特許拒絶査定不服審判
2018-000389
誘導電力伝達システムにおけるデバイスの位置合わせおよび識別
- 審判番号
- 2018-000389
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-523094外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年01月12日
- 審決日
- 2019年01月25日
- 公報発行日
- 2019年08月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】クアルコム,インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】黒田 晋平
- 分類
- P18 .113-Z (H02J) / P18 .121-Z (H02J) / P18 .575-Z (H02J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-523094「誘導電力伝達システムにおけるデバイスの位置合わせおよび識別」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月23日国際公開、WO2014/014615、平成27年 9月10日国内公表、特表2015-527036〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
本願は、2013年6月20日を国際出願日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年7月16日 米国 2013年2月19日 米国)とする出願であって、平成28年5月27日に手続補正がなされ、平成29年5月22日付けの拒絶理由の通知に対して、同年8月28日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年9月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成30年1月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
第2.平成30年1月12日付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年1月12日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正について(補正の内容)
本件補正により、平成29年8月28日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1については、
「【請求項1】
ワイヤレス電力受信機を動作させる方法であって、
第1の誘導性要素に電流を供給して電磁場を生成し、ワイヤレス電力送信機の第2の誘導性要素に誘導電流を誘起するステップと、
前記第2の誘導性要素における前記誘導電流に基づく前記第1の誘導性要素と前記第2の誘導性要素との間の距離の指示を前記ワイヤレス電力送信機から受信するステップと
を含む方法。」
とあったものが、
「【請求項1】
ワイヤレス電力受信機を動作させる方法であって、
第1の誘導性要素に電流を供給して電磁場を生成し、ワイヤレス電力送信機の第2の誘導性要素に誘導電流を誘起するステップと、
前記第2の誘導性要素における前記誘導電流に基づく前記第1の誘導性要素と前記第2の誘導性要素との間の距離の指示を前記ワイヤレス電力送信機から受信するステップであって、前記距離の指示は、前記第2の誘導性要素における前記誘導電流の大きさに基づいて前記ワイヤレス電力送信機によって決定された前記第1の誘導性要素と前記第2の誘導性要素との間の距離である、ステップと
を含む方法。」
と補正された。(下線部は、補正箇所である。)
2.補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明の発明特定事項である「受信するステップ」について、「前記距離の指示は、前記第2の誘導性要素における前記誘導電流の大きさに基づいて前記ワイヤレス電力送信機によって決定された前記第1の誘導性要素と前記第2の誘導性要素との間の距離である」との限定を付加するものである。また、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)を検討する。
(1)本件補正発明
本件補正の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)は、上記1.に記載したとおりのものである。
(2)引用文献、引用発明
(ア)引用文献1
原査定の拒絶の理由において引用された、特開2010-183813号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は、当審において付加した。以下、同じ。)
a.「【0022】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1~図3にしたがって説明する。
