特許拒絶査定不服審判
2019-000337
コネクタ
- 審判番号
- 2019-000337
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-146477外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年01月11日
- 審決日
- 2020年02月03日
- 公報発行日
- 2020年03月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (H01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-146477号「コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月 8日出願公開、特開2016- 24882号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
1.手続の経緯及び本願発明
本願は、平成26年7月17日の出願であって、平成30年3月23日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年10月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成31年1月11日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
そして、本願の請求項1及び2に係る発明(以下、「本願発明1及び2」という。)は、平成30年5月1日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本願発明1は次のとおりのものである。
「【請求項1】
ハウジングと、このハウジングの一側面側に設けられ複数の導体部が設けられた回路基板の端部が挿入される挿入部と、前記ハウジングに収容され前記挿入部に配置される箱部を有する端子と、前記箱部の内外に出没可能に設けられ前記回路基板の導体部に接触される接点部を有する弾性片と、前記ハウジングの挿入部に組付けられるホルダと、このホルダに前記端子の箱部側に向けて延設され前記ホルダが前記ハウジングに組付けられるときに前記端子の箱部に挿入され前記弾性片と当接して前記弾性片を変位させて前記接点部を前記箱部外に出させる押上部とを備えたコネクタであって、
前記押上部には、前記弾性片の変位量を超えて前記接点部が前記回路基板の導体部と接触するときに、前記弾性片の変位を許容する吸収部が設けられ、
前記吸収部は、前記弾性片に変位量を超えた力が加わったときに、前記押上部を前記弾性片の変位方向に撓ませ、前記弾性片に加わる力を逃がすバネ部であることを特徴とするコネクタ。」
なお、本願発明2は、本願発明1を減縮した発明である。
2.原査定の概要
原査定は、本願発明1及び2は、その出願前に日本国内において頒布された以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
引用文献1:特開2011-100652号公報
引用文献2:特開平11-307194号公報
3.引用文献
(1)引用文献1に記載された事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。以下同様。
ア
「【0024】
図1,図2及び図3において、本発明に係る基板コネクタ装置の一例を成す基板コネクタ装置10は、合成樹脂等の絶縁材料によって形成された絶縁ハウジング11を備えており、絶縁ハウジング11は、その内部において、複数のケーブル12Aに夫々連結されたもとで、絶縁ハウジング11の長手方向である第1の方向に配列配置された複数の接続端子13Aの組(第1の組)と、同じく複数のケーブル12Bに夫々連結されたもとで第1の方向に配列配置された複数の接続端子13Bの組(第2の組)とを、第1の方向に直交する第2の方向において相互対向させて保持している。絶縁ハウジング11による複数の接続端子13Aの組及び複数の接続端子13Bの組の保持は、全体としてコ字状に形成されて第1の方向に伸び、複数の接続端子13A及び複数の接続端子13Bについての位置決めを行うとともに抜止めの役割を果たす保持部材であるリテーナ14を介して行われる。
【0025】
接続端子13Aもしくは13Bのケーブル12Aもしくは12Bとの連結は、図4に示されるようにしてなされる。・・・(中略)・・・なお、接続端子13Aもしくは13Bは、その内部に弾性導電コンタクト部133を有している。」
