特許異議申立
2017-700510
向上した接着性を有する光配向材料
- 審判番号
- 2017-700510
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-242550
- 登録番号
- 特許第6029567号(P6029567)
- 請求日
- 2017年05月24日
- 審決日
- 2018年01月10日
- 公報発行日
- 2018年04月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】トランジションズ オプティカル, インコーポレイテッド
- 【権利者代理人】山本 秀策
- 【権利者代理人】森下 夏樹
- 【異議申立人】横井 大一郎
- 審判長/審判官
- 審判長 小野寺 務
- 審判官 渕野 留香
- 審判官 岡崎 美穂
- 分類
- P1651.121-YAA(C08F) / P1651.537-YAA(C08F) / P1651.851-YAA(C08F) / P1651.853-YAA(C08F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6029567号発明「向上した接着性を有する光配向材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6029567号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-17〕について訂正することを認める。
特許第6029567号の請求項1ないし17に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6029567号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~17に係る特許についての出願は、2010年12月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年12月8日 アメリカ合衆国、2010年12月3日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2012-543178号の一部を2013年11月25日に新たな外国語書面による特許出願としたものであって、平成28年10月28日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対して、平成29年5月24日(受理日は同年5月25日)に特許異議申立人、横井 大一郎(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。その後、平成29年7月28日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年10月31日(受理日は同年11月1日)に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)があり、その訂正の請求に対して申立人から同年12月8日付け(受理日は同年12月11日)で意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正請求の訂正の内容は以下の(1)ないし(6)のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1中のZbの選択肢中の「カルボン酸、無水物、」との記載を削除する(請求項1の記載を引用する請求項2~17も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1中のZbの定義の記載中の「但し、Zbが、ヒドロキシまたはカルボン酸であるとき」との記載を、「但し、Zbが、ヒドロキシであるとき」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~17も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1中のG1、G2およびG3の置換基の選択肢中の、「ヒドロキシ;アミノ;」との記載、「チオ;」との記載、「カルボン酸;」との記載、「ペルフルオロ(C1~C18)アルキルアミノ;」との記載、「ヒドロキシ(C1~C18)アルキル;」との記載、「アミノ(C1~C18)アルキル;C1~C18アルキルアミノ;」との記載、「マレイン酸;フマル酸;」との記載、および「;非置換桂皮酸;メチル、メトキシ、シアノまたはハロゲンのうちの少なくとも1つで置換されている桂皮酸」との記載を削除する(請求項1の記載を引用する請求項2~17も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1中のキラルもしくは非キラル一価もしくは二価の基の置換基の選択肢中の「アミノ、」との記載を削除する(請求項1の記載を引用する請求項2~17も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1中のRmの選択肢中の「ヒドロキシ;アミノ;」との記載を削除する(請求項1の記載を引用する請求項2~17も同様に訂正する)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項1の末尾の但し書き中の「選択される」との記載を、「選択され、そして、」に訂正して改行して、その後に「該(コ)ポリマーの各Zbは、該(コ)ポリマー内の別の基と架橋する架橋基を除く」との記載を挿入する(請求項1の記載を引用する請求項2~17も同様に訂正する)。
2.訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、請求項1に記載されていた(コ)ポリマーの置換基Zbの選択肢のうちの一部を削除して、(コ)ポリマーを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるし、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(訂正後の請求項1を直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項2~17についての訂正も同様である。)
(2)訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、訂正事項1による訂正に伴い、置換基Zbの定義の但し書きのうち、訂正事項1の訂正により不要となった記載を削除することで、訂正事項1による訂正後の置換基Zbの選択肢と但し書きの記載を整合させようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるし、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(訂正後の請求項1を直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項2~17についての訂正も同様である。)
(3)訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、請求項1に記載されていた(コ)ポリマーの置換基G1、G2およびG3の置換基の選択肢のうちの一部を削除して、(コ)ポリマーを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるし、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(訂正後の請求項1を直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項2~17についての訂正も同様である。)
(4)訂正事項4について
訂正事項4による訂正は、請求項1に記載されていた(コ)ポリマーの置換基G1、G2およびG3の置換基が「ステロイド基、テルペノイド基、アルカロイド基もしくはこれらの混合物から選択される、置換キラルもしくは非キラル一価もしくは二価の基」である場合の置換基の選択肢のうちの一部を削除して、(コ)ポリマーを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるし、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(訂正後の請求項1を直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項2~17についての訂正も同様である。)
(5)訂正事項5について
訂正事項5による訂正は、請求項1に記載されていた(コ)ポリマーの置換基Rmの選択肢のうちの一部を削除して、(コ)ポリマーを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるし、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(訂正後の請求項1を直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項2~17についての訂正も同様である。)
(6)訂正事項6について
訂正事項6による訂正は、請求項1に記載されていた(コ)ポリマーの置換基Zbの選択肢から「(コ)ポリマーの各Zb」が、「該(コ)ポリマー内の別の基と架橋する架橋基を除く」ものであり、(コ)ポリマー内に存在するそれぞれの置換基Zbについて、該(コ)ポリマー内に存在する他のZbや、Zb以外の別の基と架橋するような架橋基である場合を除いて、(コ)ポリマーを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
