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特許拒絶査定不服審判

2019-004053

向上したエネルギー密度を有するエネルギー貯蔵装置

審判番号
2019-004053
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2016-519653外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年03月27日
審決日
2020年03月09日
公報発行日
2020年09月25日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .113-Z (H01G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2016-519653「向上したエネルギー密度を有するエネルギー貯蔵装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月18日国際公開、WO2014/201279、平成28年 7月14日国内公表、特表2016-521017〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成26年6月12日(優先権主張 2013年6月14日、米国)を国際出願日とする特許出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。 平成30年2月26日付け  :拒絶理由通知書 平成30年6月14日    :意見書、手続補正書の提出 平成30年11月27日付け :拒絶査定 平成31年3月27日    :審判請求書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1ないし30に係る発明は、平成30年6月14日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし30に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「  【請求項1】 最終的な製品のエネルギー貯蔵装置であって、 容器と、 第1電極と、 第2電極と、 上記第1電極と上記第2電極との間のセパレータとを備え、 上記第1電極、上記第2電極、および上記セパレータは、上記容器内にあり、 上記容器内にある電解質をさらに備え、 上記電解質は、電解質の飽和量とその104%との間の総質量を有し、 上記電解質の飽和量は、上記セパレータ、上記第1電極、および上記第2電極の接触可能なスペースを飽和させるために必要とされる上記容器における電解質の最小量であることを特徴とするエネルギー貯蔵装置。」 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶理由のうちの理由2は、この出願の請求項1ないし5、7、9ないし13、15ないし19、21ないし22、25ないし26、28ないし29に係る発明は、本願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2007-116102号公報 第4 引用文献1の記載事項 引用文献1には、「電気二重層キャパシタ」に関して、図面とともに、次の記載がある(下線は当審で付与した。)。 1 「【0015】 これらを踏まえて、正負の分極性電極とセパレータとの空隙容積、およびイオン量比Qe/Qtの調整についてさらに説明する。 正の分極性電極の空隙容積をV+、負の分極性電極の空隙容積をV-、セパレータの空隙容積をVsとすると、これら3つの空隙容積の和が、後述の分極性電極とセパレータとの空隙容積に含浸された電解液容積Vpになる(式(II))。 Vp=V++V-+Vs ・・・(II) ここで、キャパシタの定格静電容量を一定にし、使用するセパレータを同一として、電極構造体の積層数を増加させた場合を考えると、V+およびV-に変化は無いが、Vsは積層数に伴って増加するため、結果的にVpは増加する。」 2 「【0028】 なお、本発明の電気二重層キャパシタは、空隙容積に含浸する有機系電解液中のイオン量Qeの保持と、電解液ドライアップの防止との目的から、分極性電極とセパレータとの空隙容積に含浸する有機系電解液の容積Vp以上の電解液を保持することが好ましい。この好ましい電解液量(容積)は、分極性電極とセパレータとの空隙容積に含浸する電解液の容積Vpと、全電解液の容積Vaとの比(Va/Vp)によって具体的に定義することができるが、本発明では、Va/Vpが1.0~1.2を満たすことが好ましく、1.01~1.1を満たすことがより好ましい。