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特許異議申立

2017-701191

大気中放出が低減した水性電解液組成物、方法、及び該組成物の使用

審判番号
2017-701191
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-540435
登録番号
特許第6148798号(P6148798)
請求日
2017年12月14日
審決日
2020年01月15日
公報発行日
2020年08月28日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】マクダーミッド エンソン インコーポレイテッド
  • 【権利者代理人】廣田 浩一
  • 【権利者代理人】流 良広
  • 【権利者代理人】松田 奈緒子
  • 【権利者代理人】山下 武志
  • 【異議申立人】アトテツク・ドイチユラント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
  • 【異議申立人代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
  • 【異議申立人代理人】篠 良一
審判長/審判官
  • 審判長 池渕 立
  • 審判官 土屋 知久
  • 審判官 亀ヶ谷 明久
分類
P1651.537-ZAA(C25D) / P1651.536-ZAA(C25D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法36条6項2号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第4号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6148798号発明「大気中放出が低減した水性電解液組成物、方法、及び該組成物の使用」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6148798号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕、〔14~18〕、19について訂正することを認める。 特許第6148798号の請求項1、3~7、9、10、12~19に係る特許を取り消す。 特許第6148798号の請求項2、8、11に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6148798号の請求項1~19に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、2014年(平成26年)9月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年9月5日、EP)を国際出願日とする出願であって、平成29年5月26日にその特許権の設定登録がなされ、同年6月14日にその特許掲載公報が発行された。 本件は、その後、その特許について、同年12月14日に特許異議申立人アトテツク・ドイチユラント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング(以下、「申立人」という。)より請求項1~19に対して特許異議の申立てがなされ、平成30年3月19日付けで取消理由が通知され、これに対して、同年6月22日受付けで特許権者より意見書が提出されるとともに訂正請求がなされ、同年8月31日に申立人より意見書が提出され、その後、同年11月2日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、これに対して、平成31年2月6日に特許権者より意見書(以下、「特許権者意見書」という。)が提出されるとともに訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされ、同年3月14日に申立人より意見書が提出され、その後、同年4月26日付けで特許権者に対して審尋がなされ、令和1年6月4日に特許権者から回答書(以下、「回答書1」)が提出され、同年6月25日付けで再度特許権者に対して審尋がなされ、同年7月22日に特許権者から回答書(以下、「回答書2」という。)が提出され、その後、同年8月29日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、これに対して、特許権者より意見書は提出されなかった。 第2 訂正請求について 1 訂正の趣旨、及び、訂正の内容 特許法第120条の5第7項の規定により、平成30年6月21日になされた訂正請求は、その後、本件訂正請求がなされ、取り下げられたものとみなされるから、以下、本件訂正請求について、検討する。 (1)訂正の趣旨 本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、特許第6148798号の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正に係る訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~19について訂正を求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。 なお、当審において、訂正箇所に下線を付した。 (2)訂正の内容 ア 訂正事項1 請求項1について、本件訂正前の「前記界面活性剤は、前記組成物の動的表面張力が、≦35mN/mとなる濃度で含まれていることを特徴とする電解液組成物」を「前記界面活性剤は、前記組成物の気泡圧力張力計を使用して測定される動的表面張力が、≦35mN/mとなる濃度で含まれており、前記界面活性剤が、≧0.0000001重量%~≦0.000002重量%の濃度範囲で含まれており、パーフルオロ化化合物を含んでいないことを特徴とする電解液組成物」と訂正する。 請求項1を引用する請求項3~6、9、10についても、同様に訂正する。 イ 訂正事項2 請求項7について、本件訂正前の「前記界面活性剤は、前記組成物の動的表面張力が、≦35mN/mとなる濃度で含まれていることを特徴とする電解液組成物」を「前記界面活性剤は、前記組成物の気泡圧力張力計を使用して測定される動的表面張力が、≦35mN/mとなる濃度で含まれており、前記界面活性剤が、≧0.0000001重量%~≦0.000002重量%の濃度範囲で含まれており、パーフルオロ化化合物を含んでいないことを特徴とする電解液組成物」と訂正する。 請求項7を引用する請求項9、10、12、13についても、同様に訂正する。 ウ 訂正事項3 請求項14について、本件訂正前の「基材表面に金属層を析出させる方法であって、その上に金属層が析出される基材を提供する工程と;請求項1から9のいずれかに記載の水性電解液組成物を提供する工程と;前記水性電解液組成物を、前記金属層が析出される基材の表面と接触させる工程と;を含み、前記水性電解液組成物を提供する工程は、」を「基材表面に金属層を析出させる方法であって、その上に金属層が析出される基材を提供する工程と;水性電解液組成物を提供する工程と;前記水性電解液組成物を、前記金属層が析出される基材の表面と接触させる工程と;を含み、前記水性電解液組成物は、少なくとも析出される金属のイオンと、部分的にフッ素化されておりパーフルオロ化されていない少なくとも1種の界面活性剤と、塩酸、硫酸、アルカンスルホン酸、リン酸、ホスホン酸、マロン酸、リンゴ酸、及び乳酸からなる群から選択される少なくとも1種の酸と、一般式CNFMHZSO2OHで表され、式中、Nは、≧6~≦22の整数であり、Xは、F、Cl又はBrであり、M≦2Nであり、Z=2N+1-Mである少なくとも1種のハロゲン化アルコールのエステルとを含む水性組成物である消泡剤と、一般式CNFMHZSO2OHで表され、式中、Nは、≧6~≦22の整数であり、M≦2Nであり、Z=2N+1-Mであるスルホン酸とを含み、前記界面活性剤が、一般式CNFMHZSO2Xで表され、式中、Nは、≧6~≦22の整数であり、M≦2Nであり、Z=2N+1-Mであり、Xは、F、Cl又はBrのいずれかである少なくとも1種の界面活性剤であって、前記界面活性剤は、前記組成物の気泡圧力張力計を使用して測定される動的表面張力が、≦35mN/mとなる濃度で含まれており、前記界面活性剤が、≧0.0000001重量%~≦0.000002重量%の濃度範囲で含まれており、パーフルオロ化化合物を含んでいない電解液組成物であり、前記水性電解液組成物を提供する工程は、」と訂正するとともに、「前記水性界面活性剤組成物が、≦35mN/mの動的表面張力を提供するために前記基本電解液に添加される工程」を「前記水性界面活性剤組成物が、≦35mN/mの気泡圧力張力計を使用して測定される動的表面張力を提供するために前記基本電解液に添加される工程」と訂正する。 