特許拒絶査定不服審判
2019-011976
照明システム
- 審判番号
- 2019-011976
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-183011外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年09月10日
- 審決日
- 2020年10月29日
- 公報発行日
- 2021年02月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】東芝ライテック株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人酒井国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (H05B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-183011号「照明システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年3月23日出願公開、特開2017-59403号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年9月16日の出願であって、平成31年1月11日付けで拒絶理由が通知され、同年3月25日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和1年5月30日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して、同年9月10日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その後、当審において令和2年5月26日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年7月28日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1~3に係る発明は、令和2年7月28日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
照明機器を制御する制御ユニットであって、応答性を要する前記照明機器の制御に関し、ユーザの操作に応じて前記照明機器の調光を制御するための第1情報を保有する制御ユニットと;
前記第1情報以外の情報であり、シーンに対応付けて予め登録され、前記照明機器の調光を制御し当該シーンを再現するために用いられる情報である第2情報を保存し、前記制御ユニットからの要求に応じて前記第2情報を前記制御ユニットへ送信する外部サーバと;
を具備し、
前記制御ユニットは、前記照明機器の制御中において当該制御に要する前記第2情報を前記外部サーバへ要求し、前記外部サーバから前記第2情報を取得することを特徴とする照明システム。」
第3 当審拒絶理由
当審拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
[理由]
この出願の請求項1~3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
刊行物:特開2000-311788号公報(以下「引用文献1」という。)
第4 引用文献
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審が付した。以下、同様である。)。
(1a)
「【0003】照明演出を行うにあたっては、調光卓を用いて予め照明負荷の調光制御のための調光データを設定したシーンを作成し、照明演出時には作成したシーンを読み出すことによってシ一ンを再生する。これにより、シーンに設定された調光データにより照明負荷が制御され舞台の照明演出を行う。」
(1b)
「【0014】また、調光卓は、予め照明負荷の明るさを調光制御するための調光データをシーン毎に作成する。そして、照明演出時には、その作成したシーンを読み出され、シーンに設定された調光データにより照明負荷を制御しシ一ンを再生する。これにより、舞台やスタジオさらにはホール等の照明演出を行う。また、調光卓には、必要に応じて表示モニタが設置され、照明負荷や調光器の状態情報、さらには調光卓の状態情報を表示する。」
(1c)
「【0048】次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。図5は、本発明の第3の実施の形態に係わる調光システムの構成図である。この第5の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、調光卓3で作成した調光データをサーバー4へ送信する送信手段7と、サーバー4に記憶された調光データをダウンロードする受信手段8とを調光卓3に設けたものである。図5では、クライアントPCおよびネットワーク6の図示を省略している。
