特許拒絶査定不服審判
2018-006234
発光半導体を相互接続するためのオーバーレイ回路構造
- 審判番号
- 2018-006234
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-151633
- 請求日
- 2018年05月08日
- 審決日
- 2019年04月22日
- 公報発行日
- 2019年06月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
- 【請求人代理人】荒川 聡志
- 【請求人代理人】小倉 博
- 【請求人代理人】田中 拓人
- 審判長/審判官
- 審判長 森 竜介
- 審判官 山村 浩
- 審判官 野村 伸雄
- 分類
- P18 .113-WY (H01L) / P18 .121-WY (H01L) / P18 .536-WY (H01L) / P18 .537-WY (H01L) / P18 .55 -WY (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-151633「発光半導体を相互接続するためのオーバーレイ回路構造」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月28日出願公開、特開2016-225640、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年9月28日に出願した特願2012-215555号の一部を平成28年8月2日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は次のとおりである。
平成29年 8月 8日付け:拒絶理由通知書
平成29年11月15日 :意見書・手続補正書
平成30年 1月12日付け:拒絶査定(同年1月16日送達)
平成30年 5月 8日 :審判請求書・手続補正書
平成31年 1月10日付け:当審拒絶理由通知書
平成31年 3月25日 :意見書・手続補正書
第2 本願発明の認定
本願の特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明(以下「本願発明1」~「本願発明3」といい、これらを総称して「本願発明」という。)は、平成31年3月25日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)後の特許請求の範囲の請求項1~3に記載されたとおりのものと認められるところ、本願発明1及び本願発明3は次のとおりである(下線は、本件補正による補正箇所として、請求人が付したもの。)。
なお、本願発明2は、本願発明1をさらに限定したものである。
[本願発明1]
「ヒートシンク(14)と、
前記ヒートシンク(14)上にマウントされ、複数のチップ(12)を含むチップ(12)のアレイであって、各チップ(12)は、受け取った電力に応答して熱を放出するように構成され、且つその裏面が接続パッド(28)を含む、チップ(12)のアレイと、
前記チップ(12)のアレイを前記ヒートシンク(14)に対応した形状で保持するために各チップ(12)と前記ヒートシンク(14)との間に設置された柔軟な相互配線構造(18)を含み、
前記柔軟な相互配線構造(18)が、
柔軟な誘電体膜(24)と、
前記柔軟な誘電体膜(24)を貫通して形成された金属製の第1の層であり、前記第1の層が前記複数のチップ(12)の前記接続パッド(28)同士の相互配線となり、これらを電気的に接続する、第1の層と、
前記複数のチップ(12)と前記ヒートシンク(14)を熱的に接続し、ヒートスプレッダとして機能する金属製の第2の層と、
を含み、
前記柔軟な誘電体膜(24)と前記第1の層が、前記複数のチップ(12)の間で分割されず、
前記第2の層が、前記複数のチップ(12)の間で分割される、
デバイス(10)。」
[本願発明3]
「ヒートシンク(14)上にマウントされる柔軟な相互配線構造(18)であって、
複数のチップ(12)を含むチップ(12)のアレイであって、各チップ(12)は、受け取った電力に応答して熱を放出するように構成され、且つその裏面が接続パッド(28)を含む、チップ(12)のアレイと、
柔軟な誘電体膜(24)と、
前記柔軟な誘電体膜(24)を貫通して形成された金属製の第1の層であり、前記第1の層が前記複数のチップ(12)の前記接続パッド(28)同士の相互配線となり、これらを電気的に接続する、第1の層と、
前記複数のチップ(12)を前記ヒートシンク(14)に熱的に接続し、ヒートスプレッダとして機能する金属製の第2の層と、
を含み、
前記柔軟な誘電体膜(24)と前記第1の層が、前記複数のチップ(12)の間で分割されず、
前記第2の層が、前記複数のチップ(12)の間で分割される、
前記柔軟な相互配線構造(18)が、チップ(12)のアレイを前記ヒートシンク(14)に対応した形状で保持する、柔軟な相互配線構造(18)。」
第3 原査定の拒絶の理由及び当審拒絶理由
上記各理由の要点は次のとおりである。
1 原査定の拒絶の理由
