特許拒絶査定不服審判
2019-005670
ユーザが規定可能な関心領域を含む画像ガイダンスシステム
- 審判番号
- 2019-005670
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-545077外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年04月26日
- 審決日
- 2020年04月14日
- 公報発行日
- 2020年10月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 【請求人代理人】大貫 進介
- 分類
- P18 .121-Z (A61B) / P18 .575-Z (A61B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-545077「ユーザが規定可能な関心領域を含む画像ガイダンスシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月 2日国際公開、WO2015/044901、平成28年10月13日国内公表、特表2016-531713〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)9月26日(パリ条約による優先権主張 2013年9月30日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成30年4月20日付けで拒絶理由が通知され、同年11月5日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年12月25日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)されたところ、平成31年4月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
第2 平成31年4月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年4月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「 【請求項1】
画像ガイダンスシステムであって、当該システムは:
画像を生成するように構成された撮像システムであって、該撮像システムは、ユーザが前記画像内の関心領域を選択するユーザ選択を可能にするディスプレイを含み、前記画像及び前記関心領域を選択するユーザ選択は、画像座標系に関連する、撮像システムと;
前記画像内に可視化される1つ又は複数の対象物であって、該1つ又は複数の対象物の少なくとも1つは、追跡座標系に関連して空間的に追跡される装置であり、(1)前記追跡座標系と、(2)前記画像座標系とは、互いに異なる座標系を有する、1つ又は複数の対象物と;
前記画像座標系及び前記追跡座標系をグローバル座標系に位置合わせすることにより、前記画像、前記関心領域、及びリアルタイムの空間追跡データを結び付けて、前記1つ又は複数の対象物からの測定情報及び/又は前記グローバル座標系における前記撮像システム、前記関心領域、及び前記1つ又は複数の対象物の位置情報を提供するように構成された計算エンジンと;
前記撮像システム及び前記計算エンジンを結合して、前記画像及び前記関心領域の前記計算エンジンへの送信、及び前記測定情報及び/又は位置情報の前記撮像システムへの送信を可能にするように構成された双方向通信チャンネルと;を有する、
システム。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年11月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
画像ガイダンスシステムであって、当該システムは:
画像を生成するように構成された撮像システムであって、該撮像システムは、ユーザが前記画像内の関心領域を選択するユーザ選択を可能にするディスプレイを含む、撮像システムと;
前記画像内に可視化される1つ又は複数の対象物であって、(1)前記1つの対象物又は前記複数の対象物のうちの少なくとも1つと、(2)前記撮像システム又は前記関心領域とは、互いに異なる座標系を有する、1つ又は複数の対象物と;
前記撮像システムの座標系、前記関心領域の座標系、及び前記1つ又は複数の対象物の座標系による情報をグローバル座標系に結び付けて、前記1つ又は複数の対象物からの測定情報及び/又は前記グローバル座標系における前記撮像システム、前記関心領域、及び前記1つ又は複数の対象物の位置情報を提供するように構成された計算エンジンと;
前記撮像システム及び前記計算エンジンを結合して、前記画像及び前記関心領域の前記計算エンジンへの送信、及び前記測定情報及び/又は位置情報の前記撮像システムへの送信を可能にするように構成された双方向通信チャンネルと;を有する、
システム。」
2 補正の適否
本件補正は、「撮像システム」の「前記画像及び前記関心領域を選択するユーザ選択は、画像座標系に関連する」ものである旨の、「該1つ又は複数の対象物の少なくとも1つは、追跡座標系に関連して空間的に追跡される装置であ」る旨の、そして「(1)前記追跡座標系と、(2)前記画像座標系とは、互いに異なる座標系を有する」旨の限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献等の記載事項
ア 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特表2007-508913号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(引1a)「【0035】
