特許異議申立
2018-700241
結晶型降雪用空気の作製方法
- 審判番号
- 2018-700241
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-072994
- 登録番号
- 特許第6204045号(P6204045)
- 請求日
- 2018年03月23日
- 審決日
- 2018年10月10日
- 公報発行日
- 2019年01月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社大気社
- 【権利者代理人】木村 満
- 【権利者代理人】佐藤 浩義
- 【権利者代理人】庄野 寿晃
- 【権利者代理人】長野 正
- 【権利者代理人】湯浅 夏樹
- 【権利者代理人】山本 洋美
- 【権利者代理人】齋藤 悟郎
- 【異議申立人】小松 純
- 審判長/審判官
- 審判長 紀本 孝
- 審判官 佐々木 正章
- 審判官 宮崎 賢司
- 分類
- P1652.113-YAA(F25C) / P1652.121-YAA(F25C) / P1652.537-YAA(F25C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6204045号発明「結晶型降雪用空気の作製方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6204045号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3〕について訂正することを認める。
特許第6204045号の請求項1、2に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6204045号の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成25年3月29日に特許出願され、平成29年9月8日にその特許権の設定登録がされ、その後、請求項1、2に係る特許について、平成30年3月23日に特許異議申立人小松純(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、当審において平成30年6月5日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年8月3日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、平成30年9月20日に申立人より意見書が提出されたものである。
第2 訂正の請求についての判断
1 訂正の内容
平成30年8月3日の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6204045号の明細書、特許請求の範囲を本請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、3について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。
(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1に「湿度が水飽和以下の結晶用湿度空気を、前記結晶用湿度空気より低温の冷却用空気と混合して冷却することを含み、
前記結晶型降雪用空気は、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気であり、更に」とあるのを、「前記結晶型降雪用空気は、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気であり、
湿度が水飽和以下の結晶用湿度空気を、前記結晶用湿度空気より低温の冷却用空気と混合冷却して、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気を調製することを含み、更に」に訂正し、「分離した降雪後空気の少なくとも一部を、前記冷却用空気として使用する、」とあるのを、「分離した降雪後空気の少なくとも一部を冷却して、前記冷却用空気として使用する、」に訂正する。
(訂正事項2)
本件特許明細書の【0013】に「(1)結晶型降雪用空気の作製方法であって、湿度が水飽和以下の結晶用湿度空気を、前記結晶用湿度空気より低温の冷却用空気と混合して冷却することを含み、前記結晶型降雪用空気は、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気であり、更に
前記結晶用湿度空気は、外気若しくは加温又は冷却、及び/若しくは加湿又は減湿した外気を含み、
前記結晶型降雪用空気中で結晶型人工雪を生成させ、結晶型人工雪と、残余の結晶型降雪用空気である降雪後空気とを分離し、分離した降雪後空気の少なくとも一部を、前記冷却用空気として使用する、結晶型降雪用空気の作製方法。」とあるのを、「(1)結晶型降雪用空気の作製方法であって、
前記結晶型降雪用空気は、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気であり、
湿度が水飽和以下の結晶用湿度空気を、前記結晶用湿度空気より低温の冷却用空気と混合冷却して、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気を調製することを含み、更に
前記結晶用湿度空気は、外気若しくは加温又は冷却、及び/若しくは加湿又は減湿した外気を含み、
