特許拒絶査定不服審判
2019-011363
無線周波マルチチップ集積回路パッケージ用の電磁妨害筐体
- 審判番号
- 2019-011363
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-101621外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年08月29日
- 審決日
- 2020年06月19日
- 公報発行日
- 2020年12月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】クアルコム,インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】黒田 晋平
- 分類
- P18 .121-Z (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2017-101621「無線周波マルチチップ集積回路パッケージ用の電磁妨害筐体」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月17日出願公開、特開2017-143313〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
本願は、2014年3月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年3月11日 米国)を国際出願日とする特願2015-561641号の一部を平成29年5月23日に新たな特許出願としたものであって、平成29年6月22日に手続補正書が提出され、平成30年3月23日付けで拒絶理由通知がなされ、同年9月27日に手続補正書と意見書が提出され、同年11月16日付けで拒絶理由通知がなされ、平成31年2月26日に手続補正書と意見書が提出されたが、同年4月26日付けで拒絶査定がされた。これに対して令和1年8月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成31年2月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものと認める。
「 【請求項1】
基板であって、前記基板の第1の面に接続された少なくとも一つの第1の回路部品を有する基板と、
前記基板に接続された電磁妨害(EMI)シールドと、を備えるパッケージであって、
前記EMIシールドが、
前記パッケージを無線周波放射から遮蔽するように構成されかつ前記EMIシールドを前記基板に接続する複数の側壁を含む金属ケースと、
前記金属ケースの内面の少なくとも一部に接続された誘電体層と、
前記誘電体層に接続され、前記誘電体層により前記金属ケースから電気的に絶縁された複数の信号線であって、前記複数の側壁が、前記誘電体層と前記複数の信号線の少なくとも一部とを含む内側側壁面を含む、複数の信号線と、
前記EMIシールドの内面に接続された少なくとも一つの第2の回路部品であって、前記EMIシールドの内面の少なくとも一部は前記基板の前記第1の面に対面し、前記複数の信号線が電気信号を前記第2の回路部品に供給するように構成されている、少なくとも一つの第2の回路部品と、を含み、
前記金属ケースが、電気接地を前記第2の回路部品に提供するように更に構成されていて、
前記第2の回路部品が、前記金属ケースの内面に電気接続部を介して複数の場所で更に接続されている、パッケージ。」
3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、「(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり、請求項1に係る発明に対して、以下の引用文献が引用されている。
1.特開平5-90440号公報
5.特開2001-237586号公報
4 引用発明と公知技術
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平5-90440号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。(下線は当審において付加した。以下同じ)
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子機器の両面実装基板を収容するためのリードレスパッケージケースに関するものである。」
イ 「【0005】
