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特許拒絶査定不服審判

2018-002009

光学用部材およびその製造方法

審判番号
2018-002009
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2013-130772外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年02月13日
審決日
2018年11月30日
公報発行日
2019年01月25日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2013-130772「光学用部材およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月 8日出願公開、特開2015-  4871、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成25年6月21日の出願であって、その手続等の経緯は、概略、以下のとおりである。 平成29年 2月10日付け:拒絶理由通知書 平成29年 4月21日付け:意見書、手続補正書 平成29年 5月22日付け:拒絶理由通知書 平成29年 7月28日付け:意見書、手続補正書 平成29年10月31日付け:補正の却下の決定(平成29年7月28日にした手続補正の却下)、拒絶査定(以下「原査定」という。) 平成30年 2月13日付け:審判請求書、手続補正書 第2 原査定の概要 原査定の拒絶の理由は、概略、本願の請求項1-8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2005-275372号公報 引用文献2:特開2007-183366号公報 引用文献3:特開2011-251890号公報 第3 本願発明 本願の請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、平成30年2月13日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定されるとおりの、以下の発明である。 「 【請求項1】 基材表面に積層体が形成された光学用部材において、 前記基材は、屈折率ndが1.48以上1.71以下であり、 前記積層体が少なくとも酸化アルミニウムを主成分とする突起および前記突起を支持する支持層を有し、 前記突起を支持する支持層が下記一般式(1)で表わされる繰り返し構造を有する酸化アルミニウム膜からなることを特徴とする光学用部材。 【化1】 (式中、R1、R2は炭素数1から10のアルキル基、フッ化アルキル基、フェニル基またはアミノアルキル基を示し、それらの基は置換基を有していても有していなくてもよい。mおよびnは1以上の整数である。) 【請求項2】 前記突起を支持する支持層のX線分光光度分析(XPS)による深さ方向の分析によりAlとSiが検出され、前記突起を支持する支持層において検出されたAl含有量(A)に対するSiピーク中のSi-C基の含有量(S)の比[(S/A)×100]が0.01%以上10%以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学用部材。 【請求項3】 前記酸化アルミニウムを主成分とする突起の微細構造がナノ構造であって、酸化アルミニウム固有の屈折率より低い見かけの屈折率が積層体の厚さ方向に変化していることを特徴とする請求項1または2に記載の光学用部材。 【請求項4】 前記積層体は、前記基材と前記支持層との間に膜を有することを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項に記載の光学用部材。 【請求項5】 光学用部材の製造方法であって、(a)基材の少なくとも一方の面上にアルミニウムアルコキシドまたはアルミニウム塩化合物を加水分解して得られた重縮合物、α位に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、パーフルオロアルキル基、アリル基、またはアリール基を持つβジケトン化合物、溶媒、及び有機シラン化合物を含有する酸化アルミニウム前駆体ゾルを供給する工程、(b)前記基材を200℃より低い温度で乾燥および/または焼成を行うことにより酸化アルミニウム膜を形成する工程、(c)前記酸化アルミニウム膜を60℃以上100℃以下の温水と接触させて、酸化アルミニウムを主成分とする突起および前記突起を支持する、下記一般式(1)で表わされる繰り返し構造を有する酸化アルミニウム膜を形成する工程を有することを特徴とする光学用部材の製造方法。 