特許拒絶査定不服審判
2023-009239
電極組立体、電極組立体を備える蓄電装置、及び電極組立体の製造方法
- 審判番号
- 2023-009239
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-516836外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年06月06日
- 審決日
- 2024年06月19日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .113-Z (H01G) / P18 .575-Z (H01G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項、特許法第159条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特願2020-516836「電極組立体、電極組立体を備える蓄電装置、及び電極組立体の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 4月18日国際公開、WO2019/072781、令和 2年12月17日国内公表、特表2020-537333〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)10月8日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2017年(平成29年)10月10日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 8月23日付け:拒絶理由通知
令和4年11月18日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 2月16日付け:拒絶査定(原査定)
令和5年 6月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和5年11月 1日 :上申書の提出
第2 令和5年6月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年6月6日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の概要
令和5年6月6日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)は、令和4年11月18日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明特定事項により特定される、
「【請求項1】
内側層としてのセパレータと、外側層としての集電体の連続する長さと、セパレータの2つの側部と集電体との間の電極材と、を含有する扇状に折った複数層と、
扇状に折った複数層の上向きの折り部に取り付けられている第1端子と、扇状に折った複数層の下向きの折り部に取り付けられている第2端子と
を備える、電極組立体。」
との発明(以下、「本願発明」という。)を、
「【請求項1】
内側層としてのセパレータと、外側層としての集電体の連続する長さと、セパレータの2つの側部と集電体との間の電極材と、を備える含有する扇状に折った複数層と、
扇状に折った複数層の上向きの折り部の前記集電体に直接取り付けられている、第1端子と、扇状に折った複数層の下向きの折り部の前記集電体に直接取り付けられている第2端子と
を備える、電極組立体。」(下線部は、補正箇所を示す。)
との発明(以下、「本件補正発明」という。)とする補正を含むものである。
2 補正の適否
(1)本件補正の補正事項
請求項1に係る本件補正は、以下の補正事項を含むものである。
ア 補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「扇状に折った複数層」に関し、セパレータと、集電体の連続する長さと、電極材と、を「含有する」との記載を、セパレータと、集電体の連続する長さと、電極材と、を「備える含有する」との記載に補正する。
イ 補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1の端子」の取り付けに関し、上向きの折り部「の前記集電体」に「直接」取り付けられている「、」と限定する。
ウ 補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第2の端子」の取り付けに関し、下向きの折り部「の前記集電体」に「直接」取り付けられることを限定する。