前記結晶型降雪用空気中で結晶型人工雪を生成させ、結晶型人工雪と、残余の結晶型降雪用空気である降雪後空気とを分離し、分離した降雪後空気の少なくとも一部を冷却して、前記冷却用空気として使用する、結晶型降雪用空気の作製方法。」に訂正する。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
上記訂正事項1は、請求項1の結晶型降雪用空気の作製方法について、作製される「結晶型降雪用空気」は、「氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気であ」って、その「氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気」を、「湿度が水飽和以下の結晶用湿度空気を、前記結晶用湿度空気より低温の冷却用空気と混合冷却して」「調整する」ことを限定し、さらに「分離した降雪後空気の少なくとも一部を、前記冷却用空気として使用する」ことについて、「分離した降雪後空気の少なくとも一部を冷却して」使用することを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、請求項1を引用する請求項3についても、同様に特許請求の範囲を減縮するものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項1は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項1は、本件特許明細書の【0026】に「本発明の結晶型降雪用空気の作製方法は、結晶用湿度空気を冷却用空気と混合して冷却することを含む。」、【0027】に「水飽和以下の湿度の結晶用湿度空気1(状態点SP1)を、低温の冷却用空気2(状態点SP2)で混合冷却していくと、結晶用湿度空気が冷却される。図1では、状態点SP1と状態点SP2を結んだ直線上を左側に状態点が移動していく(矢印方向)。この直線と水飽和線が交わるまでは、結晶用湿度空気の湿度は水飽和以下である。水飽和線との交点を過ぎると、湿度が飽和を超え過飽和になった後、空気中に含まれる水分が凝縮し、小さな粒径の過冷却水滴が飛散した状態となる。更に混合冷却が進むと、所望の結晶形状の結晶型人工雪をつくるために最適な、結晶型降雪用空気3の温湿度条件(状態点SP3)となる」、及び【0038】に「降雪後空気の少なくとも一部を循環冷却7して冷却用空気2とする冷却用空気調整手段」と記載されているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
上記訂正事項2は、上記訂正事項1の訂正に伴って、本件特許明細書の対応する記載を同様に訂正するものであるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項2は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項2は、本件特許明細書の【0026】、【0027】及び【0038】の記載を根拠とするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(3)請求項3についての独立特許要件について
特許異議の申立てがされていない請求項3について、上記訂正事項1により特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正がなされたから、独立特許要件について検討する。
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明を更に減縮したものであるところ、後述の通り「第4」に示す取消理由によって、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
よって、請求項3に係る発明も同様に、同取消理由により、特許出願の際独立して特許を受けることができないとはいえない。また、他に請求項3に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
したがって、請求項3についての訂正は、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第7項に適合するものである。
(4)一群の請求項等について
訂正前の請求項1及び3は、請求項3が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
したがって、訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。
また、訂正事項2は、一群の請求項である請求項1及び3に関係する訂正であるから、訂正事項2は、当該明細書の訂正に係る請求項の全てについて行ったものである。
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項~第7項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、3〕についての訂正を認める。
第3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~3に係る発明(以下「本件発明1~3」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
結晶型降雪用空気の作製方法であって、
前記結晶型降雪用空気は、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気であり、
湿度が水飽和以下の結晶用湿度空気を、前記結晶用湿度空気より低温の冷却用空気と混合冷却して、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気を調製することを含み、更に
