特許拒絶査定不服審判
2018-008613
型枠・鉄筋一体構造体及び鉄筋コンクリート並びに型枠・鉄筋一体施工方法
- 審判番号
- 2018-008613
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-119614
- 請求日
- 2018年06月22日
- 審決日
- 2019年10月07日
- 公報発行日
- 2020年01月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】トーヨーカネツ株式会社
- 【請求人代理人】友野 英三
- 【請求人】株式会社大林組
- 【請求人代理人】友野 英三
- 審判長/審判官
- 審判長 森次 顕
- 審判官 富士 春奈
- 審判官 住田 秀弘
- 分類
- P18 .121-WZ (E04B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-119614「型枠・鉄筋一体構造体及び鉄筋コンクリート並びに型枠・鉄筋一体施工方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月21日出願公開、特開2017-223055〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成28年6月16日の出願であって、平成29年6月2日付け(発送日:平成29年6月13日)で拒絶理由通知がされ、同年8月10日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ、同年10月25日付け(発送日:同年10月31日)で拒絶理由通知(最後)がされ、同年12月27日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ、平成30年2月28日付け(発送日:同年3月27日)で平成29年12月27日の手続補正についての補正の却下の決定及び拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年6月22日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに手続補正がされ、本件審判手続において、平成31年4月24日付け(発送日:令和1年5月7日)で当審より拒絶理由通知がされ、令和1年7月8日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、令和1年7月8日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
LNGを含む低温貯蔵用の内槽及び外槽を有してなる鋼構造物を外包するコンクリートによる防液堤環状壁構築物を構築するための前記外槽を兼用する型枠の一方と、
前記型枠の一方に接続もしくは接合されたスチフナーであって継手部補強材を介して連接されることでリング状を形成する自立性強固化スチフナーと、
前記自立性強固化スチフナーの鉄筋のかぶり厚を確保できるかぶり厚固定位置に貫通されもしくは前記自立性強固化スチフナーに対して前記鉄筋のかぶり厚を確保したかぶり厚固定位置に固定されることによって前記型枠の一方に接合もしくは接続された縦筋及び該縦筋に結束される横筋によってなる鉄筋と
を有することを特徴とする型枠・鉄筋一体構造体。」
第3 拒絶の理由
平成31年4月24日付けで当審が通知した拒絶理由は次のとおりである。
本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1ないし9に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献一覧
1.特許第5882520号公報
2.国際公開第2011/6213号
3.特開2014-205972号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2009-275896号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2000-110396号公報(周知技術を示す文献)
6.特開平09-303095号公報(周知技術を示す文献)
7.特開昭59-27045号公報(周知技術を示す文献)
8.特開昭58-47843号公報(周知技術を示す文献)
9.特開昭52-19417号公報(周知技術を示す文献)
第4 引用文献の記載、引用発明等
1 引用文献1について
(1)当審の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は本審決で付した。以下同様。)。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス貯蔵タンクに係り、主に、液化天然ガス(LNG)を貯蔵する貯槽構造および貯槽の施工法に関するものである。」
イ 「【0004】