図2は、本発明のいくつかの実施形態のプロセス200を示す。図1のプロセス100と同様に、プロセス200は患者の体内の所望位置に医療器具を誘導する。図2に示すように、プロセス200は、最初に(ステップ205において)所定の方向性から患者の標的部位の1つまたは2つ以上の2Dまたは3D術中画像を獲得する。次に、プロセスは(ステップ210において)患者の標的部位に対する手術器具の位置を追跡する。
【0036】
プロセスはその後(ステップ215において)患者の部位、患者の標的部位、および手術器具の術中画像を、共通の3D基準座標系内に位置合わせする。次に、プロセスは(ステップ220において)表示装置上に患者の標的部位の画像を描画する。プロセスはさらに(ステップ225において)画像上で患者の標的部位の空間的特徴(形状および位置)を指定する。その後、そのプロセスは(ステップ230において)手術器具の位置および方向性を標的の特徴に対して相関させる。プロセスは(ステップ235において)、標的の空間的特徴に対する手術器具の位置および方向性に関連する印(例えば、3次元形状、点、および/または線)を術中画像上に投影する。」
(引1b)「【0039】
図5および6はそれぞれ、本発明のいくつかの実施形態に従った代表的な外科手術の構成を示す。これらのシステムは、次のことを可能にする。
500mm以上の可撓性の内視鏡を1.8mmの位置精度および1°の方向性精度で追跡する。
ほぼ実時間でのナビゲーションのために、外部の3D超音波画像を獲得し、それらを処理する。
あらゆる再フォーマットされた3D超音波横断面画像上で、動的に標的を識別できるようにする。
任意に、強度に基づいた不透明度フィルタを用いて描画された動的なドップラー超音波データを、内視鏡画像上に重ねる。
呼吸を止めている間、5mmの精密化された標的精度で、10mmの全体的な粗い標的精度を提供する。
【0040】
図5のシステムでは、映像ソース500(例えば、顕微鏡またはビデオカメラ)が、映像信号501を生成するのに使用される。後述するいくつかの実施形態では、映像ソース500は内視鏡システムである。術中イメージングシステム502(例えば、超音波システム)は、術中イメージングデータ・ストリーム103を捕捉する。情報は、超音波ディスプレイ504上に表示される。
【0041】
追跡可能な術中イメージングプローブ505も、1つまたは2つ以上の追跡可能な手術ツール506中に配置される。他のツールは、追跡可能な内視鏡507またはあらゆる術中映像ソースを包含する。追跡装置508は、追跡データストリーム510を通信する追跡ワイヤ509を有する。ナビゲーションインタフェース512を備えたナビゲーションシステム511が提供されて、ユーザが、術中ビデオ画像513(透視図)を用いて作業を行うことが可能になる。映像ソースがなければこれは削除され得る。
【0042】
第1のターゲティングマーカー514(視野外の標的を指す)および第2のターゲティングマーカー515(視野内の標的を指す)を使用することができる。術中画像516および病変標的の画像517は、正射像519(外部の視界)として手術ツールまたは映像ソース518(例えば、内視鏡)の仮想表示で示される。さらに、あらゆる任意の3D形状(解剖学的表現またはツール表現)の画像のオーバレイ520も示すことができる。
【0043】
図6は、別の代表的な手術の設定を示す。図6では、いくつかの赤外線映像カメラが患者の画像を捕らえる。超音波プローブは、患者の中における超音波センサの位置を決める。その後、内視鏡などの手術ツールが患者の中で配置される。赤外線映像カメラは、センサの位置をコンピュータに報告し、コンピュータは次に、3D画像の再構成を生成するワークステーションに収集した情報を転送する。ワークステーションも、データを登録し、操作し、スクリーン上に患者データを視覚化する。ワークステーションはまた、患者の2D画像を捕捉する超音波機械からデータを受け取る。」
(引1c)「【0067】
手術室では、患者は通常の方法で位置付けられる。光学追跡システムは、患者の頭の上方で、その側部に配置される。クロマキー技術は、点滅するマーカーを自動的に識別して、患者の物理的な解剖学的構造を3D画像データセットに対して自動的かつ連続的に位置合わせし、重ね合わせることを可能にする。クロマキーは、3D空間中で、既知の周波数を備えた発光する対象物(例えば、患者の頭部に付けられた点滅する発光ダイオード)を独自に検出することを可能にする映像特殊効果技術である。ダイオードマーカーもまた、定位の空間において追跡するために、従来の超音波プローブおよび手術ツール(例えば、プローブ、メス)に加えることができる。クロマキー技術を使用して、マーカーは自動的に認識され、位置合わせされた3D画像のディスプレイに重ねられる。」
イ 引用文献1に記載された発明
(ア)上記(引1a)より、引用文献1には、以下の事項が記載されている。
「患者の体内の所望位置に医療器具を誘導するプロセス200において、
所定の方向性から患者の標的部位の1つまたは2つ以上の2Dまたは3D術中画像を獲得するステップ205と、
患者の標的部位に対する手術器具の位置を追跡するステップ210と、
患者の部位、患者の標的部位、および手術器具の術中画像を、共通の3D基準座標系内に位置合わせするステップ215と、
表示装置上に患者の標的部位の画像を描画するステップ220と、
画像上で患者の標的部位の空間的特徴(形状および位置)を指定するステップ225と、
手術器具の位置および方向性を標的の特徴に対して相関させるステップ230と、
標的の空間的特徴に対する手術器具の位置および方向性に関連する印(例えば、3次元形状、点、および/または線)を術中画像上に投影するステップ235とからなる
プロセス200。」
(イ)上記(引1b)及び(引1c)より、引用文献1には、以下の事項が記載されている。
「500mm以上の可撓性の内視鏡を1.8mmの位置精度および1°の方向性精度で追跡し、
