特許異議申立
2017-700249
カメラシステム、カメラボディ、交換レンズ及び手ブレ補正ユニット
- 審判番号
- 2017-700249
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2010-097469
- 登録番号
- 特許第5992657号(P5992657)
- 請求日
- 2017年03月10日
- 審決日
- 2017年05月23日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社シグマ
- 【異議申立人】鈴木 守
- 審判長/審判官
- 審判長 中田 誠
- 審判官 鉄 豊郎
- 審判官 樋口 信宏
- 分類
- P1651.121-Y (G03B) / P1651.537-Y (G03B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5992657号発明「カメラシステム、カメラボディ、交換レンズ及び手ブレ補正ユニット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5992657号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5992657号(請求項の数5。以下「本件特許」という。)に係る特許出願は、平成22年4月21日に出願され、平成28年8月26日に特許の設定登録がされ、同年9月14日に特許掲載公報の発行がされたものであるところ、これに対し、平成29年3月10日に特許異議申立人より請求項1ないし5に係る特許について特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項によりそれぞれ特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
カメラボディに対して交換レンズが装着可能であり、
前記カメラボディと前記交換レンズとの間で通信を行うカメラシステムにおいて、
前記カメラボディは交換レンズへ、
手ブレ補正制御開始を命令するための補正開始信号を送信し、
手ブレ補正制御終了を命令するための補正終了信号を送信し、
前記交換レンズは、レンズ光学系の一部のレンズ又はレンズ群を補正光学系とし、
前記補正光学系は、無通電にて重力方向の壁面に接しており、
前記補正光学系を含みマグネット若しくはコイルが設置される可動部材は、駆動部のコイルに電流が供給されることで発生する電磁力により駆動され、
撮影者等による前記カメラシステムのブレ量及び前記補正光学系の現在位置を検知し、前記ブレ量から演算された前記補正光学系の目標位置と前記補正光学系の現在位置との差分をキャンセルさせるように前記補正光学系を光軸と垂直な平面内で移動させることで、
手ブレ補正制御を行う光学式手ブレ補正機構を有し、
前記カメラボディは、
前記カメラボディの電源ボタンが操作された後であって、
前記カメラボディが交換レンズへ前記補正開始信号を送信する前に、
前記交換レンズへ中心保持信号を送信し、
前記交換レンズは、前記中心保持信号を前記カメラボディより受信した後、
前記補正光学系の光軸と前記レンズ光学系の光軸とが一致するように中心保持制御を開始する、ことを特徴とするカメラシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のカメラシステムを構成するカメラボディであって、
前記カメラボディの電源ボタンが操作された後、
中心保持信号を交換レンズへ送信し、
さらに、撮影者により前記カメラボディのレリーズボタンがレリーズ半押し状態にされた後、交換レンズへ手ブレ補正制御開始を命令するための補正開始信号を送信し、
さらに、撮影者により前記カメラボディのレリーズボタンがレリーズ全押し状態にされ、一連の撮影動作が完了した後、又は、レリーズボタンがレリーズ全押し状態にされず所定時間経過した後、前記交換レンズへ手ブレ補正制御終了を命令するための補正終了信号を送信する、
ことを特徴とするカメラボディ。
【請求項3】
請求項1に記載のカメラシステムを構成する交換レンズであって、
カメラボディから中心保持信号を受信した後、補正光学系の光軸とレンズ光学系の光軸とが一致するように中心保持制御を開始し、
さらに、前記カメラボディから補正開始信号を受信した後、中心保持制御を停止して手ブレ補正制御を開始し、
さらに、前記カメラボディから補正終了信号を受信した後、手ブレ補正制御を終了する、
ことを特徴とする交換レンズ。
【請求項4】
前記カメラボディから補正終了信号を受信し、手ブレ補正制御を終了した後、
所定時間の間、中心保持制御を行うことを特徴とする請求項3に記載の交換レンズ。
【請求項5】
請求項1に記載のカメラシステムを構成する交換レンズに内蔵された手ブレ補正ユニットであって、
補正光学系と、補正光学系の駆動手段と、ブレ量検知手段と、補正光学系位置検知手段とを有し、
前記交換レンズが、カメラボディから中心保持信号を受信するに従って、前記補正光学系の光軸と前記交換レンズのレンズ光学系の光軸とが一致するように、前記補正光学系の駆動手段を駆動し、
前記交換レンズが、前記カメラボディから補正開始信号を受信するに従って、前記ブレ量検知手段により検知された撮影者等による前記カメラシステムのブレ量と前記補正光学系位置検知手段により検知された前記補正光学系の現在位置を演算し、
前記ブレ量から演算された前記補正光学系の目標位置と前記補正光学系の現在位置との差分をキャンセルさせるように、前記補正光学系の駆動手段により前記補正光学系を光軸に垂直な平面内で駆動させることを特徴とする手ブレ補正ユニット。」(以下、本件特許の請求項1ないし5に係る発明をそれぞれ「本件発明1」ないし「本件発明5」といい、総称して「本件発明」という。)
第3 申立ての理由についての判断
1 申立ての理由の概要
(1)理由1
特許異議申立人は、下記の甲第1号証ないし甲第8号証を提出し、本件発明1ないし5に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、本件発明1ないし5に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
甲第1号証:特開2009-300766号公報
甲第2号証:特開2009-251491号公報
甲第3号証:特開平3-237411号公報
甲第4号証:特開平1-185611号公報
甲第5号証:特開2001-209084号公報
甲第6号証:特開平11-167135号公報
甲第7号証:特開2004-239962号公報
甲第8号証:特開2003-172961号公報
(以下、甲第1号証ないし甲第8号証をそれぞれ「甲1」ないし「甲8」といい、総称して「甲号証」という。)
(2)理由2
特許異議申立人は、本件発明1ないし5では、手ブレ補正制御の開始の指示までにセンタリングが完了しておらず、レリーズ半押しから手ブレ補正効果が安定した撮影が可能となるまでのタイムラグが発生してしまう従来技術を包含するものであるから、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないものであり、本件発明1ないし5に係る特許が特許法第36条第6項第1号の規定に違反する特許出願に対してなされたものであるから、本件発明1ないし5に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
(3)理由3
特許異議申立人は、本件発明1ないし4では、中心保持信号の受信後、相当長時間経過した後の任意の時点で、中心保持制御を開始する場合を含むものであり、制御をとしての意味をなさない場合をも包摂するものであるから、本件発明1ないし4が明確でなく、本件発明1ないし4に係る特許が特許法第36条第6項第2号の規定に違反する特許出願に対してなされたものであるから、本件発明1ないし4に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
2 理由2及び3について
事案に鑑み、上記理由2及び3を先に判断する。
(1)理由2について
ア 本件特許の明細書には、以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、引用文献1に記載の像振れ防止装置では、持ち運び時等において補正光学系を含む可動部材が可動端を破損させてしまうことを防止できる効果があるものの、カメラシステムの電源オフからの復帰時、すなわちスリープ解除時に、固定手段を解除する動作が必要となるため、スリープ解除から撮影開始までの時間において、固定手段の無い像振れ防止装置に比べタイムラグが生じてしまう。
【0018】
また、固定手段を有する従来の一般的な像振れ防止装置では、レリーズ半押しの度に固定手段を解除する制御となっているため、ある程度の間隔でレリーズ半押しを繰り返す撮影状況では固定手段の解除・固定の制御を繰り返すこととなり、特にこの場合には固定手段を解除してから撮影可能となるまでの時間におけるタイムラグの影響が大きい。
【0019】
さらに、特許文献1に記載の像振れ防止装置も含めて、光学式手ブレ補正機構では固定手段の有無によらず、スリープ解除後に一定時間中心保持制御を行う必要があり、このことも撮影可能となるまでの時間を長くしてしまう原因となる。
スリープ解除後の中心保持制御は、固定手段を有する光学式手ブレ補正機構において、固定手段の解除時に補正光学系が重力方向へ落下してしまい、レリーズ半押しの度に、撮影者が違和感のある映像をファインダ越しに観察してしまうことを防止するために必要である。
【0020】
さらに、中心保持制御開始後においても、手ブレ補正効果が安定するまで、一定時間待機しなければならず、この時間も撮影可能となるまでの時間を長くする原因となる。
この待機時間を無視して撮影すると、ブレを検知するジャイロセンサからの信号が安定しないまま撮影することとなり、十分な手ブレ補正効果のある写真の撮影が期待できない。
【0021】
上述の通り、固定手段の解除制御や中心保持制御のため、手ブレ補正効果の十分ある写真を撮影するには、レリーズ半押しから撮影開始までにある程度のタイムラグが必要である。
このタイムラグを無視してレリーズ半押し後にすぐ撮影可能とすると、特に撮影者がレリーズボタンを一気に押下して撮影しようとした場合に、手ブレ補正効果が十分な写真を撮影することができない。
【0022】
例えば、固定手段が解除完了に至らないまま撮影可能としてしまうと、補正光学系が中心保持されたまま撮影することとなり、手ブレ補正効果が全く得られないブレのある失敗写真が撮影されてしまう。
また、固定手段の解除が完了したとしても、中心保持制御開始から一定時間待機せず、手ブレ補正効果が安定しない状態で撮影してしまうと、手ブレ補正効果が十分に発揮されていないブレのある失敗写真が撮影されてしまう。
