意匠拒絶査定不服審判
2019-001341
自動車用タイヤ
- 審判番号
- 2019-001341
- 法域
- 意匠
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 意願2018-001001外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年01月31日
- 審決日
- 2019年08月06日
- 公報発行日
- 2019年11月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】青島森麒麟輪胎股▲フン▼有限公司
- 【請求人代理人】▲吉▼川 俊雄
- 分類
- D18 .113-WY (G2-9)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 意匠法3条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 意匠法第3条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
意願2018- 1001「自動車用タイヤ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成30年(2018年)1月19日の意匠登録出願であって、同年4月24日付けの拒絶理由の通知に対し、同年8月9日に意見書が提出されたが、同年10月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成31年1月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「自動車用タイヤ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。
第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。
引用意匠は、日本国特許庁が平成14年(2002年)9月24日に発行した意匠公報に記載された、意匠登録第1154154号(意匠に係る物品、自動車用タイヤ)の意匠であり、その形態を、同公報に記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。
第4 対比
1 意匠に係る物品の対比
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも「自動車用タイヤ」であるから、一致するものである。
2 形態の対比
両意匠の形態を対比すると、その形態には、主として以下の共通点及び相違点が認められる。
なお、両意匠におけるトレッド部は、周方向に施した3本の断面視略逆等脚台形状の縦溝(以下「凹溝」という。)で4つの帯状区画に分割されているものとし、この分割されている各区画について、トレッド部の左右両端の区画を「左右ショルダー区画」、その内側の左右の区画を「左右内側区画」として以下表記することとする。
(1)形態の共通点
(共通点1)両意匠は、全体の態様が、横向き短円筒形状のタイヤの外周面に、略凸状に突出したトレッド部を設け、タイヤの左右側面に、略中空円板状のサイドウォール部を形成し、このサイドウォール部の内周側に、断面視略円弧状に切り欠いたような形態のやや肉厚なビード部を一体的に形成した構成とした点で共通する。
(共通点2)両意匠は、トレッド部の構成態様が、正面左から左ショルダー区画、左内側区画、右内側区画、及び右ショルダー区画といった4つの区画からなる構成とした点で共通する。
(共通点3)両意匠は、右内側区画の左端から右上に向かって横幅が漸次狭くなる略円弧状の溝(以下「円弧状溝」という。)を、下方の円弧状溝の先端部分が上方の円弧状溝の下から約1/3の付近に達する配置で、上下に略等間隔になるように形成している点で共通する。
(2)形態の相違点
(相違点1)本願意匠のトレッド部の構成態様が、周方向に施した3本の幅広な凹溝によって分割された、左ショルダー区画、左内側区画、右内側区画、及び左ショルダー区画のものと点対称の形態の右ショルダー区画の4つの区画からなる構成とし、左ショルダー区画、左内側区画、右内側区画及び右ショルダー区画の横幅の比率を、約1:0.5:1:1としたものであるのに対し、引用意匠のトレッド部の構成態様が、周方向に施した2本の幅広な凹溝によって分割された、左ショルダー区画、左内側区画及び右内側区画と、細幅な凹溝によって隔てられた右ショルダー区画の4つの区画からなる構成とし、左ショルダー区画、左内側区画、右内側区画及び右ショルダー区画の横幅の比率を約1:0.8:0.8:1としたものである点で、両意匠は相違する。
(相違点2)本願意匠の左ショルダー区画における具体的な溝部の形態が、左端の部分が僅かに拡がる、内側に向かって右上がりのやや湾曲した略細長帯状の横溝を、上下に略等間隔になるように形成したものであるのに対し、引用意匠の左ショルダー区画における具体的な溝部の形態が、正面から左側面にかけて略L字状に表れる溝を、上下に略等間隔になるように連結して形成し、その略L字状の溝の縦溝部分の中間部分からこの区画横幅の約3/4の位置にまで達する、略L字状の溝の横溝部分と平行な横溝を、上下に略等間隔になるように形成し、その横溝の右端付近に、1本のサイピングを周方向に形成したものである点で、両意匠は相違する。
(相違点3)本願意匠の左内側区画における具体的な溝部の形態が、この区画を横切るように形成した、内側に向かって右上がりのやや湾曲した略細長帯状の横溝と、この区画の左から横幅の約3/4の位置にまで達する、内側に向かって右上がりのやや湾曲した略細長帯状の短い横溝を、左ショルダー区画の略細長帯状の横溝と連続するような配置態様で、交互に略等間隔になるように形成したものであるのに対し、引用意匠の左内側区画における具体的な溝部の形態が、この区画の左右中央部のやや右側の位置に、1本の縦溝を周方向に形成し、この区画の左端から縦溝にまで達する、内側に向かって右上がりの略直線状の横溝と、内側に向かって右上がりの略直線状のサイピングを、この横溝が左ショルダー区画の略L字状の溝の横溝部分と連続するような配置態様で、交互に略等間隔になるように形成し、この横溝の先端部分から区画の右端に達する、内側に向かって右上がりの略直線状のサイピングを、この横溝と連続するように形成したものである点で、両意匠は相違する。
