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特許異議申立

2017-700303

内転機構および時計

審判番号
2017-700303
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-141372
登録番号
特許第6020678号(P6020678)
請求日
2017年03月27日
審決日
2018年03月13日
公報発行日
2018年09月28日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】カシオ計算機株式会社
  • 【権利者代理人】鹿嶋 英實
  • 【異議申立人】土屋 篤志
  • 【異議申立人代理人】廣田 浩一
審判長/審判官
  • 審判長 中塚 直樹
  • 審判官 須原 宏光
  • 審判官 ▲うし▼田 真悟
分類
P1651.121-ZDB(G04B) / P1651.537-ZDB(G04B) / P1651.841-ZDB(G04B) / P1651.857-ZDB(G04B) / P1651.851-ZDB(G04B) / P1651.113-ZDB(G04B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法36条6項2号特許法113条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第131条の2第1項、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6020678号発明「内転機構および時計」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 平成29年8月28日付け訂正請求において、特許第6020678号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔7、8、13〕について訂正することを認める。 特許第6020678号の請求項1ないし8、11ないし13に係る特許を取り消す。 同請求項9、10に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6020678号の請求項1-12に係る発明についての出願は、平成28年10月14日付けでその特許権が設定登録され、その後、平成29年3月27日に特許異議申立人土屋篤志により請求項1-12に対して特許異議の申立てがされ、平成29年6月30日付けで取消理由が通知され、平成29年8月28日に意見書の提出及び訂正請求がなされ、平成29年9月20日付けで訂正拒絶理由が通知され、平成29年10月6日に意見書及び手続補正書の提出がされた。これに対して、平成29年11月29日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正請求及び手続補正について (1)手続補正について 平成29年8月28日付けの訂正請求書(以下、「訂正請求書」という。)及びこれに添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲は、平成29年10月6日付けの手続補正書(以下、「補正書」という。)により補正されたので、まずは当該補正の適否について検討する。 ア 補正の内容 (ア)訂正事項1 訂正請求書に 「ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「・・・」 とあるのを、 「 ケースの側部に回転操作可能に設けられた操作部材と、 前記ケースの内部に突出した前記操作部材の内端部に取り付けられた歯車と、 前記ケースの内部に回転移動可能に配置され、かつ前記歯車に向けて突出した状態で設けられて前記歯車が噛み合うラックを備える内転リングと、 前記ケースの内部に設けられて前記内転リングが配置され、かつ前記ラックが回転移動可能に挿入するガイド溝を備えるガイド保持部と、 を備え、 前記内転リングは、前記ガイド保持部に回転移動可能に配置される回転体を備え、前記ラックは、前記歯車に対応する前記回転体の一面に前記歯車に向けて突出して設けられ、 前記ガイド保持部の前記ガイド溝には、逃げ部が設けられていることを特徴とする内転機構。」 に訂正する。」とあるのを、 補正書のとおり、 「ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「・・・」 とあるのを、 「 ケースの側部に回転操作可能に設けられた操作部材と、 前記ケースの内部に突出した前記操作部材の内端部に取り付けられた歯車と、 前記ケースの内部に回転移動可能に配置され、かつ前記歯車に向けて突出した状態で設けられて前記歯車が噛み合うラックを備える内転リングと、 前記ケースの内部に設けられて前記内転リングが配置され、かつ前記ラックが回転移動可能に挿入するガイド溝を備えるガイド保持部と、 を備え、 前記内転リングは、前記ガイド保持部に回転移動可能に配置される回転体を備え、前記ラックは、前記歯車に対応する前記回転体の一面に前記歯車に向けて突出して設けられ、 前記ガイド保持部の前記ガイド溝には、前記ガイド保持部と前記内転リングとの熱膨張係数の差による前記ラックの前記ガイド溝に対する締りを逃す逃げ部が設けられていることを特徴とする内転機構。」 に訂正する。」と補正する。 (イ)訂正事項2 訂正請求書に 「イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項7に 「・・・」 とあるのを、請求項1を引用しないものとし、独立形式に改め、 「 ケースの側部に回転操作可能に設けられた操作部材と、 前記ケースの内部に突出した前記操作部材の内端部に取り付けられた歯車と、 前記ケースの内部に回転移動可能に配置され、かつ前記歯車に向けて突出した状態で設けられて前記歯車が噛み合うラックを備える内転リングと、 前記ケースの内部に設けられて前記内転リングが配置され、かつ前記ラックが回転移動可能に挿入するガイド溝を備えるガイド保持部と、 を備え、 前記内転リングは、前記ガイド保持部に回転移動可能に配置される回転体を備え、前記ラックは、前記歯車に対応する前記回転体の一面に前記歯車に向けて突出して設けられ、前記ガイド保持部の前記ガイド溝には、前記ガイド保持部と前記内転リングとの熱膨張係数の差による前記ラックの前記ガイド溝に対する締りを逃げ部が設けられていることを特徴とする内転機構。」 