【0023】
ところで、手ブレ補正機構に固定手段を設けることは、光学式手ブレ補正機構の周辺技術であり、固定手段を有さない手ブレ補正機構も従来存在している。
固定手段は特許文献1が指摘する課題を解決することを目的としているが、固定手段を有さなくとも可動端の破損を防止することは可能である。
【0024】
光学式手ブレ補正機構の補正光学系を含む可動部材は、撮像素子シフト式手ブレ補正機構の撮像素子を含む可動部材と比べれば軽量である。また、光学式手ブレ補正機構はレンズ光学系ごとに設計されることが通常であるため、可動端の限界範囲等はレンズ光学系ごとに最適に設計することが可能である。
【0025】
したがって、耐久性を満足する材料を用いて可動端の壁面を設計したり、可動端の限界範囲を大きすぎず最適に設計したりする等の対策をとることで、光学式手ブレ補正機構においては固定手段を設けなくとも可動端の破損を防止することが可能である。
【0026】
すなわち、光学式手ブレ補正機構においては、固定手段を排除することにより、固定手段の機構そのものばかりでなく、固定手段を制御するための駆動手段、固定手段を設置するためのスペースを省略することが可能となる。
さらに、固定手段の排除により、レリーズ半押しの度に固定手段を解除・固定するための電力をセーブすることができ、また、固定手段を制御するためのタイムロスも短縮することができる。
【0027】
固定手段を有さない光学式手ブレ補正機構では、固定手段を制御するためのタイムラグを短縮することは可能であるが、依然として固定手段を有する手ブレ補正機構と同様に、レリーズ半押しから撮影可能となるまでに一定時間のタイムラグが残存する。
【0028】
タイムラグの原因として、固定手段を有さない手ブレ補正機構であっても、レリーズ半押し後の中心保持制御の必要性がある。
固定手段を有さない手ブレ補正機構における中心保持制御は、固定手段を有する手ブレ補正機構における中心保持制御よりもさらに重要である。
【0029】
固定手段を有さない手ブレ補正機構における補正光学系を含む可動部材は、非制御時に固定手段等により固定されていないため、レリーズ半押し直後までは可動端でレンズ鏡筒の重力方向に位置する壁面に接している。
【0030】
したがって、可動端壁面に接した状態の補正光学系を含む可動部材に対して手ブレ補正制御を行おうとする場合、可動部材は可動端よりもさらに外側に駆動され、手ブレ補正開始時の挙動が不安定となるおそれがある。
また、不安定な状態で手ブレ補正が開始されることで、手ブレ補正には関係のない無駄な電力が消費されてしまうおそれがある。
【0031】
これに対して、レリーズ半押し後、手ブレ補正制御を開始する前に可動部材を、中心保持制御によって可動端から一度離すことにより、上記問題を解決することができる。
これにより、固定手段を有さない手ブレ補正機構においても、手ブレ補正制御開始時に一度、中心保持制御を実行することによるタイムラグが発生することとなる。
【0032】
中心保持制御を実行し、手ブレ補正制御を開始した後は、固定手段の有無にかかわらず可動部材の状態が同じとなり、固定手段を有さない手ブレ補正機構においても、固定手段を有する手ブレ補正機構と同様に、手ブレ補正効果が安定するための待機時間が必要である。
【0033】
上記理由のため、手ブレ補正効果のある写真を撮影するには、固定手段を有さない手ブレ補正機構においても、固定手段を有する手ブレ補正機構と同様に、レリーズ半押しから撮影開始までのタイムラグは依然として残存する。
【0034】
また、このタイムラグを無視してレリーズ半押し後にすぐ撮影可能とすると、特に撮影者がレリーズボタンを一気に押下して撮影しようとした場合に、固定手段を有する手ブレ補正機構よりもさらに手ブレ補正効果の十分でない写真が撮影される可能性が高い。
【0035】
固定手段を有さない手ブレ補正ユニットでは、レリーズ半押し直後において、補正光学系を含む可動部材がレンズ鏡筒内で重力方向の可動端に接しているため、レリーズ半押し後の中心保持制御が完了する前に撮影すると、手ブレの影響に加えて、補正光学系の光軸が大きく重力方向へずれた失敗写真が撮影されてしまうおそれがある。また、固定手段を有さない手ブレ補正機構と同様に、手ブレ補正効果が安定しない状態で撮影がされてしまうと、手ブレ補正効果が十分に発揮されていない失敗写真が撮影されてしまう。
【0036】
本発明は、光学式手ブレ補正機構を採用し、レリーズ半押しから手ブレ補正効果が安定した撮影が可能となるまでのタイムラグを短縮できる、カメラシステム、そのカメラシステムを構成するカメラボディ及び交換レンズ及び手ブレ補正ユニットの提供を目的とする。」
イ 上記アからみて、本件特許の発明の課題は、要するに、カメラシステムにおいて、光学式手ブレ補正機構を採用し、レリーズ半押しから手ブレ補正効果が安定した撮影が可能となるまでのタイムラグを短縮することである。
ウ また、本件特許の明細書には、以下の記載がある。
「【0083】
次にフローチャートを用いて、本発明の実施例に係るカメラシステムの制御について説明する。
【0084】
本発明では、カメラボディから交換レンズへの通信において、カメラボディが交換レンズに対して中心保持制御の開始を指示するための専用信号である中心保持信号を新たに設けた。
交換レンズは、カメラボディから中心保持信号を受信すると、手ブレ補正ユニット内の補正光学系の中心保持制御を開始する。
【0085】
従来、補正光学系の中心保持制御の開始のタイミングは、交換レンズに予め組み込まれたプログラムによって、カメラボディの制御とは独立に制御されていた。
そのため、撮影者のカメラボディにおける操作系の操作に従属させて、補正光学系を中心保持制御することができなかった。
【0086】
本発明では、カメラボディから交換レンズへの通信における専用信号として、中心保持信号を新たに設けることにより、撮影者によるカメラボディの操作に従って、交換レンズ内の手ブレ補正ユニットの補正光学系を中心保持制御でき、カメラボディのスリープ解除時に補正光学系の中心保持制御を即座に開始させることが可能となる。
つまり、交換レンズ内の手ブレ補正ユニットの補正光学系を、カメラボディのレリーズ半押しよりも前に中心保持制御させることができ、従来のレリーズ半押し後に中心保持制御を開始するカメラシステムよりも、レリーズ半押しから手ブレ補正効果のある写真が撮影可能となるまでの時間を短縮することができる。
【0087】
図2を用いて、本実施例に係るカメラボディ100の制御フローについて説明する。
【0088】
まず、撮影者がカメラボディ100の電源ボタンをオン状態にすることにより(S101)、カメラボディ100のスリープが解除される(S102)。
カメラボディ100のスリープ解除は、カメラボディ100の主電源である電源ボタンがオン状態にスイッチされた場合だけではなく、オートパワーオフでスリープしたカメラボディ100の操作系107が、撮影者により操作された場合にも実行される(S103)。
【0089】
カメラボディ100は、スリープが解除されると、交換レンズ200との通信を始める。
まず、カメラボディ100は交換レンズ200に対して、交換レンズ200の設定状態等に関するレンズデータを要求するため、コマンド信号CMDを送信する(S104)。
【0090】
交換レンズ200は、カメラボディ100からコマンド信号CMDを受信すると、これに対応するレンズデータを準備し、カメラボディ100へ返答する。
そして、カメラボディ100は交換レンズ200から送信されたレンズデータを受信する(S105)。
レンズデータには、交換レンズ200の手ブレ補正スイッチ208の入切の情報や焦点距離、絞り等の撮影に必要な情報が含まれる。
【0091】
カメラボディ100と交換レンズ200との間で通信が完了すると、カメラボディ100は交換レンズ200に対して中心保持信号OScを送信する(S106)。
中心保持信号OScは、カメラボディ100が交換レンズ200に対して中心保持制御を開始するように命令するための専用信号である。
中心保持制御とは、交換レンズ200が、補正光学系210を、手ブレ補正ユニット209内で補正光学系210の光軸とレンズ光学系の光軸とが一致するように維持する制御をいう。
【0092】
カメラボディ100は、中心保持信号OScを交換レンズ200へ送信した後、10秒間の間、レリーズボタンが半押しされるかどうか監視する(S107、S108)。
【0093】
S107での10秒間は、カメラボディ100が何も操作されずにオートパワーオフするまでの時間を意味している。カメラボディ100がオートパワーオフするまでの時間は、撮影者がカメラのメニュー設定において任意に変更することが可能である。また、オートパワーオフしないように設定することも可能である。すなわち、S107での10秒間はユーザによって任意に変更可能な設定時間である。
【0094】
S107において、10秒間監視してもカメラボディ100のレリーズボタンが半押しされないと判断された場合には、カメラボディ100はオートパワーオフを実行してスリープ状態となる(S109)。カメラボディ100は、スリープ状態になると、交換レンズ200とは無通信状態となる。
【0095】
カメラボディ100が、オートパワーオフする前にレリーズ半押しありと判断した場合には、カメラボディ100は交換レンズ200に対して補正開始信号OSsを送信する(S110)。
補正開始信号OSsは、カメラボディ100が交換レンズ200に対して、手ブレ補正ユニット209の手ブレ補正制御を開始させるための命令信号である。これにより、手ブレ補正ユニット209は、撮影者の手ブレ等によるレンズ光学系の結像位置の変位をキャンセルさせるため、補正光学系210を含む可動部材の駆動を開始する。
【0096】
カメラボディ100は、交換レンズ200に補正開始信号OSsを送信した後、6秒間経ったかどうか監視するためタイマーを開始する(S111)。ここでの6秒間は、カメラボディ100に対してレリーズ全押しの操作がされなかった場合において、カメラボディ100が交換レンズ200に対して命令する手ブレ補正開始から手ブレ補正終了までの最大時間を意味している。
カメラボディ100は、交換レンズ200の手ブレ補正制御を許可するか禁止するかを命令している。交換レンズ200に対して無制限に手ブレ補正制御を許可すると、カメラボディ100自体の電力を浪費してしまうため、交換レンズ200が手ブレ補正制御できる最大時間を制限している。
【0097】
補正開始信号OSsを送信した後、6秒間経たない間は、カメラボディ100はレリーズボタンが全押しになったかどうかを監視する(0012)。
【0098】
カメラボディ100は、補正開始信号OSsを送信した後、レリーズ全押しとならずに6秒間経過したと判断された場合には、交換レンズ200に対して補正終了信号OSeを送信し、スリープ状態となる(S113、S114)。カメラボディ100は、スリープ状態になると、交換レンズ200と無通信状態となる。
