特許異議申立
2022-701254
製氷機及び当該製氷機のための熱交換器
- 審判番号
- 2022-701254
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-542221
- 登録番号
- 7086603
- 請求日
- 2022年12月16日
- 審決日
- 2025年02月28日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】サンウェル・エンジニアリング・カンパニー・リミテッド
- 【権利者代理人】村山 靖彦
- 【権利者代理人】実広 信哉
- 【権利者代理人】阿部 達彦
- 【異議申立人】田口 雅士
- 審判長/審判官
- 審判長 水野 治彦
- 審判官 間中 耕治
- 審判官 竹下 和志
- 分類
- P1651.121-YAA(F25C) / P1651.536-YAA(F25C) / P1651.537-YAA(F25C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7086603号発明「製氷機及び当該製氷機のための熱交換器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7086603号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。
特許第7086603号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7086603号(以下、「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)11月6日(優先権主張外国庁受理2014年11月7日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、令和4年6月10日にその特許権の設定登録がされ、同年6月20日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、以下のとおりである。
令和4年12月16日 :特許異議申立人 田口 雅士(以下「申立人」という。)による請求項1に係る特許に対する特許異議の申立て
令和5年 3月 2日付け:取消理由通知書
同年 6月 5日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 9月13日 :申立人による意見書の提出
同年11月27日付け:訂正拒絶理由通知書
令和6年 2月29日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年 6月 3日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 7月18日 :訂正拒絶理由通知書
同年 9月11日 :特許権者による意見書の提出
同年11月21日 :申立人による意見書の提出
なお、令和5年6月5日に特許権者がした訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正請求について
1 本件訂正請求の内容
令和6年6月3日に提出された訂正請求書による訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、特許請求の範囲の請求項1を、訂正前に次の(2)のとおりであったものを、訂正後に次の(1)のとおり訂正する(以下、「本件訂正」という。)ことを求めるものであり、その訂正の内容は、次の(3)の訂正事項1のとおりのものである(下線は、訂正箇所を示すために、当審で付したものである。)。
(1)訂正後の請求項1
「【請求項1】
金属材料から作られた複数の軸方向延在部材を、略シリンダ状の内側熱交換面を規定する、略シリンダ状の管状体にろう付けする方法であって、
前記略シリンダ状の管状体の外面を粗くするステップと;
前記略シリンダ状の管状体の粗くされた前記外面に溶射を適用し、溶射された前記外面に溶融した金属パウダー材料を噴霧するステップであって、前記金属パウダー材料の少なくとも一部分が、前記金属材料と同じ材料を含んでいる、ステップと;
噴霧された前記外面に前記複数の軸方向延在部材を機械的に固定するステップであって、各軸方向延在部材が、アーチ形状を有する表面を備え、前記表面が、前記外面と接触し、各軸方向延在部材が、複数の冷媒通路を備えている、ステップと;
前記外面及び前記複数の軸方向延在部材をろう付け温度環境に設置するステップであって、各軸方向延在部材における前記管状体の外面に対向する表面全体が、前記管状体の前記外面にろう付けされる、ステップと;
前記外面及び前記複数の軸方向延在部材を冷却することを可能にするステップと;
を含むことを特徴とする方法。」
(2)訂正前の請求項1
「【請求項1】
金属材料から作られた複数の軸方向延在部材を、略シリンダ状の熱交換面を規定する、略シリンダ状の管状体にろう付けする方法であって、
前記熱交換面を粗くするステップと;
粗くされた前記熱交換面にパウダー材料を噴霧するステップであって、前記パウダー材料の少なくとも一部分が、前記金属材料と同じ材料を含んでいる、ステップと;
噴霧された前記熱交換面に前記複数の軸方向延在部材を機械的に固定するステップであって、各軸方向延在部材が、アーチ形状を有する表面を備え、前記表面が、前記熱交換面と接触し、各軸方向延在部材が、複数の冷媒通路を備えている、ステップと;
前記熱交換面及び前記複数の軸方向延在部材をろう付け温度環境に設置するステップであって、各軸方向延在部材 における前記管状体の外面に対向する表面 全体が、前記管状体の 前記外面にろう付けされる、ステップと;
前記熱交換面及び前記複数の軸方向延在部材を冷却することを可能にするステップと;
を含むことを特徴とする方法。」
(3)訂正事項1
本件訂正請求の内容は、以下の訂正事項1-1ないし訂正事項1-6のとおり分節できる訂正事項1からなる。
ア 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1に「金属材料から作られた複数の軸方向延在部材を、略シリンダ状の熱交換面を規定する、略シリンダ状の管状体にろう付けする方法」と記載されているのを、「金属材料から作られた複数の軸方向延在部材を、略シリンダ状の内側熱交換面を規定する、略シリンダ状の管状体にろう付けする方法」に訂正する。
イ 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1に「前記熱交換面を粗くするステップ」と記載されているのを、「前記略シリンダ状の管状体の外面を粗くするステップ」に訂正する。
ウ 訂正事項1-3
特許請求の範囲の請求項1に「粗くされた前記熱交換面にパウダー材料を噴霧するステップであって、前記パウダー材料の少なくとも一部分が、前記金属材料と同じ材料を含んでいる、ステップ」と記載されているのを、「前記略シリンダ状の管状体の粗くされた前記外面に溶射を適用し、溶射された前記外面に溶融した金属パウダー材料を噴霧するステップであって、前記金属パウダー材料の少なくとも一部分が、前記金属材料と同じ材料を含んでいる、ステップ」に訂正する。
エ 訂正事項1-4
特許請求の範囲の請求項1に「噴霧された前記熱交換面に前記複数の軸方向延在部材を機械的に固定するステップであって、各軸方向延在部材が、アーチ形状を有する表面を備え、前記表面が、前記熱交換面と接触し、各軸方向延在部材が、複数の冷媒通路を備えている、ステップ」と記載されているのを、「噴霧された前記外面に前記複数の軸方向延在部材を機械的に固定するステップであって、各軸方向延在部材が、アーチ形状を有する表面を備え、前記表面が、前記外面と接触し、各軸方向延在部材が、複数の冷媒通路を備えている、ステップ」に訂正する。