また、本件特許明細書の【0001】に、「本開示は、光配向層としての使用に適する新規(コ)ポリマー材料に関する。該新規光配向材料は、基材表面への向上した接着性を示す」と記載され、【0031】に、「各Zb基は、接着促進性基を表す。本明細書において用いる場合、用語『接着促進性』は、(コ)ポリマー構造とそれがコーティングされる基材との間の、その接着促進性基を含有するポリマーの表面にコーティングされるポリマーフィルムへの、または同ポリマーフィルム上への接着性を向上させる基または構造を意味する。引力の例としては、共有結合・・・が挙げられる。すなわち、前記接着促進性基Zb上の官能基は、前記表面の官能基または後続のコーティング上の官能基と引力相互作用を形成することができる。・・・コポリマーの構造内での複数の接着促進性基・・・と前記基材表面または後続のコーティング材料との間の引力相互作用は、結果として、コポリマーと該基材表面および/または後続のコーティングとの間の接着性を向上させる。」と記載されるとおり、本件特許の請求項1に特定されている(コ)ポリマーについて、本件特許明細書(願書に添付した明細書)には、接着促進性基である各Zb基が、それと隣接する別の基材や(コーティング)フィルム層中の官能基と共有結合(これには、「架橋反応による結合が含まれる。)等の引力相互作用することで、(コ)ポリマー(含有)層と、隣接する基材やフィルム層との接着性を改善するという技術的思想が開示されているといえる。
そして、本件特許の請求項1に特定される(コ)ポリマーが、(コ)ポリマーを構成する各Zb基として、同じ(コ)ポリマー内の別の官能基((コ)ポリマー内の別の置換基ZbやZb以外の置換基)と架橋反応して、別の基材や(コーティング)フィルム層中の官能基と共有結合を形成して接着促進効果が低減することが望まれないことは明らかである。
訂正事項6による訂正は、訂正前の本件特許の請求項1に係る発明では、(コ)ポリマーを構成する各Zb基として、各Zb基が、同じ(コ)ポリマー内の別の官能基((コ)ポリマー内の別の置換基ZbやZb以外の置換基)と架橋反応して共有結合を形成し、接着促進効果が低減してしまうような望まれ得ないものが包含されていたところ、これを除いて、本件特許明細書の(コ)ポリマーをより望ましいものに限定するものであって、このような訂正により、(コ)ポリマー中の各Zb基により、隣接する基材や(コーティング)フィルム層との接着促進効果を発揮するという技術的思想は何ら変わるものではない。
したがって、訂正事項6による訂正は、本件特許明細書(願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面)に記載されていた範囲内のものであって、新規事項の追加に該当しないし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(訂正後の請求項1を直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項2~17についての訂正も同様である。)
(7)一群の請求項について
訂正前の請求項1~17について、請求項2~17はそれぞれ、訂正請求の対象である請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
したがって、訂正事項1~6についての訂正の請求は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項」ごとにされたものである。
3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~17〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件特許の請求項1~17に係る発明(それぞれ、「本件発明1」~「本件発明17」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~17に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
式:
【化15】
によって表される構造を含む(コ)ポリマー
(式中、
Ma、MbおよびMcは各々、それぞれ独立して、置換もしくは非置換アクリロイル単位(該アクリロイルの置換基は、C1~C4アルキル、フェニル、-O-およびこれらの組み合わせから選択される)、置換もしくは非置換スチレン単位、置換もしくは非置換エポキシ単位、置換もしくは非置換ウレタン単位、置換もしくは非置換ポリカルボン酸、置換もしくは非置換ポリオール単位、置換もしくは非置換ポリアミン単位または置換もしくは非置換ヒドロキシアルカン酸単位(該置換基は、C1~C20アルキル、C1~C20アルコキシ、C3~C10シクロアルキル、C1~C20アルキル(C1~C20)アルコキシ、ハロ(C1~C20)アルキル、ヘテロシクロ(C3~C10)アルキル、ハロアリール、ハロ(C1~C20)アルキルアリール、C1~C20アルキルアリール、C1~C20アルコキシアリール、ヘテロアリール、アリール(C1~C20)アルキル、ヘテロアリール(C1~C20)アルキルから選択される)から選択されるモノマー単位の残基であり;
La、LbおよびLcは、単結合、-(CH2)g-、-(CF2)h-、-Si(Z’)2(CH2)g-もしくは-(Si(CH3)2O)h-、-N(R)-、-C(R)=C(R)-、-C(R)=N-、-C(R’)2-C(R’)2-、-O-、-C(O)-、-C≡C-、-N=N-、-S-、-S(O)-、-S(O)(O)-、-(O)S(O)O-、-O(O)S(O)O-、直鎖もしくは分岐C1~C24アルキレン残基、アリーレン、C3~C10シクロアルキレンまたはこれらの様々な組み合わせからそれぞれ独立して選択されるスペーサー基であり、ここで、Z’は、水素、C1~C18アルキル、C3~C10シクロアルキルまたはアリールから各存在について独立して選択され;Rは、Zb、水素、C1~C18アルキル、C3~C10シクロアルキルまたはアリールから各存在について独立して選択され;R’は、Zb、C1~C18アルキル、C3~C10シクロアルキルまたはアリールから各存在について独立して選択され;該C1~C24アルキレン残基は、Zb、シアノもしくはハロにより-置換されているか、またはZbもしくはハロにより多置換されており;「g」は、1から20より各存在について独立して選択され、および「h」は、1から16(1および16を含む)の自然数であり;
各Zaは、独立して、二量体化可能な置換もしくは非置換シンナメート、光化学分解性置換もしくは非置換ポリイミドまたは光フリース転位し得る置換もしくは非置換芳香族エステルから選択される光化学活生発色団であり;
各Zbは、ヒドロキシ、イソシアナト、ブロック化イソシアナト、チオイソシアナト、ブロック化チオイソシアチト、アミノ、チオ、有機官能性シラン、有機官能性チタネート、または有機官能性ジルコネートから独立して選択される接着促進性基であり、有機官能性シラン、有機官能性チタネート、および有機官能性ジルコネートは有機官能基を含み、該各有機官能基は、ビニル、アリル、ビニル官能性炭化水素基、アリル官能性炭化水素基、アクリロイル官能性炭化水素基、メタクリロイル官能性炭化水素基、スチリル官能性炭化水素基、メルカプト官能性炭化水素基または前述の有機官能基の組み合わせから独立して選択され、該炭化水素基は、C1~C20アルキル、C2~C20アルケニル、C2~C20アルキニル、C1~C20アルコキシ、C1~C20アルキル(C1~C20)アルコキシ、C1~C20アルコキシ(C1~C20)アルキル、アリール、ヘテロアリールおよび前述の炭化水素基の組み合わせから選択されるが、但し、Zbが、ヒドロキシであるとき、該(コ)ポリマーが少なくとも1つの他の接着促進性基を含むことを条件とし;
Zcは、
Rm-[G1-[S1]J]J’-[G2-[S2]d]d’-[G3-[S3]e]e’-[S4]f-
によって表されるメソゲン構造であり;
(式中、
(i)各G1、G2およびG3は、非置換もしくは置換芳香族基、非置換もしくは置換脂環式基、非置換もしくは置換複素環式基およびこれらの混合物から選択される二価の基(この場合の置換基は、ハロゲン;C2~C18アルケニル;C2~C18アルキニル;アジド;シリル;シロキシ;シリルヒドリド;(テトラヒドロー2H-ピランー2-イル)オキシ;イソシアナト;チオイソシアナト;アクリロイルオキシ;メタクリロイルオキシ;2-(アクリロイルオキシ)エチルカルバミル;2-(メタクリロイルオキシ)エチルカルバミル;アジリジニル;アリルオキシカルボニルオキシ;エポキシ;カルボン酸エステル;アクリロイルアミノ;メタクリロイルアミノ;アミノカルボニル;C1~C18アルキルアミノカルボニル;アミノカルボニル(C1~C18)アルキル;C1~C18アルコキシカルボニル;C1~C18アルキルカルボニル;アリールオキシカルボニルオキシ;ジー(ペルフルオロ(C1~C18)アルキル)アミノ;C1~C18アセチル;C3~C10シクロアルキル;C3~C10シクロアルコキシ;C1~C18アルキルオキシカルボニルオキシ;ハロカルボニル;水素;アリール;C1~C18アルキル;C1~C18アルコキシ;C1~C18アルキルアミノ;ジー(C1~C18)アルキルアミノ;C1~C18アルキル(C1~C18)アルコキシ;C1~C18アルコキシ(C1~C18)アルコキシ;ニトロ;ポリ(C1~C18)アルキルエーテル;(C1~C18)アルキル(C1~C18)アルコキシ(C1~C18)アルキル;ポリ(C1~C18)アルコキシ;エチレン;アクリロイルオキシ(C1~C18)アルキル;メタクリロイルオキシ(C1~C18)アルキル;2-クロロアクリロイルオキシ;2-フェニルアクリロイルオキシ;アクリロイルオキシフェニル;2-クロロアクリロイルアミノ;2-フェニルアクリロイルアミノカルボニル;オキセタニル;グリシジル;シアノ;イソシアナト(C1~C18)アルキル;イタコン酸エステル;ビニルエーテル;ビニルエステル;スチレン;主鎖または側鎖液晶ポリマー;シロキサン誘導体;エチレンイミン;シアノ、ハロもしくはC1~C18アルコキシで一置換されている、またはハロで多置換されている、直鎖または分岐C1~C18アルキルから選択される);ステロイド基、テルペノイド基、アルカロイド基もしくはこれらの混合物から選択される、置換もしくは非置換キラルもしくは非キラル一価もしくは二価の基(この場合の置換基は、C1~C18アルキル、C1~C18アルコキシ、C3~C10シクロアルキル、C1~C18アルキル(C1~C18)アルコキシ、フルオロ(C1~C18)アルキル、シアノ、シアノ(C1~C18)アルキル、シアノ(C1~C18)アルコキシまたはこれらの混合物から選択される);または次の式のうちの1つを含む基:-M(T)(t-1)および-M(OT)(t-1)(これらの式中、Mは、アルミニウム、アンチモン、タンタル、チタン、ジルコニウムおよびケイ素から選択され、Tは、有機官能性基、有機官能性炭化水素基、脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択され、および「t」は、Mの原子価である)から、各存在について独立して選択され;
