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特許拒絶査定不服審判

2018-012839

親水性-疎油性コポリマー組成物及びこれらの使用

審判番号
2018-012839
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2016-529442外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年09月27日
審決日
2019年06月25日
公報発行日
2019年08月30日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (C08F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2016-529442「親水性-疎油性コポリマー組成物及びこれらの使用」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月21日国際公開、WO2015/073141、平成29年 1月19日国内公表、特表2017-502101、請求項の数(22)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、2014年(平成26年)10月9日(パリ条約による優先権主張 2013年11月15日、米国(US))を国際出願日とする特許出願であって、平成29年8月25日付けで拒絶理由が通知され、平成30年3月5日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、平成30年5月18日付けで拒絶査定(原査定)がされ、平成30年9月27日に拒絶査定不服審判が請求され、平成30年11月7日に手続補正書(方式)が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成30年5月18日付け拒絶査定)の概要は以下のとおりである。 本願請求項1-12に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するもの(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 本願請求項13-22に係る発明は、以下の引用文献1及び6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2000-226550号公報 6.特開2010-58109号公報 第3 本願発明 本願請求項1-22に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明22」という。)は、平成30年3月5日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-22に記載された事項により特定される発明である。 「【請求項1】 1~10モル%の式Iの構造単位と90~99モル%の式IIの構造単位とを含むコポリマー。 【化1】 【化2】 式中、 R1は線状C5~C8フルオロアルキル基であり、 R2、R3、R4及びR5はメチル基であり、 R6はC1アルキレン基であり、 R7は直鎖C3アルキレン基であり、 Xは-O-であり、 Yは、亜硫酸基であり、 mは整数2であり、nは整数1である。 【請求項2】 R1がC5~C8ペルフルオロアルキル基である、請求項1記載のコポリマー。 【請求項3】 R1が-C6F13である、請求項2記載のコポリマー。 【請求項4】 1~10モル%の式IIIのフルオロアルキルモノマーと90~99モル%の式IVの双性イオンモノマーとを含むエチレン性不飽和モノマーの混合物に由来する構造単位を含むコポリマー。 【化3】 【化4】 式中、R1は線状C5~C8フルオロアルキル基であり、 R2、R3、R4及びR5はメチル基であり、 R6はC1アルキレン基であり、 R7は直鎖C3アルキレン基であり、 Xは-O-であり、 Yは、亜硫酸基であり、 mは整数2であり、nは整数1である。 【請求項5】 R1がC5~C8ペルフルオロアルキル基である、請求項4記載のコポリマー。 【請求項6】 フルオロアルキルモノマーが式Vの構造を有する、請求項4記載のコポリマー。 【化5】 【請求項7】 双性イオンモノマーが式VIの構造を有する、請求項6記載のコポリマー。 【化6】 【請求項8】 1~10モル%の式VIIの構造単位と90~99モル%の式VIIIの構造単位を含むコポリマーを含む組成物。 【化7】 【化8】 式中、R1は直鎖C5~C8フルオロアルキル基である。 【請求項9】 R1が-C6F13である、請求項8記載の組成物。 【請求項10】 コポリマーが式IXの構造単位を含む、請求項9記載の組成物。 【化9】 【請求項11】 可溶化剤をさらに含む、請求項8記載の組成物。 【請求項12】 多孔質基材及び場合により多孔質基材に結合したコーティングを含み、多孔質基材又はコーティングの少なくとも1つが、1~10モル%の式VIIの構造単位と90~99モル%の式VIIIの構造単位を含むコポリマーを含むメンブレン。 【化10】 【化11】 式中、R1は直鎖C5~C8フルオロアルキル基である。 【請求項13】 多孔質基材が、0.01ミクロン~50ミクロンの細孔径を有する、請求項12記載のメンブレン。 【請求項14】 多孔質基材が、ポリテトラフルオロエチレン、延伸ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、セルロース系材料又はこれらの組合せからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項13記載のメンブレン。 【請求項15】 多孔質基材が延伸ポリテトラフルオロエチレンである、請求項14記載のメンブレン。 【請求項16】 コポリマーのR1が-C6F13である、請求項12記載のメンブレン。 