オ 訂正事項1-5
特許請求の範囲の請求項1に「前記熱交換面及び前記複数の軸方向延在部材をろう付け温度環境に設置するステップであって、各軸方向延在部材における前記管状体の外面に対向する表面全体が、前記管状体の前記外面にろう付けされる、ステップ」と記載されているのを、「前記外面及び前記複数の軸方向延在部材をろう付け温度環境に設置するステップであって、各軸方向延在部材における前記管状体の外面に対向する表面全体が、前記管状体の前記外面にろう付けされる、ステップ」に訂正する。
カ 訂正事項1-6
特許請求の範囲の請求項1に「前記熱交換面及び前記複数の軸方向延在部材 を冷却することを可能にするステップ」と記載されているのを、「前記外面及び前記複数の軸方向延在部材を冷却することを可能にするステップ」に訂正する。
2 訂正事項1の適否について
訂正事項1について、分節した訂正事項1-1ないし訂正事項1-6毎に、その適否を検討する。
(1)訂正事項1-1について
訂正事項1-1は、訂正前の請求項1の「略シリンダ状の熱交換面を規定する」と記載されているのを、「略シリンダ状の内側熱交換面を規定する」と訂正するものである。
そして、この訂正は、「熱交換面」を、「内側熱交換面」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、請求項中の「熱交換面」という記載に対して、直列的に発明特定事項を付加するものであるから、訂正事項1-1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないといえる。
また、訂正事項1は、段落【0006】に記載された事項の範囲でなされたものといえるから、新規事項を追加するものでもない。
(2)訂正事項1-2について
訂正事項1-2は、訂正前の請求項1の「前記熱交換面を粗くするステップ」と記載されているのを、「前記略シリンダ状の管状体の外面を粗くするステップ」と訂正するものである。
この訂正は、明細書の段落【0014】及び【0019】の記載からみて、「熱交換面」との語句が「略シリンダ状の管状体の外面」の誤記であることが明らかであり、当該明らかな誤記を、訂正事項1-2により正しい語句である「略シリンダ状の管状体の外面」に訂正するものであるから、誤記の訂正を目的とするものである。
また、請求項中の「熱交換面」という明らかな誤記を、設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面の記載全体からみて正しい語句である「略シリンダ状の管状体の外面」とするものであるから、訂正事項1-2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
また、訂正事項1-2は、段落【0014】及び【0019】に記載された事項の範囲でなされたものといえるから、新規事項を追加するものでもない。
(3)訂正事項1-3について
訂正事項1-3は、訂正前の請求項1の「粗くされた前記熱交換面にパウダー材料を噴霧するステップであって、前記パウダー材料の少なくとも一部分が、前記金属材料と同じ材料を含んでいる、ステップ」と記載されているのを、「前記略シリンダ状の管状体の粗くされた前記外面に溶射を適用し、溶射された前記外面に溶融した金属パウダー材料を噴霧するステップであって、前記金属パウダー材料の少なくとも一部分が、前記金属材料と同じ材料を含んでいる、ステップ」に訂正するものである。
このうち、「前記熱交換面」を「前記略シリンダ状の管状体の」「前記外面」と訂正することは、訂正事項1-2において上記(2)で説示した「熱交換面」についての誤記を、段落【0014】、【0019】の記載に基づき、本来その意であることが明細書の記載から明らかな内容である「略シリンダ状の管状体の外面」と正した上で、当該「略シリンダ状の管状体」及び「外面」を「前記略シリンダ状の管状体」及び「前記外面」と引用するものといえる。
さらに、「前記略シリンダ状の管状体の」「前記外面に溶射を適用し、溶射された前記外面に溶融した金属パウダー材料を噴霧すること」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもある。
したがって、訂正事項1-3は、特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的とするものといえる。
また、請求項中の「熱交換面」という明らかな誤記を、設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面の記載全体からみて正しい語句である「略シリンダ状の管状体の」「前記外面」とするものであり、加えて、「前記熱交換面にパウダー材料を噴霧するステップ」との特定事項に対する直列的な限定を行うものであるから、訂正事項1-3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないといえる。
また、「熱交換面」を「略シリンダ上の管状体の」「前記外面」と訂正することは、段落【0014】及び【0019】に記載された事項の範囲でなされたものであり、噴霧されるパウダー材料が金属であること、及び、金属パウダー材料を噴霧する前に当該外面に溶射を適用することは、段落【0019】に記載された事項の範囲でなされたものといえるから、新規事項を追加するものでない。
(4)訂正事項1-4について
訂正事項1-4は、請求項1に「噴霧された前記熱交換面に前記複数の軸方向延在部材を機械的に固定するステップであって、各軸方向延在部材が、アーチ形状を有する表面を備え、前記表面が、前記熱交換面と接触し、各軸方向延在部材が、複数の冷媒通路を備えている、ステップ」と記載されているのを、「噴霧された前記外面に前記複数の軸方向延在部材を機械的に固定するステップであって、各軸方向延在部材が、アーチ形状を有する表面を備え、前記表面が、前記外面と接触し、各軸方向延在部材が、複数の冷媒通路を備えている、ステップ」に訂正するものである。
そして、この訂正は、訂正事項1-2において上記(2)で説示した「熱交換面」についての誤記を、段落【0014】、【0019】の記載に基づき、本来その意であることが明細書の記載から明らかな内容である「略シリンダ状の管状体の外面」と正した上で、当該「外面」を「前記外面」と引用するものといえる。よって、訂正事項1-4は、訂正事項1-2と同様に、誤記の訂正を目的とするものである。
また、請求項中の「熱交換面」という記載が、設定登録時の明細書の記載との関係で、誤りであることが明らかであり、かつ、設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面の記載全体から、「略シリンダ状の管状体の外面」が正しい記載であることが自明な事項として定まるものといえるから、訂正事項1-4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないといえる。
また、訂正事項1-4は、段落【0014】及び【0019】に記載された事項の範囲でなされたものといえるから、新規事項を追加するものでもない。
(5)訂正事項1-5について
訂正事項1-5は、請求項1に「前記熱交換面及び前記複数の軸方向延在部材をろう付け温度環境に設置する」と記載されているのを、「前記外面及び前記複数の軸方向延在部材をろう付け温度環境に設置する」に訂正するものである。
そして、この訂正は、訂正事項1-2において上記(2)で説示した「熱交換面」についての誤記を、段落【0014】、【0019】の記載に基づき、本来その意であることが明細書の記載から明らかな内容である「略シリンダ状の管状体の外面」と正した上で、当該「外面」を「前記外面」と引用するものといえる。よって、訂正事項1-5は、訂正事項1-2と同様に、誤記の訂正を目的とするものである。
