特許異議申立
2018-700447
照明器具
- 審判番号
- 2018-700447
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-134096
- 登録番号
- 特許第6241563号(P6241563)
- 請求日
- 2018年06月04日
- 審決日
- 2019年02月18日
- 公報発行日
- 2019年05月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東芝ライテック株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人酒井国際特許事務所
- 【異議申立人】梯 京子
- 審判長/審判官
- 審判長 島田 信一
- 審判官 氏原 康宏
- 審判官 一ノ瀬 覚
- 分類
- P1651.121-YAA(F21S) / P1651.536-YAA(F21S) / P1651.537-YAA(F21S) / P1651.55 -YAA(F21S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第44条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6241563号発明「照明器具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6241563号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。
特許第6241563号の請求項1及び2に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6241563号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成29年11月17日に特許権の設定登録がされ、同年12月6日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1及び2に係る特許について、平成30年6月4日に特許異議申立人梯京子(以下「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立てがなされ、同年8月23日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年10月29日に意見書の提出及び訂正請求がなされ、同年11月26日付けで訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項)、同年12月28日に特許異議申立人より意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否
1 訂正請求について
1-1 訂正の内容
平成30年10月29日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を、次のとおりに訂正する(下線は、特許権者が訂正箇所を示すものとして付したものである。以下同様。)。
「【請求項1】
中央部に開口が形成された本体と;
前記本体の前面側を覆うように前記本体に設けられる拡散性を有する乳白色のカバー部材と;
前記本体と前記カバー部材との間であって、前記本体の前面側に設けられる透光性の拡散部材と;
前記本体と前記拡散部材との間であって、前記本体の開口を囲むように設けられる基板と;
光出射方向が前記拡散部材側となるように、前記本体の開口を囲むように複数の環状配列を形成して前記基板に設けられる主光源発光素子と;
前記本体の開口の外周側であって、前記拡散部材よりも前記本体側に位置するように設けられるとともに、光出射方向が前記拡散部材側となるように、前記主光源発光素子の配列間に設けられる常夜灯用の補助光源発光素子と;
を具備し、
前記拡散部材は、前記基板、主光源発光素子ならびに前記補助光源発光素子の前面から全面を一体的に覆うとともに、前記主光源発光素子と対向する位置と、前記補助光源発光素子と対向する位置とで異なる断面形状を有し、前記主光源発光素子と前記補助光源発光素子とから出射された光を拡散させ、
前記カバー部材は、前記拡散部材により拡散された光をさらに拡散させる
ことを特徴とする照明器具。」
(2)訂正事項2
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0009】を、次のとおりに訂正する。
「【0009】
本発明の実施形態による照明器具は、中央部に開口が形成された本体と;前記本体の前面側を覆うように前記本体に設けられる拡散性を有する乳白色のカバー部材と;前記本体と前記カバー部材との間であって、前記本体の前面側に設けられる透光性の拡散部材と;前記本体と前記拡散部材との間であって、前記本体の開口を囲むように設けられる基板と;光出射方向が前記拡散部材側となるように、前記本体の開口を囲むように複数の環状配列を形成して前記基板に設けられる主光源発光素子と;前記本体の開口の外周側であって、前記拡散部材よりも前記本体側に位置するように設けられるとともに、光出射方向が前記拡散部材側となるように、前記主光源発光素子の配列間に設けられる常夜灯用の補助光源発光素子と;を具備し、前記拡散部材は、前記基板、主光源発光素子ならびに前記補助光源発光素子の前面から全面を一体的に覆うとともに、前記主光源発光素子と対向する位置と、前記補助光源発光素子と対向する位置とで異なる断面形状を有し、前記主光源発光素子と前記補助光源発光素子とから出射された光を拡散させ、前記カバー部材は、前記拡散部材により拡散された光をさらに拡散させることを特徴とする。」
本件訂正の特許請求の範囲に係る訂正は、一群の請求項〔1、2〕に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1、2〕に対して請求されたものである。
1-2 訂正の適否
(1)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無
(1-1) 訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「主光源発光素子」、「補助光源発光素子」及び「拡散部材」の構成について、
本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」といい、特許請求の範囲及び図面をも併せて「本件明細書等」という。)の 段落【0018】の「発光素子22は、LEDであり、表面実装型のLEDパッケージである。このLEDパッケージが複数個サークル状の基板21の周方向に沿って、複数列、本実施形態では、内周側及び外周側の2列に亘って実装されている。」との記載及び図3等の記載を根拠に、「主光源発光素子」が「前記本体の開口を囲むように複数の環状配列を形成」することを、