請求項14を引用する請求項15~18についても、同様に訂正する。 エ 訂正事項4 請求項2を削除する。 オ 訂正事項5 請求項11を削除する。 カ 訂正事項6 請求項3について、本件訂正前の「請求項1から2のいずれかに記載の電解液組成物」を「請求項1に記載の電解液組成物」と訂正する。 請求項3を引用する請求項4~6、9、10についても、同様に訂正する。 キ 訂正事項7 請求項6について、本件訂正前の「請求項1から5のいずれかに記載の電解液組成物」を「請求項1、及び3から5のいずれかに記載の電解液組成物」と訂正する。 請求項6を引用する請求項9、10についても、同様に訂正する。 ク 訂正事項8 請求項9について、本件訂正前の「請求項1から8のいずれかに記載の電解液組成物」を「請求項1、及び3から7のいずれかに記載の電解液組成物」と訂正する。 請求項9を引用する請求項10についても、同様に訂正する。 ケ 訂正事項9 請求項10について、本件訂正前の「請求項1から9のいずれかに記載の電解液組成物」を「請求項1、3から7、及び9のいずれかに記載の電解液組成物」と訂正する。 コ 訂正事項10 請求項12について、本件訂正前の「前記化合物は、≧0.0000004重量%~≦0.0000015重量%の濃度で存在しており、パーフルオロ化化合物を含んでいない請求項7に記載の電解液組成物」を「前記化合物は、≧0.0000004重量%~≦0.0000015重量%の濃度で存在している請求項7に記載の電解液組成物」と訂正する。 請求項12を引用する請求項13についても、同様に訂正する。 サ 訂正事項11  願書に添付された明細書(以下、「本件明細書」という。)【0041】について、本件訂正前の「例えば1mL/L~4mL/Lの最大約4mL/Lまでの様々な濃度で、例えば、0mL/L、1mL/L、2mL/L、3mL/L、及び4mL/Lで添加した。」を「例えば1mL/L~4mL/Lの最大約4mL/Lまでの様々な濃度で、例えば、1mL/L、2mL/L、3mL/L、及び4mL/Lで添加した。」と訂正する。 シ 訂正事項12 請求項15について、本件訂正前の「前記水性電解液組成物の動的表面張力」を「前記水性電解液組成物の気泡圧力張力計を使用して測定される動的表面張力」と訂正する。 請求項15を引用する請求項16~18についても、同様に訂正する。 ス 訂正事項13 請求項8を削除する。 セ 訂正事項14 請求項19について、本件訂正前の「少なくとも1種のスルホン酸とを含むことを特徴とする界面活性剤組成物の使用」を「少なくとも1種のスルホン酸とを含み、前記界面活性剤は、前記組成物の気泡圧力張力計を使用して測定される動的表面張力が、≦35mN/mとなる濃度で含まれており、前記界面活性剤が、≧0.0000001重量%~≦0.000002重量%の濃度範囲で含まれており、パーフルオロ化化合物を含んでいないことを特徴とする界面活性剤組成物の使用」と訂正する。 ソ 別の訂正単位とする求め 本件訂正は、訂正後の請求項14と、訂正後の請求項14を引用する請求項15~18については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めるものである。 2 当審の判断 (1)訂正の目的、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び、新規事項追加の有無 ア 訂正事項1について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1について、本件訂正前の請求項2及び11に記載された事項を付加するとともに、本件明細書【0021】の記載を根拠として、本件訂正前の発明特定事項である「動的表面張力」について、「気泡圧力張力計を使用して測定される」ことを特定したものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、願書に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「本件明細書等」という。)に記載された範囲内の訂正である。 イ 訂正事項2について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項7について、本件訂正前の請求項2及び11に記載された事項を付加するとともに、本件明細書【0021】の記載を根拠として、本件訂正前の発明特定事項である「動的表面張力」について、「気泡圧力張力計を使用して測定される」ことを特定したものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された範囲内の訂正である。 ウ 訂正事項3について 訂正事項3は、本件訂正前の請求項14の「請求項1から9のいずれかに記載の水性電解液組成物」について、本件訂正後に、本件訂正前の請求項1~9との引用形式を解消した上で、本件訂正前の請求項1~4の全てを引用する請求項6に係る発明の発明特定事項を繰り入れるとともに、本件訂正前の請求項11に記載された事項を付加し、さらに、本件明細書【0021】の記載を根拠として、本件訂正前の発明特定事項である「動的表面張力」について、「気泡圧力張力計を使用して測定される」ことを特定したものであるから、「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された範囲内の訂正である。 エ 訂正事項4について 訂正事項4は、請求項2を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された範囲内の訂正である。 オ 訂正事項5について 訂正事項5は、請求項11を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された範囲内の訂正である。 カ 訂正事項6~9について 訂正事項6~9はいずれも、上記訂正事項4により、請求項2が削除され、また、上記訂正事項13により、請求項8が削除されたことに伴い、請求項2、8の引用を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された範囲内の訂正である。 キ 訂正事項10について 訂正事項10は、上記訂正事項2により、請求項7について、「パーフルオロ化化合物を含んでいない」との発明特定事項が付加されたことに伴い、請求項7を引用する請求項12から、重複する当該発明特定事項を省くものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された範囲内の訂正である。 ク 訂正事項11について 訂正事項11は、本件明細書【0041】において、本件訂正前は「1mL/L~4mL/Lの最大約4mL/Lまでの様々な濃度で、例えば、0mL/L、1mL/L、2mL/L、3mL/L、及び4mL/Lで添加した」と記載されており、「1mL/L~4mL/L」と「例えば、0mL/L、1mL/L、2mL/L、3mL/L、及び4mL/L」とにおいて、後者に「0mL/L」が含まれているために、前者と後者とが整合していなかったものを、本件訂正後に「0mL/L、」を省くものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された範囲内の訂正である。 また、明細書の訂正である訂正事項11は、本件訂正前の請求項1~19に対応する明細書の記載を訂正するものであるから、本件訂正請求に係る明細書の訂正は、請求項の全てについて行うものである。 