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特許拒絶査定不服審判

2019-001638

表示装置付タッチパネル

審判番号
2019-001638
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2014-210438外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年02月06日
審決日
2020年11月18日
公報発行日
2021年02月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (G06F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2014-210438「表示装置付タッチパネル」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月28日出願公開、特開2015- 99588〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 13項目
【理 由】

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は,平成26年10月15日(優先権主張 平成25年10月18日)に出願された特願2014-210438号であり,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。

平成30年 5月16日付け:拒絶理由通知
平成30年 7月11日  :意見書・手続補正書
平成30年12月21日付け:拒絶査定
平成31年 2月 6日  :審判請求
令和 2年 4月28日付け:拒絶理由通知
令和 2年 6月30日  :意見書・手続補正書

第2 本願発明

令和2年6月30日提出の手続補正書によって補正(以下,「本件補正」という。)された特許請求の範囲の請求項1(以下,「本願発明」という。)は,以下のとおりである。(下線部が補正箇所であり,本願発明は,本件補正前の請求項1を引用する請求項8に係る発明について,更に技術的な限定を付加したものである。)

「 接触物体を感知するタッチパネルと,前記タッチパネルに表示装置が装着された表示装置付タッチパネルであって,
前記タッチパネルは,
ガラス基板と,
前記接触物体と接触するカバーガラスと,
前記ガラス基板と前記カバーガラスの間に配置され,前記接触物体が前記カバーガラスに接触したことを感知する感知パターンと,
を有し,
前記ガラス基板は強化ガラスで構成され,前記カバーガラスは厚み300μm以下のガラスフィルムで構成されており,
前記表示装置は,前記タッチパネルの前記ガラス基板に,固着層を設けて固着されている,
ことを特徴とする表示装置付タッチパネル。」

第3 拒絶の理由

令和2年4月28日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由1は,次のとおりのものである。

本願の特許請求の範囲の請求項1ないし8に係る発明は,本願の出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項ならびに周知技術(引用文献3および4)に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献1:特開2002-278701号公報
引用文献2:特開2011-136895号公報
引用文献3:特開2013-148951号公報(周知技術を示すもの)
引用文献4:特開2013―171128号公報(周知技術を示すもの)