このLNG貯槽として、図10に示すように、内槽、外槽からなる二槽構造のものが知られている。図10Aに示す貯槽は、内槽側板a3、内槽屋根a5、内槽底板a7と、外槽側ライナa2、外槽屋根a4、外槽底板a6の二重槽からなる。この二重槽内にLNGが貯蔵される。内槽および外槽は、金属製で構築され、さらに、その外側に、災害時のLNG漏えいを拡散しないようにコンクリート壁からなる防液堤a1を備えたものである。」
ウ 「【0014】
かかる目的を達成するために、本発明の一態様に係る貯槽構造は、防液堤の内部に施工され自立補助手段が加えられた外槽側ライナと、前記外槽側ライナの内側に施工される内槽を備えた貯槽構造とを備えたことを特徴とする。すなわち、本発明は、防液堤を備えた外槽及び内槽を備えてなる貯槽であって、前記外槽に、自立可能な外槽側ライナ(以下、単に「側ライナ」ともいう。)を備えたことを特徴とする貯槽構造を提供するものである。また、前記外槽側ライナはスチフナを設けてなり、前記防液堤の内側型枠を兼用する構成とすることもできる。さらに、前記外槽側ライナは複数の周曲された平板が上下方向及び/もしくは周回方向に連接されてなり、各前記複数の周曲された平板同士が裏当金突合せ溶接により接合されている構成とすることもできる。」
エ 「【0017】
また、本発明は、前記側ライナを用い、その外側にコンクリートを打設形成することができ、また、該コンクリートとして、プレストレストコンクリートを用いて貯槽構造を提供するものである。
【0018】
本発明によれば、自立した外槽側ライナを型枠として用いることができ、この外槽側ライナと外側に設けられる型枠との間にコンクリートを打設することで、外槽側ライナとプレストレストコンクリート防液堤(PC防液堤)とを一体化することができる。また、外槽側ライナが防液堤のコンクリート打設用の内側型枠を兼用するので、防液堤の作業は貯槽の外面からのみの係わりで施工可能となり、貯槽内面で行われる内槽に係わる作業に干渉しない。この場合に、特に、外槽側ライナを自立可能に構築することで、側ライナの多層分の先行施工を可能とした結果、従来よりも一層の工期短縮、安全性確保を推進することができる点については上記と同様である。」
オ 「【0020】
ここで、上記構成に係る本発明において、オプションとして鉄筋受架台をコンクリート打ち込み用にセットし、かかる鉄筋受架台もしくは上記スチフナに接合させもしくはこれらを貫通させるように鉄筋をあらかじめセットしたものを外槽側ライナと一体加工しておくようにしてもよい。このようにした場合には、タンク施工現場での鉄筋工の作業を最小化できるとともに、鉄筋工と型枠工との交錯、鉄筋工とその他職種工との交錯を最小化できるから、安全上の懸念事項を減少させ、より一層の安全性が物理的に担保された施工環境を実現することが可能となる。」
カ 「【0039】
図1Cに示されるように、外槽側ライナのタンク外面側にはさらにスタッドジベル510が一定間隔で上下左右方向に取り付けられている。スタッドジベル510は、たとえば外槽側ライナ5に金属を採用した場合に当該金属面と(後に施工される)防液堤のコンクリートとの定着を増強させ金属面をコンクリートに固定するための金属部品である。また、外槽側ライナ5は一枚板を周壁状に曲げ加工して形成される。当該外槽側ライナは2枚または複数枚を予め地上で繋ぎブロック化して組み立てても良い。外槽側ライナ5の積層方向、周回方向には隣接する外層側ライナ5との接続をとるための裏当板520b,520aが取り付けられている。さらに周回方向には、より自立剛性を増すために、仮設スチフナ530が溶接または治具にて取り付けられている。・・・
【0040】
同図には図示していないが、好適には、外槽側ライナ5の周回方向にスチフナ6を接合したうえで外槽側ライナ5を周回方向に連綿と巻回させて環状を形成させつつスチフナ6同士を結合させる。これにより外槽側ライナ5とスチフナ6とでバンド状の環状体が形成され、いわばリブ付環状体としての剛性が発揮されることが可能となる。これにより、外槽側ライナ5を多層に独立的に積層しても自立性が確保されることとなる。」
キ 「【0043】
さらに、この自立補助手段によって補強された側ライナ5は、防液堤10の型枠として使用できる。即ち、側ライナ5を内側の型枠とし、外側型枠(図示省略)との間に、スチフナ6を含め側ライナ5の外側(タンク外面側)に設置される鉄筋7等の施工した後にコンクリートを打設することで、PC防液堤と外槽側ライナとを一体化構築できる。・・・」
ク 「【図1C】
」
上記カの記載と合わせて図1Cをみると、、以下のことが看て取れる。
「隣接するスチフナ6間において、周回方向に、仮設スチフナ530が取り付けられていること。」
(2)引用文献1に記載された発明の認定
ア (1)イは、一般的なLNG貯槽について示したものであるから、引用文献1に記載された発明においても、内槽および外槽は、金属製で構築されていると解される。
イ (1)オにおいて、スチフナに貫通するためには、鉄筋は、スチフナと直交方向、すなわち、縦向きであるものと解されるから、(1)オにおける鉄筋は、縦筋であると認められる。
