特許拒絶査定不服審判
2018-014049
改良されたステレオリソグラフィ機械
- 審判番号
- 2018-014049
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-553362外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年10月23日
- 審決日
- 2019年12月02日
- 公報発行日
- 2020年06月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】コスタベバー,エットーレ,マウリツィオ
- 【請求人代理人】▲吉▼川 俊雄
- 分類
- P18 .121-Z (B29C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-553362「改良されたステレオリソグラフィ機械」拒絶査定不服審判事件〔平成27年9月3日国際公開、WO2015/128783、平成29年3月23日国内公表、特表2017-507814〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)2月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年2月28日、イタリア国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成28年10月20日 :手続補正書の提出
平成29年12月13日付:拒絶理由通知
平成30年 5月10日 :意見書・手続補正書の提出
平成30年 6月22日付:拒絶査定
平成30年10月23日 :審判請求書・手続補正書の提出
2 本願発明
本願の請求項1ないし16に係る発明は、平成30年10月23日に提出された手続補正書により補正(以下、「本件補正」という。)された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項より特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「基材(3)の外部表面(4)を画定する、液体またはペースト状態の前記基材を含有するコンテナ(2)と;
光ビーム(6)を放出するように構成される発光ユニット(5)と;
前記光ビーム(6)の方向を変え、前記光ビーム(6)が前記外部表面(4)に属する入射領域(8)の任意の点に入射するように制御することに適した光反射装置(7)と;
前記光ビーム(6)が前記入射領域(8)に属する動作領域(10)の任意の点に選択的に入射するように、前記光反射装置(7)を制御するように構成される論理制御ユニット(19)と;
前記光ビーム(6)が前記光反射装置(7)によって決定される様々な方向に沿って最小断面(15)を有する点によって画定される焦点面(12)上で、前記光ビーム(6)の焦点を合わせるように構成される、光ユニット(11)であって、前記発光ユニット(5)と前記光反射装置(7)との間に配置される、光ユニット(11)と;を備え、
前記光ユニット(11)は、前記焦点面(12)が球面である普通のレンズを用いた光学系により構成されること、ならびに、
前記発光ユニット(5)及び前記光ユニット(11)は、一方で、前記光ビーム(6)の、平面である動作領域(10)全体にわたる前記動作領域(10)との交点の最大直径と、他方で、球面である前記焦点面(12)との交点の前記最小断面(15)の直径(wF)と、の比が1.15を超えないように構成されることを特徴とする、ステレオリソグラフィ機械(1)。」
3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献1.特開平5-237943号公報
4 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1の記載
引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。下線については、当審において付与した。以下同じ。
ア 「【請求項1】光硬化樹脂(13)を選択的に露光して光硬化樹脂の硬化層(q)を形成し、該硬化層(q)を順次積層し一体化して3次元物体を造形する光造形装置において、光源(16)からの光(100)を反射する反射鏡(24)および該反射鏡(24)を回転させるスキャニングモータ(25)を有し、前記光(100)を第1の走査方向に走査する反射鏡ユニット(23)と、