(ii)Rmは、-H;ハロゲン;ハロアルキル;アリール;C1~C18アルキル;またはC1~C18アルコキシであり;
(iii)「j」、「d」、「e」および「f」は、0から20(0および20を含む)の範囲の整数からそれぞれ独立して選択され、「j’」、「d’」および「e’」は、それぞれ独立して、0から4の整数であるが、但し、j’+d’+e’の合計が少なくとも1であることを条件とし;ならびに
(iv)各S1、S2、S3およびS4は、スペーサー単位から各存在について独立して選択され、該スペーサー単位は、
(A)-(CH2)g-、-(CF2)h-、-Si(Z’)2(CH2)g-、またはー(Si(CH3)2O)h-(これらの式中、Z’は、水素、C1~C18アルキル、C3~C10シクロアルキルまたはアリールから各存在について独立して選択され;「g」は、1から20より各存在について独立して選択され、および「h」は、1から16(1および16を含む)の自然数である);
(B)-N(Y)-、-C(Y)=C(Y)-、-C(Y)=N-、-C(Y’)2-C(Y’)2-、または単結合(これらの式中、Yは、水素、C1~C18アルキル、C3~C10シクロアルキルおよびアリールから各存在について独立して選択され、ならびにY’は、C1~C18アルキル、C3~C10シクロアルキルおよびアリールから各存在について独立して選択される);あるいは
(C)-O-、-C(O)-、-C≡C-、-N=N-、-S-、-S(O)-、-S(O)(O)-、-(O)S(O)O-、-O(O)S(O)O-または直鎖もしくは分岐C1~C24アルキレン残基(該C1~C24アルキレン残基は、非置換であるか、シアノまたはハロにより一置換されているか、ハロにより多置換されている)
から選択されるが、但し、ヘテロ原子を含む2つのスペーサー単位が互いに連結されているとき、これらのスペーサー単位は、ヘテロ原子が互いに直接連結されないように連結されていること、ならびにS1およびS4が別の基に連結されているとき、それらは、2個のヘテロ原子が互いに直接連結されないように連結されていることを条件とする);ならびに
「x」は、0<x≦1の値を有し、「y」は、0≦y<1の値を有し、「z」は、0≦z<1の値を有し、x+y+z=1であり、「n」は、10から10,000の範囲の値を有し;
x=1のときには、LaおよびZaの少なくとも一方が、少なくとも1つのZb接着促進性基でさらに置換されており、ならびにy=0のときには、La、Za、LcおよびZcの少なくとも1つが、少なくとも1つのZb接着促進性基でさらに置換されており;
但し、核(コ)ポリマーの少なくとも1つのZbは、ブロック化イソイアナイト、ブロック化チオイソナイト、有機官能性シラン、有機官能性チタネート、または有機官能性ジルコネートから選択され、そして、
該(コ)ポリマーの各Zbは、該(コ)ポリマー内の別の基と架橋する架橋基を除くことを条件とする)。
【請求項2】
フォトクロミック化合物、二色性化合物、フォトクロミック-二色性化合物、感光材料および非感光材料のうちの少なくとも1つのものの残基をさらに含む、請求項1に記載の(コ)ポリマー。
【請求項3】
ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、線状コポリマー、分岐コポリマー、多分岐コポリマー、樹状コポリマーまたは星型コポリマーの形態である、請求項1および2のいずれかに記載の(コ)ポリマー。
【請求項4】
Ma、MbおよびMcが、それぞれ独立して、アクリロイルオキシ単位またはメタクリロイルオキシ単位の残基であり、ならびにZaが、二量体化可能な置換もしくは非置換シンナメートから選択される光化学活性発色団である、請求項1から3のいずれかに記載の(コ)ポリマー。
【請求項5】
製造物品であって、
基材と;
該基材の表面の少なくとも一部分の上の第一の少なくとも部分的な層であって、請求項1から4のいずれかに記載の(コ)ポリマーを含む層であり、偏波曝露によって場合より少なくとも部分的に配向されるものである第一の少なくとも部分的な層と;
場合により、該基材の表面の少なくとも一部分の上の1つ以上の追加の少なくとも部分的な層であって、タイ層、プライマー層、耐摩耗性コーティング、硬質コーティング、保護コーティング、反射コーティング、フォトクロミックコーティング、反射防止コーティング、直線偏光コーティング、円偏光コーティング、楕円偏光コーティング、遷移コーティング、液晶材料層、配向材料層、リターダー層、またはこれらのうちの任意のものの組み合わせから選択されるものである1つ以上の追加の少なくとも部分的な層とを含む、製造物品。
【請求項6】
能動液晶セル、受動液晶セル、表示素子、窓、鏡または眼科用素子から選択される光学素子である、請求項5に記載の製造物品。
【請求項7】
前記1つ以上の追加の少なくとも部分的な層が存在し、ならびに
- 第一の少なくとも部分的な層の表面の第二の少なくとも部分的な層であって、少なくとも1つの二色性材料またはフォトクロミック-二色性材料を場合により含む少なくとも1つの液晶材料を含むものである、第二の少なくとも部分的な層と;
- 場合により、第二の配向材料を含む少なくとも部分的に配向した第三の少なくとも部分的な層と;
- 場合により、少なくとも第二の液晶材料を含む第四の少なくとも部分的な層と;
を含み、
該少なくとも部分的に配向した第三の層が存在する場合、前記少なくとも部分的に配向した第一の層とは異なる方向に配向しており、ならびに該第一、第二、第三および第四の少なくとも部分的な層が、場合により、前記基材の表面に積み重なっている、請求項5および6のいずれかに記載の製造物品。
【請求項8】
- 第一の表面を有する第一の基材と、
- 該第一の表面の反対側に第二の表面を有する第二の基材と、
- 該第二の表面に対向する該第一の表面の少なくとも一部分の上の第一の少なくとも部分的な層と、
- 該第一の表面に対向する該第二の表面の少なくとも一部分の上の第二の少なくとも部分的な層であって、該第一の少なくとも部分的な層および該第二の少なくとも部分的な層は空間を規定する、第二の少なくとも部分的な層と、
- 該第一の少なくとも部分的な層と該第二の少なくとも部分的な層との間の空間内の、少なくとも1つの二色性材料またはフォトクロミック-二色性材料を場合により含む液晶材料と
を含む液晶セルであり;
前記第一の少なくとも部分的な層および前記第二の少なくとも部分的な層が、配向層であり、前記第一の少なくとも部分的な層および前記第二の少なくとも部分的な層の少なくとも一方が、請求項1から4のいずれかに記載の(コ)ポリマーを含み;ならびに
前記第一の少なくとも部分的な層および前記第二の少なくとも部分的な層の少なくとも一方が、場合により少なくとも部分的に配向される、
請求項5および6のいずれかに記載の製造物品。
【請求項9】
前記第一の少なくとも部分的な層および前記第二の少なくとも部分的な層の両方が、請求項1から4のいずれかに記載の(コ)ポリマーを含む、請求項5に記載の製造物品。
【請求項10】
前記第一の少なくとも部分的な層の配向が、前記第二の少なくとも部分的な層の配向とは異なる方向である、請求項5および6のいずれかに記載の製造物品。
【請求項11】
光配向材料を光学素子に塗布する方法であって、
- 請求項1から4のいずれかに記載の(コ)ポリマーを含む光配向材料の少なくとも部分的な層を基材の表面の少なくとも一部分に塗布する工程;
- 該光配向(コ)ポリマー材料上の1つ以上の接着促進性基と該基材の表面の適合基との間に引力結合を形成する工程;および
- 該光配向(コ)ポリマー材料の少なくとも第一の部分を、該少なくとも部分的な層の偏光UV線への曝露により、少なくとも部分的に配向させる工程
を含む方法。
【請求項12】
前記光配向(コ)ポリマー材料の少なくとも第二の部分を、前記少なくとも部分的な層の偏光UV線への曝露により、少なくとも部分的に配向させる工程をさらに含み、該光配向(コ)ポリマー材料の第一の部分の配向方向が、該光配向(コ)ポリマー材料の第二の部分の配向方向と異なる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
- 液晶材料を含む第二の少なくとも部分的な層を前記光配向(コ)ポリマー材料の表面の少なくとも一部分に塗布する工程;および
- 該液晶材料を、前記少なくとも部分的に配向した光配向(コ)ポリマー材料の配向と同じ方向に少なくとも部分的に配向させる工程
をさらに含む、請求項11および12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記液晶材料が、二色性材料またはフォトクロミック-二色性材料の少なくとも一方を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
- 前記光配向(コ)ポリマー材料の表面の1つ以上の接着促進性基と前記第二の少なくとも部分的な層中の適合基との間に引力結合を形成する工程
をさらに含む、請求項13および14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記光配向(コ)ポリマー材料の表面の少なくとも一部分に少なくとも1つの追加の層を塗布する工程をさらに含み、該少なくとも1つの追加の層が、タイ層、プライマー層、耐摩耗性コーティング、硬質コーティング、保護コーティング、反射コーティング、フォトクロミックコーティング、反射防止コーティング、直線偏光コーティング、円偏光コーティング、楕円偏光コーティング、遷移コーティング、液晶材料コーティング、配向材料コーティング、またはこれらのうちの任意のものの組み合わせから選択される、請求項11および12のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