ほぼ実時間でのナビゲーションのために、外部の3D超音波画像を獲得し、それらを処理し、
あらゆる再フォーマットされた3D超音波横断面画像上で、動的に標的を識別できるようにすることが可能なシステムにおいて、
システムは、映像ソース500が、映像信号501を生成するのに使用され、
映像ソース500は内視鏡システムであり、
術中イメージングシステム502(例えば、超音波システム)は、術中イメージングデータ・ストリーム103を捕捉し、
情報は、超音波ディスプレイ504上に表示され、
追跡可能な術中イメージングプローブ505も、1つまたは2つ以上の追跡可能な手術ツール506中に配置され、
視野内の標的を指す第2のターゲティングマーカー515を使用することができ、
赤外線映像カメラが患者の画像を捕らえ、
超音波プローブは、患者の中における超音波センサの位置を決め、
手術ツールが患者の中で配置され、
赤外線映像カメラは、センサの位置をコンピュータに報告し、コンピュータは次に、3D画像の再構成を生成するワークステーションに収集した情報を転送し、
ワークステーションも、データを登録し、操作し、スクリーン上に患者データを視覚化し、
光学追跡システムは、患者の頭の上方で、その側部に配置され、
超音波プローブおよび手術ツールを定位の空間において追跡するために、マーカーは自動的に認識され、位置合わせされた3D画像のディスプレイに重ねられる
システム。」
(ウ)上記(イ)の「システム」が、「3D超音波横断面画像上で、動的に標的を識別できるようにする」ためのプロセスとして、上記(ア)の「プロセス」を使用していることは明らかであって、上記(引1a)の「医療器具」、「手術器具」及び(引1b)の「手術ツール」は、いずれも同じものを指していることから、「手術器具」で整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。」が記載されている。
「500mm以上の可撓性の内視鏡を1.8mmの位置精度および1°の方向性精度で追跡し、
ほぼ実時間でのナビゲーションのために、外部の3D超音波画像を獲得し、それらを処理し、
あらゆる再フォーマットされた3D超音波横断面画像上で、動的に標的を識別できるようにすることが可能なシステムにおいて、
システムは、映像ソース500が、映像信号501を生成するのに使用され、
映像ソース500は内視鏡システムであり、
術中イメージングシステム502(例えば、超音波システム)は、術中イメージングデータ・ストリーム103を捕捉し、
情報は、超音波ディスプレイ504上に表示され、
追跡可能な術中イメージングプローブ505も、1つまたは2つ以上の追跡可能な手術ツール506中に配置され、
視野内の標的を指す第2のターゲティングマーカー515を使用することができ、
赤外線映像カメラが患者の画像を捕らえ、
超音波プローブは、患者の中における超音波センサの位置を決め、
手術器具が患者の中で配置され、
赤外線映像カメラは、センサの位置をコンピュータに報告し、コンピュータは次に、3D画像の再構成を生成するワークステーションに収集した情報を転送し、
ワークステーションも、データを登録し、操作し、スクリーン上に患者データを視覚化し、
光学追跡システムは、患者の頭の上方で、その側部に配置され、
超音波プローブおよび手術ツールを定位の空間において追跡するために、マーカーは自動的に認識され、位置合わせされた3D画像のディスプレイに重ねられるシステムであって、
患者の体内の所望位置に手術器具を誘導するプロセス200において、
所定の方向性から患者の標的部位の1つまたは2つ以上の2Dまたは3D術中画像を獲得するステップ205と、
患者の標的部位に対する手術器具の位置を追跡するステップ210と、
患者の部位、患者の標的部位、および手術器具の術中画像を、共通の3D基準座標系内に位置合わせするステップ215と、
表示装置上に患者の標的部位の画像を描画するステップ220と、
画像上で患者の標的部位の空間的特徴(形状および位置)を指定するステップ225と、
手術器具の位置および方向性を標的の特徴に対して相関させるステップ230と、
標的の空間的特徴に対する手術器具の位置および方向性に関連する印(例えば、3次元形状、点、および/または線)を術中画像上に投影するステップ235とからなる
プロセス200を有する
システム。」
ウ 参考文献に記載された事項
(ア)参考文献1に記載された事項
本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2005-312698号公報(以下「参考文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(参1a)「【背景技術】
【0002】
最近のMRI装置の臨床適用として、心臓イメージング、手術時の穿刺モニタリング、経皮治療などにMRI装置をモニタとして使用するインターベンショナルMRIあるいはイントラオペラティブMRI(I-MRI)がある。このI-MRIでは、リアルタイムで撮像断層面を変更したいという要望があり、種々の手法が提案されている。そのうち、特許文献1や特許文献2には、断層面指示デバイスとそれを検出する赤外線カメラを用いて所望の撮像断層面を決定する手法が提案されている。断層面指示デバイスは、自ら光を発生する発光ダイオードや光を反射する反射球などを所定の配置で固定したものであり、通常、ポインタと呼ばれている。このようなポインタで指示した位置を赤外線カメラが検出し、この位置情報をMRIにおける位置情報に変換してMRI装置に渡すことにより、ISC撮像が可能となる。位置情報の変換は、赤外線カメラの出力を受け取る専用のパーソナルコンピュータ(PC)で行われ、変換後の位置情報がMRI装置に渡される。」
(参1b)「【0011】