1.0よりも少ないと、電解液のドライアップが発生する可能性があり、1.2よりも大きいと、充放電効率の低下、電解液漏れ等の問題が発生する可能性がある。」 3 「【0037】 [電気二重層キャパシタ] 本発明の電気二重層キャパシタの構造および形態は、一対の集電体、正負の各分極性電極、これら電極間に介在するセパレータ、並びに少なくとも正負各分極性電極およびセパレータに含浸する有機系電解液を備えて構成されるものであれば、特に限定されるものではなく、図1に示されるようないわゆる積層型のキャパシタや、コイン型のキャパシタなど、公知の種々の構造を採用できる。 本発明の電気二重層キャパシタの実施の一形態を、図1,2を参照しつつ説明すると、電気二重層キャパシタ1は、外装容器10と、この外装容器10内に収納された電極群11と、少なくともこの電極群11に含浸する有機系電解液(図示省略)とを備えて構成されている。 なお、有機系電解液は少なくとも電極群に含浸していればよく、例えば、有機系電解液が、電極群がこれに浸る程度に外装容器内に満たされていてもよい。 【0038】 電極群11は、図2に示されるように、正の分極性電極構造体11Aおよび負の分極性電極構造体11Bが、セパレータ11Cを介して複数枚積層されたものである。正の分極性電極構造体11Aは、正の集電体111の両面に正の分極性電極112が積層されて構成され、負の分極性電極構造体11Bは、負の集電体113の両面に負の分極性電極114が積層されて構成されている。 この場合、電極構造体の積層枚数は、多ければ多いほど内部抵抗が低減できて有利であると同時に、キャパシタ全体の空隙容積に占めるセパレータの空隙容積の比率が大きくなるため、理論イオン量Qtと、正負の分極性電極とセパレータとの空隙容積に含浸された電解液中のイオン量Qeとの比Qe/Qtを調整する上で好適である。一方、積層枚数が多くなりすぎると、電極群体積に占める集電体とセパレータの体積割合が増加し、体積出力密度が減少するので、所望の内部抵抗に合わせて積層数の上限を決定すればよい。」 4 「【0043】 以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。 【0044】 [実施例1] (1)正の電極構造体の作製 活性炭マックスソーブMSP20(関西熱化学(株)製、BET比表面積:2300m2/g、細孔容積:1.07ml/g、50%粒径:9.5μm)と、導電剤(HS-100、電気化学工業(株)製)と、バインダであるPVDF(アルドリッチ社製、重量平均分子量:534,000)とを85:8:7の質量組成になるように、塗工溶媒であるN-メチルピロリドン(以下NMP)中で混合し、正の分極性電極用塗工液を調製した。 得られた塗工液を、正の集電体111であるエッチドアルミ箔(30CB、日本蓄電器工業(株)製)の両面に塗工した後、ロールプレスで圧延し、さらにNMPを乾燥除去して正の分極性電極112を形成し、正の分極性電極構造体11Aを得た。この電極構造体11Aにおける分極性電極112のみかけ面積は130cm2、電極密度は0.54g/cm3、集電体の片面に形成された分極性電極の厚みは65μmであった。 なお、BET比表面積および細孔容積は、窒素ガス吸着法により算出した値であり、50%粒径は、日機装(株)製レーザー回折式粒度分布測定装置マイクロトラックHRAを用いて測定した値である。 【0045】 (2)負の電極構造体の作製 活性炭LPY039(日本エンバイロケミカルズ(株)製、MP法におけるピーク細孔半径:4.1×10-10m、比表面積:1900m2/g、細孔容積:0.90ml/g、50%:粒径10.3μm)と、導電剤(HS-100、電気化学工業(株)製)と、バインダであるPVDF(アルドリッチ社製、重量平均分子量:534,000)とを85:7:8の質量組成になるように、塗工溶媒であるN-メチルピロリドン(以下NMP)中で混合し、負の分極性電極用塗工液を調製した。 得られた塗工液を、負の集電体113であるエッチドアルミ箔(30CB、日本蓄電器工業(株)製)の両面に塗工した後、ロールプレスで圧延し、さらにNMPを乾燥除去して負の分極性電極114を形成し、負の分極性電極構造体11Bを得た。この電極構造体11Bにおける分極性電極114のみかけ面積は130cm2、電極密度は0.50g/cm3、集電体の片面に形成された分極性電極の厚みは75μmであった。 なお、ピーク細孔半径は、上記BET測定結果に基づいてMP法により算出した値である。 【0046】 (3)電気二重層キャパシタの作製 正の分極性電極構造体11A 9枚と、負の分極性電極構造体11B 10枚とを、セパレータ11C(NI040A、日本板硝子(株)製、空隙率79.0%、厚さ40μm)を介して交互に積層し(セパレータ枚数は最外層を含めて20枚)、正負ごとにまとめてアルミ製の電流取出し端子12A,12Bと溶接して電極群11を得た。 