上記補正事項イ、ウは、本件補正前の請求項1に係る発明を特定する事項を限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、補正事項イ、ウは、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そして、補正事項アは、本件補正前の請求項1に係る発明を特定する事項である「扇状に折った複数層」に関し、セパレータと、外側層としての集電体の連続する長さと、電極材と、を「含有する」との記載を、セパレータと、外側層としての集電体の連続する長さと、電極材と、を「備える含有する」との記載に補正するものであるところ、令和5年11月1日に提出の上申書(4頁[2.6]を参照)において審判請求人も認めているように、該「備える含有する」との記載は誤記であることに鑑みて、仮に、補正事項アが特許法第17条の2第5項の規定に違反するものではないとして、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)否かについて以下に検討する。
(2)独立特許要件についての検討
ア 本件補正発明
本件補正発明は、上記1に記載したとおりのものである。
イ 引用文献の記載事項、引用発明
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献5(特開2006-32874号公報)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は当審で付与した。)。
「【0019】
本発明の実施の形態について、以下に図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る電気化学デバイス、具体的には電気二重層キャパシタの断面について、その要部を示す概略断面図である。本発明に係る電気二重層キャパシタは、その主要部たるセル1において、正極として作用する電極(以下、正極として述べる)3、絶縁物質からなるシート状のセパレータ9、負極として作用する電極(以下、負極として述べる)6、及び正極3及び負極6とそれぞれ接合される一対の導体板11、12とを有している。正極3は、アルミ等の導電性の金属箔4と、その両面に塗布形成された活性物質層5a、5bとを有している。同様に、負極6も、金属箔7と、その両面に形成された活性物質層8a、8bとを有している。絶縁性の紙等からなるセパレータ9は、正極3及び負極6の間に配置されてこれら電極の接触を防止している。
【0020】
正極3及び負極6はセパレータ9を介して重ね合わせられ、更にこれらはつづら折りに折り畳まれて積層体10を形成している。当該積層体において、折り曲げ部分の端部10aは積層(折り重ね)方向に延在する略同一の平面内に整列している。即ち、折り曲げ端部10aは、積層体10の対向する両側面を構成している。略同一平面内に存在する端部10aにおいては、常に同一の極性の電極が折り曲げ部分における外側に位置している。本発明に係る当該端部10aにおいて、その最も外側に位置する活性物質層5a、8bは除去されており、金属箔4、7が積層体10の外側に向かって露出している。導体板11、12は、これら露出部分に対して溶接等により接合されている。具体的には、正極3における活性物質層5aが部分的に除去されて露出した金属箔4(4a)に対して、正極用導体板11が接合されている。また、負極4における活性物質層8bが部分的に除去されて露出した金属箔7(7a)に対して、負極用導体板12が接合されている。」
「【0029】
図4Bは、図4Aに示した導体板11に対して、さらに突起部11bを形成したものを示している。以上に述べてきた電気二重層キャパシタの主要部1は、不図示の外装体内部に密閉状態で収容され、導体板11はこの外装体から外部に突出する端子に接続される。本実施例では、この突起部11bを、外装体からその外部に突出する端子としてそのまま用いることを可能としている。」
「【図1】
[図:0001417177000001.jpg]
」
「【4B】
[図:0001417177000002.jpg]
」
(イ)引用文献5の上記記載によれば、次の事項が記載されている。
a 段落【0019】によれば、引用文献5には、電気二重層キャパシタの主要部であるセル1が記載されている。
b 段落【0019】によれば、セル1は、正極3、セパレータ9、負極6、及び正極3及び負極6とそれぞれ接合される一対の導体板11、12を有し、正極3は、金属箔4と、その両面に塗布形成された活性物質層5a、5bとを有し、負極6も、金属箔7と、その両面に形成された活性物質層8a、8bとを有している。
c 段落【0020】によれば、正極3及び負極6はセパレータ9を介して重ね合わせられ、更につづら折りに折り畳まれて積層体10を形成し、当該積層体において、折り曲げ部分の端部10aは積層(折り重ね)方向に延在する略同一の平面内に整列して、積層体10の対向する両側面を構成し、略同一平面内に存在する端部10aにおいては、常に同一の極性の電極が折り曲げ部分における外側に位置している。
