定しようとする波長帯とフィルター特性に応じて、適当な値を設計して用いる。 【0042】 また、本実施例では、最下層から最上層まで同じ厚みで膜を積層する構成を示したが、途中に厚みの異なる層を挿入してファブリ・ペロー干渉計構成とし、帯域通過型のフィルター特性を実現することもできる。 また、面内の周期形状として溝の列を配置する例を示したが、周期形状として孔の列や交差する溝の列を配置してもよい。このような基板上に形成された多層膜においては、屈折率が3方向すなわち基板面内の2方向と積層方向に周期的に変化する、いわゆる3次元フォトニック結晶構造となる。3次元フォトニック結晶構造においても、図9、図10に類似した各種の透過スペクトルを利用した波長のフィルタリング作用が実現できる。」 (引1エ) 「【実施例2】 【0043】 ここでは複合型光フィルターの別の構成例を示す。図11に示すのは、フィルターの一部を拡大して描いたものであり、隣接する2つの微小フィルター領域が示されている。 この構造は石英ガラス基板1101の上に五酸化ニオブ層1102と石英層1103を交互に積層した後に、電子線リソグラフィとドライエッチで穿孔を行って周期的な円孔列1104を形成したものである。その配置の格子形状、または配置間隔または円孔の直径あるいはそれらすべてが微小フィルター領域ごとに異なっている。例として、五酸化ニオブ層と石英層の厚みをいずれも100nmとし、10積層周期、すなわち合計20層積層するものとし、また円孔列は格子定数150nmで正方格子状に配置する。 【0044】 円孔の直径が125nm、162.5nm、175nm、187.5nmの4種類である場合の微小波長フィルターの透過スペクトルを図12に示した。カットオフ波長が少しずつ異なる長波長透過型のフィルター特性を示すことがわかる。円孔の配置間隔及び円孔の直径を細かく変化させることで、カットオフ波長をより小さな幅でシフトさせることが可能となる。この構成では屈折率の周期的な変化が図11のx方向とy方向で等しいため、透過スペクトルは入射光の偏光面に依存しない。 【0045】 なお、この実施例においても膜材料や周期構造の間隔、膜の厚みなどが上記の値に限定されるものではないことは実施例1で説明したとおりである。円孔の代わりに直線的な溝の列を加工する構成でもよく、その場合は溝の深さや橿、配置間隔によって波長特性を調節することになる。このような穿孔型多層膜構造の単体での光学特性は非特許文献3に開示されている。またこの実施例に示した計算例では、カットオフ波長付近で透過率に大きな変動が見られる。これは多層膜の両端面の間で生じる光の多重反射による干渉が原因であり、平坦な多層膜の場合と同様に、空気側界面あるいは基板側界面に適当な無反射終端層を挿入することで低減することが可能である。」 (引1オ) (2)引用発明 ア 【0043】の記載及び図11によれば、「複合型光フィルター」「の構造は石英ガラス基板1101の上に五酸化ニオブ層1102と石英層1103を交互に」複数周期「積層し」て多層膜を形成し「た後に」、前記多層膜に対し「電子線リソグラフィとドライエッチで」前記積層方向に「穿孔を行って周期的な円孔列1104を形成したもの」であることが理解できる。 イ 上記アを含め上記(1)の記載事項及び図面を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「透過スペクトルが順次異なる複数の微小フィルターを列状に配置してなる複合型分光フィルターと、個々の前記微小フィルターに光学的に対応した画素を有し、前記微小フィルターを透過した光を受光する光電変換素子と、を有する分光計測装置であって、 前記複合型光フィルターの構造は、石英ガラス基板1101の上に、五酸化ニオブ(屈折率約2.1)層1102と石英(屈折率約1.47)層1103を交互に複数周期積層して多層膜を形成した後に、前記多層膜に対し電子線リソグラフィとドライエッチで前記積層方向に穿孔を行って周期的な円孔列1104を形成したものであり、その配置の格子形状、または配置間隔または円孔の直径あるいはそれらすべてが微小フィルター領域ごとに異なっており、 前記微小フィルターは、被計測光の波長の2倍程度の距離以内では屈折率が周期的に変化し、膜構造が単なる平坦な多層膜から、基板面内にも屈折率の変調のあるフォトニック結晶になることで、基板面内での光のブラッグ反射を反映した光の伝搬モードとストップバンドが新たに発生し、この新たに生じたストップバンドを利用することで、光の透過スペクトルを、単なる平坦な誘電体多層膜構造の透過スペクトルから効率的にシフトさせることができ、 前記複合型分光フィルターは、2種類の誘電体からなる前記多層膜に孔の列を形成することで屈折率の変調を実現してあり、 前記光電変換素子は、CCD、CMOS又は化合物半導体型の1次元もしくは2次元アレイのイメージセンサーであり、 前記微小フィルター領域と前記画素とは同じ大きさである、 分光計測装置。」 