該反射鏡ユニット(23)を支持するとともに前記反射鏡(24)の回転中心軸(C1)と直交する軸(C2)を中心に回転し、前記反射鏡(24)の反射光(100)を第1の走査方向と直交する第2の走査方向に走査する回転台(26)と、を備えたことを特徴とする光造形装置の反射光学系。」
イ 「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の光造形装置にあっては、2つの反射鏡により光を走査する構成であったため、走査エラーが複雑に発生し、これによる描画パターンの歪を補正するのに手間がかかるという問題があった。すなわち、第1又は第2反射鏡の回転によって、第1、第2反射鏡上の反射点から光硬化樹脂表面の露光点までの反射・投光経路の長さが変化するとともに、走査方向両端部においてレーザ光は描画すべき面に斜めに当る。これに対し、レーザ光を未硬化樹脂液の液面上に集光するレンズ(例えば、ダイナミックフォーカスレンズ)を調整して焦点距離を加減することで、デフォーカス(焦点ぼけ)を防止することができるが、Y方向両端側でY方向中央部よりX方向の最大露光幅が大きくなる所謂ピンクッションエラーの発生は避けられない。そして、第1反射鏡により反射した光を第2反射鏡上に振らすことで、第2反射鏡による反射の角度が変化し、これによって前記反射・投光経路が微妙に異なってくることで前記ピンクッションエラーが複雑化する。また、ガルバノミラーを用い、X、Y両走査方向について同時に高速走査制御を行なってワーク形状(輪郭)に沿った露光を行なうことで、前記ピンクッションエラーはより一層複雑なものになっていた。この結果、リアルタイムの演算処理でこのような走査エラーを補正することが困難であり、造形作業に先立って造形物の各断面形状データ等を作成する際に、上述の走査エラーに対する補正用のデータを準備する(記憶させておく)必要があり、その準備作業が面倒になっていた。
【0005】そこで、本発明は、光源からの光を単一の反射鏡によって主・副両走査方向に走査することにより、走査エラーを単純なものにし、リアルタイムの演算処理によって補正処理を実行できるようにすることを目的とする。」
ウ 「【0008】
【実施例】以下、本発明を図面に基づいて説明する。図1~図6は本発明に係る光造形装置の反射光学系の一実施例を示す図である。まず、構成を説明する。
【0009】図1、図2において、11は造形槽であり、造形槽11には所定の光硬化樹脂の未硬化樹脂液13が収容されている。この光硬化樹脂は、例えば赤外線領域の光(紫外線領域の光又は可視光等であってもよい)で硬化する性質のものである。12は造形槽11内に配置された平板状の造形棚であり、造形棚12は昇降駆動手段14によって昇降可能に支持されている。この昇降駆動手段14は、例えば図示しないサーボモータやボールネジ機構等を有し、造形棚12を未硬化樹脂液13の液面下に位置させ、必要に応じて所定量(後述する硬化層qの厚さに対応する量)ずつ下降させることができる。
【0010】造形槽11の上方にはレーザ光走査装置15が設けられており、レーザ光走査装置15はレーザ光源16から出射されたレーザ光を変調して後述する反射光学系20により偏向(造形槽11に向かって投光)しつつ未硬化樹脂液13の液面上に集光させ、そのレーザ光100を第1の走査方向(図2のX方向)およびこれと直交する第2の走査方向(図2のY方向)に走査するようになっている。レーザ光源16から出射されるレーザ光100は、光硬化樹脂13の性質に適合する光、例えば赤外線領域の光(紫外線領域の光、又は可視光等でもよい)である。また、レーザ光走査装置15の光走査による描画パターンは、造形物を複数の硬化層q(各層パターン形状が同一でも異なってもよい)の積層体である3次元物体としたとき、硬化層qのそれぞれの形状に対応するものであり、造形槽11内の未硬化樹脂液13の液面と造形棚12の間の未硬化樹脂液13がこの描画パターンに対応して選択的に露光され硬化することで、必要形状の硬化層qが形成される。そして、硬化層qは、最下層の形成時に像形棚12に接着され、それより上の硬化層qは造形棚12の下降と上述の露光動作によって下層の硬化層q上に順次積層される。