図1は共鳴型非接触充電システムの構成を模式的に示す。図1に示すように、共鳴型非接触充電システムは、地上側に設けられる給電側設備(送電側設備)10と、車両30に搭載された車載側設備20とで構成されている。給電側設備10は、交流電源11、交流電源11から電力の供給を受ける1次側共鳴コイル13を備えている。詳述すると、給電側設備10は、交流電源11と、1次コイル12と、1次側共鳴コイル13と、電源側コントローラ14とを備えている。1次コイル12と1次側共鳴コイル13とは同軸上に位置するように配設されている。1次コイル12はスイッチSW1を介して抵抗Rに接続される状態と、交流電源11に接続される状態とに切り換え可能になっている。1次コイル12は、1次側共鳴コイル13に電磁誘導で結合されるとともに交流電源11と抵抗Rとに選択的に接続される。
【0023】
抵抗Rには、抵抗Rが1次コイル12に接続された状態で抵抗Rの両端間の電圧、即ち1次コイル12の出力電圧を検出する電圧センサ15が接続されている。電圧センサ15の検出信号は電源側コントローラ14に入力される。1次側共鳴コイル13にはコンデンサCが接続されている。交流電源11は交流電圧を出力する電源である。交流電源11は電源側コントローラ14による制御によって所定周波数(共鳴周波数)の交流を出力するように構成されている。
【0024】
車載側設備20は、第1の2次側共鳴コイル21a及び第2の2次側共鳴コイル21bと、2個の2次コイル22a,22bと、2次コイル22a,22bに接続されて電力の供給を受ける充電器23と、充電器23に接続された2次電池24と、充電コントローラ25と、車両側コントローラ26とを備えている。対応する2次側共鳴コイル21a,21b及び2次コイル22a,22bは同軸上に位置するように配設されている。充電器23は、2次コイル22a,22bから入力される交流を整流する整流回路(図示せず)と、整流された直流を2次電池24に充電するのに適した電圧に昇圧する昇圧回路(図示せず)とを備えている。充電コントローラ25は、充電時に充電器23の昇圧回路のスイッチング素子を制御する。各2次コイル22a,22bは、スイッチSW2,SW3を介して充電器23に選択的に接続可能に構成されている。2次コイル22a,22bは、第1及び第2の2次側共鳴コイル21a,21bに電磁誘導で結合されるとともに充電器23と選択的に接続される。車載側設備20は距離計測用交流電源27を備え、距離計測用交流電源27は、スイッチSW2,SW3を介して2つの2次コイル22a,22bのいずれかに選択的に接続可能に構成されている。距離計測用交流電源27は、交流電源11が電力伝送時に出力するより二桁程度小さな交流電力を出力するように構成されている。」
b.「【0030】
次に前記のように構成された共鳴型非接触充電システムの作用を説明する。
車両30に搭載された2次電池24に充電を行う場合には、車両30は給電側設備10の1次側共鳴コイル13が設けられた充電位置に駐車(停止)する必要がある。車両30が充電位置へ移動する際、給電側設備10と車載側設備20との位置関係を推定するための処理が、電源側コントローラ14及び車両側コントローラ26とで共同して行われる。
【0031】
電源側コントローラ14は、車両側コントローラ26から車両30が充電位置へ移動する旨の信号を受信すると、1次コイル12が抵抗Rと接続される状態にスイッチSW1を切り換える。車両側コントローラ26は、スイッチSW3を距離計測用交流電源27に接続される状態に保持し、スイッチSW2を2次コイル22aに接続される位置に切り換える。この状態で距離計測用交流電源27から共鳴周波数の交流電圧が2次コイル22aに印加されると、2次コイル22aに磁場が発生し、この磁場が1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21aとによる磁場共鳴により増強され、増強された1次側共鳴コイル13付近の磁場により電磁誘導で1次コイル12から交流が出力される。1次コイル12の出力電圧は電圧センサ15により検出され、その検出電圧データが電源側コントローラ14を介して車両側コントローラ26へ送信される。車両側コントローラ26はその検出電圧データをメモリに記憶した後、スイッチSW2を2次コイル22bに接続される位置に切り換え、前記と同様にその状態で電圧センサ15による1次コイル12の出力電圧の検出電圧データを電源側コントローラ14から受信する。そして、車両側コントローラ26は両検出電圧データに基づいて1次側共鳴コイル13と第1及び第2の2次側共鳴コイル21a,21bとの距離を推定する。」
・上記a.の段落【0022】には、共鳴型非接触充電システムが、地上側に設けられる給電側設備10と、車両30に搭載された車載側設備20とで構成されることが記載されている。
また、上記a.の段落【0022】には、給電側設備10は、同軸上の1次コイル12と1次側共鳴コイル13と電源側コントローラ14とを備えることが記載され、さらに、段落【0024】には、車載側設備20は、同軸上の第1の2次側共鳴コイル21aと2次コイル22aと車両側コントローラ26とを備えることが記載されている。