d 段落【0020】によれば、「本発明に係る当該端部10aにおいて、その最も外側に位置する活性物質層5a、8bは除去されており、金属箔4、7が積層体10の外側に向かって露出している。導体板11、12は、これら露出部分に対して溶接等により接合されている。具体的には、正極3における活性物質層5aが部分的に除去されて露出した金属箔4(4a)に対して、正極用導体板11が接合されている。また、負極4における活性物質層8bが部分的に除去されて露出した金属箔7(7a)に対して、負極用導体板12が接合されている。」と記載されており、また、図1によれば、折り曲げ部分の端部10aにおいて、正極3の最も外側に位置する活性物質層5aが部分的に除去され、露出した金属箔4に正極用導体板11が接合され、負極6の最も外側に位置する活性物質層8bが部分的に除去され、露出した金属箔7に負極用導体板12が接合されていることが見て取れる。
e 上記aを踏まえると、段落【0029】によれば、導体板11に突起部11bが形成され、該突起部11bは、電気二重層キャパシタの主要部1、即ち、セル1が密閉状態で収容される外装体から外部に突出する端子として用いられる。
また、図4Bによれば、導体板11に突起部11bが、導体板12に突起部12bがそれぞれ形成されることが見て取れる。
そして、導体板11に形成された突起部11bが端子として用いられることからすれば、導体板11と対である導体板12に形成される突起部12bも端子として用いられると解される。
(ウ)上記(イ)によれば、引用文献5には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「金属箔とその両面に塗布形成された活性物質層とを有する正極、セパレータ、金属箔とその両面に形成された活性物質層とを有する負極、及び、正極及び負極とそれぞれ接合される一対の導体板を有するセルにおいて、
正極及び負極はセパレータを介して重ね合わせられ、更につづら折りに折り畳まれて積層体を形成し、
当該積層体において、折り曲げ部分の端部は積層(折り重ね)方向に延在する略同一の平面内に整列して、積層体の対向する両側面を構成し、略同一平面内に存在する端部においては、常に同一の極性の電極が折り曲げ部分における外側に位置し、
折り曲げ部分の端部において、正極の最も外側に位置する活性物質層が部分的に除去され、露出した金属箔に正極用導体板が接合され、負極の最も外側に位置する活性物質層が部分的に除去され、露出した金属箔に負極用導体板が接合されており、
正極用導体板及び負極用導体板には突起部が形成され、該突起部はセルが密閉状態で収容される外装体から外部に突出する端子として用いられる、セル。」
ウ 引用発明との対比
(ア)本件補正発明と引用発明とを対比する。
a 引用発明において、「正極及び負極はセパレータを介して重ね合わせられ」るから、「セパレータ」は「正極及び負極」に対して内側の層である。
一方、「正極及び負極」が有する「金属箔」は「セパレータ」に対して外側の層であるといえ、また、「金属箔」は、「活性物質層」が「塗布形成され」ることから集電体といえる。そして、「金属箔」を有する「正極及び負極」は「セパレータ」とともに「つづら折りに折り畳まれて積層体を形成」することから、該「金属箔」は「つづら折りに折り畳まれて積層体を形成」する程度の長さを有することは明らかである。
そして、引用発明の「正極及び負極」はそれぞれ「金属箔とその両面に塗布形成された活性物質層とを有する」ことから、「正極及び負極はセパレータを介して重ね合わせられ」る引用発明では、「セパレータ」の一方の面と「正極」が有する「金属箔」との間、及び、「セパレータ」の他方の面と「負極」が有する「金属箔」との間に「活性物質層」が存在するといえる。
さらに、引用発明の「積層体」は「正極及び負極はセパレータを介して重ね合わせられ」て形成されるから、本件補正発明の「複数層」に相当する。
よって、引用発明において、内側の層である「セパレータ」と、外側の層であり「つづら折りに折り畳まれて積層体を形成」する程度の長さを有する「金属箔」と、「セパレータ」の一方の面と「正極」が有する「金属箔」との間及び「セパレータ」の他方の面と「負極」が有する「金属箔」との間の「活性物質層」とを含み、「正極及び負極」を「セパレータを介して重ね合わせ」「更につづら折りに折り畳まれて」形成された「積層体」と本件補正発明とは、「内側層としてのセパレータと、外側層としての集電体の連続する長さと、セパレータの2つの側部と集電体との間の電極材と、を備える含有する所定形状に折った複数層」である点で共通する。
ただし、所定形状に関し、本件補正発明は「扇状」であるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。
b 引用発明の「積層体」における「折り曲げ部分」は、本件補正発明の「複数層」における「折り部」に相当する。