【実施例】図1は本発明の一実施例を示す斜視図であり、(A)は上方からの斜視図、(B)は上下逆さにしたときの斜視図である。図において、1は箱部を示し、外側は全面シールド用金属面である。2はその開口端の折曲げ部を示す。3は小さい凹部であり、内部に収容するべき両面実装基板の固定ストッパである。3aと3bの内部凸状突起の間に箱部1の頂面にほぼ並行になるように両面実装基板が嵌め込まれる。従って、箱部1の頂面の方形形状は収容すべき両面実装基板の平面形状に対応した寸法に作られる。4は配線導体であり、回路接続用導体4aと接地用導体4bと内部配線用導体4cとがある。回路接続用導体4aと接地用導体4bは収容される両面実装基板の周縁部の端子電極と接続する役割と(A)の状態で開口面を主基板に接して面実装するときの主基板の配線電極との接続端子電極(端子部)の役割をもつ。さらに、接地用導体4bはU字状に折曲げられた折曲げ部2の端部で箱部1の外側表面の金属面と接続されている。」
ウ 「【0006】図2は本発明の実施例の断面図であり、図3は本発明の部材を説明するための一部詳細断面図である。図3は本発明のパッケージケースに用いる部材であり、箱部1の一部を拡大したものである。この部材はメタルベース多層配線板と呼ばれており、図3に示すように洋白等の金属薄板11にポリイミドまたはエポキシ樹脂等の絶縁被膜12が施され、その上に銅箔などの金属箔13が積層されている。このメタルベース多層配線板を立体加工する前に金属箔13の面をエッチング処理することによって所望の配線導体4が形成される。図2はこのメタルベース多層配線板の金属薄板11面を外側表面になるように形成したパッケージケースの断面を示すものである。箱形構造はしぼり加工または折曲げ加工によって作られる。左下の折曲げ部には予め形成された回路接続用導体4aがあり、ケース表面の金属薄板11とは端部の間隙5によって絶縁が保たれている。この回路接続用導体4aが折曲げ部の下の開口面との接点を超えて外側まで連続して設けられている理由は、主基板に面実装したときのはんだ接合と確認を確実にするためである。右下の折曲げ部には予め形成された接地用導体4bがあり、先端の切断箇所が切断加工時に押しつぶされてケース表面の金属薄板11と導通状態になっている。」(当審注:段落【0006】には「箱形1」との記載があるところ、段落【0005】では同じ符号「1」を付した構成を「箱部1」と称しており、また、明細書には他にも「箱部」との語が用いられている。このように同一の構成に対して異なる呼称が用いられており、誤記と解されることから、段落【0006】の「箱形1」を「箱部1」の誤記であると認め、上記のように訂正した上で引用する。)
エ 「【0007】図4は本発明の応用例を示す断面図であり、内部に両面実装基板を収容した状態を示した。両面配線基板6の両面に回路素子7が取付けられた両面実装基板は、本発明のパッケージケースの開口部から挿入されストッパ3a,3b間に嵌め込まれる。そして両面配線基板6の電極と回路接続用導体4aとははんだ9によって接続される。
【0008】本発明の効果をさらに上げる例として、図4に破線で示すようにケース箱部の内部天井面に内部配線用導体4cを設けて、回路素子8を実装することにより部品取付けを3重構造にすることができる。しかも、シールドされた状態で実装することができる。」
オ 図1として以下の図面が記載されている。
カ 図2として以下の図面が記載されている。
キ 図3として以下の図面が記載されている。
ク 図4として以下の図面が記載されている。
上記アないしクの記載から、引用文献1には次の事項が記載されている。
a 上記イには、「3aと3bの内部凸状突起の間に箱部1の頂面にほぼ並行になるように両面実装基板が嵌め込まれる。」と記載され、上記エには「両面配線基板6の両面に回路素子7が取付けられた両面実装基板は、本発明のパッケージケースの開口部から挿入されストッパ3a、3b間に嵌め込まれる。」と記載されている。したがって、両面配線基板6の両面に回路素子7が取付けられた両面実装基板が、箱部1の頂面にほぼ並行になるように箱部1の内部のストッパ3a、3b間に嵌め込まれて固定されているといえ、引用文献1には、両面実装基板が箱部1に嵌め込まれた装置が記載されているといえる。
b 上記イに「1は箱部を示し、外側は全面シールド用金属面である。」と記載されていることによれば、箱部1の外側は全面シールド用金属面であるといえる。
c 上記ウによれば、箱部1を構成する部材はメタルベース多層配線板と呼ばれ、洋白等の金属薄板11にポリイミドまたはエポキシ樹脂等の絶縁被膜12が施され、その上に金属箔13をエッチング処理して得られる所望の配線導体4が形成されている。さらに、上記ウには「図2はこのメタルベース多層配線板の金属薄板11面を外側表面になるように形成したパッケージケースの断面を示すものである。」と記載され、図2も合わせて参照すると、引用文献1においてパッケージケースは箱部1であり、当該箱部1は金属薄板11面を外側表面となるように形成されたものといえる。
d 上記エ及び図4をみると、両面実装基板は対向する2つの側壁に設けられたストッパ3a、3b間に嵌め込まれて固定されているから、側壁の内面に接しているといえる。そして、図1(A)、(B)から、ストッパ3a、3bは箱部1の4つの側壁に設けられていることが見てとれる。
そうしてみると、両面実装基板は箱部1の4つの側壁に接しているといえ、これは、上記イに「箱部1の頂面の方形形状は収容すべき両面実装基板の平面形状に対応した寸法に作られる。」と記載されていることと整合する。