イ
「【0026】
絶縁ハウジング11の外側には、第1のスライダ15が配されている。第1のスライダ15には、各々が第1の方向に伸びるスリット16及び17が形成されていて、スリット16には、絶縁ハウジング11に設けられた一対の係合突起部18がスリット16内において第1の方向に移動可能に係合しており、また、スリット17には、絶縁ハウジング11に設けられた一対の係合突起部19がスリット17内において第1の方向に移動可能に係合している。それにより、第1のスライダ15は、スリット16と一対の係合突起部18との係合による案内及びスリット17と一対の係合突起部19との係合による案内、即ち、絶縁ハウジング11による案内を受けるもとで、絶縁ハウジング11に対して第1の方向に移動可能とされている。
【0027】
第1のスライダ15には、第2のスライダ20が、第1のスライダ15に対して上述の第1の方向及び第2の方向の夫々に直交する第3の方向、即ち、複数のケーブル12A及び複数のケーブル12Bに対して近接もしくは離隔する方向における移動が可能とされて係合している。第2のスライダ20には、一対の係合ピン21及び一対の係合ピン22が外方に突出するものとして設けられている。一対の係合ピン21は第1のスライダ15に設けられた一対の係合溝23に夫々係合しており、各係合ピン21は、それが係合する係合溝23内において係合溝23に沿った移動が可能とされている。また、一対の係合ピン22は第1のスライダ15に設けられた一対の係合溝24に夫々係合しており、各係合ピン22は、それが係合する係合溝24内において係合溝24に沿った移動が可能とされている。」
ウ
「【0030】
また、第2のスライダ20には、その正面側端面部26に、第1の方向に伸びる開口部を形成する基板差込部27が設けられている。この基板差込部27を通じて、カード基板等の基板が基板コネクタ装置10に差し込まれる。」
エ
「【0031】
図5に示されるように、複数のケーブル12Aに夫々連結されたもとで絶縁ハウジング11により保持された第1の組を成す複数の接続端子13Aの夫々と、複数のケーブル12Bに夫々連結されたもとで絶縁ハウジング11により保持された第2の組を成す複数の接続端子13Bの夫々とは、第2のスライダ20の内部において、予め設定された所定の間隔をおいて相互対向する状態におかれている。斯かるもとでは、各接続端子13Aにおける弾性導電コンタクト部133と各接続端子13Bにおける弾性導電コンタクト部133とが、各々の中間部133aを所定の間隔をおいて相互対向させる位置に配されている。各接続端子13Aにおける弾性導電コンタクト部133の中間部133a及び各接続端子13Bにおける弾性導電コンタクト部133の中間部133aは、後述されるように、各弾性導電コンタクト部133の基板における端子部に当接する部分を形成している。
【0032】
そして、図5に示されるように、第2のスライダ20には、その内部に、各々が接続端子13Aにおける弾性導電コンタクト部133の自由端部133bもしくは自由端部133b近傍部分に当接する複数のコンタクト当接部28Aが第1の方向に配列配置されて設けられているとともに、各々が接続端子13Bにおける弾性導電コンタクト部133の自由端部133bもしくは自由端部133b近傍部分に当接する複数のコンタクト当接部28Bが第1の方向に配列配置されて設けられている.
【0033】
上述のように構成される基板コネクタ装置10には、図6及び図7に示されるように、第2のスライダ20の正面側端面部26に対して、例えば、電子部品である電子制御ユニット30が対向配置され、その後、電子制御ユニット30が備えるカード基板を形成する基板31が、第2のスライダにおける正面側端面部26に設けられた基板差込部27を通じて差し込まれる。
【0034】
図6及び図7に示される電子制御ユニット30は、開口部32を有した筐体33を備えていて、基板31を含む各部が筐体33内に収容されている。そして、基板31は、その一端部に複数の端子部が配列配置されて設けられたものとされており、その複数の端子部が配列配置されて設けられた一端部が、筐体33に設けられた開口部32を通じて外部に臨んでいる。・・・(後略)・・・」
オ
「【0036】