また、請求項中の「熱交換面」という記載が、設定登録時の明細書の記載との関係で、誤りであることが明らかであり、かつ、設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面の記載全体から、「略シリンダ状の管状体の外面」が正しい記載であることが自明な事項として定まるものといえるから、訂正事項1-5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないといえる。
また、訂正事項1-5は、段落【0014】及び【0019】に記載された事項の範囲でなされたものといえるから、新規事項を追加するものでもない。
(6)訂正事項1-6について
訂正事項1-6は、請求項1に「前記熱交換面及び前記複数の軸方向延在部材を冷却する」と記載されているのを、「前記外面及び前記複数の軸方向延在部材を冷却する」に訂正するものである。
そして、この訂正は、訂正事項1-2において上記(2)で説示した「熱交換面」についての誤記を、段落【0014】、【0019】の記載に基づき、本来その意であることが明細書の記載から明らかな内容である「略シリンダ状の管状体の外面」と正した上で、当該「外面」を「前記外面」と引用するものといえる。よって、訂正事項1-6は、訂正事項1-2と同様に、誤記の訂正を目的とするものである。
また、請求項中の「熱交換面」という記載が、設定登録時の明細書の記載との関係で、誤りであることが明らかであり、かつ、設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面の記載全体から、「略シリンダ状の管状体の外面」が正しい記載であることが自明な事項として定まるものといえるから、訂正事項1-6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないといえる。
また、訂正事項1-6は、段落【0014】及び【0019】に記載された事項の範囲でなされたものといえるから、新規事項を追加するものでもない。
3 小括
以上により、訂正事項1-1から訂正事項1-6により分節される訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は、認められたから、本件訂正後の本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、上記第2の1(1)に示した「訂正後の請求項1」により特定されるものである。
第4 取消理由(決定の予告)の概要
本件訂正前の請求項1に係る特許に対して、当審が令和6年2月29日付けの取消理由通知(決定の予告)により特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
取消理由1.(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
取消理由2.(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
取消理由3.(実施可能要件)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
・取消理由1
請求項1に記載の発明は、明確ではない。
・取消理由2
請求項1に記載の発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
・取消理由3
発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
第5 当審の判断
1 取消理由1(明確性)
(1)判断
訂正後の請求項1における、「シリンダ状の管状体の外面」は、明細書の段落【0019】の記載事項から、「各軸方向延在部材とろう付けする部位」と明確に理解できる。
したがって、取消理由1に係る取消理由は解消した。
(2)申立人の主張について
ア 申立人は、意見書において、明確性に関して、以下の主張をしている。
(ア)「訂正後の請求項1は、「前記略シリンダ状の管状体の粗くされた前記外面に溶射を適用し、溶射された前記外面に溶融した金属パウダー材料を噴霧するステップ」という構成Aを含む。
ここで、「前記外面に溶射を適用し」とはどういった内容であるかが不明確である。」
(イ)「また、「前記外面に溶射を適用し」において、どのような材料を溶射するのか不明である。溶射には、一般的に、金属やセラミックスなどの溶射材料があるが、訂正後の請求項1の発明において何を溶射するのかが不明確である。」
(ウ)「「前記外面に溶融した金属パウダ材料を噴霧する」との記載があるが、その内容が不明確である。明細書の段落[0019]には、「ワイヤアーク溶射プロセスが、溶融したアルミニウム粉末を熱交換器本体302の溶射された表面に噴霧するために使用され」との記載があるが、この記載と、「前記外面に溶融した金属パウダ材料を噴霧する」との記載が異なるため、「前記外面に溶融した金属パウダ材料を噴霧する」がどういう技術を示すのか不明確となっている。
具体的には、「前記外面に溶融した金属パウダー材料を噴霧する」を文言どおり読めば、金属パウダー材料を溶融したものを噴霧する、と読みとることができる。しかし、明細書の段落[0019]からは、ワイヤを溶融して形成された金属パウダー状のものを噴霧するとも読みとれる。」
イ 申立人の主張に対する検討
上記(ア)の主張について、一般に、「溶射」という用語が、加熱することで溶融またはそれに近い状態にした粒子を、物体表面に吹き付けて皮膜を形成する表面処理法の一種であることを意味する用語であることは、技術常識である。
そうすると、「前記外面に溶射を適用し」という記載は、加熱することで溶融またはそれに近い状態にした粒子を、外面に吹き付けて皮膜を形成する表面処理法が適用されることと明確に理解できる。
上記(イ)の主張について、加熱することで溶融またはそれに近い状態となる粒子の「材料」については、申立人も主張するとおり、当業者であれば金属などの溶射材料が想起できるのであるから、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるということもない。
上記(ウ)の主張について、「前記外面に溶融した金属パウダ材料を噴霧する」という記載から、「外面」に「溶融した金属パウダ材料」を「噴霧する」ことであることが、特許請求の範囲の記載において明確に特定されているといえるから、明細書を参酌するまでもなく、発明が明確であるといえる。
よって、申立人の上記(ア)-(ウ)の主張は、採用できない。
(3)小括
以上のとおりであるから、取消理由1に係る取消理由は解消した。
2 取消理由2(サポート要件)
(1)判断
ア 取消理由通知の理由2.(1)についての検討
訂正後の請求項1によって、取消理由通知の理由2.(1)に係る取消理由が解消されたかを検討する。
訂正後の請求項1は、「金属パウダー材料の少なくとも一部分」が、「前記金属材料」、すなわち、軸方向延在部材を構成する金属材料と「同じ材料を含んでいる」ことを特定している。
当該特定について、明細書の段落【0009】には、「金属材料から作られた複数の部材を熱交換面にろう付けする方法」において、「パウダー材料の少なくとも一部分が、金属材料と同じ材料を含んでいる」ことが記載されている。
また、段落【0017】-【0019】には、実施例として、軸方向延在部材312の表面316をろう付けを解して熱交換器本体302の外面に接続するプロセスにおいて、溶融したアルミニウム粉末を熱交換器本体302の溶射された表面に使用されることが記載されている。
そして、ろう付けにおいて、接合強度等を考慮して、ろう付けされる対象と、ろう付けされる表面とを同じ材料とすることは、技術常識である。
