特許拒絶査定不服審判
2019-006424
子宮筋腫治療に用いるプロゲステロン受容体調節剤
- 審判番号
- 2019-006424
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-507093外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年05月16日
- 審決日
- 2020年06月23日
- 公報発行日
- 2020年12月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】プレグレム ソシエテ アノニム
- 【請求人代理人】浜田 治雄
- 分類
- P18 .113-Z (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-507093「子宮筋腫治療に用いるプロゲステロン受容体調節剤」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月16日国際公開、WO2014/167510、平成28年6月9日国内公表、特表2016-516764〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2014年4月9日(パリ条約による優先権主張 2013年4月10日 ハンガリー(HU))を国際出願日とする特許出願であって、出願後の主な手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 2月 2日付け :拒絶理由通知
平成30年 8月 7日 :意見書及び手続補正書の提出
平成31年 1月10日付け :拒絶査定
令和 1年 5月16日 :審判請求書の提出
令和 1年 6月26日 :手続補正書(方式)の提出
第2 本願発明について
1 本願発明
本願に係る発明は、平成30年8月7日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも2回の治療期間のうち、治療上有効な量で子宮筋腫の治療に使用する酢酸ウリプリスタルまたは、CDB-3877、CDB-3963、CDB-3236若しくはCDB-4183から選択される何れかの代謝産物であって、
前記酢酸ウリプリスタルまたは、CDB-3877、CDB-3963、CDB-3236若しくはCDB-4183から選択される何れかの代謝産物は後続治療期間に投与されることになっており、一つの治療期間は2~6ヶ月間続き、各治療期間の後に薬を使用しない期間が続く酢酸ウリプリスタルまたは、CDB-3877、CDB-3963、CDB-3236若しくはCDB-4183から選択される何れかの代謝産物。」
第3 原査定の拒絶の理由について
原査定の拒絶の理由は、本出願の請求項1~10に係る発明は、引用文献1~4に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:Nieman,L.K. et al.,Efficacy and tolerability of CDB-2914 treatment for symptomatic uterine fibroids: a randomized, double-blind, placebo-controlled, phase IIb study.,Fertil. Steril.,2011年 2月 1日,Vol.95, No.2,p.767-772
引用文献2:Donnez,J. et al.,Ulipristal acetate versus placebo for fibroid treatment before surgery.,N. Engl. J. Med.,2012年 2月 2日,Vol.366, No.5,p.409-420
引用文献3:Donnez,J. et al.,Ulipristal acetate versus leuprolide acetate for uterine fibroids.,N. Engl. J. Med.,2012年 2月 2日,Vol.366, No.5,p.421-432
引用文献4:特表2011-510949号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、次の事項が記載されている(注:下線部は合議体が付した)。原文は英文なので、合議体による訳文で記載した。
「CDB-2914による症候性子宮筋腫の治療の有効性と忍容性:無作為、二重盲検、プラセボ対照、第IIb相臨床試験」(表題)
「目的:プロゲステロン受容体モジュレーターCDB-2914(ウリプリスタル、CDB)の有効性と忍容性の評価
試験計画:無作為、プラセボ対照及び二重盲検臨床試験
実施地:臨床研究センター
患者:症候性子宮筋腫を罹患する閉経前女性
介入:12週間にわたる1日1回の経口CDB(10又は20 mg)又はプラセボ(PLC)の投与(治療1)。二回目のCDBによる3か月の治療(治療2)が提供された。コンピューター生成のブロックランダム化が使用された。
主目標:磁気共鳴画像法(MRI)によって決定された総筋腫体積(TFV)の変化が主目標であり、無月経と生活の質(QOL)は副目標である。