そして、引用発明の「積層体において、折り曲げ部分の端部は積層(折り重ね)方向に延在する略同一の平面内に整列して、積層体の対向する両側面を構成し、略同一平面内に存在する端部においては、常に同一の極性の電極が折り曲げ部分における外側に位置し、折り曲げ部分の端部において、正極の最も外側に位置する活性物質層が部分的に除去され、露出した金属箔に正極用導体板が接合され」ることから、「正極用導体板」は、「積層体」の一方の「側面を構成」する「折り曲げ部分の端部」において「正極の」「露出した金属箔に」「接合され」るといえる。
また、引用発明の「正極用導体板」は「突起部が形成され、該突起部はセルが密閉状態で収容される外装体から外部に突出する端子として用いられる」ことから、「突起部が形成され」る「正極導体板」自体も「端子として用いられる」といえ、本件補正発明の「第1端子」に相当する。
よって、上記aも踏まえると、引用発明における「積層体」の一方の「側面を構成」する「折り曲げ部分の端部」において「正極の」「露出した金属箔に」「接合され」、「端子として用いられる」「正極用導体板」と本件補正発明とは、「所定形状に折った複数層の折り部の前記集電体に直接取り付けられている、第1端子」である点で共通する。
ただし、所定形状に関し、本件補正発明は「扇状」であるのに対し、引用発明はその旨特定されておらず、また、本件補正発明は、第1端子が取り付けられる折り部は「上向き」であるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。
c 引用発明の「積層体において、折り曲げ部分の端部は積層(折り重ね)方向に延在する略同一の平面内に整列して、積層体の対向する両側面を構成し、略同一平面内に存在する端部においては、常に同一の極性の電極が折り曲げ部分における外側に位置し、折り曲げ部分の端部において、」「負極の最も外側に位置する活性物質層が部分的に除去され、露出した金属箔に負極用導体板が接合され」ることから、「負極用導体板」は、「積層体」の他方の「側面を構成」する「折り曲げ部分の端部」において「負極の」「露出した金属箔に」「接合され」るといえる。
また、引用発明の「負極用導体板」は「突起部が形成され、該突起部はセルが密閉状態で収容される外装体から外部に突出する端子として用いられる」ことから、「突起部が形成され」る「負極導体板」自体も「端子として用いられる」といえ、本件補正発明の「第2端子」に相当する。
よって、上記a、bも踏まえると、引用発明における「積層体」の他方の「側面を構成」する「折り曲げ部分の端部」において「負極の」「露出した金属箔に」「接合され」、「端子として用いられる」「負極用導体板」と本件補正発明とは、「所定形状に折った複数層の折り部の前記集電体に直接取り付けられている、第2端子」である点で共通する。
ただし、所定形状に関し、本件補正発明は「扇状」であるのに対し、引用発明はその旨特定されておらず、また、本件補正発明は、第2端子が取り付けられる折り部は「下向き」であるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。
d 引用発明の「セル」は「正極と、セパレータと、」「負極とを有」し、「正極及び負極はセパレータを介して重ね合わせられ、更につづら折りに折り畳まれて積層体を形成」することから、該「セル」は電極の組立構造といえ、本件補正発明の「電極組立体」に相当する。
よって、aないしdによれば、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
(一致点)
「内側層としてのセパレータと、外側層としての集電体の連続する長さと、セパレータの2つの側部と集電体との間の電極材と、を備える含有する所定形状に折った複数層と、
所定形状に折った複数層の折り部の前記集電体に直接取り付けられている、第1端子と、所定形状に折った複数層の折り部の前記集電体に直接取り付けられている第2端子と
を備える、電極組立体。」
(相違点1)
所定形状に関し、本件補正発明は「扇状」であるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。
(相違点2)
本件補正発明は、第1端子が取り付けられる折り部は「上向き」であり、第2端子が取り付けられる折り部は「下向き」であるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。
エ 相違点に対する判断
(ア)相違点1について
本件補正発明の「扇状に折った複数層」に関し、本願明細書の段落【0007】に「扇状に折った複数層は、扇状に折った(すなわち、折り部又はジグザグ)構成を有する複数層である。扇形に折った複数層は、それぞれが折り部によって分けられた複数の部分を備える。圧縮された状態では、これらの部分は互いに平行に積み重ねられている。」と記載されていることから、該「扇状に折った複数層」は、「折り部構成」又は「ジグザグ構成」を有し、「それぞれが折り部によって分けられた複数の部分を備え」、「圧縮された状態では、これらの部分は互いに平行に積み重ねられている」複数層を含む。