(1)本願の発明の詳細な説明の記載は当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(2)本願の請求項1~3に係る発明は明確でないから、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
2 当審拒絶理由
(1)本願の発明の詳細な説明の記載は当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(2)本願の請求項1~3に係る発明は明確でないから、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(3)本願の請求項1及び3に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(4)本願の請求項1~3に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2008-135694号公報
第4 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
1 引用文献1(特開2008-135694号公報)には、次の記載がある。
(1)「【特許請求の範囲】」、
「フリップチップ実装が可能な電極を有するLED素子と、
2層以上の金属層と前記金属層の層間に高分子樹脂を含む電気的絶縁層を有する配線基板と、
前記LED素子の熱が伝導される前記LED素子の金属膜層と、
前記配線基板の前記金属層のうち、前記LED素子搭載面にある第1の金属層は、給電用金属パターン、および前記給電用金属パターンとは電気的に絶縁されて形成された伝熱用金属パターンを有し、
前記給電用金属パターンと前記電極が電気的導通がとれる様にフリップチップ接続され、
前記伝熱用金属パターンと前記金属膜層との間が、電気的絶縁部を介してフリップチップ接続され、
前記伝熱用金属パターンと前記第1の金属層以外の前記金属層が、伝熱部により結合されていることを特徴とするLEDモジュール。」(【請求項1】)、
「前記金属膜層には伝熱用金属部が形成され、前記伝熱用金属部と前記電気的絶縁部を介して前記伝熱用金属パターンにフリップチップ接続されていることを特徴とする請求項1に記載のLEDモジュール。」(【請求項2】)、
「前記第1の金属層を覆うレジストに開口が形成され、前記電極及び前記伝熱用金属部が前記開口部で前記給電用金属パターン及び前記伝熱用金属パターンにそれぞれフリップチップ接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載のLEDモジュール。」(【請求項3】)、
「前記配線基板をテープ状あるいはシート状とし、その配線基板の幅方向または長さ方向、あるいはそれら両方向に任意の間隔で、前記LED素子が2個以上配置されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のLEDモジュール。」(【請求項4】)、
「前記伝熱用金属パターンに前記伝熱部により結合されている前記第1の金属層の反対側外層の前記金属層に、放熱物体が取り付けられていることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のLEDモジュール。」(【請求項10】)
(2)「【背景技術】」、
「このような用途にLEDを使用するにあたっては、次のような何点かの重要なポイントがあげられる。(1)光を効率よく取り出すこと、(2)LED素子の発熱を効率よく放熱させてLED素子の温度を低く保つこと、(3)LED素子の性能試験ができること、などである。」(【0004】)
(3)「以下に、本発明の実施形態について、更に図面を用いて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、3個のLED素子14を、テープ状ないしシート状の配線基板16に直列に配置して接続したLEDモジュールの一実施形態を示す俯瞰図である。LED素子14の封止材(透明樹脂やアンダーフィリング材)や反射板については必要に応じて付加可能であるが、図1には示していない。」(【0032】)、
「図2は、図1のA-A断面を示したものである。図2に示すように、LED素子14は、配線基板16側にフリップチップ実装が可能な二つの電極7,7と一つ以上の伝熱用金属部6を有する。図示例のLED素子14は、サファイヤ基板1上に、有機金属気相成長法などにより、まず、III族窒化物半導体などから成るn型半導体層2、発光層(活性層)3及びp型半導体層4を積層形成し、p型半導体層4、発光層3及びn型半導体層2の一部をエッチングにより除去する。次いで、蒸着などによりn型半導体層2上に電極(n電極)7を形成すると共に、蒸着などによりp型半導体層4上に金属膜層5を形成した後、金属膜層5上に電極(p電極)7及び伝熱用金属部6を形成する。金属膜層5は、電極(p電極)7及び伝熱用金属部6の下地層となると共に、発光層3の熱を受け取る集熱層・受熱層ともなっている。更に、金属膜層5は、発光層3からの光をサファイア基板1側に反射する反射層でもある。