そして、上記b.には、上記共鳴型非接触充電システムにおいて、車両30に搭載された2次電池24に充電を行う場合に、車両30が給電側設備10の1次側共鳴コイル13が設けられた充電位置へ移動する際の、給電側設備10と車載側設備20との位置関係を推定するための処理の手順が記載されており、位置関係を推定するための方法が記載されているといえる。
・上記b.の段落【0031】には、電源側コントローラ14は、車両側コントローラ26から車両30が充電位置へ移動する旨の信号を受信すると、1次コイル12が抵抗Rと接続される状態にスイッチSW1を切り換え、車両側コントローラ26は、スイッチSW3を距離計測用交流電源27に接続される状態に保持し、スイッチSW2を2次コイル22aに接続される位置に切り換え、距離計測用交流電源27から共鳴周波数の交流電圧が2次コイル22aに印加することで、2次コイル22aに磁場を発生させ、該磁場が1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21aとによる磁場共鳴により増強され、増強された1次側共鳴コイル13付近の磁場による電磁誘導で1次コイル12から交流を出力させ、1次コイル12の出力電圧を電圧センサ15により検出した検出電圧データを電源側コントローラ14を介して車両側コントローラ26へ送信し、車両側コントローラ26は前記検出電圧データをメモリに記憶し、車両側コントローラ26は前記検出電圧データに基づいて1次側共鳴コイル13と第1の2次側共鳴コイル21aとの距離を推定する、ことが記載されている。
・また、上記a.の段落【0023】には、上記抵抗Rには両端間の電圧、即ち1次コイル12の出力電圧を検出する電圧センサ15が接続されていることが記載されいる。
上記引用文献1の記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。
「地上側に設けられる同軸上の1次コイル12と1次側共鳴コイル13と電源側コントローラ14とを備えた給電側設備10と、車両30に搭載された同軸上の第1の2次側共鳴コイル21aと2次コイル22aと車両側コントローラ26を備えた車載側設備20とで構成されている共鳴型非接触充電システムにおいて、車両30に搭載された2次電池24に充電を行う場合に、車両30が給電側設備10の1次側共鳴コイル13が設けられた充電位置へ移動する際の、給電側設備10と車載側設備20との位置関係を推定するための方法であって、
電源側コントローラ14は、車両側コントローラ26から車両30が充電位置へ移動する旨の信号を受信すると、1次コイル12と電圧センサ15が両端に接続される抵抗Rとを接続される状態にスイッチSW1を切り換え、
車両側コントローラ26は、スイッチSW3を距離計測用交流電源27に接続される状態に保持し、スイッチSW2を2次コイル22aに接続される位置に切り換え、距離計測用交流電源27から共鳴周波数の交流電圧が2次コイル22aに印加することで、2次コイル22aに磁場を発生させ、
該磁場が1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21aとによる磁場共鳴により増強され、増強された1次側共鳴コイル13付近の磁場による電磁誘導で1次コイル12から交流を出力させ、
1次コイル12の出力電圧を電圧センサ15により検出した検出電圧データを電源側コントローラ14を介して車両側コントローラ26へ送信し、
車両側コントローラ26は前記検出電圧データをメモリに記憶し、
車両側コントローラ26は前記検出電圧データに基づいて1次側共鳴コイル13と第1の2次側共鳴コイル21aとの距離を推定する、
給電側設備10と車載側設備20との位置関係を推定するための方法。」
(イ)引用文献2
本件出願の優先日前の出願である特開2010-130729号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
a.「【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の非接触充電システムの概要を説明する斜視図である。図1に示すように、本実施形態の非接触充電システムは、充電装置200と、外部から電力を給電する送電装置100との間で非接触の給電を実現するシステムである。
【0013】
図2は、送電装置100及び充電装置200の概略構成を示す図である。
非接触に電力を供給する送電装置100は、送電用のコイル101、使用者に充電装置200の移動を促すための情報を表示する表示部108、充電装置200との通信を行う通信部を備える。
【0014】
非接触にて電力を受け、電池を充電する充電装置200は、送電装置100から送信される電力を受ける充電用のコイル201、送電装置100による磁束の変化を感知する磁力センサ部205、送電装置100との通信を行う通信部を備える。本実施形態では、送電用のコイル101が発生する磁束を磁力センサ部205で検出し、その検出結果によって充電に適した方向検出と相対距離検出とを行う。そして、検出した結果に基づいて、充電を行うのに最適な位置までの方向と距離とを示す情報を表示部108に表示することよって使用者に充電装置200の移動を促す構成となっている。」
