特許異議申立
2018-700325
液晶配向剤、液晶配向膜、液晶表示素子及び液晶表示素子の製造方法
- 審判番号
- 2018-700325
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-077493
- 登録番号
- 特許第6212912号(P6212912)
- 請求日
- 2018年04月18日
- 審決日
- 2019年03月27日
- 公報発行日
- 2019年08月30日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】JSR株式会社
- 【権利者代理人】山田 強
- 【権利者代理人】廣田 美穂
- 【権利者代理人】日野 京子
- 【異議申立人】西 あけみ
- 審判長/審判官
- 審判長 岡崎 美穂
- 審判官 野村 伸雄
- 審判官 宮澤 浩
- 分類
- P1651.113-ZDA(G02F) / P1651.121-ZDA(G02F) / P1651.16 -ZDA(G02F) / P1651.537-ZDA(G02F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法113条2号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第2号、特許法第29条第2項、特許法第29条の2、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6212912号発明「液晶配向剤、液晶配向膜、液晶表示素子及び液晶表示素子の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6212912号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕、7、8について訂正することを認める。
特許第6212912号の請求項8に係る特許を取り消す。
特許第6212912号の請求項2~7に係る特許を維持する。
特許第6212912号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6212912号の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成25年4月3日に出願され、平成29年9月29日にその特許権の設定登録がされ、平成29年10月18日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成30年 4月18日 :特許異議申立人西あけみ(以下「申立人」と いう。)による請求項1~8に係る特許に対 する特許異議の申立て
平成30年 7月10日付け:取消理由通知書
平成30年 9月 6日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出平成30年10月22日 :申立人による意見書の提出
平成30年11月26日付け:取消理由通知書(決定の予告)
なお、取消理由(決定の予告)に対して、特許権者からは何ら応答はなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、「前記重合体(P)は、ポリオルガノシロキサン骨格を有する、請求項1に記載の液晶配向剤。」と記載されているのを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式に改め、「下記式(1)で表される基を有し、かつポリオルガノシロキサン骨格を有する重合体(P)を含有する、液晶配向剤。
【化1】
(式(1)中、A1は、下記式(1a)
【化2】
(式(1a)中、A2は、1,4-フェニレン基又は1,4-シクロヘキシレン基であり、X4は、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-(CH2)2-又は-C≡C-であり、mは0~2の整数である。但し、mが1又は2の場合、複数のA2はそれぞれ同じでも異なってもよく、mが2の場合、複数のX4はそれぞれ同じでも異なってもよい。2つの「*1」は結合手を示す。)
で表される2価の基、ナフチレン基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はデカヒドロナフタレンジイル基である。Yは、単結合、-O-、*2-COO-、*2-OCO-、-OCOO-、-CO-、*2-CONH-、*2-NHCO-、-NH-、-N(CH3)-、-N(C2H5)-、-Si(CH3)2-、-S-、*2-COS-、*2-SCO-又は-C≡C-(但し、「*2」はA1との結合手を示す。)である。Lは、炭素数2~20のアルカンジイル基、又は炭素数2~20のアルカンジイル基の少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換された2価の基であり、これらの基における炭素-炭素結合間に、-O-、-S-及び-NH-のうちの少なくともいずれかを含んでいてもよく、炭素-炭素結合の一部が二重結合又は三重結合であってもよい。aは0であり、bは1である。Zは、下記式(2a)又は下記式(2b)
【化3】
(式(2a)、式(2b)中、X1は、水素原子又はメチル基である。「*3」は結合手を示す。)