【0049】図5において、調光卓3では、予め照明負荷1の調光制御のための調光データを設定したシーンが作成されるが、その作成された調光データはその調光卓3に記憶されると共に、送信手段7によりサーバー4に送信される。サーバー4では各々の調光卓3から送信されてきた調光データをシーン毎に保存する。そして、他の調光卓3で既に作成済のシーンを、自己の調光卓3で使用するには、受信手段8によりサーバー4に記憶されたシーンの調光データをダウンロードして読み出す。
【0050】このように、調光卓3には、作成した照明演出のためのシーンの調光データをサーバー4へ送信する送信手段7と、サーバー4からのそのシーンの調光データを受信する受信手段8とを設ける。サーバー4は各々の調光卓3からの照明演出の調光データを受信して記憶し、読み出し要求のあったシーンの調光データを要求のあった調光卓3へ送信する。従って、他の調光卓3で作成された照明演出用の調光データを容易に取得できるので、作成済のシーン再生データの有効利用が図れる。」
(1d)
図5は次のとおりである。
(2)引用文献1に記載された発明
ア
摘記(1b)の段落【0014】には、「調光卓は、予め照明負荷の明るさを調光制御するための調光データをシーン毎に作成する。そして、照明演出時には、その作成したシーンを読み出され、シーンに設定された調光データにより照明負荷を制御しシ一ンを再生する。」と記載され、摘記(1c)の段落【0049】には、「調光卓3では、予め照明負荷1の調光制御のための調光データを設定したシーンが作成されるが、その作成された調光データはその調光卓3に記憶されると共に、送信手段7によりサーバー4に送信される。サーバー4では各々の調光卓3から送信されてきた調光データをシーン毎に保存する。」と記載されているところ、これらの記載を整合させると、これらの記載はそれぞれ、「調光卓は、予め照明負荷の明るさを調光制御するための調光データを作成されたシーン毎に設定する。そして、照明演出時には、その作成されたシーンを読み出し、作成されたシーンに設定された調光データにより照明負荷を制御しシ一ンを再生する。」こと、及び、「調光卓3では、予め照明負荷1の調光制御のための調光データを設定したシーンが作成されるが、その作成されたシーンと設定された調光データはその調光卓3に記憶されると共に、送信手段7によりサーバー4に送信される。サーバー4では各々の調光卓3から送信されてきた調光データを作成されたシーン毎に保存する。」ことを意味していることが明らかである。
イ
摘記(1c)の段落【0048】には、「図5は、本発明の第3の実施の形態に係わる調光システムの構成図である」と記載されているところ、当該「調光システム」は、摘記(1d)の図5を参照すると、調光卓3とサーバー4とを具備した「調光システム」であることが明らかである。
ウ
摘記(1c)の段落【0049】の「他の調光卓3で既に作成済のシーンを、自己の調光卓3で使用するには、受信手段8によりサーバー4に記憶されたシーンの調光データをダウンロードして読み出す」という記載は、調光卓3が行う動作を示していることが明らかであるから、調光卓3は、「他の調光卓3で既に作成済のシーンを、自己の調光卓3で使用するには、受信手段8によりサーバー4に記憶されたシーンの調光データをダウンロードして読み出す」ものとして特定できる。
エ
上記ア~ウ及び摘記(1b)~(1d)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「予め照明負荷1の調光制御のための調光データを設定したシーンが作成され、その作成されたシーンと設定された調光データはその調光卓3に記憶されると共に、送信手段7によりサーバー4に送信され、照明演出時には、その作成されたシーンを読み出し、作成されたシーンに設定された調光データにより照明負荷1を制御しシ一ンを再生する、送信手段7と受信手段8とを設けた調光卓3と、
各々の調光卓3から送信されてきた調光データをシーン毎に保存し、読み出し要求のあったシーンの調光データを要求のあった調光卓3へ送信するサーバー4と
を具備し、
調光卓3は、他の調光卓3で既に作成済のシーンを、自己の調光卓3で使用するには、受信手段8によりサーバー4に記憶されたシーンの調光データをダウンロードして読み出す、
調光システム。」
第5 対比
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)
ア
引用発明の「照明負荷1」は、本願発明の「照明機器」に相当する。
イ