2 引用文献3の記載 引用文献3には、以下の事項が記載されている。 (引3ア) 「【0016】 (第1の実施の形態) 次に、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。 説明の都合上、まず、従来の多層膜光学フィルタの基本構造について図1、図2を参照して説明した後、第1の実施の形態の多層膜光学フィルタについて説明する。 図1に示すように、符号101は上部反射器であり、符号103は下部反射器である。 光は上方から入射し下方に透過する。 符号102はスペーサ層である。 上部反射器101、下部反射器103はそれぞれ4層、計8層からなる多層膜であり、白抜き部分は低屈折率部2、斜線部分は高屈折率部4を示す。 層数は8層に限らず、6層、10層、12層など、任意の数でも構わない。 上部反射器101、下部反射器103のそれぞれに含まれる層2、4の各々の光学膜厚はこの多層膜光学フィルタを透過させようとする入射電磁波波長のλ/4であり、したがって、層2、4の各々の物理的な膜厚は、λ/4n(ただしnは媒質の屈折率)である。 この多層膜光学フィルタを透過させる光が可視波長(550nm)である場合は、各層2、4の物理的な膜厚は、137.5[nm]/nになる。 つまり、低屈折率の媒質の屈折率をn1, 高屈折率の媒質の屈折率をn2とした場合、それぞれの層2、4の物理的な膜厚は、137.5/n1 [nm], 137.5/n2[nm]になる。 また、各層2、4の物理的な膜厚をd1, d2とすると、両者には、d1・n1=d2・n2=光学膜厚の関係が成り立つ。 ここで光学膜厚とは、各層2、4(誘電体層)の膜厚dにその屈折率nを乗じた指数である。 【0017】 一例として、低屈折率層10をSiO2とすると、可視波長域での屈折率は1.45であるので、物理的な膜厚は94.8[nm]程度が好ましい。 高屈折率層12を窒化シリコン(Si3N4)とすると、同波長域での屈折率は2.05であるので、物理的な膜厚は67.1[nm]程度が好ましい。 また、高屈折率層12を二酸化チタン(TiO2)にした場合は、同波長域での屈折率は2.5であるので、膜厚は55[nm]程度が好ましい。 これら低屈折率の媒質と高屈折率の媒質との屈折率の比率が大きいほど、多層膜光学フィルタの反射・透過特性や帯域幅が広くなるため、両媒質の屈折率差は大きいほど好ましい。 符号102はスペーサ層であり、この層の厚さを調整することで、透過波長を調整することができる。スペーサ層102を構成する媒質は低屈折率の媒質と同じ、もしくは高屈折率の媒質と同じ、もしくは両媒質と異なる屈折率を有する第3の媒質でも構わない。」 (引3イ) 「【0018】 図2は、固体撮像素子の1画素の断面模式図である。 図2(A)は有機色フィルタ202を備えた画素であり、図2(B)は一般的な多層膜光学フィルタ205を備えた画素である。 符号201,204はオンチップ凸レンズであり、フォトセンサー203,208に効率よく光を集めるための代表的な集光素子である。 符号202は有機素材からなるカラーフィルタであり、たとえばR,G,Bそれぞれの光を透過し、それ以外の光を吸収するナノサイズの顔料を含んだ層であることが一般的である。 符号205は多層膜光学フィルタである。 多層膜光学フィルタ205は斜線で示す高屈折率部分と白ぬきで示す低屈折率部分の周期構造206を1セットとし、それらを積層した構造体である。 ここで、周期構造206の1周期を構成するそれぞれの光学膜厚は入射電磁波波長λの1/4の膜厚であり、つまり1周期は光学膜厚で半波長に相当する。 多層膜光学フィルタ205は、上部反射器と下部反射器とで構成され、両者の間にはスペーサ層207が挿入され、スペーサ層207の厚さを変化させることで、所望の電磁波を透過させ、それ以外の波長を透過させないバンドパスフィルタを実現する。 