ウ してみると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「液化天然ガス(LNG)を貯蔵する、プレストレストコンクリート防液堤を備えた外槽及び内槽を備えてなる貯槽構造であって、
内槽および外槽は、金属製で構築され、
前記外槽には、自立可能な外槽側ライナを備えており、
前記外槽側ライナは、前記防液堤のコンクリート打設用の内側型枠を兼用するものであり、前記外槽側ライナの外側に打設形成されるコンクリートとしてプレストレストコンクリートを用いており、
前記外槽側ライナの周回方向に、スチフナを接合したうえで前記外槽側ライナを周回方向に連綿と巻回させて環状を形成させつつスチフナ同士を結合させることで、前記外槽側ライナとスチフナとでバンド状の環状体が形成され、いわばリブ付環状体としての剛性が発揮されることにより、前記外槽側ライナを多層に独立的に積層しても自立性が確保されており、
隣接する前記スチフナ間において、周回方向に仮設スチフナが取り付けられており、
前記スチフナに接合させもしくは貫通させるように縦筋をあらかじめセットしたものを前記外槽側ライナと一体加工しておく、
貯槽構造。」
2 引用文献2について
(1)当審の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献2には、以下の事項が記載されている。
ア 「FIG. 1 shows a perspective view of an LNG tank 10. The perspective view shows a cylindrical outer wall 11 with an attached roof 12 forming an outer tank of the LNG tank. The outer wall is formed from a series of prefabricated modules 100. 」(第8頁第21行-24行)
(当審仮訳)
「図1は、LNGタンク10の斜視図を示している。斜視図は、付属の屋根12とともに、LNGタンクの外槽を形成する円筒状の外壁11を示す。外壁は、一連の予め製造されたモジュール100から形成される」
イ 「Each prefabricated module 100 includes a vapour barrier plate 120, support frames 130, inner vertical reinforcement bars 140, inner horizontal reinforcement bars 150, outer vertical reinforcement bars 160, outer horizontal reinforcement bars 170, horizontal stressing ducts 180 and vertical stressing ducts 190.」(第8頁第28行-32行)
(当審仮訳)
「各プレハブ式モジュール100は蒸気障壁板120、支持フレーム130、内側垂直補強筋140、内側水平補強筋150と、外側垂直補強筋160と、外側水平補強筋170、水平ストレスダクト180と垂直ストレスダクト190とを含んでいる。」
ウ 「The support frames 130 are then welded to the vapour barrier plate 120 along the bottom rail 133 of the support frame 130.
The next step is to place inner vertical reinforcement bars 140 atop the vapour barrier plate 120 as shown in FIGS. 4a to 4c. As the length of the vertical reinforcement bars 140 is longer than the length of the vapour barrier plate 120, an end of the inner vertical reinforcement bars 140 extends past an end of the vapour barrier plate 120. The inner vertical reinforcement bars 140 are slightly offset with respect to "true vertical" using guides (not shown). This offsetting of the inner vertical reinforcement bars 140 assists in alignment of adjacent prefabricated modules 100 when positioned on top of each other.
