特許拒絶査定不服審判
2019-009353
表面処理装置
- 審判番号
- 2019-009353
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-018238
- 請求日
- 2019年07月12日
- 審決日
- 2020年07月08日
- 公報発行日
- 2020年10月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社荏原製作所
- 【請求人代理人】大野 聖二
- 【請求人代理人】小林 英了
- 【請求人代理人】大野 浩之
- 【請求人代理人】森田 耕司
- 【請求人代理人】津田 理
- 【請求人代理人】松野 知紘
- 【請求人代理人】酒谷 誠一
- 【請求人代理人】野本 裕史
- 審判長/審判官
- 審判長 瀬川 勝久
- 審判官 野村 伸雄
- 審判官 星野 浩一
- 分類
- P18 .57 -Z (H01L) / P18 .575-Z (H01L) / P18 .113-Z (H01L) / P18 .121-Z (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015- 18238「表面処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月18日出願公開、特開2016- 27604〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年2月2日の出願(優先権主張 平成26年6月24日)であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
平成29年12月13日 :手続補正書の提出
平成30年 8月17日付け:拒絶理由通知書
平成30年12月26日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 4月 9日付け:拒絶査定
令和 元年 7月12日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 元年 8月22日 :審判請求書の手続補正書(方式)の提出
第2 令和元年7月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年7月12日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
電子ビームを照射して試料の表面処理を行う表面処理装置であって、
前記電子ビームを発生させる電子源と、
前記電子ビームのビーム形状を制御するレンズ系と、
前記電子ビームが照射される前記試料が設置されるステージと、
を備え、
前記試料に照射される前記電子ビームの電流量は、10nA~100Aに設定され、
前記ステージを移動させるステージ移動制御と前記電子ビームをブランキングするブランキングビーム制御を組み合わせることにより、前記電子ビームの照射領域が制御されることを特徴とする表面処理装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成30年12月26日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
電子ビームを照射して試料の表面処理を行う表面処理装置であって、
前記電子ビームを発生させる電子源と、
前記電子ビームのビーム形状を制御するレンズ系と、
前記電子ビームが照射される前記試料が設置されるステージと、
を備え、
前記試料に照射される前記電子ビームの電流量は、10nA~100Aに設定されることを特徴とする表面処理装置。」
2 補正の適否
(1)本件補正後の請求項1の「前記ステージを移動させるステージ移動制御と前記電子ビームをブランキングするブランキングビーム制御を組み合わせることにより、前記電子ビームの照射領域が制御される」は、本件補正前の請求項1の発明を特定するために必要とされる事項の「電子ビームを発生させる電子源」、「電子ビームのビーム形状を制御するレンズ系」、「電子ビームが照射される前記試料が設置されるステージ」を限定するものではないから、本件補正前の特許請求の範囲の発明を特定するために必要とされる事項の減縮を目的とするものでなく、また、本件補正の請求項1に係る補正の目的を明りょうでない記載の釈明と解することはできない。そして、本件補正の請求項1に係る補正が請求項削除や誤記の訂正を目的とするものでないことも明らかである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定される補正の要件を満たさないものである。
(2)独立特許要件について
本件補正が目的外補正であることを理由として却下すべきであることは、上記(1)で説示したとおりであるが、仮に、本件補正が特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとして、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)についても、一応、以下で検討する。
ア 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
イ 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開昭61-61414号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付した。以下同様。)。