図6及び図7に示されるように、相互対向するものとされた基板コネクタ装置10及び電子制御ユニット30は、その後、図8及び図9に示されるように、・・・(中略)・・・相互係合せしめられる。・・・(中略)・・・それにより、基板コネクタ装置10と電子制御ユニット30との相互に接近する移動が、突起34及び溝36と突起35及び溝37とによる案内を受けるもとで行われる。
【0037】
そして、このとき、図9に示されるように、電子制御ユニット30が備える基板31における複数の端子部が配列配置されて設けられた一端部が、基板コネクタ装置10の第2のスライダ20に設けられた基板差込部27を通じて第2のスライダ20の内部に差し込まれ、所定の間隔をおいて相互対向する状態におかれた第1の組を成す複数の接続端子13Aの夫々と第2の組を成す複数の接続端子13Bの夫々との間、さらに詳細には、各接続端子13Aにおける弾性導電コンタクト部133の中間部133aと各接続端子13Bにおける弾性導電コンタクト部133の中間部133aとの間に配される。斯かるもとにあっては、各接続端子13Aにおける弾性導電コンタクト部133及び各接続端子13Bにおける弾性導電コンタクト部133は、各々の中間部133aに、基板31における複数の端子部のうちの対応するものに対して非接触となる状態、もしくは、実質的に押圧力を作用させない接触状態をとらせる。
【0038】
続いて、各接続端子13Aにおける弾性導電コンタクト部133及び各接続端子13Bにおける弾性導電コンタクト部133の各々の中間部133aに、基板31における複数の端子部のうちの対応するものに対する押圧当接状態をとらせるべく、図10及び図11に示されるように、第1のスライダ15が、絶縁ハウジング11に対し、第1の方向において図8に示される基板コネクタ装置10における右下から左上に向う向きをもって移動せしめられる。・・・(後略)・・・
【0039】
それに伴って、電子制御ユニット30の筐体33内に挿入された第2のスライダ20が、第1のスライダ15に設けられた係合溝23及びそれに係合する係合ピン21と第1のスライダ15に設けられた係合溝24及びそれに係合する係合ピン22とによる案内を受けるもとで、第3の方向において複数のケーブル12A及び12Bに近づく向きをもって移動する。このとき、図11に示されるように、第2のスライダ20の内部に設けられた複数のコンタクト当接部28Aの夫々が、第1の組を成す複数の接続端子13Aの夫々における弾性導電コンタクト部133の自由端部133bを、第3の方向において基板31に近づく向きをもって変位させ、また、第2のスライダ20の内部に設けられた複数のコンタクト当接部28Bの夫々が、第2の組を成す複数の接続端子13Bの夫々における弾性導電コンタクト部133の自由端部133bを、第3の方向において基板31に近づく向きをもって変位させる。
【0040】
それにより、第1の組を成す複数の接続端子13Aの夫々における弾性導電コンタクト部133が弾性変形を生じて、その中間部133aに、基板31における複数の端子部のうちの対応するものに対する押圧当接状態をとらせ、また、第2の組を成す複数の接続端子13Bの夫々における弾性導電コンタクト部133が弾性変形を生じて、その中間部133aに、基板31における複数の端子部のうちの対応するものに対する押圧当接状態をとらせる。斯かる各弾性導電コンタクト部133の中間部133aの基板31における端子部に対する押圧当接は、各弾性導電コンタクト部133の弾性変形により生じる弾性力が比較的大なる押圧力として作用するもとで行われるので、確実かつ安定に行われる。
【0041】
その結果、基板31に配された複数の端子部が、基板コネクタ装置10における第1及び第2の組を成す複数の接続端子13A及び13Bとの電気的接続が確実になされた状態におかれる。」
カ
【図4】から、接続端子13A、13Bは箱部を有していることを看取しうる。
キ
上記オの段落【0037】の「電子制御ユニット30が備える基板31における複数の端子部が配列配置されて設けられた一端部が、・・・各接続端子13Aにおける弾性導電コンタクト部133の中間部133aと各接続端子13Bにおける弾性導電コンタクト部133の中間部133aとの間に配される。」との記載、並びに、【図5】及び【図9】の記載から、絶縁ハウジング11は、その一側面側に、基板31の一端部が挿入されるとともに、接続端子13A、13Bの箱部が配置される空間部を有していると認められる。
ク