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1の記載

引用文献1には,以下の記載がある(下線は,当審が付加した。以下同様。)。

ア 「【0001】
【発明の属する技術の分野】本発明は,コードレス電話機,携帯電話機,電卓,サブノートパソコン,PDA(パーソナル・デジタル・アシスタント),デジタルカメラ,ビデオカメラなどの液晶デイスプレイを備えた携帯型電子機器やパソコンのモニタ等に搭載され,透視した画面の指示にしたがって指やペンなどで上から押圧することにより位置入力が行われるタッチパネルに関する。
【0002】
【従来の技術】従来のタッチパネルの構成としては,透明樹脂フィルム2の上面に透明電極3を形成した下側電極材と,透明樹脂フィルム2の下面に透明電極3を形成した上側電極材とをスペーサーを介して対向配置し,下側電極材の下側全面に透明樹脂板11を支持板として貼り合わせてなるものがある(図6参照)。また,支持板を用いず,透明樹脂板11(図7参照)又は透明ガラス板12(図8参照)の上面に透明電極3を直接形成したものを下側電極材とした構成もある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし,下側電極材として透明電極3付きの透明ガラス板12を使用した構成の場合(図8参照),入力により透明ガラス板12の表面に異常に大きな負荷がかかったときに,面強度が不十分で透明ガラス板12が割れてしまうことがあった。また,誤ってタッチパネル1を搭載した機器を落としたり,ぶつけたりして透明ガラス板12の端面やコーナー部に衝撃が受けたときに,エッジ強度が不十分で透明ガラス板12が割れてしまうことがあった。そして透明ガラス板12が割れた結果として,タッチパネル1の下側の画像を表示する液品パネルやこの画像表示のための照明をするフロントライトを著しく傷つけて文字・画像が正しく視認出来なくなったり,ガラスの破片が製品内に散乱し,タッチパネル又はその部品の交換・清掃に非常に手間がかかったりした。
【0004】また,下側電極材として透明電極3付きの透明樹脂板11を使用した構成の場合や,下側電極材として透明電極3付きの透明樹脂フィルム2を使用しこれを透明樹脂板11に全面にて貼り合わせた構成の場合は,入力により透明樹脂板11に負荷がかかったときに,透明樹脂板11が大きく撓んで液晶パネルまたはフロントライトの表面に接触してしまうことがあった。液晶パネルは表示面に透明樹脂板11が接触することにより滲みが発生し,フロントライトにいたっては透明樹脂板11が接触することにより表面が傷つけられ点灯時に異常発光が発生し,いずれも文字・画像が正しく視認出来ない。
【0005】したがって,本発明の目的は,上記の問題点を解決することにあって,文字・画像が正しく視認出来,かつタッチパネル又はその部品の交換・清掃が容易であるタッチパネルを提供することにある。」
イ 「【0010】
【発明の実施の形態】以下に,図を参照しながら本発明に係るタッチパネルを詳細に説明する。図1及び図3は本発明に係るタッチパネルを備えた液晶表示装置の一実施例を示す断面図,図2は本発明における面取り及びコーナーカットを説明する図である。図中,図1はタッチパネル,2は透明樹脂フィルム,3は透明電極,4はスペーサー,5はドットスペーサー,6は強化ガラス板,7は粘着材,8はフロントライト,9は液晶パネル,10は面取り部,11はコーナーカット部をそれぞれ示す。
【0011】図1は本発明に係るタッチパネルを備えた液晶表示装置の一実施例を示すものであり,フロントライト7および液晶パネル8の上方に配置されたタッチパネル1は,透明樹脂フィルム2の上面に透明電極3を形成した下側電極材と,透明樹脂フィルム2の下面に透明電極3を形成した上側電極材とを周縁部でスペーサー4を介して対向配置し,下側電極材の下側全面に強化ガラス板6を粘着材4で貼り合わせたものである。
【0012】上記上側電極材の透明樹脂フィルム2としては,入力のために可撓性を有する必要があり,一般に厚み75~250μmのポリカーボネート系,ポリアミド系,ポリエーテルケトン系等のエンジニアリングプラスチック,アクリル系,ポリエチレンテレフタレート系,ポリブチレンテレフタレート系などの樹脂フィルム,それらの積層体などが用いられる。」

ウ 「【0015】スペーサ4は,下側電極材と上側電極材との透明電極3間で絶縁しうる形態,たとえば枠形態などに形成される。」

エ 「【0017】上記透明ガラス板は,入力負荷がかけられても撓まないため,液晶パネル8またはフロントライト7の表面を傷つけることから防ぐことができる。透明ガラス板としては,厚み0.4~3.0mmのソーダーガラス,ホウケイ酸ガラス,強化ガラスなどを用いることができる。透明ガラス板の厚みが0.4mm未満では剛性が不十分であり,3.0mmを超えると視差が生じ画面が見難くなる。
【0018】また,とくに透明ガラス板が,図1に示すような強化ガラスである場合には,入力により透明ガラス板の表面に異常に大きな負荷がかかっても,面強度が十分にあり割れることが少ない。なお,本発明における強化ガラスとは,自然拡散型のイオン交換法による化学強化が施されたもののことである。・・・」

オ 「【0020】また,本発明のタッチパネルは,上記透明ガラス板と下側電極材の透明樹脂フィルム2との配置を入れ換えてもよい。すなわち,透明ガラス板の上面に透明電極3を形成した下側電極材と,透明樹脂フィルム2の下面に透明電極3を形成した上側電極材とをスペーサー4を介して対向配置させたタッチパネル1において,下側電極材の下側全面に透明樹脂フィルム2を貼り合わせた構成とすることができる。図3はこのような構成のタッチパネルを備えた液晶表示装置の一実施例を示すものであり,上記透明ガラス板として強化ガラス板6を使用している。」

