特許拒絶査定不服審判
2019-009093
チップインダクター
- 審判番号
- 2019-009093
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-096371外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年07月05日
- 審決日
- 2020年12月15日
- 公報発行日
- 2021年06月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
- 【請求人代理人】龍華国際特許業務法人
- 分類
- P18 .121-WZ (H01F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016- 96371「チップインダクター」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月28日出願公開、特開2016-225611〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成28年5月12日に出願したものであって(パリ条約による優先権主張2015年5月27日韓国、2015年10月16日韓国)、平成29年7月25日付け拒絶理由通知に対して同年11月1日に手続補正がなされ、平成30年5月31日付け拒絶理由通知に対して同年9月5日に手続補正がなされたが、平成31年2月28日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、令和1年7月5日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、令和2年6月8日付け当審の拒絶理由通知に対して同年8月17日に手続補正がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし20に係る発明は、令和2年8月17日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「有機物及びコイル部を含むボディと、前記ボディの外側に配置され、前記コイル部と連結された外部電極と、を含み、
前記コイル部は、第1の導電性パターン、前記第1の導電性パターンと対向する第2の導電性パターン、及び、前記第1の導電性パターンと前記第2の導電性パターンとの間に設けられる導電性ビアを有し、
前記導電性ビアは、SnまたはSn系合金と、体積比で20~80vol%の含量の有機物とが少なくとも混合された有機物-金属複合材料を有しており、
前記導電性ビアと前記第1の導電性パターンとの第1界面において前記導電性ビア中の前記Snまたは前記Sn系合金と前記第1の導電性パターン中の金属とにより形成されたSn系金属間化合物を有しており、
前記導電性ビアと前記第2の導電性パターンとの第2界面において前記導電性ビア中の前記Snまたは前記Sn系合金と前記第2の導電性パターン中の金属との反応により形成されたSn系金属間化合物を有している、チップインダクター。」
第3 当審拒絶理由の概要
当審において令和2年6月8日付けで通知した拒絶理由のうち理由1の概要は、請求項1に係る発明に対する拒絶理由を含むものであって、次のとおりである。
本願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2012-182379号公報
引用文献2:特開平11-251751号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2000-30533号公報
第4 引用文献
1 引用文献1(特開2012-182379号公報)
引用文献1には、「多層チップ部品」に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
(1)「【0001】
本発明は、プリント基板を複数枚積層してなる多層集合基板を、切断することによって得られる多層チップ部品、および、その製造方法に関する。」
(2)「【0014】
<多層チップ部品>