上記オの段落【0037】、【0039】及び【0040】の記載によれば、第2のスライダ20の内部に設けられたコンタクト当接部28A、28Bは、弾性導電コンタクト部133、133の自由端部133b、133bを基板31に近づく向きに変位させて、中間部133a、133aを基板31の端子部に対して非接触状態から押圧当接状態とするものであるので、【図9】の記載を合わせみれば、弾性導電コンタクト部133、133の中間部133a、133aは、接続端子13A、13Bの箱部の内外に出没可能であり、コンタクト当接部28A、28Bは、弾性導電コンタクト部133、133の自由端部133b、133bを変位させることに伴い、中間部133a、133aを箱部の外に出すものと認められる。
ケ
上記エの段落【0032】の記載及び【図5】の記載から、第2のスライダ20のコンタクト当接部28A、28Bは、弾性導電コンタクト部133、133の箱部側に向けて延設されていると認められる。
コ
上記オの段落【0039】の「電子制御ユニット30の筐体33内に挿入された第2のスライダ20が、・・・第3の方向において複数のケーブル12A及び12Bに近づく向きをもって移動する。」との記載、及び【図9】並びに【図11】の記載から、第2のスライダ20は絶縁ハウジング11に押し込まれていくものと認められる。
以上の記載事項、図示内容及び認定事項からみて、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
〔引用発明〕
「絶縁ハウジング11と、
この絶縁ハウジング11の一側面側に設けられ複数の端子部が設けられた基板31の一端部が挿入される空間部と、
前記絶縁ハウジング11の内部に保持され前記空間部に配置される箱部を有する接続端子13A、13Bと、
前記箱部の内外に出没可能に設けられ前記基板31の端子部に当接する中間部133a、133aを有する弾性導電コンタクト部133、133と、
前記絶縁ハウジング11に組付けられる第2のスライダ20と、
この第2のスライダ20に前記接続端子13A、13Bの箱部側に向けて延設され前記第2のスライダ20が前記絶縁ハウジング11に押し込まれていくときに前記接続端子13A、13Bの箱部に挿入され前記弾性導電コンタクト部133、133の自由端部133b、133bに当接して前記弾性導電コンタクト部133、133の自由端部133b、133bを基板31に近づく向きに変位させて前記中間部133a、133aを箱部外に出させるコンタクト当接部28A、28Bとを備えた基板コネクタ装置10。」
(2)引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コネクタに関し、特に、挿着相手側の回路体の反り等に合わせて、収容された端子が追従し得るコネクタに関する。」
イ
「【0023】図1及び図2において、31はメータボックス用(これに限定するものではない)のコネクタを示している。コネクタ31は、合成樹脂製のコネクタハウジング32と、例えばリン青銅などの剛性を有する良導電性の金属板からプレス加工により折曲形成されて成る端子33と、SUS材などの金属板からプレス加工により折曲形成されて成るとともに十分なバネ性を有する弾性部材34とを備えて構成されており、回路体としての配線基板35を設けた挿着相手としてのメータボックス36のコネクタ収容部37に挿着されるようになっている。
【0024】コネクタハウジング32には、内部中央にそのコネクタハウジング32を横断するような格好で支壁38が形成されており、その支壁38の先端で支壁38と直交する方向に端子33を収容するための複数のキャビティ39が設けられている。また、キャビティ39と上壁32a及び下壁32bとの間には、配線基板35に対する挿し込み空間40(特許請求の範囲に記載した一方の挿し込み空間に相当)と、弾性部材34に対する挿し込み空間41(特許請求の範囲に記載した他方の挿し込み空間に相当)とが形成されている。尚、32cは、コネクタハウジング32の成形性を考慮するための肉盗みである。
【0025】キャビティ39は略棺桶状に形成されており、各端子33を図示しない既知固定手段により一対一で収容できるようになっている。また、支壁38近傍の周壁39aには、切り欠き39b、39b(図2参照、一方のみ図示)が形成されてキャビティ39の可撓性(コネクタ31の挿着方向Pに対して直交方向となるQ方向)を確保できるようになっている。
【0026】挿し込み空間40は、コネクタハウジング32の前端部から後端部にかけて形成されており、その挿し込み空間40に各端子33が臨んでいる。挿し込み空間41は、コネクタハウジング32の前端部から支壁38にかけて開放するように形成されている。