1つ以上の添加剤をさらに含み、該1つ以上の添加剤が、フォトクロミック化合物、二色性化合物、フォトクロミック-二色性化合物、感光性材料、液晶、液晶特性制御用添加剤、非線形光学材料、染料、配向促進剤、反応速度増進剤、光開始剤、熱開始剤、界面活性剤、重合抑制剤、溶剤、光安定剤、熱安定剤、離型剤、レオロジー制御剤、ゲル化剤、レベリング剤、フリーラジカルスカベンジャー、カップリング剤、チルト制御用添加剤、ブロックまたは非ブロックポリマー材料、および接着促進剤から成る群より選択される、請求項1および4のいずれかに記載の(コ)ポリマーの組成物。」
第4 特許異議の申立てについて
1.取消理由の概要
本件特許の訂正前の請求項1~17に係る発明に対して、当審が通知した取消理由の概要は以下のとおりである。
本件特許の訂正前の請求項1~17に係る発明は、その出願前(原出願の優先日前)に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明及び本願の原出願の優先日当時の周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項1~17に係る本件特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない特許出願に対してされたものであって、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるものである。
<引用刊行物及び周知技術>
・引用刊行物
特表2009-512903号公報(申立人が提示した甲第1号証である。以下、「甲1」という。)
・本件特許にかかる原出願の優先日前の周知技術を示す文献
日本接着学会編「接着ハンドブック(第3版)」日刊工業新聞社(1996年6月28日第3版第1刷発行)396~399頁(以下、「周知例1」という。)
特開2009-275068号公報(申立人が提示した甲第2号証である。(以下、「周知例2」という。)
佐々木昭夫ら編集「液晶ディスプレイのすべて」(株)工業調査会(1993年3月1日初版第1刷発行)19~21及び127~130頁。(以下、「周知例3」という。)
特開平10-316663号公報(以下、「周知例4」という。)
特開2009-74045号公報(以下、「周知例5」という。)
特表平10-506420号公報(以下、「周知例6」という。)
特開2007-86399号公報(以下、「周知例7」という。)
2.引用刊行物(甲1)に記載された事項及び引用発明
甲1の請求項1には、
「下記化学式1で示される液晶配向共重合体:
【化1】
前記化学式1において、
M1~M4は、各々独立して高分子鎖にある反復単位であって、アクリル、メタアクリル、クロトン、マレイック、マレアミック、シトラコン、イタコン、スチレン、メチルスチレン、アクリルアミド、メタアクリルアミド、およびマレイックイミドからなる群から選択され、
p、q、r、sは反復単位のモル分率であって、p+q+r+s=1で、p=0.1~0.9、q=0.1~0.9、r=0~0.3、s=0~0.3であり、
A1は、A3またはA4が置換または非置換された光反応性基であり、
A2は、A3またはA4が置換または非置換されたメソゲン基であり、
A3は、熱硬化性基であり、
A4は、A3の熱硬化反応を誘導して架橋化を起こす架橋基である。
但し、r=0の場合、A1はA3が置換された光反応性基であるか、A2はA3が置換されたメソゲン基であり、
s=0の場合、A1はA4が置換された光反応性基であるか、A2はA4が置換されたメソゲン基である。」
と記載され、請求項2には、光反応性基であるA1構造について、
「前記A1は、下記構造式からなる群から選択された1種を含む、請求項1に記載の液晶配向共重合体:
【化2】
前記構造式において、
S1は、スペーサであって、-O-;-NH-;またはC1~C6のアルキル鎖の両末端に同一または相異なるように、エーテル基、アミン基、エステル基、およびアミド基からなる群から選択された官能基が導入された2価官能基であり、
S2は、光二量化や異性化が可能なエノン構造を有する基であって、-NH-CO-(CH=CH)-、-O-CO-(CH=CH)-、-(CH=CH)-CO-NH-、-(CH=CH)-CO-O-、-CO-(CH=CH)-、または-(CH=CH)-CO-であり、
Yは、末端に置換された配位子であって、水素、ヒドロキシ、C1~C10のアルキルオキシ、ハロゲン、アミン、ニトリル、ニトロ、グリシジル、イソシアネート、テトラヒドロピラニルカルボン酸、および無水酢酸からなる群から選択される。」
と記載され、請求項2を引用する請求項4には、M1-A1反復単位の単量体に関し、
「M1-A1反復単位のための単量体は、下記構造式からなる群から選択されたものを含む、請求項2に記載の液晶配向共重合体:
【化3】
」
と記載されている。
また、請求項5には、メソゲン基であるA2構造について、
「前記A2は、下記構造式からなる群から選択された1種を含む、請求項1に記載の液晶配向共重合体:
【化4】
S3は、スペーサであって、-O-;-NH-;またはC1~C6のアルキル鎖の両末端に同一または相異なるように、エーテル基、アミン基、エステル基、およびアミド基からなる群から選択された官能基が導入された2価官能基であり、
S4はスペーサであって、-CO-O-または-O-CO-であり、
Yは、末端に置換された配位子であって、水素、ヒドロキシ、C1~C10のアルキルオキシ、ハロゲン、アミン、ニトリル、ニトロ、グリシジル、イソシアネート、テトラヒドロピラニルカルボン酸、および無水酢酸からなる群から選択される。」
と記載され、請求項5を引用する請求項7には、M2-A2反復単位の単量体として、
「M2-A2反復単位のための単量体は、下記構造式からなる群から選択されたものを含む、請求項5に記載の液晶配向共重合体。
【化5】
」
と記載されている。
さらに、請求項8には、熱硬化性基であるA3構造について、
「前記A3は下記構造式で示される、請求項1に記載の液晶配向共重合体:
【化6】
ここで、S5はスペーサであって、-O-、またはC1~C10のアルキル鎖の末端にエーテル基または-OCO-NH-基が導入された2価官能基であり、nは0または1であり、
Z1は、熱硬化を誘導するエポキシ、オキセタン、イソシアネート、イソチオシアネート、ヒドロキシ、およびアミン基からなる群から選択された基である。」
と記載され、請求項8を引用する請求項9には、M3-A3反復単位の単量体に関し、
「M3-A3反復単位のための単量体は、下記構造式からなる群から選択されたものを含む、請求項5に記載の液晶配向共重合体:
【化7】
」
と記載されている。
そして、請求項10には、架橋基であるA4構造について、
「前記A4は下記構造式で示される、請求項1に記載の液晶配向共重合体:
【化8】
ここで、S6はスペーサであって、-O-、またはC1~C4のアルキル鎖の末端にエーテル基が導入された2価官能基であり、
Z2は、架橋を誘導する官能基であって、カルボン酸、テトラヒドロピラン、無水酸、およびイミダゾールからなる群から選択される。」
と記載され、請求項10を引用する請求項11には、M4-A4反復単位の単量体に関し、
「M4-A4反復単位のための単量体は、下記構造式からなる群から選択されたものを含む、請求項10に記載の液晶配向共重合体:
【化9】
」
と記載されている。
そうすると、甲1には、
「下記化学式1で示される液晶配向共重合体であって、化学式1中の光反応性基であるA1構造、メソゲン基であるA2構造、熱硬化性基であるA3構造及び架橋基であるA4構造を含む、単量体構造が、それぞれ、下記のM1-A1反復単位の単量体の群、M2-A2反復単位の単量体の群、M3-A3反復単位の単量体の群及びM4-A4反復単位の単量体の群から、それぞれ選択されたものである液晶配向共重合体。
化学式1:
前記化学式1において、
M1~M4は、各々独立して高分子鎖にある反復単位であって、アクリル、メタアクリル、クロトン、マレイック、マレアミック、シトラコン、イタコン、スチレン、メチルスチレン、アクリルアミド、メタアクリルアミド、およびマレイックイミドからなる群から選択され、
p、q、r、sは反復単位のモル分率であって、p+q+r+s=1で、p=0.1~0.9、q=0.1~0.9、r=0~0.3、s=0~0.3であり、
A1は、A3またはA4が置換または非置換された光反応性基であり、
A2は、A3またはA4が置換または非置換されたメソゲン基であり、
A3は、熱硬化性基であり、
A4は、A3の熱硬化反応を誘導して架橋化を起こす架橋基である。
但し、r=0の場合、A1はA3が置換された光反応性基であるか、A2はA3が置換されたメソゲン基であり、
s=0の場合、A1はA4が置換された光反応性基であるか、A2はA4が置換されたメソゲン基である。
M1-A1反復単位の単量体の群:
M2-A2反復単位の単量体の群:
M3-A3反復単位の単量体の群:
M4-A4反復単位の単量体の群:
」
(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
さらに、甲1の請求項12~13には、
「【請求項12】
請求項1~11のうちいずれか1項に記載の液晶配向共重合体を含む液晶配向膜。
【請求項13】
請求項12に記載の液晶配向膜を含む液晶ディスプレイ。」
と記載され、また、甲1の【0057】には、
「【0057】