引用発明の「照明負荷1の調光制御のための調光データ」は、「照明負荷1」(照明機器)を「調光制御」するための「調光データ」であるから、「調光」することができるすなわち応答性を要する照明機器の制御に関するデータであり、本願発明の「応答性を要する前記照明機器の制御に関」する「第1情報」に相当する。
そして、引用発明の「シーン」に「設定した」「照明負荷1の調光制御のための調光データ」、「設定された調光データ」及び「作成されたシーンに設定された調光データ」は、この順に、調光卓3で、「設定」、「記憶」、「読み出し」されるから、いずれも、シーンに対して設定されている「照明負荷1の調光制御のための調光データ」であることが明らかであり、本願発明の「応答性を要する前記照明機器の制御に関」する「第1情報」に相当する。
ウ
引用発明の「照明演出時には、その作成されたシーンを読み出し、作成されたシーンに設定された調光データにより照明負荷1を制御しシ一ンを再生する」ことは、本願発明の「照明機器を制御する」ことに相当するから、引用発明の「照明演出時には、その作成されたシーンを読み出し、作成されたシーンに設定された調光データにより照明負荷1を制御しシ一ンを再生する」「調光卓3」は、本願発明の「照明機器を制御する」「制御ユニット」に相当する。
エ
上記イ及びウを踏まえると、引用発明の「その作成されたシーンと設定された調光データ」が「記憶される」「調光卓3」は、本願発明の「応答性を要する前記照明機器の制御に関」する「第1情報を保有する制御ユニット」に相当する。
オ
したがって、引用発明の「予め照明負荷1の調光制御のための調光データを設定したシーンが作成され、その作成されたシーンと設定された調光データはその調光卓3に記憶されると共に、送信手段7によりサーバー4に送信され、照明演出時には、その作成されたシーンを読み出し、作成されたシーンに設定された調光データにより照明負荷1を制御しシ一ンを再生する、送信手段7と受信手段8とを設けた調光卓3」と、本願発明の「照明機器を制御する制御ユニットであって、応答性を要する前記照明機器の制御に関し、ユーザの操作に応じて前記照明機器の調光を制御するための第1情報を保有する制御ユニット」とは、「照明機器を制御する制御ユニットであって、応答性を要する前記照明機器の制御に関する第1情報を保有する制御ユニット」において共通している。
(2)
ア
引用発明の「各々の調光卓3から送信されてきた調光データをシーン毎に保存し、読み出し要求のあったシーンの調光データを要求のあった調光卓3へ送信するサーバー4」(以下「構成A」ともいう。)の「サーバー4」に「シーン毎に保存」される「各々の調光卓3から送信されてきた調光データ」、構成Aの「読み出し要求のあったシーンの調光データ」、及び、「調光卓3は、他の調光卓3で既に作成済のシーンを、自己の調光卓3で使用するには、受信手段8によりサーバー4に記憶されたシーンの調光データをダウンロードして読み出す」構成(以下「構成B」ともいう。)の「他の調光卓3で既に作成済のシーンを、自己の調光卓3で使用する」ための「サーバー4に記憶されたシーンの調光データ」に関する構成について、以下のことがいえる。
(ア)
引用発明の構成Aにおける「サーバー4」に「シーン毎に保存」される「各々の調光卓3から送信されてきた調光データ」は、本願発明の「シーンに対応付けて予め登録され」る「情報」に相当する。
引用発明の構成Bにおける「他の調光卓3で既に作成済のシーンを、自己の調光卓3で使用する」ための「サーバー4に記憶されたシーンの調光データ」は、本願発明の「第1情報以外の情報であり」「照明機器の調光を制御し」「シーンを再現するために用いられる情報」に相当する。
(イ)
引用発明の構成Aの「読み出し要求のあったシーンの調光データ」は、当該構成Aの「サーバー4」に「シーン毎に保存」される「各々の調光卓3から送信されてきた調光データ」のうちの1つであることが明らかである。
また、構成Aの「サーバー4」は、「読み出し要求のあったシーンの調光データを要求のあった調光卓3へ送信するサーバー4」であり、構成Bの「調光卓3」は、「受信手段8によりサーバー4に記憶されたシーンの調光データをダウンロードして読み出す」ことから、「調光卓3」と「サーバー4」の動作を順に記載すると、「調光卓3」は、「サーバー4」に「サーバー4に記憶されたシーンの調光データ」の「読み出し要求」をし、「サーバー4」は、「読み出し要求のあったシーンの調光データを要求のあった調光卓3へ送信」し、「調光卓3」は、「受信手段8によりサーバー4に記憶されたシーンの調光データをダウンロードして読み出す」ことが明らかである。
そうすると、構成Aの「読み出し要求のあったシーンの調光データ」と、構成Bの「他の調光卓3で既に作成済のシーンを、自己の調光卓3で使用する」ための「サーバー4に記憶されたシーンの調光データ」とは、同じものである。
(ウ)
