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特許異議申立

2017-700596

エポキシ樹脂の硬化剤または可塑剤として有効なスチレン化フェノール

審判番号
2017-700596
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-549244外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年06月13日
審決日
2018年02月01日
公報発行日
2018年05月25日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-YAA(C08G) / P1651.121-YAA(C08G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6063059号発明「エポキシ樹脂の硬化剤または可塑剤として有効なスチレン化フェノール」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6063059号の特許請求の範囲及び明細書を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項[1~3]、[4~6]、[7~9]について訂正することを認める。 特許第6063059号の請求項4に係る特許を維持する。 特許第6063059号の請求項1ないし3、5ないし9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 主な手続の経緯等 特許第6063059号(設定登録時の請求項の数は9。以下、「本件特許」という。)は、平成25年11月25日に出願された特許出願に係るものであって、平成28年12月22日付けでその特許権の設定登録がされた。 特許異議申立人 三光株式会社(以下、単に「異議申立人」という。)は、平成29年6月13日(受理日:同月14日)、本件特許の請求項1ないし9に係る特許に対して特許異議の申立てをした。 当審において、平成29年9月11日付けで取消理由を通知したところ、特許権者から、同年12月12日付けで訂正請求書(以下、当該訂正請求書による訂正請求を「本件訂正請求」という。)及び意見書が提出されたので、同年12月13日付けで異議申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、異議申立人から、平成30年1月11日付けで意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下の訂正事項1ないし12である。なお、下線については訂正箇所に当審が付したものである。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4の 「エポキシ樹脂の可塑剤。」 との記載を、 「エポキシ樹脂の可塑剤であって、前記スチレン化フェノールは、n=1のモノスチレン化フェノール(MSP)50~75重量%、n=2のジスチレン化フェノール(DSP)15~35重量%、及びn=3のトリスチレン化フェノール(TSP)6~8重量%の含有比を有することを特徴とするエポキシ樹脂の可塑剤。」 に訂正する。 (5) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (6) 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (7) 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (8) 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8を削除する。 (9) 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 (10) 訂正事項10 願書に添付した明細書の段落【0009】に記載された 「本発明は、下記一般式(1)で表わされるスチレン化フェノールおよびアミンからなるエポキシ樹脂の硬化剤または可塑剤を特徴とする。」 との記載を 「下記一般式(2)で表されるスチレン化フェノール及びアミンからなるエポキシ樹脂の可塑剤であって、前記スチレン化フェノールは、n=1のモノスチレン化フェノール(MSP)50~75重量%、n=2のジスチレン化フェノール(DSP)15~35重量%、及びn=3のトリスチレン化フェノール(TSP)6~8重量%の含有比を有することを特徴とするエポキシ樹脂の可塑剤である。」 に訂正する。 (11) 訂正事項11 願書に添付した明細書の段落【0010】の 「【化1】 」 との記載を 「【化2】 」 に訂正する。 (12) 訂正事項12 願書に添付した明細書の段落【0011】の 「本発明は、エポキシ樹脂を含む主剤部と、前記一般式で表わされるスチレン化フェノールおよびアミンからなる硬化剤部と、からなるエポキシ塗料を特徴とする。」 との記載を 「(式中、nは1、2、または3である。)」 に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び一群の請求項 (1) 訂正事項1ないし3、5ないし9について ア 訂正事項1ないし3、5ないし9は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1ないし3、5ないし9を削除するというものであるから、当該訂正事項1ないし3、5ないし9は、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであるといえる。そして、当該訂正事項1ないし3、5ないし9は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ よって、訂正事項1ないし3、5ないし9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (2)訂正事項4について ア 訂正事項4の訂正は、訂正前の請求項4に記載されている「スチレン化フェノール」について、当該スチレン化フェノールに含有されるモノスチレン化フェノール(NSP)とジスチレン化フェノール(DSP)及びトリスチレン化フェノール(TSP)の含有比を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ そして、当該訂正事項4は、願書に最初に添付した明細書の段落【0024】及び実施例の記載から、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (3) 訂正事項10ないし12について ア 訂正事項10ないし12は、上記訂正事項1ないし9で、特許請求の範囲が訂正されたことにより、明細書の発明の詳細な説明における課題を解決するための手段部分の記載を当該訂正事項1ないし9の訂正と整合させるための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。そして、当該訂正事項10ないし12は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ よって、訂正事項10ないし12は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項に適合するものである。 (4) 一群の請求項について 訂正事項10ないし12は、発明の詳細な説明の訂正であって、当該訂正は、特許請求の範囲全体にかかるものである。そして、訂正前の請求項は、請求項1ないし3、請求項4ないし6、請求項7ないし9という3つの一群の請求項からなるものである。そうすると、上記訂正事項1ないし12は、請求項1ないし3、請求項4ないし6、請求項7ないし9という3つの一群の請求項について求められているといえる。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~3]、[4~6]、[7~9]について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし9に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明9」という。)は、平成29年12月12日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される以下に記載のとおりのものである。 「【請求項1】 (削除) 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 下記一般式(2)で表わされるスチレン化フェノールおよびアミンからなるエポキシ樹脂の可塑剤であって、 前記スチレン化フェノールは、n=1のモノスチレン化フェノール(MSP)50~75重量%、n=2のジスチレン化フェノール(DSP)15~35重量%、及びn=3のトリスチレン化フェノール(TSP)6~8重量%の含量比を有することを特徴とするエポキシ樹脂の可塑剤。 【化1】 (式中、nは1、2、または3である。) 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 (削除) 【請求項9】 (削除)」 第4 取消理由の概要 平成29年9月11日付けで通知した取消理由は、概略、以下のとおりである。 「【理由1】 本件特許の請求項1ないし9に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された下記の刊行物に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 【理由2】 本件特許の請求項1ないし9に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 記 ・・・ 刊行物1: 特表2008-505996号公報(特許異議申立書の証拠方法である甲第1号証。) 刊行物2: 特表2013-506030号公報(特許異議申立書の証拠方法である甲第2号証。」 なお、当該取消理由は、概略特許異議申立書に記載された取消理由に対応している。 第5 合議体の判断 当合議体は、以下に述べるように、上記取消理由には、理由がないと判断する。 1 刊行物1に記載の発明 本件特許の出願前に頒布されたことが明らかな刊行物1には、特許請求の範囲の請求項1、2、7、8、9、段落【0001】、【0005】、【0011】、【0012】~【0016】、【0020】~【0022】、【0025】、【0037】、【0041】の記載から、請求項1を引用する請求項7を引用する請求項8として、次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているといえる。 「a) 一般式(I): 【化1】(イメージ省略) [式中、nは、10~70である。] で表されるポリエーテルジアミン30~70重量%; b) 一般式R1-NH2[式中、R1は、5~22個の炭素原子を有する炭化水素かまたは分子量400g/molまでを有する単官能性ポリエーテルアミンかの直鎖または分岐、飽和または、好ましくは、不飽和基である。]で表されるモノアミン3~30重量%; c) ジ-またはトリアミン3~30重量%;および、 d) 一般式(II): 【化2】(イメージ省略) [式中、R2は、5~14個の炭素原子を有する炭化水素の直鎖、分岐または環式、飽和または不飽和基である。] で表されるアルキルフェノール5~40重量%; 当該アルキルフェノールが、スチレン化されたフェノールである、 を含む組成物。」 2 刊行物2に記載された発明 刊行物2の特許請求の範囲の請求項1、3、4、5、17、段落【0001】、【0006】、【0007】、【0022】、【0029】~【0037】、【0041】、【0052】、【0053】、【0056】、【0057】、【0071】~【0083】の記載から、実施例2における第2の組成物として、次の発明(以下、「刊行物2発明」という。)が記載されているといえる。 