明細書の段落【0009】、【0019】-【0019】の記載事項及び当該技術常識を踏まえると、溶射された表面に噴霧される金属の粉末を、ろう付けされる軸方向延在部材312の金属材料と同じ金属材料とすることは、明細書に記載された範囲内の事項といえる。
よって、取消理由通知の理由2.(1)に係る取消理由は解消した。
イ 取消理由通知の理由2.(2)についての検討
訂正後の請求項1によって、取消理由通知の理由2.(2)に係る取消理由が解消されたかを検討する。
訂正後の請求項1は、「略シリンダ状の管状体の粗くされた前記外面に溶射を適用し、溶射された前記外面に溶融した金属パウダー材料を噴霧するステップ」との事項が記載されている。そして、当該事項は、「粗くされた外面」に「溶射」を適用し、「溶射された外面」に「金属パウダー材料」が噴霧することを特定する。
当該特定事項は、段落【0019】の「この実施形態では、ろう付けプロセスは、4つのステップを含んでいる。サンドブラストステップは、熱交換器本体302の外面を粗くするために使用される。例えばインコネルのような溶射が、熱交換器本体302の粗くされた表面に適用される。ワイヤアーク溶射プロセスが、溶融したアルミニウム粉末を熱交換器本体302の溶射された表面に噴霧するために使用され、それにより、熱交換器本体302の外面にアルミニウム層を作り出す。」という記載に裏付けられている。
よって、訂正後の請求項1における上記事項は、明細書に裏付けられた事項といえる。
よって、取消理由通知の理由2.(2)に係る取消理由は解消した。
(2)申立人の主張について
ア 申立人は、意見書において、サポート要件に関して、以下の主張をしている。
・「明細書の段落[0019]には、「インコネルのような溶射が、熱交換器本体302の粗くされた表面に適用される。」としか開示されていない。この記載は、材料を特定しない「溶射を適用する」ことと同然ではない。
また、明細書の段落[0019]には、「ワイヤアーク溶射プロセスが、溶融したアルミニウム粉末を熱交換器本体302の溶射された表面に噴霧するために使用され」としか開示されていない。この記載は、溶射プロセスを特定していない「溶射された前記外面に溶融した金属パウダー材料を噴霧する」ことと同然ではない。」
イ 申立人の主張に対する検討
段落【0019】の記載から、「インコネルのような溶射」が、「適用される」のであって、そもそも、材料を特定のものに限定していないから、「この記載は、材料を特定しない「溶射を適用する」ことと同然ではない。」という主張は、採用できない。
また、段落【0019】の記載は、溶融したアルミニウム粉末を熱交換器本体302の溶射された表面に噴霧することを、「ワイヤアーク溶射プロセス」と称しているのみであって、具体的な溶射プロセスを特定するものではないから、「この記載は、溶射プロセスを特定していない「溶射された前記外面に溶融した金属パウダー材料を噴霧する」ことと同然ではない。」という主張は、採用できない。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
3 取消理由3(実施可能要件)
(1)判断
上記2(1)アで判断したとおり、訂正後の請求項1は、明細書に裏付けられた事項といえる。
してみると、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、訂正後の請求項1に記載された発明を、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものといえる。
よって、取消理由通知の理由3.に係る取消理由は解消した。
(2)申立人の主張について
ア 申立人は、意見書において、実施可能要件に関して、「前記略シリンダ状の管状体の粗くされた前記外面に溶射を適用し、溶射された前記外面に溶融した金属パウダー材料を噴霧するステップ」を構成Aとし、「前記金属パウダー材料の少なくとも一部分が、前記金属材料と同じ材料を含んでいる」を構成Bと定義したうえで、以下の主張をしている。
・「請求項1の構成A及び構成Bは、上記の理由2で検討したとおり、発明の詳細な説明に記載されていない。
よって、発明の詳細な説明には、構成Aは、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。」
イ 申立人の主張に対する検討
「前記略シリンダ状の管状体の粗くされた前記外面に溶射を適用し、溶射された前記外面に溶融した金属パウダー材料を噴霧するステップ」については、段落【0019】の記載に裏付けられているといえるから、発明の詳細な説明は、当業者が当該記載に基づき、構成Aについて実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものといえる。
また、「前記金属パウダー材料の少なくとも一部分が、前記金属材料と同じ材料を含んでいる」という構成については上記2(1)アで説示したとおり、明細書に裏付けられた事項であって、当業者が当該記載に基づき、構成Bについて実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものといえる
よって、申立人の主張は、採用できない。
(3)小括
以上のとおりであるから、明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明を実施可能に記載したものである。
第6 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由(進歩性)の概要
申立人は、甲第1-9号証を提出し、概ね以下の主張をする。
本件発明は、甲第1-9号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
[証拠方法]
甲第1号証:米国特許第6286332号明細書
甲第2号証:特開2005-98612号公報
甲第3号証:特開平11-291043号公報
甲第4号証:特開平3-27884号公報
甲第5号証:特開2013-188780号公報
甲第6号証:特開平7-310161号公報
甲第7号証:特開昭54-28744号公報
甲第8号証:特開平1-266981号公報
甲第9号証:特開2006-10304号公報
(以下、甲第1-9号証を、それぞれ「甲1」-「甲9」という。)
2 甲号証の記載事項
(1)甲1
ア 甲1の記載事項(下線は、理解の一助のために、当審にて付与した。以下同様。)
(ア)「Referring now to FIG. 1, an ice-making machine is shown and is generally indicated to by reference numeral 10. As can be seen, ice-making machine 10 includes a generally cylindrical housing 12 constituted by a cylindrical central heat exchanger body 14 and a pair of end plates 16 and 18 respectively secured to the ends of the heat exchanger body 14 by suitable fasteners (not shown). Gaskets 20 (best seen in FIG. 3) are positioned between the end plates 16 and 18 and the heat exchanger body 14 to seal the housing 12 and inhibit fluid leakage.
