意匠拒絶査定不服審判
2018-001930
座席用カバーシート
- 審判番号
- 2018-001930
- 法域
- 意匠
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 意願2016-006773外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年02月13日
- 審決日
- 2018年09月21日
- 公報発行日
- 2018年12月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社パックインタカギ
- 【請求人代理人】福島 三雄
- 分類
- D18 .121-WY (D7-2)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 意匠法3条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 意匠法第3条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
意願2016- 6773「座席用カバーシート」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
平成28年 3月29日 意匠登録出願
平成28年11月30日付け 拒絶理由通知書
平成29年 1月11日 意見書提出
平成29年10月31日付け 拒絶査定
平成30年 2月13日 審判請求書提出
第2 本願意匠
本願は、平成28年(2016年)3月29日の意匠登録出願(意願2016-6773)であって、その意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品は「座席用カバーシート」であり、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」ともいう。)は、願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりのものである(別紙第1参照)。
第3 原査定における拒絶の理由
原査定における平成28年11月30日付けで通知した拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって、具体的には、次のとおりである。
「本願の意匠は、座席用カバーシートとして創作され、矩形状のシートの短辺寄りの二箇所に切れ込みを設け、該部をヘッドレストに通す態様で用いるものと認められます。しかしながら、矩形状シートを乗物の座席カバーとして用いることは本願出願前より広く見られるありふれた態様であり(例えば、意匠1、意匠2)、取りつけにおいてヘッドレストを通すことも、意匠1に見られるように公知の態様で、取り付け部を二箇所表すことも意匠2に見られるように同様に公知の態様です。また、広く意匠の創作においてシート材を他の物品に取りつける、あるいは保持する等の場合に、長円形で直線の一辺を残した、切れ込み部を設け、該部を利用することも周知の手法であり(例えば意匠3)、シート状の乗物の座席のカバーの取りつけにそれを用いることに特段の高度な創作を認めることはできません。そうすると、本願の意匠は、ありふれた矩形状のシートに、周知の形状の切れ込みを二箇所設け、座席用カバーシートとしたまでにすぎず、容易に創作できたものと認められます。」
「意匠1
特許庁意匠課が2003年 6月13日に受け入れた
cube Optional Parts Catalog
第10頁所載
自動車運転席用いすのシートに被せられたカバー部の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HC15019808号)
意匠2
米国特許商標公報 2013年 2月12日
ゴルフカートいすカバー(登録番号US D675858S)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH25303137号)
意匠3
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2001-106301
ゴミ袋の図1~7において6で示される引掛け用穴部の意匠」
第4 請求人の主張の要点
これに対し、請求人は、審判を請求し、本願意匠の創作非容易性について要旨以下のとおり主張した。
1 本願意匠が登録されるべき理由
(1) 本願意匠の特徴
本願意匠は、柔軟で折り畳み可能なシート状の発泡体からなる、自動車の座席用のカバーシートである。特にパトカーなどの不特定多数の者を乗車させる可能性がある車両等において、車内に常備しておいて使用するのに好適に使用できるものである。