またこのMRI装置は、ISC撮像を行うための機構として、操作者30が操作する術具27の位置を検出するための2台の赤外線カメラ21を搭載した三次元位置検出装置(以下、単に位置検出装置という)20と、位置検出装置20からの位置情報をRS232ケーブル等のケーブル22を介して入力し、MRI装置の装置座標に座標変換を行う計算機(PC:パーソナルコンピュータ)23と、MRI装置の任意の場所に固定された基準ツール25とを備えている。図示していないが、術具27には基準ツール25と同様のツール(ポインタツール)が固定されており、これらツールには赤外線カメラ21が検出可能なポインタ(例えば発光ダイオードや反射球)26が所定の配置で固定されている。」
(参1c)「【0014】
PC23は、赤外線カメラ21からの位置情報を、予め初期化データとして記憶された所定の座標変換行列を用いて装置座標系の位置情報に変換し、制御部15に渡す。PC23には、座標変換に必要なデータとして、基準ツール25及びポインタツール210の属性及び初期化データが格納される。基準ツール25及びポインタツール210の属性は、ツール25を登録することにより作成される。また初期化データは後述するレジストレーション処理により自動的に作成され格納される。なお、図示する実施形態では、PC23は三次元位置検出装置専用のPCを用いているが、制御部15内に同じ機能を持たせることも可能である。
【0015】
MRI装置によるISC撮像は、すでに述べたように、ベッド11に寝かせられた被検体1の所望の断面(位置と断面の方向)を、ポインタツールを固定した術具27を用いて指示し、リアルタイムでその断面を撮像する機能であり、赤外線カメラ21で検出したポインタツールの位置情報(カメラ座標系の座標)をMRI装置の装置座標に変換して、位置と断面方向を指示するDICOM形式の位置情報としてMRI装置に送り、所望断面を撮像する。レジストレーションは、このようなISC撮像の前提として行われるもので、このカメラ座標から装置座標への変換を行うために、予め位置検出装置のカメラ座標とMRI装置の装置座標とを関連つける手順であり、具体的には、座標変換行列を作成する手続である。
【0016】
MRI装置10、位置検出装置20、基準ツール25及びポインタツール210の座標系(装置座標系、カメラ座標系、ポインタ座標系、及び基準座標系)とそれらの関係を図3(a)及び(b)に示す。装置座標系は、MRI装置の磁場中心を原点とする座標系で、位置検出装置の座標系は、一対のカメラの中心を原点とするカメラ座標系で、基準ツール及びポインタツールの座標系は、それぞれ複数のポインタの一つ(中央のもの)の位置を原点とする座標系である。ここで座標変換行列を以下のように定義する。
[BQ]:カメラ座標系から基準座標系への変換行列
[PQ]:カメラ座標系からポインタ座標系への変換行列
[CM]:カメラ座標系から装置座標系への変換行列
[BM]:基準座標系から装置座標系への変換行列
[PM]:初期位置のポインタ座標系から装置座標系への変換行列」
(イ)参考文献2に記載された事項
本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2000-350733号公報(以下「参考文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(参2a)「【0047】図4は、術中ナビゲーションを想定するのに必要な座標系間の関係を表したものである。同図において、手術を受けるべき被検体27、手術に使用すべき術具28、被検体27と術具28の3次元位置姿勢を測定するセンサである上記3次元位置センサ24があり、上記検査画像撮影装置22によって被検体27の手術すべき患部を含む検査画像が撮影されたことにより規定された検査画像座標系29、上記3次元位置センサ24及び被検体27の対象物を含めて手術室内で定義される実空間座標系30、術具28が規定する座標系である術具座標系31を考えることができる。これらの座標系を符合化するために、各座標系間の座標変換パラメータを規定することが必要であり、検査画像座標系29から実空間座標系30への座標変換32を規定する座標変換パラメータWHP、実空間座標系30から術具座標系31への座標変換33を規定する座標変換パラメータEHW、検査画像座標系29から術具座標系31への座標変換34を規定する座標変換パラメータEHPを考えることができる。
【0048】図5は、PC25で実行される上記ステップS2の術中ナビゲーション処理の基本フローチャートを表したものである。
【0049】即ち、まず、該術中ナビゲーション処理を終了するか否かをチェックし(ステップS21)、まだ終了しない場合には、検査画像座標系29から実空間座標系30への座標変換WHPを算出する(ステップS22)。これは、前述したステップS1での手術ナビゲーション処理で得られた結果を利用する。
【0050】続いて、実空間座標系30から術具座標系31への座標変換EHWを算出する(ステップS23)。このためには、実空間上に配置された3次元位置センサ24を利用して、術具28の3次元位置姿勢を計測することにより、その座標変換を算出する。
【0051】次に、検査画像座標系29から術具座標系31への座標変換EHPを算出する(ステップS24)。これは、上記ステップS22,S23で算出された結果を利用することにより行う。具体的には、
EHP=EHW WHP
の4×4の行列の乗算により実現する。
【0052】そして最後に、上記ステップS24で算出した検査画像座標系29から術具座標系31への座標変換EHPを利用して、(1)術具28が検査画像座標系29でどの位置にあるのか、また、(2)検査画像座標系29内で定義された患部が術具座標系31のどこに存在するのか、を算出することにより、手術に必要なナビゲーション情報を算出し、それをモニタ26に表示することになる(ステップS25)。」