【0099】
カメラボディ100は、S112でレリーズ全押しになっていないと判断されると、さらに依然としてレリーズ半押しの状態のままであるかどうかを判断する(S115)。
【0100】
S108でレリーズ半押しとなった後、レリーズ全押しまで操作されなかった場合であっても依然としてレリーズ半押し状態である可能性がある。例えば、撮影者がレリーズ半押しで一度、交換レンズ200を合焦動作をさせ、決定した被写体距離を維持したい場合に、レリーズボタンを半押ししたまま維持している可能性がある。また、撮影までしなくとも連続していろいろな被写体に合焦動作を行い、レリーズ半押しを繰り返している可能性がある。
【0101】
S115において、レリーズ半押しが維持されていると判断された場合には、再び補正開始信号OSsを交換レンズ200へ送信する制御に戻る(A)。また、S115において、レリーズ半押しがされていないと判断された場合には、S111で開始した6秒間のタイマー監視をそのまま続けるため、S111の制御に戻る(B)。
結局、レリーズ半押し及びレリーズ全押しがないまま6秒間経過した場合には、上述したようにカメラボディ100は交換レンズ200に対して補正終了信号OSeを送信してスリープ状態となる(S113、S114)。
【0102】
S111でレリーズ半押しとなった後、6秒間経過の前にレリーズ全押しになった場合、カメラボディ100は一般的な撮影動作を行う(S116)。撮影動作は、従来の一般的な撮影動作であり、レリーズ全押し後のミラーアップ動作、シャッタ動作、撮像素子による画像信号の取り込み、画像処理、記録等の一連の動作が含まれる。なお、撮影動作については、本発明の大きな特徴ではないため詳細な説明を省略する。
【0103】
S116において撮影動作が終了した後、カメラボディ100は交換レンズ200に対して直ちに補正終了信号OSeを送信する(S117)。補正終了信号OSeは、カメラボディ100が交換レンズ200に対して、手ブレ補正ユニット209の手ブレ補正制御を終了させるための命令信号である。これにより、手ブレ補正ユニット209は、撮影者の手ブレ等によるレンズ光学系の結像位置の変位をキャンセルさせるための手ブレ補正制御を終了する。
【0104】
ここで、交換レンズ200は、カメラボディ100から補正終了信号OSeを受信し、手ブレ補正動作を停止した後、しばらくは中心保持制御を継続する。交換レンズ200が、中心保持制御を続ける理由は、撮影動作後に連続してカメラボディ100のレリーズボタンが操作された場合に備えて待機するためであるが、詳しくは後述する。
【0105】
カメラボディ100は、補正終了信号OSeの送信後、撮影者によりレリーズ半押し状態にならないかどうかしばらく監視する(S118、S119)。本実施例における監視時間は10秒間である(S119)。
【0106】
この10秒間は、前述したカメラボディ100がオートパワーオフするまでの時間と同じである。10秒間監視してもレリーズ半押し状態にならない場合には、カメラボディ100はオートパワーオフしてスリープ状態となる(S120)。
【0107】
カメラボディ100は、オートパワーオフするまでに撮影者によるレリーズ半押しの操作があれば、すぐに補正開始信号OSsを交換レンズ200へ送信する制御に戻る(A)。したがって、交換レンズ200は撮影後の中心保持制御から手ブレ補正動作を再開することとなる。
【0108】
次に、図3を用いて、交換レンズ200の制御フローについて説明する。
【0109】
まず、交換レンズ200は、カメラボディ100がスリープから復帰したことに連動して、スリープが解除される(S201)。交換レンズ200は、カメラボディ100から電力が供給されるため、カメラボディ100の電源がオンになるとレンズ制御部201が起動してスリープが解除される。
【0110】
交換レンズ200は、スリープから復帰すると、まず、カメラボディ100が交換レンズ200との通信を開始するために送信したコマンド信号CMDを受信する(S202)。そして、交換レンズ200は受信したコマンド信号CMDごとに対応するレンズデータを用意し、カメラボディ100へ逐次返答する(S203)。
【0111】
さらに、カメラボディ100は、交換レンズ200からレンズデータの受信を完了すると、交換レンズ200に対して補正光学系210を中心保持制御させるための中心保持信号OScを送信し、交換レンズ200はこれを受信する(S204)。交換レンズ200は、中心保持信号OScを受信すると、カメラボディ100から命令された通り、手ブレ補正ユニット209の補正光学系210をレンズ光学系と光軸を同じに維持するよう制御する、中心保持制御を開始する(S205)。
【0112】
本発明では、上記のように、カメラボディ100から交換レンズ200へ中心保持制御を命令するための専用信号として、中心保持信号OScを設けた。交換レンズ200は、交換レンズ200内に予め組み込まれた定型の制御フローではなく、カメラボディ100の命令、すなわち中心保持信号OScに従って、中心保持制御を開始することができる。
【0113】
交換レンズ200は、カメラボディ200から中心保持信号OScを受信し、中心保持制御を開始した後、しばらくの間、カメラボディ100から補正開始信号OSsが送信されるかどうか監視する(S206)。
【0114】
本実施例における、交換レンズ200の補正開始信号OSsを監視する時間は10秒間とする。交換レンズ200は、カメラボディ100から中心保持信号OScを受信した後10秒間、補正開始信号OSsを受信しなかった場合には、中心保持制御を終了する制御に移行する(S207)。
【0115】
ここで、監視する時間である10秒間は、カメラボディ100が全く操作されないままオートパワーオフされスリープ状態となる時間を想定している。カメラボディ100から10秒間、補正開始信号OSsが送信されない場合は、カメラボディ100が既にスリープ状態になった可能性が高いので、交換レンズ200も中心保持制御を終了して、スリープ状態へ向かう準備に移行する。
【0116】
交換レンズ200は、S206で、補正開始信号OSsを受信した場合には、カメラボディ100に命令された通り、手ブレ補正制御を開始する(S208)。
【0117】
交換レンズ200は、手ブレ補正制御を開始すると、まず、角速度センサ213によりブレ量を検知し、また、補正光学系位置検知装置214により補正光学系210の現在位置を検知する。次に、レンズ制御部201は、手ブレによるブレ量を補正するための目標位置と補正光学系210の現在位置との差分を演算し、この差分が0になるように補正光学系210を含む可動部材を駆動制御する。
【0118】
可動部材を駆動させる手段はVCM212であり、VCM212のコイルに供給する電流量及びその向きを制御することにより、補正光学系210を光軸に垂直な平面上で駆動させる。ブレ量を補正するための目標位置と補正光学系210の現在位置との差分が0になるように補正光学系210を駆動させることで、撮影者の手ブレ等による結像位置の変位をキャンセルすることができ、手ブレによる影響のない画像を撮影することができる。
【0119】
交換レンズ200は、手ブレ補正制御が開始された後、カメラボディ100から補正終了信号OSeを受信するまで手ブレ補正制御を継続する(S209)。カメラボディ100が交換レンズ200に対して補正終了信号OSeを送信する場合としては、カメラボディ100での撮影動作が完了した場合や、カメラボディ100が交換レンズ200に対して補正開始の命令をしたものの、レリーズ全押しとはならずにスリープする場合等が挙げられる。
【0120】
交換レンズ200は、補正終了信号OSeを受信した後、手ブレ補正制御を終了する(S210)。
【0121】
交換レンズ200は、S210で手ブレ補正制御を終了した直後、レンズ制御部201の制御により60秒間の中心保持制御OScを開始する(S211)。S211で開始される中心保持制御は、S205におけるカメラボディ100主体の中心保持制御とは異なり、レンズ制御部201が主体となるものである。すなわち、レンズ制御部201には手ブレ補正制御終了後、所定時間、中心保持制御を実行するように組み込まれている。本実施例では、この中心保持制御を実行する所定時間を60秒間と設定した。
【0122】
S211における中心保持制御は、手ブレ補正制御終了後に撮影者がファインダ内を観察する場合の見えを良くし、連続する次の撮影に備えるためである。
【0123】
交換レンズ200において、手ブレ補正制御を単に終了するだけの制御とすると、撮影動作直後に補正光学系210が手ブレ補正ユニット209内で重力方向へ落下してしまう。これにより、継続撮影を行いたい撮影者に対して、補正光学系210が重力方向へ即座に落下してしまうことによる急激な像の変化をファインダ内で観察させることとなってしまう。
【0124】
また、連続して撮影を行うため、撮影後にレリーズ半押しすることを繰り返す撮影者にとっては、補正光学系210が重力方向へ落下したり、中心保持制御されたりすることを繰り返すため、非常に落ち着かない不快な像をファインダ内で観察させられることとなってしまう。
【0125】
また、カメラボディ100は何も操作されない場合、所定時間経過後にオートパワーオフを実行し、スリープ状態になるが、例えば光学ファインダを有するカメラボディ100において、撮影者がカメラボディ210のスリープ後であっても光学ファインダを通して被写体を観察し続けたい場合に備えて、補正制御終了後にある程度中心保持制御を継続しておく必要がある。
【0126】
したがって、手ブレ補正終了後は、単に手ブレ補正制御を終了するだけではなく、直後に所定時間、中心保持制御を実行し、連続する次の撮影操作のために備えることとしている。
【0127】
交換レンズ200は、S211で所定時間、中心保持制御を実行するのと同時に、カメラボディ100から継続して、レリーズ半押しによる補正開始信号OSsが再び送信されないかどうか監視する(S212、S213)。交換レンズ200は、補正開始信号OSsを受信した場合には、S208に戻り手ブレ補正制御を開始する。
【0128】
S212でカメラボディ100から交換レンズ200に対して補正開始信号OSsが送信される場合としては、カメラボディ100がオートパワーオフする前に再びレリーズ半押しの操作がされた場合が想定される。
本実施例では、60秒間、補正開始信号OSsがカメラボディ100から交換レンズ200へ送信されないかどうか監視している。この間に補正開始信号OSsが送信されないということは、カメラボディ100は既に10秒間、何も操作されないままオートパワーオフされスリープ状態にあるということが想定されるので、60秒間はカメラボディ100がスリープ状態にあるかどうかを判断するのに十分な時間である。