After the inner vertical reinforcement bars 140 are positioned on top of the vapour barrier plate 120, inner horizontal reinforcement bars 150 are installed as shown in FIGS. 5a to 5c. This installation is conducted by locating the inner horizontal reinforcement bars 150 through the reinforcement locating holes 136 located in the bottom rail 133 of the support frames 130. This ensures that the inner horizontal reinforcement bars 150 are located precisely for each prefabricated module 100. The inner horizontal reinforcement bars 150 are then secured to the support frames 130 by tie wire. The inner vertical reinforcement bars 140 are then secured to the inner horizontal reinforcement bars 150 also by tie wire. 」(第10頁第26行-第11頁第14行)
(当審仮訳)
「そして、支持フレーム130が、支持フレーム130の底部レール133に沿って、蒸気障壁板120に溶接される。次の工程は、図4a~図4cに示すように、蒸気障壁板120の表面に内側垂直補強筋140を配置することである。垂直補強筋140の長さは、蒸気障壁板120の長さよりも長く、内側垂直補強筋140の端部は、蒸気障壁板120の端を越えて延びる。内側垂直補強筋140は、ガイド(図示せず)を用いて、「真の垂直」に関してわずかにオフセットされている。内側垂直補強筋140のこのオフセットは、互いの上に配置されるとき、隣接するプレハブ式モジュール100の整列を補助する。
内側垂直補強筋140は、蒸気障壁板120の表面に配置された後に、図5a~5cに示すように、内側水平補強筋150が設置される。これは、支持フレーム130の底部レール133に配置された補強位置決め穴136に内側水平補強筋150を通すことによって行われる。これは、内側の水平補強筋150が各々の、予め製作されたモジュール100に対して正確に配置されることを保証する。その後、内側水平補強筋150は、結束ワイヤによって支持フレーム130に固定される。そして、内側垂直補強筋140は、同様に、結束ワイヤによって内側水平補強筋150に固定される。」
エ 「After the shutters 210 are in place, concrete is poured between the shutters 210 and the vapour barrier plates 120 as shown in FIGS. 14a to 14b. 」(第14頁第4行-第6行)
(当審仮訳)
「シャッタ210が適所に置かれた後、図14a~14bに示すように、シャッタ210及び蒸気障壁板120との間にコンクリートが注入される。」
(2)引用文献2に記載された技術事項の認定
したがって、引用文献2には、次の技術事項(以下、「文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「LNGタンクの外槽の円筒状の外壁11を形成するモジュール100であって、
モジュール100が、蒸気障壁板120、支持フレーム130、内側垂直補強筋140、内側水平補強筋150を備え、
コンクリートが、シャッタ210及び蒸気障壁板120との間に注入されるものであり、
蒸気障壁板120に溶接された支持フレーム130の補強位置決め穴136に通されて固定された内側水平補強筋150が、蒸気障壁板120の表面に設けられた内側垂直補強筋140と結束ワイヤによって固定されていること。」
3 引用文献3について
当審の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献3には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るタンクの施工方法では、基礎版上に防液堤を構築するとともに、その構築された防液堤の内側に外槽を設けて構成されるタンクの施工方法であって、防液堤は、基礎版上に外槽を形成する外槽ライナープレートを内型枠として組み立てるとともに、外槽ライナープレートの外側に所定の間隔を保って外型枠を組み立て、それら組み立てられた外槽ライナープレートと外型枠との間にコンクリートを打設して構築することを特徴としている。」