次に電極群11をアルミラミネート(大日本印刷(株)製、外層:6-ナイロン/厚25μm、ガス遮断層:軟質アルミニウム/厚40μm、内層:ポリプロピレン+変性ポリプロピレン/30+15μm)からなる弁13のついた外装容器10に挿入し、有機系電解液38mlを注入して含浸させた後、外装容器10を封止部10Bにて熱融着して図1に示される電気二重層キャパシタ1を得た。有機系電解液としては、電解質であるジエチル(2-メトキシエチル)メチルアンモニウムテトラフルオロボレート(イオン液体、DEME-BF4)を、電解液溶媒である炭酸プロピレン(以下PC)に1.3モル/Lになるように溶解させたものを使用した。また、電解液の含浸は、25℃、10kPa以下の減圧下で12時間以上静置する条件で行った。 【0047】 [実施例2] 集電体の片面に形成された負の分極性電極の厚みを85μmにし、有機系電解液を39ml注入した以外は、実施例1と同様にして電気二重層キャパシタを得た。」 5 「【0068】 上記各実施例および比較例の電気二重層キャパシタの構成について表1にまとめて示す。 なお、表1において、セパレータの空隙容積Vsおよび正負の分極性電極の空隙容積V+、V-は、各実施例および比較例で用いたものと同じセパレータおよび正負分極性電極に、電気二重層キャパシタの作製時の条件と同じ条件で電解液を十分に含浸させた後、含浸した電解液の質量と、電解液の比重とから求めた。セパレータの空隙率は、セパレータの見かけ体積と空隙容積Vsとから求めた。キャパシタの全空孔体積Vpは、セパレータ、および正負の分極性電極の空隙容積の和(Vs+V++V-)である。 【0069】 【表1】 *キャパシタの定格電圧V:3V」 6 「【図1】 【図2】 」 ・上記3、6によれば、電気二重層キャパシタ1は、外装容器10と、この外装容器10内に収納された電極群11と、少なくともこの電極群11に含浸する有機系電解液とを備えて構成されるものである。 ・上記3、6によれば、電極群11は、正の分極性電極構造体11Aおよび負の分極性電極構造体11Bが、セパレータ11Cを介して複数枚積層されたものであり、正の分極性電極構造体11Aは、正の集電体111の両面に正の分極性電極112が積層されて構成されたものであり、負の分極性電極構造体11Bは、負の集電体113の両面に負の分極性電極114が積層されて構成されたものである。 ・上記3によれば、有機系電解液は、電極群がこれに浸る程度に外装容器内に満たされていてもよいものである。また、上記3における「電極群」、「外装容器」との記載が、それぞれ「電極群11」、「外装容器10」を指すことは明らかである。 ・上記4によれば、有機系電解液は、電解質を電解液溶媒に溶解させたものである。 ・上記4、5によれば、実施例2の電気二重層キャパシタにおいて、全電解液容積Vaは39.0mlであり、キャパシタの全空孔体積Vpは38.2mlであり、全電解液容積Vaとキャパシタの全空孔体積Vpとの比(Va/Vp)は1.02である。 ・上記5によれば、セパレータの空隙容積Vsおよび正負の分極性電極の空隙容積V+、V-は、セパレータおよび正負分極性電極に、電気二重層キャパシタの作製時の条件と同じ条件で電解液を十分に含浸させた後、含浸した電解液の質量と、電解液の比重とから求められ、キャパシタの全空孔体積Vpは、セパレータ、および正負の分極性電極の空隙容積の和(Vs+V++V-)である。また、上記5における「セパレータ」、「正負の分極性電極」、「電解液」、「電気二重層キャパシタ」との記載が、それぞれ上記3における「セパレータ11C」、「正の分極性電極112および負の分極性電極114」、「有機系電解液」、「電気二重層キャパシタ1」を指すことは明らかである。 そうすると、上記摘示事項および図面を総合勘案し、特に実施例2に着目すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「電気二重層キャパシタ1であって、外装容器10と、この外装容器10内に収納された電極群11と、少なくともこの電極群11に含浸する有機系電解液とを備えて構成され、電極群11は、正の分極性電極構造体11Aおよび負の分極性電極構造体11Bが、セパレータ11Cを介して複数枚積層されたものであり、正の分極性電極構造体11Aは、正の集電体111の両面に正の分極性電極112が積層されて構成されたものであり、負の分極性電極構造体11Bは、負の集電体113の両面に負の分極性電極114が積層されて構成されたものであり、有機系電解液は、電解質を電解液溶媒