に訂正する。」とあるのを、 補正書のとおり、 「イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項7に 「・・・」 とあるのを、請求項1を引用しないものとし、独立形式に改め、 「 ケースの側部に回転操作可能に設けられた操作部材と、 前記ケースの内部に突出した前記操作部材の内端部に取り付けられた歯車と、 前記ケースの内部に回転移動可能に配置され、かつ前記歯車に向けて突出した状態で設けられて前記歯車が噛み合うラックを備える内転リングと、 前記ケースの内部に設けられて前記内転リングが配置され、かつ前記ラックが回転移動可能に挿入するガイド溝を備えるガイド保持部と、 を備え、 前記内転リングは、前記ガイド保持部に回転移動可能に配置される回転体を備え、前記ラックは、前記歯車に対応する前記回転体の一面に前記歯車に向けて突出して設けられ、前記ガイド保持部の前記ガイド溝には、前記ガイド保持部と前記内転リングとの熱膨張係数の差による前記ラックの前記ガイド溝に対する締りを逃す逃げ部が設けられ、前記逃げ部は、前記ガイド溝の底部側からその開放側に向けて前記ガイド溝の溝幅が次第に広くなるテーパ状に形成されていることを特徴とする内転機構。」 に訂正する。」と補正する。 (ウ)訂正事項3 訂正請求書に 「ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項11に 「・・・」 とあるのを、 「ケースの側部に回転操作可能に設けられた操作部材と、 前記ケースの内部に突出した前記操作部材の内端部に取り付けられた歯車と、 前記ケースの内部に回転移動可能に配置され、かつ前記歯車に向けて突出した状態で設けられて前記歯車が噛み合うラックを備える内転リングと、 前記ケースの内部に設けられて前記内転リングが配置され、かつ前記ラックが回転移動可能に挿入するガイド溝を備えるガイド保持部と、 を備え、 前記内転リングは、前記ガイド保持部に回転移動可能に配置される回転体を備え、 前記ガイド保持部の前記ガイド溝には、逃げ部が設けられていることを特徴とする内転機構。」 に訂正する。 」とあるのを、 補正書のとおり、 「ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項11に 「・・・」 とあるのを、 「ケースの側部に回転操作可能に設けられた操作部材と、 前記ケースの内部に突出した前記操作部材の内端部に取り付けられた歯車と、 前記ケースの内部に回転移動可能に配置され、かつ前記歯車に向けて突出した状態で設けられて前記歯車が噛み合うラックを備える内転リングと、 前記ケースの内部に設けられて前記内転リングが配置され、かつ前記ラックが回転移動可能に挿入するガイド溝を備えるガイド保持部と、 を備え、 前記内転リングは、前記ガイド保持部に回転移動可能に配置される回転体を備え、 前記ガイド保持部の前記ガイド溝には、前記ガイド保持部と前記内転リングとの熱膨張係数の差による前記ラックの前記ガイド溝に対する締りを逃す逃げ部が設けられていることを特徴とする内転機構。」 に訂正する。」と補正する。 (エ)訂正事項5 訂正請求書に 「オ 訂正事項5 願書に添付した明細書の段落【0009】に 「・・・」 とあるのを、 「この発明は、ケースの側部に回転操作可能に設けられた操作部材と、前記ケースの内部に突出した前記操作部材の内端部に取り付けられた歯車と、前記ケースの内部に回転移動可能に配置され、かつ前記歯車に向けて突出した状態で設けられて前記歯車が噛み合うラックを備える内転リングと、前記ケースの内部に設けられて前記内転リングが配置され、かつ前記ラックが回転移動可能に挿入するガイド溝を備えるガイド保持部と、を備え、前記内転リングは、前記ガイド保持部に回転移動可能に配置される回転体を備え、前記ラックは、前記歯車に対応する前記回転体の一面に前記歯車に向けて突出して設けられ、前記ガイド保持部の前記ガイド溝には、逃げ部が設けられていることを特徴とする内転機構である。」 に訂正する。 」とあるのを、 補正書のとおり、 「オ 訂正事項5 願書に添付した明細書の段落【0009】に 「・・・」 とあるのを、 「この発明は、ケースの側部に回転操作可能に設けられた操作部材と、前記ケースの内部に突出した前記操作部材の内端部に取り付けられた歯車と、前記ケースの内部に回転移動可能に配置され、かつ前記歯車に向けて突出した状態で設けられて前記歯車が噛み合うラックを備える内転リングと、前記ケースの内部に設けられて前記内転リングが配置され、かつ前記ラックが回転移動可能に挿入するガイド溝を備えるガイド保持部と、を備え、前記内転リングは、前記ガイド保持部に回転移動可能に配置される回転体を備え、前記ラックは、前記歯車に対応する前記回転体の一面に前記歯車に向けて突出して設けられ、前記ガイド保持部の前記ガイド溝には、前記ガイド保持部と前記内転リングとの熱膨張係数の差による前記ラックの前記ガイド溝に対する締りを逃す逃げ部が設けられていることを特徴とする内転機構である。」 に訂正する。」と補正する。 (オ)訂正事項6 以下の訂正事項6を、補正書のとおり追加する。 「カ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項8を削除する。」 イ 補正の適否 訂正拒絶理由通知に対する補正は、 訂正事項1において、「前記ガイド保持部の前記ガイド溝には、逃げ部が設けられていること」を、「前記ガイド保持部の前記ガイド溝には、前記ガイド保持部と前記内転リングとの熱膨張係数の差による前記ラックの前記ガイド溝に対する締りを逃す逃げ部が設けられていること」に変更し、 訂正事項2において、「逃げ部」について、「前記逃げ部は、前記ガイド溝の底部側からその開放側に向けて前記ガイド溝の溝幅が次第に広くなるテーパ状に形成されている」構成を追加し、 訂正事項3において、「前記ガイド保持部の前記ガイド溝には、逃げ部が設けられていること」を、「前記ガイド保持部の前記ガイド溝には、前記ガイド保持部と前記内転リングとの熱膨張係数の差による前記ラックの前記ガイド溝に対する締りを逃す逃げ部が設けられていること」に変更し、 訂正事項5において、「前記ガイド保持部の前記ガイド溝には、逃げ部が設けられていること」を、「前記ガイド保持部の前記ガイド溝には、前記ガイド保持部と前記内転リングとの熱膨張係数の差による前記ラックの前記ガイド溝に対する締りを逃す逃げ部が設けられていること」に変更するものである。 