ケ 訂正事項12について 訂正事項12は、本件訂正前の請求項15について、本件明細書【0021】の記載を根拠として、本件訂正前の発明特定事項である「動的表面張力」について、「気泡圧力張力計を使用して測定される」ことを特定したものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された範囲内の訂正である。 コ 訂正事項13について 訂正事項13は、請求項8を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された範囲内の訂正である。 サ 訂正事項14について 訂正事項14は、本件訂正前の請求項19について、本件訂正前の請求項2及び11に記載された発明特定事項を付加するとともに、請求項1の記載、及び、本件明細書【0021】の記載を根拠として、「前記界面活性剤は、前記組成物の気泡圧力張力計を使用して測定される動的表面張力が、≦35mN/mとなる濃度で含まれており、」と特定したものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された範囲内の訂正である。 シ 以上によれば、訂正事項1~14は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、「特許請求の範囲の減縮」、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する、「明瞭でない記載の釈明」、または、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないから、同法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであり、また、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正であるから、同法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであり、さらに、当該明細書の訂正に係る請求項の全てについて行うものであるから、同法第120条の5第9項で準用する第126条第4項に適合するものである。 (2)独立特許要件 本件は、訂正前の全請求項について特許異議申立がなされているので、訂正事項1~14について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項は適用されない。 (3)一群の請求項について 本件訂正前の請求項2~6、8~11、14~18は、請求項1を引用するものであり、本件訂正前の請求項8~18は、請求項7を引用するものであるから、本件訂正前の請求項1~18は、一群の請求項である。 一方、本件訂正は、請求項14について請求項1~9との引用関係を解消するものであり、また、請求項14及び当該請求項を引用する請求項15~18について、当該請求項についての訂正が認められるときには、別の訂正単位とすることを求めるものである。 そして、請求項14及び当該請求項を引用する請求項15~18についての訂正事項である訂正事項3、12は、上記2の(1)のウ、ケで検討したとおり認められるものであって、請求項14~18は別の訂正単位となるので、本件訂正請求は、訂正後の請求項〔1~13〕、〔14~18〕、19を訂正単位とするものである。 5 本件訂正請求のむすび 以上のとおり、平成31年2月6日に特許権者が行った本件訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号または第4号を目的とするものであり、同法第120条の5第9項で準用する第126条第4項、第5項及び第6項に適合するものであるから、特許請求の範囲の請求項〔1~13〕、〔14~18〕、19について、結論のとおり訂正することを認める。 第3 特許異議申立について 1 本件発明 平成30年6月21日に特許権者が行った請求項1~19についての訂正は、上記第2で検討したとおり、適法なものであるから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~19に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明19」という。また、これらをまとめて「本件発明」という。)は、本件訂正に係る訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~19に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 基材表面上に金属層を析出するための水性電解液組成物であって、 少なくとも析出される金属のイオンと、 部分的にフッ素化されておりパーフルオロ化されていない少なくとも1種の界面活性剤とを含み、 前記界面活性剤が、一般式CNFMHZSO2Xで表され、式中、Nは、≧6~≦22の整数であり、M≦2Nであり、Z=2N+1-Mであり、Xは、F、Cl又はBrのいずれかである少なくとも1種の界面活性剤であって、 前記界面活性剤は、前記組成物の気泡圧力張力計を使用して測定される動的表面張力が、≦35mN/mとなる濃度で含まれており、前記界面活性剤が、≧0.0000001重量%~≦0.000002重量%の濃度範囲で含まれており、 パーフルオロ化化合物を含んでいないことを特徴とする電解液組成物。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 消泡剤を含む請求項1に記載の電解液組成物。 【請求項4】 前記消泡剤が、塩酸、硫酸、アルカンスルホン酸、リン酸、ホスホン酸、マロン酸、リンゴ酸、及び乳酸からなる群から選択される少なくとも1種の酸と、一般式CNFMHZOHで表され、式中、Nは、≧6~≦22の整数であり、Xは、F、Cl又はBrであり、M≦2Nであり、Z=2N+1-Mである少なくとも1種のハロゲン化アルコールのエステルとを含む水性組成物である請求項3に記載の電解液組成物。 【請求項5】 前記消泡剤が、≧0.0001重量%~≦0.005重量%の濃度範囲で含まれている請求項4に記載の電解液組成物。 【請求項6】 一般式CNFMHZSO2OHで表され、式中、Nは、≧6~≦22の整数であり、M≦2Nであり、Z=2N+1-Mであるスルホン酸を含む請求項1、及び3から5のいずれかに記載の電解液組成物。 【請求項7】 基材表面上に金属層を析出するための水性電解液組成物であって、 少なくとも析出される金属のイオンと、 部分的にフッ素化されておりパーフルオロ化されていない少なくとも1種の界面活性剤と、 一般式CNFMHZSO2OHで表され、式中、Nは、≧6~≦22の整数であり、M≦2Nであり、Z=2N+1-Mであるスルホン酸とを含み、 前記界面活性剤は、前記組成物の気泡圧力張力計を使用して測定される動的表面張力が、≦35mN/mとなる濃度で含まれており、 前記界面活性剤が、≧0.0000001重量%~≦0.000002重量%の濃度範囲で含まれており、 パーフルオロ化化合物を含んでいないことを特徴とする電解液組成物。 【請求項8】 (削除) 【請求項9】 前記電解液組成物中にそのイオンが含まれる前記析出される金属が、Cu、Ni、Cr、Ag、Au、Pt、Zn、Fe、In、Ga、W、Se、Te、Mn、Bi、Co、Sn、及びCdからなる群から選択される少なくとも1種の金属である請求項1、及び3から7のいずれかに記載の電解液組成物。 【請求項10】 前記金属イオンが、Crイオンである請求項1、3から7、及び9のいずれかに記載の電解液組成物。 【請求項11】 (削除) 【請求項12】 前記部分的にフッ素化された界面活性剤として、一般式CNFMHZSO2Xで表され、式中、Nは、≧6~≦22の整数であり、M≦2Nであり、Z=2N+1-Mであり、Xは、F、Cl又はBrのいずれかである化合物と; 前記金属イオンとして、Znイオン又はCrイオンと; を含み、前記化合物は、≧0.0000004重量%~≦0.0000015重量%の濃度で存在している請求項7に記載の電解液組成物。 