に溶解させたものであり、電極群11がこれに浸る程度に外装容器10内に満たされていてもよく、有機系電解液の全電解液容積Vaは39.0mlであり、キャパシタの全空孔体積Vpは38.2mlであり、有機系電解液の全電解液容積Vaとキャパシタの全空孔体積Vpとの比(Va/Vp)は1.02であり、セパレータ11Cの空隙容積Vsおよび正負の分極性電極112、114の空隙容積V+、V-は、セパレータ11Cおよび正負分極性電極112、114に、電気二重層キャパシタ1の作製時の条件と同じ条件で有機系電解液を十分に含浸させた後、含浸した有機系電解液の質量と、有機系電解液の比重とから求められ、キャパシタの全空孔体積Vpは、セパレータ11C、および正負の分極性電極112、114の空隙容積の和(Vs+V++V-)である、電気二重層キャパシタ1。」 第5 対比 そこで、本願発明と引用発明とを対比する。 1 電気二重層キャパシタがエネルギー貯蔵装置として機能することは明らかである。また、外装容器と、外装容器内に収納された電極群と、電極群に含浸する電解液を備えた電気二重層キャパシタが、最終的な製品といい得るものであることも明らかである。 したがって、引用発明の「電気二重層キャパシタ1」は、本願発明の「最終的な製品のエネルギー貯蔵装置」に相当する。 2 引用発明の「外装容器10」、「正の分極性電極112」、「負の分極性電極114」は、それぞれ本願発明の「容器」、「第1電極」、「第2電極」に相当する。 3 引用発明の「正の分極性電極構造体11A」は、「正の集電体111の両面に正の分極性電極112が積層されて構成されたもの」であり、「負の分極性電極構造体11B」は、「負の集電体113の両面に負の分極性電極114が積層されて構成されたもの」である。そして、引用発明の「正の分極性電極構造体11Aおよび負の分極性電極構造体11B」は、「セパレータ11Cを介して複数枚積層されたもの」であるから、「セパレータ11C」は、「正の分極性電極112」と「負の分極性電極114」との間にあるものである。 したがって、引用発明の「セパレータ11C」は、本願発明の「上記第1電極と上記第2電極との間のセパレータ」に相当する。 4 引用発明の「電極群11」は「外装容器10内に収納され」ているから、「電極群11」を構成する「正の分極性電極112」、「負の分極性電極114」および「セパレータ11C」は、いずれも外装容器10内にあるものである。 したがって、引用発明の「電極群11」が「外装容器10内に収納され」ていることは、本願発明の「上記第1電極、上記第2電極、および上記セパレータは、上記容器内にあ」ることに相当する。 5 引用発明の「有機系電解液」は、「電解質を電解液溶媒に溶解させたもの」である。一方、本願発明の「電解質」について、本願明細書の段落【0037】には、「電解質120は、イオンを含みかつエネルギー貯蔵装置100における使用に適した任意の数の電解液を含んでいてもよい。例えば、電解質120は溶媒および塩を含んでいてもよく、当該塩は、例えば陰イオンおよび陽イオンのような移動するイオン種を提供する。」と記載されている。そして、上記記載を参酌すると、本願発明の「電解質」は、「電解質を溶媒に溶解させた電解液」を含むものと認められる。 したがって、引用発明の「電解質を電解液溶媒に溶解させたもの」であって、「電極群がこれに浸る程度に外装容器10内に満たされてもよ」い「有機系電解液」は、本願発明の「上記容器内にある電解質」に相当する。 6 引用発明は、「有機系電解液の全電解液容積Vaは39.0mlであり、キャパシタの全空孔体積Vpは38.2mlであり、有機系電解液の全電解液容積Vaとキャパシタの全空孔体積Vpとの比(Va/Vp)は1.02であり、セパレータ11Cの空隙容積Vsおよび正負の分極性電極112、114の空隙容積V+、V-は、セパレータ11Cおよび正負分極性電極112、114に、電気二重層キャパシタ1の作製時の条件と同じ条件で有機系電解液を十分に含浸させた後、含浸した有機系電解液の質量と、有機系電解液の比重とから求められ、キャパシタの全空孔体積Vpは、セパレータ11C、および正負の分極性電極112、114の空隙容積の和(Vs+V++V-)である」ものの、本願発明の「上記電解質は、電解質の飽和量とその104%との間の総質量を有し、上記電解質の飽和量は、上記セパレータ、上記第1電極、および上記第2電極の接触可能なスペースを飽和させるために必要とされる上記容器における電解質の最小量である」との特定はなされていない。 そうすると、本願発明と引用発明とは、 「 最終的な製品のエネルギー貯蔵装置であって、 容器と、 第1電極と、 第2電極と、 上記第1電極と上記第2電極との間のセパレータとを備え、 上記第1電極、上記第2電極、および上記セパレータは、上記容器内にあり、 上記容器内にある電解質をさらに備えるエネルギー貯蔵装置。」 