したがって、上記訂正事項1、3、5に対する補正は、訂正事項を変更し、上記訂正事項2に対する補正は、新たな訂正事項を加えるものであり、訂正請求書の要旨を変更している。(参考:審判便覧(改訂第16版)の「67-05.3 P4.(3)イ」には、訂正拒絶理由通知に対しては、訂正事項の削除、軽微な瑕疵の補正等、訂正請求書の要旨を変更しないものであれば補正をすることができることが記載されている。) よって、上記補正書による補正は、訂正請求書の要旨を変更するものであるから、特許法120条の5第9項で準用する特許法第131条の2第1項の規定に適合しないので、当該補正を認められない。 (2)訂正請求について ア 訂正の内容 上記(1)のとおり、訂正請求書及びこれに添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲の補正は認められないので、訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許第6020678号の明細書、特許請求の範囲を、平成29年8月28日付け訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は次のとおりである。 (ア)訂正事項1 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1を、 「【請求項1】 ケースの側部に回転操作可能に設けられた操作部材と、 前記ケースの内部に突出した前記操作部材の内端部に取り付けられた歯車と、 前記ケースの内部に回転移動可能に配置され、かつ前記歯車に向けて突出した状態で設けられて前記歯車が噛み合うラックを備える内転リングと、 前記ケースの内部に設けられて前記内転リングが配置され、かつ前記ラックが回転移動可能に挿入するガイド溝を備えるガイド保持部と、 を備え、 前記内転リングは、前記ガイド保持部に回転移動可能に配置される回転体を備え、前記ラックは、前記歯車に対応する前記回転体の一面に前記歯車に向けて突出して設けられ、前記ガイド保持部の前記ガイド溝には、逃げ部が設けられていることを特徴とする内転機構。」 に訂正する(下線は、訂正箇所を示す。以下同様。)。 (イ)訂正事項2 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項7を、 「【請求項7】 ケースの側部に回転操作可能に設けられた操作部材と、 前記ケースの内部に突出した前記操作部材の内端部に取り付けられた歯車と、 前記ケースの内部に回転移動可能に配置され、かつ前記歯車に向けて突出した状態で設けられて前記歯車が噛み合うラックを備える内転リングと、 前記ケースの内部に設けられて前記内転リングが配置され、かつ前記ラックが回転移動可能に挿入するガイド溝を備えるガイド保持部と、 を備え、 前記内転リングは、前記ガイド保持部に回転移動可能に配置される回転体を備え、前記ラックは、前記歯車に対応する前記回転体の一面に前記歯車に向けて突出して設けられ、前記ガイド保持部の前記ガイド溝には、前記ガイド保持部と前記内転リングとの熱膨張係数の差による前記ラックの前記ガイド溝に対する締りを逃げ部が設けられていることを特徴とする内転機構。」 に訂正する。 (ウ)訂正事項3 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項11を、 「【請求項11】 ケースの側部に回転操作可能に設けられた操作部材と、 前記ケースの内部に突出した前記操作部材の内端部に取り付けられた歯車と、 前記ケースの内部に回転移動可能に配置され、かつ前記歯車に向けて突出した状態で設けられて前記歯車が噛み合うラックを備える内転リングと、 前記ケースの内部に設けられて前記内転リングが配置され、かつ前記ラックが回転移動可能に挿入するガイド溝を備えるガイド保持部と、 を備え、 前記内転リングは、前記ガイド保持部に回転移動可能に配置される回転体を備え、 前記ガイド保持部の前記ガイド溝には、逃げ部が設けられていることを特徴とする内転機構。」 に訂正する。 (エ)訂正事項4 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項12における請求項7~11のいずれかを引用した部分を削除し、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項12における請求項7~10のいずれかを引用する部分を新たに請求項13とし、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項12における請求項11を引用する部分を新たに請求項14とする。 (オ)訂正事項5 本件訂正前の明細書の段落【0009】を、 「【0009】 この発明は、ケースの側部に回転操作可能に設けられた操作部材と、前記ケースの内部に突出した前記操作部材の内端部に取り付けられた歯車と、前記ケースの内部に回転移動可能に配置され、かつ前記歯車に向けて突出した状態で設けられて前記歯車が噛み合うラックを備える内転リングと、前記ケースの内部に設けられて前記内転リングが配置され、かつ前記ラックが回転移動可能に挿入するガイド溝を備えるガイド保持部と、を備え、前記内転リングは、前記ガイド保持部に回転移動可能に配置される回転体を備え、前記ラックは、前記歯車に対応する前記回転体の一面に前記歯車に向けて突出して設けられ、前記ガイド保持部の前記ガイド溝には、逃げ部が設けられていることを特徴とする内転機構である。」 に訂正する。 (カ)引用関係の解消の求め 訂正後の請求項7については、引用関係の解消を目的とする訂正であるから、当該請求項についての訂正が認められる場合には、請求項7は、請求項1とは別途訂正することを求める。 