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特許異議申立

2017-700620

道路の防水構造層除去方法およびその方法に用いる切削機ならびに研磨機

審判番号
2017-700620
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-051949
登録番号
特許第6051481号(P6051481)
請求日
2017年06月19日
審決日
2018年01月24日
公報発行日
2018年11月30日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】株式会社マルホウ
  • 【異議申立人】範多機械 株式会社
  • 【異議申立人代理人】▲高▼山 嘉成
  • 【異議申立人】樋口 幸弘
審判長/審判官
  • 審判長 西村 泰英
  • 審判官 栗田 雅弘
  • 審判官 近藤 裕之
分類
P1651.121-ZC (B24B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6051481号発明「道路の防水構造層除去方法およびその方法に用いる切削機ならびに研磨機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6051481号の請求項6に係る特許を取り消す。 同請求項1ないし5、7ないし9に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6051481号の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、平成28年3月16日に特許出願され、平成28年12月9日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人範多機械株式会社及び特許異議申立人樋口幸弘により特許異議の申立てがされた。そして、平成29年9月29日付けで取消理由が通知されたが、その指定期間内に特許権者からの応答はなかったものである。 第2 本件発明 特許第6051481号の請求項1ないし9の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものである。 第3 平成29年9月29日付け取消理由通知 1.取消理由通知の内容 上記平成29年9月29日付けで通知された取消理由を再掲すると、以下のとおりである。 本件特許の請求項6に係る発明(以下,「本件特許発明」という。)は,その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 引用例1(特許異議申立人範多機械株式会社の甲第9号証):F-MOVIE,“【首都高速道路での夜間作業】 (株)フタミと範多機械(株)が共同開発した 国産大型乗用式スクレーパー(ワイルドボア)”,[online],2015年7月29日公開,YouTube,[平成29年1月20日代理人高山嘉成検索],インターネット,<URL:https://youtu.be/3BtygFO5CVE> 引用例2(特許異議申立人範多機械株式会社の甲第1号証):NationalFlooringEqui,“5700 All Day Battery Floor Removal Ride-On Machine”,[online],2010年3月6日公開,YouTube,[平成29年5月5日代理人高山嘉成検索],インターネット,<URL:https://youtu.be/PssLEUisQ58> 引用例3(特許異議申立人範多機械株式会社の甲第2号証の1):ICSinc7,“Terminator T2100EI Attachments”,[online],2013年7月29日公開,YouTube,[平成29年5月5日代理人高山嘉成検索],インターネット,<URL:https://youtu.be/f040V90gFUA> 引用例4(特許異議申立人範多機械株式会社の甲第3号証の1):ICSinc7,“Terminator T2100EI Getting Started”,[online],2013年7月29日公開,YouTube,[平成29年5月5日代理人高山嘉成検索],インターネット,<URL:https://youtu.be/8yQinkr_-sQ> 引用例5(特許異議申立人範多機械株式会社の甲第4号証):ICSinc7,“Parking Garage Coating Removal - Innovatech Terminator”,[online],2014年1月15日公開,YouTube,[平成29年5月5日代理人高山嘉成検索],インターネット,<URL:https://youtu.be/dpqV-yKbklw> 引用例6(特許異議申立人樋口幸弘の甲第3号証):米国特許第6343981号明細書 