・・・溶媒に対し重量比で1~30の液晶配向の共重合体を溶かして、・・・残余浮遊物を除去した後、スピンコーティングやロールコーティング、インクジェットコーティングによって酸化インジウム-スズで塗布したガラス基板上に塗布し、60~150℃の温度で1~10分間熱を加えて溶媒を蒸発させる。・・・配向膜が塗布された酸化インジウム-スズで塗布したガラス基板は、偏光紫外線による露光と熱処理の2つの工程を経る。この時に配向させる領域を選択的に偏光した紫外線で照射する。・・・露光した基板は熱処理の工程を経る。本発明では、露光の後熱処理を施して配向性を極大化することができる。熱処理は100~250℃の間で10分~1時間行われる。熱処理の工程を終えた後、2つの基板に粘着体とスペーサを用いて1つのセルに合着する。合着した液晶セルに液晶を注入する。本発明で提供する配向膜で構成された液晶セルには多様な種類の液晶を用いることができるが、本発明の実施例ではTN用液晶とIPS液晶に限って記述した。液晶を封入した後には、・・・熱処理をして、液晶が配向膜の整列方向に配向するようにする。」
と記載されている。
上記の甲1の記載によれば、甲1には、
「液晶配向共重合体を含む液晶配向膜を含む液晶セル(液晶ディスプレイ)であって、以下の工程を経て製造された液晶セル(ディスプレイ)。
引用発明1の液晶配向共重合体をコーティングによって酸化インジウム-スズで塗布したガラス基板上に塗布する工程、
熱を加えて溶媒を蒸発させる工程、
配向膜が塗布された酸化インジウム-スズで塗布したガラス基板を、偏光紫外線を照射して配向させる工程、
熱処理により配向性を極大化する工程、
熱処理を終えた2つの基板を粘着体とスペーサを用いて1つのセルに合着し、合着した液晶セルに液晶を注入する工程、
熱処理をして、液晶が配向膜の整列方向に配向するようにする工程。」
(以下、「引用発明2」という。)、
及び、
「液晶配向共重合体を含む液晶配向膜を含む液晶セル(液晶ディスプレイ)の製造方法であって、以下の工程を経て製造する方法。
引用発明1の液晶配向共重合体をコーティングによって酸化インジウム-スズで塗布したガラス基板上に塗布する工程、
60~150℃の温度で1~10分間熱を加えて溶媒を蒸発させる工程、
配向膜が塗布された酸化インジウム-スズで塗布したガラス基板を、偏光紫外線を照射して配向させる工程、
100~250℃、10分~1時間の熱処理により配向性を極大化する工程、
熱処理を終えた2つの基板を粘着体とスペーサを用いて1つのセルに合着し、合着した液晶セルに液晶を注入する工程、
熱処理をして、液晶が配向膜の整列方向に配向するようにする工程。」
(以下、「引用発明3」という。)、
が、記載されていると認められる。
3.本件発明1~4及び17について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「液晶配向共重合体」は、本件発明1の「(コ)ポリマー」に相当する。
また、引用発明1のM1-A1反復単位単量体である、
「
」
は、本件発明1において、Maの選択肢が「アクリロイルであるモノマー単位の残基」であり、Laの選択肢が、「-O-及びアリーレンの組み合わせからなるスペーサー基」であり、Zaの選択肢が、「二量体化可能な置換もしくは非置換シンナメートからなる光化学活性発色団」である場合に相当する。
引用発明1のM3-A3反復単位の単量体である、
「
」
の2~4番目の化合物は、本件発明1において、Mbの選択肢が「アクリロイルであるモノマー単位の残基」であって、Lbの選択肢が「Rが直鎖C3アルキレン残基からなるスペーサー基」でZbの選択肢が、「ヒドロキシまたはアミノである接着促進性基」である場合か、Lbの選択肢が「Rが水素である-N(R)-、-O-、-C(O)、直鎖C3アルキレン残基、及び、アリーレンの組み合わせからなるスペーサー基」でZbの選択肢が「イソシアナトである接着促進性基」である場合に相当する。
引用発明1のM2-A2反復単位の単量体である、
「
」
(但し、末端にグリシジルオキシ基が置換している化合物を除く。)
は、本件発明1において、Mcの選択肢が「非置換もしくはC1アルキル置換基アクリロイルであるモノマー単位の残基」であり、Lcの選択肢が、「単結合又は-O-であるスペーサー基」であって、
Zcが「Rm-[G1-[S1]J]J’-[G2-[S2]d]d’-[G3-[S3]e]e’-[S4]f-によって表されるメソゲン構造」である場合に相当する。
さらに、引用発明1のp、q、r及びsは反復単位のモル分率であって、p、q及びrは、それぞれ、本件発明1のx、z、yに相当するところ、本件発明1では「【化15】(合議体注;一般式の記載は省略する。)によって表される構造を含む(コ)ポリマー」と記載されており、一般式の構造を含んでいれば、引用発明1で特定されるM4-A4反復単位の単量体のような他の単量体単位が共重合していてもよいから、引用発明1の「p+q+r+s=1で、p=0.1~0.9、q=0.1~0.9、r=0~0.3、s=0~0.3」である共重合体について、本件発明1の「x+y+z=1」に相当する「p+q+r=1」としてモル分率を換算し直すと、換算後のp、r及びqのモル分率の特定は、それぞれ、本件発明1の「「x」は、0<x≦1の値を有し、「y」は、0≦y<1の値を有し、「z」は、0≦z<1の値を有し」との特定を満足する。
そうすると、本件発明1と引用発明1とは、
<一致点>
「式:
【化15】(合議体注;一般式の記載は省略する。)
によって表される構造を含む(コ)ポリマー
(式中、
Ma、MbおよびMcは各々、それぞれ独立して、置換もしくは非置換アクリロイル単位(該アクリロイルの置換基は、C1~C4アルキル、フェニル、-O-およびこれらの組み合わせから選択される)、置換もしくは非置換スチレン単位、置換もしくは非置換エポキシ単位、置換もしくは非置換ウレタン単位、置換もしくは非置換ポリカルボン酸、置換もしくは非置換ポリオール単位、置換もしくは非置換ポリアミン単位または置換もしくは非置換ヒドロキシアルカン酸単位(該置換基は、C1~C20アルキル、C1~C20アルコキシ、C3~C10シクロアルキル、C1~C20アルキル(C1~C20)アルコキシ、ハロ(C1~C20)アルキル、ヘテロシクロ(C3~C10)アルキル、ハロアリール、ハロ(C1~C20)アルキルアリール、C1~C20アルキルアリール、C1~C20アルコキシアリール、ヘテロアリール、アリール(C1~C20)アルキル、ヘテロアリール(C1~C20)アルキルから選択される)から選択されるモノマー単位の残基であり;
La、LbおよびLcは、単結合、-(CH2)g-、-(CF2)h-、-Si(Z’)2(CH2)g-もしくは-(Si(CH3)2O)h-、-N(R)-、-C(R)=C(R)-、-C(R)=N-、-C(R’)2-C(R’)2-、-O-、-C(O)-、-C≡C-、-N=N-、-S-、-S(O)-、-S(O)(O)-、-(O)S(O)O-、-O(O)S(O)O-、直鎖もしくは分岐C1~C24アルキレン残基、アリーレン、C3~C10シクロアルキレンまたはこれらの様々な組み合わせからそれぞれ独立して選択されるスペーサー基であり、ここで、Z’は、水素、C1~C18アルキル、C3~C10シクロアルキルまたはアリールから各存在について独立して選択され;Rは、Zb、水素、C1~C18アルキル、C3~C10シクロアルキルまたはアリールから各存在について独立して選択され;R’は、Zb、C1~C18アルキル、C3~C10シクロアルキルまたはアリールから各存在について独立して選択され;該C1~C24アルキレン残基は、Zb、シアノもしくはハロにより-置換されているか、またはZbもしくはハロにより多置換されており;「g」は、1から20より各存在について独立して選択され、および「h」は、1から16(1および16を含む)の自然数であり;
各Zaは、独立して、二量体化可能な置換もしくは非置換シンナメート、光化学分解性置換もしくは非置換ポリイミドまたは光フリース転位し得る置換もしくは非置換芳香族エステルから選択される光化学活生発色団であり;
各Zbは、ヒドロキシ、イソシアナト、ブロック化イソシアナト、チオイソシアナト、ブロック化チオイソシアチト、アミノ、チオ、有機官能性シラン、有機官能性チタネート、または有機官能性ジルコネートから独立して選択される接着促進性基であり、有機官能性シラン、有機官能性チタネート、および有機官能性ジルコネートは有機官能基を含み、該各有機官能基は、ビニル、アリル、ビニル官能性炭化水素基、アリル官能性炭化水素基、アクリロイル官能性炭化水素基、メタクリロイル官能性炭化水素基、スチリル官能性炭化水素基、メルカプト官能性炭化水素基または前述の有機官能基の組み合わせから独立して選択され、該炭化水素基は、C1~C20アルキル、C2~C20アルケニル、C2~C20アルキニル、C1~C20アルコキシ、C1~C20アルキル(C1~C20)アルコキシ、C1~C20アルコキシ(C1~C20)アルキル、アリール、ヘテロアリールおよび前述の炭化水素基の組み合わせから選択されるが、但し、Zbが、ヒドロキシであるとき、該(コ)ポリマーが少なくとも1つの他の接着促進性基を含むことを条件とし;
Zcは、
Rm-[G1-[S1]J]J’-[G2-[S2]d]d’-[G3-[S3]e]e’-[S4]f-
によって表されるメソゲン構造であり;
(式中、