で表される基である。「*」は結合手を示す。)」に訂正する(請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3~6も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に、「請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液晶配向剤を、導電膜を有する一対の基板の該導電膜上にそれぞれ塗布し、次いでこれを加熱して塗膜を形成する第1の工程と、前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを構築する第2の工程と、前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する第3の工程と、を含む液晶表示素子の製造方法。」とあるうち、請求項1を引用するものについては除外し、「請求項2又は3に記載の液晶配向剤を、導電膜を有する一対の基板の該導電膜上にそれぞれ塗布し、次いでこれを加熱して塗膜を形成する第1の工程と、前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを構築する第2の工程と、前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する第3の工程と、を含む液晶表示素子の製造方法。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に、「請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。」とあるうち、請求項1を引用するものについては除外し、「請求項2又は3に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。」に訂正する(請求項5を引用する請求項6も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5(請求項7に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項7に、
「下記式(1)で表される基を有する重合体。
【化4】
(式(1)中、A1は、下記式(1a)
【化5】
(式(1a)中、A2は、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、ピペリジン-1,4-ジイル基、ピペリジン-2,5-ジイル基、ピペラジン-1,4-ジイル基、ピペラジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピリダジン-3,6-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、又はピリジン-2,5-ジイル基であり、X4は、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-(CH2)2-又は-C≡C-であり、mは0~2の整数である。但し、mが1又は2の場合、複数のA2はそれぞれ同じでも異なってもよく、mが2の場合、複数のX4はそれぞれ同じでも異なってもよい。2つの「*1」は結合手を示す。)
で表される2価の基、ナフチレン基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はデカヒドロナフタレンジイル基である。Yは、単結合、-O-、*2-COO-、*2-OCO-、-OCOO-、-CO-、*2-CONH-、*2-NHCO-、-NH-、-N(CH3)-、-N(C2H5)-、-Si(CH3)2-、-S-、*2-COS-、*2-SCO-又は-C≡C-(但し、「*2」はA1との結合手を示す。)である。Lは、炭素数2~20のアルカンジイル基、又は炭素数2~20のアルカンジイル基の少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換された2価の基であり、これらの基における炭素-炭素結合間に、-O-、-S-及び-NH-のうちの少なくともいずれかを含んでいてもよく、炭素-炭素結合の一部が二重結合又は三重結合であってもよい。aは0であり、bは1である。Zは、下記式(2a)又は下記式(2b)
【化6】
(式(2a)、式(2b)中、X1は、水素原子又はメチル基である。「*3」は結合手を示す。)
で表される基である。「*」は結合手を示す。)」と記載されているのを、
「下記式(1)で表される基を有する重合体。
【化4】
(式(1)中、A1は、下記式(1a)
【化5】
(式(1a)中、A2は、1,4-フェニレン基又は1,4-シクロヘキシレン基であり、X4は、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-(CH2)2-又は-C≡C-であり、mは0~2の整数である。但し、mが1又は2の場合、複数のA2はそれぞれ同じでも異なってもよく、mが2の場合、複数のX4はそれぞれ同じでも異なってもよい。2つの「*1」は結合手を示す。)
で表される2価の基、ナフチレン基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はデカヒドロナフタレンジイル基である。Yは、単結合、-O-、*2-COO-、*2-OCO-、-OCOO-、-CO-、*2-CONH-、*2-NHCO-、-NH-、-N(CH3)-、-N(C2H5)-、-Si(CH3)2-、-S-、*2-COS-、*2-SCO-又は-C≡C-(但し、「*2」はA1との結合手を示す。)である。Lは、炭素数2~20のアルカンジイル基、又は炭素数2~20のアルカンジイル基の少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換された2価の基であり、これらの基における炭素-炭素結合間に、-O-、-S-及び-NH-のうちの少なくともいずれかを含んでいてもよく、炭素-炭素結合の一部が二重結合又は三重結合であってもよい。aは0であり、bは1である。Zは、下記式(2a)又は下記式(2b)
【化6】
(式(2a)、式(2b)中、X1は、水素原子又はメチル基である。「*3」は結合手を示す。)
で表される基である。「*」は結合手を示す。)」と訂正する。