【請求項17】 メンブレンが、水に対して20°以下の接触角を有し、炭化水素に対して少なくとも60°の接触角を有する、請求項16記載のメンブレン。 【請求項18】 水及び油を含む汚染水を供給するステップ、 請求項12記載のメンブレンを用意するステップ、及び 汚染水を請求項12記載のメンブレンに通して、処理水を生成するステップ、 を含む、汚染水の処理方法。 【請求項19】 汚染水が生産水である、請求項18記載の方法。 【請求項20】 汚染水が1~1000ppmの全有機成分を含む、請求項18記載の方法。 【請求項21】 汚染水が、1~500ppmの遊離の非溶解油、5000~200000ppmの全溶解固形物及び1~2000ppmの全懸濁固形物を含む、請求項20記載の方法。 【請求項22】 処理水中の懸濁固形物の濃度が、汚染水の懸濁固形物の濃度より低い、請求項21記載の方法。」 第4 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。 (下線は当審が付与した。) ア 「【0039】 この明細書を通じて、(アルク)アクリレート、(アルク)アクリル酸および(アルク)アルキルアミドは、それぞれ、アクリレートまたはアルクアクリレート、アクリル酸またはアルクアクリル酸およびアクリルアミドおよびアルクアクリルアミドを意味することを理解すべきである。好ましくは特記しない限り、アルクアクリレート、アルクアクリル酸およびアルクアクリルアミド基はそのアルキル基の中に1~4の炭素原子を含有し、そして最も好ましくはメタクリレート、メタクリル酸またはメタクリルアミド基である。同様に、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリルアミドは、それぞれ、アクリレートまたはメタクリレート、アクリル酸またはメタクリル酸およびアクリルアミドおよびメタクリルアミドを意味することを理解すべきである。 永久的正電荷の中心をもつモノマー 永久的正電荷の中心をもつモノマー(またはコモノマー)はカチオン性であるか、あるいはより好ましくは両性イオン性である。後者の場合において、モノマーはその構造内に永久的正電荷の中心をもつ基ばかりでなく、かつまた負電荷の中心を含む。典型的には、永久的正電荷の中心をもつ基は第4窒素原子により提供される。 【0040】 永久的正電荷の中心をもつ基をもつ好ましいコモノマーは、一般式Iの化合物を有する: Y-B-X         (I) 式中、Bは必要に応じて過フッ化鎖までかつそれを含む1または2以上のフッ素原子を含有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキレン、オキサアルキレンまたはオリゴ-オキサアルキレン鎖であるか、あるいはXがBと永久的正電荷の中心の間に炭素-炭素鎖を含有するか、あるいはYがBに結合した末端炭素原子を含有する場合、原子価結合であり、Xは永久的正電荷の中心をもつ基、好ましい両性イオンの基であり、そしてYは 【0041】 【化12】 から選択されるエチレン系不飽和の重合可能な基であり、式中、Rは水素またはC1-C4アルキル基であり、Aは-O-または-NR1-であり、ここでR1は水素またはC1-C4アルキルであるか、あるいはR1は-B-Xであり、ここでBおよびXは上に定義した通りであり、そしてKは基-(CH2)pOC(O)-、-(CH2)pC(O)O-、-(CH2)pOC(O)O-、-(CH2)pNR2-、-(CH2)pNR2C(O)-、-(CH2)pC(O)NR2-、-(CH2)pNR2C(O)O-、-(CH2)pOC(O)NR2-、-(CH2)pNR2C(O)NR2-(ここで基R2は同一であるか、あるいは異なる)、-(CH2)pO-、-(CH2)pSO3-、または、必要に応じてBと組み合わせて、原子価結合であり、そしてpは1~12であり、そしてR2は水素またはC1-C4アルキル基である。 【0042】 Bが原子価結合であることができるかどうかは、Xの中の永久的正電荷の中心がYの中の異種原子、例えば、酸素または窒素原子に直接結合しないことを保証する。 【0043】 したがって、永久的正電荷の中心をもつ基を含有する好ましいモノマーは、一般式(II)または(III)を有する: 【0044】 【化13】 式中R、A、B、KおよびXは式(I)に関して定義した通りである。 【0045】 好ましくは式(II)の化合物において、(II)がアクリル酸、メタクリル酸またはエタクリル酸の誘導体であるように、Rは水素、メチルまたはエチル、より好ましくはメチルである。 【0046】 式(III)の化合物において、Kは原子価結合でありかつBは基であることができ、Kは基でありかつBは原子価結合であることができ、KおよびBの両者は基であることができるか、あるいはKおよびBは一緒になって原子価結合であることができる。 【0047】 Kが基である場合、好ましくはpは1~6であり、より好ましくは1、2または3であり、そして最も好ましくはpは1である。Kが-(CH2)pNR2-、-(CH2)pNR2C(O)-、-(CH2)pC(O)NR2-、-(CH2)pNR2C(O)O-、-(CH2)pOC(O)NR2-または-(CH2)pNR2C(O)NR2-であるとき、R2は好ましくは水素、メチルまたはエチル、より好ましくは水素である。 【0048】 式(III)の化合物において、好ましくはビニル基は基-K-B-Xに対してパラ位置に存在する。 【0049】 好ましくはBは、次の通りである:式-(CR32)a-のアルキレン基、式中基-(CR32)-は同一であるか、あるいは異なり、そして各基-(CR32)-において、基R3は同一であるか、あるいは異なり、そして各基R3は水素、フッ素またはC1-C4アルキルまたはフルオロアルキル、好ましくは水素であり、そしてaは1~12、好ましくは1~6である;オキサアルキレン基、例えば、各アルキル部分の中に1~6個の炭素原子を有するアルコキシアルキル、より好ましくは-CH2O(CH2)4-;または式[(CR42)bO]c(CR42)b-のオリゴ-オキサアルキレン基、式中基-(CR42)b-同一であるか、あるいは異なり、そして各基-(CR42)b-において、R4は同一であるか、あるいは異なり、そして各基R4は水素、フッ素またはC1-C4アルキルまたはフルオロアルキル、好ましくは水素であり、そしてbは1~6、好ましくは2または3であり、そしてcは2~11、好ましくは2~5である;あるいは XがBと永久的正電荷の中心との間に炭素-炭素鎖を含有するか、あるいはYが末端炭素原子を含有する場合、原子価結合である。 