本件明細書等の段落【0019】の「なお、特定の基板21(図3中、右側)には、常夜灯用の発光素子22aが実装されている。」との記載及び図3等の記載を根拠に、「補助光源発光素子」が「常夜灯用の」ものであって、「前記主光源発光素子の配列間に」設けられることを、
本件明細書等の段落【0023】の「拡散部材3は、レンズ部材であり、・・・発光素子22を含めて基板21の実装面側の全面を覆うように配設されている。」との記載及び図3~5等の記載を根拠に、「拡散部材」が「前記主光源発光素子と前記補助光源発光素子とから出射された光を拡散させ」ることをそれぞれ限定するものである。
したがって、訂正事項1による訂正は、本件明細書等に記載された事項の範囲内において、「主光源発光素子」、「補助光源発光素子」及び「拡散部材」の構成を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、訂正事項1は、請求項1を引用する請求項2についても同様に訂正するものであるが、かかる訂正についても、請求項1と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(1-2) 訂正事項2について
訂正事項2は、上記訂正事項1に係る特許請求の範囲の訂正に合わせて、本件明細書の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
そして、上記「(1-1)」で述べたとおり、訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、訂正事項2も、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえ、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)まとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1及び2に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1及び2」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
中央部に開口が形成された本体と;
前記本体の前面側を覆うように前記本体に設けられる拡散性を有する乳白色のカバー部材と;
前記本体と前記カバー部材との間であって、前記本体の前面側に設けられる透光性の拡散部材と;
前記本体と前記拡散部材との間であって、前記本体の開口を囲むように設けられる基板と;
光出射方向が前記拡散部材側となるように、前記本体の開口を囲むように複数の環状配列を形成して前記基板に設けられる主光源発光素子と;
前記本体の開口の外周側であって、前記拡散部材よりも前記本体側に位置するように設けられるとともに、光出射方向が前記拡散部材側となるように、前記主光源発光素子の配列間に設けられる常夜灯用の補助光源発光素子と;
を具備し、
前記拡散部材は、前記基板、主光源発光素子ならびに前記補助光源発光素子の前面から全面を一体的に覆うとともに、前記主光源発光素子と対向する位置と、前記補助光源発光素子と対向する位置とで異なる断面形状を有し、 前記主光源発光素子と前記補助光源発光素子とから出射された光を拡散させ、
前記カバー部材は、前記拡散部材により拡散された光をさらに拡散させる
ことを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記基板は、前記本体に対して前記拡散部材と共通のネジによって共締めされることで、前記本体と前記拡散部材との間に押圧固定される
ことを特徴とする請求項1に記載の照明器具。」
第4 特許異議の申立てについて
1 取消理由の概要
平成30年8月23日付けで特許権者に通知した取消理由(以下「本件取消理由」という。)の要旨は、次のとおりである。
[取消理由1]請求項1及び請求項2に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第1号の規定により取り消すべきものである。
[取消理由2]請求項1及び請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明にその発明を当業者が実施し得る程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないから、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。よって、請求項1及び請求項2に係る特許は、同法第36条第4項第1号の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。
[取消理由3]請求項1及び請求項2に係る発明は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。よって、請求項1及び請求項2に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。
[取消理由4]請求項1及び請求項2に係る発明は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。よって、請求項1及び請求項2に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。
[取消理由5]請求項1及び請求項2に係る発明は、その出願前頒布された以下の刊行物1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。よって、請求項1及び請求項2に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
刊行物1:特開2012-146439号公報
2 当審の判断
2-1 本件取消理由について
2-1-1 取消理由1(特許法第17条の2第3項)について
(1)取消理由1の概要
平成29年9月6日付けでした手続補正(甲第10号証、以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1について、「前記拡散部材は、前記基板、主光源発光素子ならびに前記補助光源発光素子の前面から全面を一体的に覆うとともに、前記主光源発光素子と対向する位置と、前記補助光源発光素子と対向する位置とで異なる断面形状を有し、少なくとも前記主光源発光素子から出射された光を拡散させ」との補正事項(以下「補正事項A」という。)を含むものである。