(6)訂正事項6(請求項8に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項8に、
「下記式(1)で表される基を有するカルボン酸。
【化7】
(式(1)中、A1は、下記式(1a)
【化8】
(式(1a)中、A2は、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、ピペリジン-1,4-ジイル基、ピペリジン-2,5-ジイル基、ピペラジン-1,4-ジイル基、ピペラジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピリダジン-3,6-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、又はピリジン-2,5-ジイル基であり、X4は、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-(CH2)2-又は-C≡C-であり、mは0~2の整数である。但し、mが1又は2の場合、複数のA2はそれぞれ同じでも異なってもよく、mが2の場合、複数のX4はそれぞれ同じでも異なってもよい。2つの「*1」は結合手を示す。)
で表される2価の基、ナフチレン基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はデカヒドロナフタレンジイル基である。Yは、単結合、-O-、*2-COO-、*2-OCO-、-OCOO-、-CO-、*2-CONH-、*2-NHCO-、-NH-、-N(CH3)-、-N(C2H5)-、-Si(CH3)2-、-S-、*2-COS-、*2-SCO-又は-C≡C-(但し、「*2」はA1との結合手を示す。)である。Lは、炭素数2~20のアルカンジイル基、又は炭素数2~20のアルカンジイル基の少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換された2価の基であり、これらの基における炭素-炭素結合間に、-O-、-S-及び-NH-のうちの少なくともいずれかを含んでいてもよく、炭素-炭素結合の一部が二重結合又は三重結合であってもよい。aは0であり、bは1である。Zは、下記式(2a)又は下記式(2b)
【化9】
(式(2a)、式(2b)中、X1は、水素原子又はメチル基である。「*3」は結合手を示す。)
で表される基である。「*」は結合手を示す。)」と記載されているのを、
「下記式(AC1)で表される基を有するカルボン酸。
【化7】
(式(AC1)中、A1は、下記式(1a)
【化8】
(式(1a)中、A2は、1,4-フェニレン基又は1,4-シクロヘキシレン基であり、X4は、単結合であり、mは1又は2である。但し、複数のA2はそれぞれ同じでも異なってもよい。2つの「*1」は結合手を示す。)
で表される2価の基、ナフチレン基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はデカヒドロナフタレンジイル基である。Yは、単結合、-O-、*2-COO-、*2-OCO-又は-C≡C-(但し、「*2」はA1との結合手を示す。)である。Lは、炭素数2~20のアルカンジイル基である。aは0であり、bは1である。Zは、下記式(2a)又は下記式(2b)
【化9】
(式(2a)、式(2b)中、X1は、水素原子又はメチル基である。「*3」は結合手を示す。)
で表される基である。W1は、単結合、-O-R5-*又は-C≡C-R5-*(但し、R5は、フェニレン基である。「*」は、カルボキシル基との結合手を示す。)である。)」と訂正する。
なお、訂正前の請求項1ないし6は、請求項2ないし6が請求項1の記載を直接または間接的に引用する関係にあるから、訂正事項1ないし4は、一群の請求項1ないし6について請求されている。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1を削除するというものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アに記載したとおり、訂正事項1は、請求項1を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、請求項1を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2のうち、訂正前の請求項2の記載が請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
また、訂正事項2のうち、「A2は、1,4-フェニレン基又は1,4-シク口ヘキシレン基であり」とする訂正事項は、式(1a)中のA2に限定を加えることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改め、式(1a)についての発明特定事項を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。そのため、かかる訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
願書に添付した明細書の段落【0018】には「A2は、1,4-フェニレン基又は1,4-シクロヘキシレン基であることが好ましい。」との記載がある。