FIGS. 1, 2 and 6 best illustrate the heat exchanger body 14. As can be seen, the heat exchanger body 14 is of a single piece construction formed from extruded aluminum and includes a cylindrical interior surface 30 which defines the heat exchange surface of the ice-making machine 10. The heat exchange surface 30 is coated with a corrosion and erosion resistant agent. The corrosion and erosion resistant agent is in turn coated with a release agent such as Teflon.RTM. to inhibit the deposition of ice crystals thereon.」(第5欄第33-51行)
(当審訳:「ここで図1を参照すると、符号10として製氷機が示されている。図からわかるように、製氷機10は、円筒形の中央の熱交換器本体14で構成された円筒状のハウジング12と、一対の適切な固定具(図示せず)により熱交換器本体14の端部にそれぞれ固定されたエンドプレート16、18とを備えている。ガスケット20(図3に示す)は、エンドプレート16、18と、熱交換器本体14との間に配置され、ハウジング12をシールし、流体の漏出を阻止している。
図1、図2および図6は、熱交換器本体14を最も良く示している。図からわかるように、熱交換器本体14は、押出成形されたアルミニウムから形成された一体構造のものであり、製氷機10の熱交換面を形成する円筒内面30を備えている。熱交換面30は耐腐食耐侵食剤でコーティングされている。耐腐食耐侵食剤は、テフロン(登録商標)などの離型剤を塗布し、氷の結晶の堆積を抑制する。」)
(イ)「Referring now to FIG. 7, the ice-making machine 10 is shown connected to an ice-making system. As can be seen, the refrigerant inlets 50 are connected to the outlet of a condenser unit 120 by way of an inlet header (not shown). The refrigerant outlets 60 are connected to the inlet of the condenser unit 120 by way of an outlet header (not shown). The condenser unit 120 condenses and compresses refrigerant exiting the ice-making machine 10 by way of the refrigerant outlets 60 before recirculating the refrigerant to the refrigerant inlets 50. The ice-brine slurry outlet 68 is connected to a discharge conduit 122. Discharge conduit 122 leads to an outlet 124 as well as to a recirculation conduit 126. Recirculation conduit 126 leads to an inlet conduit 128 which also receives brine solution. The inlet conduit 128 supplies brine solution and/or ice-brine slurry to the brine solution inlet 66.」(第7欄第53行-第8欄第2行)
(当審訳:「図7を参照すると、製氷機10は製氷システムに接続されている。図からわかるように、冷媒入口50は、入口ヘッダ(図示せず)により凝縮器ユニット120の出口に接続されている。冷媒出口60は、出口ヘッダ(図示せず)により凝縮器ユニット120の入口に接続されている。凝縮器ユニット120は、冷媒入口50に冷媒を再循環させる前に、冷媒出口60を経由して製氷機10から出てくる冷媒を凝縮し圧縮する。氷-ブラインスラリー出口68は放出導管122に接続されている。放出導管122が出口124および再循環導管126に通じている。再循環導管126は、ブライン液を受ける入口導管128に通じている。入口導管128はブライン溶液および/または氷-ブラインスラリーをブライン溶液入口66へ供給する。」)
(ウ)「The operation of the ice-making machine 10 will now be described. In operation brine solution or ice-brine slurry (hereinafter referred to as brine solution) is fed into the ice-making machine 10 through the brine solution inlet 66. The brine solution flows through the hollow shaft 70 and is then directed by the pointed end 82 of the drive shaft 80 towards the three passages 94 in the blade carrier 92. The brine solution flows along the three passages 94 until the brine solution exits the blade carrier 92 adjacent the heat exchange surface 30. While this is occurring, refrigerant enters each of the refrigerant circuits 32 by way of the refrigerant inlets 50. The refrigerant flows along the refrigerant passages 34 of each refrigerant circuit 32 and exits the refrigerant circuits 32 via the refrigerant outlets 60. As the refrigerant flows through the refrigerant passages 34 in the heat exchanger body 14, the refrigerant absorbs heat through the heat exchange surface 30 and boils. The brine solution in contact with the heat exchange surface 30 is thus supercooled.