【0011】18は、昇降駆動手段14、レーザ光走査装置15およびレーザ光源16を制御する制御装置であり、制御装置18は図示しないCPU、メモリ(RAM、ROM等)および入出力インターフェイス回路等を含んでなる。この制御装置18には、公知の3次元CAD(computer aided design)システム19が接続されており、制御装置18は前記ROM内に予め格納された所定の制御プログラムに基づいて、3次元CADシステム19から送信されてきたデータに対応する制御信号を生成し、その信号により昇降駆動手段14、レーザ光走査装置15およびレーザ光源16を制御するようになっている。具体的には、3次元CADシステム19は、設計された3次元物体について微小間隔を隔てた複数の断面形状のデータを作成することができ、各断面形状データを前記硬化層qのそれぞれの描画パターンデータとし、その断面間隔を硬化層qの層厚データとして制御装置18に送信するようになっている。また、制御装置18は送信されてきた描画パターンデータおよび層厚データに応じて、レーザ光走査装置15をX方向、Y方向にそれぞれ走査駆動する走査駆動信号とレーザ光源16の駆動信号とを生成するとともに、層厚データに対応する昇降駆動手段14の駆動信号を生成し、これらの駆動信号を所定タイミングで昇降駆動手段14、レーザ光走査装置15およびレーザ光源16に出力するようになっている。
【0012】さらに、この制御装置18の前記ROM内には、所定の補正演算式が記憶されており、この補正演算式に基づいて走査エラーを補正する補正処理が実行されるようになっている(詳細は後述する)。図2~図5は、レーザー光走査装置15の具体的な構成を示す図である。これらの図に示すように、レーザー光走査装置15は、レーザー光源16から出射されたレーザ光100を変調する変調装置17と、反射光学系20とを具備している。反射光学系20は、固定反射鏡21、集光レンズ22(例えば、ダイナミックフォーカスレンズ)および回転反射鏡ユニット23を有しており、レーザー光源16から出射されて変調装置17により変調されたレーザ光100は、固定反射鏡21により所定方向に反射された後、集光レンズ22を通って所定焦点距離で集光するよう投光されつつ回転反射鏡ユニット23の回転反射鏡24に反射される。この回転反射鏡24は、スキャニングモータ25によってその回転中心軸C1回りに高速で回転され、レーザ光100を図中X方向に走査するものである。スキャニングモータ25は、例えばデジタルエンコーダ25aを一体化したものであり、その駆動原理は可動鉄片型の電流計と同一で駆動電流に比例した角度に回転反射鏡24を回転させるようになっている。
【0013】一方、回転反射鏡ユニット23は図示しないボルトによって精密回転台26の取付台部26aに固定されており、精密回転台26は支持体27に対して回転可能になっている。精密回転台26の下面側には、図5に示すように、所定角度範囲のウォームホイール部26bが形成されており、このウォームホイール部26bにはウォーム28が噛み合っている。ウォーム28はエンコーダモータ29に支持されており、モータ29は一体化されたエンコーダ29aの検出信号と制御装置18からの前記Y方向駆動信号とに基づいてウォーム28を回転させる。そして、ウォーム28が回転するとき、ウオームホイール部26bを介して精密回転台26が駆動される。すなわち、精密回転台26は、反射鏡ユニット23を支持するとともに回転反射鏡24の回転中心軸C1と直交する軸C2を中心に回転し、回転反射鏡24の反射光100をXと直交するY方向に走査するようになっている。」
エ 「
」
(2)引用発明
したがって、引用文献1には、実施例として具体的に記載されている光造形装置として、以下の発明が記載されている。(以下、「引用発明」という。)
「所定の光硬化樹脂の未硬化樹脂液13が収容されている造形槽11、造形槽11内に配置され昇降駆動手段14によって昇降可能に支持されている平板状の造形棚12と、
レーザー光源16から出射されて変調装置17により変調されたレーザ光100を、固定反射鏡21により所定方向に反射された後、集光レンズ22を通って所定焦点距離で集光するよう投光されつつ回転反射鏡ユニット23の回転反射鏡24に反射させる反射光学系20と、
昇降駆動手段14、レーザ光走査装置15およびレーザ光源16を制御するものであって、CPU、メモリ(RAM、ROM等)および入出力インターフェイス回路等を含んでなる制御装置18と、を備え、
制御装置18は送信されてきた描画パターンデータおよび層厚データに応じて、レーザ光走査装置15をX方向、Y方向にそれぞれ走査駆動する走査駆動信号とレーザ光源16の駆動信号とを生成するとともに、層厚データに対応する昇降駆動手段14の駆動信号を生成し、これらの駆動信号を所定タイミングで昇降駆動手段14、レーザ光走査装置15およびレーザ光源16に出力するものであり、
レーザ光走査装置15の光走査による描画パターンは、造形物を複数の硬化層q(各層パターン形状が同一でも異なってもよい)の積層体である3次元物体としたとき、硬化層qのそれぞれの形状に対応するものであり、造形槽11内の未硬化樹脂液13の液面と造形棚12の間の未硬化樹脂液13がこの描画パターンに対応して選択的に露光され硬化することで、必要形状の硬化層qが形成されるものである、