本発明の多層チップ部品は、電子部品として配線基板などに実装されて使用されるものである。電子部品としては、例えば、フィルタ、コンデンサ、抵抗、インダクタなどの受動部品が挙げられる。電子部品は、好ましくは、チップコンデンサ、チップ抵抗およびチップインダクタなどのチップ型受動部品である。以下に、本発明の多層チップ部品の各構成について詳細に説明する。
【0015】
[絶縁性基板]
絶縁性基板は、電気絶縁性を有する材料からなる板状またはフィルム状の基板であり、少なくとも熱可塑性樹脂を含むものである。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリイミド、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)が挙げられる。熱可塑性樹脂を含む絶縁性基板は屈曲性に優れることから、それを用いて作製された多層チップ部品は、低背であっても外部応力(曲げ応力や衝撃荷重)に対して破壊されにくいものとなる。また、熱可塑性樹脂は吸水率が低いことから、吸水による特性(誘電率、誘電正接など)の変化が少ない、耐環境性(耐候性)に優れた多層チップ部品が得られる。
【0016】
[導体配線層]
導体配線層としては、種々公知の配線基板に用いられる導体配線層を使用することができる。導体配線層の材料としては、例えば、銅、銀、アルミニウム、SUS、ニッケル、金や、それらの合金などを用いることができ、好ましくは銅(Cu)である。導体配線層を銅で形成する場合、その原材料となる銅箔は、導電性が高く、厚みや形状が平滑であることから、導電性や高周波特性に優れた多層チップ部品を得ることができる。また、銅で形成された導体配線層は屈曲性に優れることから、それを用いて作製された多層チップ部品は、低背であっても外部応力に対して破壊されにくいものとなる。
【0017】
[多層集合基板]
多層集合基板は、上記絶縁性基板、および、絶縁性基板の少なくとも一方の表面に形成された導体配線層を有するプリント基板が複数枚積層されてなるものである。多層集合基板は、切断することにより個々の多層チップ部品に分割される。
【0018】
[多層チップ部品]
多層集合基板を切断することによって得られる多層チップ部品の切断面を含む表面上には、外部電極が設けられる。外部電極は、多層チップ部品の切断面に接して設けられた導体配線層と電気的に接続される。
【0019】
[外部電極]
本発明の多層チップ部品における外部電極は、Snを含有する第1金属と該第1金属よりも高い融点を有する第2金属との反応により生成する300℃以上の融点を有する金属間化合物を含んでいる。」
(3)「【0034】
なお、図示していないが、導体配線層21は必要に応じて相互に電気的に接続されている。接続は種々公知の方法で行うことができ、ビアホール導体により接続を行う場合は、後述の外部電極の形成に用いられるビアホール導体と同じ材料を用いてビアホール導体を形成することが好ましい。ただし、ビアホール導体を使用しない他の方法により、導体配線層21が相互に電気的に接続されていてもよい。
【0035】
(2) 多層チップ部品を得るステップ
上述のようにして得られた多層集合基板は、多層チップ部品となるブロックが複数形成されたものであり、その各々のブロックを分割するように、ダイシングや打ち抜きなどの種々公知の方法により切断される(図2(f))。
【0036】
(3) 外部電極を形成するステップ
<導電性ペーストの塗布>
このようにして得られた多層チップ部品の切断面を含む表面上に導電性ペーストを用いて外部電極を形成する。具体的には、まず、多層チップ部品の切断面を含む表面上に、種々公知の方法により導電性ペースト40を塗布する(図2(g))。例えば、多層チップ部品の切断面の一方を導電性ペースト中に浸漬し、多層チップ部品を反転させて他方の切断面を導電性ペースト中に浸漬することにより、多層チップ部品の切断面を含む表面上に導電性ペーストを塗布することができる。
【0037】
導電性ペーストとしては、上記第1金属および第2金属からなる金属成分と、フラックス成分とを混練してなるペーストが用いられる。導電性ペーストの各成分について、以下に詳述する。
【0038】
(金属成分)
金属成分としては、上述の第1金属および第2金属と同様のものが用いられる。導電性ペースト中における金属成分とは、具体的には、例えば、ペースト中に分散された状態で存在する第1金属からなる粉末(第1金属粉末)および第2金属からなる粉末(第2金属粉末)である。