そして、その形態は、上下長さ対横幅が、約1:0.58である上下に長い長方形の、上下両端から上下長さに対し約0.17となる内側の位置に、横幅を略3等分する長さの、左右先端に内向き半円(半円の直径は、上下長さに対し約0.024である)を備えたスリット(以下、両端半円スリットという)を、両端の半円が向き合うように上下対称に配置して形成したものである。
本願意匠は、以下の構成要素を具備するものである。
第1に、自動車の座席のカバーシートであること
第2に、このカバーシートは、柔軟で折り畳み可能なシート状の発泡体からなること
第3に、上下に長い上下長さ対横幅が約1:0.58である長方形の上下両端から上下長さに対し、約0.17となる内側位置の上下2か所に、両端半円スリットを配置して形成していること
第4に、両端半円スリットは、カバーシートの横幅を3等分する長さであること
第5に、両端半円スリットは、両端の半円が向き合うように上下対称に2か所に配置されていること
第6に、両端半円スリットの両端の半円の直径は、カバーシートの上下長さに対し約0.024であること
本願意匠は、以上の構成要素が総合している点に特徴を有するものである。
(2) 引用意匠について
これに対し、引用意匠1には、厚手の布状材料によって製作されたカバーについて記載されているにすぎず、十分に時間をかけてしっかりと装着するものである。しかも、座席だけでなくヘッドレスト用のカバーもセットになっており、本願意匠のように急に必要になった場合に使用することを想定したものではない。そして、形態においても、引用意匠1からシートの座席への取り付け部の形態を特定することはできず、本願意匠のように上下に長い長方形の上下両端から、上下長さに対し約0.17となる内側位置の上下2か所に両端半円スリットを形成することは、全く開示されていない。
したがって、引用意匠1をもって、本願意匠の特徴に想到し得るものではない。
引用意匠2は、ゴルフカートいすカバーについて記載されているものであるところ、引用意匠2は、ゴルフカートの、横に長いカート椅子の座席の長手方向を水平に覆い、いすの左右両端部に突設された肘掛けに挿通させて装着するもので、本願意匠のように、自動車の座席に上下に使用することを想定したものではない。
さらに本願意匠は、前記した第3から第6の形態上の構成要素を合わせ具備してなるところに特徴を有するのに対し、引用意匠2にはこれらの形態上の特徴においても全く相違するものである。
次に引用意匠3は、ごみ袋について記載されているに過ぎないもので、本願意匠とは、物品において全く別異のものである。しかも引用意匠3において指摘されている切れ込み部は、ごみ容器に引っ掛けることが記載されているに過ぎない。自動車の座席に使用することは全く想定も示唆もされていない。さらに、座席のヘッドレストに挿通することについては全く記載されていないものである。
しかも、引用意匠3には、本願意匠の形態上と特徴を構成する、前記第3から第6の形態について記載されているものではない。
特に、第3の、上下に長い長方形の上下両端から上下長さに対し、上下両端から約0.17となる内側位置の上下2か所に、両端半円スリットを配置して形成していること
第4の、両端半円スリットが、カバーシートの横幅を3等分する長さであること
第5の、両端半円スリットが、両端の半円が向き合うように上下対称に2か所に配置されていること
第6の、両端半円スリットの両端の半円の直径が、カバーシートの上下長さに対し約0.024であること
という特徴については、引用意匠3から見いだせる形態ではない。
(3) まとめ
以上のとおり、引用意匠のいずれにも本願意匠の形態は示されておらず、本願意匠の特徴を構成する構成要素は、引用意匠1~3から容易に想到し得たとは言えず、上記第1から第6の構成が総合した本願意匠が引用意匠から容易に創作し得たとは言えないものである。
第5 当審の判断
請求人の主張を踏まえ、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が容易に創作することができたか否かについて、検討し、判断する。
1 本願意匠
本願意匠の意匠に係る物品は、「座席用カバーシート」であり、本願意匠の形態は、(ア)略縦長矩形状のシート状であって、(イ)全体の縦横比率は約5:3とし、(ウ)縦方向上下端から約6分の1の横方向中央位置に、(エ)直線の両端が略半円鉤状に向き合う横長の切り込み部を、端部を内向きにして、上下対称に2つ設けたものであり、(オ)切り込み部の縦横比率は約1:6で、横方向長さは、座席用カバーシートの横幅の約3分の1の長さである。
2 引用意匠
本願意匠の向きに合わせて意匠1、意匠2及び意匠3を認定する。
(1)意匠1(別紙第2参照)
意匠に係る物品は「自動車運転席用いすのシートカバー」であり、自動車運転席用いすに装着された意匠1の形態は、一定の厚みのあるシート状であって、前方の下端は略四角状であり、そのまま、略等幅に座面と背もたれを経て背面方向に回し掛けられており、縦長のものと認められるが、背面側の形態は現れておらず、全体の縦横比率は不明であり、ヘッドレストの取付け用の切り込みなどの有無及び形態は不明である。