カ 【図3】

キ 「【0031】
【発明の効果】本発明のタッチパネルは,以上のような構成および作用からなるので,次の効果が奏される。
【0032】すなわち,本発明のタッチパネルは,タッチパネルに著しく大きな入力負荷がかけられて仮に透明ガラス板が割れたとしても,透明電極側或いはその反対側において透明樹脂フィルムと全面で貼り合わされているため,ガラスの飛散を防ぐ事が出来る。また,タッチパネルを誤って落としたり,ぶつけたりしたたりして仮に透明ガラス板が割れたとしても,透明電極側或いはその反対側において透明樹脂フィルムと全面で貼り合わされているため,ガラスの飛散を抑える事が出来る。」

2 引用発明

上記1からみて,特に,下線部と図3に着目すると,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「液晶デイスプレイを備えた携帯型電子機器やパソコンのモニタ等に搭載され,透視した画面の指示にしたがって指やペンなどで上から押圧することにより位置入力が行われるタッチパネルであって,
フロントライト7および液晶パネル8の上方に配置されたタッチパネル1であり,
上面に透明電極3を形成した下側電極材と,透明樹脂フィルム2の下面に透明電極3を形成した上側電極材とを周縁部でスペーサー4を介して対向配置したものであり,
上側電極材の透明樹脂フィルム2としては,入力のために可撓性を有する必要があり,一般に厚み75~250μmのポリカーボネート系,ポリアミド系,ポリエーテルケトン系等のエンジニアリングプラスチック,アクリル系,ポリエチレンテレフタレート系,ポリブチレンテレフタレート系などの樹脂フィルム,それらの積層体などが用いられ,
スペーサー4は,下側電極材と上側電極材との透明電極3間で絶縁しうる形態,たとえば枠形態などに形成され,
透明ガラス板の上面に透明電極3を形成した下側電極材と,透明樹脂フィルム2の下面に透明電極3を形成した上側電極材とをスペーサー4を介して対向配置させたタッチパネル1であって,
強化ガラスとは,自然拡散型のイオン交換法による化学強化が施されたものであり,
上記透明ガラス板として強化ガラス板6を使用している
タッチパネル1。」

3 引用文献2の記載

引用文献2には,以下の記載がある。

ア 「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
圧縮応力層の圧縮応力値が大きい程,或いは圧縮応力層の厚みが大きい程,強化ガラス板の機械的強度が高くなる。
【0007】
しかし,強化ガラス板の内部には,圧縮応力の大きさに相当する引っ張り応力が発生しており,その引っ張り応力によって強化ガラス板が破損するおそれがある。このような内部引っ張り応力は,圧縮応力層の圧縮応力値が大きい程,圧縮応力層の厚みが大きい程,或いは強化ガラス板の板厚が小さい程,大きくなる。
・・・(中略)・・・
【0012】
自己破壊による飛散を防止するために,強化ガラス板の表面に樹脂フィルムを張り合わせたものが提案されているが,樹脂フィルムは表面に傷が付き易く,特に保護部材としてタッチパネルディスプレイ等のデバイスに長期間使用した場合,外観が損なわれて,ディスプレイの視認性が低下してしまう。」
イ 「【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は,鋭意検討を行った結果,強化ガラス板と薄型の未強化ガラス板とを張り合わせた合わせガラスを用いることにより,上記技術的課題を解決できることを見出し,本発明として提案するものである。すなわち,本発明の合わせガラスは,表面に圧縮応力層を有する強化ガラス板と,表面に圧縮応力層を有しない未強化ガラス板とを備える合わせガラスであって,強化ガラス板の板厚が2.0mm以下であり,且つ未強化ガラス板の板厚が500μm以下であることを特徴とする。なお,強化ガラス板と未強化ガラス板の枚数は,特に限定されないが,合わせガラス全体の板厚を考慮すると,強化ガラス板1枚と未強化ガラス板1枚,或いは強化ガラス板1枚と未強化ガラス板2枚の組み合わせが好ましい。
【0016】
板厚2.0mm以下の強化ガラス板に板厚500μm以下の未強化ガラス板を張り合わせることにより,合わせガラス全体の板厚を小さくしつつ,合わせガラスの機械的強度を高めることができる。また,未強化ガラス板を強化ガラス板に張り合わせることにより,強化ガラス板が内部引っ張り応力により自己破壊した場合でも,ガラス片が飛散する事態を防止することができる。さらに,未強化ガラス板は表面に傷が付き難いため,長期間の使用により,ディスプレイ等の視認性が低下する事態を防止することができる。」
ウ 「【0033】
本発明に係る未強化ガラス板の板厚は500μm以下であり,400μm以下,300μm以下,200μm以下,100μm以下,特に50μm以下が好ましい。未強化ガラス板の板厚が小さい程,合わせガラスの薄型化・軽量化を図ることができる。」