以上より、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項4が請求項1乃至3の記載を引用する記載であるところ、訂正事項1により、請求項1が削除されたことにともない、請求項1の記載を引用しないものとするための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲を減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、訂正前の請求項4について引用請求項の数を減少し、請求項1の記載を引用しないものとするための訂正である。そのため、かかる訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アの理由から明らかなように、訂正事項3は、請求項1の記載を引用しないものとするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項5が請求項1乃至3の記載を引用する記載であるところ、訂正事項1により、請求項1が削除されたことにともない、請求項1の記載を引用しないものとするための訂正であるから、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲を減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、訂正前の請求項5について引用請求項の数を減少し、請求項1の記載を引用しないものとするための訂正である。そのため、かかる訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アの理由から明らかなように、訂正事項4は、請求項1の記載を引用しないものとするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(5)訂正事項5(請求項7に係る訂正)
ア 訂正の目的について
訂正事項5のうち、重合体について「かつポリオルガノシロキサン骨格を有」するとする訂正事項は、重合体の主鎖構造の限定を加えることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
また、訂正事項5のうち、「A2は、1,4-フェニレン基又は1,4-シク口ヘキシレン基であり」とする訂正事項は、式(1a)中のA2に限定を加えることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
よって、上記訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、重合体の主鎖構造をポリオルガノシロキサンに限定するとともに、式(1a)中のA2に限定を加えるものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。そのため、かかる訂正事項は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
願書に添付した明細書の段落【0018】には「A2は、1,4-フェニレン基又は1,4-シクロヘキシレン基であることが好ましい。」、段落【0027】には「『重合体(P)の主鎖骨格は、』『ポリオルガノシロキサン骨格であることが好ましい。すなわち、本発明の液晶配向剤は、重合体成分として、上記式(1)で表される基を有するポリオルガノシロキサン(以下、「特定ポリオルガノシロキサン」ともいう。)を含有することが好ましい。』」との記載がある。
以上より、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(6)訂正事項6(請求項8に係る訂正)
ア 訂正の目的について
訂正事項6のうち、「下記式(AC1)で表されるカルボン酸」、及び「W1は、単結合、-O-R5-*又は-C≡C-R5-*(但し、R5はフェニレン基である。「*」は、カルボキシル基との結合手を示す。)である。」とする訂正事項は、カルボン酸の構造の限定を加えることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
また、訂正事項6のうち、「A2は、1,4-フェニレン基又は1,4-シク口ヘキシレン基であり」、「X4は、単結合であり、mは1又は2である。」、「但し、複数のA2それぞれ同じでも異なってもよい」、「Yは、単結合、-O-、*2-COO-、*2-OCO一又は-C≡C-(但し、「*2」はA2との結合手を示す。)である」、及び「Lは、炭素数2~20のアルカンジイル基である」とする訂正事項は、訂正前の請求項8中の式(1)及び式(1a)中のA2、X4、m、Y及びLに限定を加えることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
よって、上記訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6は、カルボン酸の構造の限定を加えるとともに、訂正前の請求項8中の式(1)及び式(1a)中のA2、X4、m、Y及びLに限定を加えるものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。そのため、かかる訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項6のうち「下記式(AC1)で表されるカルボン酸」、及び「W1は、単結合、-O-R5-*又は-C≡C-R5-*(但し、R5はフェニレン基である。「*」は、カルボキシル基との結合手を示す。)である。」との訂正事項は、明細書の段落【0029】及び【0045】の記載を根拠とするものである。
また、訂正事項6のうち、「A2は、1,4-フェニレン基又は1,4-シクロヘキシレン基であり」、「X4は、単結合であり、mは1又は2である。」、「但し、複数のA2はそれぞれ同じでも異なってもよい」、「Yは、単結合、-O-、*2-COO-、*2-OCO一又は-C≡C-(但し、「*2」はA1との結合手を示す。)である」、及び「Lは、炭素数2~20のアルカンジイル基である」との訂正事項は、明細書の段落【0018】、【0019】、【0045】~【0052】、【0100】~【0115】及び実施例の記載を根拠とするものである。
以上より、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