(ア)「つぎに、本発明による電子銃を用いた、本発明のマルチ電子ビーム露光装置の実施例について説明する。本発明の実施例として、複数の電子ビームを用いてウェハ上に複数のLSIパターンを同時に露光可能なマルチ電子ビーム露光装置を第6図に示す。601は本発明による電子銃、602はブランカ、603および604は偏向器、605は静電レンズ、606は静電レンズ605を多数配置することで構成したフライズアイレンズ、607はステージ、608はステージ607に搭載したウェハ、609はオブジェクト・アパーチャ、610~614は電子銃601から放出された電子ビームである。
電子ビーム610~614は電子銃601から放射状に放出され、オブジェクト・アパーチャ609を通して、フライズアイレンズ606上の静電レンズ605を照射している。フライズアイレンズ606の直径は約10cmである。電子ビーム610~614の各々のビームに1個のオブジェクト・アパーチャ609、および1個の静電レンズ605を対応させている。フラ
イズアイレンズ606上の個々の静電レンズ605によって、オブジェクト・アパーチャ609の像がウェハ上に電子ビームの本数分だけ投影される。本実施例では、フライズアイレンズ606を構成する静電レンズ605にアパーチャレンズを用い、電子銃601の陽極、オブジェクト・アパーチャ609およびフライズアイレンズ606に5.6kV、ウェハ608に50kVを印加している。
偏向器603、604によって電子ビーム610~614を一方向に偏向走査する。LSIのパターンデータに基づいて、ブランカ602にブランキング信号を加え、電子ビーム610~614を偏向信号と同期させてオン・オフする。ステージ607は、電子ビーム610~614の偏向走査方向と直角の方向に連続的に移動する。このようにして、各LSIチップにおいて、(偏向走査幅×チップ一辺の長さ)の領域を同時に描画する。この領域のパターン描画が終わると、ステージ607を偏向走査幅だけ、電子ビーム610~614の偏向走査方向と同じ方向に移動させ、つぎの領域のパターン描画を開始する。この動作を繰り返すことにより、ウェハ608の全面にLSIパターンを描画する。
この装置では、本発明の電子銃601を用いているので、電子ビームの加速電圧が高い場合でも、電子ビーム610~614と電子銃の中心軸との成す角度を任意に設定でき、フライズアイレンズ606中のすべての静電レンズ605に電子ビームを照射することができる。したがって、一回のビーム照射で露光できるウェハ面積が増大し、ステージの移動回数を少なくすることができる。すなわち、ステージ移動のむだな時間を減らすことができる。また、電子ビーム610~614の電流値が4.2μAと大きいので、実露光時間を減少させることができる。これらの結果、スループットを大幅に向上させることができる。」(第4頁右下欄第2行~第5頁右上欄第15行)
(イ)第6図の記載から、電子銃601と、静電レンズ605と、ウェハ608が搭載されたステージ607と、を備えたマルチ電子ビーム露光装置が、見て取れる。
(ウ)以上から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「電子銃601と、
静電レンズ605と、
ウェハ608が搭載されたステージ607と、を備え、
電子ビーム610~614は電子銃601から放出され、
個々の静電レンズ605によって、オブジェクト・アパーチャ609の像がウェハ上に電子ビームの本数分だけ投影され、
電子ビーム610~614の電流値が4.2μAと大きく、
ブランカ602にブランキング信号を加え、電子ビーム610~614を偏向信号と同期させてオン・オフし、ステージ607は、電子ビーム610~614の偏向走査方向と直角の方向に連続的に移動し、(偏向走査幅×チップ一辺の長さ)の領域を同時に描画し、この領域のパターン描画が終わると、ステージ607を偏向走査幅だけ、電子ビーム610~614の偏向走査方向と同じ方向に移動させ、つぎの領域のパターン描画を開始する、
マルチ電子ビーム露光装置。」
ウ 引用発明との対比・判断
(ア)本件補正発明と引用発明とを対比する。
a 引用発明の「『電子ビーム610~614』が『放出され』る『電子銃601』」は、本件補正発明の「前記電子ビームを発生させる電子源」に、
引用発明の「ウェハ608が搭載されたステージ607」は、本件補正発明の「前記電子ビームが照射される前記試料が設置されるステージ」に、
それぞれ相当する。
b 引用発明の「『オブジェクト・アパーチャ609の像がウェハ上に電子ビームの本数分だけ投影され』るようにする『静電レンズ605』」は、電場を用いて電子ビームを集束させるものであるから、電子ビームを集束させ所定の形状にしているものである。
そうすると、引用発明の「『オブジェクト・アパーチャ609の像がウェハ上に電子ビームの本数分だけ投影され』るようにする『静電レンズ605』」は、本件補正発明の「前記電子ビームのビーム形状を制御するレンズ系」と、一致する。
c 引用発明の「電子ビーム610~614の電流値が4.2μAと大きく」は、本件補正発明の「前記試料に照射される前記電子ビームの電流量は、10nA~100Aに設定され」の試料に照射される電子ビームの電流量の範囲を満たしている。
d 引用発明の「ステージ607は、電子ビーム610~614の偏向走査方向と直角の方向に連続的に移動し」、「電子ビーム610~614の偏向走査方向と同じ方向に移動させ」は、本件補正発明の「ステージを移動させるステージ移動制御」に、
引用発明の「『ブランカ602にブランキング信号を加え、電子ビーム610~614を』『オン・オフし』」は、本件補正発明の「電子ビームをブランキングするブランキングビーム制御」に、
それぞれ相当する。