そして、引用発明の「積層体」は、「正極及び負極はセパレータを介して重ね合わせられ、更につづら折りに折り畳まれて」「形成」され、「折り曲げ部分の端部は積層(折り重ね)方向に延在する略同一の平面内に整列して、積層体の対向する両側面を構成」するものであるから、該「積層体」も「折り曲げ部分」構成を有し、「折り曲げ部分」によって分けられた複数の部分を備え、該複数の部分は互いに平行に積み重ねられているといえ、引用文献5の図1、図4Bに示された主要部1の構成もこれを裏付けているといえる。
よって、引用発明の「積層体」は、本件補正発明の「扇状に折った複数層」に含まれるから、相違点1は実質的な相違ではない。
(イ)相違点2について
引用発明の「積層体」は、「正極及び負極はセパレータを介して重ね合わせられ、更につづら折りに折り畳まれて」「形成」され、「折り曲げ部分の端部は積層(折り重ね)方向に延在する略同一の平面内に整列して、積層体の対向する両側面を構成し、略同一平面内に存在する端部においては、常に同一の極性の電極が折り曲げ部分における外側に位置し、折り曲げ部分の端部において、正極の最も外側に位置する活性物質層が部分的に除去され、露出した金属箔に正極用導体板が接合され、負極の最も外側に位置する活性物質層が部分的に除去され、露出した金属箔に負極用導体板が接合されて」いるから、「正極用導体板が接合され」る「折り曲げ部分」は、「積層体」の一方の「側面」に向かう方向に折り曲がり、「負極用導体板が接合され」る「折り曲げ部分」は、「積層体」の他方の「側面」に向かう方向に折り曲がっているといえ、引用文献5の図1、図4Bからも、「折り曲げ部分」が「積層体」の一方の「側面」に向かう方向、及び、「積層体」の他方の「側面」に向かう方向にそれぞれ折り曲がっていることが見て取れる。
そして、「積層体」を、「積層体」の一方の「側面」及び他方の「側面」が上面及び下面となる方向から見た場合、「正極用導体板が接合され」る「折り曲げ部分」は「積層体」の上面に向かう方向に折り曲がり、「負極用導体板が接合され」る「折り曲げ部分」は「積層体」の下面に向かう方向に折り曲がっていることは明らかである。よって、引用発明の「折り曲げ部分」は、本件補正発明の「上向きの折り部」及び「下向きの折り部」に相当する。
したがって、相違点2は実質的な相違ではない。
(ウ)審判請求人の主張について
a 審判請求人は、令和5年6月7日提出の審判請求書において、引用文献5の記載には、導体板11、12では、突起部11bを外装体からその外部に突出する端子としてそのまま用いることを可能にしている旨(段落0029、図4B)であり、「12b」についてはそのような突起部とするのか、そしてそのような端子とするのか文言記載はなく、仮に、「12b」が突起部11bと同様であるとしても、外装体から外部に突出するのが端子であるので、導体板11の突起部11bでないところと、導体板12の12bでないところは、引用文献5に記載された発明における端子ではない。さらに、引用文献5に記載された図1、図3A、図3B、図4Aに示された電気二重層キャパシタ主要部1は、図4Bに関する外装体と端子に関する記載はない。してみると、引用文献5に記載された導体板11の突起部11bでないところと、導体板12の12bでないところを、本願発明の「第1端子」及び「第2端子」に相当するものとすることは、引用文献5に記載がなく、そして、当業者であっても容易に着想できるとはいえない旨主張する。(審判請求書14頁1ないし14行を参照)
b ここで、引用文献5の段落【0029】には「図4Bは、図4Aに示した導体板11に対して、さらに突起部11bを形成したものを示している。以上に述べてきた電気二重層キャパシタの主要部1は、不図示の外装体内部に密閉状態で収容され、導体板11はこの外装体から外部に突出する端子に接続される。本実施例では、この突起部11bを、外装体からその外部に突出する端子としてそのまま用いることを可能としている。」と記載されているものの、導体板12の突起部について明記されていない。
しかし、図4Bには、導体板11に形成された突起部11bと同じ突起部が導体板12に形成され、該突起部に「12b」と番号が付されていることが見て取れ、突起部11が正極側の端子として用いられること(段落【0020】の「正極用導体板11」の記載、段落【0029】の「突起部11bを、外装体からその外部に突出する端子としてそのまま用いる」の記載を参照)を鑑みれば、導体板11と対である導体板12に形成された突起部12bも負極側の端子(段落【0020】の「負極用導体板12」の記載を参照)として用いることは当業者であれば当然理解し得ることである。