4 周知技術

(1)特開2011-203522号公報

本願の優先日前に頒布された特開2011-203522号公報の段落0002~0011には,背景技術として,以下の記載がある。

「【背景技術】
【0002】
携帯電話やPDA等の携帯型の電子機器の薄型化に伴い,これらの電子機器に組み込まれる表示装置も薄型化されている。表示装置には,STNやTN液晶を用いたパッシブマトリックス方式の液晶表示装置,TN液晶をVAモードやIPSモードでTFT素子により駆動するアクティブマトリックス方式の液晶表示装置,有機EL及びプラズマディスプレイ等がある。中でも,液晶パネルを用いた液晶表示装置は,代表的な薄型表示パネルとして知られている。
【0003】
続きを表示(全21行)
液晶パネルは,カラーフィルターやTFTを形成した2枚のガラス基板をガラス基板の外周に設けたシール剤で接着して,その間隙に液晶を封入した構造である。ガラス基板の表面に設けた電極に駆動信号を印加することで液晶は駆動される。駆動信号は,ガラス基板に異方性導電膜によりフェイスダウン実装されたドライバICにより供給される。液晶パネルは,駆動信号のON信号,OFF信号により液晶分子を制御し,表裏に配置した光吸収型偏光板により光の吸収と透過を制御することにより表示している。
【0004】
この液晶パネルの表示方式には,外光を利用して表示する反射型と,背面に光源を配置して表示する透過型がある。透過型の液晶パネルでは,背面にバックライトが配置される。
【0005】
従来,液晶パネルの固定方法として,液晶パネルの表示部の外周に約0.02~0.1mmの厚みの両面テープを設けて,液晶パネルを背面部材に固定する方法が知られている。
【0006】
また,背面部材をバックライトし,耐衝撃性を向上させる固定方法として,光散乱粒子を配した弾性体を緩衝部材として用いて,液晶パネルの裏面との発光面を密着する方法が知られている(例えば,特許文献1を参照)。
【0007】
また,バックライトの導光板に拡散板やレンズシートを組み込むための凹みを設け,導光板の外周部に遮光両面テープを設けてフィルムを貼り付けてバックライトを構成し,このフィルムと液晶パネルを密着させる構造により,押し圧強度を向上させることが知られている(例えば,特許文献2を参照)。その他にも,液晶パネルの裏面を直接光学接着剤で導光板の発光面に全面接着する方法がある。
【0008】
近年,これら液晶パネルとバックライトに加えて,表示面に配置される保護板や透明タッチパネル等の透明体を備える表示装置も広く用いられるようになっている。保護板はガラス基板の割れを防止するために用いられ,PMMAなどのアクリルや強化ガラスで作製される。強化ガラスは,ガラス厚が0.5~10mmのときには化学強化ガラスが多く採用されている。特にガラス厚が厚い場合は,風冷強化ガラスが採用される。タッチパネルには,アナログ抵抗膜方式やデジタル抵抗膜方式,静電容量方式,超音波方式,電磁誘導方式などがある。電磁誘導方式の場合は,表示パネルの表示面に,傷防止のガラス基板を貼り合せる場合がある。静電容量方式においても,表示面に強化ガラスを貼り合せる場合がある。
【0009】
このように透明体を有する液晶表示装置では,透明体と液晶パネルは,表示エリアの外周に設けた枠状の両面粘着テープで粘着固定されるか,表示エリアを含む全領域に透明接着剤や透明粘着シートを設けることにより全面貼付けされる。
【0010】
また,液晶パネルの表示面に保護板やタッチパネル等の透明体を全面接着し,液晶パネルと導光板との間に流れ止め部材を設け,透明体と導光板が表示パネルの外側で重なりあう部分で接着固定する方法が知られている(例えば,特許文献3を参照)。この方法によれば,液晶パネルとバックライトを剥がれなく,かつ輝度を低下させることなく固定できるとともに,表示装置の耐衝撃を向上させることができる。
【0011】
また,表示面側に透明体を持つ表示装置を電子機器に収納する構造には,表示部に開口を持つ外装ケースを用いて透明体の外周上部から押さえる構造,透明体に段差を設けてその一段下がった段差部を外装ケースで押さえる構造,透明体に表示パネルより大きい固定用の外周部があり,その外周部の裏面に粘着シートを貼り付けて電子機器と粘着固定する構造がある。」