e 上記cで述べたように、箱部1を構成する部材はメタルベース多層配線板と呼ばれ、洋白等の金属薄板11にポリイミドまたはエポキシ樹脂等の絶縁被膜12が施され、その上に金属箔13をエッチング処理して得えられる所望の配線導体4が形成されている。そして、図1、2、及び4によれば、配線導体は複数形成されていることが見てとれる。
f 上記イによると、「回路接続用導体4aと接地用導体4bは収容される両面実装基板の周縁部の端子電極と接続する役割と(A)の状態で開口面を主基板に接して面実装するときの主基板の配線電極との接続端子電極(端子部)の役割をもつ。」から、回路接続用導体4aと接地用導体4bは両面実装基板の周縁部の端子電極と接続するために、箱部1の内面の側壁上に構成されていることは明らかである。そして、図1、2、及び4からは、回路接続用導体4aと接地用導体4bは、箱部1の内面の4つの側壁上に構成されていることが見てとれる。
g 上記エの段落【0008】には「ケース箱部の内部天井面に内部配線用導体4cを設けて、回路素子8を実装する」と記載されており、図4も参照すれば、上記ケース箱部は箱部1を示しており、箱部1の内部天井面に内部配線用導体4cを設けて、回路素子8を実装しているといえる。また、図1、2、及び4をみると、回路接続用導体4aあるいは接地用導体4bが側壁上を内部配線用導体4cまで延長されており、特に図1(B)によれば複数箇所において延長されていることが見てとれる。
h 上記イによれば、接地用導体4bはU字状に折曲げられた折曲げ部2の端部で箱部1の外側表面の金属面と接続されている。
以上総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。
「 両面配線基板6の両面に回路素子7が取付けられた両面実装基板が、箱部1の頂面にほぼ並行になるように前記箱部1の内部のストッパ3a,3b間に嵌め込まれた装置であって、前記箱部1の外側は全面シールド用金属面であり、
前記箱部1は金属薄板11面を外側表面になるよう形成されており、
前記両面実装基板は前記箱部1の4つの側壁と接しており、
前記箱部1を構成する部材はメタルベース多層配線板と呼ばれ、洋白等の前記金属薄板11にポリイミドまたはエポキシ樹脂等の絶縁被膜12が施され、その上に金属箔13をエッチング処理して得られる所望の複数の配線導体4が形成され、前記配線導体4を構成する回路接続用導体4aと接地用導体4bは、前記箱部1の内面の4つの側壁上に形成されており、
前記箱部1の内部天井面に内部配線用導体4cを設けて回路素子8を実装し、前記回路接続用導体4aあるいは前記接地用導体4bが側壁上を前記内部配線用導体4cまで複数箇所で延長され、
前記接地用導体4bはU字状に折曲げられた折曲げ部2の端部で箱部1の外側表面の金属面と接続されている、
両面実装基板が箱部1に嵌め込まれた装置。」
(2)引用文献5と公知技術
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-237586号公報(以下、「引用文献5」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
ア 「【0038】(実施の形態1)以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0039】図1は、本発明の一つの実施の形態に係る回路基板200の断面図である。回路基板200は、貫通孔205を有する電気絶縁性基板201を備え、その一方の主面には、配線パターン202およびグランドパターン203が形成されており、他方の主面には、シールド体204が形成されている。
【0040】電気絶縁性基板201は、電気絶縁性を有する基板であり、ガラス-エポキシ基板、セラミック基板、無機フィラーと樹脂のコンポジット基板等を用いることができる。
・・中略・・・
【0044】配線パターン202、グランドパターン203は、電気導電性を有する物質からなり、例えば、金属箔や導電性樹脂組成物、金属板を加工したリードフレームを用いることができる。金属箔やリードフレームを用いることにより、エッチング等により微細な配線パターン、グランドパターンの作成が容易となる。また、金属箔においては、離型フィルムによる転写等による配線パターンの形成も可能となる。特に銅箔は値段も安く、電気伝導性も高いため好ましい。また、離型フィルムを用いることにより、配線パターンが取り扱いやすくなる。
・・中略・・・
【0047】シールド体204は、電気導電性を有する物質からなり、導電性粉末と樹脂の混合物、例えば金、銀、銅、ニッケル等の金属粉やカーボン粉と熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂の混合物を用いることができる。また、磁性体等の粉末の表面に導電成分を被覆した物を用いることにより、磁性体の磁気損失による電磁波の吸収によるシールド効果も得られる。導電性粉末と樹脂との混合物を用いることにより、複雑な形状のシールド体の作成が容易となり、成型と同時に電気絶縁性基板との一体化も図れる。また、シールド体204を電気絶縁性基板の両面に形成することで電磁波の遮蔽の範囲を広げることができる。