光造形装置。」
5 対比・判断
ア 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「造形槽11」には、昇降駆動手段14によって昇降可能に支持されている平板状の造形棚12が配置されていて、レーザ光走査装置15の光走査による描画パターンは、造形物を複数の硬化層q(各層パターン形状が同一でも異なってもよい)の積層体である3次元物体としたとき、硬化層qのそれぞれの形状に対応するものであり、造形槽11内の未硬化樹脂液13の液面と造形棚12の間の未硬化樹脂液13がこの描画パターンに対応して選択的に露光され硬化することで、必要形状の硬化層qが形成されるのであるから、引用発明の「所定の光硬化樹脂の未硬化樹脂液13が収容されている造形槽11」は、本願発明の「基材(3)の外部表面(4)を画定する、液体またはペースト状態の前記基材を含有するコンテナ(2)」に相当する。
引用発明の「レーザー光100」、「レーザー光源16」は、それぞれ、本願発明の「光ビーム(6)」、「発光ユニット(5)」に相当するから、引用発明も本願発明の「光ビームを放出するように構成される発光ユニット」に相当する部材を有しているといえる。
引用発明の「回転反射鏡ユニット23の回転反射鏡24」は、描画パターンに対応して選択的に露光され硬化することで、必要形状の硬化層qが形成するために、レーザー光を反射光学系20により偏向(造形槽11に向かって投光)しつつ未硬化樹脂液13の液面上に集光させているものであるから、本願発明の「前記光ビーム(6)の方向を変え、前記光ビーム(6)が前記外部表面(4)に属する入射領域(8)の任意の点に入射するように制御することに適した光反射装置(7)」に相当する。
引用発明の「昇降駆動手段14、レーザ光走査装置15およびレーザ光源16を制御するものであって、CPU、メモリ(RAM、ROM等)および入出力インターフェイス回路等を含んでなる制御装置18」は、レーザ光走査装置15を制御して、造形物を複数の硬化層qの積層体である3次元物体としたとき、硬化層qのそれぞれの形状に対応するものであり、造形槽11内の未硬化樹脂液13の液面と造形棚12の間の未硬化樹脂液13がこの描画パターンに対応して選択的に露光され硬化させるものであるから、本願発明の「光ビーム(6)が前記入射領域(8)に属する動作領域(10)の任意の点に選択的に入射するように、前記光反射装置(7)を制御するように構成される論理制御ユニット(19)」に相当する。
引用発明の「集光レンズ22」は、レーザ光100が、固定反射鏡21により所定方向に反射された後、集光レンズ22を通って所定焦点距離で集光するよう投光されるものであって、レーザー光を反射光学系20により偏向しつつ未硬化樹脂液13の液面上に集光させて、形槽11内の未硬化樹脂液13の液面と造形棚12の間の未硬化樹脂液13がこの描画パターンに対応して選択的に露光され硬化させるものであるから、本願発明の「光ビーム(6)が前記光反射装置(7)によって決定される様々な方向に沿って最小断面(15)を有する点によって画定される焦点面(12)上で、前記光ビーム(6)の焦点を合わせるように構成される、光ユニット(11)」に相当し、当該「集光レンズ22」は、引用発明においても、本願発明と同様に「前記発光ユニット(5)と光反射装置装置(7)との間に配置されている」といえる。そして、引用発明は、「光ユニット(11)は、レンズを用いた光学系により構成されている」といえることも明らかである。
また、引用発明の「光造形装置」は、本願発明と同様に、「前記発光ユニットと前記光ユニット」から構成されているといえる。
加えて、引用発明の「光造形装置」は、本願発明の「ステレオリソグラフィ機械(1)」に相当することも明らかである。
してみると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。
・一致点
「基材(3)の外部表面(4)を画定する、液体またはペースト状態の前記基材を含有するコンテナ(2)と;
光ビーム(6)を放出するように構成される発光ユニット(5)と;
前記光ビーム(6)の方向を変え、前記光ビーム(6)が前記外部表面(4)に属する入射領域(8)の任意の点に入射するように制御することに適した光反射装置(7)と;
前記光ビーム(6)が前記入射領域(8)に属する動作領域(10)の任意の点に選択的に入射するように、前記光反射装置(7)を制御するように構成される論理制御ユニット(19)と;