(2)特開2011-209470号公報

本願の優先日前に公開された特開2011-209470号公報の段落0002~0003には,背景技術として,以下の記載がある。

「【背景技術】
【0002】
近年,液晶パネルの薄型化に伴い,液晶パネルの表示面に傷や衝撃から保護するカバーガラス等の透明な保護板が設置された液晶表示装置が普及している。また,電子機器の多機能化に伴い,液晶パネルの表示面にタッチパネルが設置された液晶表示装置も広く利用されている。このような液晶表示装置では,液晶パネルと透明な保護板またはタッチパネル(以下,透明体と称す)との間に屈折率の異なる空気層が介在すると,光が空気層により反射されて液晶表示装置の透過率が低下するため,液晶パネルと透明体との間に光学接着剤が充填される構成が広く知られている。このような構成によれば,液晶パネルと透明体が一体化されるため,耐衝撃性が向上する利点がある。
【0003】
また,液晶表示装置では,液晶パネルを背面から照明するためのバックライトが用いられる場合がある。このような場合に,表面に液晶パネルよりもひと回り大きい透明体が光学接着剤により貼り合された液晶パネルがバックライトとともに,枠体であるバックライトフレームへ組み込まれる構成が知られている。また,このような液晶表示装置において,透明体とバックライトフレームが,液晶パネルの外側で重なり合う部分で常温硬化型の接着剤により一体的に接着することにより,耐衝撃性を向上させる構成も提案されている(例えば,特許文献1及び特許文献2参照)。」

(3)小括

上記(1)および(2)より,特に下線部に着目すると,液晶パネルの表示面にタッチパネルが設置された液晶表示装置の技術分野において,耐衝撃性を向上させるために,背面にバックライトが配置された透過型の液晶パネルとタッチパネル等の透明体との間に光学接着剤を充填して接着固定する技術は,本願の優先日前に周知であったと認められる。

第5 当審の判断

1 対比

本願発明と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。

ア 引用発明のタッチパネル1は,指やペンなどで上から押圧することにより位置入力が行われるタッチパネルであり,位置入力に際して,指やペンなど,タッチパネルに接触する物体の位置を感知している。