(相違点4)本願意匠の右内側区画における具体的な溝部の形態が、上下の円弧状溝を交差させて形成し、この交差部分のやや上方の位置から区間の右端にかけて形成した、外側に向かって右上がりのやや湾曲した略細長帯状の横溝と、この区画の右端から区画の横幅の約2/5の位置にまで達する、外側に向かって右上がりのやや湾曲したやや短い横溝を、交互に略等間隔になるように形成したものであるのに対し、引用意匠の右内側区画における具体的な溝部の形態が、上下の円弧状溝を接するように形成し、この区画の左端における上下円弧状溝間の中央部分から区画の右端にかけて、外側に向かって右上がりのやや湾曲した略円弧状の細溝を円弧状溝と交差させて、上下に略等間隔になるように形成したものである点で、両意匠は相違する。
(相違点5)本願意匠の右ショルダー区画における具体的な溝部の形態が、右端の部分が僅かに拡がるやや湾曲した右上がりの略細長帯状の横溝を、上下に略等間隔になるように形成したものであるのに対し、引用意匠の右ショルダー区画における具体的な溝部の形態が、正面から右側面にかけて略倒L字状に表れる溝を、上下に略等間隔になるように連結して形成し、この略倒L字状の溝の縦溝部分の中間部分からこの区画の横幅の右から約2/3の位置にまで達する、略倒L字状の溝の横溝と平行な略直線状のサイピングを、上下に略等間隔になるように形成したものである点で、両意匠は相違する。
第5 判断
1 意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、一致するものであるから同一である。
2 形態の共通点及び相違点の評価
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し、本願意匠と引用意匠が類似するか否か、すなわち両意匠の類似性について考察する。
(1)形態の共通点
(共通点1)の全体の態様、及び(共通点2)のトレッド部を4つの区画からなる構成とする態様は、自動車用タイヤの基本的な構成態様といえるものであり、ごく一般的なものにすぎず、両意匠のみに認められる格別の特徴であるとはいえないから、この(共通点1)及び(共通点2)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(共通点3)の円弧状溝の形態及び配置態様は、両意匠の該部位の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであり、詳細に見れば下方の円弧状溝の先端部分が上方の円弧状溝と交差するといった点が相違する上に、本願意匠の該部位の形態自体もごく普通に見られるものにすぎないから(例えば、意匠登録第1309168号の意匠参照)、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず、この(共通点3)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(2)形態の相違点
(相違点1)は、トレッド部の構成態様に係るものであって、本願意匠が、左内側区画のみ区画幅を略半幅としたものであって、区画の幅が左右非対称のタイヤであるとの印象を与えるのに対し、引用意匠は、左右ショルダー区画同士、左右内側区画同士の区画幅がほぼ同じものであって、区画の幅が左右対称のタイヤであるとの印象を与えるから、両意匠はトレッド部の構成態様における美感に大きな差異がある。
(相違点2)は、左ショルダー区画における具体的な溝部の形態に係るものであって、この区画を縦方向に見たときに、本願意匠が、上下辺が僅かに湾曲した単純な形態の略長方形状のブロックを、上下に連続して形成したものが表れているとの印象を与えるのに対し、引用意匠は、上下辺が僅かに湾曲した複雑な形態の略横凹状のブロックを上下に連続して形成したものが表れているとの印象を与えるから、両意匠は左ショルダー区画における溝部の美感に大きな差異がある。
(相違点3)は、左内側区画における具体的な溝部の形態に係るものであって、この区画を縦方向に見たときに、本願意匠が、上下辺が僅かに湾曲した複雑な形態の略横凹状のブロックを上下に連続したものが表れているとの印象を与えるのに対し、引用意匠は、上下を溝で区切った単純な形態の略平行四辺形状のブロックと、上下をサイピングで区切った単純な形態の略平行四辺形状の平坦部分を、周方行に形成した縦溝を挟んで並設し、それらを上下に連続したものが表れているとの印象を与えるから、両意匠は左内側区画における溝部の美感に大きな差異がある。
(相違点4)は、右内側区画における具体的な溝部の形態に係るものであって、この区画を縦方向に見たときに、本願意匠が、上下に略等間隔になるように形成した円弧状溝の右側に、上下辺が僅かに湾曲した複雑な形態の略横凹状のブロックを上下に連続したものが表れているとの印象を与えるのに対し、引用意匠は、上下に略等間隔になるように形成した円弧状溝のみが表れているとの印象を与えるから、両意匠は左内側区画における溝部の美感に大きな差異がある。
(相違点5)は、右ショルダー区画における具体的な溝部の形態に係るものであって、この区画を縦方向に見たときに、本願意匠が、上下辺が僅かに湾曲した単純な形態の略長方形状のブロックを、上下に連続して形成したものが表れているとの印象を与えるのに対し、引用意匠は、サイピングを重視すれば略横凹状のブロックを上下に連続したものが表れているとの印象を与えるから、両意匠は左ショルダー区画における溝部の美感に一定の差異がある。
3 両意匠の類否判断
両部分の形態における各共通点及び相違点についての個別評価に基づき、意匠全体として全ての共通点及び相違点を総合的に観察した場合、両意匠は、需要者が注視するといえる自動車の走行性能に関わるトレッドの右ショルダー区画を除く各区画における具体的な溝部の形態の美感に大きな差異があり、両意匠の全体の態様、トレッド部の構成態様、並びに円弧状溝の概括的な形態及び配置態様が共通することを考慮しても、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が同一であるが、その形態においては、共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であるのに対して、相違点が類否判断に及ぼす影響はそれぞれ大きく、意匠全体として見た場合には、これらの相違点が相まって生じる視覚的効果は、共通点のそれを凌駕して看者に別異の印象を与え、両意匠に異なる美感を起こさせるものであるから、本願意匠が引用意匠に類似するということはできない。
第6 むすび
以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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