To avoid deposition of ice on the heat exchange surface 30 which would inhibit heat transfer to the refrigerant and thereby reduce the efficiency of the ice-making machine 10, the blade assembly 90 is rotated by the motor driven drive shaft 80. Specifically, the blade assembly 90 is rotated at a rate of speed that is fast enough to allow the blades 98 to remove the supercooled brine solution from the heat exchange surface 30 prior to crystallization of ice crystals on the heat exchange surface 30.」(第8欄第8-35行)
(当審訳:「製氷機10の動作について説明する。動作中にブライン溶液あるいは氷-ブラインスラリー(以下ブライン溶液と呼ぶ)はブライン溶液入口66を経て製氷機10に供給される。ブライン溶液は空洞軸70を通って流れ、そして、駆動軸80の尖端82に指向され、ブレードキャリア92の3個の通路94に向かう。ブライン溶液は、熱交換面30に隣接するブレードキャリア92を出るまで、3個の通路94に沿って流れる。このとき、冷媒は、冷媒入口50を介して冷媒回路32のそれぞれに流入する。冷媒は、冷媒回路32の冷媒通路34に沿って流れ、冷媒出口60を介して冷媒回路32を出る。冷媒は、熱交換器本体14の冷媒通路34を通って流れると、熱交換面30を通して熱を吸収し蒸発する。熱交換面30と接触しているブライン溶液はかくして過冷却される。
冷媒への熱伝導を阻害し、製氷機10の性能を落とすような熱交換面30上の氷の堆積を避けるために、ブレードアセンブリ90はモータで駆動される駆動軸80により回転駆動される。ブレードアセンブリ90は、熱交換面30上で氷の結晶が形成される前に過冷却されたブライン溶液をブレード98が除去するのに十分な速度で回転される。」)
(エ)「FIGS. 15a and 15b show yet another embodiment of a heat exchanger body 324B. In this embodiment, the heat exchanger body is constituted by a plurality of circumferentially spaced, elongate, arcuate extruded aluminum segments 351B. Refrigerant passages 334B extend longitudinally through each arcuate segment. An inner cylindrical sleeve 335B identical to that of FIGS. 10a and 10b lines the interior of the arcuate segments 351B to define the cylindrical heat exchange surface contacted by the rotating blades. A cylindrical clamp 355B surrounds the arcuate segments 351B to inhibit their movement. Fasteners in the form of nuts and bolts 357B (only one of which is shown) secure the ends of the clamp 355B at spaced locations along its length.」(第10欄第54-67行)
(当審訳:「図15a及び図15bは、熱交換器本体324Bのさらに別の実施形態を示している。この実施形態では、熱交換器本体は、熱交換器本体の周方向に離間し、延びて、円弧状に押出し成形された、複数のアルミニウムセグメント351Bから構成されている。冷媒通路334Bは、円弧状セグメントを通って長手方向に延びている。図10a及び図10bと同一のシリンダ状内スリーブ335Bは、円弧状セグメント351Bの内部に挿通し、回転ブレードと接触した円筒形熱交換面を規定する。筒状クランプ355Bは、円弧状セグメント351Bを包囲して、それらの動きを抑制する。ナットおよびボルト357B(そのうちの1つしか図示されていない)のような形状の固定手段は、クランプ355Bの端部を固定し、その長さに沿って間隔をおいた位置にある。」)
(オ)「
[図:0001423418000001.jpg]
」
イ 上記アから認められる事項
(ア)記載事項(エ)及び図示事項(オ)から、甲1には、アルミニウムセグメント351Bを、円筒形熱交換面を規定するシリンダ状内スリーブ335Bに、筒状クランプ355Bを用いて、取り付ける方法が開示されているといえる。
(イ)図示事項(オ)から、アルミニウムセグメント351Bは、周方向に複数設けられていることが看取できる。
(ウ)記載事項(エ)から、アルミニウムセグメント351Bに設けられた冷媒通路334Bが、円弧状セグメントを通って長手方向に延びていることから、アルミニウムセグメント351Bも長手方向に延在するものといえる。
ウ 甲1発明
上記ア及びイから、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
〔甲1発明〕
「長手方向に延在する複数のアルミニウムセグメント351Bを、円筒形熱交換面を規定するシリンダ状内スリーブ335Bに、筒状クランプ355Bを用いて、取り付ける方法。」
(2)甲2
ア 甲2の記載事項
(ア)「【0051】
図1において、熱交換器4は、内部に水が流動する第1の管としての管5と、その管5を被覆するように略円筒状に成形され、内部に冷媒が流動し、複数の小流路6を持つ第2の管としての多穴管7と、管5の内部に挿入された伝熱促進体としてのねじれテープ8で構成されている。そして、管5と多穴管7は、水と冷媒が対向流となるように構成されている。管5、多穴管7、ねじれテープ8は耐食性、熱伝導性の良い銅で作られ、特に多穴管7は継ぎ目のない管に作られる。」
(イ)「【0055】
まず、略円状の管5と、内部に複数の小流路6を持つ板状の扁平な多穴管7を、引抜き加工または押出し加工にて製作する。次に、管5にねじれテープ8を挿入する。その際、管5に空気を流しながら行うとねじれテープ8を挿入し易い。そして、管5の外周を被覆するように、多穴管7に曲げ加工を施す。これにより、多穴管7は略円筒状に成形した管となる。その際、管5の外周面と、その外周に接する多穴管7の内周面との間には、板状のロウ材9を挟み込んでおく。これを所定時間炉内で加熱し、管5と多穴管7を一回でロウ付接合する。ここで、ロウ材は板状のロウとしたが、箔や複数本の棒状ロウ、予め各管にプレコートされた被覆(クラッド)等を用いてもよい。」
イ 甲2に記載された技術的事項
上記アから、甲2には、次の技術的事項(以下、「甲2に記載された技術的事項」という。)が記載されているものと認められる。
〔甲2に記載された技術的事項〕
「管5と多穴管7とを含んで構成される熱交換器4において、管5の外周面と、その外周に接する多穴管7の内周面との間に、板状のロウ材9を挟み込んで、これを所定時間炉内で加熱し、管5と多穴管7をロウ付接合すること。」
(3)甲3
ア 甲3の記載事項
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ダイカスト鋳造や押出し成形等で成形されたアルミニウム系部材とステンレス材や鋼材,鉄材等で成形された鉄系部材とを接合するための接合方法に関するものである。」
(イ)「【0009】また、鉄系部材の被接合部分の表面には、鉄系部材の被接合部分にアルミニウム系溶射材を溶射する前に、脱脂→洗浄→ブラストからなる一連の溶射前処理を施すことが好ましい。そうすれば、鉄系部材の被接合部分の表面が活性化されてアルミニウム溶射皮膜との密着力が向上すると共に、アルミニウム溶射皮膜との間で投錨効果を発揮してより一層密着力を向上させることができるようになる。ちなみに、鉄系部材の被接合部分におけるアルミニウム溶射皮膜との密着力は、アルミニウム系部材と鉄系部材との接合力に大きく影響する。」