である点で一致し、以下の点で一応相違する。 <相違点> 本願発明は、「上記電解質は、電解質の飽和量とその104%との間の総質量を有し、上記電解質の飽和量は、上記セパレータ、上記第1電極、および上記第2電極の接触可能なスペースを飽和させるために必要とされる上記容器における電解質の最小量である」のに対し、引用発明は、その旨の特定がされていない点。 第6 判断 1 相違点について 引用発明では「セパレータ11Cおよび正負分極性電極112、114に電気二重層キャパシタ1の作製時の条件と同じ条件で有機系電解液を十分に含浸させた後、含浸した有機系電解液の質量と、有機系電解液の比重とから」「セパレータ11Cの空隙容積Vsおよび正負の分極性電極112、114の空隙容積V+、V-」が求められるのであるから、「有機系電解液を十分に含浸させた後」の状態では、有機系電解液で「セパレータ11Cおよび正負分極性電極112、114」それぞれの「接触可能なスペース」を飽和させていることは明らかである。また、引用発明において、接触可能なスペースを飽和させるために必要な量を超える分の有機系電解液は、「セパレータ11Cおよび正負分極性電極112、114」に含浸することはないから、「有機系電解液を十分に含浸させた後、含浸した有機系電解液の質量」は、セパレータ11Cおよび正負分極性電極112、114それぞれの接触可能なスペースを飽和させるために必要な質量であるといえる。 そして、引用発明の「キャパシタの全空孔体積Vp」は、「セパレータ11C、および正負の分極性電極112、114の空隙容積の和(Vs+V++V-)」である。また、「容積=質量/比重」であることは技術常識である。そうすると、引用発明において、求められた「キャパシタの全空孔体積Vp」は、「セパレータ11C、正の分極性電極112、および負の分極性電極114の接触可能なスペースを飽和させるために必要な有機系電解液の質量」を有する有機系電解液の容積(すなわち、質量/比重)であるといえる。 ここで、引用発明において、「有機系電解液の全電解液容積Vaとキャパシタの全空孔体積Vpとの比(Va/Vp)」は「1.02」であるから、有機系電解液は、求められたキャパシタの全空孔体積Vp(すなわち、セパレータ11C、正の分極性電極112、および負の分極性電極114の接触可能なスペースを飽和させるために必要な有機系電解液の質量/比重)の102%の容積Vaを有することになり、このことは、有機系電解液が、「セパレータ11C、正の分極性電極112、および負の分極性電極114の接触可能なスペースを飽和させるために必要な有機系電解液の質量」の102%の総質量を有することと等価である。 一方、本願発明は、「上記電解質は、電解質の飽和量とその104%との間の総質量を有し、上記電解質の飽和量は、上記セパレータ、上記第1電極、および上記第2電極の接触可能なスペースを飽和させるために必要とされる上記容器における電解質の最小量である」から、本願発明の「電解質の飽和量」とは、「上記セパレータ、上記第1電極、および上記第2電極の接触可能なスペースを飽和させるために必要とされる上記容器における電解質の最小量」のことであり、その単位は「質量」である。そして、「飽和させるために必要とされる」「最小量」の「質量」とは、飽和させるために必要な量以上であって、かつ必要な量の最小の質量であるから、これは飽和させるために必要な質量にほかならない。 そうすると、引用発明が「セパレータ11C、正の分極性電極112、および負の分極性電極114の接触可能なスペースを飽和させるために必要な有機系電解液の質量」の102%の総質量を有することは、「上記電解質は、電解質の飽和量とその104%との間の総質量を有」するものであり、かつ「上記電解質の飽和量は、上記セパレータ、上記第1電極、および上記第2電極の接触可能なスペースを飽和させるために必要とされる上記容器における電解質の最小量である」といえる。 以上のとおりであるから、「上記電解質は、電解質の飽和量とその104%との間の総質量を有し、上記電解質の飽和量は、上記セパレータ、上記第1電極、および上記第2電極の接触可能なスペースを飽和させるために必要とされる上記容器における電解質の最小量である」との事項は、引用発明が備えている事項である。 してみれば、上記相違点については、実質的な相違とは認められない。 2 審判請求人の主張について 審判請求人は、平成31年3月27日に提出された審判請求書において、「引用発明1では、Vpは、引用文献1の表1からも明らかなように、電極およびセパレータの全空孔体積として規定されている。