(ウ)参考文献3に記載された事項
本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、再公表2003-026505号公報(以下「参考文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(参3a)「基準ツール17は、赤外線カメラ25の座標系とMRI装置の座標系をリンクさせるもので、3つの反射球35を備え、上部磁石3の側面に設けられている。パーソナルコンピュータ19には、赤外線カメラ25が検出し算出したポインタ27の位置が、位置データとして、例えば、RS232Cケーブル33を介して送信される。制御部23は、ワークステーションで構成され、図示しないRF送信器、RF受信器などを制御する。また、制御部23は、パーソナルコンピュータ19と接続されている。」(6頁26-31行)
(参3b)「先ず、ポインタ27の位置をMRI装置の座標で認識するため、MRI装置の座標系と赤外線カメラ25の座標系とをリンクさせる必要があり、そのために初期化が行われる。この初期化の手順を図4に示すフローチャートを用いて説明する。
初期化は、赤外線カメラ25を固定して基準ツール17を検出するステップS1、赤外線カメラ25の座標系における基準ツール17の座標を算出するステップS2、初期化ファントムによりMRI装置の座標系を設定するステップS3、赤外線カメラ25の座標系とMRI装置の座標系との傾きを算出するステップS4、赤外線カメラ25の座標系とMRI装置の座標系との傾きと赤外線カメラ25の座標系における基準ツール17の座標とからMRI装置の座標系における基準ツール17の座標を算出するステップS4、初期値として保存するステップ5などの手順を含んでいる。
具体的には、ステップS1で、赤外線カメラ25を一箇所に固定して、赤外線カメラ25により基準ツール17を撮影して、基準ツール17を検出する。ステップS2で、予め設定された赤外線カメラ25の座標系で、基準ツール17の座標を算出する。ステップS3で、初期化ファントムを用いてMRI装置の座標系を設定する。初期化ファントムとは、MRI装置で撮影して位置が解析できるようにしたファントムである。この初期化ファントムをMRI装置に設置して、初期化ファントムのある点を示すことにより指した位置がMRI装置の座標系のどの位置かが解析できる。つまり、初期化ファントムがMRI装置の座標系となる。このとき、ポインタ27を初期化用のポインタ27として使用する。例えば、ポインタ27をMRI装置の座標系で(x,y,z)=(40,0,0)という座標に置く。このときの座標を赤外線カメラ25で検出する。これを3箇所で行う。
ステップS4で、MRI装置の座標系と赤外線カメラ25の座標系との傾きを計算で求める。ステップS5で、赤外線カメラ25の座標系とMRI装置の座標系との傾きと、赤外線カメラ25で検出された赤外線カメラ25の座標系における基準ツール17の座標から、基準ツール17の座標系とMRI装置の座標系の回転がわかる。このとき、基準ツール17は、MRI装置に固定されているので、基準ツール17とMRI装置の回転は一定となる。ステップS6で、この回転を初期データとして保存して、初期化が終了する。
ここで、赤外線カメラ25の位置や向きが変わると、赤外線カメラ25で検出される基準ツール17の座標が変化するが、MRI装置の座標系への変換のマトリックスは一定なので、赤外線カメラ25が移動しても常にMRI装置の座標系での位置が検出できる。このようにして、基準ツール17を介してMRI装置の座標系と赤外線カメラ25の座標系とをリンクさせることにより、赤外線カメラ25の移動に耐えることができる。
ここで、基準ツール17は、3つの反射球35を有する1つの剛体として検出される。このとき、3つの反射球35の位置関係は予めインプットされているので、剛体としての原点と座標系があり、この座標系が赤外線カメラ25の座標系に対してどのように傾いているかいった情報により、MRI装置と赤外線カメラ25の座標系をリンクすることができる。つまり、赤外線カメラ25は、基準ツール17を検出することによりMRI装置に対して、自分がどこにいるのか認識できる。ポインタ27の位置を認識するため、赤外線カメラ25は、基準ツール17とポインタ27とを両方検出していなければならない。このように、本実施形態では、2台の赤外線カメラ25で、撮影断面を示すポインタ27と基準ツール17を同時に検出する。
初期化が終了したMRI装置で頭部を撮影する場合、患者である被検体24は、図1に示すように、ベッド21に乗せられ、オープン型のガントリー1の開口部32に頭部を挿入される。ポインタ27は、術者である操作者29が手に持ち固定されている。撮影の開始は、制御部23から入力され、撮影開始の入力が成されると、パーソナルコンピューッタ19がポインタ27の位置計測を開始する。計測されたポインタ27の位置情報はパーソナルコンピュータ19へ取り込まれ撮影断面の位置情報へ、そして傾斜磁場コイルの印加情報へ変換され、制御部23へ計測タイミング毎に順次送られる。この傾斜磁場印加情報によって順次撮影が行われ、取得された画像はモニタ13へ順次表示される。操作者29は、モニタ13へ表示された画像を観察しながら、検査部位を最もよく表すようにポインタ27の位置を変えながら検査または治療をおこなう。操作者がポインタ27の位置を変えると、ポインタ27と基準ツール17は、赤外線カメラ25で常にその位置が計算される。このとき、データ更新レートは、2~20セット/s程度が良い。ポインタ27の位置データは、パーソナルコンピュータ19に、例えばRS232Cケーブル33を介して送られる。位置データは、MRIフルオロスコピィシーケンスの撮影断面へ、例えば0.5s以内に反映される。撮影シーケンスは、TRSGシーケンスや、SGシーケンス、マルチショットEPIなどのフルオロスコピィ用シーケンスである。これらのシーケンスでは、0.5s~4s毎に画像が更新できる。これによりポインタ27で指示された新たな撮影断面で取得された画像は液晶モニタ13に表示される」