したがって、上記(ア)及び(イ)を踏まえると、引用発明の構成Aの「読み出し要求のあったシーンの調光データ」は、「サーバー4」に「シーン毎に保存」される「各々の調光卓3から送信されてきた調光データ」(本願発明の「シーンに対応付けて予め登録され」る「情報」に相当。)のうちの1つであり、さらに、構成Bの「他の調光卓3で既に作成済のシーンを、自己の調光卓3で使用する」ための「サーバー4に記憶されたシーンの調光データ」(本願発明の「第1情報以外の情報であり」「照明機器の調光を制御し」「シーンを再現するために用いられる情報」に相当。)と同じものであるから、引用発明の構成Aの「読み出し要求のあったシーンの調光データ」及び構成Bの「他の調光卓3で既に作成済のシーンを、自己の調光卓3で使用する」ための「サーバー4に記憶されたシーンの調光データ」は、いずれも、本願発明の「前記第1情報以外の情報であり、シーンに対応付けて予め登録され、前記照明機器の調光を制御し当該シーンを再現するために用いられる情報である第2情報」に相当する。
イ
引用発明の構成Aの「読み出し要求のあったシーンの調光データを要求のあった調光卓3へ送信する」構成から、当該「読み出し要求」は、「調光卓3」(「制御ユニット」に相当。)からの「読み出し要求」であることが明らかであり(上記ア(イ)も参照)、引用発明の構成Aの「読み出し要求」は、本願発明の「前記制御ユニットからの要求」に相当する。
このことと、上記アを踏まえると、引用発明の構成Aの「読み出し要求のあったシーンの調光データを要求のあった調光卓3へ送信する」ことは、本願発明の「前記制御ユニットからの要求に応じて前記第2情報を前記制御ユニットへ送信する」ことに相当する。
また、引用発明の構成Aの「サーバ-4」は、「調光データを要求のあった調光卓3へ送信する」から、「各々の調光卓3」の外部にあることが明らかであり(必要であれば摘示(1d)の図5も参照。)、本願発明の「外部サーバ」に相当する。
ウ
上記ア及びイから、引用発明の「各々の調光卓3から送信されてきた調光データをシーン毎に保存し、読み出し要求のあったシーンの調光データを要求のあった調光卓3へ送信するサーバー4」は、本願発明の「前記第1情報以外の情報であり、シーンに対応付けて予め登録され、前記照明機器の調光を制御し当該シーンを再現するために用いられる情報である第2情報を保存し、前記制御ユニットからの要求に応じて前記第2情報を前記制御ユニットへ送信する外部サーバ」に相当する。
(3)
ア
上記(2)ア(イ)で述べたとおり、引用発明の構成Bの「調光卓3」は、「サーバー4」に「サーバー4に記憶されたシーンの調光データ」の「読み出し要求」をし、「受信手段8によりサーバー4に記憶されたシーンの調光データをダウンロードして読み出す」といえるから、引用発明の構成Bの「調光卓3」(制御ユニット)は、「サーバー4に記憶されたシーンの調光データ」(第2情報)を「サーバー4」(外部サーバ)へ「読み出し要求」し、「サーバー4」(外部サーバ)から「サーバー4に記憶されたシーンの調光データ」(第2情報)を「ダウンロードして読み出す」といえる。
イ
したがって、引用発明の構成Bすなわち「調光卓3は、他の調光卓3で既に作成済のシーンを、自己の調光卓3で使用するには、受信手段8によりサーバー4に記憶されたシーンの調光データをダウンロードして読み出す」ことと、本願発明の「前記制御ユニットは、前記照明機器の制御中において当該制御に要する前記第2情報を前記外部サーバへ要求し、前記外部サーバから前記第2情報を取得すること」とは、「前記制御ユニットは、前記第2情報を前記外部サーバへ要求し、前記外部サーバから前記第2情報を取得する」ことにおいて共通する。
(4)
引用発明の「調光システム」は、本願発明の「照明システム」に相当する。
2 一致点及び相違点
上記1から、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「照明機器を制御する制御ユニットであって、応答性を要する前記照明機器の制御に関する第1情報を保有する制御ユニットと;
前記第1情報以外の情報であり、シーンに対応付けて予め登録され、前記照明機器の調光を制御し当該シーンを再現するために用いられる情報である第2情報を保存し、前記制御ユニットからの要求に応じて前記第2情報を前記制御ユニットへ送信する外部サーバと;
を具備し、
前記制御ユニットは、前記第2情報を前記外部サーバへ要求し、前記外部サーバから前記第2情報を取得する照明システム。」
<相違点1>
「応答性を要する前記照明機器の制御に関する第1情報」が、本願発明では、応答性を要する前記照明機器の制御に関し、「ユーザの操作に応じて前記照明機器の調光を制御するための」第1情報であるのに対して、引用発明では、「予め照明負荷1の調光制御のための調光データを設定したシーンが作成され、その作成されたシーンと設定された調光データはその調光卓3に記憶され」「照明演出時には、その作成されたシーンを読み出し、作成されたシーンに設定された調光データにより照明負荷1を制御しシ一ンを再生する」「調光卓3」における、「作成されたシーンに設定された調光データ」である点。