【0039】
第1金属粉末および第2金属粉末の算術平均粒径は、1~30μmであることが好ましい。小さすぎると製造コストが高くなる。また金属粉末の酸化が進み反応を阻害し易い問題がある。大きすぎるとビアホールに充填できなくなる問題が起きる。また、第1金属と第2金属との接続性や反応性を考慮すると、第1金属粉末および第2金属粉末中の酸素濃度は2000ppm以下であることが好ましく、特に10~1000ppmが好ましい。」
(4)「【0056】
<導電性ペーストの熱処理>
次に、導電性ペーストが切断面を含む表面上に塗布された多層チップ部品に対して、絶縁性基板を構成する樹脂が流れ出さない温度で熱処理を行うことにより、多層チップ部品の切断面に接して設けられた導体配線層21と、外部電極とを電気的に接続する。
【0057】
熱処理の温度は、少なくとも一定時間の間、230℃以上に達することが好ましい。230℃に達しない場合は第1金属中のSn(融点:232℃)が溶融状態とならず、金属間化合物を生成することができない。また、熱処理の最高温度は、300℃以下であることが好ましい。300℃を超えると、LCP等の熱可塑性樹脂を含む絶縁性基板から、樹脂が流れ出してしまうおそれがあるからである。LCPは、分子量によるが、約315℃で流動を開始する。
【0058】
このようにして熱処理することで、導電性ペースト40中のフラックス成分は分解、揮発し、第1金属中のSnと第2金属(Cu-Ni、Cu-Mnなど)が反応して金属間化合物を生成し、また、多層チップ部品の切断面に接して設けられた導体配線層21と導電性ペースト40とが接する部分において、導体配線層21を形成する金属と導電性ペーストに含まれる第1金属中のSnとが反応して合金層を形成する。この熱処理により、多層チップ部品の切断面に接して設けられた導体配線層21と電気的に接続された外部電極41が形成される(図2(h))。」
上記(1)ないし(4)から、引用文献1には以下の事項が記載されている。
・上記(2)によれば、多層チップ部品は、チップインダクタとして使用できるものである。
・上記(1)及び(2)によれば、多層チップ部品は、プリント基板を複数枚積層してなる多層集合基板を切断することによって得られるものであり、多層チップ部品の切断面を含む表面上には、外部電極が設けられている。
また、多層集合基板は、絶縁性基板、および、絶縁性基板の少なくとも一方の表面に形成された導体配線層を有するプリント基板が複数枚積層されてなるものである。
そして、多層集合基板を構成する絶縁性基板は、熱可塑性樹脂を含み、導体配線層の材料は、銅(Cu)である。
・上記(3)によれば、導体配線層はビアホール導体により相互に電気的に接続されている。
また、外部電極の形成に「ビアホール導体と同じ材料」を用いるから、ビアホール導体と外部電極は同じ材料の導電性ペーストを用いて形成されている。
・上記(2)及び(3)によれば、外部電極の形成に用いる導電性ペーストとしては、第1金属および第2金属からなる金属成分と、フラックス成分とを混練してなるペーストが用いられるものである。
・上記(4)によれば、熱処理することで、導電性ペースト中のフラックス成分は分解、揮発し、第1金属中のSnと第2金属が反応して金属間化合物を生成するものである。
また、多層チップ部品の切断面に接して設けられた導体配線層と導電性ペーストとが接する部分において、導体配線層を形成する金属と導電性ペーストに含まれる第1金属中のSnとが反応して合金層を形成するものである。
さらに、この熱処理により、多層チップ部品の切断面に接して設けられた導体配線層と電気的に接続された外部電極が形成されるものである。
したがって、上記摘記事項および図面を総合勘案すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「チップインダクタとして使用する多層チップ部品であって、
多層チップ部品は、プリント基板を複数枚積層してなる多層集合基板を切断することによって得られるものであり、多層チップ部品の切断面を含む表面上には、外部電極が設けられており、
多層集合基板は、絶縁性基板、および、絶縁性基板の少なくとも一方の表面に形成された導体配線層を有するプリント基板が複数枚積層されてなり、 多層集合基板を構成する絶縁性基板は熱可塑性樹脂を含み、導体配線層の材料は銅(Cu)であり、