そして、本件特許の願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」といい、特許請求の範囲及び図面をも併せて「当初明細書等」という。)、特許請求の範囲及び図面には、「拡散部材3」が、「基板21」、「発光素子22」及び「常夜灯用の発光素子22a」の前面から全面を一体的に覆う構造が示されているが、上記当初明細書等の記載は、あくまでも「拡散部材3」、「基板21」、「発光素子22」及び「常夜灯用の発光素子22a」の配設構造であって、上記補正事項Aの「主光源発光素子」及び「補助光源発光素子」と称される発光素子を含む配設構造として記載されたものではない(以下「理由1a」という。)。
また、仮に、上記補正事項Aの「主光源発光素子」及び「補助光源発光素子」が、当初明細書等に記載された「発光素子22」及び「常夜灯用の発光素子22a」のそれぞれを意味するものとしても、当初明細書等には、「拡散部材3」における「常夜灯用の発光素子22a」と対向する位置の断面形状は記載されていないから、「拡散部材」が、「前記主光源発光素子と対向する位置と、前記補助光源発光素子と対向する位置とで異なる断面形状を有」するものとまでいうことはできない(以下「理由1b」という。)。
さらに、「拡散部材3」が、「発光素子22」及び「常夜灯用の発光素子22a」を、その前面から全面を一体的に覆うのであれば、「発光素子22」及び「常夜灯用の発光素子22a」からの出射された光は、両光ともに拡散されるものと解されるところ、上記補正事項Aは「少なくとも前記主光源発光素子から出射された光を拡散させ」るものとされ、「常夜灯用の発光素子22a」からの出射された光については、拡散させない構成も含み得るように特定しているが、そのような構成は、当初明細書等には記載も示唆もない(以下「理由1c」という。)。
したがって、上記補正事項Aは、当初明細書等に記載されているということはできず、また、上記補正事項Aが、当業者によって当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であるということもできないから、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものとはいえない
(2)判断
ア 理由1aについて
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正により、「主光源発光素子」が「前記本体の開口を囲むように複数の環状配列を形成」されること、「補助光源発光素子」が「前記主光源発光素子の配列間に」設けられるものであって、「常夜灯用の」ものであること、及び「拡散部材」が「前記主光源発光素子と前記補助光源発光素子とから出射された光を拡散させ」ることがそれぞれ限定された。
その結果、上記補正事項Aの「主光源発光素子」及び「補助光源発光素子」と称される発光素子の配設構造は、本件訂正によって、当初明細書等の記載と整合するものとなり、この理由1aは解消した。
イ 理由1bについて
上記アのとおり、上記補正事項Aの「主光源発光素子」及び「補助光源発光素子」と称される発光素子の配設構造は、本件訂正によって、当初明細書等の記載と整合するものとなった。
そして、当初明細書の「拡散部材3は、レンズ部材であり、・・・発光素子22を含めて基板21の実装面側の全面を覆うように配設されている。」(段落【0023】)、及び「また、レンズ部材は、・・・発光素子22に対向して円周方向に2条の山形の突条部31が形成されている。」(段落【0024】)との記載によれば、拡散部材3における、主光源発光素子(発光素子22)と対向する位置の形状は、「山形の突条部31」として構成されていることが明らかである。また、当初明細書等には、拡散部材3における、補助光源発光素子(常夜灯用の発光素子22a)と対向する位置の形状についての直接的な記載はないものの、図3~7の記載を総合するならば、拡散部材3における、補助光源発光素子(常夜灯用の発光素子22a)と対向する位置の形状は、上記「山形の突条部31」とは異なる形状に構成したものと解するのが自然である。
したがって、「拡散部材」が、「前記主光源発光素子と対向する位置と、前記補助光源発光素子と対向する位置とで異なる断面形状を有」することは、当業者によって当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であるといえる。
ウ 理由1cについて
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正により、「拡散部材」は、「前記主光源発光素子と前記補助光源発光素子とから出射された光を拡散させ」ることが限定された。
その結果、上記補正事項Aの「拡散部材」の構成は、本件訂正によって、当初明細書等の記載と整合するものとなり、この理由1cは解消した。
エ 小括
以上のとおり、上記取消理由1は解消した。
2-1-2 取消理由2(特許法第36条第4項第1号)について
(1)取消理由2の概要
本件明細書の発明の詳細な説明の記載によれば、本件発明1及び2は、「補助光源に発光素子を用いる場合でも実使用に耐え得る光出射を得ること」(段落【0008】)という課題を解決するために、少なくとも、
ア「光出射方向が前記拡散部材側となるように前記基板に設けられる主光源発光素子と;前記本体の開口の外周側であって、前記拡散部材よりも前記本体側に位置するように設けられるとともに、光出射方向が前記拡散部材側となるように設けられる補助光源発光素子と;を具備」すること(以下「事項ア」という。)、及び、
イ「前記拡散部材は、前記基板、主光源発光素子ならびに前記補助光源発光素子の前面から全面を一体的に覆うとともに、前記主光源発光素子と対向する位置と、前記補助光源発光素子と対向する位置とで異なる断面形状を有し、少なくとも前記主光源発光素子から出射された光を拡散させ」ること(以下「事項イ」という。)、を発明特定事項として特定したものと理解することができる。
しかし、本件明細書等には、「拡散部材3」、「基板21」、「発光素子22」及び「常夜灯用の発光素子22a」の配設構造は記載されているものの、上記事項ア及びイで特定する「主光源発光素子」及び「補助光源発光素子」と称される各発光素子の配設構造は記載も示唆もなされていない。
したがって、本件発明1及び2が特定する、少なくとも上記事項ア及びイによって、上記課題が解決できると解すべき合理性はない。
よって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段が発明の技術上の意義を理解できる程度に記載されたものとはいえないから、経済産業省令で定めるところにより、当業者がその発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものということはできない。