「アミン硬化剤であるアミノエチレンエタノールアミン19.2重量部とフェノール系化合物であるスチレン化フェノール10.3部からなる第2の組成物。」 3 本件発明4と刊行物1発明との対比・判断 本件発明4と刊行物1発明とを対比する。 刊行物1発明の 「a) 一般式(I): 【化1】(イメージ省略) [式中、nは、10~70である。] で表されるポリエーテルジアミン30~70重量%; b) 一般式R1-NH2[式中、R1は、5~22個の炭素原子を有する炭化水素かまたは分子量400g/molまでを有する単官能性ポリエーテルアミンかの直鎖または分岐、飽和または、好ましくは、不飽和基である。]で表されるモノアミン3~30重量%; c) ジ-またはトリアミン3~30重量%」 は、本件発明4における「アミン」に相当する。 刊行物1発明の 「d) 一般式(II): 【化2】(イメージ省略) [式中、R2は、5~14個の炭素原子を有する炭化水素の直鎖、分岐または環式、飽和または不飽和基である。] で表されるアルキルフェノール5~40重量%; 当該アルキルフェノールが、スチレン化されたフェノールである」 は、本件発明4における「下記一般式(2)で表されるスチレン化フェノール 【化1】 (式中、nは1、2、または3である。)」に相当する。 本件発明4の「エポキシ樹脂の可塑剤」は、用途を除外した組成物という限りにおいて、刊行物1発明の「組成物」に相当する。 そうすると、本件発明4と刊行物1発明とは、 「下記一般式(2)で表わされるスチレン化フェノールおよびアミンからなる組成物。 【化1】 (式中、nは1、2、または3である。)」で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 組成物の用途に関し、本件発明4は、「エポキシ樹脂の可塑剤」と特定するのに対し、刊行物1発明は、この点を特定しない点。 <相違点2> 本件発明4は、「前記スチレン化フェノールは、n=1のモノスチレン化フェノール(MSP)50~75重量%、n=2のジスチレン化フェノール(DSP)15~35重量%、及びn=3のトリスチレン化フェノール(TSP)6~8重量%の含量比を有する」と特定するのに対し、刊行物1発明は、この点を特定しない点。 以下、相違点について検討する。 相違点1について 本件特許の明細書における発明の詳細な説明において、「スチレン化フェノールの粘度は、ノニルフェノールの粘度よりも低いため、エポキシ樹脂との混合時に可塑性がさらに向上して作業性に優れるという特徴がある。」(段落【0027】)との記載はあるものの、本件発明4のエポキシ樹脂の可塑剤としての性能は全く確認されておらず、実施例として、エポキシ塗料に配合される硬化剤部に利用されているものが記載されているのみである。 一方、刊行物1においても、エポキシ樹脂の塗料に対してスチレン化フェノールが配合されていて、比較的低い粘度を有するとされている(段落【0041】)。 してみれば、刊行物1発明の組成物も本件特許の明細書における発明の詳細な説明の開示内容から見れば、エポキシ樹脂の可塑剤といいうるものであるから、相違点1は実質上の相違点ではない。 相違点2について 刊行物1には、用いられているスチレン化フェノールの成分については一切記載されていない。 一方で、刊行物2において、市販されているスチレン化フェノールとして記載されている「MSP-75(SI Group社から商業的に入手可能)」は、特許異議申立書に添付された参考資料(MSP-75のTECHNICAL DATA SHEET、04/10/2013 、SI Group Crios Resinas S/A)によれば、n=1のモノスチレン化フェノール(MSP)66~81重量%、n=2のジスチレン化フェノール(DSP)15~31重量%、及びn=3のトリスチレン化フェノール(TSP)最大3重量%の含量比を有するものであって、相違点2に係る配合比を有するスチレン化フェノールではない。 そして、刊行物1においては、相違点2に係る含有比を有するスチレン化フェノールは記載されていないし、特許異議申立書に添付されたいずれの証拠にも相違点2に係る特定の配合比を有するスチレン化フェノールは記載されていないから、刊行物1発明のスチレン化フェノールが相違点2に係るスチレン化フェノールということはできないので、相違点2は実質的な相違点である。 そして、刊行物1発明のスチレン化フェノールを相違点2に係る特定の配合比のスチレン化フェノールとすることは、そもそも、そのようなスチレン化フェノールが存在することが立証されておらず、そのようなスチレン化フェノールを選択する動機もなく、想到容易ということはできない。 以上のことから、本件発明4と刊行物1発明との間には、実質的な相違点として相違点2が存在することから、本件発明4は、刊行物1に記載された発明ではない。そして、相違点2の検討から、本件発明4は、刊行物1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 4 本件発明4と刊行物2発明との対比・判断 本件発明4と刊行物2発明とを対比する。 刊行物2発明の「アミン硬化剤であるアミノエチレンエタノールアミン」は、本件発明4における「アミン」に相当する。 刊行物2発明の「フェノール系化合物であるスチレン化フェノール」は、本件発明4における「下記一般式(2)で表されるスチレン化フェノール 【化1】 (式中、nは1、2、または3である。)」に相当する。 本件発明4の「エポキシ樹脂の可塑剤」は、用途を除外した組成物という限りにおいて、刊行物2発明の「第2の組成物」に相当する。 そうすると、本件発明4と刊行物2発明とは、 「下記一般式(2)で表わされるスチレン化フェノールおよびアミンからなる組成物。 【化1】 (式中、nは1、2、または3である。)」で一致し、以下の点で相違する。 <相違点3> 組成物の用途に関し、本件発明4は、「エポキシ樹脂の可塑剤」と特定するのに対し、刊行物2発明は、この点を特定しない点。 <相違点4> 本件発明4は、「前記スチレン化フェノールは、n=1のモノスチレン化フェノール(MSP)50~75重量%、n=2のジスチレン化フェノール(DSP)15~35重量%、及びn=3のトリスチレン化フェノール(TSP)6~8重量%の含量比を有する」と特定するのに対し、刊行物2発明は、この点を特定しない点。 事案に鑑み、相違点4から検討する。 刊行物2には、刊行物2発明のスチレン化フェノールに含まれるMSP、DSP、TSPの配合比については全く記載されていないが、利用できる市販のスチレン化フェノールとして、「MSP-75(SI Group社から商業的に入手可能)」が例示されている。 当該MSP-75は、特許異議申立書に添付された参考資料(MSP-75のTECHNICAL DATA SHEET、04/10/2013 、SI Group Crios Resinas S/A)によれば、n=1のモノスチレン化フェノール(MSP)66~81重量%、n=2のジスチレン化フェノール(DSP)15~31重量%、及びn=3のトリスチレン化フェノール(TSP)最大3重量%の含量比を有するものであって、相違点4に係る配合比を有するスチレン化フェノールではない。 そして、特許異議申立書に添付されたいずれの証拠にも相違点4に係る特定の配合比を有するスチレン化フェノールは記載されていない。 そうすると、刊行物2発明のスチレン化フェノールを相違点4に係る特定の配合比を有するスチレン化フェノールとすることは、そもそも、そのようなスチレン化フェノールが存在することが立証されておらず、そのようなスチレン化フェノールを選択する動機もなく、想到容易ということはできない。 以上のことから、相違点3について検討するまでもなく、本件発明4と刊行物2発明との間には、実質的な相違点として相違点4が存在することから、本件発明4は、刊行物2に記載された発明ではない。そして、相違点4の検討から、本件発明4は、刊行物2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 5 異議申立人の主張の検討 異議申立人は、平成30年1月11日付け(受理日:同月15日)意見書において、概略以下の主張を行っている。 主張1:「・・・通常、流通し、使用されているスチレン化フェノールには、NSP、DSP、TSPを含有することが公知であり、公知の方法で合成できるものである。本件特許の訂正前の請求項4に記載のスチレン化フェノールも実質、公知のものと同じである。従って、スチレン化フェノールと言えば、MSP、DSP、TSPをそれぞれ適宜の重量%で含むものであることが周知であり当業者にとっても自明である。してみると、・・・訂正後の請求項4にMSP 50-75重量%、DSP 15-35重量% 及びTSP 6-8重量%の文言が加わったからと言って新規性ないし進歩性が認められるものではない。」 主張2:「TSPの含有量を6-8重量%に減縮することで、含有量Max3%のTSPに比し顕著な作用効果が得られるならば兎も角、本件特許明細書中にはそのような効果が得られるとする一言半句の記載もない。従って、甲2及びMSP-75の上記『TECHNICAL DATA SHEET』の存在下で、重複範囲を外すだけの目的で含有量を6-8重量%に減縮する程度のことは当業者にとって想到容易なことと言えるから、訂正後の請求項4は、新規性ないし進歩性を欠くものである。」 主張3:「本件特許の審査過程の『本願明細書にはスチレン化フェノールの含有比を特定範囲とすることによる有利な効果についての記載はないから、・・・格別顕著な効果とは認められない。』との認定判断は、TSPの重量%を6-8重量%に減縮した訂正後の請求項4の発明にもそのまま当てはまるものである。」 主張4:「減縮訂正は作用効果(可塑性をより向上させる)とは無縁のものである。減縮が作用効果に具現されない限り、単なる公知部分との重複を外す訂正に過ぎず、実質同一性の回避とはならない。」 以下、上記主張について検討する。 主張1、2及び4について スチレン化フェノールには、NSP、DSP、TSPを含有することが公知であり、スチレン化フェノールと言えば、MSP、DSP、TSPをそれぞれ適宜の重量%で含むものであることが周知であることは、異議申立人の主張のとおりであるが、本件発明4は、MSP、DSP、TSPの具体的な配合量を特定しており、当該配合比が特定されたスチレン化フェノールが刊行物1及び刊行物2に記載されていないことは上記3及び4での検討のとおりであるから、新規性がないとの主張は失当であって採用できない。 進歩性の主張に関しては、相違点が存在したときに、想到容易というためには、まず、相違点に係る構成の効果についての検討の以前にその相違点に係る構成が想到容易であることを論証しなければならないのであって、その手順を踏まずに効果がない相違点は全て容易であるということはできず、進歩性に関する主張も失当であって採用できない。 主張3について 本件特許は審査を経て特許されたものであることからすると、審査過程における拒絶理由は解消されているとみるのが相当であるから、その主張は失当であるし、訂正後の本件発明4は、TSPの重量%を6-8重量%に減縮することによって存在が立証されていない配合比のスチレン化フェノールに限定されたから、それ以前の請求項に対する認定判断と異なるのは当然であって、異議申立人の主張は失当で採用できない。 6 まとめ 以上のことから、平成29年9月11日付けで通知した取消理由の理由1および理由2には、理由がなく、本件特許の請求項4に係る特許は、特許法第113条第2項に該当せず、取り消されるべきものではない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 加えて、請求項1ないし3及び5ないし9に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項1ないし3及び5ないし9に対して、異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-700596

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