このようにして得られたLED用基板をチップ化して、LED素子14を作製する。」(【0033】)、
「配線基板16は、電気的絶縁層である高分子樹脂層10と、高分子樹脂層10のLED素子14搭載側の面に形成された第1の金属層11と、高分子樹脂層10のもう一方の面に形成された第2の金属層12と、第1の金属層11側を覆うレジスト15とを有する。第1の金属層11は、電極7,7に電気的に接続される給電用金属パターン11aと、給電用金属パターン11aとは電気的に絶縁されて形成された伝熱用金属パターン11bとからなる。配線基板16は、フレキシブルなものでもリジッドなものでもよい。」(【0034】)、
「高分子樹脂層10は、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミドベンゾオキサゾール、エポキシ、アラミドなどの単独または混合の樹脂、或いは、これら単独または混合の樹脂にゴムやガラスクロスを複合させたものでも良く、テープ状ないしフィルム状に形成されている。」(【0035】)、
「第1の金属層11と第2の金属層12の材質は、銅が熱伝導と電気伝導の点で好適であるが、アルミニウムや銅の合金などを使っても構わない。
伝熱用金属パターン11bが銅である場合の層間の接続は、以下の方法が好適である。まず高分子樹脂層10として、例えばポリイミド系のフィルムを用意し、パターン形成にも使う複数のΦ1~2mm程度の認識穴(図示せず)をあけながら、層間接続用のΦ15~60μmのスルーホール10aをレーザー加工機であける。これをスパッタリング装置にかけて腐食防止層と銅スパッタ層をスルーホール10aの壁面も含めて全面に加工する。次に、これを銅めっき装置にかけて、全面に銅めっきを行う。この時スルーホール10aの半径以上の厚さの銅めっきを行えばスルーホール10aが銅めっきで充填(充填めっきビア13)されるが、余裕をみてさらに5μm程度厚くめっきするのもよい。この時、複数のΦ1~2mmの認識穴はめっき厚の2倍程度直径が小さくなるが、認識穴の中心座標は変わっていないので、この認識穴を使って、必要なパターンを露光、現像しエッチングして、第1の金属層11の給電用金属パターン11aおよび伝熱用金属パターン11b、さらには第2の金属層(伝熱ないし放熱用金属パターン)12を形成する。
セミアディティブ法で形成する場合は、上記銅スパッタのあと必要なセミアディティブ用のパターンを露光・現像して銅めっきでビアの充填とパターンの形成を行う。
いずれの場合にも露光用のレジストを塗るか貼るかし、パターン完成後はレジストを除去する。」(【0036】)、
「次に、感光性のレジスト15をインクの場合は印刷し、ドライフィルムの場合はラミネートして、露光、現像することによって所望のレジスト15の外形パターンおよびLED素子14の電極7,7と伝熱用金属部6をフリップチップ接続するための開口15aを形成する。特にフリップチップ接続するための開口15aは、Φ0.1mm以下になるケースも想定されるので、その場合は、レーザー加工を用いるのも良い。その後、給電用金属パターン11a、伝熱用金属パターン11b、および第2の金属層12にめっきを行う。めっきはPd下地のAgめっき、Ni下地の金めっきなどを必要に応じて選択する。マスキングを行えば、それぞれの金属パターン毎にめっきの有無や種類を異なるものとすることもできる。」(【0037】)、
「次に、伝熱用金属パターン11b上のフリップチップ接続用の開口15aに電気的絶縁部9を形成する。電気的絶縁部9は、例えばSiO2やDLCなどの電気絶縁膜をプラズマCVD法(化学的蒸着法)などによって、必要な絶縁が得られる厚さ(例えば1~5μm)に形成する。この電気的絶縁部9とLED素子14の伝熱用金属部6との接続に、はんだボールを用いる場合は、金などハンダが濡れる金属を電気的絶縁部9の最表面に形成するのが望ましい。」(【0038】)、
「次に、レジスト15の開口15aを利用して、はんだボールを載せリフローして、はんだボールを配線基板16に接続させる。その後、LED素子14の伝熱用金属部6及び電極7を開口15aのはんだボールに載せ、再度リフローすることで、フリップチップ接続層8を形成してLED素子14と配線基板16の電気的、機械的接続を完了させる。その後、LED素子14を樹脂封止してLEDモジュールが完成する。LED素子用の反射板が必要な場合は、LED素子14を配線基板16に搭載する前後で接着などの方法で取り付ける。」(【0039】)、
「LED素子14の発光層3で発生した熱は、主に、LED素子14の金属膜層5に伝えられ集められて、金属膜層5から伝熱用金属部6、フリップチップ接続層8および電気的絶縁部9を通じて伝熱用金属パターン11bに伝えられ、更に充填めっきビア13を通じて第2の金属層12へと伝えられ、第2の金属層12等から効率よく放熱される。」(【0040】)
(4)「(第2の実施形態)