(2)判断
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正により、「主光源発光素子」が「前記本体の開口を囲むように複数の環状配列を形成」すること、「補助光源発光素子」が「前記主光源発光素子の配列間に」設けられるものであって、「常夜灯用の」ものであること、及び「拡散部材」が「前記主光源発光素子と前記補助光源発光素子とから出射された光を拡散させ」ることがそれぞれ限定された。
その結果、上記事項ア及びイで特定する「主光源発光素子」及び「補助光源発光素子」と称される各発光素子の配設構造は、本件訂正によって、本件明細書等の記載と整合するものとなり、この取消理由2は解消した。
2-1-3 取消理由3(特許法第36条第6項第1号)について
(1)取消理由3の概要
本件発明1及び2は、「補助光源に発光素子を用いる場合でも実使用に耐え得る光出射を得る」(段落【0008】)という課題を解決するために、少なくとも、上記事項ア及びイを発明特定事項として特定したものと理解することができる。
しかし、本件明細書等には、上記事項ア及びイによって、上記課題が解決できるとする合理的な説明はなされていないし、さらに、上記事項アについて補足すると、本件明細書等には、特定の基板21に常夜灯用の発光素子22aを実装することは記載されているが(段落【0019】)、単に、拡散部材よりも本体側に位置するように設けられるとともに、光出射方向が拡散部材側となるように設けられれば足りるとする記載はない。
したがって、上記事項ア及びイは、本件発明1及び2の課題を解決するために足りると認識できる範囲のものと認めることはできないから、本件発明1及び2は、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。
(2)判断
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正により、「主光源発光素子」が「前記本体の開口を囲むように複数の環状配列を形成」すること、「補助光源発光素子」が「前記主光源発光素子の配列間に」設けられるものであって、「常夜灯用の」ものであること、及び「拡散部材」が「前記主光源発光素子と前記補助光源発光素子とから出射された光を拡散させ」ることがそれぞれ限定された。
その結果、上記事項ア及びイで特定する「主光源発光素子」及び「補助光源発光素子」と称される各発光素子の配設構造は、本件訂正によって、本件明細書等の記載と整合するものとなり、この取消理由3は解消した。
2-1-4 取消理由4(特許法第36条第6項第2号)について
(1)取消理由4の概要
ア 請求項1について
(ア)請求項1には、「前記拡散部材は、前記基板、主光源発光素子ならびに前記補助光源発光素子の前面から全面を一体的に覆うとともに、前記主光源発光素子と対向する位置と、前記補助光源発光素子と対向する位置とで異なる断面形状を有し、少なくとも前記主光源発光素子から出射された光を拡散させ」と記載されているが、上記「拡散部材」の構成として、「前記補助光源発光素子の前面から全面を一体的に覆う」ことを前提としたものにおいて、「少なくとも前記主光源発光素子から出射された光を拡散させ」るという構成を技術的に特定することができず、発明が不明確である。
(イ)請求項1には、「前記本体の前面側を覆うように前記本体に設けられる拡散性を有する乳白色のカバー部材」及び「前記カバー部材は、前記拡散部材により拡散された光をさらに拡散させる」と記載されているが、上記「カバー部材」の構成として、「前記拡散部材により拡散された光をさらに拡散させる」という構成を技術的に特定することができず、発明が不明確である。
イ 請求項2について
請求項1を引用する請求項2の記載も、上記アの理由と同様に不明確である。
(2)判断
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正により、「拡散部材」が「前記主光源発光素子と前記補助光源発光素子とから出射された光を拡散させ」ることがそれぞれ限定され、その構成は明確となった。
したがって、この取消理由4は解消した。
2-1-5 取消理由5(特許法第29条第2項)について
(1)取消理由5の概要
ア 本件は、平成23年1月11日に出願した特願2011-2934号(以下「出願1」という。)の一部を平成26年10月28日に新たな特許出願(特願2014-219148号(以下「出願2」という。))とし、さらにその特許出願の一部を平成28年2月22日に新たな特許出願(特願2016-30638号(以下「出願3」という。))とし、さらにその特許出願の一部を平成29年7月7日に新たな特許出願(以下「本件出願」という。)としたものである。
ここで、本件出願の出願日が出願1の出願日にまで遡及するためには、少なくとも、本件出願が出願3に対して、出願3が出願2に対して、出願2が出願1に対して、それぞれ分割要件を全て満たし、さらに、本件出願が出願1に対して分割要件のうち実体的要件の全てを満たす必要があるが、平成29年9月6日付けでした手続補正(甲第10号証)により補正された上記補正事項A(「2-1-1(1)」)は、出願1にも、また、出願3にも記載されているということはできない。
したがって、本件出願は、分割要件を満たさないから、特許法第44条第2項の遡及効を得ることはできず、その出願日は現実の出願日(平成29年7月7日)である。
イ そして、請求項1及び2に係る発明は、その出願前頒布された以下の刊行物1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。よって、請求項1及び2に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
刊行物1:特開2012-146439号公報(上記「出願1」の公開公報)
(2)上記「2-1-1(2)」で述べたとおり、上記補正事項Aは、本件訂正によって、当初明細書等の記載と整合するものとなり、さらに、上記出願1~3の記載とも整合することとなった。
したがって、本件特許の出願は、分割要件を満たす適法な分割出願であって、出願日の遡及が認められることとなり、その結果、上記刊行物1は本件特許の出願前に頒布された刊行物には該当しないものとなった。
よって、この取消理由5は解消した。
2-2 本件取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)本件取消理由において採用しなかった特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
(1-1)申立理由1(特許法第36条第4項第1号)