【請求項13】 前記部分的にフッ素化された界面活性剤が、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8-トリデカフルオロオクタンスルホニルクロリドである請求項12に記載の電解液組成物。 【請求項14】 基材表面に金属層を析出させる方法であって、 その上に金属層が析出される基材を提供する工程と; 水性電解液組成物を提供する工程と; 前記水性電解液組成物を、前記金属層が析出される基材の表面と接触させる工程と;を含み、 前記水性電解液組成物は、 少なくとも析出される金属のイオンと、 部分的にフッ素化されておりパーフルオロ化されていない少なくとも1種の界面活性剤と、 塩酸、硫酸、アルカンスルホン酸、リン酸、ホスホン酸、マロン酸、リンゴ酸、及び乳酸からなる群から選択される少なくとも1種の酸と、一般式CNFMHZOHで表され、式中、Nは、≧6~≦22の整数であり、Xは、F、Cl又はBrであり、M≦2Nであり、Z=2N+1-Mである少なくとも1種のハロゲン化アルコールのエステルとを含む水性組成物である消泡剤と、 一般式CNFMHZSO2OHで表され、式中、Nは、≧6~≦22の整数であり、M≦2Nであり、Z=2N+1-Mであるスルホン酸とを含み、 前記界面活性剤が、一般式CNFMHZSO2Xで表され、式中、Nは、≧6~≦22の整数であり、M≦2Nであり、Z=2N+1-Mであり、Xは、F、Cl又はBrのいずれかである少なくとも1種の界面活性剤であって、 前記界面活性剤は、前記組成物の気泡圧力張力計を使用して測定される動的表面張力が、≦35mN/mとなる濃度で含まれており、 前記界面活性剤が、≧0.0000001重量%~≦0.000002重量%の濃度範囲で含まれており、 パーフルオロ化化合物を含んでいない電解液組成物であり、 前記水性電解液組成物を提供する工程は、 少なくとも前記析出される金属のイオンを、金属層の析出を可能にするのに十分な濃度で含む水性基本電解液を提供する工程と; 前記基本電解液に、水性界面活性剤組成物を添加する工程であって、前記界面活性剤組成物は、一般式CNFMHZSO2Xで表され、式中、Nは、≧6~≦22の整数であり、M≦2Nであり、Z=2N+1-Mであり、Xは、F、Cl又はBrのいずれかである少なくとも1種の界面活性剤と、塩酸、硫酸、アルカンスルホン酸、リン酸、ホスホン酸、マロン酸、リンゴ酸、及び乳酸からなる群から選択される少なくとも1種の酸、及び一般式CNFMHZOHで表され、式中、Nは、≧6~≦22の整数であり、Xは、F、Cl又はBrであり、M≦2Nであり、Z=2N+1-Mである少なくとも1種のハロゲン化アルコールのエステルを含む水性組成物である少なくとも1種の消泡剤と、並びに、一般式CNFMHZSO2OHで表され、式中、Nは、≧6~≦22の整数であり、M≦2Nであり、Z=2N+1-Mである少なくとも1種のスルホン酸とを含み、前記水性界面活性剤組成物が、≦35mN/mの気泡圧力張力計を使用して測定される動的表面張力を提供するために前記基本電解液に添加される工程と; を含むことを特徴とする基材表面に金属層を析出させる方法。 【請求項15】 前記水性界面活性剤組成物の添加によって、前記水性電解液組成物の気泡圧力張力計を使用して測定される動的表面張力を≦35mN/mに維持する工程を含む請求項14に記載の方法。 【請求項16】 前記析出される金属は、Cu、Ni、Cr、Ag、Au、Pt、Zn、Fe、In、Ga、W、Se、Te、Mn、Bi、Co、Sn、及びCdからなる群から選択される少なくとも1種の金属である請求項14及び15のいずれかに記載の方法。 【請求項17】 前記析出は、前記基本電解液に少なくとも還元剤を添加することにより、自己触媒的に行われる請求項14から16のいずれかに記載の方法。 【請求項18】 前記析出は、前記基材とアノードとの間に電流を印加することにより、直流的に行われる請求項14から16のいずれかに記載の方法。 【請求項19】 Cu、Ni、Cr、Ag、Au、Pt、Zn、Fe、In、Ga、W、Se、Te、Mn、Bi、Co、Sn、及びCdからなる群から選択される少なくとも1種の金属を析出させるための電解液中の界面活性剤組成物の使用であって、 前記界面活性剤組成物が、一般式CNFMHZSO2Xで表され、式中、Nは、≧6~≦22の整数であり、M≦2Nであり、Z=2N+1-Mであり、Xは、F、Cl又はBrのいずれかである少なくとも1種の界面活性剤と、塩酸、硫酸、アルカンスルホン酸、リン酸、ホスホン酸、マロン酸、リンゴ酸、及び乳酸からなる群から選択される少なくとも1種の酸、及び一般式CNFMHZOHで表され、式中、Nは、≧6~≦22の整数であり、Xは、F、Cl又はBrであり、M≦2Nであり、Z=2N+1-Mである少なくとも1種のハロゲン化アルコールのエステルを含む水性組成物である少なくとも1種の消泡剤と、並びに、一般式CNFMHZSO2OHで表され、式中、Nは、≧6~≦22の整数であり、M≦2Nであり、Z=2N+1-Mである少なくとも1種のスルホン酸とを含み、 前記界面活性剤は、前記組成物の気泡圧力張力計を使用して測定される動的表面張力が、≦35mN/mとなる濃度で含まれており、 前記界面活性剤が、≧0.0000001重量%~≦0.000002重量%の濃度範囲で含まれており、 パーフルオロ化化合物を含んでいないことを特徴とする界面活性剤組成物の使用。」 2 取消理由の概要 2-1 平成30年3月19日付けで通知された取消理由の概要 (1)特許法第36条第6項第2号(明確性要件)について ア 願書に添付された特許請求の範囲の請求項1、7には、「前記組成物の動的表面張力が、≦35mN/m」と、同請求項14には、「≦35mN/mの動的表面張力」と記載されているが、「動的表面張力」の具体的な測定条件等は、何ら記載されておらず、また、具体的な測定条件が明記されていない場合に、特定の測定条件を採用することが通常であるという当業者に共通の認識があったものとも認められないから、同請求項1、7、14に係る発明は、不明確であり、また、これらの特許を引用する同請求項2~6、8~13及び15~18に係る発明も不明確である。 よって、同請求項1~18に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 イ 願書に添付された特許請求の範囲の請求項14の記載において、「請求項1~9のいずれかに記載の水性電解液組成物」と同請求項14に具体的に記載された「水性電解液組成物」とが整合せず、同請求項14の「水性電解液組成物」を構成する成分として、何が含まれるのか把握することができないから、同請求項14に係る発明は不明確である。 よって、同請求項14に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について ア 願書に添付された特許請求の範囲の請求項1、7で特定される「界面活性剤」は、「電解液組成物」の「動的表面張力が、≦35mN/mとなる濃度で含まれている」ものであるが、「界面活性剤」について、本件明細書の実施例で具体的に記載されているのは、実施例3のみであり、実施例3の「電解液組成物」は、「動的表面張力が、≦35mN/mとなる濃度で含まれている」ものであるか否かが不明である。また、同請求項14についても同様である。 そうすると、本件明細書には、同請求項1、7、14に係る発明が課題を解決し得ることが示されているとはいえないから、同請求項1、7、14に係る発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 よって、同請求項1、7、14に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 イ 願書に添付された特許請求の範囲の請求項2で特定される「界面活性剤」の「濃度範囲」、同請求項8で特定される「スルホン酸」の「濃度範囲」、及び、同請求項12で特定される「化合物」の「濃度範囲」は、本件明細書の実施例に記載されたものではなく、本件明細書には、かかる「濃度範囲」において、本件発明の効果を奏することが示されていないから、同請求項2、8、12、13に係る発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 よって、同請求項2、8、12、13に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ウ 本件明細書の実施例3では、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1~19の「界面活性剤」を「0mL/L」添加した例が記載され、この例においても、本願発明の効果を奏する旨が記載されている。 