【化2】 (式中、R1、R2は炭素数1から10のアルキル基、フッ化アルキル基、フェニル基またはアミノアルキル基を示し、それらの基は置換基を有していても有していなくてもよい。mおよびnは1以上の整数である。) 【請求項6】 光学用部材の製造方法であって、(a)基材の少なくとも一方の面上に、無機物あるいは有機物の膜を形成する工程、(b)前記膜上に、アルミニウムアルコキシドまたはアルミニウム塩化合物を加水分解して得られた重縮合物、α位に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、パーフルオロアルキル基、アリル基、またはアリール基を持つβジケトン化合物、溶媒、及び有機シラン化合物を含有する酸化アルミニウム前駆体ゾルを供給する工程、(c)前記基材を200℃より低い温度で乾燥および/または焼成を行うことにより酸化アルミニウム膜を形成する工程、(d)前記酸化アルミニウム膜を60℃以上100℃以下の温水と接触させて、酸化アルミニウムを主成分とする突起および前記突起を支持する、下記一般式(1)で表わされる繰り返し構造を有する酸化アルミニウム膜を形成する工程を有することを特徴とする光学用部材の製造方法。 【化3】 (式中、R1、R2は炭素数1から10のアルキル基、フッ化アルキル基、フェニル基またはアミノアルキル基を示し、それらの基は置換基を有していても有していなくてもよい。mおよびnは1以上の整数である。) 【請求項7】 前記酸化アルミニウム前駆体ゾルに含まれる有機シラン化合物が、R1-Si(OR3)3(R1は炭素数1から10のアルキル基、フッ化アルキル基、フェニル基またはアミノアルキル基を示し、それらの基は置換基を有していても有していなくてもよい。R3は水素原子、メチル基またはエチル基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)で表わされる化合物であることを特徴とする請求項5または6に記載の光学用部材の製造方法。」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-275372号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。 (1)「【技術分野】 【0001】 本発明は、表面に微細な凹凸を有する膜およびその製造方法に関する。特に、表面に微細な凹凸を有する反射防止膜およびそれを用いた光学部材に関する。 ・・・(中略)・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 上述したように、従来の技術では、表面に微細な凹凸構造を有する膜の凹凸サイズを制御できる範囲が十分であるとは言い難く、反射防止性能の観点から十分な性能が発現されているとは言い難い。 【0008】 そこで、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、表面の微小な凹凸構造を幅広く制御可能な膜およびその製造方法を提供し、さらに任意の透明基材に対応でき、基材と凹凸間界面における反射を低減した、可視光に対して優れた反射防止効果を示す透明反射防止膜及びそれを用いた光学部材を提供することである。」 (2)「【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明は次に記載する事項により特定することができる。 すなわち、本発明は、アルミナを主成分とする微細な凹凸と、前記微細な凹凸を支持する薄膜層とを有する膜であって、前記薄膜層はジルコニア、シリカ、チタニア、酸化亜鉛から選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする膜である。 ・・・(中略)・・・ 【0018】 本発明の膜構造は、ジルコニア、シリカ、チタニア、酸化亜鉛から選ばれた少なくとも1種の成分を有する透明薄膜層の表面上にアルミナを主成分とする微細な凹凸を設けており、透明薄膜層の成分の含有量を制御することができることから、透明薄膜層は微細凹凸と基材の中間的な屈折率を有し、微細凹凸組織と基材間の屈折率を連続的に変化させることを可能とし基材との界面の反射も極限にまで無くすことができる。しかもその微細凹凸サイズは幅広く制御できるため、空気と界面における反射が有効に低減され、本発明に係る光学部材は先行技術を上回る有意義な効果を達成することを可能にした。 ・・・(中略)・・・ 【0031】 本発明の膜および反射防止膜は、・・・(中略)・・・アルミナを含むゾル-ゲルコーティング液を塗布して形成したゲル膜を温水で処理させて、アルミナ板状結晶を成長させる方法が好ましい。 