<相違点2>
「前記制御ユニットは、前記第2情報を前記外部サーバへ要求」することに関して、本願発明では、前記制御ユニットは、「前記照明機器の制御中において当該制御に要する」前記第2情報を前記外部サーバへ要求するのに対して、引用発明では、「調光卓3」は、「サーバー4」に「サーバー4に記憶されたシーンの調光データ」の「読み出し要求」をし(上記1(2)ア(イ))、「調光卓3は、他の調光卓3で既に作成済のシーンを、自己の調光卓3で使用するには、受信手段8によりサーバー4に記憶されたシーンの調光データをダウンロードして読み出す」点。
第6 判断
1 相違点についての検討
以下、相違点について検討する。
(1)相違点1について
ア
(ア)
本願明細書には、
「【0019】
照明制御装置30は、操作機20におけるユーザの操作等に応じて各照明機器10の調光等を制御する情報を照明機器10に送信する。なお、以下では操作機20におけるユーザの操作等に応じて応答性を要する照明機器10の制御に関する情報を第1情報とする。例えば、第1情報には、第1操作部20B-11~20B-12等の操作に応じて照明機器10の調光を制御するために用いられる情報を含む。すなわち、制御ユニット100の照明制御装置30は、ユーザの操作による照明機器10の制御に関する情報を含む第1情報を保有する。
・・・
【0023】
次に、図2を用いて一時情報に基づいたシーンを再現する照明機器10の制御について説明する。なお、図2においては、第2操作部20B-2にシーンAを再現する調光情報が割り当てられるものとする。
【0024】
フェーダ操作機20Bは、ユーザによる第2操作部20B-2への操作に応じたシーンAの再現を指示することを示す指示情報を照明制御装置30へ送信する(ステップS21)。フェーダ操作機20Bから指示情報を受信した照明制御装置30は、指示情報に基づいて、シーンAを再現するための制御情報を照明機器10に送信する(ステップS22)。・・・」
と記載されている。
(イ)
上記(ア)の記載を総合すると、「ユーザの操作等に応じて応答性を要する照明機器10の制御に関する情報」である「第1情報」には、「第1操作部20B-11~20B-12等の操作に応じて照明機器10の調光を制御するために用いられる情報」(以下「第1情報1」ともいう。)や「ユーザによる第2操作部20B-2への操作に応じたシーンAの再現を指示することを示す」「指示情報に基づいて」、「照明機器10に送信する」「シーンAを再現するための制御情報」(以下「第1情報2」ともいう。当該「制御情報」は、「シーンAを再現するため」に「照明機器10」の調光を制御する情報であることが明らかである。)が含まれるといえる。
イ
本願発明の「ユーザの操作に応じて前記照明機器の調光を制御するための第1情報」は、「第1情報1」や「第1情報2」が特定できるものではないという前提で、以下検討する。
(ア)
調光卓が、調光を制御するために、ユーザによって操作されることは、技術常識である(摘記(1a)の「調光卓を用いて予め照明負荷の調光制御のための調光データを設定したシーンを作成し」という記載も参照。)。
(イ)
引用発明の「照明演出時には、その作成されたシーンを読み出し、作成されたシーンに設定された調光データにより照明負荷1を制御しシ一ンを再生する」「調光卓3」における、「作成されたシーンに設定された調光データ」は、上記(ア)の技術常識を踏まえると、ユーザの操作に応じたものであることが明らかであり、「調光データ」、すなわち、照明機器の調光を制御するための情報であるから、本願発明の「ユーザの操作に応じて前記照明機器の調光を制御するための」「情報」に相当する。
(ウ)
そして、引用発明の「シーン」に「設定した」「照明負荷1の調光制御のための調光データ」、「設定された調光データ」及び「作成されたシーンに設定された調光データ」は、いずれも、本願発明の「応答性を要する前記照明機器の制御に関」する「第1情報」に相当するところ(上記第5 1(1)イ参照)、上記(イ)を踏まえると、これらの「調光データ」は、いずれも、本願発明の「応答性を要する前記照明機器の制御に関し、ユーザの操作に応じて前記照明機器の調光を制御するための第1情報」にも相当する。
したがって、相違点1は実質的な相違点とはいえない。
ウ
本願発明の「ユーザの操作に応じて前記照明機器の調光を制御するための第1情報」は、「第1情報1」や「第1情報2」が特定できる記載となっているわけではないから、上記イのとおりであるが、上記ア(イ)を踏まえると、本願発明の上記「第1情報」は、「第1情報1」あるいは「第1情報2」を意味しているものと理解することもできるから、この場合についても、念のため、以下において検討する。