そして、引用発明においても、ブランキング信号を加えるオン・オフと、ステージの移動とを、組み合わせて、領域を描画し、ステージを移動させ、つぎの領域のパターン描画していることは明らかである。
そうすると、引用発明の「ブランカ602にブランキング信号を加え、電子ビーム610~614を偏向信号と同期させてオン・オフし、ステージ607は、電子ビーム610~614の偏向走査方向と直角の方向に連続的に移動し、(偏向走査幅×チップ一辺の長さ)の領域を同時に描画し、この領域のパターン描画が終わると、ステージ607を偏向走査幅だけ、電子ビーム610~614の偏向走査方向と同じ方向に移動させ、つぎの領域のパターン描画を開始する」は、「前記ステージを移動させるステージ移動制御と前記電子ビームをブランキングするブランキングビーム制御を組み合わせることにより、前記電子ビームの照射領域が制御される」に、相当する。
e 本願の明細書の「【0002】従来から、半導体製造の分野では、電子ビームを照射して試料の表面処理を行う表面処理装置が用いられている。例えば、電子ビームを用いて半導体チップのパターンを露光する電子ビーム露光装置が用いられている(特許文献1参照)。また近年では、大面積の荷電粒子を照射して、チップ面積全体を転写する露光装置も提案されている(特許文献2参照)。」、「【0020】以下、本発明の実施の形態の表面処理装置について、図面を用いて説明する。表面処理装置は、電子ビームを照射して試料の表面処理を行う装置である。以下では、例えば、膜や母材など(ウェハ、マスク、レジスト、酸化膜、導電膜、クオーツなど)の表面処理を行う表面処理装置の場合を例示する。」の記載から、本願においては、「表面処理」は、例えば、試料の全面に電子ビームを照射する処理のようなもののみならず、電子ビームを用いて半導体チップのパターンを露光することを含むものと、解される。
そうすると、引用発明の「マルチ電子ビーム露光装置」は、引用文献1の「複数の電子ビームを用いてウェハ上に複数のLSIパターンを同時に露光可能なマルチ電子ビーム露光装置」の記載からしても、電子ビームを用いてウェハの表面を露光して処理している装置と解され、そうすると、本件補正発明の「電子ビームを照射して試料の表面処理を行う表面処理装置」、「表面処理装置」と、一致する。
f してみると、本件補正発明と引用発明は、
「電子ビームを照射して試料の表面処理を行う表面処理装置であって、
前記電子ビームを発生させる電子源と、
前記電子ビームのビーム形状を制御するレンズ系と、
前記電子ビームが照射される前記試料が設置されるステージと、を備え、 前記試料に照射される前記電子ビームの電流量は、10nA~100Aに設定され、
前記ステージを移動させるステージ移動制御と前記電子ビームをブランキングするブランキングビーム制御を組み合わせることにより、前記電子ビームの照射領域が制御される表面処理装置。」
である点で一致するものであり、両者の間に相違点はない。
(イ)したがって、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(ウ)本件補正発明の「前記電子ビームが照射される前記試料が設置されるステージ」は、電子ビームを照射するときに偏向させることのないものについて特定されておらず、電子ビームを照射させるときに偏向させるものを除外していない。
しかしながら、仮に、本件補正発明の「前記電子ビームが照射される前記試料が設置されるステージ」は、「前記電子ビームが偏向させることなく照射される前記試料が設置されるステージ」のみしか特定していないと考えて、一応、検討する。
a 引用発明は「ブランカ602にブランキング信号を加え、電子ビーム610~614を偏向信号と同期させてオン・オフし、ステージ607は、電子ビーム610~614の偏向走査方向と直角の方向に連続的に移動し、(偏向走査幅×チップ一辺の長さ)の領域を同時に描画し、この領域のパターン描画が終わると、ステージ607を偏向走査幅だけ、電子ビーム610~614の偏向走査方向と同じ方向に移動させ、つぎの領域のパターン描画を開始する」と特定されていることから、引用発明のステージ607は、ステージ607を偏向走査幅だけ、電子ビーム610~614の偏向走査方向と同じ方向にも移動させている。
そうすると、電子ビームを偏向させて照射しなくても、ブランカ602にブランキング信号を加え、ステージ607の一方向に移動する信号と同期させてオン・オフし、さらに、ステージ607は、当該一方向と直角方向に連続的に移動するようになすことは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。
b そうすると、仮に、本件補正発明の「前記電子ビームが照射される前記試料が設置されるステージ」は、「前記電子ビームが偏向させることなく照射される前記試料が設置されるステージ」のみしか特定していないと考えても、当業者が引用発明に基づいて適宜なし得た事項であるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
エ 審判請求人の主張について
(ア)本件審判請求人は、令和元年8月22日付けで提出された審判請求書の手続補正書(方式)において、
「この本願発明1によれば、ステージ移動制御とブランキングビーム制御を組わせて電子ビームの照射領域を制御することにより、電子ビームのビーム形状を制御するだけで、電子ビームを偏向させることなく試料に照射することができる。そのため、10nA~100Aという大出力の電子ビームであっても、電子ビームを偏向させることなく(偏向により収差が拡大することなく)試料に照射することが可能になる、という格別の作用効果が奏されます。引用文献1~7のいずれにも“大出力の電子ビームを偏向させることなく(偏向により収差が拡大することなく)試料に照射することを可能とするために、電子ビームのビーム形状を制御するとともに、ステージ移動制御とブランキングビーム制御を組わせて電子ビームの照射領域を制御する”という技術的思想については、まったく開示されておらず、何らの示唆もなされていません。」