導体配線層はビアホール導体により相互に電気的に接続されており、
ビアホール導体と外部電極は同じ材料の導電性ペーストを用いて形成されており、
外部電極の形成に用いる導電性ペーストとしては、第1金属および第2金属からなる金属成分と、フラックス成分とを混練してなるペーストが用いられ、
熱処理することで、導電性ペースト中のフラックス成分は分解、揮発し、第1金属中のSnと第2金属が反応して金属間化合物を生成し、また、多層チップ部品の切断面に接して設けられた導体配線層と導電性ペーストとが接する部分において、導体配線層を形成する金属と導電性ペーストに含まれる第1金属中のSnとが反応して合金層を形成し、この熱処理により、多層チップ部品の切断面に接して設けられた導体配線層と電気的に接続された外部電極が形成される、
多層チップ部品。」
2 引用文献2(特開平11-251751号公報)
引用文献2には、図面とともに以下の記載がある。
「【要約】
【課題】配線回路層と導体ペーストを充填して形成したバイアホール導体との接続信頼性に優れた配線基板とその製造方法を提供する。
【解決手段】有機樹脂を含有する絶縁層2に形成したバイアホール内に金属粉末を含む導体ペーストを充填してバイアホール導体5を形成した後、その両端にAg、Al、Au、Cd、Cr、Ni、Pb、Sn、Th、Ti、Tl、ZnおよびZrの群から選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属層8を形成し、その金属層8の表面に銅箔などの配線回路層9を被着形成した後、配線回路層9とバイアホール導体5間に所定のパルス電流を印加して、配線回路層9とバイアホール導体5とを金属層8を介して接続し、配線回路層9と金属層8との金属粒子間を、銅と金属層中の金属成分との合金からなるネック部Aによって機械的に強固に、且つ電気的に低抵抗に接続する。」
「【0016】本発明における大きな特徴は、図2の要部拡大図に示すように、バイアホール導体5中の金属粒子6が、Ag、Al、Au、Cd、Cr、Ni、Pb、Sn、Th、Ti、Tl、ZnおよびZrの群から選ばれる少なくとも1種の金属粉末7を主体とする金属層8を介して前記配線回路層4と電気的に接続してなり、その金属層8中の金属粒子7と配線回路層4としての例えば銅箔9とが、ネック部Aによって接合してなるものである。」
上記記載によれば、引用文献2には、多層配線基板に関して、以下の技術が記載されている。
「配線回路層と導体ペーストを充填して形成したバイアホール導体とを、銅とSnとの合金によって機械的に強固に接続すること」
3 引用文献3(特開2000-30533号公報)
引用文献3には、図面とともに以下の記載がある。
「【0011】本発明の導電体ペースト組成物は、(a)平均粒径が0.5~20μmで、その比表面積が0.05~1.5m2/gの導電体粒子;30~70体積%と、(b)一分子中に1つ以上のエポキシ基を有し、かつ水酸基、アミノ基及びカルボキシル基の合計量がエポキシ基の5モル%以下であり、エポキシ当量が100~350g/eqであるエポキシ化合物を10重量%以上含む樹脂;70~30体積%とを少なくとも含むものである。前記において、水酸基、アミノ基及びカルボキシル基の合計量は、エポキシ基の3モル%以下であることがさらに好ましい。前記エポキシ化合物中の水酸基、アミノ基及びカルボキシル基の合計量を少なくするには、分子蒸留により低減する方法が一例として採用できる。ここで、エポキシ当量とは、エポキシ基1つあたりのエポキシ化合物の分子量である。
【0012】前記ペースト組成物においては、導電体粒子が、下記I~IVの群から選ばれる少なくとも一つの粒子であることが好ましい。(I)金、白金、銀、パラジウム、銅、ニッケル、錫、鉛、インジウムから選ばれる少なくとも一つの粒子。(II)金、白金、銀、パラジウム、銅、ニッケル、錫、鉛、インジウム、亜鉛、クロムから選ばれる任意の組み合わせの合金粒子。(III)導電性または非導電性粒子を核とし、金、白金、銀、パラジウム、銅、ニッケル、錫、鉛、インジウムから選ばれる少なくとも一つの金属で被覆された粒子。(IV)導電性または非導電性粒子を核とし、金、白金、銀、パラジウム、銅、ニッケル、錫、鉛、インジウム、亜鉛、クロムから選ばれる任意の組み合わせの合金で被覆された粒子。」