(ア)
引用発明では、「予め照明負荷1の調光制御のための調光データを設定したシーンが作成され、その作成されたシーンと設定された調光データはその調光卓3に記憶され」るところ、この動作は、上記イ(ア)の技術常識を踏まえると、ユーザが「調光卓3」を操作することで行われるといえるから、ユーザが「調光卓3」を操作することで「予め照明負荷1の調光制御のための調光データを設定したシーンが作成され」ることが明らかである。
したがって、引用発明の「予め照明負荷1の調光制御のための調光データを設定したシーンが作成され」る構成における「シーン」に「設定した」「照明負荷1の調光制御のための調光データ」は、ユーザが「調光卓3」を操作することにより、すなわち、ユーザが「調光卓3」を操作することで「照明負荷1」を調光制御することにより、「シーン」に適切な「調光」を選定し、「シーン」に「設定した」、「照明負荷1の調光制御のための調光データ」であるといえる。
(イ)
引用発明の「照明演出時には、その作成されたシーンを読み出し、作成されたシーンに設定された調光データにより照明負荷1を制御しシ一ンを再生する」「調光卓3」における、「作成されたシーンに設定された調光データ」は、上記イ(ア)の技術常識を踏まえると、ユーザが「調光卓3」を操作することで、「調光卓3」において「読み出」されて「照明負荷1」に送信され、「照明負荷1を制御し」(すなわち、「照明負荷1」の調光を制御し)「シ一ンを再生する」「調光データ」であるから、ユーザの操作に応じて照明機器に送信される、シーンを再現するための制御情報であることが、明らかである。
(ウ)
そして、引用発明の「シーン」に「設定した」「照明負荷1の調光制御のための調光データ」、「設定された調光データ」及び「作成されたシーンに設定された調光データ」は、いずれも、本願発明の「応答性を要する前記照明機器の制御に関」する「第1情報」に相当する(上記第5 1(1)イ参照。)。
したがって、引用発明の「シーン」に「設定した」「照明負荷1の調光制御のための調光データ」、「設定された調光データ」及び「作成されたシーンに設定された調光データ」は、いずれも、上記(ア)に該当すると共に、上記(イ)となるものであるから、実質的に、少なくとも、上記ア(イ)の「第1情報2」すなわち「ユーザによる」「操作部」「への操作に応じたシーンAの再現を指示することを示す」「指示情報に基づいて」、「照明機器10に送信する」「シーンAを再現するための制御情報」に相当し、本願発明の「応答性を要する前記照明機器の制御に関し、ユーザの操作に応じて前記照明機器の調光を制御するための第1情報」に相当する。
したがって、相違点1は実質的な相違点とはいえない。
エ
本願発明では、複数の操作部などは特定されていないから、上記イ及びウのとおりであるが、仮に、上記相違点1に係る本願発明の「ユーザの操作に応じて前記照明機器の調光を制御するための第1情報」が、複数の操作部に関連するものとされ、上記ア(イ)の「第1情報1」にまで限定されるとした場合についても、さらに念のため、以下において検討する。
(ア)
引用発明の「シーン」に「設定した」「照明負荷1の調光制御のための調光データ」は、ユーザが「調光卓3」を操作することで「照明負荷1」を調光制御することにより、「シーン」に適切な「調光」を選定したものであることが明らかであるところ(上記ウ(ア)参照)、この「シーン」の「設定」には、実質的に、複数の「照明負荷1」が必要となることが明らかである(摘示(1d)の図5も参照)。
このことから、例えば、上記の「シーン」を「設定」する等(「シーン」の「設定」に限るものではなく、単に調光するものなど)のために、上記の複数の「照明負荷1」を、「調光卓3」の複数の操作部の各々にそれぞれ又は複数割り当てるなどして、複数の操作部により、リアルタイムで、対応する「照明負荷1」を調光制御することができるようにすることは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。
(イ)
したがって、引用発明の「シーン」に「設定した」「照明負荷1の調光制御のための調光データ」を、複数の操作部の操作に応じて照明機器の調光を制御するために用いられる情報(上記ア(イ)の「第1情報1」)とすることで、引用発明の「シーン」に「設定した」「照明負荷1の調光制御のための調光データ」、「設定された調光データ」及び「作成されたシーンに設定された調光データ」を、いずれも、本願発明の「応答性を要する前記照明機器の制御に関し、ユーザの操作に応じて前記照明機器の調光を制御するための第1情報」とすること、すなわち、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たといえる。