結果:治療1のTFVは、PLC群で7%増加したが、CDB10及びCDB20群で17%及び24%減少した。TFVは治療2において、さらに減少した(-11%)。無月経は、CDBを摂取する女性26人中20人に起こり、PLC群ではなかった。CDB治療後に排卵が再開された。ヘモグロビンはCDBでのみ改善され(11.9±1.5から12.9±1.0 g/dLへ)、筋腫のQOL質問票の症状の重症度、活力/気分、不安のサブスコアと全体的なQOLスコアも同様であった。CDBは忍容性がよく、重大な有害事象はなかった。有害事象は治療中に変化しなかった。
結論:CDB-2914を3~6か月間投与すると、出血が抑制され、子宮筋腫のサイズが縮小し、QOLが改善される。」(要約)
「CDB-2914* [17α-アセトキシ-11β-[4-N,N-ジメチルアミノフェニル)-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン]は、ヒトプロゲスチン、グルココルチコイド、アンドロゲン受容体に結合し、エストロゲン(E)や鉱質コルチコイド受容体には結合しない(*CDB-2914に対する修正された医薬品国際一般名称(INN)は、酢酸ウリプリスタルである。CDB 2914は、HRP 2000、RTI 3021-012、VA2914及びPGL4001とも呼ばれている)。」(767頁右欄4~9行)
「結論として、CDB-2914は、症候性子宮筋腫に対する新しいアプローチである。」(771頁右欄24~25行)
(2)上記(1)によれば、引用文献1には、酢酸ウリプリスタルが症候性子宮筋腫の治療に有用であることが記載されている。
そうすると、引用文献1には、次のとおりの発明が記載されていると認められる。
「症候性子宮筋腫の治療に有用な酢酸ウリプリスタル。」(以下「引用発明1」という。)
2 引用文献4について
(1)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献4には、次の事項が記載されている。以下では、平成24年3月8日に発行がされた特許法第17条の2の規定による補正の掲載による特許請求の範囲及び明細書の該当箇所を摘記している(注:下線部は合議体が付した)。
「【請求項1】
子宮筋腫またはそれ由来の腫瘍の治療方法であって、それを必要とする患者に有効量の17α-アセトキシ-11β-[4-N,N-ジメチルアミノ-フェニル)-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン(酢酸ウリプリスタル)またはそのあらゆる代謝産物を投与することを含む方法。
・・・
【請求項7】
患者に経口用量の酢酸ウリプリスタルまたはそのあらゆる代謝産物を約2~約4ヶ月の期間にわたり投与する請求項1記載の方法。
【請求項8】
1年に1回反復する請求項7記載の方法。」
「【0011】
患者に、経口用量の酢酸ウリプリスタルまたはその代謝産物を約2~約4ヶ月の期間にわたり投与することがあり、この期間は1年に1回反復することができる。
【0017】
(発明の詳細な説明)
酢酸ウリプリスタル(以前はCDB-2914として知られていた)は、下記式Iで示される17α-アセトキシ-11β-[4-N,N-ジメチルアミノ-フェニル)-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオンである。
【化1】
・・・
【0024】
酢酸ウリプリスタルまたはその代謝産物は、子宮筋腫に罹患した患者の貧血を予防または治療するのに有用である。
・・・
【0041】
特定の態様において、患者に、経口用量の酢酸ウリプリスタルを約2~約4ヶ月の期間にわたり投与することができよう。
・・・
【0045】
ある特定の態様において、治療期間は1年に1回または2年ごとに反復することができる。」
・・・
結 果
【0053】
22人の女性が包含基準を満たし、18人の女性(黒人72%、白人28%)が試験を完了した。PL(合議体注:プラセボ)を受けた6人は酢酸ウリプリスタル群と同様の平均年齢およびBMIであった。MR画像により測定した子宮筋腫体積の全変化に対する完全なデータが18人の完了者から利用可能であった。3ヶ月の試験インターバル中に、総子宮筋腫体積は、PLC(合議体注:プラセボ)を投与された者で6%増加し、10mgおよび20mgを投与された者で36%および21%の減少がみられた(図1参照)。2つのCDB-2914群を組み合わせてPLCと比較すると、3ヶ月間の治療後に総子宮筋腫体積の有意な減少がみられた(PLC:6%;CDB-2914:-29%;p=0.01)。」
(2)上記(1)によれば、引用文献4には、酢酸ウリプリスタルが子宮筋腫の治療に有用であることが記載されている。
そうすると、引用文献4には、次のとおりの発明が記載されていると認められる。
「子宮筋腫の治療に有用である酢酸ウリプリスタル。」(以下「引用発明4」という。)
第5 対比及び判断
1 本願発明と引用発明1との対比・判断
(1)対比
本願発明において子宮筋腫の治療に使用する化合物が「酢酸ウリプリスタル」である場合の発明と引用発明1とを対比すると、両者は以下の点で一致し、また、以下の点で一応相違する。
<一致点>
「酢酸ウリプリスタル」
<一応の相違点>
本願発明は、酢酸ウリプリスタルに、「治療上有効な量で子宮筋腫の治療に使用する」という用途限定が付され、さらに、「少なくとも2回の治療期間のうち」、「後続治療期間に投与されることになっており、一つの治療期間は2~6ヶ月間続き、各治療期間の後に薬を使用しない期間が続く」ものであるとの用途限定が付されているのに対し、引用発明1は、酢酸ウリプリスタルに、上記のような用途限定は付されていない点。
(2)判断