【0050】 好ましい基Bは、12までの炭素原子を有し、必要に応じて1または2以上フッ素原子を含有するアルキレン、オキサアルキレンおよびオリゴ-オキサアルキレンを包含する。ポリマーを疎水性表面のコーティングに意図しない場合、したがって物理吸着による表面への結合に意図しない場合、好ましくはBはフッ素原子を含有しないアルキレン、オキサアルキレンおよびオリゴ-オキサアルキレンである。 【0051】 式(III)の化合物において、KおよびBは合計12までの炭素原子を有することが好ましい。 【0052】 永久的正電荷の中心を含有する好ましいXは、後述する式(IVA)、(IVB)、(IVC)、(IVD)、(IVE)および(IVF)の基である:このような基を含有するモノマーは、表面に結合することができる基を含有するそれ以上のモノマーと組み合わせて使用して、本発明のコポリマーを製造することができる。式(IVB)~(IVF)の基のうちで、ことに(IVC)はとくに好ましい。」 イ 「【0058】 式(IVB)の基は、次の通りである: 【0059】 【化14】 式中基R6は同一であるか、あるいは異なり、そして各々は水素またはC1-C4アルキルであり、そしてdは2~4である。 【0060】 好ましくは、基R6は同一である。また、基R6の少なくとも1つはメチルであり、より好ましくは基R6の両者はメチルであることが好ましい。 【0061】 好ましくはdは2または3であり、より好ましくは3である。 【0062】 Xが式(IVB)の基であるとき、好ましくはBは式-(CR32)-または-(CR32)2-、例えば、-(CH2)-または-(CH2CH2)-である。 【0063】 式(IVC)の基は、次の通りである: 【0064】 【化15】 式中基R7は同一であるか、あるいは異なり、そして各々は水素またはC1-C4アルキルであり、そしてeは1~4である。 【0065】 好ましくは、基R7は同一である。また、基R7の少なくとも1つはメチルであり、より好ましくは基R7のすべてはメチルであることが好ましい。 【0066】 好ましくはeは2または3であり、より好ましくは2である。 【0067】 Xが式(IVC)の基であるとき、好ましくはBは式-(CR32)-または-(CRR32)2-、例えば、-(CH2)-または-(CH2CH2)-である。」 ウ 「【0136】 ポリマーをある表面に安定に結合することができるコモノマー 本発明のポリマーにおいて、永久的正電荷の中心をもつ基およびポリマーをある表面に安定に結合することができる基が同一モノマーの残基の中に存在しない場合、ポリマーはポリマーをある表面に安定に結合することができる基を含有するコモノマーの残基ならびに永久的正電荷の中心をもつ基を含有するコモノマーの残基からなる。必要に応じて、永久的正電荷の中心をもつ基を含有するモノマーが、また、ポリマーをある表面に安定に結合することができる基を含有する場合、ある表面に安定に結合することができるそれ以上の基は、ポリマーをある表面に結合することができる基を含有する追加のコモノマーの残基により提供する ことができる。 【0137】 既に述べたように、ある表面に結合することができる基の性質、したがってこのような基を含有するコモノマーの性質は、ポリマーでコーティングすべき表面の性質に依存するであろう。このようなコモノマーの種々のタイプをここで説明する。 【0138】 理解されるように、ある場合において、ある表面に結合することができる基を含有する異なるコモノマーの組み合わせを使用することが望ましいことがある。好ましくは、後述するタイプa)、b)および/またはc)のコモノマーまたはこのようなコモノマーの組み合わせを使用し、より好ましくはタイプa)、b) およびc)のコモノマーの1つのみを使用する。 【0139】 a)アルキル、フルオロアルキルまたはシロキサン基を含有するコモノマー アルキル、フルオロアルキルまたはシロキサン基を含有するコモノマーは、疎水性表面への結合の形成に適当であり、6またはそれ以上の炭素原子のアルキル基(必要に応じて1または2以上のエーテル酸素原子を含有しかつ必要に応じて1または2以上の炭素-炭素の二重結合または三重結合を含有する)またはフルオロアルキル(好ましくは6またはそれ以上の炭素原子を含有し、必要に応じて1または2以上のエーテル酸素原子を含有しかつ必要に応じて1または2以上の炭素-炭素の二重結合または三重結合を含有する)またはシロキサン基(50までのケイ素原子を含有し、好ましくは線状である)を含有するコモノマーである。 【0140】 好ましくはアルキルまたはフルオロアルキル基は24まで、例えば、18までの炭素原子を含有し、あるいはシロキサン基は50までのケイ素原子を含有し、好ましくは線状である。