【0032】 ゲル膜の原料としては、ジルコニウム、シリコン、チタニウム、亜鉛の各々の化合物の少なくとも1種の化合物とアルミニウム化合物を用いる。ジルコニア、シリカ、チタニア、酸化亜鉛、アルミナの原料として、各々の金属アルコキシドや塩化物や硝酸塩などの塩化合物を用いることができる。製膜性の観点から、特にジルコニア、シリカ、チタニア原料としては金属アルコキシドを用いるのが好ましい。 ・・・(中略)・・・ 【0034】 シリコンアルコキシドとしては、一般式Si(OR)4 で表される各種のものを使用し、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等の同一または別異の低級アルキル基が挙げられる。 ・・・(中略)・・・ 【0042】 例えば、シリコンアルコキシドを含むアルミナ多成分系塗布液を調製する場合、シリコンアルコキシドを含む溶液とアルミニウム化合物を含む溶液を混合する前、あらかじめ、シリコンアルコキシド溶液には水や触媒を添加し、アルコキシル基を部分的に加水分解させておくことが好ましい。ジルコニウムまたはチタニウムのアルコキシドまたは亜鉛化合物を含むアルミナ多成分系塗布液を調製する場合は、ジルコニウムまたはチタニウムのアルコキシドまたは亜鉛化合物を含む溶液と、アルミニウム化合物を含む溶液を混合した後に、水や触媒を添加することが好ましい。 【0043】 触媒としては、たとえば、硝酸、塩酸、硫酸、燐酸、酢酸、アンモニア等を例示することができる。 ・・・(中略)・・・ 【0050】 本発明の光学部材で使用される基材としては、ガラス、プラスチック基材、ガラスミラー、プラスチックミラー等が挙げられる。プラスチック基材の代表的なものとしては、ポリエステル、トリアセチルセルロース、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂のフィルムや成形品;不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、架橋型ポリウレタン、架橋型のアクリル樹脂、架橋型の飽和ポリエステル樹脂など各種の熱硬化性樹脂から得られる架橋フィルムや架橋した成形品等が挙げられる。ガラスの具体例として、無アルカリガラス、アルミナケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラスを挙げることができる。」 (3)「【0057】 実施例1 大きさ約100mm×100mm、厚さ約2mmのクリア・フロートガラス基板(組成はソーダライムシリケート系)をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し乾燥した後、コーティング用ガラス基板とした。 【0058】 アルミニウム-sec-ブトキシド〔Al(O-sec-Bu)3 〕を2-プロパノール〔IPA〕中に溶解させ、安定化剤としてアセト酢酸エチル〔EAcAc〕を添加し、約3時間室温で攪拌することにより、Al2 O3ゾル溶液を調製した。ここで溶液のモル比は、Al(O-sec-Bu) 3:IPA:EAcAc=1:20:1の割合とした。 【0059】 一方、ジルコニウム-iso-プロポキシド〔Zr(O-iso-Pr)4 〕もIPA中に溶解させ、EAcAcを添加し、約3時間室温で攪拌することにより、ZrO2 ゾル溶液を調製した。溶液のモル比は、Zr(O-iso-Pr)4 :IPA:EAcAc=1:20:1の割合とした。 【0060】 このZrO2 ゾル溶液を前記Al2 O3 ゾル溶液中に、重量比で、Al2 O3 :ZrO2 =0.7:0.3となるように添加し、約30分間攪拌した後、0.01M希塩酸〔HClaq.〕を添加し、約3時間室温で攪拌した。以上のようにして、Al2 O3 -ZrO2 ゾルである塗布液を調製した。ここで、HClaq.の添加量はモル比でAl(Osec-Bu)3 とZr(O-iso-Pr)4 の各々2倍量の合計量とした。 【0061】 次いで、前記被覆用ガラス基板を、該塗布液中に浸漬した後、ディッピング法(3mm/秒の引き上げ速度、20℃、56%R.H.)で、ガラス基板の表面に塗布膜を形成した。乾燥後、100℃で1時間熱処理し、透明なアモルファスAl2 O3 -ZrO2 系ゲル膜を得た。次に、100℃の熱水中に30分間浸漬したのち、100℃で10分間乾燥させた。 【0062】 得られた膜表面の走査型電子顕微鏡(FE-SEM)観察、走査型プローブ顕微鏡(SPM)観測を行った。FE-SEM像を図1に示す。また、該基板のダイシングソーによる切り出しを行った後、フォーカスイオンビーム(FIB)法により断面方向の薄片化を行い、断面TEM観察およびEDX測定により微細な凹凸部分の組成分析を行った。