図5は、LED素子14の放熱効率を高めるために、図1のLEDモジュールに更に放熱物体としてのヒートシンク17を設けた第2の実施形態を示す。ヒートシンク17は、放熱の機能さえあれば、機器側の筐体でもよい。図5に示すように、ヒートシンク17は、配線基板16の第2の金属層12に接着剤層19により接着されている。ヒートシンクの取付方法には、熱伝導のよい接着材が好適であるが、シリコングリースを介して押さえつける方法も押さえ付け用の治具(図示せず)を用いれば可能である。」(【0043】)
2 上記1の各記載によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、参考のために、図面番号と引用発明の認定に用いた段落番号等の記載を括弧内に示してある。
「フリップチップ実装が可能な電極(7,7)を有するLED素子(14)と、
2層以上の金属層(11,12)と前記金属層の層間に高分子樹脂を含む電気的絶縁層(10)を有する配線基板(16)と、
前記LED素子の熱が伝導される前記LED素子の金属膜層(5)と、
前記配線基板の前記金属層(11,12)のうち、前記LED素子搭載面にある第1の金属層(11)は、給電用金属パターン(11a,11a)、および前記給電用金属パターンとは電気的に絶縁されて形成された伝熱用金属パターン(11b)を有し、
前記給電用金属パターン(11a,11a)と前記電極(7,7)が電気的導通がとれる様にフリップチップ接続層(8,8)を形成してフリップチップ接続され、
前記伝熱用金属パターン(11b)と前記金属膜層(5)との間が、電気的絶縁部(9)を介してフリップチップ接続層(8)を形成してフリップチップ接続され、
前記伝熱用金属パターン(11b)と前記第1の金属層(11)以外の前記金属層(12)が、伝熱部(13)により結合されているLEDモジュールであって、(【請求項1】、【0039】)
前記金属膜層(5)には伝熱用金属部(6)が形成され、前記伝熱用金属部と前記電気的絶縁部(9)を介して前記伝熱用金属パターン(11b)にフリップチップ接続されており、(【請求項2】)
前記第1の金属層(11)を覆うレジスト(15)に開口(15a)が形成され、前記電極(7,7)及び前記伝熱用金属部(6)が前記開口部で前記給電用金属パターン(11a)及び前記伝熱用金属パターン(11b)にそれぞれフリップチップ接続層(8,8,8)を形成してフリップチップ接続されており、(【請求項3】、【0039】)
前記配線基板(16)をテープ状あるいはシート状とし、その配線基板の長さ方向に任意の間隔で、前記LED素子(14)が2個以上配置されており、(【請求項4】)
前記伝熱用金属パターン(11b)に前記伝熱部(13)により結合されている前記第1の金属層(11)の反対側外層の前記金属層(12)に、放熱物体(17)が取り付けられており、(【請求項10】)
前記配線基板(16)は、フレキシブルである、(【0034】)
LEDモジュール。」
第5 原査定の拒絶の理由に対する判断
1 原査定の拒絶の理由は、要するに、本願発明の「チップ」が動作しないという認定を前提としたものである。なお、本願発明の「チップ」は、典型的には、「LESチップ」であり、「LES」とは、発光半導体である(【0013】)。
そして、上記認定は、次の事実を根拠としたものである。
(i) 本件補正前の図6では、接続パッド28の位置が、金属相互配線構造22の第1の層と金属相互配線構造22の第2の層とを電気的に接触させる位置であること。そのため、チップ内を電流が流れない。
(ii) 本件補正前の【0023】では、「図6の実施形態では、金属相互配線22は、ヒートシンク14との電気的な相互配線として働き・・・」と記載されていること。そのため、LESチップとヒートシンク14とが電気的に接続されていると解され、そうであるならば、チップ内を電流が流れない。
[本件補正前の図6]
しかるに、本件補正により、特許請求の範囲、発明の詳細な説明及び図面が補正されたところ、このような本件補正後の各記載であっても、原査定の上記認定を維持できるかについて検討する。
2 本件補正後の特許請求の範囲、発明の詳細な説明及び図面には、次の記載がある(下線は、補正箇所である。)。
(1)本件補正後の特許請求の範囲
本願発明1及び本願発明3のとおりである。
(2)本件補正後の発明の詳細な説明(下線は補正箇所。)
「図6をここで参照すると、LESデバイス10のさらなる実施形態を示し、LESチップ12は表面上ではなく裏側/裏面上にコンタクトパッド28を含む。かかる実施形態では、柔軟な相互配線構造18を、LESチップ12のアレイの裏面に沿って形成し、LESチップ12とヒートシンク14との間に設置する。柔軟な相互配線構造18が、柔軟な膜24上へと形成しパターニングした金属構造22、23を含み、金属構造の第1の層22が相互配線としてLESチップ12上の接続パッド28まで膜24を貫通して延びるように膜24中に形成したビア26を通って延びる。図6の実施形態では、金属構造の第2の層23は、ヒートシンク14と接続し、LESチップ12とヒートシンク14との間の「ヒートスプレッダ」(すなわち、熱再配分層)としてやはり働く。図6に示したように、二重層POL相互配線構造18を形成するために、第2の柔軟な誘電体膜層またははんだマスクなどの追加層36を相互配線構造18に追加する。LESチップ12への保護を行うためにヅシリコン封止剤38を、LESチップ12の発光表面上に設置する。」(【0023】)