「【0067】表2に各ビアホール充填用導電体ペーストの粘度値とTI値、それぞれのペーストを用いたときのインナビアホールの接続抵抗値および銅箔剥離強度を示す。導電体粒子と樹脂を請求項の条件を満たした範囲で配合した導電体ペーストはいずれもビアホールの体積抵抗値は100(μΩ・cm)以下である低抵抗の接続が得られた。一方、導電体粒子の含有量が比較例である30体積%未満では、導電体粒子が不足しビアホール抵抗値が大きい。また導電体粒子の含有量が比較例の70体積%を越えるとペースト粘度及びTI値が高くなりビアホール充填作業性が困難であった。また銅箔剥離強度については導電体粒子の含有量が70体積%以下であればいずれのペーストを用いた場合でも1.5kgf/cm以上の高強度が得られた。」
上記記載によれば、引用文献3には、以下の技術が記載されている。
「ビアホール充填用導電性ペーストにおける導電体粒子と樹脂の配合を、導電性粒子30~70体積%、樹脂70~30体積%にすること」
第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
1 引用発明の「多層チップ部品」、及び多層チップ部品の切断面を含む表面上に設けられた「外部電極」は、本願発明の「ボディ」、及び「ボディの外側に配置され」た「外部電極」にそれぞれ相当する。
2 引用発明の「多層チップ部品」は、絶縁性基板に熱可塑性樹脂を含み、また部品内部にインダクタ(コイル)の配線を含むことが明白であり、本願発明の「有機物及びコイル部を含むボディ」に相当する。
3 引用発明の「外部電極」は、技術常識を考慮すると「多層チップ部品」のインダクタの配線に接続されるものであるから、本願発明の「前記コイル部と連結された外部電極」に相当する。
4 引用発明の多層集合基板の「導体配線層」は、切断された個々の多層チップ部品において、インダクタの配線パターンを形成することが明白であるから、本願発明のコイル部が有する「導電性パターン」に相当する。
また、引用発明の多層集合基板において複数の「導体配線層」がプリント基板の積層によって互いに対向する配置にあること、及び切断された個々の多層チップ部品においても複数の「導体配線層」が互いに対向する配置にあることは明白といえ、本願発明の「前記コイル部は、第1の導電性パターン、前記第1の導電性パターンと対向する第2の導電性パターン」を有することに相当する。
5 引用発明の導体配線層を相互に電気的に接続する「ビアホール導体」は、本願発明の「前記第1の導電性パターンと前記第2の導電性パターンとの間に設けられる導電性ビア」に相当する。
6 引用発明のビアホール導体は、外部電極と同じ材料の導電性ペーストを用いて形成され、当該導電性ペーストは第1金属中にSnを含むから、本願発明の「前記導電性ビアは、Snが混合された材料を有して」いることに相当する。
ただし、Snが混合された導電性ビアの材料について、本願発明は「SnまたはSn系合金と、体積比で20~80vol%の含量の有機物とが少なくとも混合された有機物-金属複合材料」であるのに対して、引用発明にはその旨の特定がない点で相違する。
7 本願発明は「前記導電性ビアと前記第1の導電性パターンとの第1界面において前記導電性ビア中の前記Snまたは前記Sn系合金と前記第1の導電性パターン中の金属とにより形成されたSn系金属間化合物を有しており、前記導電性ビアと前記第2の導電性パターンとの第2界面において前記導電性ビア中の前記Snまたは前記Sn系合金と前記第2の導電性パターン中の金属との反応により形成されたSn系金属間化合物を有している」のに対し、引用発明にはその旨の特定がない点で相違する。
8 引用発明の「多層チップ部品」及び「外部電極」からなるチップインダクタは、本願発明の「チップインダクター」に相当する。
上記1ないし8から、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「有機物及びコイル部を含むボディと、前記ボディの外側に配置され、前記コイル部と連結された外部電極と、を含み、
前記コイル部は、第1の導電性パターン、前記第1の導電性パターンと対向する第2の導電性パターン、及び、前記第1の導電性パターンと前記第2の導電性パターンとの間に設けられる導電性ビアを有し、
前記導電性ビアは、Snが混合された材料を有している、チップインダクター。」