また、本件明細書の実施例4には、同請求項1に係る発明に含まれるものであるにも関わらず、本願発明の効果を奏さない旨が記載されている。 したがって、どのような発明が本願発明の課題を解決するか不明であって、同請求項1~19に係る発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 よって、同請求項1~19に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (3)特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について 本件明細書の実施例1、3、4に記載された「ANKOR 1127調整(make up)溶液」は、どのようなものか不明であるから、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が願書に添付された特許請求の範囲の請求項1~19に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 よって、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (4)特許法第29条第2項(進歩性)について 願書に添付された特許請求の範囲の請求項1、6、7に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、及び、甲第4号証の記載事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 また、同請求項3~5、9~11、14~16、18に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、及び、甲第4、10号証の記載事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 さらに、同請求項17に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、及び、甲第4、10、12号証の記載事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 また、同請求項19に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、及び、甲第10号証の記載事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、同請求項1、3~7、9~11、14~19に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 <引用文献> 甲第2号証:DuPont社 Capstone FS-10 Technical information(2008年7月) 甲第3号証:Dupont社 Capstone FS-10 SAFETY DATA SHEET(2011年4月8日) 甲第4号証:FEDERAL REGISTER(Vol.77、No.182、September 19、2012) 甲第10号証:特開2003-292989号公報 甲第12号証:化学大辞典9、78頁(1987年2月15日第30刷発行) 2-2 平成30年11月2日付けで通知された取消理由(決定の予告)の概要 (1)特許法第36条第6項第2号(明確性要件)について ア 平成30年6月21日になされた訂正請求により訂正された請求項1、7には、「前記組成物の動的表面張力が、≦35mN/m」と、同請求項14には、「≦35mN/mの動的表面張力」と記載されているが、「動的表面張力」の具体的な測定条件等は、何ら記載されておらず、また、具体的な測定条件が明記されていない場合に、特定の測定条件を採用することが通常であるという当業者に共通の認識があったものとも認められないから、同請求項1、7、14に係る発明は、不明確であり、また、これらの発明を引用する同請求項3~6、8~10、12、13及び15~18に係る発明も不明確である。 よって、同請求項1、3~10、12~18に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (上記2-1の(1)のアと同じ。) (2)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について ア 平成30年6月21日になされた訂正請求により訂正された請求項1、7で特定される「界面活性剤」は、「電解液組成物」の「動的表面張力が、≦35mN/mとなる濃度で含まれている」ものであるが、「界面活性剤」について、本件明細書の実施例で具体的に記載されているのは、実施例3のみであり、実施例3の「電解液組成物」は、「動的表面張力が、≦35mN/mとなる濃度で含まれている」ものであるか否かが不明である。また、同請求項14についても同様である。 また、同請求項1、7、14で特定される「界面活性剤」の「濃度範囲」、請求項8で特定される「スルホン酸」の「濃度範囲」、及び、同請求項12で特定される「化合物」の「濃度範囲」は、本件明細書の実施例に記載されたものではなく、本件明細書には、かかる「濃度範囲」において、本件発明の効果を奏することが示されていない。 そうすると、本件明細書には、本件発明が課題を解決し得ることが示されているとはいえないから、同請求項1、7、8、12、14及びこれらを引用する同請求項2~6、9、10、13、15~18に係る発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 よって、同請求項1、3~10、12~18に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(上記2-1の(2)のア及びイと同じ。) イ 平成30年6月21日になされた訂正請求により訂正された請求項19に係る発明は、電解液の動的表面張力が何ら特定おらず、本件発明の課題を解決し得るとはいえないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 よって、同請求項19に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (3)特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について 平成30年6月21日になされた訂正請求により訂正された請求項1に係る発明は、「界面活性剤が、≧0.0000001重量%~≦0.000002重量%の濃度範囲で含まれて」いる事項を含んでおり、どのような手段でわずか「≧0.0000001重量%~≦0.000002重量%の濃度範囲」の「界面活性剤」の添加で「電解液組成物」の「動的表面張力が、≦35mN/m」となるのか、本件明細書の発明の詳細な説明に示されているとはいえない。 また、上記事項と同様の事項を含む同請求項7、14に係る発明、及び、同請求項1、7、14を引用する同請求項3~6、8~10、12、13、15~18に係る発明も同様である。 よって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、同請求項1、3~10、12~18に係る発明について、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 3 本件明細書の記載 本件訂正請求により訂正された、本件明細書及び図面には、次の記載がある。 (1)発明の詳細な説明の記載 「【技術分野】 【0001】 本発明は、基材表面上に金属層を析出するための水性電解液組成物であって、大気中放出が低減した水性電解液組成物に関する。