断面TEM観察結果を図2に示す。 cは基体を示す。 ・・・(中略)・・・ 【0067】 実施例2 Al2 O3 ゾルは、実施例1と同様の方法で調製した。 一方、テトラエトキシシラン〔TEOS〕、IPA、0.01M〔HClaq.〕を混合し、約3時間室温で攪拌することにより、SiO2 ゾル溶液を調製した。溶液のモル比は、TEOS:IPA=1:20とし、またHClaq.の添加量はモル比でAl(Osec-Bu)3 の等倍量と、TEOSの2倍量の合計量とした。このSiO2 ゾル溶液を前記Al2 O3 ゾル溶液中に、重量比で、Al2 O3 :SiO2 =0.7:0.3となるように添加し、Al2 O3 -SiO2 ゾルである塗布液を調製した。 【0068】 次いで、実施例1と同様の洗浄を行った同様のガラス基板を、該塗布液中に浸漬した後、ディッピング法(3mm/秒の引き上げ速度、20℃、56%R.H.下)で、ガラス基板の表面に塗布膜を形成した。乾燥後、100℃で1時間熱処理し、透明なアモルファスAl2 O3 -SiO2 系ゲル膜を得た。次に、100℃の熱水中に30分間浸漬したのち、100℃で10分間乾燥させた。 【0069】 得られた膜表面のFE-SEM観察、SPM観測を行ったところ、実施例1と同様の板状結晶からなる微細な凹凸が観測された。SPM測定より得られる平均面粗さRa’値(nm)と表面積比Srは、Ra’=50nmとSr=2.5であった。断面TEM観察およびEDX測定の結果、ガラス基板上にはシリカとアルミナからなるアモルファス複合膜と、該複合膜上にアルミナを主成分とする板状結晶が形成されていることが明らかになった。」 (4)「【図面の簡単な説明】 【0105】 【図1】実施例1における、ガラス基板上に形成された、表面に微細な凹凸を有する薄膜のFE-SEMによる上面からの観察結果を示す写真(倍率:3万倍)である。 【図2】実施例1における、ガラス基板上に形成された、表面に微細な凹凸を有する薄膜のTEMによる断面観察結果を示す写真(倍率:約20万倍)である。図中のaは本発明におけるアルミナを主成分とする微細な凹凸、bは前記微細な凹凸を支持する薄膜層、cは基体を示す。」 (5)「【図1】 【図2】 」 2 引用発明 引用文献1の【0001】には、引用文献1にいう本発明は、表面に微細な凹凸を有する反射防止膜を用いた光学部材に関するものであることが記載されており、引用文献1に記載された実施例は、表面に微細な凹凸を有する反射防止膜を用いた光学部材であるといえる。 そうしてみると、上記1より、引用文献1には、実施例2として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「 アルミニウム-sec-ブトキシド〔Al(O-sec-Bu)3 〕を2-プロパノール〔IPA〕中に溶解させ、安定化剤としてアセト酢酸エチル〔EAcAc〕を添加し、約3時間室温で攪拌することにより、Al2 O3ゾル溶液を調製し、 テトラエトキシシラン〔TEOS〕、IPA、0.01Mの塩酸水溶液〔HClaq.〕を混合し、約3時間室温で攪拌することにより、SiO2 ゾル溶液を調製し、 このSiO2 ゾル溶液を前記Al2 O3 ゾル溶液中に、重量比で、Al2 O3 :SiO2 =0.7:0.3となるように添加し、Al2 O3 -SiO2 ゾルである塗布液を調製し、 次いで、洗浄を行ったガラス基板(組成はソーダライムシリケート系)を、該塗布液中に浸漬した後、ディッピング法で、ガラス基板の表面に塗布膜を形成し、 乾燥後、100℃で1時間熱処理し、透明なアモルファスAl2 O3 -SiO2 系ゲル膜を得、 次に、100℃の熱水中に30分間浸漬したのち、100℃で10分間乾燥させて得た、 ガラス基板上にはシリカとアルミナからなるアモルファス複合膜と、該複合膜上にアルミナを主成分とする板状結晶が形成されている、 表面に微細な凹凸を有する反射防止膜を用いた光学部材。」 3 引用文献2の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2007-183366号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【技術分野】 【0001】 本発明は、防塵性に優れた光透過性部材及びその用途、並びにその部材を有する撮像装置に関する。 ・・・(中略)・・・ 【発明の効果】 【0016】 微細な凹凸が表面に形成された防塵膜を有する本発明の防塵性光透過性部材は、部材に付着した塵埃粒子の分子間力及び接触帯電付着力を低減できる。そのため耐異物付着性に優れており、機械的防塵手段が不要であり、撮像装置の低コスト化、軽量化及び低消費電力化を実現することができる。」 (2)「【0023】 防塵膜として、例えばアルミナを含むゲル膜を熱水で処理してなる膜、及び亜鉛化合物を含むゲル膜を20℃以上の温度の含水液で処理してなる膜が挙げられる。前者は、アルミナを含むゲル膜の表層部分が熱水の作用を受けたときに生じる、多数の微細な不規則な形状の凸部と、凸部の間に介在する溝状の凹部とが集合した凹凸が表面に形成されてなる。このような凸部は非常に微細であるが、その形状そのものは花弁に似ている。以下特段の断りがない限り、この膜を花弁状アルミナ膜とよぶ。・・・(中略)・・・ 【0024】 花弁状アルミナ膜は、アルミナを主成分とするのが好ましく、アルミナのみからなるのがより好ましいが、必要に応じてジルコニア、シリカ、チタニア、亜鉛酸化物及び亜鉛水酸化物からなる群から選ばれた少なくとも一種の任意成分を含んでもよい。任意成分の含有量は、アルミナを含むゲル膜を熱水で処理した時に微細な凹凸が形成され、かつ透明性を損なわない範囲内である限り特に制限されないが、通常防塵膜全体を100質量%として0.01~50質量%が好ましく、0.05~30質量%がより好ましい。」 (3)「【0038】 [2] 防塵性光透過性部材の製造方法 (1) 防塵膜の形成 (a) 花弁状アルミナ膜の形成方法 花弁状アルミナ膜は、アルミニウム化合物を含む塗布液を基板に塗布してアルミナを含むゲル膜を形成した後、得られたゲル膜を熱水で処理することにより得られる。この方法は高温で焼成する工程を経ることなく花弁状アルミナ膜を形成できるので、耐熱性が不十分なプラスチック基板にも適している。 【0039】 アルミニウム化合物としては、アルミニウムアルコキシド、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等が挙げられる。好ましくはアルミニウムアルコキシドである。・・・(中略)・・・ 【0041】 花弁状アルミナ膜を上記任意成分を含むものとする場合、ジルコニウムアルコキシド、アルコキシシラン、チタニウムアルコキシド及び亜鉛化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種の任意成分原料を、塗布液に添加する。 ・・・(中略)・・・ 【0043】 アルコキシシランは、下記一般式(9): Si(OR1)x (R2)4-x ・・・(9) により表される。一般式(9)中のR1としては、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~4のアシル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、アセチル基等が挙げられる。R2としては、炭素数1~10の有機基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、n-デシル基、フェニル基、ビニル基、アリル基等の無置換の炭化水素基、及びγ-クロロプロピル基、CF3CH2-基 、CF3CH2CH2-基、C2F5CH2CH2-基 、C3F7CH2CH2CH2-基、CF3OCH2CH2CH2-基、C2F5OCH2CH2CH2-基 、C3F7OCH2CH2CH2-基 、(CF3)2CHOCH2CH2CH2-基 、C4F9CH2OCH2CH2CH2-基、3-(パーフルオロシクロヘキシルオキシ)プロピル、H(CF2)4CH2OCH2CH2CH2-基、H(CF2)4CH2CH2CH2-基、γ-グリシドキシプロピル基、γ-メルカプトプロピル基、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル基、γ-メタクリロイルオキシプロピル基等の置換炭化水素基が挙げられる。xは2~4の整数を表す。 ・・・(中略)・・・ 【0046】 アルミニウムアルコキシドと任意成分原料の配合割合は、アルミニウムアルコキシド及び任意成分原料の合計を100質量%として、任意成分原料の割合が0.01~50質量%であるのが好ましく、0.05~30質量%であるのがより好ましい。 ・・・(中略)・・・ 【0053】 塗布膜の乾燥条件は特に制限されず、基板の耐熱性等に応じて適宜選択すればよい。一般的には、塗布後の基板を、室温~400℃の温度で5分~24時間処理する。 【0054】 アルミナゲル膜を形成した基板を熱水で処理する。熱水の温度は基板の耐熱性に応じて適宜選択する。熱水中で浸漬処理する場合、一般的に約50℃~約100℃の温度で1~240分間程度処理するのが好ましい。熱水で処理した後、室温~400℃の温度で乾燥するのが好ましく、100~400℃の温度で焼成するのがより好ましい。乾燥(焼成)時間は10分~24時間とするのが好ましい。