【0129】
S212及びS213で、60秒間経過してもカメラボディ100から補正開始信号OSsが送信されないと判断された場合には、交換レンズ200のレンズ制御部201は中心保持制御を終了する(S214)。
【0130】
中心保持制御を終了した後、所定時間、コマンド信号CMDがカメラボディ100から送信されていないかどうか監視する(S215、S216)。本実施例におけるS216の60秒間は、レンズ制御部201で設定されており、交換レンズ200がスリープ状態に移行してもよいか確認するための準備期間である。
【0131】
カメラボディ100からコマンド信号CMDが送信されてくるということは、カメラボディ100が未だスリープ状態にないということを意味しており、交換レンズ200はスリープ状態とならずに、カメラボディ100からの命令に対して、即時応答できるようにスタンバイ状態であることが必要である。
【0132】
S216での60秒間の間に、カメラボディ100からコマンド信号CMDが送信された場合には、交換レンズ200は、カメラボディ100がまだスリープ状態にないと判断し、受信したコマンド信号CMDに対応するレンズデータを用意してカメラボディ100に返答する(S217)。その後、中心保持制御を開始するS205の制御に戻る(C)。
【0133】
S215及びS216で60秒間の間にカメラボディ100からコマンド信号CMDが送信されなかった場合には、交換レンズ200はスリープ状態となる(S218)。
【0134】
以上に説明した通り、本発明では、カメラボディから交換レンズへ中心保持制御を開始させるための専用信号として、中心保持制御を設けた。これにより、手ブレ補正ユニットの補正光学系を含む可動部材を固定する固定手段の有無に関わらず、カメラボディの操作状態に従って、交換レンズの中心保持制御を開始することが可能であるため、手ブレ補正効果が十分に安定して撮影可能となるまでの、撮影タイムラグを短縮することができる。」
エ 上記ウからみて、発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段は、カメラボディが交換レンズに対して中心保持制御の開始を指示する、中心保持信号を設けた点にある。そして、中心保持信号を設けた点が、発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲であるといえる。
オ してみると、本件発明1ないし5は、いずれも中心保持信号の構成を具備するから、本件発明1ないし5は、発明の詳細な説明において、発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えないものであるから、サポート要件を満たすものである。
カ 特許異議申立人は、本件発明1ないし5では、手ブレ補正制御の開始の指示までにセンタリングが完了しておらず、レリーズ半押しから手ブレ補正効果が安定した撮影が可能となるまでのタイムラグが発生してしまう従来技術を包含するものであると主張する。
キ しかしながら、「中心保持信号」とは、特許請求の範囲の記載から明らかなとおり、補正光学系を光軸の中心に保持する制御の開始を指示する信号のことを意味する。したがって、交換レンズは、中心保持信号の受信に従って補正光学系を光軸の中心に保持する制御を開始し、その結果、「撮影者によるカメラボディの操作に従って、交換レンズ内の手ブレ補正ユニットの補正光学系を中心保持制御」することができ、「カメラボディのスリープ解除時に補正光学系の中心保持制御を即座に開始させること」が可能となり、つまり、「交換レンズ内の手ブレ補正ユニットの補正光学系を、カメラボディのレリーズ半押しより前に中心保持制御させる」ことができ、「従来のレリーズ半押し後に中心保持制御を開始刷るカメラシステムよりも、レリーズ半押しから手ブレ補正効果のある写真が撮影可能となるまでの時間を短縮すること」ができるのである(本件特許の明細書の【0086】)。
ク ところで、請求項1には「前記交換レンズは、前記中心保持信号を前記カメラボディより受信した後、前記補正光学系の光軸と前記レンズ光学系の光軸とが一致するように中心保持制御を開始する」と記載されている。そして、この記載は、一見すると、中心保持制御の開始が、「前記中心保持信号を前記カメラボディより受信した後」であればいつでも良いようにも解される。しかしながら、撮影者がいつ半押し動作を行うかが不明であることを考慮すると、中心保持制御の開始は、中心保持信号に従って行われること、すなわち、電源スイッチのオン操作等に従って行われるものではないことを特定する記載と解するのが相当である。
ケ 以上のとおり、本件発明1ないし5に係る特許出願が特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものとはいえない。
(2)理由3について
ア 上記(1)のとおり、本件発明1の「中心保持信号を・・・受信した後」が「中心保持信号を受信するに従って」を意味することは明らかであり、中心保持信号を受信するに従って中心保持制御を開始するものと解されるから、本件発明1は明確である。
イ 上記(1)のとおり、本件発明2の「電源ボタンが操作された後」についても、「電源ボタンが操作されるに従って」を意味することは明らかである。また、本件発明2の「さらに、撮影者により前記カメラボディのレリーズボタンがレリーズ半押し状態にされた後、交換レンズへ手ブレ補正制御開始を命令するための補正開始信号を送信し、さらに、撮影者により前記カメラボディのレリーズボタンがレリーズ全押し状態にされ、一連の撮影動作が完了した後、又は、レリーズボタンがレリーズ全押し状態にされず所定時間経過した後、前記交換レンズへ手ブレ補正制御終了を命令するための補正終了信号を送信する」の記載中、「・・・後」の記載も前述と同様に「・・・従って」を意味すると解することができる。本件発明3、4の同様な記載についても同じように解することができる。
ウ 以上のとおり、本件発明1ないし4に係る特許出願が特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものとはいえない。
3 理由1について
(1)甲号証の記載事項
ア 甲1
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲1には、次の事項が図とともに記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、振れ補正装置および撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ等の撮影装置として、撮影者によるいわゆる“手振れ”等に起因する像ブレを補正する振れ補正装置を備える撮影装置が提案されている。像ブレを補正する振れ補正装置としては、例えばVCM(Voice Coil Motor)等に代表される電磁アクチュエータにより、像ブレ補正光学系を駆動するものが知られている。
【0003】
しかし、電磁アクチュエータ等により像ブレ補正光学系を駆動する振れ補正装置を備える撮影装置では、アクチュエータへの通電を遮蔽した際に像ブレ補正光学系が重力方向に落下し、ファインダの見栄え等に悪影響を及ぼす場合があった。
【0004】
このような問題を解決するための従来技術としては、たとえば、像ブレ補正光学系をロックさせるロック機構を有する振れ補正装置を備える撮影装置が知られている(特許文献1等参照)。
【0005】
しかし、ロック機構を有する振れ補正装置では、部品点数が増加し、構造が複雑となるという問題を有している。また、ロック機構の有無にかかわらず、従来技術に係る振れ補正装置では、アクチュエータへの通電を開始した際、像ブレ補正光学系が重力方向と反対方向に急激に移動し、撮影者に不快感等を与えるファインダ像の動きを発生させる場合があり、問題となっていた。
【0006】
一方で、従来技術に係る振れ補正装置であって、特にロック機構を有しないものは、像ブレ補正光学系を撮影動作に好適な位置に配置(センタリング)させるのに時間を要するため、露光動作の開始時に、像ブレ補正光学系を好適な位置に配置できていない場合があり、問題となっていた。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされ、像ブレを補正する光学部品の駆動制御を好適に行うことができる振れ補正装置および撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る振れ補正装置は、
移動可能に備えられた光学部品(32b)と、
像ブレを補正するために前記光学部品を駆動する駆動部(48,50)と、
前記光学部品が制御中心(112)側に第1の速度(v1)で駆動するように前記駆動部を制御し、撮影操作をするための撮影操作部(82,84)が操作されたとき前記光学部品が前記制御中心側に前記第1の速度よりも速い第2の速度(v2)で駆動するように前記駆動部を制御する制御部(75)とを有することを特徴とする。
【0009】
また、例えば、前記制御部は、撮影準備動作をするための準備操作部(82,86)が操作されたとき前記光学部品が前記制御中心側に前記第1の速度で駆動するように前記駆動部を制御した後、前記撮影操作部が操作されたとき前記光学部品が前記制御中心側に前記第2の速度で駆動するように前記駆動部を制御してもよい。」
(ウ)「第1実施形態
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る振れ補正装置が内蔵されたデジタル一眼レフカメラを示す断面図である。カメラは、レンズ鏡筒12とカメラ本体部10とを有している。レンズ鏡筒12は、被写体光をカメラ本体部10に導くための撮影光学系26を有しており、カメラ本体部10に対して着脱自在に装着されている。
【0020】
本実施形態では、図1に示すデジタル一眼レフカメラを用いて説明を行うが、本発明に係る振れ補正装置を備える撮影装置としては、デジタル一眼レフカメラに限定されず、フィルム式カメラ等の他の撮影装置であってもよい。なお、本実施形態では、図1に示すようにX軸、Y軸およびZ軸を設定して説明を行う。すなわち、撮像素子24から撮影光学系26に向かう方向をZ軸の正方向、クイックリターンミラー16からペンタプリズム18に向かう方向をY軸の正方向、Z軸およびY軸に直交する方向をX軸方向として説明を行う。
・・・略・・・
【0024】
レンズ鏡筒12の内部に備えられた撮影光学系26は、第1レンズ群28と、第2レンズ群30と、第3レンズ群32と、絞り34とを有する。各レンズ群および絞り34は、Z軸正方向側からZ軸負方向側に向かって、第1レンズ群28、第2レンズ群30、絞り34、第3レンズ群32の順番に、Z軸に沿って配置されている。