「合成樹脂部材」という部材の名称は段落【0009】に記載されているが、当該段落以外の発明の詳細な説明には、前記合成樹脂部材について何も記載されておらず、前記合成樹脂部材がどのような部材を意味するのか明らかでない。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に適合するものではない(特許異議申立書8頁「イ(ア)(1)(3)」の項)。
(1-2)申立理由2(特許法第36条第6項第2号)
請求項1には、「前記拡散部材は、前記基板、主光源発光素子ならびに前記補助光源発光素子の前面から全面を一体的に覆う」と記載されているが、「全面」とは物のすべての面を指す言葉であるから、拡散部材が「基板、主光源発光素子ならびに前記補助光源発光素子の前面から全面を一体的に覆う」とは、具体的にどのような構成を意味するのか不明である。
したがって、特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は特許法第36条第6項第2号に適合するものではない(特許異議申立書10頁「(ウ)」の項)。
(1-3)申立理由3(特許法第29条第2項)
請求項1及び2に係る発明は、以下の甲第1号証に記載された発明及び甲第2~9号証に記載された技術常識ないし周知の技術手段に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(特許異議申立書11~32頁「ウ」の項)。
・甲第1号証:登録実用新案第3154761号公報
・甲第2号証:特開2006-73767号公報
・甲第3号証:特開2006-269105号公報
・甲第4号証:特開2003-203505号公報
・甲第5号証:特開2008-98116号公報
・甲第6号証:特開2002-352968号公報
・甲第7号証:特許第4112064号公報
・甲第8号証:特開平11-162232号公報
・甲第9号証:登録実用新案第3081267号公報
(2)検討
(2-1)申立理由1(特許法第36条第4項第1号)について
特許異議申立人は、「合成樹脂部材」という部材の名称は段落【0009】以外の発明の詳細な説明には、前記合成樹脂部材について何も記載されておらず、前記合成樹脂部材がどのような部材を意味するのか明らかでない旨主張する。
しかし、上記「第2」のとおり、本件訂正により、段落【0009】に記載された「合成樹脂部材」は「拡散部材」に訂正されたため、上記申立理由1によって、本件発明1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
(2-2)申立理由2(特許法第36条第6項第2号)について
特許異議申立人は、請求項1には、「前記拡散部材は、前記基板、主光源発光素子ならびに前記補助光源発光素子の前面から全面を一体的に覆う」と記載されているが、「全面」とは物のすべての面を指す言葉であるから、拡散部材が「基板、主光源発光素子ならびに前記補助光源発光素子の前面から全面を一体的に覆う」とは、具体的にどのような構成を意味するのか不明である旨主張する。
しかし、上記「第2」で述べたとおり、訂正事項1に係る本件訂正によって、訂正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「主光源発光素子」、「補助光源発光素子」及び「拡散部材」の構成は限定され、それらの配設構成は明確になった。
そして、本件明細書の段落【0023】には、「拡散部材3」の配設構造について、「拡散部材3は、レンズ部材であり、図7の参照を加えて説明するように、・・・前記発光素子22の配置に沿って略サークル状に一体的に形成されていて、発光素子22を含めて基板21の実装面側の全面を覆うように配設されている。」と記載され、さらに、図2~5、7には、拡散部材3が、基板21、主光源発光素子をなす発光素子22及び補助光源発光素子をなす発光素子22aの前面から全面を一体的に覆う構造も明確に示されている。
したがって、上記申立理由2によって、本件発明1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
(2-3)申立理由3(特許法第29条第2項)について
(2-3-1)各甲号証の記載事項等
(2-3-1-1)甲第1号証の記載事項等
ア 甲第1号証に記載された事項
甲第1号証には次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。以下同様。)。
(1a)「【0001】
本考案は、LED灯具に関するものであり、さらに詳しくは、修理可能な環境保全多機能モジュール式LED灯具に関するものである。」
(1b)「【0016】
図1乃至図3を参照しながら、本考案に係るLED灯具について詳細に説明する。
本考案に係るLED灯具は、灯座10と、灯笠20と、LED発光モジュール30と、電源制御回路板40と、検出センサ50と、飾りリング60とから構成されたものである。
【0017】
灯座10は、放熱し易いアルミニウム金属材質からなり、ほぼディスク状で、底板11と底板11の周縁から上へ伸びる周壁12があり、また、底板11の中心に、固定枠13が設けられ、上記固定枠13の上方に、リング状シート131が設置され、リング状シート131の中心に、バイアホール132が形成され、また、固定枠13のリング状シート131の両側から、それぞれ、下へスタンド133が設けられて、固定枠13が、そのスタンド133により、底板11に固定され、また、底板11において、周縁に沿って、一体的にプレスされて、中央が上へ突出するリング状突縁111が形成され、上記底板11にも、複数の、下へ突出し、一体的にプレスされるリブ112が形成されてある。
【0018】
灯笠20は、透過材質からなり、上記灯座10に対応して、ほぼ円弧面のディスク状であり、上記灯座10に設置され、また、中心に、開口21が形成されて、ロック蓋22があり、上記ロック蓋22が、灯笠20の開口21に通せる約筒状で、ロック蓋22の上段の外周に、突縁221が設けられ、灯笠20に対して位置付けでき、また、上記ロック蓋22の内壁に螺条222が形成されてある。
【0019】
LED発光モジュール30は、複数設けられてあり(当審注:「設けられており」の誤記と認める。)、灯座10の底板11のリング状突縁111に設置され、それぞれに、基板31と外蓋32及び放熱弾性ゴム33が備えられる。上記基板31が、上記底板11のリング状突縁111に対応して、扇形になり、基板31が、リング状突縁111の上に設置され、他のLED発光モジュール30と、リング状に囲み、また、それぞれの基板31に、複数のLED311が配列され、基板31の一側に、ともに、差込口金312が設けられてある。
【0020】