前記結晶用湿度空気は、外気若しくは加温又は冷却、及び/若しくは加湿又は減湿した外気を含み、
前記結晶型降雪用空気中で結晶型人工雪を生成させ、結晶型人工雪と、残余の結晶型降雪用空気である降雪後空気とを分離し、分離した降雪後空気の少なくとも一部を冷却して、前記冷却用空気として使用する、結晶型降雪用空気の作製方法。
【請求項2】
結晶型降雪用空気の作製方法であって、
湿度が水飽和以下の結晶用湿度空気を、前記結晶用湿度空気より低温の冷却用空気と混合して冷却することを含み、
前記結晶型降雪用空気は、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気であり、更に
前記結晶用湿度空気は、外気若しくは加温又は冷却、及び/若しくは加湿又は減湿した外気を含み、
前記結晶用湿度空気の温度がt1℃であり、前記結晶型降雪用空気の温度をt3℃と設定したときに、湿り空気線図(h-x線図)上で、結晶用湿度空気の状態点と結晶型降雪用空気の状態点を結び、低温側に延長して、その線と飽和線と交差する状態点の温度を前記冷却用空気の初期設定温度t2の設定値とし、結晶用湿度空気と冷却用空気の初期風量比を、結晶用湿度空気:冷却用空気で、t3-t2:t1-t3とする、結晶型降雪用空気の作製方法。
【請求項3】
前記結晶型降雪用空気の温度が-17~-14℃の範囲にあり、結晶型降雪用空気の氷に対する過飽和度が107%以上である、請求項1又は2に記載の結晶型降雪用空気の作製方法。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1に係る特許に対して平成30年6月5日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)(新規性)本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)(進歩性)本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された甲第2号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
甲第2号証:特許第4549364号公報
<参考> 特許異議申立理由のその他の証拠
甲第1号証:特開平9-329380号公報
甲第3号証:実公平8-7325号公報
甲第4号証:実用新案登録第2531100号公報
甲第5号証:実願平3-40803号(実開平5-73478号)のCD-ROM
甲第6号証:”第13版 空気調和・衛生工学便覧 1基礎篇”、社団法人 空気調和・衛生工学会、2001年11月30日、p.85-86
甲第7号証:井上宇市、”新版 空気調和ハンドブック”、丸善株式会社、昭和47年1月20日、p.20-21
2 取消理由についての判断
(1)新規性について
ア 甲第2号証記載の発明
甲第2号証には、以下の記載がある
(ア)「【0014】
以下、本発明の降雪装置を添付図面に基づいて説明する。
本発明に係る降雪装置の造雪部1は、図1に示すように、造雪部1内において冷却器5により所定の温度に冷却され、次いで加湿器6により氷飽和以上の雰囲気に調整された空気を同造雪部1と造雪室2に循環させるための循環経路たるダクト3に、循環用の送風機として第一の送風手段たる第一送風機4と第二の送風手段たる第二送風機8を設けている。
【0015】
第一送風機4は、主に造雪室2に空気(氷飽和以上の雰囲気A)を送風するもので、また第二送風機8は、主に造雪室2の空気(氷飽和以上の雰囲気A)を、通気部材である通気膜14に通過させて吸入口7からダクト3に吸引するものである。
【0016】
そして、造雪室2に空気を送風する第一送風機4の送風量に対し、造雪室2の空気を、通気膜14を介して吸入口7からダクト3に吸引する第二送風機8の送風量を小に調整していて、造雪室2内で余剰となった空気を排出口2aから被供給室18に排出(排出空気B)するようにしている。」
(イ)「【0019】
そして、ダクト3には、造雪室2から被供給室18に排出した空気(排出空気B)を補うための送風機9、冷却器10を配設したダクト11を接続してあり、同冷却器10で所定の温度に冷却した空気を、送風機9によってダクト3に供給するようにしている。すなわち、上述において造雪室2から被供給室18に排出(排出空気B)した風量「0.1」の空気をダクト3に供給するようにしている。
【0020】
また、本降雪装置の造雪部1における造雪室2は、所定の温度に冷却され、かつ氷飽和以上の雰囲気に調整された空気を通過させる通気膜14を、細かいメッシュ状のエンドレスベルト状にし、同通気膜14を駆動回転体12と従動回転体13に張設してベルトコンベア状に回転させてなる回転膜装置を多数備えたものを示している。
【0021】
そして、造雪室2で造雪した雪を排出するための排出口2aに、同排出口2aから被供給室18に排出する空気(排出空気B)の量を制限するための制限手段としてローラ回転体16を配設している。」
(ウ)「【0026】
しかしながら、上述のように排出空気の流速や流量を増大させるとエネルギー効率が低下してしまうので、このエネルギー効率の観点からは、排出空気Bの流量を可及的小とすることができるようにローラ回転体表面の霜は前述のような着霜除去具17にて除去するのが望ましい。」
(エ)図1及び3には、送風機9で取り込まれる空気は、外気であることが看取できる。
上記記載事項を総合すると、甲第2号証には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
「降雪装置による氷飽和以上の雰囲気に調整された空気を造雪室2に循環させる方法であって、
