特許拒絶査定不服審判
2018-007442
軟磁性樹脂組成物、および、軟磁性フィルム
- 審判番号
- 2018-007442
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-219282外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年05月31日
- 審決日
- 2019年11月11日
- 公報発行日
- 2020年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (H01F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-219282「軟磁性樹脂組成物、および、軟磁性フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月27日出願公開、特開2015- 82554〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年10月22日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 7月 6日付け:拒絶理由通知
平成29年 9月 5日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 3月16日付け:拒絶査定
平成30年 5月31日 :審判請求書の提出
令和 1年 8月 2日付け:拒絶理由通知
令和 1年 9月27日 :意見書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成29年9月5日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
扁平状の軟磁性粒子、樹脂成分、および、レオロジーコントロール剤を含有し、
前記レオロジーコントロール剤が、変性ウレア、および、ウレア変性ポリアマイドからなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする、軟磁性樹脂組成物。」
第3 当審の拒絶理由の概要
当審において令和1年8月2日付けで通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。
本願の請求項1-3に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.特開2007-8982号公報
引用文献2.特開2008-74945号公報
引用文献3.特開2010-31182号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付したものである。以下同じ)。
「【0009】
本発明で用いられる金属粉末は、粒子の形状が扁平な扁平粉末であることが好ましい。扁平度は、粉末の平均粒度D50(μm)と粉末の比表面積(m2/gr)の積を近似値として用い、この値が20~50程度の範囲が好ましい。
扁平な金属粉末を用いることにより、本発明の電波吸収性塗料組成物による電波吸収性能をより向上させることができる。金属粉末の扁平度が上記範囲を超えると、混合時に粒子が割れやすくなるため好ましくない。」
「【0015】
[その他の成分]
本発明の電波吸収性塗料組成物には、上記の構成成分のほかに、必要に応じて酸化防止剤、防錆剤、分散剤、沈降防止剤等のその他の成分を適宜添加することができる。」
「【0018】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。
[試料No.1~7]
下記表1に示す配合で、樹脂、金属粉末、カーボン粉末および溶媒をディスパーを用いて混合することにより試料No.1~7の電波吸収性塗料組成物を製造した。No.6,7はカーボン粉末を含まない比較試料である。表1に示す配合量の単位は質量部である。
樹脂としては下記のウレタン樹脂を用い、金属粉末としては下記のパーマロイ粉末およびステンレス鋼粉末を用い、カーボン粉末としては下記のカーボンブラック粉末およびグラファイト粉末を用い、溶媒としてはエタノールを用いた。
なお、表1には樹脂固形分100質量部に対する金属粉末およびカーボン粉末(カーボンブラック粉末とグラファイト粉末の合計)の質量比を合わせて示している。
【0019】
・ウレタン樹脂:旭電化工業社製、製品名;アデカボンタイターHUX-386、樹脂固形分含有量30質量%。
・パーマロイ粉末:真善社製、製品名;KDPB-3、平均粒子径;40μm、扁平度48。
・ステンレス鋼粉末:日本治金社製、製品名;FJSU-1、平均粒子径;30μm、扁平度;25。
・カーボンブラック粉末:デグサ社製、製品名;プリンテックスL、平均粒子径;23nm。
・グラファイト粉末:中越黒鉛社製、製品名;BF-5A、平均粒子径;5μm。」
表1
上記記載及び表1から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されている。
・金属粉末として扁平なもの、例えば扁平なパーマロイ粉末を用いることができる(【0009】、【0018】、【0019】、表1)。
・電波吸収性塗料組成物は、パーマロイ粉末、ウレタン樹脂、カーボンブラック粉末、グラファイト粉末、および、エタノールからなる(【0018】、表1(試料No.1、試料No.2))。
・電波吸収性塗料組成物には、沈降防止剤を適宜添加することができる(【0015】)。
したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「扁平なパーマロイ粉末、ウレタン樹脂、カーボンブラック粉末、グラファイト粉末、および、エタノールからなり、沈降防止剤を添加してなる電波吸収性塗料組成物。」