このことから、引用発明1は、『電極とセパレータとの空隙容積に含浸する電解液の容積Vp』=『電極およびセパレータの全空孔体積Vp』の関係が成り立つと、つまり電極およびセパレータが有する孔(すなわち、電極やセパレータの構成材料が一般に有する微細な孔)の全体に電解質が含浸されるものであると想定した上で、上記『Va/Vp=1.0~1.2』の関係を規定していると認められる。」、「これに対し、本願発明1では、電解質の飽和量を、『セパレータおよび各電極の接触可能なスペースを飽和させるために必要とされる容器における電解質の最小量』であると規定している。この規定は、セパレータおよび電極が有する孔(すなわち、セパレータや電極の構成材料が一般に有する微細な孔)の全体に電解質が接触して含浸されることが実際には起こらず(例えば、セパレータや電極の内部に存在する微細な孔には電解質は接触不可能である)、電解質が、あくまでセパレータおよび電極の(電解質が)接触可能なスペースにしか、すなわちそれらが有する孔の一部にしか含浸されないことを本願発明者らが発見したことに基づくものである。」、「以上より、本願発明1の『電解質の総質量』と引用発明1の『全電解液の容積Va』とは、その意味するものが互いに同等であると仮に認められるとしても、本願発明1の『電解質の飽和量』と引用発明1の『電極とセパレータとの空隙容積に含浸する電解液の容積Vp』とは、その意味するものが互いに全く異なるものと言わざるを得ない。すなわち、本願発明1の『電解質の飽和量』は、セパレータおよび電極が有する孔の一部を飽和させるために必要な量を指すのに対し、引用発明1の『電極とセパレータとの空隙容積に含浸する電解液の容積Vp』は、セパレータおよび電極が有する孔の全体を飽和させるために必要な量を指す。」と主張している。なお、下線は当審で付与した。 しかしながら、引用文献1には「電極およびセパレータが有する孔(すなわち、電極やセパレータの構成材料が一般に有する微細な孔)の全体に電解質が含浸される」旨の記載は一切なされていない。 また、引用文献1の段落【0068】(上記「第4」の「5」を参照。)に記載されているとおり、引用発明の「キャパシタの全空孔体積Vp」は、セパレータ11C、および正負の分極性電極112、114の空隙容積の和(Vs+V++V-)であり、かつ「セパレータ11Cの空隙容積Vsおよび正負の分極性電極112、114の空隙容積V+、V-」は、セパレータ11Cおよび正負分極性電極112、114に、電気二重層キャパシタ1の作製時の条件と同じ条件で有機系電解液を十分に含浸させた後、含浸した有機系電解液の質量と、有機系電解液の比重とから求められるものである。そして、このような方法で「セパレータ11Cの空隙容積Vsおよび正負の分極性電極112、114の空隙容積V+、V-」を求めた場合、有機系電解液は、セパレータ11Cおよび正負の分極性電極112、114それぞれの「有機系電解液が接触可能なスペース」にのみ含浸するものと認められ、「有機系電解液が接触不可能なスペース」、例えばセパレータ11Cや正負の分極性電極112、114の内部に存在する微細な孔であって、有機系電解液が接触不可能な孔に含浸することはない。したがって、このような方法を経て求められた「キャパシタの全空孔体積Vp」は、「セパレータおよび電極が有する孔の全体を飽和させるために必要な量」であるとはいえない。 さらに、引用文献1の段落【0015】、【0028】(上記「第4」の「1」および「2」を参照。)に「分極性電極とセパレータとの空隙容積に含浸された電解液容積Vp」と記載されていることを考慮すると、引用発明の「キャパシタの全空孔体積Vp」は「分極性電極とセパレータとの空隙容積に含浸された電解液容積Vp」のことであって、電解液が含浸されていない領域(すなわち、セパレータや電極の内部に存在する微細な孔といった、電解液が接触不可能なスペース)を含むものではない。 したがって、引用発明は、電極およびセパレータが有する孔の全体に電解質が含浸されるものであると想定している旨の審判請求人の上記主張、および引用発明の「キャパシタの全空孔体積Vp」が、セパレータおよび電極が有する孔の全体を飽和させるために必要な量を指すとする審判請求人の上記主張は、妥当なものとはいえない。 よって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。 3 まとめ 以上のとおり、本願発明と引用発明との間に実質的な相違点はないから、本願発明は引用発明である。 第7 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2019-004053

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