(4)甲4
ア 甲4の記載事項
(ア)「本発明に係るアルミニウムクラッド鋼板の製造方法の特徴とするところは、
アルミニウム或いはアルミニウム合金を合わせ材とし、鋼板を母材とするアルミニウムクラッド鋼板を圧延接合法により製造する際に、合わせ材は400℃~溶融温度未満の温度に加熱し、母材は接合面となる面にに深さ100~500μ、幅および長さ100~1000μの凹凸を設け、その上にアルミニウムの溶射皮膜を形成し、100~550℃の温度に加熱した後、圧延機の前において母材のアルミニウム溶射皮膜上に合わせ材を重ねてから、合わせ材の圧下率が少なくともlパスは10%以上となるように圧延を行なうことにある。」(第2ページ右上欄第6-19行)
(5)甲5
ア 甲5の記載事項
(ア)「【0018】
以下、本発明の異種金属接合方法を適用した一実施形態である鋼材とアルミニウム合金等との接合方法(以下、単に「接合方法」という)について、皮膜形成に用いるコールドスプレー装置の構成とともに、図面を用いて詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0019】
本実施形態においてコールドスプレー法とは、材料粉末と、この材料粉末の融点又は軟化点よりも低い温度に加熱した作動ガスとを、音速から超音速でスプレーガンのノズル(以降、単に「ノズル」と記載する)から噴出させ、基材に衝突させて皮膜を形成する方法である。
【0020】
(コールドスプレー装置)
図1は、本実施形態の接合方法に用いるコールドスプレー装置1の概略構成図である。図1に示すように、コールドスプレー装置1は、材料粉末を作動ガスによりガスの音速から超音速で第1基材2の表面2aに固体状態で衝突させて皮膜3を成膜する装置である。
【0021】
第1基材2は、鋼材を用いる。当該鋼材は、重量比で0.01%以上2%以下の炭素を含有する鉄の合金からなることが好ましい。具体的には、鋼材としては、冷間圧延材料(SPCC)、高張力鋼(ハイテン)、溶接構造用圧延鋼材等が挙げられる。また、鋼材の厚みは、特に限定されないが、0.5mm以上であることが好ましい。鋼材の厚みが0.5mmより薄くなると溶接が難しく、溶接不良となってしまう。
【0022】
第1基材2は、皮膜3を形成する表面2aがノズル10の噴出面10dに対向するように設置される。ノズル10の噴出面10dと第1基材2の表面2aとの距離は、ノズル10内での作動ガス及び材料粉末の速度及び皮膜3の膜厚等を勘案して設定される。
【0023】
第1基材2の表面2aの表面粗さRaは、0.1μm以上4μm以下であることが好ましい。ここで、表面2aの表面粗さRaが0.1μmより小さくなると、表面2aが滑らかであるため、皮膜3を成膜した際の第1基材2と皮膜3との界面の密着強度が低くなり、後に説明する皮膜形成後の皮膜3と第2基材との溶接時に当該界面で剥離する虞がある。一方、表面2aの表面粗さRaが4μmより大きくなると、皮膜3の成膜表面に凹凸が発生し、皮膜3と第2基材との溶接が難しくなるために好ましくない。これに対して、表面粗さRaが上記範囲内であると、第1基材2と皮膜3との密着度が向上するため、好ましい。
【0024】
第1基材2は、表面2aの表面粗さRaが上記範囲を満たすように、表面2aに凹凸を設けることが好ましい。表面2aの凹凸は、例えばブラスト処理により形成できる。
【0025】
本実施形態では、材料粉末として、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いる。アルミニウム合金の種類は限定されないが、例えば、1000系純アルミ、5000系のAl-Mgアルミニウム合金、6000系Al-Mg-Siアルミニウム合金等が挙げられる。
なお、材料粉末は第1基材2と異なる材質であれば、アルミニウム又はアルミニウム合金に限定されるものではなく、後に説明する第2基材の材質と同じ金属であればよい。このような材料粉末としては、例えば、銅、マグネシウム、チタン等を挙げることができる。」
(イ)「【0038】
上記のように、コールドスプレー装置1によれば、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる材料粉末が作動ガスによって音速から超音速に加速され、ノズル10の噴出面10dより、鋼からなる第1基材2に向けて噴出される。これにより、第1基材2の表面2aに、第1基材2とは異なる金属からなる皮膜3が簡便に、短時間且つ高い密着度で形成される。
【0039】
また、コールドスプレー装置1を用いたコールドスプレー法では、材料粉末の粒子が第1基材2の表面2aに対してビーム状に高速衝突するため、ノズル10の噴出面10dの形状や移動方向の設定を変更することにより、表面2aの所望の場所に所望の膜厚の皮膜3が形成される。
【0040】
次いで、本実施形態に係る鋼材とアルミニウム合金等との接合方法について説明する。」
(ウ)「【0047】
(第1基材及び第2基材接合工程)
次いで、図2(a)~(d)に示すように、第1基材2に接合する、長さL3、幅W、厚みT2の第2基材12を準備する。
ここで、第2基材12は、皮膜3を形成する材料粉末と同一の材質からなる。即ち、第1基材2とは異なる材質からなる。また、第2基材12の形状は、例えば板状やブロック状が挙げられるが、特に限定されない。但し、第2基材12の厚みT2は0.2mm以上であることが好ましい。厚みが0.2mmより薄くなると、次に説明する皮膜3との溶接が難しくなる。
【0048】
次に、図2(c)に示すように、第1基材2の表面2aに形成した皮膜3と、第2基材12とを対向させて、皮膜3と第2基材12とを溶接する。皮膜3と第2基材12との溶接方法としては、例えばTIG溶接、MIG溶接、プラズマ溶接が挙げられる。当該溶接においては、例えばすみ肉溶接、突合せ溶接を用いることができる。また、すべての継手形状(すみ肉、突合せ)で接合可能である。」
(6)甲6
ア 甲6の記載事項
(ア)「【0015】本実施例に係る接合方法では、まず、母材となる鉄系材料に対して、例えば酸洗浄、アルカリ洗浄、あるいは有機溶剤による洗浄を行うことにより、前洗浄を行い上記母材を脱脂する。次に、ショットブラスト加工、あるいはローレット加工を行うことにより、上記母材の表面を荒加工し、表面に凹凸を形成する。この後、アルミナイズ処理、溶射、あるいは箔置き等の方法により、上述のように凹凸を形成した母材の表面に、50~200μm程度の膜厚でアルミニウム層を仮形成する。図2は、凹凸状に形成した母材1の表面に、アルミニウム層2を仮形成した状態を示すものである。尚、アルミニウム層2の材料としては、シリコン等を含有したアルミニウム合金を用いることも可能である。」
(イ)「【0034】また、請求項4の発明に係る異種金属の接合方法は、互いに当接し合う鉄系材料からなる一対の部材のうち、一方の部材における当接面にアルミニウムを含有するアルミニウム層を配し、このアルミニウム層の表面側を押圧しながら、両者の接合部を加熱することにより、両者を接合するものである。」
(7)甲7
ア 甲7の記載事項
(ア)「まず突合わせ継手を示した第1図について説明する。一方の鋼母材(1)に、アルミニウムあるいはアルミニウム合金を溶射により付着させて溶剤皮膜(2)を形成し、そののち他方のアルミニウム母材(3)を対置し、両者間に溶接によってアルミニウム合金溶接ビード(4)を形成し、継手を形成する。
つぎに第2図は、鋼母材(1)に、溶融アルミニウムのメッキ皮膜(5)を形成し、そのメッキ皮膜(5)上に、前記溶射皮膜(2)を形成し、そののち溶接を行なうものである。
また第3図は、鋼母材(1)にニッケルアルミナイド(Ni+5%Al)を下地処理材(6)として施し、その下地処理材(6)上に、前記溶射皮膜(2)を形成し、そののち溶接を行なうものである」(第2ページ右上欄第2-15行)
(8)甲8
ア 甲8の記載事項