(2)「【0039】
しかも、外槽ライナープレート10は、従来の外槽ライナープレート付きプレキャストコンクリート型枠よりも格段に軽量化されているので施工時のハンドリング性に優れ、また、この外槽ライナープレート10の矩形鋼板の厚さが略8mmと薄く、また外周アングル材11、補強用アングル材12も高さ数十mmと防液堤の鉄筋被りの中に納まるため、防液堤3の厚さを増加させることがないという効果を奏する。そのため、施工が容易となって、作業効率が向上し、工期の短縮を図ることができる。」
4 引用文献4について
当審の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献4には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
本発明は、LNGタンクの如き低温PCタンクにおけるPC防液堤(コンクリート躯体)に埋め込んで外槽側ライナをPC防液堤の内面に固定して支持させるために用いる低温PCタンクの外槽側ライナ剛アンカー装置に関するものである。」
(2)「【0018】
すなわち、上下方向に所要寸法延びる矩形状の薄板からなるつば板15の裏面となる一側面に、該つば板15より直角方向に所要寸法突出するアンカー本体16を設け、且つ上記つば板15の厚さ寸法と、アンカー本体16の上記つば板15からの突出量との和の寸法Dが、図2(イ)(ロ)に示す低温PCタンク17のPC防液堤18の躯体コンクリート内に鉛直方向に配筋する主筋である鉛直筋19aと、周方向に配筋する主筋である円周筋19bのうち、該PC防液堤18の最も内側(最内縁)に位置する主筋19a,19bから該PC防液堤18の内周側表面までのコンクリートかぶり厚さTよりも小さくなるように設定して、外槽側ライナ剛アンカー装置14を構成する。」
5 引用文献5について
当審の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献5には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、現場打ち防火水槽の施工方法及び現場打ち防火水槽に関するものである。」
(2)「【0027】2段目の側壁部2のコンクリートが硬化した後、セパレーター28及びターンバックルブレース8、ならびに1段目と2段目の外面側及び内面側の側壁部型枠5を取り外し、その後、側壁部2の1段目と2段目の継ぎ目をエポキシ樹脂等によってコーキングする。なお、以上の工程では、分割側壁部配筋ユニット7は、充分なコンクリートのかぶり厚を確保するため、スペーサーによって側壁部型枠5から所定間隔離間した状態に確保されている。続いて、このように形成される側壁部2を、側壁部2内からさらに地面を掘り下げることによって地中の所定の深さまで落とし込んだ後、側壁部2に囲まれる空間の底面に砕石基礎30を形成し、その上に均しコンクリート31を打設する。」
6 引用文献6について
当審の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献6には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はコンクリートの埋め殺し型枠として用いられるセグメントをコンクリート本体に固定するセグメント固定装置に関するものである。」
(2)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のセグメント型枠では、アンカー鉄筋109と主鉄筋111a、111bとが接触しないように、アンカー鉄筋109は本体コンクリート107のかぶりコンクリート部、すなわちセグメント105側の主鉄筋111a、111bの外側のコンクリート部に固定されている。このため、通常の地震においては、セグメント105は落下することはないが、巨大地震時において、かぶりコンクリート部が剥落するような場合、セグメント105も剥落する恐れがある。」
7 引用文献7について
当審の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献7には、以下の事項が記載されている。
(1)「更にまた前記シヤコネクタ部材における鉄板に固着されたフランジ部とは反対側のフランジ部は配筋作業のガイドとして使用され、従つて鉄板内側に配筋される鉄筋の被り厚さは前記シヤコネクタ部材によって正確に保持され、配筋時のスペ-サが不要となり、鉄筋をシヤコネクタ部材に止めるだけでよいので配筋作業が簡略化される等、本発明は多くの利点を有するものである。」(第2頁左下欄第4-11行)