・・・(中略)・・・
【0028】複数の端子33は、それぞれに略弓状に形成された電気接触部44と電気接触部44に連続する電線接続部45とを有しており、電気接触部44は、キャビティ39に挿着収容された際に、上壁32aとの間隔が配線基板35の板厚よりも狭くなるようにその高さが設定されている。また、電線接続部45には電線46が圧接されている。
【0029】弾性部材34は、図3に示される如く、前記キャビティ39の数に対応する分のバネ片47を複数有しており、そのバネ片47が基部48を介して横一列に櫛歯状に並設されている。バネ片47は、短冊片の中間部を折り返してその先端が基部48に向くよう略く字状に形成されており、前記挿し込み空間41の間隔と同じか若干高めに高さ設定されている。
・・・(中略)・・・
【0031】上記構成において、図1及び図2を参照しながらコネクタ31の組み立て工程と、コネクタ31をコネクタ収容部37に挿着する工程とを説明する。・・・(中略)・・・
【0032】次に、コネクタ31を矢線P方向に挿着して行くと、コネクタ31はコネクタ収容部37に収容されるとともに、挿し込み空間40内に配線基板35が進入し、その配線基板35に電気接触部44が当接する。そして、さらに挿着を続けると、略弓状の電気接触部44と配線基板35とが摺動し、電気接触部44が押しつけられてキャビティ39が挿し込み空間41側(矢線Q方向)へ撓まされる。キャビティ39が撓んでも、弾性部材34が挿し込み空間41に挿着されているので、その押しつけ力に抗してキャビティ39を付勢し、常に安定した接触荷重で端子33と端子接続部49との電気的接続が維持される。
【0033】一方、仮に配線基板35が反っていたり歪んでいたりした場合には、コネクタ31を挿着した際に、キャビティ39がその反り等に倣って撓むことになるので、上記同様に端子33と端子接続部49との電気的接続が維持される。」
4.対比・判断
(1)本願発明1
本願発明1と引用発明とを対比する。
後者の「絶縁ハウジング11」は、前者の「ハウジング」に相当する。
後者の「複数の端子部が設けられた基板31」は、前者の「複数の導体部が設けられた回路基板」に相当する。
後者の「基板31の一端部が挿入される空間部」は、前者の「回路基板の端部が挿入される挿入部」に相当する。
後者の「絶縁ハウジング11の内部に保持され」ることは、前者の「ハウジングに収容され」ることに相当する。
後者の「接続端子13A、13B」は、前者の「端子」に相当する。
後者の「基板31の端子部に当接する」ことは、前者の「回路基板の導体部に接触される」ことに相当し、後者の「中間部133a、133a」は、前者の「接点部」に、後者の「弾性導電コンタクト部133、133」は、前者の「弾性片」にそれぞれ相当する。
後者の「第2のスライダ20」は、前者の「ホルダ」に相当する。
後者の「第2のスライダ20が絶縁ハウジング11に押し込まれていくとき」は、前者の「ホルダがハウジングに組付けられるとき」に相当する。
後者の「弾性導電コンタクト部133、133の自由端部133b、133bに当接」することは、前者の「弾性片と当接」することに相当する。
後者の「弾性導電コンタクト部133、133の自由端部133b、133bを基板31に近づく向きに変位させ」ることは、前者の「弾性片を変位させ」ることに相当する。
後者の「中間部133a、133aを箱部外に出させる」ことは、前者の「接点部を箱部外に出させる」ことに相当する。
後者の「コンタクト当接部28A、28B」は、前者の「押上部」に相当する。
後者の「基板コネクタ装置10」は、前者の「コネクタ」に相当する。
そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
〔一致点〕
「ハウジングと、このハウジングの一側面側に設けられ複数の導体部が設けられた回路基板の端部が挿入される挿入部と、前記ハウジングに収容され前記挿入部に配置される箱部を有する端子と、前記箱部の内外に出没可能に設けられ前記回路基板の導体部に接触される接点部を有する弾性片と、前記ハウジングの挿入部に組付けられるホルダと、このホルダに前記端子の箱部側に向けて延設され前記ホルダが前記ハウジングに組付けられるときに前記端子の箱部に挿入され前記弾性片と当接して前記弾性片を変位させて前記接点部を前記箱部外に出させる押上部とを備えたコネクタ。」
〔相違点〕