2 引用文献2の記載
引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0029】
アクリル系紫外線硬化型樹脂90重量部(固形分100% 商品名:ライトアクリレートDPE-6A 共栄社化学株式会社製)及び平均粒子径1.3μm(コールカウンター法)のシリカ10重量部(商品名AZ-204 東ソー・シリカ株式会社製)、分散剤0.3重量部(商品名:DISPERBYK102 ビックケミー・ジャパン株式会社製)、沈降防止剤0.2重量部(商品名:BYK411 ビックケミー・ジャパン株式会社製)を混合し、直径121mm、幅280mmの三本チルドロールにて分散し分散体(A)を得た。」
3 引用文献3の記載
引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0081】
(ウレア変性ポリアマイド化合物及びウレアウレタンから選ばれる少なくとも1種の化合物(C))
本発明の樹脂組成物に配合する(C)成分は、レオロジーコントロール剤として用いられる。上記(C)成分としては、BYK-430及びBYK-431(ビックケミー・ジャパン(株)製、商品名)等のウレア変性ポリアマイド化合物や、BYK-410、BYK-411、BYK-420及びBYK-425(ビックケミー・ジャパン(株)製、商品名)等のウレアウレタンが挙げられる。」
第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
1 パーマロイは軟磁性合金であるから、引用発明の「扁平なパーマロイ粉末」は、本願発明の「扁平状の軟磁性粒子」に相当する。また、引用発明の「電波吸収性塗料組成物」は軟磁性合金であるパーマロイ粉末を含んでいるので、本願発明の「軟磁性樹脂組成物」に相当するといえる。
2 引用発明の「ウレタン樹脂」は、本願発明の「樹脂成分」に相当する。
3 引用発明の「沈降防止剤」は、本願発明の「レオロジーコントロール剤」に相当する。
4 引用発明の「扁平なパーマロイ粉末、ウレタン樹脂、カーボンブラック粉末、グラファイト粉末、および、エタノールからなり、沈降防止剤を添加してなる電波吸収性塗料組成物」は、「扁平なパーマロイ粉末」、「ウレタン樹脂」および「沈降防止剤」を含んでいるので、上記1-3を踏まえると、本願発明の「扁平状の軟磁性粒子、樹脂成分、および、レオロジーコントロール剤を含有」する「軟磁性樹脂組成物」に相当する。
すると本願発明と引用発明とは、次の(一致点)及び(相違点)を有する。
(一致点)
「扁平状の軟磁性粒子、樹脂成分、および、レオロジーコントロール剤を含有する、軟磁性樹脂組成物。」
(相違点)
レオロジーコントロール剤が、本願発明は、「変性ウレア、および、ウレア変性ポリアマイドからなる群から選択される少なくとも1種を含有する」のに対して、引用発明は、そのような特定がない点。
第6 判断
1 上記相違点について検討する。
樹脂組成物に用いる沈降防止剤として、変性ウレア及びウレア変性ポリアマイドは周知であり(変性ウレアとして、BYK-410、BYK-411及びBYK-420(ビックケミー・ジャパン(株)製、商品名)を用いることが、例えば引用文献2(上記「第4 2 【0029】」)、引用文献3(上記「第4 3 【0081】」)に記載され、また、ウレア変性ポリアマイドとして、BYK-430及びBYK-431(ビックケミー・ジャパン(株)製、商品名)を用いることが、例えば引用文献3(上記「第4 3 【0081】」)に記載されている。)、
引用発明においても、沈降防止剤として周知の変性ウレアまたはウレア変性ポリアマイドを用い、上記相違点に係る本願発明の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 請求人の主張について
請求人は、令和1年9月27日付けの意見書において、
(1)「引用文献1と、引用文献2および引用文献3とは、技術分野が全く異なるため、当業者が、防眩ハードコート剤およびスクリーン印刷用の樹脂組成物に配合されるレオロジーコントロール剤を、電波吸収性塗料組成物に配合するレオロジーコントロール剤として、参照することはありません。」
(2)「軟磁性粒子を含む軟磁性樹脂組成物において、軟磁性粒子の沈降速度を制御し、軟磁性フィルムの比透磁率が向上させるのに適した沈降防止剤は開示されていません。そのため、当業者は、引用文献2および引用文献3に開示されたレオロジーコントロール剤を、電波吸収性塗料組成物である引用文献1の沈降防止剤として用いる動機付けはありません。」と主に主張している(「6.本発明と、引用文献1と、引用文献2および引用文献3との組み合わせとの対比」)。
上記主張について検討する。
上記主張(1)について
引用文献2及び3に例示したように、樹脂組成物に用いる沈降防止剤として、変性ウレア及びウレア変性ポリアマイドは周知である。
そうすると、引用発明の「電波吸収性塗料組成物」に、沈降防止剤を添加する際に、当業者が参照するのは、「沈降防止剤」の具体例(商品名など)に関する上記周知の技術事項であるから、上記主張(1)を採用することができない。
上記主張(2)について
上述のとおり、樹脂組成物に用いる沈降防止剤として、変性ウレア及びウレア変性ポリアマイドは周知である。
そして、樹脂組成物に含まれる粒子の材質が異なるとしても、引用発明に周知の沈降防止剤の適用を試みることは当業者にとって通常のことにすぎず、引用発明に上記周知の技術を適用する動機は認められる。
したがって、上記主張(2)を採用することができない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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