8 引用文献8について
当審の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献8には、以下の事項が記載されている。
(1)「先ず本発明にかかる打込み鋼製型枠Aの実施例について第1~3図を参照して説明すると、この型枠は、穴あき鋼板(メツシユ板)によって形成されたものであって、せき板部1と鉄筋かぶり厚aを確保するための確保部2とを具備するもので、この確保部の端部は型枠Aの骨材3となっている。
そして型枠Aには多数の穴4,・・・が穿設されており、そのため主筋5とこの型枠の骨材3とを連結し、この主筋を固定するには、この穴の一つを使用する。」(第2頁左上欄第2-11行)
9 引用文献9について
当審の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献9には、以下の事項が記載されている。
(1)「つまり、鉄筋の外側に適当なかぶり厚を隔ててコンクリート打設用型枠兼用の構造体仕上げ用板を固定化し、型枠として用いた」(第2頁左上欄第5-7行)
(2)「この仕上げ用板1は矩形状の板体4及びこの板体4の周縁より垂直方向に所定高さまで突出した枠体5とにより一体的に形成され、前記枠体5には、その突出端より鍵状に切り込まれて鉄筋2をはどめするための係止部6を有する切り込み孔7が所定間隔をおいて刻設されている。」(第2頁左下欄第3-9行)
第5 対比・判断
1 対比
(1)引用発明1において、「液化天然ガス(LNG)を貯蔵する、プレストレストコンクリート防液堤を備えた外槽及び内槽」は、「金属製で構築され」ることが特定されていることから、外槽及び内槽は、「鋼構造物」であり、引用発明1にける「防液堤」は、本願発明1のような、「LNGを含む低温貯蔵用の内槽及び外槽を有してなる鋼構造物を外包するコンクリートによる防液堤」である。
また、引用発明1には、「外槽側ライナは、前記防液堤のコンクリート打設用の内側型枠」であり、「外槽側ライナとスチフナとでバンド状の環状体が形成」されることが特定されていることから、「防液堤」は環状壁であると解される。
してみると、引用発明1の「内槽および外槽」が「金属製で構築され」た「液化天然ガス(LNG)を貯蔵する、プレストレストコンクリート防液堤を備えた外槽及び内槽を備えてなる貯槽構造」は、本願発明1の「LNGを含む低温貯蔵用の内槽及び外槽を有してなる鋼構造物を外包するコンクリートによる防液堤環状壁構築物」に相当する。
(2)引用発明1における「外槽側ライナ」は、「外槽」に備えられ、「防液堤のコンクリート打設用の内側型枠を兼用する」から、本願発明1の「外槽を兼用する型枠の一方」に相当する。
(3)引用発明1には、「外槽側ライナ」は「防液堤のコンクリート打設用の内側型枠」であり、「外槽側ライナの周回方向に、スチフナを接合した」ことが特定されていることから、「スチフナ」は、型枠の一方である「外槽側ライナ」に接続もしくは接合されたものである。
また、引用発明1には、「外槽側ライナを周回方向に連綿と巻回させて環状を形成させつつスチフナ同士を結合させることで、外槽側ライナとスチフナとでバンド状の環状体が形成され、いわばリブ付環状体としての剛性が発揮されることにより、外槽側ライナを多層に独立的に積層しても自立性が確保されて」いることが特定されていることから、引用発明1の「スチフナ」は、自立性強固化のために、リング状(環状)を形成するものであるといえる。
さらに、引用発明1の「スチフナ同士を結合させる」こと、及び、「隣接するスチフナ間には、仮設スチフナが設けられて」いることから参酌すれば、引用発明1において、「スチフナ」は、「仮設スチフナ」を介して連接されているものと認められるから、引用発明1における「仮設スチフナ」は本願発明1の「継手部補強材」に相当する。
以上より、引用発明1において、「スチフナ」が「防液堤のコンクリート打設用の内側型枠」である「外槽側ライナ」に「接合」され、「外槽側ライナを周回方向に連綿と巻回させて環状を形成させつつスチフナ同士を結合させることで、外槽側ライナとスチフナとでバンド状の環状体が形成され、いわばリブ付環状体としての剛性が発揮されることにより、外槽側ライナを多層に独立的に積層しても自立性が確保され」ており、「隣接する前記スチフナ間において、周回方向に仮設スチフナが取り付けられて」いることは、本願発明1の「スチフナ-」が、「型枠の一方に接続もしくは接合されたスチフナ-であって継手部補強材を介して連接されることでリング状を形成する自立性強固化スチフナー」であることに相当する。
(4)引用発明1において、「縦筋」は鉄筋であり、また、「スチフナに接合させもしくは貫通させるように縦筋をあらかじめセットしたものを外槽側ライナと一体加工しておく」ことが特定されていることから、本願発明1の「縦筋」と引用発明1の「縦筋」とは、「鉄筋」であり、「自立性強固化スチフナー」「に貫通されもしくは前記自立性強固化スチフナーに対して固定されることによって前記型枠の一方に接合もしくは接続」する点では共通する。