(3)本件補正後の図6
本件補正前の図6と比べて、「接続パッド28」の位置が変更されるとともに、「金属相互配線22」の一部が「金属構造23」に変更された。
3(1)上記2の各記載事項によれば、次のとおり、LESチップ12は動作すると認められる。
ア 図6については、本件補正後の図6では、左右のLESチップ12同士が、相互配線としての第1の層22により、直列接続されていることが認められる。そして、金属構造の第2の層23は、本件補正前の図6とは異なり、接続パッド28に電気的に接触しておらず、よって、第1の層22にも電気的に接触していない。
そのため、第2の層23の存在が、LESチップ12内に電流が流れないことにはつながらない。
イ 【0023】については、本件補正前の「金属相互配線22は、ヒートシンク14との電気的な相互配線として働き」との記載が、「金属構造の第2の層23は、ヒートシンク14と接続し」と補正されたから、第2の層23が「相互配線」を構成するものとは特定されないこととなった。
そのため、技術常識に照らせば、第2の層23が、LESチップ12とヒートシンク14とを電気的に接続するものとは解されない。よって、第2の層23の存在が、LESチップ12内に電流が流れないことにはつながらない。
ウ 本件補正前の請求項1及び請求項3には、「金属相互配線構造(22)の第2の層」との記載があったところ、この記載も「相互配線」との文言を含んでいたから、本件補正前の【0023】の上記記載(上記イ)と同様の問題があったところである。
しかしながら、本件補正により、「金属相互配線構造(22)の第2の層」との記載は「金属製の第2の層」と補正されたから、もはや、第2の層が「相互配線」を構成するものとは特定されないこととなった。そのため、上記イと同様の議論が成り立つ。
(2)そして、本件補正は、以下のとおり、新規事項を追加するものではない。
ア まず、当業者であれば、次の記載、すなわち、
当初の図6における接続パッド28の位置(以下「当初図6記載」という。)と、
当初明細書の【0023】の「金属相互配線22は、ヒートシンク14との電気的な相互配線として働き」という記載(以下「当初第1記載」という。)と、
当初請求項1及び請求項3の「金属配線構造(22)の第2の層」という記載と、
には、いずれも誤りがあることを認識できると認められる。
(ア)当初図6記載から検討する。
当初明細書の【0023】には、「柔軟な相互配線構造18が、柔軟な膜24上へと形成しパターニングした金属相互配線22を含み、相互配線がLESチップ12上の接続パッド28まで膜24を貫通して延びるように膜24中に形成したビア26を通って延びる。」との記載(以下「当初第2記載」という。)があったところ、当初第2記載によれば、接続パッド28の位置は、金属相互配線22(本件補正後でいえば、第1の層22に相当する部位である。)とLESチップ12とによって挟まれる位置であると解するのが自然である。そして、接続パッド28の位置をそのように解すれば、LESチップ12は動作する。
しかるところ、当初図6記載では、接続パッド28の位置はそうはなっていなかったのであり、しかも、接続パッド28と当該金属相互配線22との接触面積が極めて小さくなってしまっており、さらに、LESチップ12も動作しなくなっていた。このように、当初図6記載は、当初第2記載に沿わない上に、技術常識に反することが明らかである。
したがって、当業者は、当初図6記載に誤りがあることを認識できるというべきである。
(イ)次に、当初第1記載(「金属相互配線22は、ヒートシンク14との電気的な相互配線として働き」)について検討すると、仮にこの記載内容のとおりだとすると、LESチップ12が動作しなくなってしまうことから、やはり、当業者は、当初第1記載にも誤りがあることを認識できる。
(ウ)当初請求項1及び請求項3の「金属相互配線構造(22)の第2の層」との記載については、上記(イ)と同様の議論が成り立つ。
イ そして、上記各記載に誤りがあることを認識した当業者であれば、その誤りを正した内容が本件補正後のようになることを、たやすく理解できる。
(ア)すなわち、接続パッド28の位置が本件補正後の図6のようになることは、上記ア(ア)のとおり、当初第2記載にも沿うことやその技術的な合理性にも照らして、明らかである。
(イ)当初第1記載(「金属相互配線22は、ヒートシンク14との電気的な相互配線として働き」)については、まず、当業者は、それが上記ア(ア)のとおり誤りであることを認識しつつ、その後につづく記載である「LESチップ12とヒートシンク14との間の「ヒートスプレッダ」(すなわち、熱配分層)としてやはり働く。」との記載を理解しようとするといえる。そうすると、当初第1記載に接した当業者は、当初第1記載の「金属相互配線22」(本件補正後の第2の層23に当たる。)の役割が、「ヒートスプレッダ」であれば足り、「相互配線」としては、技術常識に反する以上、不必要であると理解できる。とすれば、当業者は、当初第1記載が、本件補正後の「金属構造の第2の層23は、ヒートシンク14と接続し」を意味するものと理解できるというべきである(なお、本件補正後の当該記載は、当初第1記載と比べて、形式的には上位概念となっているけれども、上記(1)イでも説示したとおり、技術常識に照らせば、金属構造の第2の層23が、金属構造の第1の層22から電気的に絶縁されていることが、明らかに理解できる。)。