上記一応の相違点の「治療上有効な量で子宮筋腫の治療に使用する」及び「少なくとも2回の治療期間のうち」、「後続治療期間に投与されることになっており、一つの治療期間は2~6ヶ月間続き、各治療期間の後に薬を使用しない期間が続く」という用途限定は、化合物である酢酸ウリプリスタルの有用性を示しているにすぎず、本願発明は、当該用途限定のない化合物である酢酸ウリプリスタルそのものであると解される(特許審査基準 第III部 第2章 第4節 3.1.1, 3.1.2, 3.1.3(1) 参照)。
したがって、用途限定の有無についての上記一応の相違点は、実質的な相違点とはいえないから、本願発明は、引用文献1に記載された発明である。
2 本願発明と引用発明4との対比・判断
(1)対比
本願発明において子宮筋腫の治療に使用する化合物が「酢酸ウリプリスタル」である場合の発明と引用発明4とを対比すると、両者は以下の点で一致し、また、以下の点で一応相違する。
<一致点>
「酢酸ウリプリスタル」
<一応の相違点>
本願発明は、酢酸ウリプリスタルに、「治療上有効な量で子宮筋腫の治療に使用する」という用途限定が付され、さらに、「少なくとも2回の治療期間のうち」、「後続治療期間に投与されることになっており、一つの治療期間は2~6ヶ月間続き、各治療期間の後に薬を使用しない期間が続く」ものであるとの用途限定が付されているのに対し、引用発明4は、酢酸ウリプリスタルに、上記のような用途限定は付されていない点。
(2)判断
上記1(2)において説示した理由と同様の理由により、用途限定の有無についての上記一応の相違点は、実質的な相違点とはいえないから、本願発明は、引用文献4に記載された発明である。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、令和1年6月26日提出の手続補正書(方式)の「4.本願発明が特許されるべき理由」の「(2)」において、「原査定において、本願発明は化合物の有用性を示しているにすぎないと解されておりますが、その記載表現全体を見れば、医薬組成物の発明であることは明らかであります。」(2頁下から4~2行)と主張している。
しかしながら、上記1(2)において説示したように、本願発明に係る請求項1の記載をみると、その末尾は、「酢酸ウリプリスタルまたは、CDB-3877、CDB-3963、CDB-3236若しくはCDB-4183から選択される何れかの代謝産物。」であるから、本願発明は、「酢酸ウリプリスタルまたは、CDB-3877、CDB-3963、CDB-3236若しくはCDB-4183から選択される何れかの代謝産物。」という化合物の発明と解され、「治療上有効な量で子宮筋腫の治療に使用する」及び「少なくとも2回の治療期間のうち」、「後続治療期間に投与されることになっており、一つの治療期間は2~6ヶ月間続き、各治療期間の後に薬を使用しない期間が続く」という記載は、化合物である酢酸ウリプリスタルやCDB-3877等の代謝産物の有用性を示しているにすぎないと解される(特許審査基準 第III部 第2章 第4節 3.1.1, 3.1.2, 3.1.3(1) 参照)。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
(2)請求人は、上記手続補正書(方式)において、請求項4-7に係る発明は特許されてしかるべきものであり、請求項4-7に係る発明について、その記載の末尾を、例えば「~を有効成分とする子宮筋腫の治療剤」のように補正する必要があれば、その旨対応する用意がある旨を主張している。
しかしながら、請求人は、請求項1~3に係る発明についての拒絶査定の理由については何ら反論していない。
そして、請求項1に係る発明である本願発明は、引用文献1又は4に記載された発明であることは、上記1及び2に説示したとおりである。
なお、請求項1~3を削除し、請求項4に係る発明の末尾を「~を有効成分とする子宮筋腫の治療剤」と補正したとしても、次に示すとおり、当合議体は、依然として拒絶理由が存するものと判断する。
引用文献4には、上記第4 2(2)の説示に加えて、酢酸ウリプリスタルを約2~約4ヶ月の期間にわたり投与すること、その期間を1年に1回又は2年ごとに反復することが記載されているから(請求項7~8、【0011】、【0041】、【0045】を参照)、引用文献4には、「酢酸ウリプリスタルを有効成分とする子宮筋腫の治療剤であって、酢酸ウリプリスタルを約2~約4ヶ月の期間にわたり投与し、当該期間を1年に1回又は2年ごとに反復するものである、治療剤。」の発明が記載されていると認められる。
引用文献4に記載された上記発明において、約2~約4ヶ月の期間にわたり酢酸ウリプリスタルを投与し、その後再び酢酸ウリプリスタルを投与するまでの間には、約8~10ヶ月程度の薬を使用しない期間が存在するものと認められるから、そうすると、その薬を使用しない期間には、請求項4に記載される「少なくとも1回の月経サイクル」が含まれるものと解される。
したがって、請求項4に係る発明の末尾を上記のように補正したとしても、当該補正がされた発明は、引用文献4に記載された発明であるといえる。
よって、請求人の上記主張を検討しても、本願は拒絶すべきものである。
4 小括
したがって、本願発明は引用文献1又は4に記載された発明である。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1又は4に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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