また,引用発明は,フロントライト7および液晶パネル8の上方に配置されたタッチパネル1であるから,フロントライト7および液晶パネル8を含めて考慮すれば,タッチパネルにフロントライト7および液晶パネル8からなる表示装置が装着された表示装置付タッチパネルであるといえる。

したがって,引用発明は,本願発明と,同様に,接触物体を感知するタッチパネルと,前記タッチパネルに表示装置が装着された表示装置付タッチパネルであるといえる。

イ 引用発明は,透明ガラス板の上面に透明電極3を形成して下側電極材を構成しており,当該透明ガラス板は,透明電極3の基板としての機能を果たしているといえるから,引用発明の「透明ガラス板」は,本願発明の「ガラス基板」に相当するといえる。

ウ 引用発明は,指やペンなどのタッチパネルに接触する物体に接する面に,厚み75~250μmの透明樹脂フィルム2を有しており,本願発明は,接触物体と接触する面に,厚み300μm以下のガラスフィルムで構成されたカバーガラスを有している。

したがって,本願発明と,引用発明とは,接触物体と接触する厚み300μm以下のフィルムを有している点で共通しているといえる。

エ 引用発明は,透明樹脂フィルム2の下面に透明電極3を形成した上側電極材と,透明ガラス板の上面に透明電極3を形成して下側電極材と,を有しており,これらが,指やペンなど,フィルムに接触する物体の位置を感知する感知パターンを形成していることは,当業者にとって明らかであるから,引用発明は,本願発明と,同様に,ガラス基板とフィルムの間に配置され,接触物体が前記フィルムに接触したことを感知する感知パターンを有しているといえる。

オ 引用発明の透明ガラス板は,強化ガラスであるから,引用発明は,本願発明と,同様に,ガラス基板は強化ガラスで構成されているといえる。

カ 引用発明は,フロントライト7および液晶パネル8の上方に配置されたタッチパネル1を備えた液晶表示装置であるから,タッチパネルにフロントライト7および液晶パネル8からなる表示装置が装着された表示装置付タッチパネルであるといえる。

したがって,本願発明と引用発明とは,表示装置が,前記タッチパネルの前記ガラス基板に,装着されている点で共通している。

しかし,本願発明では,表示装置が,前記タッチパネルの前記ガラス基板に,固着層を設けて固着されているのに対して,引用発明では,表示装置が,前記タッチパネルの前記ガラス基板に,固着層を設けて固着されていない点で相違している。

2 一致点および相違点

本願発明と,引用発明とは,以下(1)の点で一致し,以下(2)の点で相違する。

(1)一致点

「 接触物体を感知するタッチパネルと,前記タッチパネルに表示装置が装着された表示装置付タッチパネルであって,
前記タッチパネルは,
ガラス基板と,
前記接触物体と接触するフィルムと,
前記ガラス基板と前記フィルムの間に配置され,前記接触物体が前記フィルムに接触したことを感知する感知パターンと,を有し,
前記ガラス基板は強化ガラスで構成され,前記フィルムは厚み300μm以下のフィルムで構成されており,
前記表示装置は,前記タッチパネルの前記ガラス基板に,装着されている,
表示装置付タッチパネル。」

(2)相違点

ア 相違点1

本願発明では,フィルムがガラスフィルムであるのに対して,引用発明では,フィルムが透明樹脂フィルムである点。

イ 相違点2

本願発明では,表示装置が,前記タッチパネルの前記ガラス基板に,固着層を設けて固着されているのに対して,引用発明では,表示装置が,前記タッチパネルの前記ガラス基板に,固着層を設けて固着されていない点。

3 相違点について

上記相違点について,判断する。

(1)相違点1について

上記第4の1キに摘記したように,引用発明は,「タッチパネルに著しく大きな入力負荷がかけられて仮に透明ガラス板が割れたとしても,透明電極側或いはその反対側において透明樹脂フィルムと全面で貼り合わされているため,ガラスの飛散を防ぐ事が出来る。」(段落0032)という効果を奏している。