以上のようにして形成される花弁状アルミナ膜は通常無色で透明性が高い。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。 ア、基材、積層体、光学用部材 引用発明の「ガラス基板」は、技術的にみて本願発明1の「基材」に相当する。 また、引用発明は、「ガラス基板」上に「Al2 O3 -SiO2 ゾルである塗布液」を塗布、熱処理、乾燥等して得た「アモルファスAl2 O3 -SiO2 系ゲル膜」(100℃で10分間乾燥させた後のもの、以下「乾燥後のアモルファスAl2 O3 -SiO2 系膜」という。)を有するものである。そうしてみると、引用発明の「光学部材」は、ガラス基板の表面に「乾燥後のアモルファスAl2 O3 -SiO2 系膜」が積層により形成されたものといえる。加えて、引用発明は、「表面に微細な凹凸を有する反射防止膜を用いた光学部材」であるから、その文言が意味するとおり、光学用部材といえる。 したがって、引用発明の「光学部材」、「ガラス基板」及び「乾燥後のアモルファスAl2 O3 -SiO2 系ゲル膜」は、それぞれ、本願発明1の「光学用部材」、「基材」及び「積層体」に相当する。また、引用発明の「光学部材」と本願発明1の「光学用部材」は、「基材表面に積層体が形成された光学用部材」である点で共通する。 イ 突起 引用発明の「乾燥後のアモルファスAl2 O3 -SiO2 系膜」は、「シリカとアルミナからなるアモルファス複合膜と、該複合膜上にアルミナを主成分とする板状結晶が形成され」たものであるから、「表面に微細な凹凸を有する反射防止膜」をなすものである(当合議体注:「アルミナを主成分とする板状結晶」が「微細な凹凸」を形成している。)。 そうしてみると、引用発明の「乾燥後のアモルファスAl2 O3 -SiO2 系膜」は、「微細な凹凸」の「凸」、すなわち突起を有するものといえる。 また、引用発明の「乾燥後のアモルファスAl2 O3 -SiO2 系膜」は、「重量比で、Al2 O3 :SiO2 =0.7:0.3となるように添加し、Al2 O3 -SiO2 ゾルである塗布液を調製」する等して得た「アルミナを主成分とする板状結晶」であるから、酸化アルミニウムを主成分とするものである。 そうしてみると、引用発明の「乾燥後のアモルファスAl2 O3 -SiO2 系膜」は、本願発明1の「前記積層体が少なくとも酸化アルミニウムを主成分とする突起」を有するという要件を満たすものである。 ウ 支持層 引用発明は、「ガラス基板上にはシリカとアルミナからなるアモルファス複合膜と、該複合膜上にアルミナを主成分とする板状結晶が形成されている」。 ここで、上記ア及びイで述べた相当関係、並びに、上記「ガラス基板」、「シリカとアルミナからなるアモルファス複合膜」及び「アルミナを主成分とする板状結晶」の層順を勘案すると、引用発明の「シリカとアルミナからなるアモルファス複合膜」は、本願発明1の「支持層」に相当する。また、引用発明の「乾燥後のアモルファスAl2 O3 -SiO2 系膜」は、本願発明1の「積層体」が「突起を支持する支持層を有」するという要件を満たすものである。 (2)一致点及び相違点 ア 本願発明1と引用発明は、次の構成で一致する。 (一致点) 「 基材表面に積層体が形成された光学用部材において、 前記積層体が少なくとも酸化アルミニウムを主成分とする突起および前記突起を支持する支持層を有する、 光学用部材。」 イ 本願発明1と引用発明は、次の点で相違する。 (相違点1) 本願発明1の「基材」は、「屈折率ndが1.48以上1.71以下」であるのに対して、引用発明は、一応、これが明らかではない点(当合議体注:引用発明の「ガラス基板」の組成は、「ソーダライムシリケート系」なので、屈折率は1.5程度とされるが、一応、相違点とする。)。 (相違点2) 本願発明1の「突起を支持する支持層」は、下記一般式(1)で表わされる繰り返し構造を有する酸化アルミニウム膜からなるのに対して、引用発明は、「下記一般式(1)で表される繰り返し構造」を具備しない点。 (当合議体注:本件明細書の【0037】~【0039】等の記載からすると、本願発明1の「一般式(1)で表される繰り返し構造を有する酸化アルミニウム膜」は、有機シラン化合物として、R1-Si(OR3)3で表わされる構造を有する化合物(R1は炭素数1から10のアルキル基、フッ化アルキル基、フェニル基またはアミノアルキル基を示し、それらの基は置換基を有していても有していなくてもよい。R3は水素原子、メチル基またはエチル基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい)を用いることで得られものと認められる一方、引用発明では、TEOSを用いている。