(i)各G1、G2およびG3は、非置換もしくは置換芳香族基、非置換もしくは置換脂環式基、非置換もしくは置換複素環式基およびこれらの混合物から選択される二価の基(この場合の置換基は、ハロゲン;C2~C18アルケニル;C2~C18アルキニル;アジド;シリル;シロキシ;シリルヒドリド;(テトラヒドロー2H-ピランー2-イル)オキシ;イソシアナト;チオイソシアナト;アクリロイルオキシ;メタクリロイルオキシ;2-(アクリロイルオキシ)エチルカルバミル;2-(メタクリロイルオキシ)エチルカルバミル;アジリジニル;アリルオキシカルボニルオキシ;エポキシ;カルボン酸エステル;アクリロイルアミノ;メタクリロイルアミノ;アミノカルボニル;C1~C18アルキルアミノカルボニル;アミノカルボニル(C1~C18)アルキル;C1~C18アルコキシカルボニル;C1~C18アルキルカルボニル;アリールオキシカルボニルオキシ;ジー(ペルフルオロ(C1~C18)アルキル)アミノ;C1~C18アセチル;C3~C10シクロアルキル;C3~C10シクロアルコキシ;C1~C18アルキルオキシカルボニルオキシ;ハロカルボニル;水素;アリール;C1~C18アルキル;C1~C18アルコキシ;C1~C18アルキルアミノ;ジー(C1~C18)アルキルアミノ;C1~C18アルキル(C1~C18)アルコキシ;C1~C18アルコキシ(C1~C18)アルコキシ;ニトロ;ポリ(C1~C18)アルキルエーテル;(C1~C18)アルキル(C1~C18)アルコキシ(C1~C18)アルキル;ポリ(C1~C18)アルコキシ;エチレン;アクリロイルオキシ(C1~C18)アルキル;メタクリロイルオキシ(C1~C18)アルキル;2-クロロアクリロイルオキシ;2-フェニルアクリロイルオキシ;アクリロイルオキシフェニル;2-クロロアクリロイルアミノ;2-フェニルアクリロイルアミノカルボニル;オキセタニル;グリシジル;シアノ;イソシアナト(C1~C18)アルキル;イタコン酸エステル;ビニルエーテル;ビニルエステル;スチレン;主鎖または側鎖液晶ポリマー;シロキサン誘導体;エチレンイミン;シアノ、ハロもしくはC1~C18アルコキシで一置換されている、またはハロで多置換されている、直鎖または分岐C1~C18アルキルから選択される);ステロイド基、テルペノイド基、アルカロイド基もしくはこれらの混合物から選択される、置換もしくは非置換キラルもしくは非キラル一価もしくは二価の基(この場合の置換基は、C1~C18アルキル、C1~C18アルコキシ、C3~C10シクロアルキル、C1~C18アルキル(C1~C18)アルコキシ、フルオロ(C1~C18)アルキル、シアノ、シアノ(C1~C18)アルキル、シアノ(C1~C18)アルコキシまたはこれらの混合物から選択される);または次の式のうちの1つを含む基:-M(T)(t-1)および-M(OT)(t-1)(これらの式中、Mは、アルミニウム、アンチモン、タンタル、チタン、ジルコニウムおよびケイ素から選択され、Tは、有機官能性基、有機官能性炭化水素基、脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択され、および「t」は、Mの原子価である)から、各存在について独立して選択され;
(ii)Rmは、-H;ハロゲン;ハロアルキル;アリール;C1~C18アルキル;またはC1~C18アルコキシであり;
(iii)「j」、「d」、「e」および「f」は、0から20(0および20を含む)の範囲の整数からそれぞれ独立して選択され、「j’」、「d’」および「e’」は、それぞれ独立して、0から4の整数であるが、但し、j’+d’+e’の合計が少なくとも1であることを条件とし;ならびに
(iv)各S1、S2、S3およびS4は、スペーサー単位から各存在について独立して選択され、該スペーサー単位は、
(A)-(CH2)g-、-(CF2)h-、-Si(Z’)2(CH2)g-、またはー(Si(CH3)2O)h-(これらの式中、Z’は、水素、C1~C18アルキル、C3~C10シクロアルキルまたはアリールから各存在について独立して選択され;「g」は、1から20より各存在について独立して選択され、および「h」は、1から16(1および16を含む)の自然数である);
(B)-N(Y)-、-C(Y)=C(Y)-、-C(Y)=N-、-C(Y’)2-C(Y’)2-、または単結合(これらの式中、Yは、水素、C1~C18アルキル、C3~C10シクロアルキルおよびアリールから各存在について独立して選択され、ならびにY’は、C1~C18アルキル、C3~C10シクロアルキルおよびアリールから各存在について独立して選択される);あるいは
(C)-O-、-C(O)-、-C≡C-、-N=N-、-S-、-S(O)-、-S(O)(O)-、-(O)S(O)O-、-O(O)S(O)O-または直鎖もしくは分岐C1~C24アルキレン残基(該C1~C24アルキレン残基は、非置換であるか、シアノまたはハロにより一置換されているか、ハロにより多置換されている)
から選択されるが、但し、ヘテロ原子を含む2つのスペーサー単位が互いに連結されているとき、これらのスペーサー単位は、ヘテロ原子が互いに直接連結されないように連結されていること、ならびにS1およびS4が別の基に連結されているとき、それらは、2個のヘテロ原子が互いに直接連結されないように連結されていることを条件とする);ならびに
「x」は、0<x≦1の値を有し、「y」は、0≦y<1の値を有し、「z」は、0≦z<1の値を有し、x+y+z=1であり;
x=1のときには、LaおよびZaの少なくとも一方が、少なくとも1つのZb接着促進性基でさらに置換されており、ならびにy=0のときには、La、Za、LcおよびZcの少なくとも1つが、少なくとも1つのZb接着促進性基でさらに置換されている)。」
である点で一致し、
次の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1では、(コ)ポリマーの重合度「n」が「10から10,000の範囲の値」であることが特定されているのに対し、引用発明1の共重合体では、重合度が特定されていない点。
<相違点2>
本件発明1では、(コ)ポリマーについて、「(コ)ポリマーの少なくとも1つのZbは、ブロック化イソシアナト、ブロック化チオイソシアナト、有機官能性シラン、有機官能性チタネート、または有機官能性ジルコネートから選択され」と特定されているのに対して、引用発明1の化学式1の共重合体における熱硬化性基A3中の熱硬化を誘導する基は、「イソシアネート(合議体注;「イソシアナト」と同義。)」である点。
<相違点3>
本件発明1では、(コ)ポリマーについて、「(コ)ポリマーの各Zbは、該(コ)ポリマー内の別の基と架橋する架橋基を除くことを条件とする」と特定されているのに対し、引用発明1の共重合体では、かかる特定はされていない点。
イ 判断
上記相違点について検討する。
まず、相違点1については、引用発明1の共重合体は高分子なのであるから、その重合度は、高分子重合体の一般的な重合度範囲を包含する本件発明1の「n」が「10から10,000の範囲の値」を満足する蓋然性が高い。
仮に、そうとまではいえない場合であっても、その程度の重合度の液晶配向層用共重合体は本件特許にかかる原出願の優先日当時周知であった。(例えば、甲1の従来技術として記載されている大韓民国登録特許第10-0357841号の対応日本語文献である特表平10-506420号公報(周知例6)の請求項1には、液晶配向層に用いるポリマーとして、重合度(pと表記)が4~30000と、本件発明1と重合度が重複一致している重合体が記載されているし、特開2007-86399号公報(周知例7)の実施例1~6の配向膜として、各単量体の繰り返し単位の合計が100のポリマーが記載されている。)
そうすると、相違点1は、実質的には相違点ではないか、仮に相違点であっても、引用発明1において共重合体の重合度を、本件発明1で特定される程度のものとすることは、当業者が容易になし得ることに過ぎない。また、それによる効果も格別のものでもない。
次に、相違点2について検討する。
引用発明1の化学式1の共重合体における熱硬化性基A3中の熱硬化を誘導する基である「イソシアネートは、活性水素含有基又は水と反応する基であるところ、イソシアネート基自体が反応性に富むことから、所望しない反応を防ぐために、より保存安定性が優れたブロック化した形態として使用することが、本件特許にかかる原出願の優先日当時周知の技術であった(周知技術を示すものとして、例えば、周知例1(特に、396頁の1~6行及び398頁下から7行の「ブロックイソシアネート形一液接着剤」なる記載)、周知例2(特許請求の範囲、【0004】、【0011】、【0018】及び【0019】)、周知例4(特許請求の範囲、【0002】、【0003】及び【0034】)及び周知例5(特許請求の範囲、【0001】及び【0017】~【0019】)を参照のこと。)。
そうすると、かかる周知技術を認識している当業者であれば、引用発明1の共重合体における熱硬化性基A3に含まれるイソシアネート基を、これと同等に使用でき、より保存安定性にも優れた形態であるブロック化された形態に変更することを自然に想到するといえる。
したがって、引用発明1の共重合体を相違点2の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得ることに過ぎない。
さらに、相違点3について検討する。
引用発明1について、「A3は、熱硬化性基であり、A4は、A3の熱硬化反応を誘導して架橋化を起こす架橋基」、「r=0の場合、A1はA3が置換された光反応性基であるか、A2はA3が置換されたメソゲン基」、「s=0の場合、A1はA4が置換された光反応性基であるか、A2はA4が置換されたメソゲン基である」と特定されているとおり、引用発明1の液晶配向共重合体は、熱硬化性基であるA3と、A3の熱硬化反応を誘導して架橋化を起こす架橋基A4とを共に有することが必須である。
一方、本件発明1では、「Zb」(接着促進性基)に関し、「(コ)ポリマーの各Zbは、該(コ)ポリマー内の別の基と架橋する架橋基を除くことを条件とする」と特定されており、引用発明1の液晶配向共重合体のように、共重合体が、熱硬化性基、および、熱硬化性基と熱硬化反応を誘導して架橋化を起こす架橋基を有し、これらの基が反応して架橋し得る構造のものは除外されている。
そして、引用発明1は、甲1の【0008】等に記載のように、熱安定性に優れ、残像のない液晶配向膜を与える液晶配向共重合体を提供することを課題とするところ、液晶配向共重合体が光反応性基、メソゲン基の他に、熱硬化性基および熱硬化性基と反応して架橋する架橋基を含む液晶配向共重合体とすることで、液晶配向膜とした場合に、熱安定性に優れ、かつ、残像の効果が表れないという効果が奏されることが甲1の記載から理解できる(甲1の【0041】、【0061】、並びに、【0092】~【0095】及び図2における実施例1~4と比較例2との対比)。
そうすると、引用発明1において、液晶配向共重合体を、引用発明1の課題の解決に必須の「熱硬化性基および熱硬化性基と反応して架橋する架橋基」を含まないものとすることについて、阻害要因があるといえるから、引用発明1の液晶配向共重合体を、相違点3に係る本件発明1の構成を備えたものとすることを当業者は想到し得ない。