引用例7:土木学会鋼構造委員会道路橋床版の維持管理評価に関する構造小委員会,“道路橋床版防水システムガイドライン(案)”,公益社団法人土木学会,平成24年6月21日発行,p.3及びp.8 (1)引用例1を主引用例とする場合 引用例1には,特許異議申立人範多機械株式会社の特許異議申立書第20ページ第11行-第23ページ第5行のとおりであって「首都高速道路の道路橋の道路改修工事において,構造層を除去する際に用いる切削機であって,動力車両と,前記動力車両の前端に装着されており,前記構造層を切削する切削刃と,前記切削刃を前記動力車両の前端に装着するための装着部材と,前記切削刃の前記構造層の表面に対する角度を調節するための角度調節装置と,を備えており,前記切削刃および装着部材は,その切削刃が装着された状態の前記装着部材を180度反転させて前記動力車両の前端に装着できるように構成されている切削機。」が看取できる。 ここで,本件特許発明と引用例1に開示された発明とを対比すると,一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 道路改修工事において,構造層を除去する際に用いる切削機であって,動力車両と,前記動力車両の前端に装着されており,前記構造層を切削する切削刃と,前記切削刃を前記動力車両の前端に装着するための装着部材と,前記切削刃の前記構造層の表面に対する角度を調節するための角度調節装置と,を備えており,前記切削刃および装着部材は,その切削刃が装着された状態の前記装着部材を180度反転させて前記動力車両の前端に装着できるように構成されている切削機。 <相違点1> 本件特許発明は「コンクリート床版と,前記コンクリート床版の表面に形成された合成樹脂製のプライマー層と,前記プライマー層の表面に接着された合成樹脂製の防水層とを有する道路の改修工事において,少なくとも前記プライマー層および防水層を有する防水構造層を除去する際に用いる切削機」であるのに対し,引用例1の画像からは,材質や組成が特定できないことから,引用例1に開示された発明は,改修工事が行われている道路橋の道路が,コンクリート床版と,前記コンクリート床版の表面に形成された合成樹脂製のプライマー層と,前記プライマー層の表面に接着された合成樹脂製の防水層とを有する道路であるかどうかが明らかで無く,そのため,切削機で除去されている構造層が防水構造層であるかどうかも不明である点。 <相違点2> 本件特許発明は「前記動力車両の前端に着脱可能に装着されており,前記防水構造層を切削する切削刃と,前記切削刃を前記動力車両の前端に着脱可能に装着するための装着部材と」を有するものであるのに対し,引用例1に開示された発明は切削刃や装着部材が着脱可能であるかどうかが不明である点。 <相違点3> 本件特許発明は「前記切削刃の刃先が摩耗によって前記防水構造層の表面から進入し難い状態になったときに,その切削刃が装着された状態の前記装着部材を180度反転させて前記動力車両の前端に装着することにより,前記刃先が前記防水構造層の表面から進入し易い状態となるように構成されている」ものであるのに対し,引用例1に開示された発明は「切削刃が装着された状態の前記装着部材を180度反転させる」タイミングが「前記切削刃の刃先が摩耗によって前記防水構造層の表面から進入し難い状態になったとき」であるかどうかが明らかで無く,また,「前記装着部材を180度反転させる」事項が「前記刃先が前記防水構造層の表面から進入し易い状態となる」と関連したものかが不明である点。 以下,上記相違点について検討する。 <相違点1について> 引用例1は,道路橋の改修工事であるが,道路橋の床版は床版防水システムが必要(引用例7第3ページの「2.1 床版の変状と床版防水システムの必要性」を参照されたい。)であって,その構成が「コンクリート床版と,前記コンクリート床版の表面に形成された合成樹脂製のプライマー層と,前記プライマー層の表面に接着された合成樹脂製の防水層と」を有する道路であることは,一般的な事項(引用例7第8ページの「2.2 床版防水システムの構成」を参照されたい。)であるから,引用例1の道路橋も同様なものであると考えられる。 また,引用例1には「コンクリート床版と,前記コンクリート床版の表面に形成された合成樹脂製のプライマー層と,前記プライマー層の表面に接着された合成樹脂製の防水層を有する道路」に反する画像は看取されず,また,引用例1において動画の位置から下方に看取され,「2015/07/29に公開」で始まるコメント欄の第4-6行にある「乗用式スクレーパー(ワイルドボア)はコンクリート床版を傷めることなく,切削残留層(約10mm)を効率よく除去,防水層(シート系,ウレタン系,樹脂系など),床材(塗膜系,ウレタン系,Pタイルなど),競技場の舗装材の剥離に使用する機械です。」という情報の表示も引用例1の道路構造が上記相違点1に係る構造の道路であることを示唆している。 そうすると,引用例1に開示された発明も,上記相違点1に係る事項を備えていると推認できるから,上記相違点1は実質的な相違点ではない。 <相違点2について> 切削刃や装着部材を着脱可能とすることは,引用例3,引用例6(特に,第7図を参照されたい。)に開示されているように,当業者にとって従来から周知の技術的事項である。 そうすると,引用例1に開示された発明で直接的には不明とされた相違点2に係る事項についても,切削刃や装着部材を着脱可能なものとし,上記相違点2に係る事項を備えたものとすることは,当業者にとって容易になし得た事項である。 <相違点3について> 装着部材を180度回転させる条件や,装着部材を180度回転させるという構造を備えていれば当然奏すると考えられる「刃先が対象に進入し易くなる」という効果の発現のいずれも,引用発明が180度回転できる構成からおのずと生じるものと考えるに足るので,両者に差異が生じるものでもない。 そうすると,上記相違点3は実質的な相違点ではない。 また,引用例6(特に,第4欄第46-48行,第8欄第28-37行,第10図を参照されたい。)には,切削刃(256)が装着された装着部材(220)を180度回転させることで,切削刃の刃研ぎや刃の交換を必要最小限とする旨の事項が記載されており,切削刃の刃研ぎや刃の交換を必要最小限とするために180度回転するという事項は,切削によって刃が摩耗した状態(刃研ぎや刃の交換が必要な状態)になった時に,180度回転させることによって,刃先が対象に進入し易くなる状態(切削を行う部分の刃が摩耗していない状態)にする,という事項にほかならない。 そうすると,仮に相違点3によって,本件特許発明と引用例1に開示された発明とにおける切削機の構成に何らかの差異が生じるとしても,引用例6に例示される従来から周知の技術的事項を勘案することにより,引用例1に開示された発明を上記相違点3に係る事項を備えたものとすることは,当業者にとって容易になし得た事項である。 したがって,本件特許発明は,引用例1に開示された発明及び引用例3,6,7で例示される周知の技術的事項から当業者が容易に想到し得たものである。 (2)引用例2を主引用例とする場合 引用例2には,画像からは部材の材質や機能が明らかではないので「コンクリート床版」,「合成樹脂製のプライマー層」,「プライマー層の表面に接着された合成樹脂層の防水層」,「プライマー層および防水層を有する防水構造層」を除き,特許異議申立人範多機械株式会社の特許異議申立書第7ページ第10行-第13ページ第2行のとおりであって「改修工事において,構造層を除去する際に用いる切削機であって,動力車両と,前記動力車両の前端に装着されており,前記構造層を切削する切削刃と,前記切削刃を前記動力車両の前端に装着するための装着部材と,前記切削刃の前記構造層の表面に対する角度を調節するための角度調節装置と,を備えており,前記切削刃および装着部材は,その切削刃が装着された状態の前記装着部材を180度反転させて前記動力車両の前端に装着できるように構成されている切削機。」が看取できる。 ここで,本件特許発明と引用例2に開示された発明とを対比すると,一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 改修工事において,構造層を除去する際に用いる切削機であって,動力車両と,前記動力車両の前端に装着されており,前記構造層を切削する切削刃と,前記切削刃を前記動力車両の前端に装着するための装着部材と,前記切削刃の前記構造層の表面に対する角度を調節するための角度調節装置と,を備えており,前記切削刃および装着部材は,その切削刃が装着された状態の前記装着部材を180度反転させて前記動力車両の前端に装着できるように構成されている切削機。 <相違点4> 本件特許発明は「コンクリート床版と,前記コンクリート床版の表面に形成された合成樹脂製のプライマー層と,前記プライマー層の表面に接着された合成樹脂製の防水層とを有する道路の改修工事において,少なくとも前記プライマー層および防水層を有する防水構造層を除去する際に用いる切削機」であるのに対し,引用例2に開示されているのは,屋内において床の被覆層を除去する工事であって,除去道路の改修工事ではなく,また,引用例2の画像からは,材質や組成が特定できないことから,引用例2に開示された発明は,コンクリート床版と,前記コンクリート床版の表面に形成された合成樹脂製のプライマー層と,前記プライマー層の表面に接着された合成樹脂製の防水層とを有する構造層の改修工事であるかどうかも明らかで無いため,切削機で除去されている構造層が防水構造層であるかどうかも不明である点。 <相違点5> 本件特許発明は「前記動力車両の前端に着脱可能に装着されており,前記防水構造層を切削する切削刃と,前記切削刃を前記動力車両の前端に着脱可能に装着するための装着部材と」を有するものであるのに対し,引用例2に開示された発明は切削刃や装着部材が着脱可能であるかどうかが不明である点。 <相違点6> 本件特許発明は「前記切削刃の刃先が摩耗によって前記防水構造層の表面から進入し難い状態になったときに,その切削刃が装着された状態の前記装着部材を180度反転させて前記動力車両の前端に装着することにより,前記刃先が前記防水構造層の表面から進入し易い状態となるように構成されている」ものであるのに対し,引用例2に開示された発明は「切削刃が装着された状態の前記装着部材を180度反転させる」タイミングが「前記切削刃の刃先が摩耗によって前記防水構造層の表面から進入し難い状態になったとき」であるかどうかが明らかで無く,また,「前記装着部材を180度反転させる」事項が「前記刃先が前記防水構造層の表面から進入し易い状態となる」と関連したものかが不明である点。 以下,上記相違点について検討する。 <相違点4について> 引用例2で開示されている屋内の床材の被覆層は,合成樹脂製であることが一般的であるから,屋内工事の床材の被覆層を切削する切削機である引用例2に開示された発明も,一般的な床材の被覆層である合成樹脂製の被覆層を,当然切削できる切削機であるといえる。そして,本件特許発明は「切削機」であって,その切削対象は「合成樹脂製のプライマーや防水層からなる防水構造層」であるが,「道路の改修工事」と工事対象を規定し,「プライマーや防水層」といった層の機能を限定することによって,引用例2に開示されたような屋内工事の床材の被覆層を切削する切削機との間で,本件特許発明の切削機自体の構造に違いが必ず生じるとは考えられにくい。 よって,引用例2に開示された切削機も合成樹脂製のプライマーや防水層を切削し得るものと認められ,「切削機」の構成として実質的に差異が生じるものではない。 そうすると,上記相違点4は,実質的な相違点ではない。 <相違点5,6について> 相違点5,6はそれぞれ,既に検討済みの相違点2,3に対応するものであるから,引用例2に開示された発明において,上記相違点5,6を備えたものとすることは,当業者が容易になし得た事項である。 したがって,本件特許発明は,引用例2に開示された発明及び引用例3,6で例示される周知の技術的事項から当業者が容易に想到し得たものである。 (3)引用例3-5を主引用例とする場合 引用例3-5にはそれぞれ,「T2100EI」という同じ切削機が開示されていると認められることから,引用例3-5には同じ切削機の発明が開示されているといえる。 そして,引用例3-5には,画像からは部材の材質や機能が明らかではないので「コンクリート床版」,「合成樹脂製のプライマー層」,「プライマー層の表面に接着された合成樹脂層の防水層」,「プライマー層および防水層を有する防水構造層」を除き,特許異議申立人範多機械株式会社の特許異議申立書第14ページ第6行-第19ページ下から7行のとおりであって「改修工事において,構造層を除去する際に用いる切削機であって,動力車両と,前記動力車両の前端に着脱可能に装着されており,前記構造層を切削する切削刃と,前記切削刃を前記動力車両の前端に着脱可能に装着するための装着部材と,前記切削刃の前記構造層の表面に対する角度を調節するための角度調節装置と,を備えている切削機。」が看取できる。 ここで,本件特許発明と引用例3-5に開示された発明とを対比すると,一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 改修工事において,構造層を除去する際に用いる切削機であって,動力車両と,前記動力車両の前端に着脱可能に装着されており,前記構造層を切削する切削刃と,前記切削刃を前記動力車両の前端に着脱可能に装着するための装着部材と,前記切削刃の前記構造層の表面に対する角度を調節するための角度調節装置と,を備えている切削機。 <相違点7> 本件特許発明は「コンクリート床版と,前記コンクリート床版の表面に形成された合成樹脂製のプライマー層と,前記プライマー層の表面に接着された合成樹脂製の防水層とを有する道路の改修工事において,少なくとも前記プライマー層および防水層を有する防水構造層を除去する際に用いる切削機」であるのに対し,引用例3-5に開示されているのは,屋内において床の被覆層を除去する工事であって,道路の改修工事ではなく,また,引用例3-5の画像からは,材質や組成が特定できないことから,引用例3-5に開示された発明は,コンクリート床版と,前記コンクリート床版の表面に形成された合成樹脂製のプライマー層と,前記プライマー層の表面に接着された合成樹脂製の防水層とを有する構造層の改修工事であるかどうかも明らかで無いため,切削機で除去されている構造層が防水構造層であるかどうかも不明である点。 <相違点8> 本件特許発明は「前記切削刃の刃先が摩耗によって前記防水構造層の表面から進入し難い状態になったときに,その切削刃が装着された状態の前記装着部材を180度反転させて前記動力車両の前端に装着することにより,前記刃先が前記防水構造層の表面から進入し易い状態となるように構成されている」ものであるのに対し,引用例3-5に開示された発明はそのような事項を備えているかどうかが不明である点。 以下,上記相違点について検討する。 <相違点7について> 相違点7は,既に検討済みの相違点4に対応するものであり,引用例3-5に開示された「T2100EI」という切削機も,合成樹脂製のプライマーや防水層を切削し得るものと認められる。 そうすると,上記相違点7は実質的な相違点ではない。 <相違点8について> 引用例6(特に,第4欄第46-48行,第8欄第28-37行,第10図を参照されたい。)には,切削刃(256)が装着された装着部材(220)を180度回転させることで,切削刃の刃研ぎや刃の交換を必要最小限とする旨の事項が記載されており,切削刃の刃研ぎや刃の交換を必要最小限とするために180度回転するという事項は,切削によって刃が摩耗した状態(刃研ぎや刃の交換が必要な状態)になった時に,180度回転させることによって,刃先が対象に進入し易くなる状態(切削を行う部分の刃が摩耗していない状態)にする,という事項にほかならない。 そうすると,引用例6に例示される従来から周知の技術的事項を勘案することにより,引用例3-5に開示された発明を上記相違点8に係る事項を備えたものとすることは,当業者にとって容易になし得た事項である。 したがって,本件特許発明は,引用例3-5に開示された発明及び引用例6で例示される周知の技術的事項から当業者が容易に想到し得たものである。 よって,請求項6に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2.本件請求項6に係る特許について 特許権者に対し、上記1.で示した取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかった。 そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件請求項6に係る特許は、この取消理由によって取り消すべきものである。 第4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1.特許異議申立人樋口幸弘の申立ての概要 本件特許は、以下の甲第1号証から甲第6号証をみると、特許法第29条第1項第1号又は第2号若しくは特許法第29条第1項第3号(請求項1、請求項6及び請求項7)に該当し、また、少なくとも特許法第29条第2項(請求項2-請求項5、請求項8及び請求項9)に該当するので、特許法第113条第2号に該当し、特許が取り消されるべきである。 甲第1号証:切削機(BRB2800)の写真 甲第1号証の2:切削機(BRB2800)のカタログ 甲第1号証の3:甲第1号証の2の和訳 甲第2号証:切削機(BRB4500)の写真 甲第2号証の2:切削機(BRB4500)のカタログ 甲第2号証の3:甲第2号証の2の和訳 甲第3号証:米国特許第6343981号明細書 甲第3号証の2:甲第3号証の和訳 甲第4号証:米国特許第5772284号明細書 甲第4号証の2:甲第4号証の和訳 甲第5号証:Husqvarna社の製品カタログ(研磨機 PG680) 甲第5号証の1:甲第5号証の和訳 甲第5号証の2:遊星回転研削機(PG-600型)のカタログ 甲第6号証:米国特許第6752707号明細書 2.請求項1に係る発明について (1) 請求項1に係る発明が有する「コンクリート床版と、前記コンクリート床版の表面に形成された合成樹脂製のプライマー層と、前記プライマー層の表面に接着された合成樹脂製の防水層とを有する道路の改修工事において、少なくとも前記プライマー層および防水層を有する防水構造層を除去するための方法であって、切削機により前記防水構造層を所定の深さまで切削する第1工程と、前記第1工程において前記切削機が前記防水構造層を前記所定の深さまで切削したときに前記コンクリート床版の表面に残った防水構造層を研磨機により研磨して除去する第2工程と、前記第2工程の次に前記研磨機により前記コンクリート床版の表面を研磨する第3工程と、を実行する」という特定事項については、以下に説示するとおり、甲第1号証から甲第6号証までの証拠には記載されていない。 (2) 甲第1号証に記載された切削機(BRB2800)及び甲第2号証に記載された切削機(BRB4500)は、どちらも床面スクレーパーであり、タイル、カーペット、ビニル、堅木床、薄接着剤、ゴム、エラストマーコート、スポーツ床及びプールデッキコートの除去に用いられるものであり、道路の改修工事に使用されるものではない。 また、甲第1号証及び甲第2号証の写真、甲第1号証の2及び甲第2号証の2のカタログのいずれにも、コンクリート床版上にプライマー層及び防水層が形成された道路の改修工事の方法について記載されておらず、当該道路の改修工事の方法を示唆する記載もない。 (3) 甲第3号証には、床から少なくとも1つの表面層を取り除くための自走式機械について記載されている。そして当該自走式機械は、きさげ仕上げ用のブレード組立体(図2ないし図4を参照)やグラインダー・アセンブリー(図12を参照)を交換可能に保持させることができる。 