【0048】貫通孔205は、電気絶縁性基板201に例えば、レーザ加工、ドリルによる加工で形成できる。特に電気絶縁性基板201を無機フィラーと熱硬化性樹脂またはセラミックで構成した場合は、金型による加工でも形成することができる。レーザ加工は、微細なピッチで貫通孔205を形成することができ、削り屑が発生しないため好ましい。レーザ加工では、炭酸ガスレーザやエキシマレーザを用いると加工が容易である。また、ドリルによる加工は、簡単な設備で行えるため低コスト化が図れる。
【0049】この実施の形態1に示した回路基板20では、シールド体204が、電気絶縁性基板201の主面と一体に成型されており、接続部としての貫通孔205内にも充填されている。これにより、シールド体204とグランドパターン203とが、電気的に接続されており、シールド体204の電位が安定し、より効果的に電磁波の遮蔽が行われ、回路の安定化を果たしている。また、貫通孔205内のシールド体204によってグランドパターン203と接続することによって、絶縁性基板201の外周を介して接続するような場合に比べて接続距離も短くなる。
【0050】加えて、シールド体204が貫通孔205内と主平面を一体に形成しているため、例えば、貫通孔内に、グランドパターン203とシールド体とを接続するための導電材料を充填したり、メッキ処理をした後に、主平面にシールド体を形成するといったように個別に形成する場合に比べて、抵抗値を低くすることが可能である。また、貫通孔内のメッキ処理や他の充填物を用いる必要が無く、回路基板200は、部品点数、工程数を削減することができ、低価格で作製できる。
【0051】なお、本実施の形態において、シールド体は電気導電性を有しており、グランドパターンとしての機能も有している。」
イ 図1として以下の図面が記載されている。
上記引用文献5の記載事項及び図面、及び、この分野の技術常識を考慮すると、引用文献5には、次の技術事項(以下、「公知技術」という。)が開示されていると認められる。
「電気絶縁性基板の一方の面に配線パターンとグランドパターンを形成し、他方の面に導電材料からなりグランドパターンとしての機能も有するシールド体を形成した回路基板において、グランドパターンが形成されている部分の電気絶縁性基板にシールド体と接続する貫通孔を設け、該貫通孔内にも導電材料からなるシールド体を充填することで、グランドパターンとシールド体を、電気絶縁性基板の外周を介して接続する場合に比べて接続距離を短く接続すること。」
5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「回路素子7」は「両面配線基板6」の両面に取付けられて「両面実装基板」を構成しているから、「両面実装基板」は両面に「回路素子7」を有しているといえる。そして、「両面実装基板」は「回路素子7」を両面に有しているから、「両面実装基板」の箱部1の内部に向いた面にも少なくとも一つの「回路素子7」を有していることは明らかである。そして、「回路素子7」は「両面配線基板6」に「取付けられ」ることから、「回路素子7」は「両面実装基板」に接続されているということができる。したがって、引用発明の「回路素子7」、「両面実装基板」は、本願発明の少なくとも一つの「第1の回路部品」、「基板」にそれぞれ相当し、引用発明の「両面実装基板」の箱部1の内部に向いた面が、本願発明の「基板の第1の面」に相当する。したがって、引用発明の「両面配線基板6の両面に回路素子7が取付けられた両面実装基板」は、本願発明の「基板であって、前記基板の第1の面に接続された少なくとも一つの第1の回路部品を有する基板」に相当する。
イ 引用発明において、両面実装基板は箱部1の内部のストッパ3a,3b間に嵌め込まれるから、「箱部1」と「両面実装基板」は接続されているといえる。また、箱部1の外側は全面シールド用金属面で構成されているから、「箱部1」が電磁妨害を遮蔽(シールド)することは明らかである。そうしてみると、引用発明の外側が全面シールド用金属面である「箱部1」は、本願発明における基板に接続された「電磁妨害(EMI)シールド」に相当する。
そして、引用発明における「両面実装基板が箱部1に嵌め込まれた装置」は、嵌め込まれることにより一体に構成されているから、これを本願発明のように「パッケージ」と称することは任意である。
ウ 引用発明の「金属薄板11」は、箱部1の外側表面を構成しており、箱部1の外面は全面シールド用金属面であるから、「金属薄板11」は引用発明の装置を無線周波数放射から遮蔽するように構成されていることは明らかである。また、「両面実装基板」は箱部1の4つの側壁と接しているから、複数の側壁が両面実装基板と接しているといえ、引用発明の「4つの側壁」は本願発明の「複数の側壁」に含まれるといえる。そして、引用発明の「金属薄板11」は、箱部1の上面を構成する部分と、4つの側壁を構成する部分とから構成されているから、「金属薄板11」は「4つの側壁」を含んでいるということができる。