したがって、相違点1及び2についての判断にかかわらず、相違点3に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者であっても容易になし得たことではないのであるから、本件発明1について、引用発明1から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
なお、申立人は、平成29年12月8日付けの意見書において、甲1の【0052】に「本発明に係る液晶配向膜は当分野で知られている通常の方法によって直接製造することができ、選択的に、前記化学式1でs=0の場合、付加的に架橋剤を添加して製造することもできる。」と記載されていることを根拠として、「甲第1号証には、(コ)ポリマー内で架橋しない態様も開示又は示唆されている」から、本件発明1は甲1及び甲2に記載の発明から進歩性を有しない旨主張している(2頁の(2))。
しかしながら、甲1の【0052】は、「液晶配向膜」について、「化学式1でs=0の場合」の液晶配向共重合体に、架橋剤を付加的に添加して製造することができると記載されているのであって、「化学式1でs=0の場合」の液晶配向共重合体自体は、化学式1の定義によれば、A1(光反応性基)あるいは、A2(メソゲン基)のいずれかに、必ずA4(架橋基)が置換されることになるから、当該段落の記載を参酌しても、本件発明1において除かれている(コ)ポリマーに相当する液晶配向共重合体しか開示されていない。
したがって申立人の主張は採用できない。
さらに、申立人は、平成29年12月8日付けの意見書において、本件特許の訂正前の請求項1において、「(コ)ポリマーの各Zbは、該(コ)ポリマー内の別の基と架橋する架橋基を除くことを条件とする」との発明特定事項を加入する訂正がされた点に関し、本件発明1の「Zb」(接着促進性基)として、(コ)ポリマー内の別の基と架橋し得る「ヒドロキシ」が包含されているところ、「ヒドロキシ」は、(コ)ポリマー内の別の基の種類によって架橋したり架橋しなかったりするから、「(コ)ポリマー内の別の基と架橋する架橋基」が明確ではなく、当該基を除く本件発明1は不明確である旨主張する(3頁の(3))。
しかしながら、「Zb」(接着促進性基)に、(コ)ポリマー内に存在する別のZb基や別の置換基と反応するものが含まれている場合には、本件発明1から除かれるのであり、例えば、Zb基が「ブロック化イソシアナイト」基である場合には、他のZb基や他の置換基として「ヒドロキシ」が含まれる(コ)ポリマーが本件発明1に含まれないことは当業者に明らかであるから、申立人の主張は認められない。
よって、本件発明1は、甲1に記載された発明(引用発明1)及び本件特許の原出願の優先日当時の周知技術に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとはいえない。
(2)本件発明2~4及び17
本件発明2~4及び17は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する発明であるから、上記本件発明1について説示したと同様の理由により、甲1に記載された発明(引用発明1)及び本件特許の原出願の優先日当時の周知技術に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとはいえない。
4.本件発明5~10について
(1)本件発明5について
本件発明5と引用発明2を対比する。
引用発明2の液晶セルは本件発明5の「製造物品」に、「酸化インジウム-スズで塗布したガラス基板」は「基材」に相当するし、引用発明3においては、「液晶配向共重合体をコーティングによって酸化インジウム-スズで塗布したガラス基板上に塗布する工程、熱を加えて溶媒を蒸発させる工程」を経て得られた「配向膜が塗布された酸化インジウム-スズで塗布したガラス基板液晶セル」は、「偏光紫外線を照射して配向させる工程」により配向膜(これは、本件発明5の「基材の表面の少なくとも一部分の上の第一の少なくとも部分的な層」に相当する。)が配向されるものと認められる。
また、引用発明2の「熱処理を終えた2つの基板を粘着体とスペーサを用いて1つのセルに合着し、合着した液晶セルに液晶を注入する工程」を経て得られた液晶セル中の液晶層は、本件発明5の「基材の表面の少なくとも一部分の上の1つ以上の追加の少なくとも部分的な層であって、液晶材料層である1つ以上の追加の少なくとも部分的な層」に相当する。
そうすると、本件発明5と引用発明2とは、上記の3.の(1)において一致点として記載した(コ)ポリマーを「所定のコポリマ-」と表記すると、
「製造物品であって、
基材と;
該基材の表面の少なくとも一部分の上の第一の少なくとも部分的な層であって、所定のコポリマ-を含む層であり、偏波曝露によって場合より少なくとも部分的に配向されるものである第一の少なくとも部分的な層と;
場合により、該基材の表面の少なくとも一部分の上の1つ以上の追加の少なくとも部分的な層であって、タイ層、プライマー層、耐摩耗性コーティング、硬質コーティング、保護コーティング、反射コーティング、フォトクロミックコーティング、反射防止コーティング、直線偏光コーティング、円偏光コーティング、楕円偏光コーティング、遷移コーティング、液晶材料層、配向材料層、リターダー層、またはこれらのうちの任意のものの組み合わせから選択されるものである1つ以上の追加の少なくとも部分的な層とを含む、製造物品。」
で、一致し、
<相違点4>
本件発明5では、(コ)ポリマーの重合度「n」が「10から10,000の範囲の値」であることが特定されているのに対し、引用発明2の共重合体では、重合度が特定されていない点。
<相違点5>
本件発明5では、(コ)ポリマーについて、「(コ)ポリマーの少なくとも1つのZbは、ブロック化イソシアナト、ブロック化チオイソシアナト、有機官能性シラン、有機官能性チタネート、または有機官能性ジルコネートから選択され」と特定されているのに対して、引用発明2で引用する引用発明1の化学式1の共重合体における熱硬化性基A3中の熱硬化を誘導する基は、「イソシアネート」である点。
<相違点6>
本件発明5では、(コ)ポリマーについて、「(コ)ポリマーの各Zbは、該(コ)ポリマー内の別の基と架橋する架橋基を除くことを条件とする」と特定されているのに対し、引用発明2で引用する引用発明1の化学式1の共重合体では、かかる特定はされていない点。
で相違している。
そして、上記の相違点4~6は、それぞれ、3.(1)の相違点1~3の内容と同様であり、相違点4~6についての判断も、既に3.(2)で記載したと同様であって、本件発明5は、甲1に記載された発明(引用発明2)及び本件特許の原出願の優先日当時の周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとはいえない。
(2)本件発明6~10について
本件発明6~10は、請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する発明であるから、(1)で本件発明5について説示したと同様の理由により、甲1に記載された発明(引用発明2)及び本件特許の原出願の優先日当時の周知技術に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとはいえない。
5.本件発明11~16について
(1)本件発明11について
本件発明11と引用発明3を対比する。
引用発明3の「液晶セル」は本件発明11の「光学素子」に、「酸化インジウム-スズで塗布したガラス基板」は「基材」に、「配向膜」は「(コ)ポリマーを含む光配向材料の少なくとも部分的な層」に、「60~150℃の温度で1~10分間熱を加えて溶媒を蒸発させる工程」及び「100~250℃、10分~1時間の熱処理により配向性を極大化する工程」は「光配向(コ)ポリマー材料上の1つ以上の接着促進性基と該基材の表面の適合基との間に引力結合を形成する工程」に、「配向膜が塗布された酸化インジウム-スズで塗布したガラス基板を、偏光紫外線を照射して配向させる工程」は「光配向(コ)ポリマー材料の少なくとも第一の部分を、該少なくとも部分的な層の偏光UV線への曝露により、少なくとも部分的に配向させる工程」に、それぞれ、相当すると認められる。
そうすると、本件発明11と引用発明3とは、4.(1)で述べたとおり、3.(1)において一致点として記載した(コ)ポリマーを「所定のコポリマ-」と表記すると、
「光配向材料を光学素子に塗布する方法であって、
- 所定のコポリマ-を含む光配向材料の少なくとも部分的な層を基材の表面の少なくとも一部分に塗布する工程;
- 該光配向(コ)ポリマー材料上の1つ以上の接着促進性基と該基材の表面の適合基との間に引力結合を形成する工程;および
- 該光配向(コ)ポリマー材料の少なくとも第一の部分を、該少なくとも部分的な層の偏光UV線への曝露により、少なくとも部分的に配向させる工程
を含む方法。」
で、一致し、
<相違点7>
本件発明11では、(コ)ポリマーの重合度「n」が「10から10,000の範囲の値」であることが特定されているのに対し、引用発明3の共重合体では、重合度が特定されていない点。
<相違点8>
本件発明11では、(コ)ポリマーについて、「(コ)ポリマーの少なくとも1つのZbは、ブロック化イソシアナト、ブロック化チオイソシアナト、有機官能性シラン、有機官能性チタネート、または有機官能性ジルコネートから選択され」と特定されているのに対して、引用発明3で引用する引用発明1の化学式1の共重合体における熱硬化性基A3中の熱硬化を誘導する基は「イソシアネート」である点。
<相違点9>
本件発明11では、(コ)ポリマーについて、「(コ)ポリマーの各Zbは、該(コ)ポリマー内の別の基と架橋する架橋基を除くことを条件とする」と特定されているのに対し、引用発明3で引用する引用発明1の共重合体では、かかる特定はされていない点。
で相違している。
そして、上記の相違点7~9は、それぞれ、3.(1)で記載した相違点1~3の内容と同様であり、相違点6~9についての判断も、既に3.(2)で記載したと同様であって、本件発明11は、甲1に記載された発明(引用発明3)及び本件特許の原出願の優先日当時の周知技術に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとはいえない。
(2)本件発明12~16について