そうしてみると、引用発明は、「一般式(1)で表される繰り返し構造」を具備しないといえる。) (式中、R1、R2は炭素数1から10のアルキル基、フッ化アルキル基、フェニル基またはアミノアルキル基を示し、それらの基は置換基を有していても有していなくてもよい。mおよびnは1以上の整数である。)」 (3)相違点についての判断 事案に鑑みて、相違点2について先に検討する。 ア 引用発明の「シリカとアルミナからなるアモルファス複合膜」が、本願発明1の一般式(1)で表される繰り返し構造を具備するためには、引用発明のTEOSを、本件明細書の【0039】に記載のR1-Si(OR3)3(R1は炭素数1から10のアルキル基、フッ化アルキル基、フェニル基またはアミノアルキル基を示し、それらの基は置換基を有していても有していなくてもよい。R3は水素原子、メチル基またはエチル基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)で表される他の化合物(例:プロピルトリメトキシシラン)に替えることが必要である。 イ そこで、SiO2ゲルの原料に関する引用文献1の記載を確認すると、【0034】には、「シリコンアルコキシドとしては、一般式Si(OR)4 で表される各種のものを使用し、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等の同一または別異の低級アルキル基が挙げられる。」と記載されている。そうしてみると、引用文献1に記載されたSiO2ゲルの原料に関する示唆にしたがって、たとえ引用発明のTEOSを他の化合物に替えることを試みる当業者を仮定しても、引用発明の「シリカとアルミナからなるアモルファス複合膜」は、本願発明1の一般式(1)で表される繰り返し構造を具備するものとはならない。すなわち、引用発明において、引用文献1の記載に基づいて、本願発明1の一般式(1)で表される繰り返し構造を具備するものとすることは、当業者であっても、容易になし得るものとはいえない。 ウ ところで、引用文献2には、防塵性に優れた光透過性部材の技術分野に関する発明が記載されているところ、引用文献2の【0043】には、SiO2ゲルの原料であるアルコキシシランとして、「アルコキシシランは、下記一般式(9): Si(OR1)x (R2)4-x ・・・(9) により表される。一般式(9)中のR1としては、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~4のアシル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、アセチル基等が挙げられる。R2としては、炭素数1~10の有機基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、n-デシル基、フェニル基、ビニル基、アリル基等の無置換の炭化水素基、及びγ-クロロプロピル基、CF3CH2-基 、CF3CH2CH2-基、C2F5CH2CH2-基 、C3F7CH2CH2CH2-基、CF3OCH2CH2CH2-基、C2F5OCH2CH2CH2-基 、C3F7OCH2CH2CH2-基 、(CF3)2CHOCH2CH2CH2-基 、C4F9CH2OCH2CH2CH2-基、3-(パーフルオロシクロヘキシルオキシ)プロピル、H(CF2)4CH2OCH2CH2CH2-基、H(CF2)4CH2CH2CH2-基、γ-グリシドキシプロピル基、γ-メルカプトプロピル基、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル基、γ-メタクリロイルオキシプロピル基等の置換炭化水素基が挙げられる。xは2~4の整数を表す。」と記載されている。ここで、仮に引用発明のTEOSを引用文献2の一般式(9)において、R2をメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、n-デシル基、フェニル基、CF3CH2-基 、CF3CH2CH2-基、C2F5CH2CH2-基 、C3F7CH2CH2CH2-基とし、Xを3としたものに替えた場合においては、引用発明の「シリカとアルミナからなるアモルファス複合膜」が本願発明1の一般式(1)で表される繰り返し構造を具備することになると、一応、考えられる。 エ しかしながら、引用文献2に記載された一般式(9)は、本件明細書に記載のR1-Si(OR3)3(R1は炭素数1から10のアルキル基、フッ化アルキル基、フェニル基またはアミノアルキル基を示し、それらの基は置換基を有していても有していなくてもよい。R3は水素原子、メチル基またはエチル基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい)で表わされる構造を有する化合物を下位概念として含むとしても、その上位概念のものである。