造雪部1内において冷却器5により所定の温度に冷却され、次いで加湿器6により氷飽和以上の雰囲気に調整された空気を前記造雪部1と造雪室2に循環させるための循環経路たるダクト3を有し、
ダクト3には、造雪室2から被供給室18に排出した空気(排出空気B)を補うための送風機9、冷却器10を配設したダクト11を接続し、前記冷却器10で外気を所定の温度に冷却した空気を、送風機9によってダクト3に供給する方法。」
イ 対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、
(ア)甲2発明の「降雪装置による氷飽和以上の雰囲気に調整された空気を造雪室2に循環させる方法」は、降雪装置における人工雪製造の機序から結晶型人工雪が生成されていることは明らかであり、造雪室2に循環させる空気は結晶型降雪に用いる空気であるから、本件発明1の「結晶型降雪用空気の作製方法」に相当する。
(イ)甲2発明の「造雪室2に循環させる」「降雪装置による氷飽和以上の雰囲気に調整された空気」は、結晶型降雪に用いる空気であるから、本件発明1の「氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気」である「結晶型降雪用空気」に相当する。
(ウ)甲2発明の「冷却器10で外気を所定の温度に冷却した空気」は、本件発明1の「外気若しくは加温又は冷却、及び/若しくは加湿又は減湿した外気を含」む「結晶用湿度空気」に相当する。
(エ)甲2発明の「降雪装置」が「雪部1内において冷却器5により所定の温度に冷却され、次いで加湿器6により氷飽和以上の雰囲気に調整された空気を前記造雪部1と造雪室2に循環させるための循環経路たるダクト3を有」することは、造雪室2で結晶型人工雪が生成され、結晶型人工雪と残余の加湿器6により氷飽和以上の雰囲気に調整された空気とが分離され、分離された降雪後の空気の一部が冷却器5及び加湿器6に循環するものであるから、甲2発明の当該記載と、本件発明1の「前記結晶型降雪用空気中で結晶型人工雪を生成させ、結晶型人工雪と、残余の結晶型降雪用空気である降雪後空気とを分離し、分離した降雪後空気の少なくとも一部を冷却して、前記冷却用空気として使用する」こととは、「前記結晶型降雪用空気中で結晶型人工雪を生成させ、結晶型人工雪と、残余の結晶型降雪用空気である降雪後空気とを分離し、分離した降雪後空気の少なくとも一部を、前記結晶用湿度空気と混合する空気として使用する」ことの限りで一致する。
したがって、本件発明1と甲2発明とは少なくとも以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1は、「湿度が水飽和以下の結晶用湿度空気を、前記結晶用湿度空気より低温の冷却用空気と混合冷却して、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気を調製することを含」むのに対して、甲2発明は、冷却器10で外気を所定の温度に冷却した空気(本件発明1の「結晶用湿度空気」に相当。)を造雪室2からのダクト3に供給した後、冷却器5により所定の温度に冷却し、次いで加湿器6により氷飽和以上の雰囲気に調整する点。
<相違点2>
分離した降雪後空気の少なくとも一部を使用する冷却用空気について、本件発明1では、冷却して使用するのに対して、甲2発明では、冷却していない点。
ウ 当審の判断
上記相違点について検討する。
<相違点1について>
相違点1は、本件発明1が結晶用湿度空気を冷却用空気と混合冷却することで、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気、すなわち、結晶型降雪用空気を作成しているのに対し、甲2発明は、冷却器10で外気を所定の温度に冷却した空気を造雪室2からのダクト3に供給された空気と混合した後、冷却器5と加湿器6とを用いて、結晶型降雪用空気とする点で相違する。
そうすると、相違点1は、実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲2発明であるとはいえない。
<相違点2について>
甲第2号証には、造雪室2からのダクト3において、冷却器10で外気を所定の温度に冷却した空気を供給する前に冷却することは、何ら記載されていない。
したがって、相違点2は、実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲2発明であるとはいえない。
(2)進歩性について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、上記(1)イの相違点1及び2の点で少なくとも相違する。
イ 当審の判断
上記相違点について検討する。
<相違点1について>
甲2発明は、冷却器10で外気を所定の温度に冷却した空気を造雪室2からダクト3に供給された空気と混合した後、冷却器5と加湿器6とを用いて、結晶型降雪用空気とするものであるところ、冷却器5と加湿器6とを用いずに結晶型降雪用空気とすることは、甲第1、3~7号証に記載も示唆もなく、周知技術であるとの証拠もないから、相違点1に係る本件発明1の構成を当業者が容易に想到し得たとする理由はない。
<相違点2について>
甲第2号証には、造雪室2からのダクト3において、冷却器10で外気を所定の温度に冷却した空気を供給する前に冷却することは、何ら示唆されておらず、甲第1、3~7号証にも何ら記載されていない。
申立人は、平成30年9月20日の意見書において、少なくとも外気の冷却が必要であるところ、外気を冷却するのに、それより低温の空気と混合して、混合冷却することが周知技術である旨主張する。