b.「【0047】
即ち、使用者が、表示部108に表示された方向と距離の情報を元に、充電装置200の位置を移動させる度に、最適な位置に置かれたかどうかを判別している。そして、最適な位置で無い場合には、再度、移動方向と距離を算出し、その情報を表示部108に表示することになる。そのため、使用者は表示部108の指示に従って充電装置200をどの方向に動かせば充電に適した位置に移動できるかということを直観的に理解できる。
【0048】
また、本実施形態においては方向・距離算出処理を送電装置100側の送電制御部105で行っているが、充電装置200側の充電制御部203で行ってもよい。また、本実施形態では磁力センサ205a~205dが充電装置200に設けられ、表示部108が送電装置100に設けられている構成となっている。しかし、図10に示すように、磁力センサ100aが送電装置100に設けられ、表示部200aが充電装置200に設けられている構成であってもよい。
【0049】
この構成であっても、位置合わせの際に、充電装置200のコイル201を励振させ、このコイル201による磁束密度を送電装置100の磁力センサ部100aによって検知することで、本実施形態に准ずる処理で位置合わせの処理を行うことができる。またこの場合、充電装置200に備わった表示部200aの表示面の法線方向が水平方向を向く場合と、垂直方向を向く場合が考えられる。」
上記引用文献2の記載及び図面、並びにこの分野の技術常識を考慮すると、引用文献2には以下の技術事項(以下、「引用文献2に記載の技術事項」という。)が開示されていると認められる。
「非接触給電システムにおいて、検出したデータからの距離の算出を、送電側及び受電側のいずれで行ってもよいこと。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「給電側設備10」、「車載側設備20」は、各々、本件補正発明の「ワイヤレス電力送信機」、「ワイヤレス電力受信機」に相当する。
また、引用発明の「2次コイル22a」、「1次コイル12」は、各々、本件補正発明の「第1の誘導性要素」、「第2の誘導性要素」に相当する。
b.引用発明において「該磁場が1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21aとによる磁場共鳴により増強され、増強された1次側共鳴コイル13付近の磁場により電磁誘導で1次コイル12から交流が出力」される際には、1次コイル12には電磁誘導により誘起電流が誘起されているものと認められる。
したがって、引用発明の「車両側コントローラ26は、スイッチSW3を距離計測用交流電源27に接続される状態に保持し、スイッチSW2を2次コイル22aに接続される位置に切り換え、距離計測用交流電源27から共鳴周波数の交流電圧が2次コイル22aに印加することで、2次コイル22aに磁場を発生させ、該磁場が1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21aとによる磁場共鳴により増強され、増強された1次側共鳴コイル13付近の磁場による電磁誘導で1次コイル12から交流が出力させ」ることは、本件補正発明の「第1の誘導性要素に電流を供給して電磁場を生成し、ワイヤレス電力送信機の第2の誘導性要素に誘導電流を誘起するステップ」に相当する。
c.引用発明の「1次コイル12」及び「2次コイル22a」は、各々、「1次側共鳴コイル13」及び「第1の2次側共鳴コイル21a」と同軸上に位置するものであるから、引用発明において車両側コントローラ26が検出電圧データに基づいて1次側共鳴コイル13と第1の2次側共鳴コイル21aとの距離を推定することは、1次コイル12と2次コイル22aとの距離を推定することと認められる。
してみると、引用発明の「検出電圧データ」は、1次コイル12と2次コイル22aとの距離を推定するためのデータといえるから、本件補正発明でいう「距離の指示」に相当する。
また、引用発明の「車両側コントローラ26は前記検出電圧データをメモリに記憶」する際には、当然、車両側コントローラ26は検出電圧データを受信しているものと認められる。
してみれば、引用発明の「車両側コントローラ26は前記検出電圧データをメモリに記憶」することは、本件補正発明の「前記第1の誘導性要素と前記第2の誘導性要素との間の距離の指示を前記ワイヤレス電力送信機から受信するステップ」に相当する。
但し、「距離の指示」が、本件補正発明では、「前記第2の誘導性要素における前記誘導電流の大きさに基づく」ものであって、さらに、「前記ワイヤレス電力送信機によって決定された前記第1の誘導性要素と前記第2の誘導性要素との間の距離である」のに対して、引用発明では、その旨の特定がされていない点で相違する。