(2)相違点2について
ア
引用発明の「照明負荷1を制御しシ一ンを再生する」の「シーン」は、「調光卓3」が「照明負荷1を制御し」て「再生」した実際の「シーン」を意味し、引用発明の「作成されたシーン」は、上記の実際の「シーン」に対応して「調光卓3」が「作成」したシーンに係る情報など(例えば、「明るいシーン」という情報)を意味しているといえる。
イ
引用発明の「調光卓3」は、「照明演出時には」、「作成されたシーンに設定された調光データにより照明負荷1を制御しシ一ンを再生する」から、「照明演出時には」、「作成されたシーンに設定された調光データ」(「第1情報」、上記(1)ア)「により」、「照明負荷1」(「照明機器」)「を制御し」、実際の「シーン」(上記ア)「を再生する」ものであり、引用発明の「調光卓3」は、「照明演出時には」、実際の「シーンを再生する」ために、第1情報により照明機器の制御中であるといえる。
ウ
ここで、引用発明の「照明演出」は、舞台やスタジオの照明制御を行う照明演出などを想定しているところ(摘記(1a))、舞台やスタジオでは、照明制御により種々の「シーン」を再生する必要があることは、技術常識である。
エ
そうすると、引用発明の「調光卓3」は、「照明演出時には」、実際の「シーンを再生する」ために、第1の情報により照明機器の制御中であるが(上記イ)、実際の別の「シーン」を再生するために(上記ウ)、他の「作成されたシーン」(上記アの「明るいシーン」とは異なる、例えば、「暗いシーン」)に設定された「調光データ」が必要となることが明らかである。
オ
したがって、引用発明において、「照明演出時」、すなわち、「調光卓3」の照明機器の制御中に(上記イ)、「他の調光卓3で既に作成済のシーンを、自己の調光卓3で使用する」(すなわち、「調光卓3は、他の調光卓3で既に作成済のシーンを、自己の調光卓3で使用するには、受信手段8によりサーバー4に記憶されたシーンの調光データをダウンロードして読み出す」ことであり、本願発明の「第2の情報」を使用することに該当する。上記エ参照。)ために、「調光卓3」は、「サーバー4」に、その制御に要する「サーバー4に記憶されたシーンの調光データ」(第2情報)の「読み出し要求」を行うようにして、すなわち、前記制御ユニットは、「前記照明機器の制御中において当該制御に要する」前記第2情報を前記外部サーバへ要求するようにして、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たといえる。
2 審判請求人の主張について
(1)審判請求人の主張
審判請求人は、当審拒絶理由に対する令和2年7月28付けの意見書の「【意見の内容】」「〔3〕拒絶理由に対する意見」において、以下のとおり主張している。
「本願発明は、ユーザの操作で個別に調光制御するため(すなわちリアルタイムで調整するため)の第1情報と、予め定められたシーンの調光を再現するための第2情報との内容の異なる2種類の情報を用いて調光制御を行うと共に、その内容に応じて情報の保存態様を異ならせます。これにより、本願発明は、2つの内容の異なる情報を用いて、適切に照明機器の制御を行うことができるという効果を奏します。
一方、審判官殿が指摘された引用文献1には、本願発明のような技術思想はなく、本願発明の構成について何ら記載されていません。」
(2)検討
そもそも、本願発明の「ユーザの操作に応じて前記照明機器の調光を制御するための第1情報」は、「第1情報1」や「第1情報2」として特定できるものではないし、「ユーザの操作で個別に調光制御するための」(すなわちリアルタイムで調整するための)「第1情報」としても特定できないが、「ユーザの操作に応じて」「制御する」ことが、リアルタイムで調整することを意味していると理解できたとしても、上記1(1)イ及びウで述べたとおり、引用発明は、本願発明の「ユーザの操作に応じて前記照明機器の調光を制御するための第1情報」を備えているから、リアルタイムで調整することができ、審判請求人の上記主張は採用できない。
上記のとおりであるが、仮に、本願発明の「ユーザの操作に応じて前記照明機器の調光を制御するための第1情報」が、「シーン」に関連するものではなく、複数の操作部をユーザが操作し、ユーザの操作で個別に調光制御する「第1情報1」(リアルタイムで調整するためのもの)にまで限定したものを意味するものと理解することができたとしても、上記1(1)エで述べたとおり、引用発明の「シーン」に「設定した」「照明負荷1の調光制御のための調光データ」を、「第1情報1」とすることは、当業者が適宜なし得たといえるから、審判請求人の上記主張は採用できない。
3 まとめ
以上から、本願発明は、引用発明及び引用文献1に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-011976