そして、導体板11、12の突起部11b、12bを端子として用いることから、導体板11、12全体も端子として機能するものと解することができる。一方、本件補正発明においては、「扇状に折った複数層の上向きの折り部の前記集電体に直接取り付けられている、第1端子と、扇状に折った複数層の下向きの折り部の前記集電体に直接取り付けられている第2端子」と特定されているのみであり、取り付けられている部分のみが第1及び第2端子として機能する旨の特定はない。してみると、前記ウ(ア)bのとおりであって、引用発明の「正極用導電体」及び「負極用導電体」は、それぞれ本件補正発明の「第1端子」及び「第2端子」に相当するといえる。
一方、引用文献5に記載された導体板11の突起部11bでないところと、導体板12の突起部12bでないところを抽出し、当該事項と、本件補正発明の「第1端子」及び「第2端子」に相当関係がないとする審判請求人の主張は、本件補正発明を限定的に解釈した上で、引用発明の発明特定事項の対応関係を恣意的に限定するものであり、適切でない。
よって、審判請求人の主張は採用できない。
オ 小括
以上から、本件補正発明は引用発明であり、本件補正発明は、特許法第29条第1項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合していない。
(3)目的外補正について
上記(1)で述べたように、補正事項アは、本件補正前の請求項1に係る発明を特定する事項である「扇状に折った複数層」に関し、セパレータと、外側層としての集電体の連続する長さと、電極材と、を「含有する」との記載を、セパレータと、外側層としての集電体の連続する長さと、電極材と、を「備える含有する」との記載に補正するものである。
そして、令和5年11月1日に提出の上申書(4頁[2.6]を参照)において審判請求人も認めているように、該「備える含有する」との記載は誤記であることは明らかであるから、補正事項アの目的は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明のいずれにも該当しない。
したがって、補正事項アを含む本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に適合していない。
(4)本件補正についてのむすび
以上から、本件補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和5年6月6日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし15に係る発明は、令和4年11月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(本願発明)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記「第2[理由]1」に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、請求項1に係る拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
理由1.(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1、5に記載された各発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された引用文献1に記載された発明、引用文献5に記載された発明、又は、引用文献6に記載された発明及び引用文献5、7に記載された技術事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
<引用文献等一覧>
1.特開2009-289937号公報
5.特開2006-032874号公報
6.特開2000-353643号公報
7.国際公開第2006/118053号
3 引用文献、引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献5の記載事項、引用発明は、前記「第2[理由]2(2)」に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記「第2[理由]2」で検討した本件補正発明の発明特定事項である「第1の端子」の取り付けに関し、上向きの折り部「の前記集電体」に「直接」取り付けられている「、」との限定、及び、同発明特定事項である「第2の端子」の取り付けに関し、下向きの折り部「の前記集電体」に「直接」取り付けられる限定を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに限定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2[理由]2(2)」に記載したとおり引用発明であるから、本願発明も、同様の理由により引用発明である。
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の理由及び他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-009239