(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「システム」は、「500mm以上の可撓性の内視鏡を1.8mmの位置精度および1°の方向性精度で追跡し、ほぼ実時間でのナビゲーションのために、外部の3D超音波画像を獲得し、それらを処理し、あらゆる再フォーマットされた3D超音波横断面画像上で、動的に標的を識別できるようにすることが可能なシステム」であるから、本件補正発明の「画像ガイダンスシステム」に相当する。
(イ)引用発明の「術中イメージングデータ・ストリーム103を捕捉」する「術中イメージングシステム502(例えば、超音波システム)」は、本件補正発明の「画像を生成するように構成された撮像システム」に相当する。
(ウ)引用発明の「視野内の標的」は、本件補正発明の「関心領域」に相当する。そして、引用発明は、「視野内の標的を指す第2のターゲティングマーカー515を使用することができ」、「第2のターゲティングマーカー515」は、「ワークステーション」の「スクリーン」上にあって、ユーザが操作するものであることは明らかであるから、引用発明の「視野内の標的を指す第2のターゲティングマーカー515を使用することができ」る「スクリーン」は、本件補正発明の「ユーザが前記画像内の関心領域を選択するユーザ選択を可能にするディスプレイ」に相当する。そして、引用発明の「ワークステーション」の「スクリーン」は、「ほぼ実時間でのナビゲーションのために、外部の3D超音波画像を獲得し、それらを処理し、あらゆる再フォーマットされた3D超音波横断面画像上で、動的に標的を識別できるようにすることが可能なシステム」に含まれるものである。また、この「スクリーン」には、「外部の3D超音波画像」である「術中イメージングシステム502」からの画像を表示し、「視野内の標的を指す第2のターゲティングマーカー515」を、この画像に反映しているものである。
そうすると、引用発明の「ワークステーション」の「スクリーン」は、「術中イメージングシステム502」に含まれているといえるから、引用発明の「視野内の標的を指す第2のターゲティングマーカー515を使用することができ」る「ワークステーション」の「スクリーン」を含む「術中イメージングシステム502」は、本件補正発明の「画像を生成するように構成された撮像システムであって、該撮像システムは、ユーザが前記画像内の関心領域を選択するユーザ選択を可能にするディスプレイを含み、前記画像及び前記関心領域を選択するユーザ選択は、画像座標系に関連する、撮像システム」に相当する。
(エ)引用発明の「手術器具」は、本件補正発明の「対象物」に相当する。そして、引用発明は「標的の空間的特徴に対する手術器具の位置および方向性に関連する印(例えば、3次元形状、点、および/または線)を術中画像上に投影する」から、引用発明の「標的の空間的特徴に対する手術器具の位置および方向性に関連する印(例えば、3次元形状、点、および/または線)」として「術中画像上に投影」される「手術器具」は、本件補正発明の「前記画像内に可視化される1つ又は複数の対象物」に相当する。
(オ)引用発明の「共通の3D基準座標系」は、本件補正発明の「グローバル座標系」に相当する。そして、引用発明の「システム」は、「患者の標的部位に対する手術器具の位置を追跡」し、「患者の部位、患者の標的部位、および手術器具の術中画像を、共通の3D基準座標系内に位置合わせする」から、引用発明の「システム」と、本件補正発明の「装置」とは、「該1つ又は複数の対象物の少なくとも1つは、座標系に関連して空間的に追跡される装置」である点で共通する。
(カ)引用発明の「手術器具」は、「術中画像上に投影」され、「術中画像」は、「ほぼ実時間でのナビゲーションのため」の画像であるから、引用発明の「標的の空間的特徴に対する手術器具の位置および方向性に関連する印(例えば、3次元形状、点、および/または線)を術中画像上に投影する」ことは、本件補正発明の「前記画像、前記関心領域、及びリアルタイムの空間追跡データを結び付け」ることに相当する。
そして、引用発明の「ワークステーション」は、「赤外線映像カメラ」が「収集した」「センサの位置」の「情報」は、「3D画像の再構成を生成するワークステーションに」「転送」され、「ワークステーション」は、「データを登録し、操作し、スクリーン上に患者データを視覚化するシステムであ」ることから、「標的の空間的特徴に対する手術器具の位置および方向性に関連する印(例えば、3次元形状、点、および/または線)を術中画像上に投影」した「術中画像」は、「ワークステーション」の「スクリーン」上に表示される。
そうすると、引用発明の「患者の部位、患者の標的部位、および手術器具の術中画像」の、「共通の3D基準座標系内」への「位置合わせ」は、「ワークステーション」内のシステムにより行われるものであるから、引用発明の「所定の方向性から患者の標的部位の1つまたは2つ以上の2Dまたは3D術中画像を獲得」し、「患者の標的部位に対する手術器具の位置を追跡」し、「患者の部位、患者の標的部位、および手術器具の術中画像を、共通の3D基準座標系内に位置合わせ」し、「表示装置上に患者の標的部位の画像を描画」し、「画像上で患者の標的部位の空間的特徴(形状および位置)を指定」し、「手術器具の位置および方向性を標的の特徴に対して相関させ」、「標的の空間的特徴に対する手術器具の位置および方向性に関連する印(例えば、3次元形状、点、および/または線)を術中画像上に投影する」「ワークステーション」内のシステムと、本件補正発明の「前記画像座標系及び前記追跡座標系をグローバル座標系に位置合わせすることにより、前記画像、前記関心領域、及びリアルタイムの空間追跡データを結び付けて、前記1つ又は複数の対象物からの測定情報及び/又は前記グローバル座標系における前記撮像システム、前記関心領域、及び前記1つ又は複数の対象物の位置情報を提供するように構成された計算エンジンと」は、「グローバル座標系に位置合わせすることにより、前記画像、前記関心領域、及びリアルタイムの空間追跡データを結び付けて、前記1つ又は複数の対象物からの測定情報及び/又は前記グローバル座標系における前記撮像システム、前記関心領域、及び前記1つ又は複数の対象物の位置情報を提供するように構成された計算エンジン」である点で共通する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)「画像ガイダンスシステムであって、当該システムは:
画像を生成するように構成された撮像システムであって、該撮像システムは、ユーザが前記画像内の関心領域を選択するユーザ選択を可能にするディスプレイを含み、前記画像及び前記関心領域を選択するユーザ選択を有する、撮像システムと;
前記画像内に可視化される1つ又は複数の対象物であって、該1つ又は複数の対象物の少なくとも1つは、空間的に追跡される装置であり;
グローバル座標系に位置合わせすることにより、前記画像、前記関心領域、及びリアルタイムの空間追跡データを結び付けて、前記1つ又は複数の対象物からの測定情報及び/又は前記グローバル座標系における前記撮像システム、前記関心領域、及び前記1つ又は複数の対象物の位置情報を提供するように構成された計算エンジンと;を有する、
システム。」
(相違点1)計算エンジンによる、前記画像、前記関心領域、及びリアルタイムの空間追跡データを結び付けて、前記1つ又は複数の対象物からの測定情報及び/又は前記グローバル座標系における前記撮像システム、前記関心領域、及び前記1つ又は複数の対象物の位置情報の提供が、本件補正発明は、「前記画像及び前記関心領域を選択するユーザ選択」「に関連する」「画像座標系」と、「該1つ又は複数の対象物の少なくとも1つ」を「空間的に追跡される装置」「に関連」する「追跡座標系」とを有し、「(1)前記追跡座標系と、(2)前記画像座標系とは、互いに異なる座標系」であり、「前記画像座標系及び前記追跡座標系をグローバル座標系に位置合わせすることにより」行われているのに対し、引用発明は、「患者の部位、患者の標的部位、および手術器具の術中画像を、共通の3D基準座標系内に位置合わせする」ものであって、「患者の部位、患者の標的部位、および手術器具」がどのような座標を有しているのか特定されていない点。
(相違点2)本件補正発明が、「前記撮像システム及び前記計算エンジンを結合して、前記画像及び前記関心領域の前記計算エンジンへの送信、及び前記測定情報及び/又は位置情報の前記撮像システムへの送信を可能にするように構成された双方向通信チャンネル」を有しているのに対し、引用発明の「術中イメージングシステム502」と「ワークステーション」との間の通信に対し、そのような特定がない点。
(4)判断
上記相違点1及び2について検討する。
ア 相違点1について
(ア)参考文献1の「装置座標系」、「カメラ座標系」及び「基準座標系」、参考文献2の「検査画像座標系」、「術具座標系」及び「実空間座標系」は、それぞれ本件補正発明の「前記画像座標系」、「前記追跡座標系」及び「グローバル座標系」に相当する。そして、参考文献1及び2の各座標系は、ともに、互いに異なる座標系である。
また、参考文献1は、「リアルタイムでその断面を撮像する機能であり、赤外線カメラ21で検出したポインタツールの位置情報(カメラ座標系の座標)をMRI装置の装置座標に変換して、位置と断面方向を指示するDICOM形式の位置情報としてMRI装置に送」っており、参考文献2は、「検査画像座標系29から術具座標系31への座標変換EHPを利用して、(1)術具28が検査画像座標系29でどの位置にあるのか、また、(2)検査画像座標系29内で定義された患部が術具座標系31のどこに存在するのか、を算出する」ものであるから、参考文献1及び2には、ともに、互いに異なる座標系からなる座標系同士を位置あわせすることにより、位置情報を算出する技術が記載されているから、該技術は周知技術であるといえる。
(イ)引用発明の「手術器具」及び「超音波プローブ」は、「患者の頭の上方で、その側部に配置され」た「光学追跡システム」により「定位の空間において追跡するために、マーカーは自動的に認識され」るものであるから、「光学追跡システム」により追跡される「手術器具」及び「超音波プローブ」の座標系は、適宜設定されるものであって、それぞれ互いに異なる座標系で測定し、測定された座標系を位置あわせすることにより、位置情報を算出する技術は周知技術であるから、引用発明の「患者の部位、患者の標的部位、および手術器具の術中画像を、共通の3D基準座標系内に位置合わせする」際の「患者の部位、患者の標的部位、および手術器具」の座標として、それぞれ互いに異なる座標を適用し、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できたことであるといえる。
イ 相違点2について
(ア)参考文献1には、「位置情報の変換は、赤外線カメラの出力を受け取る専用のパーソナルコンピュータ(PC)で行われ、変換後の位置情報がMRI装置に渡され」、「PC23は、赤外線カメラ21からの位置情報を、予め初期化データとして記憶された所定の座標変換行列を用いて装置座標系の位置情報に変換し、制御部15に渡」し、「カメラ座標から装置座標への変換を行うために、予め位置検出装置のカメラ座標とMRI装置の装置座標とを関連つける」ために、「MRI装置10、位置検出装置20、基準ツール25及びポインタツール210の座標系(装置座標系、カメラ座標系、ポインタ座標系、及び基準座標系)とそれらの関係」を使うものであり、「PC23は」、「装置座標系の位置情報」を「MRI装置10」の「制御部15に渡」している。そして、「カメラ座標から装置座標への変換を行うために、予め位置検出装置のカメラ座標とMRI装置の装置座標とを関連つける」ために、「MRI装置10」の座標を使用していることから、「PC23は」、「MRI装置10」の座標を「MRI装置10」の「制御部15」から受け取っているものである。