そうしてみると、引用発明の「金属薄板11」は、本願発明の前記パッケージを無線周波放射から遮蔽するように構成されかつ前記EMIシールドを前記基板に接続する複数の側壁を含む「金属ケース」に相当するということができる。
エ 引用発明の「絶縁被膜12」は、金属薄板11の箱部の内面となる側に、ポリイミドまたはエポキシ樹脂等により形成されているから、金属薄板11の内面の少なくとも一部に接続されているといえ、また、「ポリイミドまたはエポキシ樹脂」は誘電体であることは技術常識である。
そうしてみると、引用発明の「絶縁被膜12」は、本願発明の金属ケースの内面の少なくとも一部に接続された「誘電体層」に相当するということができる。
オ 引用発明の「複数の配線導体4」は、金属薄板11上に施された絶縁被膜12上に形成されているから、絶縁被膜12と接しており、また、絶縁被膜12を挟んで金属薄板11と対向しているから金属薄板11と電気的に絶縁されているといえる。
また、引用発明では、複数の配線導体4を構成する回路接続用導体4aと接地用導体4bが、前記箱部1の内面の4つの側壁上に形成されているが、形成されていない部分については、側壁は絶縁被膜12で構成されていることになるから、箱部1の内面の4つの側壁は、絶縁導体12と複数の配線導体4の少なくとも一部とを含むということができる。
そうしてみると、引用発明の複数の配線導体4は、本願発明の、前記誘電体層に接続され、前記誘電体層により前記金属ケースから電気的に絶縁された複数の信号線であって、前記複数の側壁が、前記誘電体層と前記複数の信号線の少なくとも一部とを含む内側側壁面を含む「複数の信号線」に相当する。
カ 引用発明では、「前記箱部1の内部天井面に内部配線用導体4cを設けて、回路素子8を実装し」ているから、「回路素子8」は箱部1の内面に接続されている少なくとも一つの回路素子であるといえる。そして、両面実装基板が、箱部1の頂面にほぼ並行になるように箱部内部に嵌め込まれているから、「回路素子8」が実装された箱部1の内部天井面は、「両面実装基板」の箱部1の内部に向いた面と対面しているといえる。
また、引用発明では、「前記回路接続用導体4aあるいは前記接地用導体4bが側壁面状を前記内部配線用導体4cまで複数箇所で延長され」ているところ、回路素子8には当該延長された回路接続用導体4aあるいは接地用導体4bを介して動作させるために必要な電気信号が供給されていることは技術常識に照らして明らかである。
そうしてみると、引用発明の箱部1の内部天井面の内部配線用導体4cに実装された「回路素子8」は、本願発明の「前記EMIシールドの内面に接続された少なくとも一つの第2の回路部品であって、前記EMIシールドの内面の少なくとも一部は前記基板の前記第1の面に対面し、前記複数の信号線が電気信号を前記第2の回路部品に供給するように構成されている、少なくとも一つの第2の回路部品」に相当している。
キ 引用発明では「接地用導体4bはU字状に折曲げられた折曲げ部2の端部で箱部1の外側表面の金属面と接続されて」おり、上記ウで検討したように、箱部1の外側表面の金属面は金属薄板11であるから、金属薄板11は接地用導体4bと接続され、シールドとして機能するように接地電位となっていることが明らかである。
また、回路素子8は回路動作をする上で電気接地が必要であることは、技術常識に照らして明らかである。そうしてみると、接地用導体4bが内部配線用導体4cまで延長されて回路素子に電気接地を提供しているといえる。
したがって、引用発明と本願発明とは、金属ケースが電気接地となっており、第2の回路部品に電気接地が提供されるという点では共通しているものの、引用発明は本願発明の「金属ケースが、電気接地を前記第2の回路部品に提供するように構成され、第2の回路部品が、前記金属ケースの内面に電気接続部を介して複数の場所で更に接続されている」構成を有していない点では相違している。
よって、本願発明と引用発明とは、次の点で一致ないし相違する。
(一致点)
「 基板であって、前記基板の第1の面に接続された少なくとも一つの第1の回路部品を有する基板と、
前記基板に接続された電磁妨害(EMI)シールドと、を備えるパッケージであって、
前記EMIシールドが、
前記パッケージを無線周波放射から遮蔽するように構成されかつ前記EMIシールドを前記基板に接続する複数の側壁を含む金属ケースと、
前記金属ケースの内面の少なくとも一部に接続された誘電体層と、
前記誘電体層に接続され、前記誘電体層により前記金属ケースから電気的に絶縁された複数の信号線であって、前記複数の側壁が、前記誘電体層と前記複数の信号線の少なくとも一部とを含む内側側壁面を含む、複数の信号線と、