また、上記LED発光モジュール30の基板31の上方に、上記外蓋32が嵌設され、上記外蓋32が、基板31に対応して扇形になり、その両側に、それぞれ、ラグ321が形成され、これにより、その外蓋32で、底板11に固定され、また、簡単に交換できるようにしてある。上記外蓋32が、所定の色を有する透過材質からなり、それにより、光混合の作用が実現される。」
(1c)甲第1号証には、以下の図が示されている。
イ 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、摘示(1a)のとおり「LED灯具」に関する技術について開示されているところ、摘示(1b)によれば、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「灯座10と、灯笠20と、LED発光モジュール30と、電源制御回路板40と、検出センサ50と、飾りリング60とから構成されるLED灯具において、
前記灯座10は、ほぼディスク状で、底板11と底板11の周縁から上へ伸びる周壁12があり、
前記灯笠20は、透過材質からなり、前記灯座10に対応して、ほぼ円弧面のディスク状であり、前記灯座10に設置され、
前記LED発光モジュール30は、複数設けられており、前記灯座10の底板11のリング状突縁111に設置され、それぞれに、基板31と外蓋32及び放熱弾性ゴム33が備えられ、それぞれの基板31に、複数のLED311が配列され、
前記LED発光モジュール30の基板31の上方に、前記外蓋32が嵌設され、前記外蓋32が、所定の色を有する透過材質からなる、
LED灯具。」
(2-3-1-2)甲第4号証の記載事項
甲第4号証には次の事項が記載されている。
(4a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、環状蛍光ランプを用いた照明器具に関する。
・・・
【0026】環状蛍光ランプ1、ベビー球24、アダプタ26などを覆ってセード29が器具本体11に取り付けられている。
(4b)甲第4号証には以下の図が示されている。
(2-3-1-3)甲第5号証の記載事項
甲第5号証には次の事項が記載されている。
(5a)「【0001】
本発明は、リモコン信号による放電灯の点灯制御を可能とする照明器具に関するものである。
・・・
【0024】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る照明器具の構成について図1~4を用いて説明する。この照明器具1は、図1に示すように、リモコン送信器(図示せず)からのリモコン信号による放電灯2の点灯制御を可能とするものであり、放電灯2を上面側で保持する器具本体3と、器具本体3の上面側に配置される反射板4と、放電灯2を点灯制御する点灯回路の電子部品(例えば発熱部品51など)が実装された点灯回路基板(インバータ基板)5と、点灯回路基板5に実装されてリモコン信号を受光する受光素子6と、それぞれが点灯回路基板5のうち受光素子6の周囲に実装された複数の常夜灯用LED7・・・と、複数の常夜灯用LED7・・・及び受光素子6を内側に取り囲む保護ケース8と、保護ケース8の開口80に覆設される絶縁カバー9とを備えている。また、図示していないが、照明器具1は、例えば部屋などの建築物の天井面に設置され例えば商用電源などの外部電源と接続する例えば引掛ローゼットや引掛シーリングなどの配線器具に係合する例えば引掛ローゼットアダプタや引掛シーリングアダプタなどの取付アダプタと、例えば細長い金属板などで形成され放電灯2を支持するランプ支持具と、放電灯2を収納して器具本体3の上面側全体を覆い被せるようにして取り付けられるグローブとをも備える。グローブは、例えばアクリル樹脂など乳白色の透過拡散性を有する樹脂材料で形成されたものである。このような構成の照明器具1は、配線器具(図示せず)が設置されている天井面(図示せず)に、器具本体3の上面が地面と対向するように設置される。」
(5b)甲第5号証には以下の図が示されている。
(2-3-1-4)甲第7号証の記載事項
甲第7号証には次の事項が記載されている。
(7a)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光源からの照明光を屈折させてその光路を調整し得る光路調整部材、及びかかる光路調整部材を備えた照明装置に関する。
・・・
【0016】
図5a~cに、本実施の形態で用いられる光路調整板5を示す。図5a~cは、それぞれ、上記光路調整板5の平面図,斜視図及び断面説明図である。この光路調整板5は、例えば透明アクリル樹脂により円盤状に形成されたものである。その照明光の出射面は、同心円をなす3つの帯状小領域6,7及び8に区画されており、これら各小領域6,7及び8には、光路調整板5の平面方向に対して、互いに異なる角度をなす光通過面6a,7a及び8aが形成されている。また、この光路調整板5には、上記ケース12への取付け時にボルト部材13(図2参照)を受合うために、その周囲面から中心方向へ延びる穴部5bが設けられている。」
(7b)甲第7号証には以下の図が示されている。
(2-3-1-5)甲第8号証の記載事項
甲第8号証には次の事項が記載されている。
(8a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、LEDを用いた照明モジュールに関するものである。
・・・
【0012】この点に鑑みて本実施形態は発光色の異なるLEDチップを配列し、幾つかの色を混ぜて必要な色を作るよう構成したもので、異なる色の光を混ぜるように光学制御手段により配光制御を行うようになっている。図4はその具体的構成を示しており、LED照明モジュール2は、樹脂製基板21上に、例えば青色光を発光するLEDチップ20B 、緑色光を発光するLEDチップ20G 、赤色光を発光するLEDチップ20R 、黄色光を発光するLEDチップ20Y の4つのLEDチップを所定間隔で配列し、夫々のLEDチップ20B、20G 、20R 、20Y に対応したプリズム24B 、24G 、24R 、24Y をチップ前方に配置し、夫々のLEDチップ20B 、20G 、20R 、20Y からの光をプリズム24B 、24G 、24R 、24Y により配光制御して基板21の中央部で混ぜ合わせ白色光Wとするようになっている。」
(8b)甲第8号証には以下の図が示されている。
(2-3-1-6)甲第9号証の記載事項
甲第9号証には次の事項が記載されている。
(9a)「【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、鉄道用等の電球を光源とした既設の発光型信号機に互換使用される多数個の有色発光素子を光源とした発光ユニットに関する。
・・・
【0020】