そうすると、参考文献1の「PC23」と「制御部15」とは、データを双方向に通信しているものであるから、「PC23」と「MRI装置10」との間に、双方向通信チャンネル点があるといえる。
(イ)参考文献3の「MRI装置」の「制御部23は、パーソナルコンピュータ19と接続され」、「ポインタ27の位置をMRI装置の座標で認識するため」「に初期化が行われ」、「初期化は、赤外線カメラ25を固定して基準ツール17を検出するステップS1、赤外線カメラ25の座標系における基準ツール17の座標を算出するステップS2、初期化ファントムによりMRI装置の座標系を設定するステップS3、赤外線カメラ25の座標系とMRI装置の座標系との傾きを算出するステップS4、赤外線カメラ25の座標系とMRI装置の座標系との傾きと赤外線カメラ25の座標系における基準ツール17の座標とからMRI装置の座標系における基準ツール17の座標を算出するステップS4、初期値として保存するステップ5などの手順を含んで」おり、「撮影の開始は、制御部23から入力され、撮影開始の入力が成されると、パーソナルコンピューッタ19がポインタ27の位置計測を開始する。計測されたポインタ27の位置情報はパーソナルコンピュータ19へ取り込まれ撮影断面の位置情報へ、そして傾斜磁場コイルの印加情報へ変換され、制御部23へ計測タイミング毎に順次送られる」。ここで、「MRI装置の座標系」は、「MRI装置」の「制御部23」から、「パーソナルコンピュータ19」に送られるものであり、「計測されたポインタ27の位置情報はパーソナルコンピュータ19へ取り込まれ撮影断面の位置情報へ、そして傾斜磁場コイルの印加情報へ変換され、制御部23へ計測タイミング毎に順次送られる」から、参考文献3の「MRI装置」と「パーソナルコンピュータ19」との間に、双方向通信チャンネルがあるといえる。
(ウ)上記(ア)及び(イ)より、参考文献1の「PC23」及び「MRI装置10」、参考文献3の「パーソナルコンピュータ19」及び「MRI装置」は、それぞれ、引用発明の「ワークステーション」及び「術中イメージングシステム502」に相当するから、「ワークステーション」と「術中イメージングシステム502」との間を双方向通信チャンネルとすることは周知技術であるといえる。
(エ)引用発明の「標的の空間的特徴に対する手術器具の位置および方向性に関連する印(例えば、3次元形状、点、および/または線)を術中画像上に投影」した「術中画像」は、「ワークステーション」の「スクリーン」上に表示されるものであるから、引用発明において、「術中画像」は、「術中イメージングシステム502」から「ワークステーション」へ送信されているものの、「標的の空間的特徴に対する手術器具の位置および方向性に関連する印(例えば、3次元形状、点、および/または線)を術中画像上に投影」した「術中画像」は、「ワークステーション」から「術中イメージングシステム502」に送信されていないから、「ワークステーション」と「術中イメージングシステム502」との間の通信は、双方向とはなっていない。
しかしながら、「標的の空間的特徴に対する手術器具の位置および方向性に関連する印(例えば、3次元形状、点、および/または線)を術中画像上に投影」した「術中画像」を、どのディスプレイに表示するかは、手術環境等に応じ、適宜選択されるものであって、「超音波ディスプレイ504」上に表示することは、当該技術分野において常套手段にすぎず、その場合の「標的の空間的特徴に対する手術器具の位置および方向性に関連する印(例えば、3次元形状、点、および/または線)を術中画像上に投影」した「術中画像」は、「ワークステーション」から「術中イメージングシステム502」に送信されることとなるから、「ワークステーション」と「術中イメージングシステム502」との間の通信は、双方向となる。そして、上記(ウ)で検討したとおり、「ワークステーション」及び「術中イメージングシステム502」との間を双方向通信チャンネルとすることは周知であるといえるから、引用発明の「術中イメージングシステム502」と「ワークステーション」との間の構成を、双方向通信チャンネルを有する構成とすることは、当業者が容易に想到できたことであるといえる。
ウ 効果について
本件補正発明の奏する作用効果は、引用文献1に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
エ 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成31年4月26日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年11月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特表2007-508913号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「撮像システム」の「前記画像及び前記関心領域を選択するユーザ選択は、画像座標系に関連する」ものである旨の、「該1つ又は複数の対象物の少なくとも1つは、追跡座標系に関連して空間的に追跡される装置であ」る旨の、そして、「(1)前記追跡座標系と、(2)前記画像座標系とは、互いに異なる座標系を有する」旨の限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-005670