アルキル、フルオロアルキルまたはシロキサン基を含有するコモノマーは、一般式(VI)のコモノマーである: Y1-Q         (VI) 式中、Y1は 【0141】 【化23】 から選択されるエチレン系不飽和の重合可能な基であり、ここで R14は水素またはC1-C4アルキル基であり、A’は-O-または-NR15-であり、ここでR15は水素またはC1-C4アルキルであるか、あるいはR15は基Qであり、K1は基-(CH2)lOC(O)-、-(CH2)lC(O)O-、-(CH2)lOC(O)O-、-(CH2)lNR16-、-(CH2)lNR16C(O)-、-(CH2)lC(O)NR16-、-(CH2)lNR16C(O)O-、-(CH2)lOC(O)NR16-、-(CH2)lNR16C(O)NR16-(ここで基R16は同一であるか、あるいは異なる)、-(CH2)lO-、-(CH2)lSO3-、または原子価結合であり、そしてlは1~12であり、そしてR16は水素またはC1-C4アルキル基であり、そして Qは(a)6またはそれ以上、好ましくは6~24の炭素原子を含有し、置換されていないか、あるいは1または2以上のフッ素原子により置換されておりそして必要に応じて1または2以上の炭素-炭素の二重結合または三重結合を含有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル、アルコキシアルキルまたは(オリゴ-アルコキシ)アルキル鎖、または (b)シロキサン基-(CR16a2)qq(SiR16b2)(OSiR16b2)ppR16b、ここで各基R16aは同一であるか、あるいは異なり、そして水素または1~4個の炭素原子を有するアルキルであり、各基R16bは1~4個の炭素原子を有するアルキルであり、qqは1~6であり、そしてppは0~49である、である。」 エ 「【0226】 異なるコモノマーを使用して永久的正電荷の中心および物理吸着を提供する場合、好ましくは永久的正電荷の中心を有するコモノマー残基/物理吸着によりポリマーをある表面に安定に結合させることができるアルキル、フルオロアルキルまたはシロキサン基を含有するコモノマーの残基のコポリマー中のモル比は5:95~80:20、より好ましくは10:90~50:50である。さらに、コポリマーは好ましくは5~50モル%、より好ましくは10~25モル%の希釈剤のモノマーの残基および/または0.1~20モル%、より好ましくは1~10モル%の架橋可能なコモノマーの残基からなり、ただし希釈剤のコモノマーおよび架橋可能なコモノマーの両者が存在する場合、それらは組み合わせで50モル%、好ましくは35モル%を越えない。」 オ 「【0277】 例5(参考例) ポリ(2(メタクリロイルオキシエチル)-2’(トリメチルアンモニウム)エチルホスヘート内部塩-コ-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート(2:1)の製造 2(メタクリロイルオキシエチル)--2’(トリメチルアンモニウム)エチルホスヘート内部塩(1.0g、0.0034mol)および1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート(0.90g、0.0017mol)を、メタノール(10ml)およびテトラヒドロフラン(10ml)中に溶解した。この溶液を23℃において窒素の流れ(50ml/分)下に30分間撹拌(250rpm)した。2,2’-アゾ-ビス(2-メチルプロピオニトリル)(0.0167g、0.10mmol)を添加し、そしてそして窒素の流れを10ml/分に減少し、反応温度を60℃に上げた。この温度および窒素の流速を16時間の間維持した。 【0278】 この混合物を放冷し、そして真空濾過した。濾液を集め、そして回転蒸発器を使用して濾液を蒸発乾固し、そしてジクロロメタン(10ml)およびメタノール(10ml)中に溶解した。ポリマーをアセトン(500ml)、真空濾過および乾燥によりこの混合物から単離した。ポリマーをジクロロメタン(10ml)およびメタノール(10ml)の中に再溶解し、そして前のように単離した。生ずるポリマーは、70~80%の収率で得られ、白色粉末であった。NMR(200MHz,d,ppm,CD3OD/CDCl3)4.2-4.4(b)、3.8-4.2(b)、3.6-3.8(b)、3.3(s)、2.4-2.7(b)、2.2-1.7(b)、1.2-1.0(b)、0.8-1.0(b)。 【0279】 このポリマーを使用してポリフッ化ビニリデンの精密濾過膜をコーティングした。生ずるコーティングされた膜は、ウシ血清アルブミン(BSA)で処理する間、非常にわずかのタンパク質の付着を示す非常にわずかの流速の傾斜を示した。処理した膜についての流速の変化は、未処理膜についての5000から500l/m2/時の流速の変化と比較して、6000から5000l/m2/時であった。両者の測定は2時間の期間であった。」 したがって、上記引用文献1には、例5で製造したコポリマーに基づいて、次の発明が記載されているものと認める。 「2(メタクリロイルオキシエチル)-2’(トリメチルアンモニウム)エチルホスヘート内部塩(1.0g、0.0034mol)と1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート(0.90g、0.0017mol)を共重合した、ポリ(2(メタクリロイルオキシエチル)-2’(トリメチルアンモニウム)エチルホスヘート内部塩-コ-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレートであって、それぞれのモノマーのモル比が2:1である、コポリマー。」(以下「引用発明1a」という。) 「2(メタクリロイルオキシエチル)-2’(トリメチルアンモニウム)エチルホスヘート内部塩(1.0g、0.0034mol)と1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート(0.90g、0.0017mol)を共重合した、ポリ(2(メタクリロイルオキシエチル)-2’(トリメチルアンモニウム)エチルホスヘート内部塩-コ-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレートであって、それぞれのモノマーのモル比が2:1である、コポリマーを使用してコーティングしたポリフッ化ビニリデンの精密濾過膜。」(以下「引用発明1b」という。) 2.引用文献6について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献6には、次の事項が記載されている。 カ 「【請求項1】 多孔質膜と該多孔質膜の表面を覆う親水性の微粒子を有する有機または無機の材料からなる浄水用のろ過膜であって、前記親水性微粒子が、多孔質膜の孔径の平均サイズの1.1~10倍の直径を有する親水性の粒子である親水性を付与した低汚染性浄水用ろ過膜。」 