前記光ビーム(6)が前記光反射装置(7)によって決定される様々な方向に沿って最小断面(15)を有する点によって画定される焦点面(12)上で、前記光ビーム(6)の焦点を合わせるように構成される、光ユニット(11)であって、前記発光ユニット(5)と前記光反射装置(7)との間に配置される、光ユニット(11)と;を備え、
前記光ユニット(11)は、レンズを用いた光学系により構成され、
前記発光ユニット(5)と前記光ユニット(11)で構成された、
、ステレオリソグラフィ機械(1)。」
・相違点
「レンズを用いた光学系により構成され」る「光ユニット(11)」に関し、本願発明は、「前記焦点面(12)が球面である普通のレンズを用いた光学系により構成され」と特定するとともに、「前記発光ユニット(5)及び前記光ユニット(11)」に関して、「前記光ビーム(6)の、平面である動作領域(10)全体にわたる前記動作領域(10)との交点の最大直径と、他方で、球面である前記焦点面(12)との交点の前記最小断面(15)の直径(wF)と、の比が1.15を超えないように構成される」と特定するのに対し、引用発明は、この点を特定しない点。
イ 判断
(ア) 相違点に係る比について
本願明細書には、相違点に係る比について、以下の記載がある。
「【0045】
いかなる場合でも、専門用語では「スポット」と定義される、光ビーム6の入射領域8との交点の領域は、固体化される基材3の領域のサイズを決定し、したがって、三次元物体の精細度を決定する。」
「【0048】
ステレオリソグラフィ機械1にはまた、光ビーム6が光反射装置7によって定義される異なる方向に沿って最小断面を有する点によって定義される焦点面12上で光ビーム6に焦点を合わせるように構成される光ユニット11が設けられる。
【0049】
前記焦点面12が、光ユニット11の組合せ作用によって定義されることは明らかであり、それは光反射装置7からの光ビーム6の、及び光反射装置7自体の合焦距離を定義し、合焦方向を定義する。
【0050】
明らかに、光ビーム6の伝搬方向に沿った前記焦点面12の下流で、光ビーム6の断面の表面積は、最小断面の表面積に対して増加する。」
「【0065】
光ユニット11は光ビーム6の伝搬方向に従って光反射装置7の上流に配置されるため、後者は常に、動作領域10上のビームの入射点からは独立して、光ユニット11の同一点に入射する。
【0066】
それゆえに、連続して配置される、いかなる場合でもfθレンズより非常に経済的な、たとえば球面、両凸、または平凸タイプの一般的なレンズまたはレンズセット17に基づく光ユニット11を使用することが可能である。
【0067】
fθレンズと同様に、前記光ユニット11も固定式であり、それゆえに、機械の簡単な構築構造に有利なことに、焦点を調節するために、光ユニット11を移動させるための任意の装置を必要としない。
【0068】
他方で、光ユニット11の前記固定構成では、光ビーム6が動作領域10上で焦点を合わせることが可能ではない。
【0069】
実際、光ユニット11は、光反射装置7自体によって決定される光ビーム6の入射方向とは独立して、光反射装置7から一定の距離で光ビーム6の焦点を合わせる。それゆえに、焦点面12は、動作領域10の中心を通過する断面によって機械1の断面図を概略的に示す図2で見ることができるように、光反射装置7のレベルに中心がある、平面ではなく球面の形状を有する。」
「【0071】
明らかに、前記球面焦点面12は、平面である動作領域10と一致することができない。それゆえに、本発明の機械1において、スポットの表面積は、動作領域10上の入射点に応じて変化し、固体化する基材3の部分の表面積は、ある点から別の点まで変化する。
【0072】
特に、光ビーム6の方向に沿って測定される焦点面12と動作領域10との間の距離が増加すると、式(2)に従って、スポットのサイズは増加する。
【0073】
一般に、上記の状況では、三次元物体の十分に均一な、定義された固体化が得られない。
【0074】
しかし、本発明を出願する出願人は、光ビーム6、焦点面12、及び動作領域10を適切に構成することによって、少なくとも厳密に専門的または工業用の部門でない場合に、前記欠点を許容可能なレベルに制限することが可能であることを知見した。
【0075】
それゆえに、本発明は、発光ユニット5及び光ユニット11の好適な選択による、光ビーム6、焦点面12、及び動作領域10の定義も含み、スポットの最大直径と最小断面15の直径wFとの比は1.15を超えない。
【0076】