そして、甲第3号証に記載された自走式機械は、家庭、オフィスビル、店、競技場、モールや類似の構造物の床に見られる、カーペット、ビニタイル、ビニールシート品、堅木床、堅木寄木張床、エラストマーコーティング、競技用柔軟表面コーティング、大理石、スレート材、グラウト、磁器やエポキシ樹脂等の表面層の除去に用いられるものであり(第4欄34-43行を参照)、このような床の表面層の除去を行うのに建物内で操作できる小型の自走式機械としたものである(第3欄7-10行を参照)。 そうすると、甲第3号証に記載された自走式機械は、屋内使用を目的としたものであって、道路の改修工事には適当でないと言える。さらに、甲第3号証には、表面層の除去を行う路面ならし機のような機械が、床面の敷物や基礎の接着剤では不適当である旨も記載されているし(第2欄40-45行を参照)、他にコンクリート床版上にプライマー層及び防水層が形成された道路の改修工事の方法について記載された箇所はなく、当該道路の改修工事の方法を示唆する記載もない。 (4) 甲第4号証に記載された切削機は、接地面又は床から、カーペット、リノリウム、ビニルあるいはセラミックタイルのような被覆を取り除くための水平表面ストリッパー装置である。そして、甲第4号証には、コンクリート床版上にプライマー層及び防水層が形成された道路の改修工事の方法についての記載はなく、甲第4号証に記載された切削機を当該道路の改修工事に用いることを示唆する記載もない。 (5) 甲第5号証及び甲第5号証の2のカタログには、コンクリート、モルタル及び石材製の床面の研削・研磨機が紹介されているが、コンクリート床版上にプライマー層及び防水層が形成された道路の改修工事の方法についての記載はなく、当該道路の改修工事の方法を示唆する記載もない。 (6) 甲第6号証には、木材床研磨機について記載されており、堅木床、コンクリートフロア等の研磨やクリーニングについての記載はあるが、コンクリート床版上にプライマー層及び防水層が形成された道路の改修工事の方法についての記載はなく、当該道路の改修工事の方法を示唆する記載もない。 (7) したがって、請求項1に係る発明は、上記甲第1号証から甲第6号証までの証拠に記載された発明ではなく、上記甲第1号証から甲第6号証までの証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 3.請求項2ないし5に係る発明について 請求項2ないし5に係る発明は、請求項1に係る発明を直接又は間接的に引用しているため、請求項1に係る発明の特定事項を全て含んでいる。 したがって、請求項2ないし5に係る発明は、請求項1に係る発明と同様の理由で、上記甲第1号証から甲第6号証までの証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 4.請求項7に係る発明について 請求項7に係る発明が有する「前記研磨部材は、ダイヤモンド粒が第1結合剤により固着された第1研磨部材と、平均粒径が前記第1研磨部材のダイヤモンド粒よりも小径のダイヤモンド粒が、前記第1結合剤よりも硬度が高い第2結合剤により固着された第2研磨部材と、を組み合わせて構成されている」という特定事項については、上記甲第1号証から甲第6号証までの証拠には記載されていない。 また、甲第1号証から甲第6号証までに記載された切削機又は研磨機について、請求項7に係る発明が有する上記研磨部材についての特定事項を備えさせようとする動機も記載されておらず、示唆する記載もない。 よって、請求項7に係る発明は、上記甲第1号証から甲第6号証までの証拠に記載された発明ではなく、上記甲第1号証から甲第6号証までの証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 5.請求項8及び9に係る発明について 請求項8及び9に係る発明は、請求項7に係る発明を直接又は間接的に引用しているため、請求項7に係る発明の特定事項を全て含んでいる。 したがって、請求項8及び9に係る発明は、請求項7に係る発明と同様の理由で、甲第1号証から甲第6号証までの証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、請求項6に係る発明は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項6に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 また、請求項1ないし5、7ないし9に係る発明については、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし5、7ないし9に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に本件請求項1ないし5、7ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-700620

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