更に、本発明は、基材表面に金属層を析出させる方法であって、大気中放出の形成が低減した方法に関する。」 「【発明の概要】 【0014】 しかしながら、当該技術分野で行われた全ての試みは、例えば、使用した界面活性剤の環境上の短所等の様々な欠点を示している。従って、本発明の目的は、大気中放出を低減する、基材表面上に金属層を析出するための改善された水性電解液組成物を提供することにある。」 「【発明を実施するための形態】 【0018】 従って、基材表面上に金属層を析出するための水性電解液組成物が提供され、前記組成物は、少なくとも析出される金属のイオンと、少なくとも1種の界面活性剤とを含み、前記界面活性剤は、組成物の動的表面張力が、≦35mN/m、好ましくは<33mN/m、最も好ましくは≦30mN/mとなる濃度で含まれている。 【0019】 驚くべきことに、組成物の動的表面張力が大気中放出の形成に影響することが見出された。組成物の動的表面張力を≦35mN/mの値に設定することにより、大気中放出の形成が大幅に低減され、有害なミストを低減するか、又は更には回避することが可能となることが見出された。大気中放出は、電極で生成して電解液の表面に発生する気泡によって引き起こされる。表面では、これらの気泡は、液体上で膨張し、崩壊することによって閉じ込められたガスを大気中に放出する。崩壊する直前の気泡壁内の液体は、電解溶からなる。液体壁は、破裂すると非常に小さな液滴に崩壊し、直ちに大気となる。この手順の巨視的な効果は、めっきタンク上に腐食性のミストを形成することである。このようなミストは、作業環境全体に容易に拡がる。 【0020】 電解液組成物の動的表面張力を35mN/m以下の値に低下させることによって、電極で生成した気泡が非常に小さくなった。気泡の小サイズ化により気泡の液体壁が非常に薄くなり、これによって気泡が電解液組成物の表面上で崩壊する際の力が減少した。この理論に束縛されるものではないが、出願人は、この崩壊時の力の減少と共に、気泡の液体壁中の液体量の減少により、大気中放出の低減又は回避という有益な効果をもたらすものと考えている。 【0021】 水性電解液組成物に関する動的表面張力は、気泡圧力張力計を用いた気泡圧力張力測定として知られる方法により測定することができる。気泡圧力張力計内において、分析対象の溶液内で規定の気泡生成速度で気泡が発生する。気泡は、既知の半径を有する毛細管により溶液中に導入される。毛細管内の圧力が測定される。このプロセスの間に、圧力はシステムによって認識される最大値を通過する。この検出方法は、電解めっきプロセス時のガス生成効果にほぼ相当するため、大気中放出の回避の問題に大きく関連する。」 「【0024】 本発明の好ましい実施形態では、組成物の動的表面張力は、標準温度、即ち20℃で測定される。」 「【実施例】 【0038】 実施例1 300g/Lのクロム酸、3.75g/Lの硫酸塩(硫酸として添加)、及び50mL/Lの触媒(Enthone Inc.から入手可能なANKOR 1127調整(make up)溶液)からなる基本電解液に、メタンジスルホン酸を、様々な濃度で、即ち、1mL/L、2mL/L、3mL/L、及び4mL/Lで添加した。得られた混合物の動的表面張力を、20℃で気泡圧力張力計によって測定した。結果を図1に示す。 【0039】 図1は、20℃で気泡圧力張力計(SITAサイエンスラインt60)を用いて測定した結果を示す。気泡寿命(バブルライフタイム)が測定される。これにより、動的表面張力を算出することができる。表面張力は、液体中の分子の互いの引力によって生じる。媒質の内部の分子を見た場合、分子は全ての隣接する分子によって均等に引かれることになる。その結果、分子は全ての側から等しい力で引かれるため、合力はゼロとなる。一方で、分子が液体の表面に配置されている場合、媒質の内部からの引力は一方の側に働くものの、他方の側の分子が存在しない。従って、合力は液体の内部に向けられる。その結果、微視的スケールでは、液体の表面を最小化するために液滴が丸くなる。従って、表面張力は、表面をある規定値増加させるのに必要なエネルギーとして定義され、最小表面は最小エネルギーに対応する。試験液の分子間の引力により、液体中の気泡もまたこれらの力を受ける。即ち、液体内に生成した気泡は表面張力によって圧縮される。結果として、気泡の半径が減少するとともに圧力が増大する。この気泡の外側と比較して増加した圧力が、表面張力を測定するために使用される。空気は、毛細管を介して液体内へと送られる。気泡の表面は膨らみ(bulge)を形成し、気泡の半径は連続的に減少する。この工程の間に、気泡の半径が最小となるまで圧力が最大に上昇する。この半径は、毛細管の半径に等しく、半球体を形成する。この点を通過した後、気泡が弾けて毛細管から離脱する。すると、新たな気泡を毛細管の先端に形成することが可能となる。この工程の間、気泡内の圧力の特徴的な経過を測定することができる。この圧力の特徴的な経過から、表面張力を計算することができる。 【0040】 実施例2 15g/Lのニッケル、40g/Lの次亜リン酸ナトリウム、35g/Lのヒドロキシカルボン酸(例えば、乳酸)、2.5g/Lのヒドロキシポリカルボン酸(例えば、マロン酸)、1g/Lのヨウ化カリウム、及び0.5mg/Lの安定剤(塩化アンチモンとして添加されたアンチモン)を含む無電解ニッケル浴を使用し、0.0008重量%の消泡剤を添加した。発生した水素による大気中放出は何ら観察されなかった。 【0041】 実施例3 300g/Lのクロム酸、3.75g/Lの硫酸塩(硫酸として添加)、及び50mL/Lの触媒(Enthone Inc.から入手可能なANKOR 1127調整溶液)からなる基本電解液に、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8-トリデカフルオロオクタンスルホニルクロリドを、例えば1mL/L~4mL/Lの最大約4mL/Lまでの様々な濃度で、例えば、1mL/L、2mL/L、3mL/L、及び4mL/Lで添加した。クロムめっきプロセスにおいて電解液を使用する場合に発生する水素による大気中放出は、何ら観察されなかった。 【0042】 実施例4(比較) 300g/Lのクロム酸、3.75g/Lの硫酸塩(硫酸として添加)、及び50mL/Lの触媒(Enthone Inc.から入手可能なANKOR 1127調整溶液)からなる基本電解液に、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8-トリデカフルオロオクタンスルホニルクロリドを、最大約4mL/Lまでの様々な濃度で添加した。更に、追加の界面活性剤、例えば8mL/Lの濃度のパーフルオロ化ホスホン酸エステルを添加した。得られた混合物の動的表面張力を、20℃で気泡圧力張力計によって測定した。クロムめっきプロセスにおいて電解液を使用する場合に発生する水素による顕著な大気中放出が観察された。」 (2)図面の記載 「【図1】 」 4 当審の判断(依然として解消していない取消理由) (1)特許法第36条第6項第2号(明確性要件)について ア 請求項1、7、19には、「組成物の気泡圧力張力計を使用して測定される動的表面張力が、≦35mN/m」と、請求項14には、「組成物の気泡圧力張力計を使用して測定される動的表面張力が、≦35mN/m」、及び、「≦35mN/mの気泡圧力張力計を使用して測定される動的表面張力」と、請求項15には、「水性電解液組成物の気泡圧力張力計を使用して測定される動的表面張力を≦35mN/mに維持する工程」とそれぞれ記載されている。 イ ここで、技術常識によると、動的表面張力は、非平衡状態における表面張力であり、測定条件によりその大きさは異なるものである(例えば、甲第11号証第4頁に示される時間と表面張力の関係を表したグラフ(下記の参考図参照。)によると、時間の経過に伴って動的表面張力は低下する。)。そして、本件明細書【0038】、【0039】には、「気泡圧力張力計」で動的表面張力を測定することについて記載されており、図1にはその測定結果が記載されているところ、図1に示されているように、「気泡寿命」によって「動的表面張力」が変化することがわかるが、明細書には、動的表面張力を測定する際の気泡寿命をどの値に設定するかについて何ら記載されていないため、動的表面張力を一義的に特定することができない。 