キ 「【請求項4】 多孔質膜の基材が、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポロプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリルニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、またはポリビニルアルコールの有機系高分子材料、あるいはアルミナまたは安定化ジルコニアの無機系セラミックス材料のいずれかであることを特徴とする、請求項1乃至3に記載の低汚染性浄水用ろ過膜。」 ク 「【0023】 高分子よりなる浄水用ろ過膜(多孔質膜)の孔径は0.01μm~10μmであるが、上記親水性の粒子が孔径の1.1~10倍になるような粒子系になるように調整し、付着させることにより、浄水用ろ過膜の空孔を塞ぐことなく親水性の粒子を付着させることができる。」 したがって、上記引用文献6には、次の発明が記載されているものと認める。 「多孔質膜と該多孔質膜の表面を覆う親水性の微粒子を有する有機または無機の材料からなる浄水用のろ過膜であって、多孔質膜の基材が酢酸セルロース、ポリエチレン、ポロプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリルニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、またはポリビニルアルコールの有機系高分子材料、あるいはアルミナまたは安定化ジルコニアの無機系セラミックス材料のいずれかであり、前記親水性微粒子が、多孔質膜の孔径の平均サイズの1.1~10倍の直径を有する親水性の粒子である親水性を付与した低汚染性浄水用ろ過膜。」(以下「引用発明6」という。) 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明1aを対比すると、次のことがいえる。 引用発明1aにおける「ポリ(2(メタクリロイルオキシエチル)-2’(トリメチルアンモニウム)エチルホスヘート内部塩-コ-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート」の「1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート」は、ポリマーの共重合単位であるから、本願発明1における「式Iの構造単位」の「R1がC8フルオロアルキルである構造単位」に相当する。 したがって、本願発明1と引用発明1aとの間には、次の一致点、相違点があるといえる。 <一致点> 「式Iの構造単位とその他の構造単位とを含むコポリマー。」(注:式は省略。以下同様。) <相違点1> 本願発明1は、その他の構造単位として「式IIの構造単位」を含むのに対し、引用発明1aは、その他の構造単位として「ポリ(2(メタクリロイルオキシエチル)-2’(トリメチルアンモニウム)エチルホスヘート内部塩に由来する構造単位」を含む点。 <相違点2> 本願発明1は、式Iの構造単位と式IIの含有割合がそれぞれ「1~10モル%」、「90~99モル%」であるのに対し、引用発明1aは、式Iの構造単位とポリ(2(メタクリロイルオキシエチル)-2’(トリメチルアンモニウム)エチルホスヘート内部塩に由来する構造単位とのモル比が「1:2」である点。 (2)相違点についての判断 ア 上記相違点1について検討する。 引用発明1aに係るコポリマーを製造する際に用いるモノマーである「2(メタクリロイルオキシエチル)-2’(トリメチルアンモニウム)エチルホスヘート内部塩」について、引用文献1に「永久的正電荷の中心を有するコモノマー」(【0039】)は、一般式(I) Y-B-X を有するものであって(【0040】)、好ましいモノマーとして一般式(II) が挙げられ(【0043】、【0044】)、さらに、一般式(II)の好ましいXとして式(IVC)が例示されている(【0052】)から、引用発明1aにおける「2(メタクリロイルオキシエチル)-2’(トリメチルアンモニウム)エチルホスヘート内部塩」は、上記一般式(II)のXが式(IVC)である化合物に相当する。 そして、上記摘記アには、該式(IVC)と式(IVB)が引用文献1において共に永久的正電荷の中心を有するXとして例示されていることから(【0052】)、式(IVC)はXとして式(IVB)と互いに同等の機能を発揮するものであって、置換できるものとして開示されていると当業者は判断するから、引用発明1aにおいて、一般式(II)のXとして 式(IVC) の基を有するモノマーである「2(メタクリロイルオキシエチル)-2’(トリメチルアンモニウム)エチルホスヘート内部塩」に代えて、置換可能である一般式(II)のXとして 式(IVB) を有するモノマーを採用し、当該モノマーに由来の構造単位(本願発明1における「式IIの構造単位」に相当する。)を含むものとすることは、当業者が容易に想到することができたものである。 イ 次に相違点2について検討する。 引用文献1には、コポリマーの構造単位のモル比について、「永久的正電荷の中心を有するコモノマー残基/物理吸着によりポリマーをある表面に安定に結合させることができるアルキル、フルオロアルキルまたはシロキサン基を含有するコモノマーの残基のコポリマー中のモル比は5:95~80:20」(【0226】)と記載されている。 ここで、引用文献1の「永久的正電荷の中心を有するコモノマー残基」は、上記相違点1で述べたように一般式IIのXが式(IVB)である化合物由来の構造単位である。 そして、引用文献1の「物理吸着によりポリマーをある表面に安定に結合させることができるアルキル、フルオロアルキルまたはシロキサン基を含有するコモノマーの残基」は、引用文献1において「ポリマーをある表面に安定に結合することができるコモノマー」(【0136】)として、「理解されるように、ある場合において、ある表面に結合することができる基を含有する異なるコモノマーの組み合わせを使用することが望ましいことがある。