・・・略・・・
【0027】
第3レンズ群32は、3-1レンズ群32aと、像ブレ補正レンズ32bと、3-3レンズ群32cとを有している。像ブレ補正レンズ32bは、撮影光学系26を構成する他のレンズに対して、鏡筒光軸方向(Z軸方向)に略垂直な面に沿う方向(XY平面に沿う方向)に相対的に移動することができる。
【0028】
第3レンズ群32の像ブレ補正レンズ32bは、像ブレ補正レンズ32bをXY平面に沿う方向に移動させるボイスコイルモータ等の駆動部とともに、像ブレ補正機構42を構成している。また、図1に示すレンズ鏡筒12には、カメラ本体部10またはレンズ鏡筒12に加わる振動の角速度成分を検出する角速度センサ38が取付けられている。
【0029】
さらに、図1に示すレンズ鏡筒12には、角速度センサ38の信号処理やカメラ本体部10との通信等を行う演算器や、像ブレ補正機構42に備えられたボイスコイルモータのモータドライバ等が実装された電気回路基板40が備えられている。電気回路基板40に実装された演算器は、角速度センサ38からの信号等に基づき、像ブレ補正機構42のボイスコイルモータ等を制御することによって、像ブレ補正の制御を行うことができる。
・・・略・・・
【0031】
図4は、図1に示すレンズ鏡筒12に備えられた像ブレ補正機構42の分解斜視図である。像ブレ補正機構42は、像ブレ補正レンズ32bを保持する補正レンズ保持枠46、第1および第2ボイスコイルモータと48,50およびベース部材44等を有している。
・・・略・・・
【0035】
図4に示されているように、像ブレ補正機構42には第1および第2ボイスコイルモータ48,50が備えられている。第2ボイスコイルモータ50は、補正レンズ保持枠46に取付けられているコイル50aと、ベース部材44に取付けられている永久磁石50bおよびヨーク50cを有している。
【0036】
ヨーク50cは、図4および図3に示すように、略U字形状の断面を有しており、ベース部材44におけるY軸負方向側に取付けられている。また、永久磁石50bは、ヨーク50cに固定されており、図3Aに示すようにN極及びS極に面内2極着磁されている。補正レンズ保持枠46には、ベース部材44に取付けられたヨーク50cおよび永久磁石50bに対応するように、コイル50aが取付けられている。すなわち、補正レンズ保持枠46がベース部材44に対して移動可能に取付けられた図3Aに示す状態では、コイル50aは、永久磁石50bと、ヨーク50cとに挟まれた位置に配置される。
【0037】
したがってコイル50aに電流が流れた場合、コイル50aは、永久磁石50bとヨーク50cによって形成された磁場により、コイル50aに流れる電流の方向に対応したY軸正方向またはY軸負方向の力を受ける。このようにして、第2ボイスコイルモータ50は、補正レンズ保持枠46および像ブレ補正レンズ32bを、Y軸正方向およびY軸負方向に駆動することができる。
【0038】
図4に示す第1ボイスコイルモータ48は、第2ボイスコイルモータ50と同様に、コイル48aと、永久磁石48bと、ヨーク48cとを有している。第1ボイスコイルモータ48は、鏡筒光軸Aを中心として、第2ボイスコイルモータ50を略90度回転移動させた位置に配置される。
【0039】
第1ボイスコイルモータ48におけるコイル48a、永久磁石48bおよびヨーク48c等の各部材は、ベース部材44および補正レンズ保持枠46に対する取付け位置を除き、第2ボイスコイルモータ50とほぼ同様の構造を有している。第1ボイスコイルモータ48は、補正レンズ保持枠46および像ブレ補正レンズ32bを、X軸正方向およびX軸負方向に駆動することができる。
【0040】
第1および第2ボイスコイルモータ48,50は、図2に示す演算器75によって制御される。演算器75は、モータドライバ96を介して第1および第2ボイスコイルモータ48,50を制御し、補正レンズ保持枠46および補正レンズ保持枠46に取付けられた像ブレ補正レンズ32bを、XY平面に沿う任意の方向に移動させることができる。
【0041】
図3Aおよび図3Bに示すように、本実施形態に係る像ブレ補正機構42には、補正レンズ保持枠46に取付けられた像ブレ補正レンズ32bの位置を検出するための補正レンズ位置検出センサ52が備えられている。図3Aに示すように、像振れ補正機構42のY軸正方向側に配置された補正レンズ位置検出センサ52は、補正レンズ保持枠46に保持された像ブレ補正レンズ32bのY軸に沿う方向の位置を検出する。
【0042】
補正レンズ位置検出センサ52は、永久磁石52b、バックヨーク52cおよびホール素子52aを有している。永久磁石52bおよびバックヨーク52cは、補正レンズ保持枠46に取付けられており、像ブレ補正レンズ32bの移動に伴って移動する。
【0043】
ホール素子52aは、ベース部材44に取付けられており、補正レンズ保持枠46に取付けられた永久磁石52bに対向するように配置されている。ここで、ホール素子52aは、素子52aを通過する磁束密度の変化に対応した電気信号を出力するセンサである。ホール素子52aは、配線52dを介して図2に示す演算器75に電気的に接続されており、補正レンズ保持枠46の位置に関する電気信号を演算器75に出力する。
【0044】
すなわち、図3Aに示す補正レンズ保持枠46が、第2ボイスコイルモータ50の発生する駆動力によりY軸方向に変位した場合、ホール素子52aを通過する磁束密度が変化する。ホール素子52aは、磁束密度の変化に対応した電気信号を演算器75に出力するため、本実施形態に係る振れ補正装置は、補正レンズ保持枠46に保持された像ブレ補正レンズ32bの位置を認識することができる。
【0045】
なお、図3Aおよび図3Bには図示されていないが、像ブレ補正機構42は、像ブレ補正レンズ32bのX軸に沿う方向の位置を検出するための補正レンズ位置検出センサをさらに有している。本実施形態に係る振れ補正装置は、像ブレ補正レンズ32bのX軸方向およびY軸方向の位置を検出するための2つの補正レンズ位置検出センサによって、像ブレ補正レンズ32bのXY平面内における位置を認識することができる。
【0046】
図2は、本発明の一実施形態に係るブレ補正装置の概略を表すブロック図である。ブレ補正装置は、像ブレを補正するためにボイスコイルモータ48,50を制御する演算器(MPU)75を有している。演算器75は、角速度センサ38、シャッタボタン82および補正レンズ位置検出センサ52等から入力された信号に基づき、ボイスコイルモータ48,50を制御する制御信号を演算し、モータドライバ96に出力する。
【0047】
本実施形態において、演算器75は、像ブレ目標位置算出手段78とセンタリング目標位置算出手段88とを有している。像ブレ目標位置算出手段78は、角速度センサ38からの角速度検出信号に基づき、像ブレ目標位置信号80を算出する。像ブレ目標位置信号80は、カメラに加えられた振動によって発生する像ブレを打ち消して像ブレを抑制した像を得るために、像ブレ補正レンズ32bを移動させるべき位置を算出した信号である。
・・・略・・・
【0056】
本実施形態のカメラに備えられたシャッタボタン82には、シャッタボタン82の半押し状態を検出する半押し状態検出センサ86と、シャッタボタン82の全押し状態を検出する全押し状態検出センサ84とが備えられている。カメラは、撮影者がシャッタボタン82を半押しし、半押し状態検出センサ86によって半押し状態が検出されたタイミングで、AF動作や像ブレ補正動作等の撮影準備動作を開始する。また、カメラは、撮影者がシャッタボタン82を全押しし、全押し状態検出センサ84によって全押し状態が検出されたタイミングで、露光動作等の撮影操作を開始する。すなわち、シャッタボタン82は、2段階の押し込み状態を検出される半押しスイッチとなっており、撮影操作をするための撮影操作部と、撮影準備動作をするための準備操作部とを兼ねている。
【0057】
撮影者がシャッタボタン82を半押しすると、シャッタボタン82に備えられた半押し状態検出センサ86が、半押し信号を出力する。半押し状態検出センサ86が出力した半押し信号は、センタリング目標位置算出手段88に入力される。半押し信号が入力されると、センタリング目標位置算出手段88は、制御中心位置112に向って像ブレ補正レンズ32bを移動させるためのセンタリング目標位置信号90の演算を開始する。さらに、センタリング目標位置算出手段88は、当該演算によって算出されたセンタリング目標位置信号90を、信号切り替え手段92に出力する。
【0058】
センタリング目標位置算出手段88は、補正レンズ位置検出センサ52によって検出された像ブレ補正レンズ32bの位置情報等や、センタリング動作を開始してからの経過時間等を用いて、センタリング目標位置信号90を算出することができる。また、センタリング目標位置算出手段88におけるセンタリング目標位置信号90の演算方法は、全押し状態検出センサ84から信号が入力したタイミング等の所定のタイミングで変化する場合がある。
【0059】
信号切り替え手段92は、像ブレ目標位置信号80とセンタリング目標位置信号90のうち、いずれの信号を用いて像ブレ補正レンズ32bを移動させるかを決定する。この決定を行う際に、信号切り替え手段92は、像ブレ補正レンズ32bの位置情報等を用いることができる。信号切り替え手段92は、像ブレ補正レンズ32bを移動させるための信号を決定し、像ブレ目標位置信号80またはセンタリング目標位置信号90のいずれか一方を、補正レンズ目標位置信号93として出力する。
【0060】
信号切り替え手段92によって出力された補正レンズ目標位置信号93は、制御器94に入力される。図2に示す制御器94は、例えばPID制御器等を用いることができるが、良好な制御性が得られるものであれば特に限定されない。
【0061】
制御器94は、入力された補正レンズ目標位置信号93に基づき、モータドライバ96に制御信号を出力する。モータドライバ96は、入力された制御信号に対応した電力を、ボイスコイルモータ48,50に供給する。ボイスコイルモータ48,50のコイル48a,50aが備えられる補正レンズ保持枠46は、供給された電力に応じた駆動力を受け、像ブレ補正レンズ32bを移動させる。
【0062】
像ブレ補正レンズ32bが移動することによって、撮像素子24の結像面では、像ブレ補正レンズ32bの移動量に、補正レンズ像面移動倍率98を掛けた量に相当する像の移動が発生する。なお、信号切り替え手段92が、補正レンズ目標位置信号93として像ブレ目標位置信号80を出力する場合、ボイスコールモータ48,50は、カメラに加えられた振動によって発生する像ブレを打ち消すように、像ブレ補正レンズ32bを駆動する。したがって、当該像ブレ補正レンズ32bの移動によって、手ぶれによる像の移動が打ち消される。」
(エ)「【0066】