イ 訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (ア)訂正事項1について 本件訂正後の請求項1の「前記ガイド保持部の前記ガイド溝には、逃げ部が設けられている」の記載からすると、「逃げ部」について、その機能が何ら特定されていないため、請求項1に係る発明の「逃げ部」は、様々な機能に対応した「逃げ部」を含むことになる。 一方、願書に添付した明細書には、ガイド保持部14が設けられた第1ケース2と内転リング11との熱膨張係数の差によるラック24のガイド溝27に対する締りを逃すための逃げ部35が記載されている(第4実施形態)が、他の機能を有する逃げ部は記載されていない。 してみると、本件訂正後の請求項1の「逃げ部」は、ガイド保持部と内転リングとの熱膨張係数の差によるラックのガイド溝に対する締りを逃すこと以外の機能を有する「逃げ部」も含むことになるが、当該機能を有する「逃げ部」については、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載も示唆もされていない。 よって、請求項1に係る訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正とはいえず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものではないから、訂正後の請求項1及び請求項1を引用する訂正後の請求項2-6、12に係る訂正事項1については、訂正を認めることはできない。 (イ)訂正事項2について 訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に該当し、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (ウ)訂正事項3について 本件訂正後の請求項11の「前記ガイド保持部の前記ガイド溝には、逃げ部が設けられている」の記載からすると、「逃げ部」について、その機能が何ら特定されていないため、請求項11に係る発明の「逃げ部」は、様々な機能に対応した「逃げ部」を含むことになる。 一方、願書に添付した明細書には、ガイド保持部14が設けられた第1ケース2と内転リング11との熱膨張係数の差によるラック24のガイド溝27に対する締りを逃すための逃げ部35が記載されている(第4実施形態)が、他の機能を有する逃げ部は記載されていない。 してみると、本件訂正後の請求項11の「逃げ部」は、ガイド保持部と内転リングとの熱膨張係数の差によるラックのガイド溝に対する締りを逃すこと以外の機能を有する「逃げ部」も含むことになるが、当該機能を有する「逃げ部」については、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載も示唆もされていない。 よって、請求項11に係る訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正とはいえず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものではないから、訂正後の請求項11及び請求項11を引用する訂正後の請求項14に係る訂正事項3については、訂正を認めることはできない。 (エ)訂正事項4について 訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に該当し、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (オ)訂正事項5について 本件訂正後の段落【0009】の「前記ガイド保持部の前記ガイド溝には、逃げ部が設けられている」の記載からすると、「逃げ部」について、その機能が何ら特定されていないため、段落【0009】の「逃げ部」は、様々な機能に対応した「逃げ部」を含むことになる。 一方、願書に添付した明細書には、ガイド保持部14が設けられた第1ケース2と内転リング11との熱膨張係数の差によるラック24のガイド溝27に対する締りを逃すための逃げ部35が記載されている(第4実施形態)が、他の機能を有する逃げ部は記載されていない。 してみると、本件訂正後の段落【0009】の「逃げ部」は、ガイド保持部と内転リングとの熱膨張係数の差によるラックのガイド溝に対する締りを逃すこと以外の機能を有する「逃げ部」も含むことになるが、当該機能を有する「逃げ部」については、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載も示唆もされていない。 よって、段落【0009】に係る訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正とはいえず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものではないから、訂正後の段落【0009】に係る訂正事項5については、訂正を認めることはできない。 (カ)一群の請求項 訂正事項1-4に係る訂正前の請求項1-8、11、12は、請求項12が請求項1-11のいずれかを引用しているものであって、訂正事項1、3によって記載が訂正される請求項1,11に連動して訂正されるものであるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。 したがって、訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。 2 小括 本件訂正のうち訂正事項2、4は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号又は第4号に該当し、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。訂正後の請求項7に係る訂正事項2は、引用関係の解消を目的とする訂正であって、その訂正は認められるものである。そして、特許権者から、訂正後の請求項7について訂正が認められるときは請求項1とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったこと(上記「1(2)ア(カ)」)から、訂正後の請求項[7、8、13]について訂正を認める。 