3 小括
したがって、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。
第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項2ないし8に係る発明(以下順に「本件発明2」ないし「本件発明8」という。)は、下記のとおりのものである。
「【請求項1】(削除)
【請求項2】
下記式(1)で表される基を有し、かつポリオルガノシロキサン骨格を有する重合体(P)を含有する、液晶配向剤。
【化1】
(式(1)中、A1は、下記式(1a)
【化2】
(式(1a)中、A2は、1,4-フェニレン基又は1,4-シクロヘキシレン基であり、X4は、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-(CH2)2-又は-C≡C-であり、mは0~2の整数である。但し、mが1又は2の場合、複数のA2はそれぞれ同じでも異なってもよく、mが2の場合、複数のX4はそれぞれ同じでも異なってもよい。2つの「*1」は結合手を示す。)
で表される2価の基、ナフチレン基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はデカヒドロナフタレンジイル基である。Yは、単結合、-O-、*2-COO-、*2-OCO-、-OCOO-、-CO-、*2-CONH-、*2-NHCO-、-NH-、-N(CH3)-、-N(C2H5)-、-Si(CH3)2-、-S-、*2-COS-、*2-SCO-又は-C≡C-(但し、「*2」はA1との結合手を示す。)である。Lは、炭素数2~20のアルカンジイル基、又は炭素数2~20のアルカンジイル基の少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換された2価の基であり、これらの基における炭素-炭素結合間に、-O-、-S-及び-NH-のうちの少なくともいずれかを含んでいてもよく、炭素-炭素結合の一部が二重結合又は三重結合であってもよい。aは0であり、bは1である。Zは、下記式(2a)又は下記式(2b)
【化3】
(式(2a)、式(2b)中、X1は、水素原子又はメチル基である。「*3」は結合手を示す。)
で表される基である。「*」は結合手を示す。)
【請求項3】
ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体(Q)を更に含有する、請求項2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の液晶配向剤を、導電膜を有する一対の基板の該導電膜上にそれぞれ塗布し、次いでこれを加熱して塗膜を形成する第1の工程と、
前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを構築する第2の工程と、
前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する第3の工程と、
を含む液晶表示素子の製造方法。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
【請求項6】
請求項5に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
【請求項7】
下記式(1)で表される基を有し、かつポリオルガノシロキサン骨格を有する重合体。
【化4】
(式(1)中、A1は、下記式(1a)
【化5】
(式(1a)中、A2は、1,4-フェニレン基又は1,4-シクロヘキシレン基であり、X4は、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-(CH2)2-又は-C≡C-であり、mは0~2の整数である。但し、mが1又は2の場合、複数のA2はそれぞれ同じでも異なってもよく、mが2の場合、複数のX4はそれぞれ同じでも異なってもよい。2つの「*1」は結合手を示す。)
で表される2価の基、ナフチレン基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はデカヒドロナフタレンジイル基である。Yは、単結合、-O-、*2-COO-、*2-OCO-、-OCOO-、-CO-、*2-CONH-、*2-NHCO-、-NH-、-N(CH3)-、-N(C2H5)-、-Si(CH3)2-、-S-、*2-COS-、*2-SCO-又は-C≡C-(但し、「*2」はA1との結合手を示す。)である。Lは、炭素数2~20のアルカンジイル基、又は炭素数2~20のアルカンジイル基の少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換された2価の基であり、これらの基における炭素-炭素結合間に、-O-、-S-及び-NH-のうちの少なくともいずれかを含んでいてもよく、炭素-炭素結合の一部が二重結合又は三重結合であってもよい。aは0であり、bは1である。Zは、下記式(2a)又は下記式(2b)
【化6】
(式(2a)、式(2b)中、X1は、水素原子又はメチル基である。「*3」は結合手を示す。)
で表される基である。「*」は結合手を示す。)
【請求項8】
下記式(AC1)で表される基を有するカルボン酸。
【化7】
(式(AC1)中、A1は、下記式(1a)
【化8】
(式(1a)中、A2は、1,4-フェニレン基又は1,4-シクロヘキシレン基であり、X4は、単結合であり、mは1又は2である。但し、複数のA2はそれぞれ同じでも異なってもよい。2つの「*1」は結合手を示す。)
で表される2価の基、ナフチレン基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はデカヒドロナフタレンジイル基である。Yは、単結合、-O-、*2-COO-、*2-OCO-又は-C≡C-(但し、「*2」はA1との結合手を示す。)である。Lは、炭素数2~20のアルカンジイル基である。aは0であり、bは1である。Zは、下記式(2a)又は下記式(2b)