<相違点1>
Snが混合された導電性ビアの材料について、本願発明は「SnまたはSn系合金と、体積比で20~80vol%の含量の有機物とが少なくとも混合された有機物-金属複合材料」であるのに対して、引用発明にはその旨の特定がない点。
<相違点2>
本願発明は「前記導電性ビアと前記第1の導電性パターンとの第1界面において前記導電性ビア中の前記Snまたは前記Sn系合金と前記第1の導電性パターン中の金属とにより形成されたSn系金属間化合物を有しており、前記導電性ビアと前記第2の導電性パターンとの第2界面において前記導電性ビア中の前記Snまたは前記Sn系合金と前記第2の導電性パターン中の金属との反応により形成されたSn系金属間化合物を有している」のに対して、引用発明にはその旨の特定がない点。
第6 判断
上記相違点1及び2について検討する。
引用文献1記載の発明は、接合信頼性に優れた多層チップ部品を提供することを課題としており(【0007】)、引用発明が導電性ペーストを用いて形成された外部電極やビアホール導体に、熱処理により金属間化合物や合金層を形成するのは、接合信頼性を高めるためである。
ここで、多層配線基板において、配線回路層とビアホール導体との間に、銅とSnの合金または金属間化合物を形成して結合力を高めることは普通に行われているところ(上記「第4」「2」参照。他にも必要であれば、特開平11-251703号公報の【0018】及び【0023】参照)、ビアホール導体の形成にSnまたはSn系合金と熱硬化性樹脂を混合した導電性ペーストを使用し、加熱により配線回路層の銅と導電性ペーストのSnまたはSn系合金とを反応させて金属間化合物を形成することは周知の技術事項である(特開2014-60407号公報の【0048】-【0049】、【0053】及び【0081】-【0082】、特開2000-49460号公報の【0028】及び【0044】参照)。
また、ビアホール導体用の材料に樹脂を配合する際には、抵抗値の大きさや製造時の調整の困難さを考慮して、配合割合を調整することは普通に行われており、引用文献3に記載があるように、導電体粒子30~70体積%、樹脂70~30体積%とすることは(上記「第4」「3」参照)、当業者が普通に選択し得る範囲である。
そうすると、接合信頼性が求められる引用発明のチップインダクタのビアホール導体に、周知の技術事項を適用して、配線回路層の銅と導電性ペーストのSnまたはSn系合金とを反応させて金属間化合物を形成するようにし、導電性ペーストにおける導電体粒子と樹脂の配合を導電体粒子30~70体積%、樹脂70~30体積%にして、上記相違点1及び2に係る構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
この点について、審判請求人は、令和2年8月17日付け意見書において、出願時の技術常識においては、本願発明のように、あえて結果物として有機物を残存させる「有機物-金属複合材料」の導電性ビアでありながら、その導電性ビアと導電性パターンとの界面において、導電性ビア中のSnまたはSn合金と、導電パターン中の金属とにより形成されたSn系金属間化合物を形成させるという発想はなく、本願発明の構成に容易に想到すると判断することは妥当ではない旨主張している。
しかしながら、上記で検討したとおり、ビアホール導体の形成にSnまたはSn系合金と熱硬化性樹脂を混合した導電性ペーストを使用し、加熱により配線回路層の銅と導電性ペーストのSnまたはSn系合金を反応させて金属間化合物を形成することは周知の技術事項である。また、当該周知の技術事項においては、加熱により硬化した樹脂が有機物としてビアホール導体に残ることは明白である。
よって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。
そして、本願発明が奏する効果は、引用文献1に記載された発明、及び周知の技術事項から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明、及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
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2019-009093