本件訂正請求による訂正事項1、3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しないから、訂正後の請求項[1-6、11、12、14]について訂正を認めない。 本件訂正請求による訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しないから、訂正後の段落【0009】について訂正を認めない。 第3 本件発明 本件訂正請求のうち、訂正後の請求項[1-6、11、12、14]については訂正を認めず、訂正後の請求項[7、8、13]については訂正を認めるから、請求項1-13に係る発明(以下「本件発明1」-「本件発明13」という。)は、次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 ケースの側部に回転操作可能に設けられた操作部材と、 前記ケースの内部に突出した前記操作部材の内端部に取り付けられた歯車と、 前記ケースの内部に回転移動可能に配置され、かつ前記歯車に向けて突出した状態で設けられて前記歯車が噛み合うラックを備える内転リングと、 前記ケースの内部に設けられて前記内転リングが配置され、かつ前記ラックが回転移動可能に挿入するガイド溝を備えるガイド保持部と、 を備え、 前記内転リングは、前記ガイド保持部に回転移動可能に配置される回転体を備え、前記ラックは、前記歯車に対応する前記回転体の一面に前記歯車に向けて突出して設けられていることを特徴とする内転機構。 【請求項2】 請求項1に記載の内転機構において、前記内転リングは、前記回転体と前記ラックとの間に設けられ、前記ガイド保持部の前記ガイド溝に前記ラックと共に挿入する台座部を備 えていることを特徴とする内転機構。 【請求項3】 請求項2に記載の内転機構において、前記内転リングの前記台座部と前記ガイド保持部の前記ガイド溝との間には、弾力を備える緩衝部材が設けられていることを特徴とする内転機構。 【請求項4】 請求項3に記載の内転機構において、前記緩衝部材は、前記ケースの内部の中心側に位置する前記ガイド溝の内周面に設けられ、これに対面する前記台座部の内周面に接触して摺動することを特徴とする内転機構。 【請求項5】 請求項4に記載の内転機構において、前記緩衝部材は、前記ガイド溝の内周面に沿って設けられたリング部材であることを特徴とする内転機構。 【請求項6】 請求項4に記載の内転機構において、前記緩衝部材は、前記ガイド溝の内周面に沿って所定間隔で設けられた複数の円柱部材であることを特徴とする内転機構。 【請求項7】 ケースの側部に回転操作可能に設けられた操作部材と、 前記ケースの内部に突出した前記操作部材の内端部に取り付けられた歯車と、 前記ケースの内部に回転移動可能に配置され、かつ前記歯車に向けて突出した状態で設けられて前記歯車が噛み合うラックを備える内転リングと、 前記ケースの内部に設けられて前記内転リングが配置され、かつ前記ラックが回転移動可能に挿入するガイド溝を備えるガイド保持部と、 を備え、 前記内転リングは、前記ガイド保持部に回転移動可能に配置される回転体を備え、前記ラックは、前記歯車に対応する前記回転体の一面に前記歯車に向けて突出して設けられ、前記ガイド保持部の前記ガイド溝には、前記ガイド保持部と前記内転リングとの熱膨張係数の差による前記ラックの前記ガイド溝に対する締りを逃げ部が設けられていることを特徴とする内転機構。 【請求項8】 請求項7に記載の内転機構において、前記逃げ部は、前記ガイド溝の底部側からその開放側に向けて前記ガイド溝の溝幅が次第に広くなるテーパ状に形成されていることを特徴とする内転機構。 【請求項9】 ケースの側部に回転操作可能に設けられた操作部材と、 前記ケースの内部に突出した前記操作部材の内端部に取り付けられた歯車と、 前記ケースの内部に回転移動可能に配置され、かつ前記歯車に向けて突出した状態で設けられて前記歯車が噛み合うラックを備える内転リングと、 前記ケースの内部に設けられて前記内転リングが配置され、かつ前記ラックが回転移動可能に挿入するガイド溝を備えるガイド保持部と、 を備え、 前記ガイド保持部の前記ガイド溝には、前記ガイド保持部と前記内転リングとの熱膨張係数の差による前記ラックの前記ガイド溝に対する締りを逃す逃げ部が設けられていることを特徴とする内転機構。 【請求項10】 請求項9に記載の内転機構において、前記逃げ部は、前記ガイド溝の底部側からその開放側に向けて前記ガイド溝の溝幅が次第に広くなるテーパ状に形成されていることを特徴とする内転機構。 【請求項11】 ケースの側部に回転操作可能に設けられた操作部材と、 前記ケースの内部に突出した前記操作部材の内端部に取り付けられた歯車と、 前記ケースの内部に回転移動可能に配置され、かつ前記歯車に向けて突出した状態で設けられて前記歯車が噛み合うラックを備える内転リングと、 前記ケースの内部に設けられて前記内転リングが配置され、かつ前記ラックが回転移動可能に挿入するガイド溝を備えるガイド保持部と、 を備え、 前記内転リングは、前記ガイド保持部に回転移動可能に配置される回転体を備えていることを特徴とする内転機構。 【請求項12】 請求項1~請求項11のいずれかに記載された内転機構を備えていることを特徴とする時計。 【請求項13】 請求項7~請求項10のいずれかに記載された内転機構を備えていることを特徴とする時計。」 第4 当審の判断 1 本件発明1-6、11、12 (1)取消理由通知に記載した取消理由について 平成29年6月30日付けで通知された取消理由は、概略、以下のとおりである。 「本件特許の請求項1~6、11、12に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 ・・・ 2 刊行物 甲第1号証:実願昭49-80870号(実開昭51-9765号)のマイクロフィルム 甲第2号証:特開平11-118950号公報」 (2)刊行物の記載事項・引用発明 ア 甲第1号証 甲第1号証には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。以下同様。)。 a 「しかしてこの考案の特徴は、巻真(12)に歯車部(A)を設け、その歯車部(A)と噛み合う歯車部分(B)を有する内リング(13)を腕時計側のガラス(5)内側に回転可能に設けて、リューズ(9)を回転することにより前記内リング(13)が回転するようにした腕時計の内リング回転構造にある。」