好ましくは、後述するタイプa)、b)および/またはc)のコモノマーまたはこのようなコモノマーの組み合わせを使用し、より好ましくはタイプa)、b)およびc)のコモノマーの1つのみを使用する。」(【0138】)の中のタイプa)の説明として「a)アルキル、フルオロアルキルまたはシロキサン基を含有するコモノマー アルキル、フルオロアルキルまたはシロキサン基を含有するコモノマーは、疎水性表面への結合の形成に適当であり、6またはそれ以上の炭素原子のアルキル基(必要に応じて1または2以上のエーテル酸素原子を含有しかつ必要に応じて1または2以上の炭素-炭素の二重結合または三重結合を含有する)またはフルオロアルキル(好ましくは6またはそれ以上の炭素原子を含有し、必要に応じて1または2以上のエーテル酸素原子を含有しかつ必要に応じて1または2以上の炭素-炭素の二重結合または三重結合を含有する)またはシロキサン基(50までのケイ素原子を含有し、好ましくは線状である)を含有するコモノマーである。」(【0139】)と記載されていることから、例5(参考例)のコポリマーのモノマーとして用いる1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレートを包含する。 そうすると、引用文献1の「永久的正電荷の中心を有するコモノマー」は、「一般式(II)のXが式(IVC)又は(IVB)であるモノマー」であり、同様に、引用文献1の「永久的正電荷の中心を有するコモノマー残基」は、「一般式(II)のXが、式(IVC)又は(IVB)であるモノマー残基」である。さらに、引用文献1の「物理吸着によりポリマーをある表面に安定に結合させることができるアルキル、フルオロアルキルまたはシロキサン基を含有するコモノマーは、引用発明1aのコポリマーのモノマーとして用いる1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレートを包含する。 してみると、引用文献1には「一般式(II)のXが式(IVC)又は(IVB)であるモノマー残基/1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレートの残基のコポリマー中のモル比は5:95~80:20」について記載されていると認められ、「1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレートの残基」は、本願発明1の「式Iの構造単位としてR1がC8フルオロアルキルである構造単位」に相当するものであるから、引用文献1には、ポリマー中の各構造単位の含有量を式Iの構造単位としてR1がC8フルオロアルキルである構造単位と、一般式(II)のXとして式(IVB)を有するモノマーに由来する構造単位のモル比が、5:95~80:20となることが記載されているといえる。 しかし、引用発明1aにおいてコポリマーの「一般式(II)のXとして式(IVB)を有するモノマーに由来する構造単位」のモル比の上限が「80モル%」であることから、該記載を根拠に「一般式(II)のXとして式(IVB)を有するモノマーに由来する構造単位」を本願発明1の式IIの構造単位の含有量、即ち上限が90モル%以上である「90~99モル%」とするところまでは記載されていないし、引用文献1の該記載及びその他の記載から、コポリマーの「一般式(II)のXとして式(IVB)を有するモノマーに由来する構造単位」の含有量を「90~99モル%」とするところまでモル%の量比を変更することが周知であったということはできない。 以上によれば、引用発明1aにおいて、式Iの構造単位とポリ(2(メタクリロイルオキシエチル)-2’(トリメチルアンモニウム)エチルホスヘート内部塩に由来する構造単位との含有割合を、それぞれ「1~10モル%」、「90~99モル%」とすることが当業者が容易に想到することができたとはいえない。 ウ してみると、本願発明1は、引用発明1aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 2.本願発明2、3について 本願発明2、3は、本願発明1をさらに限定したものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明1aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 3.本願発明4-7について (1)対比 本願発明4と引用発明1aを対比すると、次のことがいえる。 引用発明1aには「ポリ(2(メタクリロイルオキシエチル)-2’(トリメチルアンモニウム)エチルホスヘート内部塩-コ-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート」が「2(メタクリロイルオキシエチル)-2’(トリメチルアンモニウム)エチルホスヘート内部塩(1.0g、0.0034mol)と1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート(0.90g、0.0017mol)を共重合した」とあるから、共重合体のモノマーとして使用される「1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート」は、本願発明4における「R1がC8フルオロアルキルである」「式IIIのフルオロアルキルモノマー」に相当する。 したがって、本願発明4と引用発明1aとの間には、次の一致点、相違点があるといえる。 <一致点> 「式IIIのフルオロアルキルモノマーとその他のモノマーを含むエチレン性不飽和モノマーの混合物に由来する構造単位を含むコポリマー。」 <相違点1’> 本願発明4は、その他のモノマーが「式IVの双性イオンモノマー」であるのに対し、引用発明1aは、その他のモノマーが「2(メタクリロイルオキシエチル)-2’(トリメチルアンモニウム)エチルホスヘート内部塩」である点。 <相違点2’> 本願発明4は、式IIIのフルオロアルキルモノマーと式IVの双性イオンモノマーの含有割合がそれぞれ「1~10モル%」、「90~99モル%」であるのに対し、引用発明1aは、式IIIのフルオロアルキルモノマーと2(メタクリロイルオキシエチル)-2’(トリメチルアンモニウム)エチルホスヘート内部塩とのモル比が「1:2」である点。 (2)相違点についての判断 上記相違点1’、2’について検討する。 本願発明4で用いるコポリマーの「式IIIのフルオロアルキルモノマー」、「式IVの双性イオンモノマー」の各々に由来する構造単位は、それぞれ、本願発明1のコポリマーの「式Iの構造単位」と「式IIの構造単位」と同一の構造式であることから、本願発明1と本願発明4のコポリマーは同一のコポリマーである。 そうすると、相違点1’については、上記1.(1)の相違点1と同様の判断ができ、相違点1’は、引用発明1aに基いて当業者が容易に想到することができたものである。 しかしながら、相違点2’は、上記1.(1)の相違点2と同様の判断ができ、相違点2’は、引用発明1aに基いて当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 したがって、本願発明4は、引用発明1aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 本願発明5-7は、本願発明4をさらに限定したものであるから、本願発明4と同様の理由により、引用発明1aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 4.本願発明8-11について 本願発明8の組成物に含まれるコポリマーの「式VIIの構造単位」、「式VIIIの構造単位」は、R1において「線状」(式I)、「直鎖」(式VII)との表現上の相違はあるものの、それぞれ、本願発明1のコポリマーの「式Iの構造単位」、「式IIの構造単位」と同一の構造式であることから、本願発明1と本願発明8のコポリマーは同一のコポリマーである。 そうすると、本願発明8は本願発明1のコポリマーを含む組成物であるといえ、相違点についても本願発明1と同様であるから、本願発明8は、本願発明1と同様の理由により、引用発明1aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 本願発明9-11は、本願発明8をさらに限定したものであるから、本願発明8と同様の理由により、引用発明1aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 5.本願発明12について (1)対比 本願発明12と引用発明1bを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明1bにおける「ポリ(2(メタクリロイルオキシエチル)-2’(トリメチルアンモニウム)エチルホスヘート内部塩-コ-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート」の「1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート」は、ポリマーの共重合単位であるから、本願発明12における「式VIIの構造単位」に相当する。 イ 引用発明1bにおける「コポリマーを使用してコーティングしたポリフッ化ビニリデンの精密濾過膜。」は、ポリフッ化ビニリデンの精密濾過膜が多孔質基材であることが明らかであるから、本願発明12の「多孔質基材に結合したコーティング」が「コポリマーを含むメンブレン」に相当する。 したがって、本願発明12と引用発明1bとの間には、次の一致点、相違点があるといえる。 <一致点> 「多孔質基材及び場合により多孔質基材に結合したコーティングを含み、多孔質基材又はコーティングの少なくとも1つが、式VIIIの構造単位とその他の構造単位を含むコポリマーを含むメンブレン。」 <相違点1’’> 本願発明12は、その他の単位として「式VIIIの構造単位」を含むのに対し、引用発明1bは、その他の構造単位として「ポリ(2(メタクリロイルオキシエチル)-2’(トリメチルアンモニウム)エチルホスヘート内部塩」を含む点。 <相違点2’’> 本願発明12は、式VIIの構造単位と式VIIIの構造単位の含有割合がそれぞれ「1~10モル%」、「90~99モル%」であるのに対し、引用発明1bは、式VIIの構造単位とポリ(2(メタクリロイルオキシエチル)-2’(トリメチルアンモニウム)エチルホスヘート内部塩とのモル比が「1:2」である点。 (2)相違点についての判断 上記相違点1’’、2’’について検討する。 本願発明12で用いるコポリマーの「式VIIの構造単位」、「式VIIIの構造単位」は、それぞれ、本願発明1のコポリマーの「式Iの構造単位」、「式IIIの構造単位」と同一の構造式であることから、本願発明1と本願発明12のコポリマーは同一のコポリマーである。 そうすると、相違点1’’については、上記1.(1)の相違点1と同様の判断ができ、相違点1’’は、引用発明1bに記載された発明に基いて当業者が容易に想到することができたものである。 しかしながら、上記相違点2’’は、上記1.(1)と同様の判断ができ、相違点2’’は、引用発明1bに基いて当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 したがって、本願発明12は、引用発明1bに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 6.本願発明13について (1)対比 本願発明13と引用発明1bを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明1bにおける「ポリ(2(メタクリロイルオキシエチル)-2’(トリメチルアンモニウム)エチルホスヘート内部塩-コ-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート」の「1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート」は、ポリマーの共重合単位であるから、本願発明13における「式VIIの構造単位」に相当する。 