多層膜光学フィルタ205は透過させたい電磁波帯で透明であれば任意の素材で良く、無機素材で容易に実現可能であるため、紫外線等の外的ストレスに強く化学的に安定した多層膜光学フィルタを実現できる点で優れている。」 (引3ウ) 「【0022】 多層膜の厚さ方向の中間部に、第1誘電体層12あるいは第2誘電体層14に置き換えて、誘電体からなるスペーサ層16が設けられている。 スペーサ層16を構成する誘電体は、第1誘電体層12あるいは第2誘電体層14と同じ誘電体材料で構成され、あるいは、第1誘電体層12および第2誘電体層14の何れのとも異なる屈折率を有する誘電体材料で構成されている。 多層膜光学フィルタ20は、スペーサ層16の光学膜厚を変化させることによって、所望の電磁波を透過させ、それ以外の波長を透過させないバンドパスフィルタとして構成される。 すなわち、スペーサ層16は、各多層膜が選択的に透過させる光の特定波長で定められる光学膜厚で形成されている。 第1、第2誘電体層12、14が積層される方向において、スペーサ層16よりも上部に位置する多層膜によって上部反射器が構成され、スペーサ層16よりも下部に位置する多層膜によって下部反射器が構成されている。 したがって、上部反射器と下部反射器との間にスペーサ層16が介設されていることになる。 なお、スペーサ層16は省略することもできる。」 (引3エ)図1 (引3オ)図2 (引3カ)図3 3 引用文献4の記載 引用文献4には、以下の事項が記載されている。 (引4ア) 「実施例2 [0025] 図9には本発明の第2の実施例を示す。本実施例ではフォトニック結晶の狭帯域波長選択特性を利用するための方法を示す。この例では基板の格子型とその形成方法、及び自己クローニング法による多層膜の作製方法は実施例1と同じであるが、面内の格子周期及び多層膜の膜構成が異なっている。すなわちフィルタの要素領域として、面内の格子定数が200nm、250nm、300nm、350nmの四種類の領域901、902、903、904を設ける。膜厚方向には、石英基板905上に厚さ95.2nmのTa2O5層906と厚さ133.3nmのSiO2層907を交互に計20層積層し、続いてキャビティ層として厚さ133.3nmのTa2O5層908を積層する。続いて厚さ133.3nmのSiO2と厚さ95.2nmのTa2O5とを交互に計20層積層したものである。実施例1と同様、必要に応じて基板整形層909を設けても良い。キャビティ層を挟む上下の交互多層膜は高反射率の分布反射鏡として機能する。 [0026] 領域901、902、903、904それぞれにおける光パワーの透過特性のFDTD法による数値シミュレーション結果を図10に示す。それぞれの領域が、フォトニック・バンドギャップ中に、異なる中心波長を持つ狭い線幅の透過ピークを持つことが分かる。ここで波長740nmから800nmまでの波長成分を持つ計測光が入射すると、領域901、902、903、904にはそれぞれ波長746nm、751nm、758nm、764nmを中心として幅25nm程度の狭い範囲の波長成分のみが透過されることになる。このように本実施例では、入射スペクトルを波長軸上で細かく分割して続く受光素子へ導くことができる。」 (引4イ)図9 (引4ウ)図10 第5 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 1 フォトニック結晶は、特定波長領域の光を共振させて外部に取り出すナノ周期構造体であるところ、引用文献1の【0043】には、微小フィルターが、「五酸化ニオブ層と石英層の厚みをいずれも100nm」とするナノオーダーの周期構造物であることが例示されていることを踏まえると、引用発明の「フォトニック結晶」である「微小フィルター」は、本願発明の「ナノアンテナ」に相当する。 2 上記1を踏まえると、引用発明の「透過スペクトルが順次異なる複数の微小フィルター」は、本願発明の「共振波長帯域が互いに異なる複数のナノアンテナ」に相当する。 3 上記2を踏まえると、引用発明の「透過スペクトルが順次異なる複数の微小フィルターを列状に配置してなる複合型の分光フィルター」は、本願発明の「共振波長帯域が互いに異なる複数のナノアンテナを具備するナノアンテナ・アレイ部」に相当する。 4 引用発明の「画素」は、本願発明の「光検出器」に相当する。 