第1の発光素子基板2は、円盤状を呈しており、図1に示すようにその外径が発光型信号機50に備えられた放物断面形状の集光レンズ部材56の中心部よりもやや外周側の内径とほぼ同径に形成されている。第1の発光素子基板2には、詳細を省略するが一方の主面2a上に適宜の配線パターンが形成されており、この配線パターンによって互いに並列に接続されて多数個の第1の発光素子群4が実装されている。
・・・
【0022】
第2の発光素子基板3も、円盤状を呈しており、その外径が第1の発光素子基板2の外径よりも大きくかつ集光レンズ部材56の内部空間56aの開口部の内径よりもやや小径とされている。第2の発光素子基板3には、一方の主面3aの第1の発光素子基板2の外周部よりも外側となる環状領域3b上に適宜の配線パターンが形成されており、この配線パターンによって互いに並列に接続されて多数個の第2の発光素子群5が実装されている。第2の発光素子基板3にも、第1の発光素子基板2の取付孔に対応位置して4個の取付孔が形成されており、これら取付孔に支柱部材7が貫通される。
(9b)甲第9号証には以下の図が示されている。
(2-3-2)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「灯座10」と本件発明1の「中央部に開口が形成された本体」とは、その機能・構造に照らして「本体」の限度で共通するものといえる。
(イ)甲1発明の「灯笠20」は、「前記灯座10に対応して、ほぼ円弧面のディスク状であり、前記灯座10に設置され」るものであり、図1及び図3(摘示(1c))にも示されているように、灯座10の前面側を覆うように設けられていることが明らかであるから、本件発明1の「前記本体の前面側を覆うように前記本体に設けられる拡散性を有する乳白色のカバー部材」とは、上記(ア)をも踏まえると、「前記本体の前面側を覆うように前記本体に設けられるカバー部材」の限度で共通するものといえる。
(ウ) 甲1発明の「外蓋32」は、「前記LED発光モジュール30の基板31の上方に」「嵌設され」るものであり、図2及び図3(摘示(1c))にも示されているように、灯座10と灯笠20との間であって、灯座10の前面側に設けられることが明らかである。
したがって、「所定の色を有する透過材質からなる」「外蓋32」と、本件発明1の「前記本体と前記カバー部材との間であって、前記本体の前面側に設けられる透光性の拡散部材」とは、上記(ア)(イ)をも踏まえると、「前記本体と前記カバー部材との間であって、前記本体の前面側に設けられる透光性の部材」の限度で共通するものといえる。
(エ)甲1発明の「基板31」は、本件発明の「基板」に相当する。
また、甲1発明は、「前記LED発光モジュール30は、複数設けられており、前記灯座10の底板11のリング状突縁111に設置され、それぞれに、基板31と外蓋32及び放熱弾性ゴム33が備えられ」るものであって、「前記LED発光モジュール30の基板31の上方に、前記外蓋32が嵌設され」るものであるから、基板31が、灯座10と外蓋32との間に設けられることが明らかである。
したがって、甲1発明の「基板31」と、本件発明1の「前記本体と前記拡散部材との間であって、前記本体の開口を囲むように設けられる基板」とは、上記(ア)(ウ)をも踏まえると、「前記本体と前記透光性の部材との間に設けられる基板」の限度で共通するものといえる。
(オ)甲1発明の「複数のLED311」と本件発明1の「主光源発光素子」とは、いずれも光源発光素子を構成することが明らかであるから、両者は「光源発光素子」の限度で共通するものといえる。
また、甲1発明の「複数のLED311」は、「それぞれの基板31に」「配列され」るものであり、その光出射方向が外蓋32側となることも明らかであるから、本件発明1の「光出射方向が前記拡散部材側となるように、前記本体の開口を囲むように複数の環状配列を形成して前記基板に設けられる主光源発光素子」とは、上記(ア)(ウ)をも踏まえると、「光出射方向が前記透光性の部材側となるように、前記基板に設けられる光源発光素子」の限度で共通するものといえる。
(カ)甲1発明は、「前記LED発光モジュール30の基板31の上方に、前記外蓋32が嵌設され」るものであるから、外蓋32が、基板31及び複数のLED311の前面から全面を一体的に覆うことは明らかである。
したがって、かかる「外蓋32」の配設構成と、本件発明1の「前記拡散部材は、前記基板、主光源発光素子ならびに前記補助光源発光素子の前面から全面を一体的に覆うとともに、前記主光源発光素子と対向する位置と、前記補助光源発光素子と対向する位置とで異なる断面形状を有し、前記主光源発光素子と前記補助光源発光素子とから出射された光を拡散させ」るという構成とは、上記(ウ)~(オ)をも踏まえると、「前記透光性の部材は、前記基板及び光源発光素子の前面から全面を一体的に覆う」という構成の限度で共通するものといえる。
(キ)甲1発明の「LED灯具」は、本件発明1の「照明器具」に相当する。
以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「本体と;
前記本体の前面側を覆うように前記本体に設けられるカバー部材と;
前記本体と前記カバー部材との間であって、前記本体の前面側に設けられる透光性の部材と;
前記本体と前記透光性の部材との間に設けられる基板と;
光出射方向が前記透光性の部材側となるように、前記基板に設けられる光源発光素子と;
を具備し、
前記透光性の部材は、前記基板及び光源発光素子の前面から全面を一体的に覆う、
照明器具。」の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
「本体」について、本件発明1は、「中央部に開口が形成された」ものであるのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。
<相違点2>
「カバー部材」について、本件発明1は、「拡散性を有する乳白色」のものであり、「前記拡散部材により拡散された光をさらに拡散させる」ものであるのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。
<相違点3>
本件発明1は、「透光性の部材」が、「透光性の拡散部材」であり、基板とともに「主光源発光素子ならびに前記補助光源発光素子の」前面から全面を一体的に覆うとともに、「前記主光源発光素子と対向する位置と、前記補助光源発光素子と対向する位置とで異なる断面形状を有し、前記主光源発光素子と前記補助光源発光素子とから出射された光を拡散させ」るものであるのに対し、甲1発明は、「透光性の部材」が、「所定の色を有する透過材質からなる」「外蓋32」であり、上記「外蓋32」は、「前記LED発光モジュール30の基板31の上方に」「嵌設され」る点。
<相違点4>