イ 引用発明1bにおける「コポリマーを使用してコーティングしたポリフッ化ビニリデンの精密濾過膜。」は、ポリフッ化ビニリデンの精密濾過膜が多孔質基材であることが明らかであるから、本願発明13の「多孔質基材に結合したコーティング」が「コポリマーを含むメンブレン」に相当する。 したがって、本願発明13と引用発明1bとの間には、次の一致点、相違点があるといえる。 <一致点> 「多孔質基材及び場合により多孔質基材に結合したコーティングを含み、多孔質基材又はコーティングの少なくとも1つが、式VIIIの構造単位とその他の構造単位を含むコポリマーを含むメンブレン。」 <相違点1’’> 本願発明13は、その他の構造単位として「式VIIIの構造単位」を含むのに対し、引用発明1bは、その他の構造単位として「ポリ(2(メタクリロイルオキシエチル)-2’(トリメチルアンモニウム)エチルホスヘート内部塩」を含む点。 <相違点2’’> 本願発明13は、式VIIの構造単位と式VIIIの構造単位の含有割合がそれぞれ「1~10モル%」、「90~99モル%」であるのに対し、引用発明1bは、式VIIの構造単位とポリ(2(メタクリロイルオキシエチル)-2’(トリメチルアンモニウム)エチルホスヘート内部塩とのモル比が「1:2」である点。 <相違点3> 本願発明13は、多孔質基材が「0.01ミクロン~50ミクロンの細孔径」を有するのに対し、引用発明1bは、多孔質基材の細孔径について規定していない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点1’’について検討する。 本願発明13で用いるコポリマーの「式VIIの構造単位」、「式VIIIの構造単位」は、それぞれ、本願発明1のコポリマーの「式IIの構造単位」、「式IIIの構造単位」と同一の構造式であることから、本願発明1と本願発明13のコポリマーは同一のコポリマーである。 そうすると、相違点1’’については、上記1.(1)の相違点1と同様の判断ができ、相違点1’’は、引用発明1bに記載された発明に基いて当業者が容易に想到することができたものである。 次に上記相違点3について検討する。 引用発明1bは、分離膜の細孔径についての特定はないが、引用発明6は、多孔質膜と該多孔質膜の表面を覆う親水性の微粒子を有する有機または無機の材料からなる浄水用の膜である低汚染性浄水用濾過膜であって、多孔質膜の基材として、ポリエチレン、ポロプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリルニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド等のの有機系高分子材料、あるいはアルミナまたは安定化ジルコニアの無機系セラミックス材料のいずれかである発明であり、さらに引用文献6には、摘記クの記載から、高分子からなる浄水用濾過膜(多孔質膜)の孔径が0.1μm~10μmであることが記載されていることから、分離膜としてポリテトラフルオロエチレン製のものや多孔質基材の細孔径が0.1μm~10μmのものが引用発明6に開示されているといえるから、引用発明1bの分離膜の多孔質基材として、引用発明6で用いられる細孔径を有する多孔質基材や、ポリテトラフルオロエチレン製の多孔質基材を用いて細孔径を0.01~50ミクロンとすることは当業者が容易に想到しうるものである。 そして、相違点2’’について検討する。 上記相違点2’’は、上記1.(1)と同様の判断ができ、相違点2’’は、引用発明1bに基いて当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 さらに、引用発明6は「多孔質膜と該多孔質膜の表面を覆う親水性の微粒子を有する有機または無機の材料からなる浄水用のろ過膜であって、多孔質膜の基材がポリテトラフルオロエチレン等の有機系高分子材料等であり、前記親水性微粒子が、多孔質膜の孔径の平均サイズの1.1~10倍の直径を有する親水性の粒子である親水性を付与した低汚染性浄水用ろ過膜。」と、多孔質膜の基材として用いる有機高分子材料が特定の材料に限定された発明であるが、本願発明13で用いるVIIの構造単位または式VIIIの構造単位を有するコポリマーにを用いることは特定されていない。そして、引用発明6や引用文献6のその他の記載から、コポリマーが「VIIの構造単位」と「式VIIIの構造単位」を有し、構造単位のそれぞれの含有量を「1~10モル%」、「90~99モル%」とするところまでモル%の量比を変更することが周知であったということはできない。 したがって、相違点2’’は、引用発明1b及び引用発明6に基いて当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 してみると、本願発明13は、引用発明1b、または引用文献1b及び引用発明6に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 7.本願発明14-22について 本願発明14-17は、本願発明12または本願発明13をさらに限定したもの、本願発明18-22は、本願発明12のメンブレンを用いた汚染水の処理方法の発明であるから、本願発明12または本願発明13と同様の理由により、引用発明1b、または引用発明1b及び引用発明6に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1-12は、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。そして、本願発明13-22は、引用文献1に記載された発明、または引用文献1及び引用文献6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2018-012839

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