さらに,上記第4の3アおよびイに摘記したように,引用文献2には,「自己破壊による飛散を防止するために,強化ガラス板の表面に樹脂フィルムを張り合わせたものが提案されているが,樹脂フィルムは表面に傷が付き易く,特に保護部材としてタッチパネルディスプレイ等のデバイスに長期間使用した場合,外観が損なわれて,ディスプレイの視認性が低下してしまう。」(段落0012)という課題を解決するために,「強化ガラス板に板厚500μm以下の未強化ガラス板を張り合わせる」(段落0016)という技術思想が開示されており,これにより,「合わせガラス全体の板厚を小さくしつつ,合わせガラスの機械的強度を高めることができる。また,未強化ガラス板を強化ガラス板に張り合わせることにより,強化ガラス板が内部引っ張り応力により自己破壊した場合でも,ガラス片が飛散する事態を防止することができる。さらに,未強化ガラス板は表面に傷が付き難いため,長期間の使用により,ディスプレイ等の視認性が低下する事態を防止することができる。」(段落0016)という効果を奏することが開示されている。

また,上記第4の3ウに摘記したように,「未強化ガラス板の板厚は500μm以下であり,400μm以下,300μm以下,200μm以下,100μm以下,特に50μm以下が好ましい。未強化ガラス板の板厚が小さい程,合わせガラスの薄型化・軽量化を図ることができる」(段落0033)とされている。

したがって,引用発明において,接触物体と接触するフィルムとして,透明樹脂フィルムを用いる構成に代えて,引用文献2に記載の未強化ガラス板を採用することは,当業者が容易に想到し得たものである。

(2)相違点2について

上記第4の4(3)で認定したように,液晶パネルの表示面にタッチパネルが設置された液晶表示装置の技術分野において,耐衝撃性を向上させるために,背面にバックライトが配置された透過型の液晶パネルとタッチパネル等の透明体との間に光学接着剤を充填して接着固定する技術は,本願の優先日前に周知であったと認められるから,引用発明において,表示装置として,フロントライト7および液晶パネル8からなる反射型液晶表示装置を用いる構成に代えて,当該周知技術を採用して,タッチパネルのガラス板側に,光学接着剤を充填して,背面にバックライトが配置された透過型の液晶パネルを接着固定する構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たものである。