「基板」について、本件発明1は、「本体の開口を囲むように」設けられるものであるのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。
<相違点5>
本件発明1は、光源発光素子が、「前記本体の開口を囲むように複数の環状配列を形成して」前記基板に設けられる「主光源発光素子」として構成され、さらに、「前記本体の開口の外周側であって、前記拡散部材よりも前記本体側に位置するように設けられるとともに、光出射方向が前記拡散部材側となるように、前記主光源発光素子の配列間に設けられる常夜灯用の補助光源発光素子」を具備するのに対し、甲1発明は、光源発光素子が、「それぞれの基板31に」「配列され」た「複数のLED311」として構成されるものであり、また、常夜灯用の補助光源発光素子を具備するものではない点。
(2-3-3)判断
事案に鑑み、相違点3及び5について検討する。
ア 本件発明1は、「主光源発光素子」及び「常夜灯用の補助光源発光素子」を具備することを前提として(上記相違点5に係る本件発明1の構成)、「拡散部材」について、「前記主光源発光素子と対向する位置と、前記補助光源発光素子と対向する位置とで異なる断面形状を有し、前記主光源発光素子と前記補助光源発光素子とから出射された光を拡散させ」るように構成するものである(上記相違点3に係る本件発明1の構成)。
他方、甲1発明は、「それぞれの基板31に」「配列され」た「複数のLED311」を備えるものの、そもそも常夜灯用の補助光源発光素子を具備するものではないから、「外蓋32」の断面形状について、複数のLED311に対向する位置と常夜灯用の補助光源発光素子と対向する位置とで異なる断面形状を有するものでもない。
イ ここで、特許異議申立人は、上記相違点5の「主光源発光素子」及び「常夜灯用の補助光源発光素子」を具備することに関連し、「従来から、照明の主光源として使用されている蛍光ランプを有する照明器具においても、例えば、甲第4-5号証に補助光源(常夜灯)が記載されているように、主光源による照明とは別に補助光源を用いることは技術常識であるから、主光源、補助光源ともに、発光素子に入れ替えることは、当業者が必要に応じてなし得た事項ともいえる。」(特許異議申立書31頁下から7~3行)と主張するとともに、
上記相違点3の「透光性の拡散部材」を具備することに関連し、「拡散部材が、基板、主光源発光素子ならびに補助光源発光素子の前面から全面を一体的に覆うとともに、前記主光源発光素子と対向する位置と、前記補助光源発光素子と対向する位置とで異なる断面形状を有している点は、例えば甲第7-9号証に記載されたとおり、周知であるから、当該周知の技術手段を甲1発明に付加する点に阻害事由はない。」(特許異議申立書32頁8~12行)と主張するので、以下検討する。
ウ 検討
(ア)甲第4号証(摘示(4a)(4b))には、「環状蛍光ランプ1、ベビー球24、アダプタ26などを覆ってセード29が器具本体11に取り付けられている」ことが記載され(段落【0026】)、図1には、環状蛍光ランプ1及びベビー球24等をセード29で覆うことが図示され、また、甲第5号証(摘示(5a)(5b))には、「この照明器具1は、・・・放電灯2の点灯制御を可能とするものであり、・・・複数の常夜灯用LED7・・・を備えている。また、図示していないが、・・・放電灯2を収納して器具本体3の上面側全体を覆い被せるようにして取り付けられるグローブとをも備える」ことが記載され(段落【0024】)、図1には、放電灯2及び常夜灯用LED7等をグローブで覆うことが図示されているから、甲第4号証及び甲第5号証には、確かに、特許異議申立人が主張するとおり、主光源として使用されている蛍光ランプを有する照明器具において、補助光源(常夜灯)を用いることが記載されている。
(イ)しかし、甲1発明は、光源発光素子として、「それぞれの基板31に」「配列され」た「複数のLED311」を具備するものであって、甲第4号証に記載された「環状蛍光ランプ1」や、甲第5号証に記載された「放電灯2」を具備する照明器具ではないから、そのような「環状蛍光ランプ1」や「放電灯2」を具備しない甲1発明に、甲第4号証や甲第5号証に記載された技術事項を適用する動機付けが必ずしも存在するということはできない。
(ウ)また、仮に、甲1発明に、甲第4号証や甲第5号証に記載された技術事項を適用し、「ベビー球24」や「常夜灯用LED7」を採用しても、少なくとも、上記相違点5に係る本件発明1の構成、要するに「常夜灯用の補助光源発光素子」が「前記主光源発光素子の配列間に設けられる」という構成に至るものではない。
(エ)さらに、甲第4号証及び第5号証には、上記相違点3に係る本件発明1の「透光性の拡散部材」の構成、すなわち、「前記主光源発光素子と対向する位置と、前記補助光源発光素子と対向する位置とで異なる断面形状を有し、前記主光源発光素子と前記補助光源発光素子とから出射された光を拡散させ」ることは記載も示唆もなく、また、特許異議申立人が上記「拡散部材」に係る構成の周知例として例示する甲第7~9号証には、 摘示(7a)~(9b)のとおりの各種照明器具の構造が記載されているが、それらの照明器具は、そもそも「主光源発光素子」及び「常夜灯用の補助光源発光素子」を具備するものではなく、さらに、「拡散部材」の構成として、「前記主光源発光素子と対向する位置と、前記補助光源発光素子と対向する位置とで異なる断面形状を有し、前記主光源発光素子と前記補助光源発光素子とから出射された光を拡散させ」るように構成したものでもないから、甲第4~5号証に加え、甲第7~9号証を加味しても、「主光源発光素子」と「常夜灯用の補助光源発光素子」とを具備する照明器具において、上記相違点3に係る本件発明1の構成、要するに、「拡散部材」が「前記主光源発光素子と対向する位置と、前記補助光源発光素子と対向する位置とで異なる断面形状を有し、前記主光源発光素子と前記補助光源発光素子とから出射された光を拡散させ」るという構成に至るものでもない。
(オ)したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(2-3-4)小括
以上のとおり、本件発明1は甲1発明と上記相違点1~5において相違するものであるところ、少なくとも相違点3及び5に係る本件発明1の構成は上記「(2-3-3)ウ」のとおり容易想到とはいえないものであるから、その余の相違点1、2及び4を検討するまでもなく、本件発明1は当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本件発明1と同様に、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本件取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2018-700447