このように、すべての動作領域10におけるスポットの直径の最大変形は、15%に制限される。」
「【0077】
本発明を出願する出願人は、スポットサイズの前記変形は実際的には、動作領域10上の基材3の固体化における任意のばらつきを無視できるものとし、したがって、性能が厳密に専門的または工業用でない部門での使用に適合する機械1を得ることを可能にすることを確認した。
【0078】
上記によると、本発明が、コスト及び性能の両方に関して、厳密に専門的または工業用でない部門の使用に特に適したステレオリソグラフィ機械1を提供する目的を実現することが理解できる。
【0079】
好ましくは、直径間の前記比率は、機械1の性能に関してさらに有利なことに、1.10~1.15に含まれる。本発明を出願している出願人は、前記間隔内の比率の変化は、fθ光学ユニットよりかなりコストの小さい光ユニット11によって得ることができることを確認した。
【0080】
光反射装置7の上流の光ユニット11の配置により、既知のタイプの機械と比較して動作領域10のサイズの選択においてより大きな柔軟性を得る目的を実現することも可能となる。」
「【0117】
それゆえに、精細度のわずかな減少を受け入れることで、機械のコストを増加させる必要なく、動作領域10の表面積を二倍にすることが可能となっており、むしろ、既知のタイプの機械と比較してコストを減少させる。
【0118】
本発明の機械の減少したコストは、後者が、既知のタイプの機械が意図されるそれらの厳密に専門的なまたは工業用の部門、正確には、満たすべき主な要件が機械のコストである部門より広い範囲の部門での使用に適するようにし、一方、精細度は2番目の問題と考えられることが理解できる。
【0119】
他方で、既知のタイプの機械で、表面積が上述の180mmの直径を有するものと比較できる動作領域を得るために、約160×160mmの正方形の動作領域に対応する、約250mmの焦点距離を有するfθレンズを使用することが必要である。」
(イ) 本願明細書の記載に基づく相違点に係る比の技術的意義及び臨界的意義について
上記(ア)の記載から、相違点に係る「前記光ビーム(6)の、平面である動作領域(10)全体にわたる前記動作領域(10)との交点の最大直径と、他方で、球面である前記焦点面(12)との交点の前記最小断面(15)の直径(wF)と、の比が1.15を超えないように構成される」ことに関する「1.15を超えない」との数値の技術的な意味とは、「少なくとも厳密に専門的または工業用の部門でない場合に、前記欠点を許容可能なレベルに制限することが可能である」、いいかえれば、「コスト及び性能の両方に関して、厳密に専門的または工業用でない部門の使用に特に適したステレオリソグラフィ機械1を提供できる」範囲といえ、コストと性能のバランスから決まっている数値であるといえる。
しかし、上記(ア)の記載からは、「比が1.15を超えない」という数値の臨界的な意義については何も読み取ることはできない。
そして、コストと性能のバランスは、本願発明の「ステレオリソグラフィ機械(1)」を具体的に使用するユーザーそれぞれによってその評価は異なるものとなるから、本願発明においては、上記「1.15」という数値に臨界的な意味は認められない。
(ウ) 相違点の検討
上記相違点について検討する。
集光レンズとして、焦点面が球面である普通のレンズは、例示するまでもなく周知(以下、「周知技術」という。)であるから、引用発明において、当該周知技術を採用する動機付けはある。しかも、引用文献1の集光レンズは、「このレーザ光100が・・・固定反射鏡21により所定方向に反射され、更に集光レンズ22を通って所定焦点距離で集光するよう投光されつつ回転反射鏡24により造形槽11の方向に偏向され、未硬化樹脂液13の液面上に集光」(段落【0017】)すればよいのであるから、当該周知技術でもこのことは可能であって、採用することに阻害要因はない。
ここで、引用発明の光ビームにおいても、集光レンズを介して照射されている以上、焦点面との交点の最小断面の直径は当然に存在し、平面である動作領域全体に亘る前記動作領域との交点の最大直径についても、当然に存在するものである。
そして、できるだけ精度の高い成形物を得るために、その比をできるだけ1に近い値としようとすることは、当業者にとって当然のことであり、その際必要とされる精度等に応じて、上限値を設定することは、当業者が適宜なし得たことである。
また、上記(イ)の検討のとおり、上限値を「1.15」としたことによる格別の効果、臨界的な意義を見出すことはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