以下に、図5および図7等を用いて、演算器75による像ブレ補正レンズ32bの制御の一例を説明する。
【0067】
図7におけるステップS001では、演算器75によるボイスコイルモータ48,50の制御が開始される。具体的には、図2に示す半押し状態検出センサ86によってシャッタボタン82の半押し状態が検出されると、センタリング目標位置算出手段88は、センタリング目標位置信号90の算出を開始する。さらに、センタリング目標位置算出手段88は、センタリング目標位置信号90を信号切り替え手段92に出力する処理を開始する。なお、シャッタボタン82の半押し状態が検出されたタイミングで、像ブレ目標位置算出手段78は、像ブレ目標位置信号80を算出し、それを信号切り替え手段92に出力する処理を開始する。
【0068】
ここで、本実施形態に係る像ブレ補正機構42の像ブレ補正レンズ32bは、演算器75によるボイスコイルモータ48,50の制御が開始されるまでは、図3Bに示す可動制限位置110に位置している。すなわち、演算器75によってボイスコイルモータ48,50の制御が開始される前までは、ボイスコイルモータ48,50は非通電状態となっている。したがって、補正レンズ保持枠46は、重力方向に幅寄せされた状態となっており、ベース部材44の可動制限部44aに接触している。可動制限部44aは、リング形状のベース部材44の内周面側に設けられており、像ブレ補正レンズ32bの可動範囲を規制している。
【0069】
本実施形態では、補正レンズ保持枠46がベース部材44の可動制限部材44aに接触している状態における像ブレ補正レンズ32bの位置(図3B)を、可動制限位置110(図5)と定義して説明を行う。それに対して、図3Aに示すように、像ブレ補正レンズ32bの補正レンズ光軸Bが、図1に示す鏡筒光軸Aと略一致する状態における像ブレ補正レンズ32bの位置を、制御中心位置112(図5)と定義して説明を行う。なお、カメラは、可動制限位置110や制御中心位置112等の情報を記憶した不図示の記憶部を有していてもよい。
【0070】
図3Bに示すように、像ブレ補正レンズ32bが可動制限位置110に位置している場合、補正レンズ光軸Bは、鏡筒光軸Aに対して移動領域ygだけ偏芯した状態となっている。そのため、図1に示す撮影光学系26は、当該撮影光学系26より得られる最良の光学性能に対して、光学性能が劣る状態となっている。
【0071】
したがって、撮影光学系26を備えるカメラでは、まず、可動制限位置110に位置している像ブレ補正レンズ32bを、制御中心位置112に近接する位置まで移動させ、その後に像ブレ補正制御が開始されることが、光学性能上好ましい。これにより演算器75は、像ブレ補正制御の間、像ブレ補正レンズ32bを、より好適な光学性能が得られる制御中心位置112付近を中心に移動させることができる。本実施形態に係る振れ補正装置では、図6に示す第1センタリング制御、第2センタリング制御によって、像ブレ補正レンズ32bを制御中心位置112に近接する位置まで移動させた後に、像ブレ補正制御等を行う。
【0072】
図6におけるステップS001において、演算器75によるボイスコイルモータ48,50の制御が開始されたのち、ステップS002では、演算器75によって第1センタリング制御が開始される。第1センタリング制御において、図2に示すセンタリング目標位置算出手段88は、図5に示すように、像ブレ補正レンズ32bを第1速度v1で移動させるように、センタリング目標位置信号90を算出する。
・・・略・・・
【0084】
図6に示す第1センタリング制御(ステップ005)または第2センタリング制御(ステップ006)によって、像ブレ補正レンズ32bが制御中心位置112に到達すると、図2に示す演算器75は、センタリング制御を終了し、像ブレ補正装置による像ブレ補正が有効であるか、像ブレ補正が停止されているかを判断する(図6に示すステップS007)。なお、演算器75は、図2に示す補正レンズ位置検出センサ52からの検出信号に基づき、像ブレ補正レンズ32bが制御中心位置112に到達したことを検出する。
【0085】
図1に示すレンズ鏡筒12またはカメラ本体部10には、不図示の像ブレ補正モード切替スイッチが備えられている。撮影者は、像ブレ補正モード切替スイッチを操作することによって、像ブレ補正機構42等による像ブレ補正制御を有効にするか、像ブレ補正を停止するかを設定できる。
【0086】
図6に示すステップS007において、像ブレ補正が停止されていると判断された場合は、演算器75は、像ブレ補正レンズ32bが制御中心位置112に保持されるように(図3A)、ボイスコイルモータ48,50を制御する(図7におけるステップS009)。それに対し、演算器75は、像ブレ補正機構42による像ブレ補正制御が有効である場合には、像ブレ補正制御を開始する(ステップS008)。なお、図5には、図6に示すフローチャートにおいて、ステップS008に進んだ場合における補正レンズ目標位置信号93を示している。
【0087】
像ブレ補正制御が開始されると、図2に示す信号切り替え手段92は、センタリング目標位置信号90に代えて、像ブレ目標位置算出手段78から入力される像ブレ目標位置信号80を、補正レンズ目標位置信号93として第2減算器95および制御器94に出力する。
【0088】
信号切り替え手段92は、図5に示すように、像ブレ補正レンズ32bが制御中心位置112に到達した時間からわずかに遅れた時間Teから、像ブレ補正制御における補正レンズ目標位置信号93の出力を開始する。像ブレ補正制御における補正レンズ目標位置信号93は、像ブレ補正レンズ32bが像ブレを打ち消す移動をするように、ボイスコイルモータ48,50を制御する信号である。
【0089】
なお、図5に示す時間Tfは、図1に示すカメラにおいて露光動作が始まる露光開始時刻を表しており、時間Tgは露光動作が終了する時間を表している。本実施形態に係る演算器75は、図5に示すように、露光開始時刻Tfより前に、像ブレ補正レンズ32bを制御中心位置112まで移動させた上で像ブレ補正制御を開始させることができる。
【0090】
図7に示すステップS008において、像ブレ補正が停止されていると判断された場合、演算器75は、像ブレ補正レンズ32bが制御中心位置112に保持されるように、ボイスコイルモータ48,50を制御する(ステップS009)。したがってこの場合、像ブレ補正レンズ32bが制御中心位置112に保持された状態で、露光動作が行われる。なお、本実施形態において、像ブレ補正レンズ32bを制御中心位置112に保持するように制御する制御信号は、図2に示すセンタリング目標位置算出手段88によって算出される。
【0091】
ステップS008またはステップS009を経て露光動作が終了した後、半押し状態検出センサ86によって、シャッタボタン82の半押し状態が検出されなくなると、演算器75は、ボイスコイルモータ48,50の制御を終了する(図7のステップS010)。演算器75がボイスコイルモータ48,50の制御を終了すると、ボイスコイルモータ48,50は非通電状態となる。ボイスコイルモータ48,50が非通電状態となると、補正レンズ保持枠46は、図3Bに示すように重力方向に幅寄せされ、ベース部材44の可動制限部44aに接触する位置まで移動する。」
(オ)「その他の実施形態
【0104】
上述の実施形態に係る振れ補正装置では、撮影操作部が操作されるまでの間は、第1センタリング制御を行っているが、撮影操作部が操作される前に行われるセンタリング制御としては、このような制御に限定されない。たとえば、図5に示す可動制限位置110から制御中心位置112までの間を複数の区間に分割し、区間ごとに像ブレ補正レンズ32bが段階的に変速するように、ボイスコイルモータ48,50を制御してもよい。このような場合、何れかの区間における像ブレ補正レンズ32bの速度を、撮影操作部が操作される前に行われるセンタリング制御における第1速度v1として、撮影操作部が操作された後のセンタリング制御を行うことができる。
【0105】
また、上述の実施形態において、像ブレを補正するために駆動される光学部品は、像ブレ補正レンズ32bであるが、演算器75によって制御され、像ブレを補正するために駆動される光学部品はこれに限定されず、例えば撮像素子24であってもよい。撮像素子24を移動させる振れ補正装置であっても、撮像素子24を上述の実施形態における像ブレ補正レンズ32bと同様に移動させることによって、光学性能が良好な状態で撮影動作を行うことができる。
【0106】
また、記憶部に記憶された制御中心位置112は、補正レンズ光軸Bが鏡筒光軸Aと略一致する位置に限られず、撮影光学系26の光学特性が良好となるその他の位置や、制限部材からの最も離れた位置や、演算における基準位置とすることも可能である。また、撮影操作部は、撮影動作を開始させるその他の操作部であってもよく、準備操作部は、例えばカメラ等の電源スイッチ等であってもよい。」
(カ)「【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
」
(キ)上記(ア)ないし(カ)から、甲1には、第1実施形態として次の発明(段落番号はそのまま併記する。)が記載されているものと認められる。
「レンズ鏡筒12がカメラ本体部10に対して着脱自在に装着されているカメラであって(【0019】)、
レンズ鏡筒12には、角速度センサ38の信号処理やカメラ本体部10との通信等を行う演算器や、像ブレ補正機構42に備えられたボイスコイルモータのモータドライバ等が実装された電気回路基板40が備えられ(【0029】)、レンズ鏡筒12の内部に備えられた撮影光学系26は、第1レンズ群28と、第2レンズ群30と、第3レンズ群32と、絞り34とを有し、第3レンズ群32は、3-1レンズ群32aと、像ブレ補正レンズ32bと、3-3レンズ群32cとを有しており(【0024】、【0027】)、
像ブレ補正機構42は、第1および第2ボイスコイルモータ48,50を備え、第2ボイスコイルモータ50は、ブレ補正レンズ32bを保持する補正レンズ保持枠46に取付けられているコイル50aと、ベース部材44に取付けられている永久磁石50bおよびヨーク50cを有し(【0035】)、コイル50aに電流が流れた場合、コイル50aが、永久磁石50bとヨーク50cによって形成された磁場により、コイル50aに流れる電流の方向に対応したY軸正方向またはY軸負方向の力を受け、補正レンズ保持枠46および像ブレ補正レンズ32bを、Y軸正方向およびY軸負方向に駆動するものであり(【0031】、【0037】)、
補正レンズ保持枠46は、演算器75によってボイスコイルモータ48,50の制御が開始される前までの非通電状態において、像重力方向に幅寄せされた状態で、ベース部材44の内周面側に設けられている可動制限部44aに接触しており(【0068】)、