(ウ)当初請求項1及び請求項3の「金属相互配線構造(22)の第2の層」との記載については、当初第1記載と同様の議論が成り立つ。
ウ 以上によれば、本件補正は、当初明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。本件補正は、新規事項を追加しない。
4 上記3のとおりであるから、本件補正後の特許請求の範囲、発明の詳細な説明及び図面からは、原査定の上記認定を維持することができない。
よって、その認定を前提とする原査定の拒絶の理由も維持できない。
なお、原査定は、第2の層が接続パッド(28)に電気的に接続しない旨を追加した補正を新規事項追加であると付言したところ、当審は、かかる付言が必ずしも相当ではないと判断したため、本件の審理をただちに終結するのではなく、当審拒絶理由を通知することを選択した。
第6 当審拒絶理由に対する判断
1 記載不備について
(1)実施可能要件違反の拒絶理由は、原査定の拒絶の理由と同様に、本願発明が実施できないという判断に由来するものであるけれども、本件補正により解消した。
(2)明確性要件違反の拒絶理由は、単なる誤記によるものであり、本件補正により解消した。
2 引用発明に基づく新規性・進歩性欠如について
(1)本願発明1について
ア 本願発明1と引用発明との対比
(ア)本願発明1の「ヒートシンク(14)と、」との特定事項について
a 引用発明の「放熱物体(17)」は、本願発明1の「ヒートシンク」に相当する。
b よって、引用発明は、本願発明1の「ヒートシンク(14)と、」との特定事項を備える。
(イ)本願発明1の「前記ヒートシンク(14)上にマウントされ、複数のチップ(12)を含むチップ(12)のアレイであって、各チップ(12)は、受け取った電力に応答して熱を放出するように構成され、且つその裏面が接続パッド(28)を含む、チップ(12)のアレイと、」との特定事項について
a 引用発明の「LED素子(14)」は、本願発明1の「チップ」に相当する。
b 引用発明の「LED素子(14)」は「2個以上」存在するから、引用発明は、本願発明1の「複数のチップ(12)を含むチップ(12)のアレイ」を備える。
c 引用発明の「2個以上」の「LED素子(14)」は、「配線基板(16)」の「前記LED素子搭載面にある第1の金属層(11)」上に「配置」されているところ、「前記第1の金属層(11)の反対側外層の前記金属層(12)に、放熱物体(17)が取り付けられて」いるから、当該「LED素子(14)」は、「放熱物体(17)」上にマウントされているといえる。
d 引用発明の「電極(7,7)」は、「LED素子(14)」に設けられた「フリップチップ実装が可能な電極(7,7)」であるから、本願発明1の「接続パッド(28)」とは、「接続部」である点で一致する。そして、引用発明は、「その裏面が接続部を含む、チップのアレイ」を備えるといえる。
e よって、本願発明1と引用発明とは、「前記ヒートシンク(14)上にマウントされ、複数のチップ(12)を含むチップ(12)のアレイであって、各チップ(12)は、受け取った電力に応答して熱を放出するように構成され、且つその裏面が接続部を含む、チップ(12)のアレイと、」との特定事項を備える点で一致する。
しかしながら、引用発明の「接続部」に当たる「電極(7,7)」が、本願発明1でいう「接続パッド」といえるのかは不明である。
(ウ)本願発明1の「前記チップ(12)のアレイを前記ヒートシンク(14)に対応した形状で保持するために各チップ(12)と前記ヒートシンク(14)との間に設置された柔軟な相互配線構造(18)を含み、」との特定事項について
a 引用発明の「フレキシブルである」「配線基板(16)」は、本願発明1の「柔軟な相互配線構造」に相当する。
b 上記(イ)に照らせば、引用発明の「配線基板(16)」は、本願発明1でいう「各チップ(12)と前記ヒートシンク(14)との間に設置された」ものといえる。
c 引用発明の「配線基板(16)」は、「フレキシブル」であるから、本願発明1でいう「前記チップ(12)のアレイを前記ヒートシンク(14)に対応した形状で保持するため」のものであるといえる。
d よって、引用発明は、本願発明1の「前記チップ(12)のアレイを前記ヒートシンク(14)に対応した形状で保持するために各チップ(12)と前記ヒートシンク(14)との間に設置された柔軟な相互配線構造(18)を含み、」との特定事項を備える。
(エ)本願発明1の「前記柔軟な相互配線構造(18)が、・・・・を含み、」との特定事項について
a 本願発明1の「柔軟な誘電体膜(24)と、」との特定事項について
(a)引用発明の「レジスト(15)」は、本願発明1の「誘電体膜」に相当するといえる。