旨、主張している。
(イ)上記主張について以下検討する。
本件補正発明において、電子ビームを偏向させることのないものについて特定されておらず、電子ビームを偏向させるものを除外していない。
このことは、本願の明細書からも、以下のように裏付けられる。
本願明細書には「【0021】(第1の実施の形態) 本発明の第1の実施の形態の表面処理装置の構成を、図面を参照して説明する。ここでは、まず装置の全体構成を説明し、つぎに装置の主要部について説明する。」、「【0031】 この場合、ステージ30を移動させて、電子ビームの照射領域を制御することができる。電子ビームの照射位置は、光学顕微鏡110を用いて確認することができる。また、ステージ移動制御とブランキングビーム制御(ドーズ制御)を組み合わせることにより、電子ビームの照射領域を制御することができる。」、「【0033】(第2の実施の形態) 本発明の第2の実施の形態の表面処理装置の構成を、図面を参照して説明する。なお、表面処理装置の全体構成については、第1の実施の形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。」、「【0069】(第7の実施の形態) 本発明の第7の実施の形態の表面処理装置の構成を、図面を参照して説明する。なお、表面処理装置の全体構成については、第2の実施の形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。【0070】 図10は、本実施の形態の表面処理装置の主要部の構成を示す図である。図10に示すように、表面処理装置のコラム内には、電子ビームを発生させるカソード等の電子ビーム源10と、電子ビームを偏向させる偏向器200と、ゲートバルブ210と、パーティクルキャッチャー220が備えられている。また、表面処理装置のメインチャンバ内には、ステージ30を覆うカバー230(矩形アパーチャ)と、カバー230とステージとの間に出し入れ可能に設けられるプレート240(ビーム調整器)と、ステージ30を昇降させるリフト機構250が備えられている。」旨記載され、ステージの移動する構成と電子ビームを偏向させる偏向器とを備えた表面処理装置についても示唆されている。
仮に、本件補正発明において、電子ビームを偏向させることのないもののみであるとしても、上記ウ(ウ)で検討したとおりである。
してみれば、審判請求人の上記主張は、採用することができない。
(3)本件補正についてのむすび
上記(1)で検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
仮にそうでないとしても、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和元年7月12日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年12月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
理由1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、
理由2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
というものである。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1について
・請求項:1,5
・引用文献等:1
・請求項:1,3,5
・引用文献等:2
●理由2について
・請求項:1,5
・引用文献等:1
・請求項:1,3,5
・引用文献等:2
・請求項:2,5
・引用文献等:1,3
・請求項:2,5
・引用文献等:2,4
・請求項:4
・引用文献等:1-5
・請求項:6
・引用文献等:1-6
<引用文献等一覧>
1.特開昭61-061414号公報
2.米国特許出願公開第2003/0042434号明細書
3.特開昭62-276826号公報(周知技術を示す文献)
4.米国特許出願公開第2012/0223245号明細書
5.特表2010-535394号公報
6.特開2004-095281号公報(周知技術を示す文献)
7.特開2006-210459号公報(新たに引用された文献)
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)イに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2(2)で検討した本件補正発明の「前記ステージを移動させるステージ移動制御と前記電子ビームをブランキングするブランキングビーム制御を組み合わせることにより、前記電子ビームの照射領域が制御される」の事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(2)ウに記載したとおり、引用発明に該当する、あるいは、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に該当するものであり、あるいは、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、又は、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-009353