(第2頁第4~9行) b 「この腕時計側(1)の上部には、上向段部(1b)が形成される。」(第2頁第18~19行) c 「(12)は、リューズ(9)に同軸に蝶着される巻真である。」(第3頁第16~17行) d 「一方内リング(13)は、下端に歯車部分(B)を有する垂直部(13a)と表面に必要な表示がなされている水平部(13b)とからなる環状のものである。水平部(13b)が腕時計側(1)上に載置され、垂直部(13a)が上向段部(1b)の内側に設けられた上向の円周溝(1e)内に収納される。」(第4頁9~14行) e 「したがって、この考案によれば、腕時計側に1のリューズを設けるだけで、」(第5頁第9~10行) f 図面から、巻真(12)は、腕時計側(1)の内部に突出していること、歯車部分(B)は、歯車部(A)に向けて突出した状態で内リング(13)に設けられていることが見て取れる。 上記a~fより、甲第1号証には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた甲第1号証の記載箇所を示す。)。 「リューズ(9)に蝶着される巻真(12)に歯車部(A)を設け(a、c)、 巻真(12)は、腕時計側(1)の内部に突出しており(f)、 その歯車部(A)と噛み合う歯車部分(B)を有する内リング(13)を腕時計側のガラス(5)内側に回転可能に設けて、腕時計側に設けたリューズ(9)を回転することにより前記内リング(13)が回転するようにした腕時計の内リング回転構造であって(a)、 内リング(13)は、下端に歯車部分(B)を有する垂直部(13a)と水平部(13b)とからなる環状のものであり、水平部(13b)が腕時計側(1)上に載置され、垂直部(13a)が、腕時計側(1)の上部に形成された上向段部(1b)の内側に設けられた上向の円周溝(1e)内に収納されており(d)、 歯車部分(B)は、歯車部(A)に向けて突出した状態で内リング(13)に設けられている(f)、 腕時計の内リング回転構造。」 イ 甲第2号証 甲第2号証には、図面とともに、次の事項が記載されている。 a 「【0003】・・・また、回転ベゼル13の内周面と胴10の外周面との間には、回転ベゼルのスムーズな回転力と隙間のがたつきを防止し、かつ、胴10と回転ベゼル13との接触による磨耗を防止するために合成ゴム製の軟質パッキン15が配置されている。」 b 「【0022】回転ベゼル23の内周面に形成された環状凹部には軟質パッキン27が嵌合され、回転ベゼル23は軟質パッキン27を介して胴20の内周壁20aに圧接されている。・・・」 (3)対比・判断 ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と引用発明を対比する。 a 引用発明の「腕時計側(1)」、「歯車部(A)」、「歯車部分(B)」、「内リング(13)」、「円周溝(1e)」、「水平部(13b)」は、それぞれ、本件発明1の「ケース」、「歯車」、「ラック」、「内転リング」、「ガイド溝」、「回転体」に相当し、引用発明の「リューズ(9)」及び「巻真(12)」が、本件発明1の「操作部材」に相当する。 b 引用発明は「腕時計側に設けたリューズ(9)を回転することにより前記内リング(13)が回転する」のであるから、引用発明の「腕時計側に設けたリューズ(9)」及び「リューズ(9)に蝶着される巻真(12)」は、本件発明1の「ケースの側部に回転操作可能に設けられた操作部材」に相当する。 c 引用発明の「リューズ(9)に蝶着される巻真(12)」は、「腕時計側(1)の内部に突出して」いるので、引用発明の「リューズ(9)に蝶着される巻真(12)」に設けられた「歯車部(A)」と、本件発明1の「前記ケースの内部に突出した前記操作部材の内端部に取り付けられた歯車」とは、「前記ケースの内部に突出した前記操作部材に取り付けられた歯車」である点で共通する。 d 引用発明の「腕時計側のガラス(5)内側に回転可能に設け」られ、「歯車部分(B)」が、「歯車部(A)に向けて突出した状態で」設けられた、「歯車部(A)と噛み合う歯車部分(B)を有する内リング(13)」は、本件発明1の「前記ケースの内部に回転移動可能に配置され、かつ前記歯車に向けて突出した状態で設けられて前記歯車が噛み合うラックを備える内転リング」に相当する。 e 引用発明は「内リング(13)」の「水平部(13b)が腕時計側(1)上に載置され」、「下端に歯車部分(B)を有する垂直部(13a)」が「腕時計側(1)の上部に形成された上向段部(1b)の内側に設けられた上向の円周溝(1e)内に収納されている」のであるから、引用発明の「円周溝(1e)」が設けられた「腕時計側(1)」は、本件発明1の「前記ケースの内部に設けられて前記内転リングが配置され、かつ前記ラックが回転移動可能に挿入するガイド溝を備えるガイド保持部」に相当する。 f 引用発明の「内リング(13)」の「水平部(13b)」は「腕時計側(1)上に載置され」ているので、引用発明の「水平部(13b)」は、本件発明1の「前記ガイド保持部に回転移動可能に配置される回転体」に相当する。 引用発明は「内リング(13)は、下端に歯車部分(B)を有する垂直部(13a)と水平部(13b)とからな」り、「歯車部分(B)は、歯車部(A)に向けて突出した状態で」あるから、引用発明の「歯車部分(B)」は、「水平部(13b)」の一面に「歯車部(A)に向けて突出」して設けられているといえる。 よって、引用発明の「内リング(13)は、下端に歯車部分(B)を有する垂直部(13a)と水平部(13b)とからなる環状のものであり、水平部(13b)が腕時計側(1)上に載置され」「歯車部分(B)は、歯車部(A)に向けて突出した状態」であることは、本件発明1の「前記内転リングは、前記ガイド保持部に回転移動可能に配置される回転体を備え、前記ラックは、前記歯車に対応する前記回転体の一面に前記歯車に向けて突出して設けられていること」に相当する。 g 引用発明の「内リング回転構造」は、本件発明1の「内転機構」に相当する。 すると、本件発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。 (一致点) 「ケースの側部に回転操作可能に設けられた操作部材と、 前記ケースの内部に突出した前記操作部材に取り付けられた歯車と、 前記ケースの内部に回転移動可能に配置され、かつ前記歯車に向けて突出した状態で設けられて前記歯車が噛み合うラックを備える内転リングと、 前記ケースの内部に設けられて前記内転リングが配置され、かつ前記ラックが回転移動可能に挿入するガイド溝を備えるガイド保持部と、 を備え、 前記内転リングは、前記ガイド保持部に回転移動可能に配置される回転体を備え、前記ラックは、前記歯車に対応する前記回転体の一面に前記歯車に向けて突出して設けられている内転機構。」 (相違点1) 歯車を、本件発明1は、「操作部材の内端部」に取り付けたのに対して、引用発明は「リューズ(9)に蝶着される巻真(12)」に設けた点。 (イ)判断 上記相違点1について検討する。 引用発明は「リューズ(9)に蝶着される巻真(12)」に「歯車部(A)」を設けたものであるが、操作部材である「リューズ(9)」及び「巻真(12)」の形状や、「歯車部(A)」を設ける位置は、操作部材に持たせる機能や腕時計の構造などを考慮して、適宜決めれば良い設計的事項である。 したがって、引用発明において、上記相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 そして、本件発明1が奏する効果は、引用発明から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。 よって、本件発明1は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 イ 本件発明2について 本件発明2は、本件発明1に「前記内転リングは、前記回転体と前記ラックとの間に設けられ、前記ガイド保持部の前記ガイド溝に前記ラックと共に挿入する台座部を備えている」との構成を追加したものであり、 本件発明2と引用発明を対比すると、上記「ア(ア)」で対比した事項に加えて、以下の事項を有する。 h 引用発明は、「垂直部(13a)が、腕時計側(1)の上部に形成された上向段部(1b)の内側に設けられた上向の円周溝(1e)内に収納されて」いるので、引用発明の「下端に歯車部分(B)を有する垂直部(13a)」は、本件発明2の「前記ガイド保持部の前記ガイド溝に前記ラックと共に挿入する台座部」に相当する。 したがって、引用発明の「内リング(13)は、下端に歯車部分(B)を有する垂直部(13a)と水平部(13b)とからなる環状のもので」あることは、本件発明2の「前記内転リングは、前記回転体と前記ラックとの間に設けられ、前記ガイド保持部の前記ガイド溝に前記ラックと共に挿入する台座部を備えていること」に相当する。 すると、本件発明2と引用発明との相違点は、上記相違点1(上記「ア(ア)」)と同じである。 したがって、本件発明1と同様に、本件発明2は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ウ 本件発明3 (ア)対比 本件発明3と引用発明を対比すると、上記相違点1に加え、以下の相違点2で相違する。 (相違点2) 本件発明3は、「前記内転リングの前記台座部と前記ガイド保持部の前記ガイド溝との間には、弾力を備える緩衝部材が設けられている」のに対して、引用発明は、そのような特定がない点。 (イ)判断 甲第2号証には、スムーズな回転力と隙間のがたつきを防止する為に、回転体(回転ベゼル)と保持部(胴)の間に合成ゴム製の軟質パッキンを配置する技術が記載されている(上記「(2)イ」)。 スムーズな回転力と隙間のがたつきを防止することは、引用発明の内リング(13)においても共通な課題であることは明らかであるから、 引用発明に、上記軟質パッキンにより、スムーズな回転力と隙間のがたつきを防止する技術を適用し、「垂直部(13a)」と「円周溝(1e)」との間に軟質パッキンを設け、上記相違点2の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 したがって、本件発明3は、引用発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 エ 本件発明4について (ア)対比 本件発明4と引用発明を対比すると、上記相違点1及び2に加え、以下の相違点3で相違する。 (相違点3) 本件発明4は、「前記緩衝部材は、前記ケースの内部の中心側に位置する前記ガイド溝の内周面に設けられ、これに対面する前記台座部の内周面に接触して摺動する」のに対して、引用発明は、そのような特定がない点。 (イ)判断 甲第2号証の軟質パッキン27は、回転ベゼル23の内周面に形成された環状凹部に嵌合されることが記載されている(上記「(2)イ b」)。 上記相違点2の判断を踏まえると、引用発明に、甲第2号証記載の技術を適用し、「垂直部(13a)」と「円周溝(1e)」との間の、「円周溝(1e)」の内周面に軟質パッキンを設け、上記相違点3の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 したがって、本件発明4は、引用発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 オ 本件発明5について (ア)対比 本件発明5と引用発明を対比すると、上記相違点1、2及び3に加え、以下の相違点4で相違する。 (相違点4) 本件発明5は、「前記緩衝部材は、前記ガイド溝の内周面に沿って設けられたリング部材である」のに対して、引用発明は、そのような特定がない点。 (イ)判断 甲第2号証には、内周面に形成された環状凹部に軟質パッキンが嵌合されていることが記載されているので(上記「(2)イ b」)、軟質パッキンは、リング部材であるといえる。 上記相違点2の判断を踏まえると、引用発明に、甲第2号証記載の技術を適用し、「垂直部(13a)」と「円周溝(1e)」との間に、リング部材である軟質パッキンを設け、上記相違点4の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 したがって、本件発明5は、引用発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 カ 本件発明6について (ア)対比 本件発明6と引用発明を対比すると、上記相違点1、2及び3に加え、以下の相違点5で相違する。 (相違点5) 本件発明6は、「前記緩衝部材は、前記ガイド溝の内周面に沿って所定間隔で設けられた複数の円柱部材である」のに対して、引用発明は、そのような特定がない点。 (イ)判断 複数の円柱部材である緩衝部材により、スムーズな回転力と隙間のがたつきを防止する技術は、特に例示するまでもなく、摺動部材一般において周知である。 上記相違点2の判断を踏まえると、引用発明に、甲第2号証記載の技術を適用し、「垂直部(13a)」と「円周溝(1e)」との間に、周知の複数の円柱部材である緩衝部材を設け、上記相違点5の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 したがって、本件発明6は、引用発明、甲第2号証に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 キ 本件発明11について 本件発明11は、本件発明1から「前記ラックは、前記歯車に対応する前記回転体の一面に前記歯車に向けて突出して設けられている」という構成を省略したものであり、 本件発明11と引用発明を対比すると、上記「ア(ア)」で対比したように、本件発明11と引用発明との相違点は、上記相違点1と同じである。 したがって、本件発明1と同様に、本件発明11は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 キ 本件発明12について (ア)対比 本件発明12と引用発明を対比すると、上記相違点1に加え、以下の相違点6で相違する。 (相違点6) 本件発明12は、内転機構を備えている「時計」であるのに対して、引用発明は、「内リング回転構造」である点。 (イ)判断 引用発明の「内リング回転構造」は、腕時計の内リング回転構造であるので、上記相違点6は実質的な相違点ではない。 したがって、本件発明12は、引用発明、甲第2号証に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ) 2 本件発明7、8、12、13 (1)取消理由 本件特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 ア 本件発明7について 請求項7に記載された「前記ラックの前記ガイド溝に対する締りを逃げ部」は、日本語として意味が不明確な記載である。 したがって、本件発明7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 イ 本件発明8、12、13について 請求項8、12及び13は、請求項7を引用する請求項であるので、請求項7と同様に、記載が不明確である。 したがって、本件発明8、12及び13に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 3 本件発明9、10 (1)取消理由通知において採用しなかった特許異議理由について 特許異議申立人土屋篤志は、本件発明9及び10について、甲第1号証を提出し、特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから特許を取り消すべきものである旨主張している。 しかしながら、本件発明9及び10は、「前記ガイド保持部の前記ガイド溝には、前記ガイド保持部と前記内転リングとの熱膨張係数の差による前記ラックの前記ガイド溝に対する締りを逃す逃げ部が設けられている」とういう事項を有しており、当該事項は、甲第1号証に記載されておらず、当業者が容易に想到できるものではない。 したがって、異議申立人の主張は理由がない。 第5 むすび 以上のとおり、本件発明1、2及び11は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1、2及び11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、本件発明3-6、12は、引用発明、甲第2号証に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明3-6、12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、本件発明7、8、12及び13に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 したがって、本件発明1-8、11-13に係る特許は、特許法第113条2号又は第4号に該当し、取り消されるべきものである。 また、本件発明9、10に係る特許については、特許異議申立書に記載した異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件発明9、10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-700303

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  • 2018-701051異議申立 / 2019-07-31 / 請求成立(取消)計時器用部品
    共通の審決分類: 113・G04B、121・G04B
  • 2024-018296拒絶査定不服審判 / 2026-05-13 / 原査定取消(特許/登録すべき)携行型時計、ファッション物品又は宝飾品の外側部品、及びその外側部品の製造方法
    共通の審決分類: 121・G04B、537・G04B
  • 2024-017997拒絶査定不服審判 / 2026-02-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)時計または宝飾品の外装コンポーネントおよびそのような外部コンポーネントの製造方法
    共通の審決分類: 121・G04B、537・G04B
  • 2024-007563拒絶査定不服審判 / 2025-07-16 / 原査定取消(特許/登録すべき)可変時計部品
    共通の審決分類: 113・G04B、121・G04B

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