しかし、甲2発明において、造雪室2からダクト3に供給された空気が冷却器10を通って供給される空気より低温であるとしても、甲2発明の外気は、冷却器10により所定の温度に冷却されており、冷却器5を有していることも考慮すると、造雪室2からダクト3に供給された空気が冷却を目的としているとまではいえないから、造雪室2からダクト3に供給された空気をさらに冷却する動機付けはない。
したがって、当業者が、甲2発明において、相違点2に係る本件発明1の事項とすることを容易になし得たとはいえない。
(3)小括
したがって、本件発明1は、甲2発明であるとはいえず、かつ、甲2発明及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ゆえに、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえないから、その発明に係る特許は取り消すべきものであるとはいえない。
第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許法第36条第6項1号について
申立人は、第1に、外気との混合前に、降雪後空気が人工結晶型空気の温度より冷却する工程、または、外気との混合時点において、降雪後空気が人工結晶型空気の温度より低いという条件、及び第2に、混合して、冷却後に加湿工程がないという条件が請求項1に反映されておらず、発明の課題を解決するための手段が反映されていない旨主張する。
しかし、上記第1の工程又は条件、及び第2の条件は、本件発明1において反映されていると認められるので、申立人の当該主張は採用できない。
2 本件発明1に対する甲第1号証を主発明とする特許法第29条第2項について
ア 対比
本件発明1と甲第1号証記載の発明(以下「甲1発明」という。)とは少なくとも以下の点で相違する。
<相違点3>
本件発明1は、「湿度が水飽和以下の結晶用湿度空気を、前記結晶用湿度空気より低温の冷却用空気と混合冷却して、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気を調製することを含み、更に前記結晶用湿度空気は、外気若しくは加温又は冷却、及び/若しくは加湿又は減湿した外気を含」むのに対して、甲1発明は、結晶用湿度空気を冷却用空気と混合冷却するものでない点。
イ 当審の判断
甲第2号証には、上記甲2発明について検討したとおり、外気である結晶用湿度空気を供給する点が記載されているといえるが、「湿度が水飽和以下の結晶用湿度空気を、前記結晶用湿度空気より低温の冷却用空気と混合冷却して、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気を調製すること」は開示されていない(<相違点1>参照。)から、仮に、甲1発明において、甲2号証の発明の外気である結晶用湿度空気を供給する構成を適用したとしても、上記相違点3に係る本件発明1の構成は得られない。
よって、本件発明1は、甲1発明及び甲第2~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 本件発明2に対する特許法第29条第2項について
ア 対比
本件発明2と甲2発明とは少なくとも以下の点で相違する。
<相違点4>
本件発明2は、「前記結晶用湿度空気の温度がt1℃であり、前記結晶型降雪用空気の温度をt3℃と設定したときに、湿り空気線図(h-x線図)上で、結晶用湿度空気の状態点と結晶型降雪用空気の状態点を結び、低温側に延長して、その線と飽和線と交差する状態点の温度を前記冷却用空気の初期設定温度t2の設定値とし、結晶用湿度空気と冷却用空気の初期風量比を、結晶用湿度空気:冷却用空気で、t3-t2:t1-t3とする」のに対して、甲2発明は、そのように特定されていない点。
イ 当審の判断
申立人は、上記相違点4に係る本件発明2の事項は、単に結晶用湿度空気と冷却用空気の混合の際の熱量収支計算を空気線図上に表現しただけにすぎず、当業者にとっての必然の選択にすぎない旨主張する。
しかし、本件発明2は、結晶用湿度空気と冷却用空気の初期風量比の決め方を具体的に特定するものであり、当該初期風量比の決め方として、「結晶用湿度空気の状態点と結晶型降雪用空気の状態点を結び、低温側に延長して、その線と飽和線と交差する状態点の温度を前記冷却用空気の初期設定温度t2の設定値とし」て、当該初期風量比を、t2を用いて決定する以外の方法がないとは認められない。
よって、相違点4に係る本件発明2の構成を当業者が容易に想到し得たとはいえず、本件発明2は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
4 小括
上記のとおり、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明であるとはいえないから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し、取り消すべきものであるとはいえない。
また、本件発明1、2は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~7号証記載の事項、又は甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3~7号証記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、取り消されるべきものとはいえない。
また、請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものとはいえず、取り消されるべきものとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2018-700241