全体には、淡いベージュ色の色彩が施されている。
(2)意匠2(別紙第3参照)
意匠に係る物品は「ゴルフカートいすカバー」であり、使用態様から横長の座面に用いられるものと認められ、横長矩形状のシート状材から成り、全体の縦横比率は約2:5とし、横方向、左右端から約14分の1の縦方向中央位置に、略細長六角形状部を2つ配して、それぞれ、その中央長手方向に直線状の切り込み部が設けられている。切り込み部の長さは、全体の縦幅の約3分の2の長さである。
(3)意匠3(別紙第4参照)
取付けまたは、保持にあたって切れ込み部を設け、利用することが周知の手法である例として、示されたものであって、引用されたのは、意匠に係る物品は「ごみ袋」であるところの、「図1~7において6で示される引掛け用穴部」であるが、引掛け用穴部(切り込み部)は、図1において、その上部の中央に設けられた略台形状の突状片の基部(袋側)寄りに、直線の両端が略半円鉤状に向き合う横長の切り込み部の端部を外向きにして6と番号を付されて表されており、図3ないし7にも同様の切り込み部として表されている。
なお、図1でみると切り込み部の縦横比率は約1:2である。
3 本願意匠の創作容易性
意匠1ないし意匠3に基づいて、「座席用カバーシート」の物品分野において周知の創作手法から容易に本願意匠が創作できたかについて検討する。
(1)本願意匠の創作容易性の判断
まず、意匠1ないし意匠3の形態は、それぞれ前記2のとおりであるが、本願意匠の前記1の(ア)は基本的構成態様に関わるところであり、「座席用カバーシート」の物品分野においてはごく普通に見受けられる形状であって、意匠2にも見受けられる。
次に、前記1の(イ)の形態については、全体の正面においての縦横比率であって、本願意匠に見られる、全体の縦横比率が約5:3である形態は、前記2のとおり、縦横比率の不明である意匠1及び横長の意匠2には表されていない。
また、前記1の(ウ)の切り込み部の位置については、本願意匠は縦方向上下端から約6分の1の横方向中央位置に設けたものであるが、意匠1(不明)及び意匠2(横方向左右端から約14分の1の縦方向中央位置)とは、異なっている。
そして、前記1の(エ)の切り込み部の形態については、本願意匠の正面視の具体的態様であって、意匠1は、切り込み部の有無及び形態が不明であり、意匠2は、切り込み部を有するものの、略細長六角形状部を配して、その中央長手方向に直線状の切り込み部が設けられているものであって、本願意匠のような、直線の両端が略半円鉤状に向き合う横長の切り込み部を、端部を内向きにして、上下対称に設けた形態は、表されていない。
加えて、意匠3は、周知の手法として示されたものであるが、その形態についてみても、直線の両端が略半円鉤状に向き合う横長の切り込み部を設けた形態は認められるものの、その切り込み部の端部は外向きであって、端部が内向きで、上下対称に設けた形態は表されていない。
さらに、前記1の(オ)の形態については、切り込み部の縦横比率は約1:6で、横方向長さが横幅の約3分の1の長さである形態については意匠1ないし意匠3のいずれにも表されていない。
したがって、本願意匠の形態のうち前記1の(イ)ないし(オ)の形態について、意匠1ないし意匠3に表されているとはいえないから、意匠1ないし意匠3をほとんどそのまま表して本願意匠が創作できたということはできず、また、意匠1ないし意匠3に基づいて、「座席用カバーシート」の物品分野において、周知の創作手法から容易に本願意匠が創作できたかについても、たとえ、意匠1に基づいて、切り込み部の配置を意匠2のものとしたとしても、(エ)の形態は、意匠1ないし意匠3のいずれにも表されておらず、切り込み部を上下2箇所に、端部を内向きにして、上下対称に設けることが「座席用カバーシート」の物品分野において、本願意匠出願前にありふれた手法であったとする証拠もないから、意匠1ないし意匠3に基づいて、周知の創作手法を用いて僅かに改変するなどして、本願意匠が容易に創作できたということはできない。
(2)小括
そうすると、本願意匠の形態のうち前記1の(イ)ないし(オ)の形態について、意匠1ないし意匠3に表されているとはいえず、前記1の(エ)の形態とすることが、「座席用カバーシート」の物品分野において、本願意匠出願前にありふれた手法であったとはいい難いので、各部の構成比率を多少変更して表すことがありふれた手法であるとしても、本願意匠は、本願出願前に公然知られた意匠に基づいて「当該物品分野において周知の創作手法」によって創作することができたということはできない。
したがって、本願意匠は、当業者であれば、容易に創作することができたものということはできない。
第6 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときに該当しないので、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2018-001930