ウ この点について、特許権者は、回答書1において、「訂正特許請求の範囲に記載された「動的表面張力が、≦35mN/m」の解釈は、特定の気泡寿命、すなわち予め定められた気泡寿命における「動的表面張力が、≦35mN/m」であることを意味しております。すなわち、本願の図1に記載されているとおり、気泡寿命(42641ms)における「動的表面張力が、≦35mN/m」であることを意味しております」(回答書1の第1頁の4の4-1参照。)と述べている。 エ しかしながら、本件の図1には、気泡寿命として、「42641ms」を含めて23個の数値が記載されており、本件明細書の記載を参酌しても、これらの数値のうち、請求項1、7、14,15,19に記載された「動的表面張力」が、なぜ気泡寿命「42641ms」の動的表面張力であるのか不明である。 オ また、動的表面張力測定時、気泡寿命についての条件が記載されていない場合に、気泡寿命「42641ms」の「動的表面張力」を採用することが通常であるという当業者に共通の認識があったものとも認められない。 カ したがって、上記請求項1、7、14、15、19に記載された「動的表面張力」はどのような条件で測定された表面張力か把握できず、本件発明1、7、14、15、19は明確でない。 キ また、これらの発明を引用する本件発明3~6、9、10、12、13、16~18も明確でない。 ク よって、請求項1、3~7、9、10、12~19に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (参考図) (2)特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について ア 本件発明1、14は、「界面活性剤が、一般式CNFMHZSO2Xで表され、式中、Nは、≧6~≦22の整数であり、M≦2Nであり、Z=2N+1-Mであり、Xは、F、Cl又はBrのいずれかである少なくとも1種の界面活性剤であって、前記界面活性剤は、前記組成物の気泡圧力張力計を使用して測定される動的表面張力が、≦35mN/mとなる濃度で含まれており、前記界面活性剤が、≧0.0000001重量%~≦0.000002重量%の濃度範囲で含まれており、パーフルオロ化化合物を含んでいない」との発明特定事項を、本件発明7は、「部分的にフッ素化されておりパーフルオロ化されていない少なくとも1種の界面活性剤」「を含み、」「前記界面活性剤は、前記組成物の気泡圧力張力計を使用して測定される動的表面張力が、≦35mN/mとなる濃度で含まれており、前記界面活性剤が、≧0.0000001重量%~≦0.000002重量%の濃度範囲で含まれて」いるとの発明特定事項を、本件発明19は、「界面活性剤が、一般式CNFMHZSO2Xで表され、式中、Nは、≧6~≦22の整数であり、M≦2Nであり、Z=2N+1-Mであり、Xは、F、Cl又はBrのいずれかである少なくとも1種の界面活性剤」「を含み、」「界面活性剤は、前記組成物の気泡圧力張力計を使用して測定される動的表面張力が、≦35mN/mとなる濃度で含まれており、前記界面活性剤が、≧0.0000001重量%~≦0.000002重量%の濃度範囲で含まれており、パーフルオロ化化合物を含んでいない」との発明特定事項を、それぞれ含むものである。 イ 一方、本件訂正により訂正された本件明細書【0038】及び【0039】の実施例1の記載によれば、基本電解液に、界面活性剤として、メタンジスルホン酸を0mL/L、1mL/L、2mL/L、3mL/L、及び4mL/Lで添加した際の、電解液の起泡寿命及び動的表面張力が図1(上記3の(2)参照。)に示されている。 ウ ここで、上記イのメタンジスルホン酸は、「一般式CNFMHZSO2X」で表されるものではないから、本件発明1、14、19の「界面活性剤」に相当するものではないし、「部分的にフッ素化されて」いないから、本件発明7の「界面活性剤」に相当するものではないものの、上記イの図1によれば、界面活性剤の濃度が0mL/L、1mL/L、2mL/Lの場合は、動的表面張力を≦35mN/mとすることができず、界面活性剤の濃度が3mL/Lの場合に、起泡寿命略36000msを越える領域で電解液組成物の動的表面張力を、≦35mN/mとし得るし、界面活性剤の濃度が4mL/Lの場合に、起泡寿命略13000msを越える領域で動的表面張力を、≦35mN/mとし得ることが読み取れる。そして、1mL/Lよりも低濃度の場合には、1mL/Lの曲線から0mL/Lの曲線に近づくと予想されるため、「≦35mN/m」を実現できないものと認められる。 エ そして、本件発明1、7、14、19は、それぞれ上記アで示した発明特定事項を含むものであって、いずれも、界面活性剤は、電解液組成物の気泡圧力張力計を使用して測定される動的表面張力が、≦35mN/mとなる濃度で含まれており、前記界面活性剤が、≧0.0000001重量%~≦0.000002重量%の濃度範囲で含まれているとの発明特定事項を含むものであり、パーフルオロ化化合物を含んでいない。 オ そうすると、上記(1)で検討したように、本件発明1、7、14、19の「動的表面張力」がどのような測定条件等で測定された値であるか不明ではあるが、上記ウのとおり、界面活性剤の濃度が2mL/L(当審注:特許権者は、回答書2において、「水溶液の比重、及び基本電解液の比重は、ほぼ1である」と述べていることから、ほぼ0.2重量%に相当。)以下の場合は、動的表面張力が≦35mN/mとならないにもかかわらず、上記エのとおり、本件発明1、7、14、19は、界面活性剤は、電解液組成物の気泡圧力張力計を使用して測定される動的表面張力が、≦35mN/mとなる濃度で含まれており、前記界面活性剤が、≧0.0000001重量%~≦0.000002重量%の濃度範囲で含まれているとの発明特定事項を含んでおり、どのような手段でわずか≧0.0000001重量%~≦0.000002重量%の濃度範囲の界面活性剤の添加で電解液組成物の動的表面張力が、≦35mN/mとなるのか、本件明細書の発明の詳細な説明に示されているとはいえない。 カ また、本件発明1、7、14を引用する本件発明3~6、8~10、12、13、15~18についても同様である。 キ よって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1、3~7、9、10、12~19について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。 (3)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について ア 本件発明の解決しようとする課題は、発明の詳細な説明の記載によれば、「大気中放出を低減する、基材表面上に金属層を析出するための改善された水性電解液組成物を提供すること」(【0014】)であると認められる。 イ 一方、本願明細書【0019】~【0020】には、電解液組成物の動的表面張力を35mN/m以下の値に低下させることによって、電極で生成した気泡が非常に小さくなり、気泡の小サイズ化により気泡の液体壁が非常に薄くなり、これによって気泡が電解液組成物の表面上で崩壊する際の力が減少し、この崩壊時の力の減少と共に、気泡の液体壁中の液体量の減少により、大気中放出の低減又は回避が可能となることが記載されており、この記載からすると、上記課題を解決するために、電解液組成物の動的表面張力を低下させることが有効であることが理解できるものの、電解液組成物の動的表面張力35mN/m以下という数値の根拠については、当該記載からは読み取れない。 ウ また、本件明細書に記載された実施例1~3のうち、上記課題を解決し得ることが明示的に示されているのは実施例2、3のみである(【0038】~【0041】)ところ、上記実施例1~3のうち、実施例1は、図1によれば、メタンジスルホン酸を3mL/L添加した場合に、起泡寿命36000msを越える領域で電解液組成物の動的表面張力が、≦35mN/mとなり、メタンジスルホン酸を4mL/L添加した場合に、起泡寿命13000msを越える領域で動的表面張力が、≦35mN/mとなっていることが示されているものの、実施例1には、大気中放出が低減されることが記載されておらず、実施例2、3は、大気中放出が低減されることが記載されているものの、実施例2は、一般式CNFMHZSO2Xで表される界面活性剤を含むものではないし、実施例3は、一般式CNFMHZSO2Xで表される界面活性剤を含むものではあるが、その動的表面張力が記載されていないので、一般式CNFMHZSO2Xで表される界面活性剤が、その動的表面張力が≦35mN/mとなる濃度で含まれているときに、大気中放出が低減できるか不明である。 