また、引用発明1の「スチフナに接合させもしくは貫通させるように縦筋をあらかじめセットし」て、「外槽側ライナと一体加工」されてできたものは、本願発明1の「型枠・鉄筋一体構造体」に相当する。
(5)以上(1)ないし(4)から、本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「LNGを含む低温貯蔵用の内槽及び外槽を有してなる鋼構造物を外包するコンクリートによる防液堤環状壁構築物を構築するための前記外槽を兼用する型枠の一方と、
前記型枠の一方に接続もしくは接合されたスチフナーであって継手部補強材を介して連接されることでリング状を形成する自立性強固化スチフナーと、
前記自立性強固化スチフナーに貫通されもしくは前記自立性強固化スチフナーに対して固定されることによって前記型枠の一方に接合もしくは接続された縦筋からなる鉄筋
を有する型枠・鉄筋一体構造体。」
(相違点1)
「鉄筋」が、本願発明1では、「縦筋」及び「縦筋に結束される横筋」を有するのに対し、引用発明1では、「縦筋」は特定されているものの、「縦筋に結束される横筋」が特定されていない点。
(相違点2)
「縦筋」が「スチフナ-」に貫通される位置もしくは「スチフナ-」に対して固定される位置が、本願発明1では、「鉄筋のかぶり厚を確保できるかぶり厚固定位置」もしくは、「鉄筋のかぶり厚を確保したかぶり厚固定位置」であるのに対し、引用発明1では、そのような固定位置が特定されていない点。
2 相違点についての判断
(1)相違点1について
文献2技術事項において、「LNGタンクの外槽の円筒状の外壁11を形成するモジュール100」の「蒸気障壁板120」、及び「シャッタ210」の間に、「コンクリート」が「注入され」ることが特定されていることから、「蒸気障壁板120」は、「LNGを貯蔵する外槽の円筒状のコンクリートによる防液堤環状壁構築物を構築するための外槽を兼用する型枠の一方」である。
また、文献2技術事項において、「蒸気障壁板120」に固定された「内側水平補強筋150」と、「内側水平補強筋150」に「結束ワイヤによって固定され」る「蒸気障壁板120の表面に設けられた内側垂直補強筋140」は鉄筋であることから、文献2技術事項は、「LNGを貯蔵する外槽の円筒状のコンクリートによる防液堤環状壁構築物を構築するための外槽を兼用する型枠の一方と、型枠の一方に固定された鉄筋と、それに結束される鉄筋を備えた型枠・鉄筋一体構造体」の構成を有するものである。
ここで、引用発明1では、縦筋に結束される横筋が特定されていないものの、大型構造物の鉄筋コンクリート壁に縦筋と横筋を設けることは一般的なことであって、引用発明1においても、縦筋に結束される横筋を有している蓋然性が高い。
また、文献2技術事項と引用発明1は、「LNGを貯蔵する外槽の円筒状のコンクリートによる防液堤環状壁構築物を構築するための外槽を兼用する型枠の一方に鉄筋を備えた型枠・鉄筋一体構造体」という共通の技術分野に属する。
してみると、引用発明1の型枠・鉄筋一体構造体(「スチフナに接合させもしくは貫通させるように縦筋をあらかじめセットし」て、「外槽側ライナと一体加工」されてできたもの)に対し、文献2技術事項のように、型枠に固定された鉄筋に直交するように鉄筋を設けて鉄筋同士を結束し、すなわち、縦筋に結束される横筋を設けて、本願発明1の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(2)相違点2について
鉄筋コンクリート構造の壁を有する貯槽において、鉄筋のかぶり厚を確保することは、引用文献3ないし引用文献6に記載されるように、周知の課題であるから、「プレストレストコンクリート防液堤を備え」てなる「貯槽構造」に係る引用発明1においても、鉄筋のかぶり厚を確保するとの課題は内在しているものと認められる。
また、永久型枠ないし埋込型枠に設けられる補強部材・リブ部材等において、鉄筋のかぶり厚を確保できる「かぶり厚固定位置」に鉄筋を貫通させること、もしくは鉄筋のかぶり厚を確保した「かぶり厚固定位置」に鉄筋を固定することは、例えば、引用文献7ないし引用文献9(シアコネクタ部材、穴あき鋼板、枠体5)に記載されるように、周知技術である。
そして、引用発明1において、「縦筋」を「スチフナ」に貫通もしくは固定するに際し、上記内在した課題を解決するために、上記周知技術を採用し、本願発明1の相違点2に係る構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。
3 本願発明1の効果について