カメラ本体は、2段階の押し込み状態を検出される半押しスイッチとなっており、撮影操作をするための撮影操作部と、撮影準備動作をするための準備操作部とを兼ねたシャッタボタン82を備え(【0056】)、シャッタボタン82が半押しされると、シャッタボタン82に備えられた半押し状態検出センサ86が、半押し信号を出力し、センタリング目標位置算出手段88は、半押し信号が入力されると、制御中心位置112に向って像ブレ補正レンズ32bを移動させるためのセンタリング目標位置信号90を演算するとともに、該センタリング目標位置信号90を、信号切り替え手段92に出力し(【0057】)、
信号切り替え手段92は、センタリング目標位置信号90を、補正レンズ目標位置信号93として出力し、制御器94は、入力された補正レンズ目標位置信号93に基づき、モータドライバ96に制御信号を出力し、モータドライバ96は、入力された制御信号に対応した電力を、ボイスコイルモータ48,50に供給し、ボイスコイルモータ48,50のコイル48a,50aが備えられる補正レンズ保持枠46は、供給された電力に応じた駆動力を受け、像ブレ補正レンズ32bを移動させる(【0059】、【0061】)というセンタリング制御を行い、
演算器75は、センタリング制御を終了し、像ブレ補正装置による像ブレ補正が有効であるか、像ブレ補正が停止されているかを判断し(【0084】)、像ブレ補正機構42による像ブレ補正制御が有効である場合には、像ブレ補正制御を開始するものであり(【0086】)、像ブレ補正レンズ32bが制御中心位置112に到達した時間からわずかに遅れた時間Teから、角速度センサ38からの角速度検出信号に基づき像ブレ補正レンズ32bを移動させるべき位置を算出した信号である、像ブレ補正制御における補正レンズ目標位置信号93の出力を開始し、像ブレ補正制御における補正レンズ目標位置信号93は、像ブレ補正レンズ32bが像ブレを打ち消す移動をするように、ボイスコイルモータ48,50を制御する信号であり(【0047】、【0087】、【0088】)、
シャッタボタン82の半押し状態が検出されなくなると、演算器75は、ボイスコイルモータ48,50の制御を終了する(【0091】)、
カメラ。」(以下「甲1発明」という。)
イ 甲2
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲2には、次の事項が記載されている。
(ア)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、手振れ補正レンズが手振れ補正動作中に可動終端に達してしまうことを防止する技術は種々提案されている。しかしながら、特許文献1に開示の像ブレ補正装置では、撮影動作直前にセンタリング動作を行うので、ファインダで観察していた視野範囲と実際に撮影する視野範囲に差が生じてしまい、撮影画像の構図が撮影者の意図しないものになるおそれがある。また、特許文献2に開示の像ブレ補正装置では、ファインダ観察中には充分な像ブレ補正が行われなかったり、また頻繁にセンタリング動作が行われる等の問題を引き起こしてしまう。」
(イ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に従って本発明を適用したデジタル一眼レフカメラを用いて好ましい実施形態について説明する。第1実施形態に係わるデジタル一眼レフカメラは、レンズ交換式であり、交換レンズ(レンズ鏡枠)内とカメラ本体内には、それぞれ防振機構が配置されている。カメラ本体内には、ペンタプリズムを含む光学ファインダと、撮像素子から取得した画像データに基づいて被写体像を動画表示するライブビューが設けられている。レリーズ釦の半押しに応答して撮影準備状態となり、レリーズ釦の全押しに応答して撮影が開始され、このとき取得した静止画の画像データが記録媒体に記録される。」
(ウ)「【0045】
制御回路10は、交換レンズ100内における防振動作を制御する制御回路であり、レンズCPU111が相当する。制御回路10は、カメラ本体200側の制御回路20から防振動作の開始指示を受けると、補正回路12に手振れ補正信号を出力させ、駆動機構13は手振れ補正信号に従って可動支持部材17を駆動することにより、手振れの影響を低減させる。
【0046】
また、制御回路10は、制御回路20から防振動作の停止指示を受けると、補正回路12に手振れ補正信号の出力を停止させ、防振動作を停止させる。さらに、制御回路20から防振機構の初期化の指示を受けると、センタリング動作を実行する。すなわち、駆動機構13に対して、センタリング制御信号を出力し、可動支持部材17に対して可動中心に向けて移動を開始させ、位置検出センサ14から中心位置信号を受けると、駆動を停止する。」
(エ)「【0087】
このように本発明の第1実施形態においては、レリーズ釦25の半押し操作がなされると(撮影準備状態、図3の#21Y)、交換レンズ100に設けられている手振れ補正用光学系102によって手振れ補正を行うレンズ側防振機構105を動作させている(図4の#53)。そして、レリーズ釦25の全押し操作がなされると(撮影状態、図4の#59Y)、カメラ本体200に設けられている撮像素子221を移動させることによって手振れ補正を行うボディ側防振機構233を動作させている(図4の#65)。そして、撮影の終了時に、レンズ側防振機構105とボディ側防振機構233のセンタリング動作を行うようにしている(図4の#81、#83)。
【0088】
このため、撮影準備状態では、レンズ側防振機構105によって手振れを軽減した被写体像を観察することができ、撮影時には、ボディ側防振機構233によって手振れを軽減した被写体像を撮影することができる。すなわち、撮影時には、可動範囲の中心位置にあるボディ側防振機構233が動作を開始するので、ファインダ観察時の視野範囲と実際に撮影した画像の視野範囲に差が生ずることがなく、かつ、充分な手振れ補正を行うことができる。」
ウ 甲3
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲3には、次の事項が記載されている。
「さて、現在の一眼レフカメラシステムではAF化が進んでおり、通常このAF動作はボディー側のレリーズ・スイッチの半押し状態(以下S1オン)で動作を開始し、レリーズ・スイッチが離されると(以下S1オフ)、動作を停止するよう構成されている。
像ブレ防止装置を一眼レフカメラシステムに応用した場合、省電効果および使用感から撮影者がフアインダをのぞいているときにのみ、像ブレ補正動作を行うよう構成するのが望ましい。通常、撮影者はAF動作を行わせているとき、これをフアインダをのぞいてフレーミングをしながら行っているので、像ブレ補正動作の開始/停止も、AFと同様にS1オンで像ブレ補正動作を開始し、S1オフで像ブレ補正動作を停止するよう構成すれば操作性の良い像ブレ防止装置を構成できる。」(2頁左下欄11行ないし同頁右下欄7行)
エ 甲4
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲4には、次の事項が記載されている。
「前述の像ぶれ防止装置のアクチュエータは、常に動作させるのではなく、省電のため、必要なときのみ作動させることが望ましい。
操作性の点からいうと、ボディ側のレリーズ釦に指が触れた状態(スイッチS0がオン)またはレリーズ釦が半押しされた状態(スイッチS1がオン)で、アクチュエータ非作動状態から1度センタリングを行なってのち、像ぶれ防止動作に入るように構成することが望ましい。」(4頁右上欄6行ないし14行)
オ 甲5
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲5には、次の事項が記載されている。
「【0006】又、振れ補正は、スチルカメラ、特に、一眼レフカメラに於いては、カメラのレリーズ釦を半押ししている間に動作し、具体的には、カメラのレリーズ釦の半押しにより、上記電磁ロック機構により補正レンズの電磁ロックを解除すると共に振れ補正を開始する。補正レンズは、その駆動用のコイルを通電を行うことで制御し、検出された手振れ量に応じてシフト移動させ、撮像面、フィルム面、或いは、ファインダ像の振れを補正する。一方、レリーズ釦の半押しが解除されると、行われている振れ補正を終了し、電磁ロック機構により補正レンズはその概光学中心にロックされる。」
カ 甲6
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲6には、次の事項が記載されている。
「【0055】S108において、半押しブレ補正が開始される。レンズ側CPU3は、ブレ補正レンズ駆動系15にブレ補正信号を出力し、ブレ補正レンズ19は、ファインダを観察しながら構図を決定するときに有効な、半押し動作中のブレ補正を開始する。なお、半押しブレ補正は、撮影者が構図変更などを行うために、全押しブレ補正(レリーズブレ補正)に比べて、ブレ補正レンズ19の駆動時間が長い。」
キ 甲7
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲7には、次の事項が記載されている。
「【0111】
S3030では、半押しスイッチ191のONの間に行われるブレ補正(以下、半押しブレ補正)動作の開始を指示するコマンドをレンズ側へ送信する。
半押しブレ補正開始コマンドを受信した(S4030)交換レンズ102では、S4040において、ブレ補正レンズ70のロックを解除して、半押しブレ補正動作を開始する。
S3040では、全押しスイッチ192がONしているか否かを判断し、全押しスイッチ192がONの場合にはS3050へ進み、全押しスイッチ192がOFFの場合には、S3030に戻り、このS3040における判断を繰り返す。」
ク 甲8
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲8には、次の事項が記載されている。
「【0071】前述のブレ補正ユニツトの説明にも述べたように、本実施形態では、小型化のためにロック機構を省いている。また、バネ材8により可動部を支持しているので、カメラに加わる衝撃によりブレ補正レンズ1は、その可動マスとバネ力から求められる1次共振周波数で振動を起こす。本実施形態におけるカメラは、閃光装置ポップアップをバネ付勢力により行うので、ポップアップ時にカメラに衝撃が加わる。したがって、ブレ補正OFFの場合にポップアップを行うと、そのままではブレ補正レンズ1が振動して、液晶モニタ13に表示される像も揺れて観察され、観察者にとって不快である。
・・・略・・・