【化9】
(式(2a)、式(2b)中、X1は、水素原子又はメチル基である。「*3」は結合手を示す。)
で表される基である。W1は、単結合、-O-R5-*又は-C≡C-R5-*(但し、R5は、フェニレン基である。「*」は、カルボキシル基との結合手を示す。)である。)」
第4 当審が通知した取消理由の概要
1 平成30年11月26日付け取消理由(決定の予告)の概要
本件発明8は、本件特許の優先日前に頒布された甲第7号証(特開2010-189615号公報、以下、甲第7号証を「甲7」と略して記載する。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。したがって、本件発明8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 平成30年7月10日付け取消理由の概要
理由1.(新規性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
理由2.(進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
理由3.(拡大先願)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願の優先日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
理由4.(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
記
理由1(新規性) について
・請求項 1、5~8
・引用文献等 甲第1号証~甲第5号証
理由2(進歩性)について
・請求項 1、4~7
・引用文献等 甲第1号証、甲第2号証、周知技術
理由3(拡大先願)について
・請求項 8
・引用文献等 甲第6号証
理由4(サポート要件)について
・請求項 1~8
引用文献等一覧
甲第1号証:国際公開第2012/002465号
甲第2号証:米国特許出願公開第2012/0116045号明細書
甲第3号証:特開2012-006997号公報
甲第4号証:Journal of Polymer Science,Part A:Polymer Chemistry,Volume:43,Issue:19,第4478~4485頁,2005
甲第5号証:Die Makromolekulare Chemie,Volume:175,Issue:8,第2499頁,1974
甲第6号証:特願2011-231702号(特開2013-087109号公報)
周知技術を示す文献:特開2011-118358号公報
(以下、甲第1~6号証を「甲1」等と略して記載する。)
第5 取消理由に対する当審の判断
当審は、本件特許の請求項8に係る特許は、取消理由によって、特許を取り消すと判断する。
また、本件特許の請求項1に係る特許については、請求項が削除されたので、特許異議申立てを却下する。
さらに、本件特許の請求項2~7に係る特許については、取消理由によって、これらの特許を取り消すことができないと判断する。
以下、詳述する。
1 平成30年11月26日付け取消理由(決定の予告)について
(1)甲第7号証の記載事項
甲7の段落【0089】、段落【0090】には、式(7)に示す化合物の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「式(7)に示す化合物
」
(2)対比・判断
引用発明における式(7)に示す化合物は、本件発明8の式(AC1)において、式(1a)のA2が1、4-フェニレン基であり、式(1a)のX4が単結合であり、式(1a)のmが1であり、Yが単結合であり、Lが炭素数2のアルカンジイル基であり、aが0であり、bが1であり、Zが式(2a)であり、X1が水素原子であり、W1が単結合であるカルボン酸と一致する。
以上のとおり、本件発明8は、甲7に記載された発明である。
2 平成30年7月10日付け取消理由について
本件発明8以外について検討する。
(1)理由1(新規性)について
ア 甲1を主引用例とした場合
(ア)甲1に記載された発明
甲1には、実施例2(段落[0080]~[0088])、実施例3(段落[0089]~[0095])の記載からみて、以下の化合物が記載されている。
「DA-2
化学式」
「DA-5
化学式」
また、甲1の請求項1、段落[0064]、実施例6(段落[0110]、実施例7(段落[0111])、段落[0116]、段落[0118]の記載からみて、以下の発明が記載されている。
「DA-2と、CBDAを用いて合成したポリアミック酸」(以下、「甲1-1発明」という。)
「DA-5と、CBDAを用いて合成したポリアミック酸」(以下、「甲1-2発明」という。)
「甲1-1発明又は甲1-2発明を用いた液晶配向剤」(以下、「甲1-3発明」という。)
「甲1-3発明の配向剤を用いた液晶配向膜」(以下、「甲1-4発明」という。)
「甲1-4発明の液晶配向膜を使用した液晶表示素子」(以下、「甲1-5発明」という。)
(イ)対比・判断
請求項1は、訂正により削除されたので、甲1-3発明に基づく取消理由の対象となる請求項1が存在しない。
請求項1の削除にともない、本件発明5、6は、液晶配向剤に含有される重合体(P)について「ポリオルガノシロキサン骨格を有する」ことが限定されたので、本件発明5、6は、それぞれ、甲1-4発明、甲1-5発明と相違する。
また、本件発明7は、訂正により、重合体は「ポリオルガノシロキサン骨格を有する」ことが限定されたので、本件発明7は、甲1-1発明、甲1-2発明と相違する。
したがって、本件発明5~7は、甲1に記載された発明ではない。
イ 甲2を主引用例とした場合