エ さらに、実施例1~3において、本件発明1、14、19の「一般式CNFMHZSO2Xで表され、式中、Nは、≧6~≦22の整数であり、M≦2Nであり、Z=2N+1-Mであり、Xは、F、Cl又はBrのいずれかである」事項を満たす「界面活性剤」、または、本件発明7、14の「部分的にフッ素化されておりパーフルオロ化されていない」事項を満たす「界面活性剤」に該当するものは、実施例3の「3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8-トリデカフルオロオクタンスルホニルクロリド」(当審注:「3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクタンスルホニルクロリド」の誤記であると認められる。)のみである。 オ また、実施例1~3において、本件発明1、7、14、19の「界面活性剤が、≧0.0000001重量%~≦0.000002重量%の濃度範囲で含まれて」いる事項を満たすものはないし、本件発明12の「化合物は、≧0.0000004重量%~≦0.0000015重量%の濃度で存在している」事項を満たすものはない。 カ ここで、上記オの点について、特許権者は、回答書1において、「本願明細書に概説されるとおり、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクタンスルホニルクロリドを含有する水性界面活性剤組成物が基本電解液に添加されます。具体的に、実施例3には、「基本電解液に」界面活性剤を添加することが記載されております。この場合、開示に基づきますと、界面活性剤の添加は、ある量の界面活性剤を含有する水溶液を意味すると理解されるべきであり、これは、実施例3において、「基本電解液に、例えば、0mL/L、1mL/L、2mL/L、3mL/L、及び4mL/Lで添加した」のように「mL/L」を用いた記載がされていることにより、さらに証明されると考えます。また、上記水溶液は約0.0025重量%の消泡剤の市販品を含み、これは、20重量%の3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクタンスルホニルクロリドを含有する水溶液として入手可能であります」(2頁目第12~27行)と述べている。 キ また、特許権者は、回答書2において、上記カの「これは、20重量%の3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクタンスルホニルクロリドを含有する水溶液として入手可能であります」の「これ」は、市販品である「消泡剤」、すなわち、CAPSTONE FS-65を意味すること(4-2質問事項(2)参照。)、CAPSTONE FS-65は消泡剤であり、同時に界面活性剤の特性も有すること(4-1質問事項(1)参照。)を述べている。 ク 上記カ及びキの回答からすると、実施例3では、基本電解液に「ある量の界面活性剤を含有する水溶液」が添加され、「ある量の界面活性剤を含有する水溶液」とは、約0.0025重量%の「消泡剤の市販品」、すなわち、「20重量%の3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクタンスルホニルクロリドを含有する水溶液」を含むものとのことである。すなわち、実施例3では、基本電解液に、20重量%の水溶液である「消泡剤の市販品」を、約0.0025重量%に薄めて添加しているとのことである。 ケ しかしながら、実施例3の記載である、本件明細書【0041】には、「基本電解液に、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8-トリデカフルオロオクタンスルホニルクロリドを、例えば1mL/L~4mL/Lの最大約4mL/Lまでの様々な濃度で、例えば、1mL/L、2mL/L、3mL/L、及び4mL/Lで添加した」と記載されているだけであり、この記載からすると、「3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8-トリデカフルオロオクタンスルホニルクロリド」自体を「例えば1mL/L~4mL/Lの最大約4mL/Lまでの様々な濃度で」添加したと解されるし、仮に、添加するものが「3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8-トリデカフルオロオクタンスルホニルクロリド」自体ではなく、20重量%の水溶液であるとしても、当該水溶液が「消泡剤の市販品」ではなく、「消泡剤の市販品」を約0.0025重量%に薄めることは、本件明細書の記載から読み取れないし、基本電解液に界面活性剤を添加する際に、市販品である水溶液を約0.0025重量%に薄めることが通常であるという当業者に共通の認識があったものとも認められない。 コ そうすると、上記オのとおり、実施例1~3は、本件発明1、7、14、19の「界面活性剤が、≧0.0000001重量%~≦0.000002重量%の濃度範囲で含まれて」いる事項を満たすものではないし、本件発明12の「化合物は、≧0.0000004重量%~≦0.0000015重量%の濃度で存在している」事項を満たすものでもない。 サ したがって、実施例1~3は、いずれも本願発明1、7、12、14、19に含まれるものとはいえないから、本件発明1、7、12、14、19が上記課題を解決し得ることを示したものとはいえない。 シ また、これらの請求項を引用する請求項3~6、9、10、13、15~18についても同様である。 ス したがって、本件発明1、3~7、9、10、12~19は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 セ よって、請求項1、3~7、9、10、12~19に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 5 むすび 以上のとおり、上記4の(1)で検討したとおり、本件の請求項1、3~7、9、10、12~19に係る発明は、その特許請求の範囲の記載が明確とはいえないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、当該請求項に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 また、上記4の(2)で検討したとおり、発明の詳細な説明の記載は、本件の請求項1、3~7、9、10、12~19に係る発明について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、当該請求項に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 さらに、上記4の(3)で検討したとおり、本件の請求項1、3~7、9、10、12~19に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されているとはいえないため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、当該請求項に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 また、本件の請求項2、8、11に係る特許は、本件訂正により削除されたから、本件特許の請求項2、8、11に対して、申立人がした特許異議申立については、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-701191

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