6 請求人の主張について
(1) 請求人の主張
請求人は、審判請求書の「(3)本願発明が特許されるべき理由」において、概略、次のように主張する。
<主張1>
引用文献1は、本願と同様の目的を有するステレオリソグラフィ機械の発明ですが、引用文献1の光ユニットにより形成される焦点面は、段落【0012】等に記載されるように、また【図2】等に示されるように、ダイナミックレンズなどの光学系を用いた焦点面が平面に形成される方式のリソグラフィ機械であり、この点で焦点面が球面に形成される光学系を用いた本願発明と異なります。
従って、引用文献1の発明は、明細書の実施例に記載されている内容や、【図3】や【図6】(ピンクッションエラーの図)から判断して、本願の方式とは異なる、ダイナミックレンズ等の焦点面が平面になる光学系を備える方式に限定されたリソグラフィ機械の発明である、と判断せざるを得ません。
<主張2>
仮に、引用文献1の発明に、焦点面が平面でない本願と同様の球面状の焦点面の光学系も含まれるとした場合、球面状の焦点面と動作領域平面との位置関係をどのように設定すべきか、及び上記2つの面の対応する位置の隔たりをどのような範囲に限定すべきかについて、本願のような限定事項が何も記載されておらず、従ってこのような状況では焦点面から一定限度を超えて隔たる動作領域平面においては、焦点ぼけが増大するために所定位置における基材の硬化が適切に行われないためリソグラフィ機械としての機能が果たせず、従って実用に供することができないものと思料します。
従って、引用文献1の発明は、明細書の実施例に記載されている内容や、【図3】や【図6】(ピンクッションエラーの図)から判断して、本願の方式とは異なる、ダイナミックフォーカスレンズ等の焦点面が平面になる光学系を備える方式に限定されたリソグラフィ機械の発明である、と判断せざるを得ません。
(2) 請求人の主張の検討
上記主張1、2について順次検討する。
主張1について
引用文献1の段落【0012】における記載は「集光レンズ22(例えば、ダイナミックフォーカスレンズ)」であって、ダイナミックフォーカスレンズはあくまで例示にすぎず、引用文献1の集光レンズに関する他の記載である「レーザー光源16から出射されて変調装置17により変調されたレーザ光100は、固定反射鏡21により所定方向に反射された後、集光レンズ22を通って所定焦点距離で集光するよう投光されつつ回転反射鏡ユニット23の回転反射鏡24に反射される。」(段落【0012】)や「このレーザ光100が、変調装置17により変調された後、固定反射鏡21により所定方向に反射され、更に集光レンズ22を通って所定焦点距離で集光するよう投光されつつ回転反射鏡24により造形槽11の方向に偏向され、未硬化樹脂液13の液面上に集光する。」(段落【0016】)をみても、引用発明の「集光レンズ」はダイナミックフォーカスレンズに限定されず、焦点面が球面に形成される光学系を用いたものが含まれる。そうすると、引用発明の光造形装置は、焦点面が球面に形成される光学系を用いている点で本願発明と異なるとはいえない。
したがって、請求人の主張1は失当であって、採用できない。
なお、本願の請求項2において「光ユニット(11)が固定されていること」を限定していることからも明らかなように、本願発明は、光ユニットが移動可能なものを包含している。
主張2について
引用発明は、上記で検討したとおり、ダイナミックレンズ等の焦点面が平面になる光学系を備える方式に限定されたリソグラフィ機械ではなく、本願発明と同じ集光レンズを利用するリソグラフィ装置であって、成形品の大きさや精度について限定するものではないから、例えレンズの球面状の焦点面と動作領域平面とが隔たっていたとしても、直ちに実用に供することができないというものではない。
なお、球面状の焦点面と動作領域平面との関係では、レンズの口径とレンズの焦点距離(レンズと動作領域面との間の距離)及び成形品の大きさにより、その関係は大きく変化するものであって、大口径で焦点距離が長い普通のレンズを利用した、レンズと動作領域面との間の距離が長い光造形装置で微小な成形品を製造する場合には、球面状の焦点面と動作領域平面との距離は微小となり、高精度のものを製造できることは明らかである。
してみれば、請求人の主張2も失当であって、採用できない。
7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、すなわち、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-014049