(ア)「純アルミニウムで被覆したステンレス鋼の接合面にアルミニウム又はアルミニウム合金の接合面を重ね合せて組合せ素材とし、該組合せ素材を200~500℃の温度で所定時間加熱してから、10~30%の圧下率で圧延圧接することを特徴とするアルミニウム又はアルミニウム合金とステンレス鋼とからなる複合材の製造方法である。さらに上記の製造方法で得られた複合材の接合強度を向上させるために該複合材を300~400℃で拡散焼鈍を施すアルミニウム又はアルミニウム合金とステンレス鋼からなる複合材の製造方法である。又、前記の各製造方法において、ステンレス鋼の接合面の純アルミニウムの被覆を溶射によって行われることを実施態様とするものである。」(第2ページ左下欄第2-15行)
(イ)「第1図は本発明の製造工程の1態様を示すもので、アルミニウム又はアルミニウム合金を芯材とし、その両面にステンレス鋼を接合させた3層複合材の製造工程を模式的に表わした。同図を参照してその製造工程について説明する。予め合せ材となる両ステンレス鋼1,1’を洗浄槽4aに浸漬して、接合面を脱脂、清浄化し、ついで、ブラッシング装置5aにて接合面をブラッシングして活性化する。芯材となるアルミニウム(又は合金)2を洗浄槽4bに浸漬して、その両面を脱脂、洗浄化し、ついで、ブラッシング装置5bにて、両面をブラッシングして活性化する。純アルミニウムで被覆されたステンレス鋼1,1’の接合面を、アルミニウム(又は合金)2の両面に組合せ、先端部をリベットで止めて組合せ素材3’とし、該組合せ素材3’を200~500℃の所定の温度に保持された加熱炉6内で加熱し、圧延機7にて10~30%の圧下率で圧延圧接する。
さらに、高い接合強度を必要とする場合には、圧延圧接された複合材3を雰凹気調整された焼鈍炉8内で300~400℃の所定温度に保持し、拡散焼鈍される。
なお、2層複合材を製造する場合には、勿論、いずれか一方のステンレス鋼1又は1’を省略して為される。」(第3ページ左上欄第19行-左下欄第3行)
(ウ)「厚さ0.5mmの2枚のステンレス鋼を脱脂、清浄化し、それらの片面にガスワイヤーガンで純アルミニウムを50μmの膜厚に溶射して被覆し、さらに被覆面をブラッシングにより活性化した。
一方、芯材となる厚さ1.5mmのアルミニウムの両面を脱脂、清浄化し、さらにブラッシングにょり活性化した。ついで芯材となるアルミニウムをはさんでその両面に純アルミニウムで被覆したステンレス鋼の接合面を重ね合せて、先端部をリベットで止めて、巾150mm×長さ400mmの3層組合せ素材を5組製作し、該組合せ素材を400℃に保持された炉内で20分加熱後、ロール径200φの2段圧延機にて圧延した。」(第3ページ左下欄第5-17行)
(9)甲9
ア 甲9の記載事項
(ア)「【0043】
前記熱交換器用チューブ(10)は、図2および図3に示すように、アルミニウムの中空押出材からなり、長さ方向に連続して延びる仕切壁(11)によって内部が複数本の冷媒流路(12)に区分けされている。この熱交換器用チューブ(10)は、扁平状チューブ(13)の上下壁(14)(14)表面にAl-Si系合金からなるろう材が溶射されてろう材層(15)が形成されたものからなり、チューブ(13)の両側壁(16)(16)に長さ方向に沿って溝(17)が形成されている。また、熱交換器用チューブ両端部の(18)で示される部分は、後述のヘッダー(20)内に差し込まれる差込部である。」
(イ)「【0046】
そして、熱交換器(1)は、前記チューブ(10)とフィン(2)とを交互に積層して組み付けるとともに、図5に示すように、熱交換器用チューブ(10)両端の差込部(18)をヘッダー(20)の差込孔(23)内に差し込んだ状態に仮組みして熱交換器コアを形成し、さらにサイドプレート(3)(3)等も一緒に仮組みし、これらを一括して炉内でろう付接合することにより製作される。前記加熱により、熱交換器用チューブと(10)とヘッダー(20)の接合部周辺において、両方のろう材層(15)(22)から溶融したろう材の一部は、ヘッダー(20)の差込孔(23)と熱交換器用チューブ(10)との間隙およびその近傍に流れ込んで接合に供され、また一部は熱交換器用チューブ(10)の溝(17)に誘導され、差込部(18)内に流れていく。このため、上下壁(14)(14)のフィン(2)との接合部分、特に図5において(S)で示されるヘッダー(20)の近傍部分(以下、「上下壁のヘッダー近傍部」と称する)で、ろう材が過剰となることが防がれる。」
3 当審の判断
本件発明と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「長手方向に延在する複数のアルミニウムセグメント351B」は、本件発明の「金属材料から作られた複数の軸方向延在部材」に相当する。
以下同様に、「円筒形熱交換面」は「略シリンダ状の内側熱交換面」に、「シリンダ状内スリーブ335B」は「略シリンダ状の管状体」に相当する。
また、甲1発明の「筒状クランプ355Bを用いて、取り付ける方法」は、本件発明の「ろう付けする方法」と、「取り付ける方法」である限りにおいて一致する。
してみると、本件発明と甲1発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
<一致点>
「金属材料から作られた複数の軸方向延在部材を、略シリンダ状の内側熱交換面を規定する、略シリンダ状の管状体に取り付ける方法」
<相違点>
「取り付ける方法」について、本件発明では、「ろう付けする方法」であって、「前記略シリンダ状の管状体の外面を粗くするステップと;前記略シリンダ状の管状体の粗くされた前記外面に溶射を適用し、溶射された前記外面に溶融した金属パウダー材料を噴霧するステップであって、前記金属パウダー材料の少なくとも一部分が、前記金属材料と同じ材料を含んでいる、ステップと;噴霧された前記外面に前記複数の軸方向延在部材を機械的に固定するステップであって、各軸方向延在部材が、アーチ形状を有する表面を備え、前記表面が、前記外面と接触し、各軸方向延在部材が、複数の冷媒通路を備えている、ステップと;前記外面及び前記複数の軸方向延在部材をろう付け温度環境に設置するステップであって、各軸方向延在部材における前記管状体の外面に対向する表面全体が、前記管状体の前記外面にろう付けされる、ステップと;前記外面及び前記複数の軸方向延在部材を冷却することを可能にするステップと;を含む」のに対して、甲1発明では、「筒状クランプ355Bを用いて、取り付ける方法」である点。
相違点について検討する。
甲2-甲9に記載された技術的事項は、いずれも「ろう付けする方法」であるが、「前記略シリンダ状の管状体の外面を粗くするステップと;前記略シリンダ状の管状体の粗くされた前記外面に溶射を適用し、溶射された前記外面に溶融した金属パウダー材料を噴霧するステップであって、前記金属パウダー材料の少なくとも一部分が、前記金属材料と同じ材料を含んでいる、ステップと;噴霧された前記外面に前記複数の軸方向延在部材を機械的に固定するステップであって、各軸方向延在部材が、アーチ形状を有する表面を備え、前記表面が、前記外面と接触し、各軸方向延在部材が、複数の冷媒通路を備えている、ステップと;前記外面及び前記複数の軸方向延在部材をろう付け温度環境に設置するステップであって、各軸方向延在部材における前記管状体の外面に対向する表面全体が、前記管状体の前記外面にろう付けされる、ステップと;前記外面及び前記複数の軸方向延在部材を冷却することを可能にするステップと;を含む」ものではない。
よって、甲1発明に対して、甲2-甲9に記載された技術的事項を適用しても、相違点に係る本件発明の構成を得ることはできない。
そして、本件発明は、軸方向延在部材を、シリンダ状の管状体の外面にろう付けすることで、動作中に高い熱伝導率を保証することができるという格別顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件発明は、甲1発明、甲2-甲9に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
第7 結び
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701254