本件発明12~16は、請求項11の記載を直接的又は間接的に引用する発明であるから、(1)において、本件発明11について説示したと同様の理由により、甲1に記載された発明(引用発明3)及び本件特許の原出願の優先日当時の周知技術に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとはいえない。
6.まとめ
以上のとおりであるから、(訂正された発明である)本件発明1~17に係る本件特許について、取消理由通知書で通知した取消理由によって取り消すことはできない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由等について
(1)申立人の主張
申立人は、訂正前の特許請求の範囲(請求項1~17)に関し、特許異議申立書の5~7頁(項目(4-2))において、以下のア及びイの点を指摘して、出願時の技術常識に照らしても、本特許の訂正前の請求項1~17に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないので、本特許は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たさないと主張している。
ア 「請求項1では、スペーサー基であるLa、LbおよびLcについて、「単結合、-(CH2)g-、-(CF2)h-、-Si(Z’)2(CH2)g-もしくは-(Si(CH3)2O)h-、-N(R)-、-C(R)=C(R)-、-C(R)=N-、-C(R’)2-C(R’)2-、-O-、-C(O)-、-C≡C-、-N=N-、-S-、-S(O)-、-S(O)(O)-、-(O)S(O)O-、-O(O)S(O)O-、直鎖もしくは分岐C1~C24アルキレン残基、アリーレン、C3~C10シクロアルキレンまたはこれらの様々な組み合わせからそれぞれ独立して選択されるスペーサー基」と定義されている。
これに対して、本特許発明の課題は、光配向性コポリマーから得られた光配向層の基材に対する接着性を改善することであるところ(本特許明細書の[0007]及び[0008]など)、本特許明細書の実施例において、当該発明の課題を解決できることが示されているのは、コポリマーにおけるLa、LbおよびLcが-(CH2)g-である場合に限定される(実施例1~9)。
そして、当業者は、明細書の記載内容や技術常識を参酌したとしても、La、LbおよびLcが-(CH2)g-以外であるコポリマーを用いた場合であっても、La、LbおよびLcが-(CH2)g-であるコポリマーを用いた場合と同様に、当該発明の課題を解決できることを認識し得るとはいえない。
イ 本特許の請求項1~17について
本特許の請求項1~4及び17では、(コ)ポリマーの用途は限定されておらず、あらゆる用途を含むし、また、本特許の請求項5~16では、基材の表面に本特許の請求項1~4のいずれかに記載の(コ)ポリマーの層を塗布する物品及び方法が記載されているところ、本特許の請求項5~16でいう「基材」は限定されておらず、あらゆる基材を含むものである。
ここで、本特許発明の課題は、光配向性コポリマーから得られた光配向層の基材に対する接着性を改善することであるところ(本特許明細書の[0007]及び[0008]など)、本特許明細書の実施例において、接着性が改善することが示されているのは、基材として、レンズ(プラスチック光学基材)に用いられるCD-39モノマー、ポリカーボネート又はTRIVEXモノマーを使用した場合に限られる。
そうすると、当業者は、明細書の記載内容や技術常識を参酌したとしても、プラスチック光学基材以外の基材を用いた場合であっても、発明の課題(光配向性コポリマーから得られた光配向層の基材に対する接着性の改善)を解決できることを認識し得るとはいえない。
(2)判断
申立人による、上記ア及びイの主張について検討する。
本件発明が解決しようとする課題は、特許請求の範囲及び本件特許明細書の【0001】~【0020】及び【0025】、特に以下の記載によれば、「基材表面への向上した接着性を示す光指向性(コ)ポリマー材料、及び該光配向材料の製造および塗布方法を提供すること」であると認められる。
・【0001】
「本開示は、光配向層としての使用に適する新規(コ)ポリマー材料に関する。該新規光配向材料は、基材表面への向上した接着性を示すとともにより濃稠なモノマー液晶層およびポリマー液晶層を配向させることができる、光指向性で構造的に異方性のポリマーネットワークを含む。該新規光配向材料の製造および塗布方法も開示する。」
・【0007】
「・・・液晶層または他の層が光配向層の表面に堆積する用途では層間の接着も必要である。利用の際、接着レベルが十分でない場合、基材表面からの光配向層の剥離および/または光配向層の表面からの後続の層の剥離が観察されることがある。」
・【0008】
「・・・公知光配向材料に比べて向上した接着特性を有する層およびより厚い配向液晶層を形成するために使用することができる光配向材料が望まれる。本発明の光配向材料は、従前から公知である光配向性コポリマーおよびそれらを含む配向層の短所を克服し、望ましい向上した接着特性を提供する。」
・【0020】
「本開示は、基材上に層として堆積することに適する新規光指向型構造異方性ポリマーネットワークであって、より濃稠なモノマー液晶層およびポリマー液晶層を配向させることができ、かつ一般的に使用される基材へのおよび前記ポリマー層の表面に堆積させる後続の層への向上した接着性を示すことができるポリマーネットワークを生産するための、構造および方法に関する。」
・【0025】
「光配向材料などの配向材料を基材の表面または該表面の一部分に対するコーティングとして使用することができ、この場合、前記配向材料を少なくとも部分的に配向させることができ、およびその後、それを用いて、その配向材料層の一部分に塗布される後続の層中の一つ以上の液晶材料を配向させることができる。しかし、従来の光配向材料は、その光配向材料の表面へのおよび/または該表面にコーティングされ得る後続の層への不十分な接着性を示し得る。これは、前記表面および/または後続の層からの光配向層の剥離または分離、ならびに製品の効用および寿命の総合損失につながり得る。本開示の様々な実施形態は、新規(コ)ポリマー光配向材料を規定する。これらの(コ)ポリマー光配向材料は、該材料がコーティングされる基材の表面への向上した接着性、および該材料と光配向材料層の表面に堆積させる後続の層との向上した接着性を示す。向上した接着特性は、光配向材料の(コ)ポリマー構造内への接着促進性基の組み込みによる影響を受ける。」
そして、本件発明1~17は、いずれも、請求項1に特定される特定の式構造を含む(コ)ポリマーの使用に特徴を有するところ、請求項1に記載の定義からみて、該(コ)ポリマーは、その構造中に「Ma-La-Za」単位及び「少なくとも1つのZb接着促進性基」を有することが必須である。
さらに、Zaは、請求項1の定義にあるとおり、「二量体化可能な置換もしくは非置換シンナメート、光化学分解性置換もしくは非置換ポリイミドまたは光フリース転位し得る置換もしくは非置換芳香族エステルから選択される光化学活生発色団」であり、これは、【0029】~【0030】に記載されるとおり、従来から知られているポリマー単位材料であり、【0051】に記載とのとおり、光への暴露により(コ)ポリマー中に部分的に配向した構造を形成することができるものである。
また、Zb(接着促進性基)は、【0031】に記載されているように、「(コ)ポリマー構造とそれがコーティングされる基材との間の、その接着促進性基を含有するポリマーの表面にコーティングされるポリマーフィルムへの、または同ポリマーフィルム上への接着性を向上させる基」であり、「(コ)ポリマーと基材・・・との間に分子または原子レベルで少なくとも部分的な引力を形成することによって作用することができる」ものであるし、「接着特性」は、【0025】に記載のとおり、「光配向材料の(コ)ポリマー構造内への接着促進性基の組み込み」により影響を受ける(改善する)ものである。
そうすると、本件特許明細書の記載から、本件発明(1から17)が解決しようとする課題である、「基材表面への向上した接着性を示す光指向性(コ)ポリマー材料、及び該光配向材料の製造および塗布方法を提供すること」のうち、「光指向性材料」の提供の課題は、構造中に「Ma-La-Za」単位を含むことで達成できるし、「基材表面への向上した接着性」の課題は、(コ)ポリマーが、「Zb接着促進性基」を有することで達成できることが当業者に理解できるから、具体例で使用されているスペーサー基La、Lb及びLcよりも、請求項1で特定されるスペーサー基の種類が多いとしても、本件発明(1から17)が解決しようとする課題が、本件発明(1から17)の構成によって解決できることは当業者に明らかである。
よって、申立人のアの主張は採用できない。
また、本件発明の課題は、(コ)ポリマーについての用途の特定の有無にかかわらず、(コ)ポリマーが本件特許の請求項1に記載の構造、特に、「Ma-La-Za」単位及び「Zb接着促進性基」を有することで達成できると認められるし、基材についても、本件特許の請求項1に特定される「Zb接着促進性基」と引力による相互作用が可能な基材であれば任意の基材が使用可能(本件特許明細書の【0031】参照)と認められるから、本件特許明細書で具体的に試験されている(コ)ポリマーが特定の用途に使用されており、また、基材が特定のものに過ぎないとしても、本件発明(1~17)の構成によって、本件発明1~17が解決しようとする課題が解決できることは当業者に明らかである。
よって、申立人のイの主張も採用できない。
以上のとおりであるから、本件発明1~17は本件特許明細書の発明の詳細な説明に開示されたものといえ、本件特許は特許法第36条第6項第1号の要件を満たすものである。
したがって、申立人が主張する上記異議申立理由によっては、本件の請求項~17に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~17に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700510