(3)作用効果について

本願発明の作用効果も,当業者が容易に想到しうる範囲内のものに過ぎない。

(4)請求人の主張について

ア 請求人は,令和2年6月30日提出の意見書において,上記2(2)イで述べた相違点2に係る構成について,以下のように主張している。

「(ii)本発明と引用文献1,2とは,表示装置付タッチパネルの構成が異なります。
本発明の表示装置付タッチパネルは,タッチパネルのガラス基板と表示装置とが,固着層で直接固着されています。これにより,タッチパネルのガラス基板と表示装置の間に空気層が存在するおそれが無くなり,タッチパネルを通して視認する表示装置の視認性が向上します。また,近年,表示装置が高精細化しており,表示装置とタッチパネルとの位置合わせが困難化しているところ,タッチパネルと表示装置とが固着層で固着されているため,タッチパネルと表示装置とが相対移動しないことによりタッチパネルと表示装置とが位置ズレし難く,タッチパネルと表示装置との位置精度安定性が向上します。
一方,引用文献1の〔図3〕に記載されている表示装置付タッチパネルは,強化ガラス板6には,液晶パネル9側に透明樹脂フィルム2が必須の構成要件として設けられており(引用文献1〔請求項2〕),本発明のように,強化ガラス板6と液晶パネル9とが直接固着層で固着する構成とはなっておりません。引用文献1のような構成ですと,タッチパネル1と液晶パネル9の間に透明樹脂フィルム2が設けられている分だけ,タッチパネルと液晶パネルとの距離が遠くなるため,タッチパネルを通して視認する液晶パネルの視認性が本発明よりも劣ります。
また,引用文献1の〔0004〕,〔図7〕には,「入力により透明樹脂板11に負荷がかかったときに,透明樹脂板11が大きく撓んで液晶パネルまたはフロントライトの表面に接触してしまうことがあった。」と記載されていることから,引用文献1では,タッチパネルと液晶パネルとが,離間して配置されているものと思料します。引用文献1に記載されているように,タッチパネルと液晶パネルとが離間して配置されていると,タッチパネルと液晶パネルとの間の距離が遠くなるに加えて,タッチパネルと液晶パネルとの間に空気層(屈折率1.0)が配置されることとなり,外光がタッチパネルから空気層に入射する際にガラス基板表面で反射が生じ,タッチパネルを通して視認する液晶パネルの視認性が更に劣ることとなります。さらに加えて,タッチパネルと液晶パネルとを離間して配置する場合は,本発明のようにタッチパネルと表示装置とを直接固着する形態と比較して,デバイスに組み込む際にタッチパネルと液晶パネルとの位置精度安定性に劣ります。
引用文献2には,タッチパネルディスプレイ等の保護部材に使用される合わせガラスが記載されていますが,タッチパネルとディスプレイとをどのように固定するか等のタッチパネルディスプレイの具体的な構成については,記載されておりません。
してみれば,引用文献1,2を組み合わせたとしても,「前記表示装置は,前記タッチパネルの前記ガラス基板に,固着層を設けて固着されている,」を必須の構成要件とする本発明に想到することはできません。」

イ 上記請求人の主張について検討する。

(ア)視認性の向上について

上記第4の4(2)に摘記したように,本願の優先日前に公開された特開2011-209470号公報の段落0002には,背景技術として,「液晶表示装置では,液晶パネルと透明な保護板またはタッチパネル(以下,透明体と称す)との間に屈折率の異なる空気層が介在すると,光が空気層により反射されて液晶表示装置の透過率が低下するため,液晶パネルと透明体との間に光学接着剤が充填される構成が広く知られている。」と,上記第4の4(3)で認定した周知技術に関する記載がある。

したがって,引用発明において,表示装置として,タッチパネルのガラス板側に,空気層を介して,フロントライト7および液晶パネル8からなる反射型液晶表示装置を用いる構成に代えて,当該周知技術を採用して,タッチパネルのガラス板側に,光学接着剤を充填して,背面にバックライトが配置された透過型の液晶パネルを接着固定する構成を採用した場合に,液晶表示装置の透過率が向上して,視認性が向上することは,当業者が容易に想到し得たものである。

(イ)位置精度安定性の向上

また,引用発明において,表示装置として,タッチパネルのガラス板側に,空気層を介して,フロントライト7および液晶パネル8からなる反射型液晶表示装置を用いる構成に代えて,当該周知技術を採用して,タッチパネルのガラス板側に,光学接着剤を充填して,背面にバックライトが配置された透過型の液晶パネルを接着固定する構成を採用した場合に,装着強度が向上して,位置精度安定性が向上することも,当業者にとって自明である。

(ウ)小括

上記3(2)で述べたように,引用発明において,上記第4の4(3)で認定した周知技術を採用して,相違点2に係る構成とすることは,当業者にとって容易に想到し得たものであり,また,上記(ア)および(イ)より,相違点2に係る構成とすることにより達成されると請求人が主張する作用効果についても,当業者が容易に想到し得たものに過ぎないから,上記アの請求人主張は採用できない。

第6 むすび

以上のとおり,本願発明は,その優先日前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項ならびに周知技術に基づいて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって,本願は,その余の請求項について論及するまでもなく,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。

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2019-001638

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