(b)引用発明の「配線基板(16)」は「フレキシブル」であり、「レジスト(15)」は「配線基板(16)」に含まれる構造であると解されるから、引用発明の「レジスト(15)」も、「フレキシブル」であるといえるのであり、よって、本願発明1でいう「柔軟」であるといえる。
(c)よって、引用発明は、本願発明1の「柔軟な誘電体膜(24)と、」との特定事項を備える。
b 本願発明1の「前記柔軟な誘電体膜(24)を貫通して形成された金属製の第1の層であり、前記第1の層が前記複数のチップ(12)の前記接続パッド(28)同士の相互配線となり、これらを電気的に接続する、第1の層と、」との特定事項について
(a)引用発明は、「前記給電用金属パターン(11a,11a)と前記電極(7,7)が電気的導通がとれる様にフリップチップ接続層(8,8)を形成してフリップチップ接続され」るものであり、さらに、「配線基板の長さ方向に任意の間隔で、前記LED素子(14)が2個以上配置されて」いるのであるから、引用発明では、「給電用金属パターン(11a)」と「フリップチップ接続層(8)」とを併せた構成が、本願発明1の「金属製の第1の層」に相当するとともに、「前記複数のチップの前記」接続部「同士の相互配線」となっているものと解される。
(b)引用発明では、「前記第1の金属層(11)を覆うレジスト(15)に開口(15a)が形成され、前記電極(7,7)」「が前記開口部で前記給電用金属パターン(11a)」「に」「フリップチップ接続層」(8)「を形成してフリップチップ接続されて」いるから、上記aを踏まえると、引用発明の「給電用金属パターン(11a)」と「フリップチップ接続層(8)」とを併せた構成は、本願発明1でいう「前記柔軟な誘電体膜(24)を貫通して形成された」ものといえる。
(c)よって、本願発明1と引用発明とは、「前記柔軟な誘電体膜(24)を貫通して形成された金属製の第1の層であり、前記第1の層が前記複数のチップ(12)の前記接続部同士の相互配線となり、これらを電気的に接続する、第1の層と、」との特定事項を備える点で一致する。
しかしながら、上記(イ)eと同様に、引用発明の「接続部」に当たる「電極(7,7)」が、本願発明1でいう「接続パッド」といえるのかは不明である。
c 本願発明1の「前記複数のチップ(12)と前記ヒートシンク(14)を熱的に接続し、ヒートスプレッダとして機能する金属製の第2の層と、」との特定事項について
(a)まず、本願発明1の「金属製の第2の層」は、「前記複数のチップ(12)と前記ヒートシンク(14)を熱的に接続し、ヒートスプレッダとして機能する」ものである。よって、引用発明における本願発明1の「金属製の第2の層」に相当する構成が何であるのかを検討するに際しては、引用発明のLED素子(14)から放熱物体(17)までの放熱ルートに属する構成から、これを選ぶ必要がある。
しかるに、引用発明における上記放熱ルートは、引用発明の構成からみて、LED素子(14)からの発熱が、金属膜層(5)、伝熱用金属部(6)、フリップチップ接続層(8)、電気的絶縁部(9)、伝熱用金属パターン(11b)及び第2の金属層(12)を通じて、放熱物体(17)に伝わるというものであると認められる。
よって、引用発明の構成のうち、「金属膜層(5)」、「伝熱用金属部(6)」、「フリップチップ接続層(8)」、「伝熱用金属パターン(11b)」及び「第2の金属層(12)」が、本願発明1の「金属製の第2の層」に相当する候補となる。
(b)次に、本願発明1の「金属製の第2の層」は「柔軟な相互配線構造」に属するものでもある。よって、引用発明における本願発明1の「金属製の第2の層」に相当する構成が何であるのかを検討するに際しては、上記(a)に加えて、引用発明における(「柔軟な相互配線構造」に相当するところの)「フレキシブルである」「配線基板(16)」に属する構成のなかから、これを選ぶ必要がある。
そして、引用発明の「「フレキシブルである」「配線基板(16)」には、引用発明の構成からみて、「伝熱用金属パターン(11b)」と「第2の金属層(12)」とからなる構成が含まれる。
(c)上記(a)及び(b)によれば、引用発明の「伝熱用金属パターン(11b)」と「第2の金属層(12)」とからなる構成が、本願発明1の「金属製の第2の層」に相当するということができる。そして、当然ながら、当該構成は、本願発明1でいう「前記複数のチップ(12)と前記ヒートシンク(14)を熱的に接続し、ヒートスプレッダとして機能する」ものでもある。
(d)よって、引用発明は、本願発明1の「前記複数のチップ(12)と前記ヒートシンク(14)を熱的に接続し、ヒートスプレッダとして機能する金属製の第2の層と、」との特定事項を備える。
d 上記a~cによれば、本願発明1と引用発明とは、
「前記柔軟な相互配線構造(18)が、
柔軟な誘電体膜(24)と、
前記柔軟な誘電体膜(24)を貫通して形成された金属製の第1の層であり、前記第1の層が前記複数のチップ(12)の前記接続部同士の相互配線となり、これらを電気的に接続する、第1の層と、
前記複数のチップ(12)と前記ヒートシンク(14)を熱的に接続し、ヒートスプレッダとして機能する金属製の第2の層と、