5 上記4を踏まえると、引用発明の「個々の前記微小フィルターに光学的に対応した画素」は、「前記微小フィルターを透過した光を受光する」から、本願発明の「前記複数のナノアンテナからの光をそれぞれ検出する複数の光検出器」に相当する。 6 上記5を踏まえると、引用発明の「個々の前記微小フィルターに光学的に対応した画素を有し、前記微小フィルターを透過した光を受光する」、「1次元もしくは2次元アレイのイメージセンサーであ」る「光電変換素子」は、本願発明の「前記複数のナノアンテナからの光をそれぞれ検出する複数の光検出器を具備する光検出器アレイ部」に相当する。 7 引用発明の「石英(屈折率約1.47)層1103」は、本願発明の「第1誘電体層」及び「第3誘電体層」に相当し、引用発明の「五酸化ニオブ(屈折率約2.1)層1102」は、本願発明の「第2誘電体層」及び「第4誘電体層」に相当する。 8 上記7を踏まえると、引用発明の「五酸化ニオブ(屈折率約2.1)層1102と石英(屈折率約1.47)層1103を交互に複数周期積層して」「形成した」「多層膜」のうち上部の「複数周期」の「多層膜」は、微小フィルター(ナノ周期構造物)の一部であるから、本願発明の「第1誘電体層と、前記第1誘電体層より大きい屈折率を有する第2誘電体層とが第1方向に沿って交互積層された積層構造」「を含む上部ナノ構造層」に相当する。また、引用発明の「五酸化ニオブ(屈折率約2.1)層1102と石英(屈折率約1.47)層1103を交互に複数周期積層して」「形成した」「多層膜」のうち下部の「複数周期」の「多層膜」は、微小フィルター(ナノ周期構造物)の一部であるから、「第3誘電体層と、前記第3誘電体層より大きい屈折率を有する第4誘電体層と、が第1方向に沿って交互積層された積層構造」「を含む下部ナノ構造層」に相当する。 9 上記1を踏まえると、引用発明の「円孔」は、微小フィルター(ナノ周期構造物)の一部であるから、本願発明の「ナノホール」に相当する。 10 上記9を踏まえると、引用発明の「周期的な円孔列1104」は、本願発明の「複数のナノホール」に相当する。 11 上記10を踏まえると、引用発明の「前記多層膜に対し電子線リソグラフィとドライエッチで前記積層方向に穿孔を行って」「形成した」「周期的な円孔列1104」は、本願発明の「前記積層構造を貫通して形成された複数のナノホール」に相当する。 12 上記8及び11を踏まえると、 引用発明の「微小フィルター」は、「石英ガラス基板1101の上に、五酸化ニオブ(屈折率約2.1)層1102と石英(屈折率約1.47)層1103を交互に複数周期積層して多層膜を形成した後に、前記多層膜に対し電子線リソグラフィとドライエッチで前記積層方向に穿孔を行って周期的な円孔列1104を形成したものであ」ることと、 本願発明の「前記複数のナノアンテナのそれぞれは、 第1誘電体層と、前記第1誘電体層より大きい屈折率を有する第2誘電体層とが第1方向に沿って交互積層された積層構造と、前記積層構造を貫通して形成された複数のナノホールと、を含む上部ナノ構造層と、 第3誘電体層と、前記第3誘電体層より大きい屈折率を有する第4誘電体層と、が第1方向に沿って交互積層された積層構造と、前記積層構造を貫通して形成された複数のナノホールと、を含む下部ナノ構造層と、 前記上部ナノ構造層と下部ナノ構造層との間に配置され、誘電物質からなる中間層と、 を含」むこととは、 「前記複数のナノアンテナのそれぞれは、 第1誘電体層と、前記第1誘電体層より大きい屈折率を有する第2誘電体層とが第1方向に沿って交互積層された積層構造と、前記積層構造を貫通して形成された複数のナノホールと、を含む上部ナノ構造層と、 第3誘電体層と、前記第3誘電体層より大きい屈折率を有する第4誘電体層と、が第1方向に沿って交互積層された積層構造と、前記積層構造を貫通して形成された複数のナノホールと、を含む下部ナノ構造層と、 を含」む点で共通する。 13 引用発明の「分光計測装置」は、本願発明の「分光センサ」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 (一致点) 「共振波長帯域が互いに異なる複数のナノアンテナを具備するナノアンテナ・アレイ部と、 前記複数のナノアンテナからの光をそれぞれ検出する複数の光検出器を具備する光検出器アレイ部と、を含み、 前記複数のナノアンテナのそれぞれは、 第1誘電体層と、前記第1誘電体層より大きい屈折率を有する第2誘電体層とが第1方向に沿って交互積層された積層構造と、前記積層構造を貫通して形成された複数のナノホールと、を含む上部ナノ構造層と、 第3誘電体層と、前記第3誘電体層より大きい屈折率を有する第4誘電体層と、が第1方向に沿って交互積層された積層構造と、前記積層構造を貫通して形成された複数のナノホールと、を含む下部ナノ構造層と、 を含む、分光センサ。」 (相違点) 本願発明は、「前記上部ナノ構造層と下部ナノ構造層との間に配置され、誘電物質からなる中間層」を含み、「前記中間層は、前記第1誘電体層、前記第2誘電体層、前記第3誘電体層、および前記第4誘電体層の各層と材質が異なるか、または厚さが異なる」のに対し、引用発明は、このような中間層の特定がない点。 第6 判断 上記相違点について検討する。 引用文献1(上記第4 1(1)を参照。)には、「【0042】 また、本実施例(当審注:実施例1)では、最下層から最上層まで同じ厚みで膜を積層する構成を示したが、途中に厚みの異なる層を挿入してファブリ・ペロー干渉計構成とし、帯域通過型のフィルター特性を実現することもできる。」と記載され、実施例1の自己クローニング型周期構造の微小フィルターにおいて、低屈折材質層と高屈折材質層とを交互積層した多層膜構造の途中に厚みの異なる層を挿入することで、透過スペクトルの帯域を狭めることが開示されている。そして、周期構造を自己クローニング法により作製した微小フィルター(実施例1)、及び周期構造を自己クローニング法とは異なる手法で作製した微小フィルター(本願発明に対応する実施例2)は、いずれも「基板面内にも屈折率の変調のあるフォトニック結晶になることで、基板面内での光のブラッグ反射を反映した光の伝搬モードとストップバンドが新たに発生し、この新たに生じたストップバンドを利用することで、光の透過スペクトルを、単なる平坦な誘電体多層膜構造の透過スペクトルから効率的にシフトさせることができ」る、いわゆる3次元フォトニック結晶構造であるから、引用発明(実施例2)においても、実施例1同様、微小フィルターそれぞれの透過スペクトルの帯域を狭めるために、低屈折材質層と高屈折材質層とを交互積層した多層膜構造の途中に厚みの異なる層を挿入できることが容易に理解できる。 また、フォトニック結晶を用いた微小フィルターにおいて、低屈折材質層と高屈折材質層とを交互積層した多層膜構造の途中に、低屈折材質層又は高屈折材質層と異なる誘電物質からなる層、又は異なる厚さの層を挿入することで、透過スペクトルの帯域を狭めることは、引用文献1の上記記載以外にも、引用文献3(上記第4 2を参照。)及び引用文献4(上記第4 3を参照。)に記載されているように周知技術である。 してみると、引用発明において、上記周知技術を適用し、「五酸化ニオブ(屈折率約2.1)層1102と石英(屈折率約1.47)層1103」からなる上部ナノ構造層と下部ナノ構造層との間に、誘電物質からなる中間層を配置し、前記中間層を、「五酸化ニオブ(屈折率約2.1)層1102と石英(屈折率約1.47)層1103」の各層と材質が異なる、又は厚さが異なるように構成することで、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。 そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び上記周知技術から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 請求人の主張 請求人は、審判請求書において「本発明「分光センサ」に「中間層」は1箇所(1層)しか存在しない、すなわち本願発明の1つの分光センサに複数の中間層は存在しない、と解釈すべき」であり、中間層をこのように解釈すべき本願発明は容易想到でないと主張するが、中間層を1層と解釈する理由はなく、上記周知技術で例示した引用文献1(【0042】)、引用文献3及び引用文献4における中間層が1層であることは明らかであるから、本願発明の中間層を仮に1層と解釈しても、本願発明は、上記第6で検討したとおり、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2019-012130

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