本願発明1の明細書の段落【0015】には、本願発明1の技術的効果として、「型枠建方工事と鉄筋配筋工事を一体化することができる。したがって、型枠大工と鉄筋工との交錯場面をなくすことができる。よって、作業の簡素化による工期短縮を実現できる。また第1の鉄筋と連結または一体化した型枠は、工事現場において第1の鉄筋と第2の鉄筋との間の工事現場における仮置スペース等の取り合いを解消し(工期短縮に繋がり)、工事現場における省スペースも実現できる」と記載されているが、上記技術的効果は、引用文献1の上記第4 1(1)オの記載を参酌すれば、引用発明1及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものであって、格別なものとはいえない。
4 請求人の主張について
請求人は、令和1年7月8日付け意見書において、「鉄筋工事は鉄筋工が行い、スチフナ工事は全く別の金属工事に属することから金属工が行うのが現状であるために、スチフナ工事と鉄筋工事とは互いに独立していて両者が結合されることは建築工事の実情からしてあり得ないところ、本願の着眼している「自立性強固化スチフナーにおいて鉄筋のかぶり厚を確保すること」はまさに鉄筋工事と金属工事との交錯部分であり、(現実的には金属工がやることになると思われるが)鉄筋のかぶり厚確保位置を特定することは金属工にとって自明/容易なことではないからです。というより、むしろ、金属工は通常、鉄筋工事とは関係ないので、鉄筋のかぶり厚確保位置がどこになるべきかついては、金属工は全く関与せず関知するところのものではありません。」(意見書第8頁下から第15行-第7行)と主張するが、引用発明1は、金属工のスチフナ工事と鉄筋工の鉄筋工事との両方が結合されたものであって、少なくとも引用発明1に接した鉄筋工であれば、当然「かぶり厚さ」を考慮して、鉄筋のかぶり厚確保位置を特定できるものと認められる。
また、請求人は、「そもそも、鉄筋のかぶり厚確保、というテーマと、スチフナ設置というテーマとは、分けて考えるべきではないと思料いたします。なんとなれば、両者は、本来別のものであり、上述のごとく担当職種も全く異なるから、本来組み合わされるべきものではないところ、これを敢えて組み合わせるところに独特の価値を生じることを見出したところに本願の眼目があるからです。換言すれば、本願では、スチフナをリング状に形成したときにどのように鉄筋のかぶり厚を確保すべきか、を課題として見出したものであるから、「スチフナ設置」における「鉄筋のかぶり厚確保」は、「スチフナ設置」と「鉄筋のかぶり厚確保」とを別個に分割して考慮されるべきではなく、むしろ「スチフナ設置における鉄筋のかぶり厚確保」という一体不可分のテーマとして扱うべきであるものと思料いたします。となると、「スチフナ設置における鉄筋のかぶり厚確保」という技術思想が各引用文献に開示もしくは示唆されているかを検討すべきであると思料いたします。」(意見書第8頁下から第6行-第9頁第5行)と主張するが、本願発明1において、鉄筋のかぶり厚を確保するために、鉄筋とスチフナとを固定することについて、新たな課題が存在するものでも、特別な固着方法を用いたものではなく、また、永久型枠ないし埋込型枠に設けられる補強部材・リブ部材等鉄筋のかぶり厚を確保できる「かぶり厚固定位置」に鉄筋を貫通させること、もしくは鉄筋のかぶり厚を確保した「かぶり厚固定位置」に鉄筋を固定することは、引用文献7ないし9に記載されているように周知技術であることからみても、本願発明1が、引用発明1と対比して、「スチフナをリング状に形成したときにどのように鉄筋のかぶり厚を確保すべきか」を課題として見出したものとはいえない。
よって、「スチフナ設置における鉄筋のかぶり厚確保」が一体不可分の技術思想であるとは認められない。
また、請求人は、意見書の第9頁第18行-第42行において、引用文献7ないし9には、スチフナの鉄筋かぶり確保位置に鉄筋を貫通もしくは固定させるという技術思想が開示されていない旨主張する。
たしかに、引用文献7ないし9には、スチフナに関するものは記載されていないものの、「永久型枠ないし埋込型枠に設けられる補強部材・リブ部材等鉄筋のかぶり厚を確保できる「かぶり厚固定位置」に鉄筋を貫通させること、もしくは鉄筋のかぶり厚を確保した「かぶり厚固定位置」に鉄筋を固定すること」は記載されており、上に示したように、「スチフナ設置における鉄筋のかぶり厚確保」は一体不可分の技術思想とは認められないから、引用文献7ないし9に、スチフナの鉄筋かぶり確保位置に鉄筋を貫通もしくは固定させるという技術思想が開示されていないからといって、本願発明1が進歩性を有するとは認められない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用文献1ないし9に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2018-008613