そして、引用文献1及び引用文献2には、引用発明のTEOSを、引用文献2に記載された一般式(9)で表される化合物を上記ウに記載した特定の化合物に替える動機づけとなるような記載はない。 オ また、本願発明1の「突起を支持する支持層が下記一般式(1)で表わされる繰り返し構造を有する」ことに関して、本件明細書の【0033】には、有機基R1を持つ構造とすると分子サイズでのスペーサー効果を発揮すると考えられ、支持層の密度を相対的に低下させることができるので、支持層の屈折率を低下させることが出来るという効果が記載されている。すなわち、本願発明1は、「支持層が下記一般式(1)で表される繰り返し構造を具備する」という構成を備えることにより、支持層の屈折率を低下させることが出来るという効果を奏するものである。また、支持層の屈折率を低下させることが出来るという効果は、引用発明のTEOSが奏する効果ではなく、引用文献2に記載された一般式(9)において、特に、R2が上記ウに記載した特定の置換基であるとともにXが3であるという選択肢を選択した場合において奏される効果と考えられる。 カ しかしながら、引用文献1及び引用文献2には、引用発明において、上記オに記載した選択肢を選択した場合に、支持層の屈折率を低下させることが出来るという効果が奏されることに関して、記載されておらず、示唆もされていない。 キ そうしてみると、本願発明1の支持層の屈折率を低下させることが出来るという効果は、当業者が、引用発明、並びに、引用文献1及び引用文献2の記載から予測することができない効果ということができる。 ク したがって、本願発明1の支持層の屈折率を低下させることが出来るという効果は、有機シラン化合物として、R1-Si(OR3)3で表わされる構造を有する化合物(R1は炭素数1から10のアルキル基、フッ化アルキル基、フェニル基またはアミノアルキル基を示し、それらの基は置換基を有していても有していなくてもよい。R3は水素原子、メチル基またはエチル基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい)を選択したことによって奏される異質な効果と解するのが相当である。 ケ 以上のとおりであるから、相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、たとえ引用文献2に記載された技術を心得た当業者といえども、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。 2 本願発明2-本願発明4について 本願発明2-本願発明4は、本願発明1の「光学用部材」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明と引用文献1及び引用文献2の記載事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 3 本願発明5、本願発明6について 本願発明5、本願発明6は、本願発明1と同様に一般式(1)で表わされる繰り返し構造を有する酸化アルミニウム膜を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明と引用文献1及び引用文献2の記載事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 4 本願発明7について 本願発明7は、本願発明5又は6の「光学用部材の製造方法」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明と引用文献1及び引用文献2の記載事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 第6 原査定について 1.理由2(特許法29条2項)について 平成30年2月13日付けの手続補正により、本願発明1-本願発明7は、一般式(1)で表わされる繰り返し構造を有する酸化アルミニウム膜を備えるものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-3に基づいて、容易に発明できたとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由もない。 よって、結論のとおり審決する。

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2018-002009

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