(ア)甲2に記載された発明
甲2には、請求項2の記載からみて、以下の化合物が記載されている。
「化学式7」
また、甲2の請求項2の記載からみて、以下の発明が記載されている。
「化学式7のジアミンに由来する2価の有機基を含むポリアミック酸又はポリイミド」(以下、「甲2-1発明」)
「化学式7のジアミンに由来する2価の有機基を含むポリアミック酸又はポリイミドを含有する液晶配向剤」(以下、「甲2-2発明」という。)
また、甲2の請求項9、請求項10の記載からみて、甲2には、以下の発明も記載されている。
「甲2-2発明の液晶配向剤を用いた液晶配向膜」(以下、「甲2-3発明」という。)
「甲2-3発明の液晶配向膜を含む液晶表示装置」(以下、「甲2-4発明」という。)
(イ)対比・判断
請求項1は、訂正により削除されたので、甲2-2発明に基づく取消理由の対象となる請求項1が存在しない。
請求項1の削除にともない、本件発明5、6は、液晶配向剤に含有される重合体(P)について「ポリオルガノシロキサン骨格を有する」ことが限定されたので、本件発明5、6は、それぞれ、甲2-3発明、甲2-4発明と相違する。
また、本件発明7は、訂正により、重合体は「ポリオルガノシロキサン骨格を有する」ことが限定されたので、本件発明7は、甲2-1発明、甲2-2発明と相違する。
したがって、本件発明5~7は、甲2に記載された発明ではない。
(2)理由2(進歩性)について
ア 甲1を主引用例とした場合
(ア)本件発明1、5~7について
まず、本件発明7は、訂正により、重合体は「ポリオルガノシロキサン骨格を有する」ことが限定されたので、本件発明7は、甲1-1発明、甲1-2発明と相違する。
そして、甲1-1発明又は甲1-2発明において、ポリオルガノシロキサン骨格を有するようにする動機もない。
また、請求項1は、訂正により削除されたので、甲1-3発明に基づく取消理由の対象となる請求項1が存在しない。
請求項1の削除にともない、本件発明5、6は、液晶配向剤に含有される重合体(P)について「ポリオルガノシロキサン骨格を有する」ことが限定されたので、本件発明5、6は、それぞれ、甲1-4発明、甲1-5発明と相違する。
そして、甲1-4発明又は甲1-5発明において、ポリオルガノシロキサン骨格を有するようにする動機もない。
よって、本件発明7は、甲1-1発明又は甲1-2の発明、甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件発明5、6についても同様である。
(イ)本件発明4について
液晶表示装置の製造方法として、液晶配向剤を、導電膜を有する一対の基板の該導電膜上にそれぞれ塗布し、次いでこれを加熱して塗膜を形成する第1の工程と、前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを構築する第2の工程と、前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する第3の工程と、を含む液晶表示素子の製造方法とすることは、甲2の段落[0187]、特開2011-118358号公報の段落【0079】~【0082】に記載されているように周知技術である。
しかしながら、甲1-3発明において、ポリオルガノシロキサン骨格を有するようにする動機もない。
そうすると、本件発明4は、甲1-3発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
イ 甲2を主引用例とした場合
(ア)本件発明1、5~7について
まず、本件発明7は、訂正により、重合体は「ポリオルガノシロキサン骨格を有する」ことが限定されたので、本件発明7は、甲2-1発明と相違する。
そして、甲2-1発明において、ポリオルガノシロキサン骨格を有するようにする動機もない。
また、請求項1は、訂正により削除されたので、甲2-2発明に基づく取消理由の対象となる請求項1が存在しない。
請求項1の削除にともない、本件発明5、6は、液晶配向剤に含有される重合体(P)について「ポリオルガノシロキサン骨格を有する」ことが限定されたので、本件発明5、6は、それぞれ、甲2-3発明、甲2-4発明と相違する。
そして、甲2-3発明又は甲2-4発明において、ポリオルガノシロキサン骨格を有するようにする動機もない。
よって、本件発明7は、甲2-1発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件発明5、6についても同様である。
(イ)本件発明4について
また、甲2の段落[0185]~[0187]には、液晶配向剤をパターニングされたITO基板上に0.1μmの厚さにスピンコートし、80℃及び220℃の温度で硬化させ、ラビング処理、組み立て処理、及び液晶注入処理により、テスト用液晶セルを作製し、液晶セルに電圧を印加しながらUVエネルギーを照射することが記載されている。
しかしながら、甲2-2発明に、ポリオルガノシロキサン骨格を有するようにする動機もない。
そうすると、本件発明4は、甲2-2発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)理由4(サポート要件)について
ア 本件発明7について
平成30年7月10日付けの取消理由通知書では、式(1)のA2を1,4-フェニレン基又は1,4-シク口ヘキシレン基と特定せず、ポリオルガノシロキサン骨格を有することについて特定しない本件発明7は、当業者が出願時の技術常識に照らして発明の詳細な説明の記載により本件発明7の課題を解決できると認識できる範囲を超えるものであるから、本件発明7は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものとはいえない旨、指摘した。