「押上部」に関して、本願発明1は、「押上部には、弾性片の変位量を超えて接点部が回路基板の導体部と接触するときに、弾性片の変位を許容する吸収部が設けられ、吸収部は、弾性片に変位量を超えた力が加わったときに、押上部を弾性片の変位方向に撓ませ、弾性片に加わる力を逃がすバネ部である」とされているのに対して、引用発明は、コンタクト当接部28A、28Bがそのように構成されていない点。
上記相違点について、以下検討する。
引用文献2には(上記3.(2)参照)、
挿着相手側の回路体の反り等に合わせて、収容された端子が追従し得るコネクタに関し(段落【0001】)、
コネクタ31は、合成樹脂製のコネクタハウジング32と、例えばリン青銅などの剛性を有する良導電性の金属板からプレス加工により折曲形成されて成る端子33と、SUS材などの金属板からプレス加工により折曲形成されて成るとともに十分なバネ性を有する弾性部材34とを備えて構成されており(段落【0023】)、
コネクタハウジング32には、内部中央にそのコネクタハウジング32を横断するような格好で支壁38が形成されており、その支壁38の先端で支壁38と直交する方向に端子33を収容するための複数のキャビティ39が設けられ、また、キャビティ39と上壁32a及び下壁32bとの間には、配線基板35に対する挿し込み空間40と、弾性部材34に対する挿し込み空間41とが形成され(段落【0024】)、
キャビティ39の支壁38近傍の周壁39aには、切り欠き39b、39bが形成されてキャビティ39の可撓性(コネクタ31の挿着方向Pに対して直交方向となるQ方向)を確保できるようになっており(段落【0025】)、
挿し込み空間40内に配線基板35が進入していくと、その配線基板35にキャビティ39に収容した端子33の電気接触部44が当接し、さらに摺動すると、電気接触部44が押しつけられてキャビティ39が挿し込み空間41側(矢線Q方向)へ撓まされるが、キャビティ39が撓んでも、弾性部材34が挿し込み空間41に挿着されているので、その押しつけ力に抗してキャビティ39を付勢し、常に安定した接触荷重で端子33と端子接続部49との電気的接続が維持され(段落【0032】)、
仮に配線基板35が反っていたり歪んでいたりした場合には、コネクタ31を挿着した際に、キャビティ39がその反り等に倣って撓むことになるので、端子33と端子接続部49との電気的接続が維持される(段落【0033】)、
ことが記載されている。
しかしながら、本願発明1の「押上部」が有する基本的な構成といえる、「ハウジングの挿入部に組付けられるホルダ」に設けられ「ホルダがハウジングに組付けられるときに・・・弾性片と当接して弾性片を変位」させる構成に関し、引用文献2には、かかる構成に対応する構成を有する部材、具体的には、コネクタハウジング32の挿し込み空間40に組付けられる構造体に設けられ、当該構造体がコネクタハウジング32に組付けられるときに端子33の電気接触部44と当接して当該電気接触部44を変位させる構成を有する部材は、コネクタ31の部材として、記載も示唆もされていない。ましてや、そのような部材に、端子33の電気接触部44を変位させて配線基板35に接触させたときに生じた、端子33の電気接触部44の変位量として想定される範囲を超えた変位をさせる力を逃すような、バネからなる吸収部を設けることも、記載も示唆もされていないことから、引用文献2には、本願発明1の「押上部」に関する事項は、何ら記載されていないといえる。
そうすると、引用発明に引用文献2に記載の事項を適用しようとしたとしても、相違点に係る本願発明1の構成とすることはできない。
また、ほかに、引用発明を相違点に係る本願発明1の構成としうることを示す証拠、特に、引用発明における「コンタクト当接部28A、28B」を、相違点に係る本願発明1の構成における、「吸収部」としての「バネ部」を有する構成としうることを示す証拠は、見いだされない。
したがって、引用発明を相違点に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
よって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本願発明2
本願発明2は、本願発明1の発明特定事項を全て含み減縮した発明であるので、本願発明1と同様の理由で、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
5.むすび
以上のとおり、本願発明1及び2は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-000337