を含」むとの特定事項を備える点で一致するが、引用発明の「接続部」に当たる「電極(7,7)」が、本願発明1でいう「接続パッド」といえるのかは不明である。
(オ)本願発明1の「前記柔軟な誘電体膜(24)と前記第1の層が、前記複数のチップ(12)の間で分割されず、」との特定事項について
上記(エ)b(a)によれば、引用発明は、本願発明1の「前記柔軟な誘電体膜(24)と前記第1の層が、前記複数のチップ(12)の間で分割されず、」との特定事項を備えるといえる。
(カ)本願発明1の「前記第2の層が、前記複数のチップ(12)の間で分割される、」との特定事項について
引用発明は、上記特定事項を備えない。
(キ)本願発明1の「デバイス(10)」との特定事項について
引用発明の「LEDモジュール」は、本願発明1の「デバイス」に相当する。
イ 上記アによれば、本願発明1と引用発明とは、
「ヒートシンク(14)と、
前記ヒートシンク(14)上にマウントされ、複数のチップ(12)を含むチップ(12)のアレイであって、各チップ(12)は、受け取った電力に応答して熱を放出するように構成され、且つその裏面が接続部を含む、チップ(12)のアレイと、
前記チップ(12)のアレイを前記ヒートシンク(14)に対応した形状で保持するために各チップ(12)と前記ヒートシンク(14)との間に設置された柔軟な相互配線構造(18)を含み、
前記柔軟な相互配線構造(18)が、
柔軟な誘電体膜(24)と、
前記柔軟な誘電体膜(24)を貫通して形成された金属製の第1の層であり、前記第1の層が前記複数のチップ(12)の前記接続部同士の相互配線となり、これらを電気的に接続する、第1の層と、
前記複数のチップ(12)と前記ヒートシンク(14)を熱的に接続し、ヒートスプレッダとして機能する金属製の第2の層と、
を含み、
前記柔軟な誘電体膜(24)と前記第1の層が、前記複数のチップ(12)の間で分割されない、
デバイス(10)。」である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
「接続部」について、本願発明1では「接続パッド」であるのに対し、引用発明ではそうであるのか不明である点。
[相違点2]
本願発明1では、「前記第2の層が、前記複数のチップ(12)の間で分割される」のに対し、引用発明では、そうなっていない点。
ウ 相違点2の判断
事案にかんがみ、相違点2から判断する。
引用発明では、「第2の金属層(12)」が、「高分子樹脂を含む電気的絶縁層(10)」の一方の面の全体に設けられていると解される。なぜならば、引用発明は、2個以上の「LED素子をその配線基板の長さ方向に配置したものであるとともに、「第2の金属層(12)」は、それに放熱物体(17)が取り付けられるものであるところ、「第2の金属層(12)」は、放熱物体への熱伝達の観点から設けられているのであるから、熱伝達効率上、「高分子樹脂を含む電気的絶縁層(10)」に設けられている場所が一方の面の全体であることが、最も自然であるからである。そして、このことは、引用文献1の【0036】に、「・・・高分子樹脂層10・・・をスパッタリング装置にかけて・・・銅スパッタ層を・・・全面に加工する。次に、これを銅めっき装置にかけて、全面に銅めっきを行う。」と記載されており、この銅めっきされたものが「第2の金属層」になると解されることからも裏付けられる。
しかるところ、引用発明において、そのような「第2の金属層(12)」をあえて(複数のチップの間で)分割しようとする動機はなく、むしろ、そのような分割は、熱伝達効率を下げるものであるから、阻害されるというべきである。さらにいえば、本願発明1は、いわば、熱伝達効率を犠牲にしつつ、相互配線構造の柔軟性をより向上させたものと理解することができるけれども、引用発明は、そのような技術思想を有さない。
したがって、当業者が、引用発明から出発して、相違点2の構成に至ることはない。
エ 小括
このような次第で、本願発明1は、引用発明ではないし、また、相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本願発明2について
本願発明2は、本願発明1をさらに限定したものであるから、上記(1)と同様の理由で、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本願発明3について
本願発明3は、「柔軟な相互配線構造」に係る発明である点で、本願発明1とは異なるけれども、相違点2に係る構成をも含むものである。
よって、本願発明3と引用発明との相違点も、相違点2を含むから、本願発明3は、上記(1)と同様の理由で、引用発明ではないし、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)引用発明に基づく新規性・進歩性欠如についての小括
したがって、この拒絶理由により、本願を拒絶することはできない。
3 当審拒絶理由に対する判断
よって、当審拒絶理由を維持することはできない。
第7 むすび
このように、原査定の拒絶の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2018-006234