d.そして、引用発明の「給電側設備10と車載側設備20との位置関係を推定するための方法」は、本件補正発明の「誘導電流を誘起するステップ」、及び「距離の指示を前記ワイヤレス電力送信機から受信するステップ」に相当する構成を含むものであるから、本件補正発明の「ワイヤレス電力受信機を動作させる方法」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明とを対比すると、両者は、以下の点で一致し、また、相違している。
(一致点)
「ワイヤレス電力受信機を動作させる方法であって、
第1の誘導性要素に電流を供給して電磁場を生成し、ワイヤレス電力送信機の第2の誘導性要素に誘導電流を誘起するステップと、
前記第1の誘導性要素と前記第2の誘導性要素との間の距離の指示を前記ワイヤレス電力送信機から受信するステップと
を含む方法。」
(相違点)
「距離の指示」が、本件補正発明では、「前記第2の誘導性要素における前記誘導電流の大きさに基づいて前記ワイヤレス電力送信機によって決定された前記第1の誘導性要素と前記第2の誘導性要素との間の距離である」のに対して、引用発明では、検出電圧データに基づいて車両側コントローラ26により推定されるものである点。
(4)判断
上記相違点について検討する。
a.まず、引用発明の「検出電圧データ」が誘導電流の大きさに基づくものであるかを検討する。
引用発明の検出電圧データは、抵抗Rの両端の電圧差を電圧センサ15で検出するものであるところ、抵抗Rには1次コイル12に誘起された誘導電流が流れるものであるから、検出される検出電圧データは、抵抗Rの抵抗値と誘導電流の積を検出しているといえる。
してみると、抵抗Rの抵抗値は一定であるから、引用発明における検出電圧データは、誘導電流の大きさに基づくものといえ、この点に関しては実質的に相違点とはならない。
b.そして、引用文献2には、非接触給電システムにおいて、検出したデータからの距離の算出を、送電側及び受電側のいずれで行ってもよいことが記載されている。
してみれば、引用発明において該引用文献2に記載の技術事項を適用して、車両側コントローラ26が距離を推定することに代えて、電源側コントローラ14によって距離を推定するようにし、本件補正発明の相違点の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本件補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献2に記載の技術事項及び周知の技術に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2に記載の技術事項及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(5)結語
以上検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3.本願発明について
1.本願発明
平成30年1月12日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし14に係る発明は、平成29年8月28日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は再掲すると次のとおりのものである。
「【請求項1】
ワイヤレス電力受信機を動作させる方法であって、
第1の誘導性要素に電流を供給して電磁場を生成し、ワイヤレス電力送信機の第2の誘導性要素に誘導電流を誘起するステップと、
前記第2の誘導性要素における前記誘導電流に基づく前記第1の誘導性要素と前記第2の誘導性要素との間の距離の指示を前記ワイヤレス電力送信機から受信するステップと
を含む方法。」
2.原査定の拒絶の理由
ア(新規性)この出願の請求項1ないし14に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
イ(進歩性)この出願の請求項1ないし14に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となっ下記の引用文献1に記載されたた発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2010-183813号公報
3.引用文献、引用発明
引用発明は、上記第2の2.の(2)の「(ア)引用文献1」の項で記載したとおりである。
4.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明を対比するに、本願発明は上記本件補正発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明は、以下の点で相違している。
(相違点)
「距離の指示」が、本願発明では、「前記第2の誘導性要素における前記誘導電流の大きさに基づく」ものであるのに対して、引用発明では、その旨の特定がされていない点。
しかしながら、上記第2の2.の「(4)判断 a.」で検討したように、引用発明における検出電圧データも誘導電流に基づくものといえ、上記相違点は、実質的な相違でなく、本願発明と引用発明は同一である。
5.むすび
以上のとおり、本願発明は引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2018-000389