これに対して、本件発明7は、訂正前は式(1)の特定の基を有することのみが特定された重合体に係る発明であったところ、訂正後は、式(1)のA2を1,4-フェニレン基又は1,4-シク口ヘキシレン基と限定した式(1)で表される基を有し、かつポリオルガノシロキサン骨格を有する重合体の発明となったことを踏まえて、以下、検討する。
本件発明7の課題は、本件特許明細書の段落【0007】の記載からみて、液晶セルの形成後、基板間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射することにより液晶表示素子を製造する場合において、できるだけ少ない光照射量で良好なプレチルト角特性を発現できる液晶配向膜を形成できるとともに、電圧変化に対する液晶分子の応答速度が十分に速い液晶表示素子を得ることができる液晶配向剤に用いる新規な重合体を提供することであると認められる。
そして、本件発明7に係る重合体の主鎖骨格について、発明の詳細な説明の段落【0016】~【0027】に説明があり、主鎖骨格については、段落【0027】に「 重合体(P)の主鎖骨格は、特に限定しないが、例えばポリオルガノシロキサン骨格、ポリエステル骨格、ポリアミック酸骨格、ポリイミド骨格などを挙げることができる。これらの中でも、ポリオルガノシロキサン骨格であることが好ましい。すなわち、本発明の液晶配向剤は、重合体成分として、上記式(1)で表される基を有するポリオルガノシロキサン(以下、「特定ポリオルガノシロキサン」ともいう。)を含有することが好ましい。」と記載され、特に限定しない旨が指摘されている。
また、段落【0028】~【0044】、【0096】~【0129】には、ポリオルガノシロキサン骨格を主鎖とするものであり、かつ、エポキシ基を有するトリアルコキシシランを合成したポリオルガノシロキサンと、特定の基を有するカルボン酸とを反応させた重合体であるか、エポキシ基を有するトリアルコキシシランと特定の基を有するカルボン酸を反応させたポリオルガノシロキサン重合体であるか、あるいは、特定の基を有するトリアルコキシシラン化合物と、テトラエトキシシラン又はエポキシ基を有するトリアルコキシシラン化合物等の他のシラン化合物とを反応させたポリオルガノシロキサン重合体が記載されている。
そして、できるだけ少ない光照射量で良好なプレチルト角特性を発現できる液晶配向膜を形成できるとともに、電圧変化に対する液晶分子の応答速度が十分に速いという効果は、重合体が本件訂正で訂正された上記式(1)で表される基を有することに起因するものであるところ、訂正により、本件発明7は、上記式(1)のA2を1,4-フェニレン基又は1,4-シク口ヘキシレン基と限定し、式(1)で表される基を有し、ポリオルガノシロキサン骨格を有すると特定されたので、上記課題を解決し得る発明となり、発明の詳細な説明に記載のものになった。
イ 本件発明2~6について
請求項1は、訂正により削除された。
そして、できるだけ少ない光照射量で良好なプレチルト角特性を発現できる液晶配向膜を形成できるとともに、電圧変化に対する液晶分子の応答速度が十分に速いという効果は、重合体が本件訂正で訂正された上記式(1)で表される基を有することに起因するものであるところ、訂正により、本件発明2~6は、上記式(1)のA2を1,4-フェニレン基又は1,4-シク口ヘキシレン基と限定し、式(1)で表される基を有し、ポリオルガノシロキサン骨格を有すると特定されたので、上記課題を解決し得る発明となり、発明の詳細な説明に記載のものになった。
第6 取消理由で採用しなかった特許異議の申立理由
1 取消理由で採用しなかった特許異議の申立理由の概要
(1)本件発明4
本件発明4は、本件特許の優先日前に頒布された甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。したがって、本件発明4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)本件発明2、3、8
本件発明2、3、8は、本件特許の優先日前に頒布された甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。したがって、本件発明2、3、8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 当審の判断
本件発明8以外の本件発明2、3、4について検討する。
(1)本件発明4について
請求項1の削除にともない、請求項4は「ポリオルガノシロキサン骨格を有する」重合体(P)との発明特定事項を含むものであるので、本件発明4は、甲第2号証に記載された発明と相違する。
(2)本件発明2、3について
本件発明2は、式(1)で表される基を有し、かつポリオルガノシロキサン骨格を有するする重合体(P)を含有する、液晶配向剤であり、本件発明3は、本件発明2のみを引用するものである。
甲1又は甲2には、ポリオルガノシロキサン骨格を有する重合体についての記載はなく、ポリオルガノシロキサン骨格を有するようにする動機もない。
第7 むすび
以上のとおり、本件発明8は、甲7に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
したがって、本件特許の請求項8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
本件特許の請求項2~7に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項2~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項1に係る特許は、訂正により削除されたため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、この特許についての特許異議の申立ては却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2018-700325