前記EMIシールドの内面に接続された少なくとも一つの第2の回路部品であって、前記EMIシールドの内面の少なくとも一部は前記基板の前記第1の面に対面し、前記複数の信号線が電気信号を前記第2の回路部品に供給するように構成されている、少なくとも一つの第2の回路部品と、を含み、
前記金属ケースが電気接地となっており、
第2の回路部品に電気接地が提供される、
パッケージ。」
(相違点)
本願発明では、「金属ケースが、電気接地を前記第2の回路部品に提供するように構成され、第2の回路部品が、前記金属ケースの内面に電気接続部を介して複数の場所で更に接続されている」のに対して、引用発明では、その旨の特定がされていない点。
6 判断
上記相違点について検討する。
上記4(2)において検討したように、電気絶縁性基板の一方の面に配線パターンとグランドパターンを形成し、他方の面に導電材料からなりグランドパターンとしての機能も有するシールド体を形成した回路基板において、グランドパターンが形成されている部分の電気絶縁性基板にシールド体と接続する貫通孔を設け、該貫通孔内にも導電材料からなるシールド体を充填することで、グランドパターンとシールド体を、電気絶縁性基板の外周を介して接続する場合に比べて接続距離を短く接続することは公知技術である。
また、回路部品が接続される基板の配線において、寄生インダクタンスや寄生抵抗を低下させることは普通に考慮されることであって、さらに、接続距離が長くなると寄生インダクタンスや寄生抵抗が増加し、短くすれば減少することは技術常識である。
そうしてみると、引用発明においても「回路素子8」に電気接地を提供するために、接地用導体4bを延長することによる寄生インダクタンスや寄生抵抗の影響が当然に見込まれるところ、「回路素子8」に電気接地を供給するために公知技術を適用し、パターンが広くインピーダンスも低いことが期待されるシールド用金属面である金属薄板11から、貫通孔を介して直接接続するように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、貫通孔を介した接続において、寄生インダクタンスや寄生抵抗成分を低減するために貫通孔を複数設けることは、慣用技術であって(例えば、特開2012-69618号公報、段落【0066】参照)、貫通孔を設けるにあたって適宜実施される事項であり格別のものではない。
よって、引用発明に公知技術を適用することにより、「金属ケースが、電気接地を前記第2の回路部品に提供するように構成され、第2の回路部品が、前記金属ケースの内面に電気接続部を介して複数の場所で更に接続されている」との本願発明の構成は、当業者が容易に想到できたものである。
そして、本願発明の効果も、引用発明と公知技術から当業者が予想できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明に公知技術を適用することにより、当業者が容易に発明することができたものである。
なお、審判請求人は、令和1年8月29日に提出された審判請求書において、「上記引用文献1に記載の発明の『接地用導体4b』の構成を、引用文献5の『シールド体(402)の内面に貫通孔を介して一箇所で接続されるグランドパターン(203)』という開示に基づいて、箱部1の外側から貫通孔を介して電気接地を提供する構成に修正し、更に、その『一箇所』を引用文献6の開示内容に基づき『複数箇所』に修正した場合には、その二段階で修正された接地用導体(グランドパターン)は、箱部1上の回路素子8のみに電気接地を提供するものとなり、両面実装基板6上の回路素子7には電気接地が提供されないことになる。そして、両面実装基板6上の回路素子7については別途の電気接地を提供するための構造が必要となってしまうものである。以上のように、引用文献1に記載の発明の接地用導体4bの構成を、引用文献5及び6に記載の事項に基づいて修正した場合には、引用文献1の接地用導体4が元々果たすべきであった役割を最早果たすことができなくものであり、そのような修正を当業者が行うことはあり得ない。」と主張している。
しかしながら、上述したように、貫通孔を介した接続において、寄生インダクタンスや寄生抵抗成分を低減するために貫通孔を複数設けることは、慣用される技術事項であって格別な事項とはいえない。また、請求人は公知技術を適用した場合に両面実装基板6上の回路素子7については別途の電気接地を提供するための構造が必要である旨の主張をしているが、引用発明に公知技術を適用するにあたっては、回路素子の裏面側に接地された金属薄板11が存在する回路素子8への電気接地にのみ適用し、両面実装基板6には、従前通り接地用導体4bを用いて電気接地の供給を続けることは当然にとりうる構成であり、公知技術の適用を阻害することにはならない。
7 むすび
以上のとおりであって、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献5に記載された公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-011363