【0073】S330では、位置保持制御を行う。上述したように、カメラのシーケンス上で衝撃が予想されるとき、例えば閃光装置ポップアップ時に、メインCPU102aは、位置保持制御要求を出す。メインCPU102aから位置保持制御要求が出されると、ブレ補正制御部122では、ブレ補正レンズ1の現在位置を検出し、その値を目標位置として位置保持制御を行う。この位置保持制御は、位置保持制御フラグが解除されない限り位置保持制御を続ける。閃光装置ポップアップの場合には、予め設定された時間が経過した後、位置保持制御フラグが解除される。」
(2)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明は「レンズ鏡筒12がカメラ本体部10に対して着脱自在に装着されているカメラ」であるから、甲1発明の「レンズ鏡筒12」及び「カメラ本体部10」は、それぞれ本件発明1の「交換レンズ」及び「カメラボディ」に相当することは明らかである。また、甲1発明は、本件発明1の「カメラボディに対して交換レンズが装着可能であり」との構成を備えることは明らかである。
イ 甲1発明は、「レンズ鏡筒12」(本件発明1の「交換レンズ」に相当。以下「」に続く()内の用語は対応する本件発明1の用語を表す。)が「カメラ本体部10」(カメラボディ)との通信等を行う演算器を備えるカメラであるから、甲1発明の「カメラ」は、本件発明1の「カメラシステム」に相当し、該「カメラシステム」(カメラ)は「前記カメラボディと前記交換レンズとの間で通信を行う」ものであるといえる。
ウ 甲1発明の「レンズ鏡筒12」(交換レンズ)は、その内部に備えられた撮影光学系26が、第1レンズ群28と、第2レンズ群30と、第3レンズ群32と、絞り34とを有し、第3レンズ群32は、3-1レンズ群32aと、像ブレ補正レンズ32bと、3-3レンズ群32cとを有しているものであり、甲1発明の「像ブレ補正レンズ32b」は、本件発明1の「補正光学系」に相当するといえる。してみると、甲1発明の「レンズ鏡筒12」(交換レンズ)と、本件発明1の「交換レンズ」とは、「レンズ光学系の一部のレンズ又はレンズ群を補正光学系とし」ている点で一致する。
エ 甲1発明は、ボイスコイルモータ48,50が非通電状態で、「像ブレ補正レンズ32b」(補正光学系)を保持する補正レンズ保持枠46は、重力方向に幅寄せされた状態であり、ベース部材44の内周面側に設けられている可動制限部44aに接触しているものであり、補正レンズ保持枠46に接触してその動きを遮る可動制限部は壁面であるといえるから、甲1発明は、本件発明1の「前記補正光学系は、無通電にて重力方向の壁面に接しており」との構成を備える。
オ 甲1発明の「像ブレ補正機構42」は、ブレ補正レンズ32bを保持する補正レンズ保持枠46に取付けられているコイル50aと、ベース部材44に取付けられている永久磁石50bおよびヨーク50cを有しているから、甲1発明の「永久磁石」、「コイル」、「補正レンズ保持枠」及び「像ブレ補正機構42」は、それぞれ本件発明1の「マグネット」、「コイル」、「可動部材」及び「光学式手ブレ補正機構」に相当することは明らかである。
また、甲1発明の「像ブレ補正機構42」は、「ブレ補正レンズ32b」(補正光学系)を保持する「補正レンズ保持枠46」(可動部材)に取付けられている「コイル50a」(コイル)と、ベース部材44に取付けられている「永久磁石50b」(マグネット)およびヨーク50cを有し、「コイル50a」(コイル)に電流が流れた場合、「コイル50a」(コイル)が、「永久磁石50b」(マグネット)とヨーク50cによって形成された磁場により、「コイル50a」(コイル)に流れる電流の方向に対応したY軸正方向またはY軸負方向の力を受け、「補正レンズ保持枠46」(可動部材)および「像ブレ補正レンズ32b」(補正光学系)を、Y軸正方向およびY軸負方向に駆動するものであるから、甲1発明の「像ブレ補正機構42」は、本件発明1の「前記補正光学系を含みマグネット若しくはコイルが設置される可動部材は、駆動部のコイルに電流が供給されることで発生する電磁力により駆動され」との構成を備える。
また、甲1発明において、補正レンズ目標位置信号93は、角速度センサ38からの角速度検出信号に基づき「像ブレ補正レンズ32b」(補正光学系)を移動させるべき位置を算出した信号であるとともに、像ブレ補正制御における像ブレ補正レンズ32bが像ブレを打ち消す移動をするように、ボイスコイルモータ48,50を制御する信号であるところ、まず、甲1発明の「像ブレ補正制御」が本件発明1の「手ブレ補正制御」に相当することは明らかであり、角速度センサ38により「カメラ」(カメラシステム)のブレ量及び「像ブレ補正レンズ32b」(補正光学系)の現在位置を検知することは技術常識からみて明らかであるとともに、像ブレ補正レンズ32bが像ブレを打ち消す移動をするということは、光軸と垂直な平面内で移動させていることも技術常識からみて明らかである。そうすると、甲1発明は、本件発明1の「撮影者等による前記カメラシステムのブレ量及び前記補正光学系の現在位置を検知し、前記ブレ量から演算された前記補正光学系の目標位置と前記補正光学系の現在位置との差分をキャンセルさせるように前記補正光学系を光軸と垂直な平面内で移動させることで、手ブレ補正制御を行う」との構成を備える。
カ 甲1発明の「カメラ」(カメラシステム)と、本件発明1の「カメラシステム」とは、「手ブレ補正制御を行う前に、補正光学系の光軸とレンズ光学系の光軸とが一致するように中心保持制御を開始する」点で共通する。
キ 上記アないしカからみて、本件発明1と甲1発明とは、
「カメラボディに対して交換レンズが装着可能であり、
前記カメラボディと前記交換レンズとの間で通信を行うカメラシステムにおいて、
前記交換レンズは、レンズ光学系の一部のレンズ又はレンズ群を補正光学系とし、
前記補正光学系は、無通電にて重力方向の壁面に接しており、
前記補正光学系を含みマグネット若しくはコイルが設置される可動部材は、駆動部のコイルに電流が供給されることで発生する電磁力により駆動され、
撮影者等による前記カメラシステムのブレ量及び前記補正光学系の現在位置を検知し、前記ブレ量から演算された前記補正光学系の目標位置と前記補正光学系の現在位置との差分をキャンセルさせるように前記補正光学系を光軸と垂直な平面内で移動させることで、
手ブレ補正制御を行う光学式手ブレ補正機構を有し、
手ブレ補正制御を行う前に、前記補正光学系の光軸と前記レンズ光学系の光軸とが一致するように中心保持制御を開始する、
カメラシステム。」である点で一致し、次の点で相違する。
・相違点1:
本件発明1では、「前記カメラボディは交換レンズへ、手ブレ補正制御開始を命令するための補正開始信号を送信し、手ブレ補正制御終了を命令するための補正終了信号を送信し」ているのに対し、
甲1発明では、像ブレ補正制御の開始の契機となる補正レンズ目標位置信号の出力が、レンズ鏡筒12(交換レンズ)に備えられている信号切り替え手段92からなされ、カメラ本体(カメラボディ)からレンズ鏡筒12(交換レンズ)へ、補正開始信号及び補正終了信号が送信されているかどうかが明らかでない点。
・相違点2:
本件発明1では、「前記カメラボディは、前記カメラボディの電源ボタンが操作された後であって、前記カメラボディが交換レンズへ前記補正開始信号を送信する前に、前記交換レンズへ中心保持信号を送信し、前記交換レンズは、前記中心保持信号を前記カメラボディより受信した後、前記補正光学系の光軸と前記レンズ光学系の光軸とが一致するように中心保持制御を開始する」のに対し
甲1発明では、手ブレ補正制御を行う前に、ブレ補正レンズ32b(補正光学系)の光軸とその他のレンズ光学系の光軸とが一致するようにセンタリング(中心保持制御)を開始するものではあるが、カメラの電源ボタンが操作された後であって、前記カメラがレンズ鏡筒12(交換レンズ)へ補正開始信号を送信する前に、カメラがレンズ鏡筒12へ中心保持信号を送信しているものでない点。
(3)判断
上記相違点2について検討する。
ア 甲1の【0056】に「シャッタボタン82を半押しし、半押し状態検出センサ86によって半押し状態が検出されたタイミングで、AF動作や像ブレ補正動作等の撮影準備動作を開始する。」と記載されているところ、「撮影準備動作」はAF動作や像ブレ補正動作のことを意味するといえる。同じく甲1の【0106】には「準備操作部は、例えばカメラ等の電源スイッチ等であってもよい。」と記載されているところ、当該記載からみて、甲1発明のシャッタボタン82の半押しによる撮影準備操作の開始に換えて、電源スイッチの操作による撮影準備動作の開始を採用し得ることが読み取れる。このように、甲1発明のシャッタボタン82の半押し操作を電源スイッチの操作に置き換えた場合には、電源スイッチ操作に従って、像ブレ補正制御が開始されるものであるが、この像ブレ補正制御に先だって、センタリング制御が行われると理解できる。
イ 上記アのように、甲1発明において、撮影準備動作の開始の契機として、シャッタボタン82の半押しに換えて電源スイッチ操作を採用した際に、電源スイッチ操作に従って、センタリング制御が行われ、該センタリング制御が終了すると、それに続いて像ブレ補正制御が開始されるものであるところ、カメラ本体(カメラボディ)がレンズ鏡筒12(交換レンズ)へ中心保持信号及び補正開始信号をそれぞれ独立して送信することなしに、センタリング制御を含めた像ブレ補正制御が開始されるものとなる。そうすると、甲1発明において、電源スイッチが操作されるに従ってセンタリング制御が開始されるとしても、そもそも前記中心保持信号及び前記補正開始信号がカメラ本体からレンズ鏡筒へそれぞれ独立して送信されていないのであるから、前記中心保持信号が、前記補正開始信号を送信する前にレンズ鏡筒12(交換レンズ)に送信するという構成には到らない。
ウ また、甲2(上記(1)イ)における、カメラ本体側からの防振動作の開始指示を受けて交換レンズで防振動作を行うという記載事項、及び、甲3ないし甲8等に記載されているレリーズ半押しによる手ブレ補正制御開始という周知技術を考慮しても、甲1発明において、中心保持信号が、前記補正開始信号を送信する前にレンズ鏡筒12(交換レンズ)に送信するという構成には到らない。
エ してみると、甲1発明において、上記相違点2に係る本件発明1の構成となすことは当業者が容易になし得たものではない。
オ 以上のとおりであるから、相違点1の容易想到性について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1ないし8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件発明2ないし5について
ア 本件発明1が、甲1ないし8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加した本件発明2ないし5も同様に、甲1ないし8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
イ 本件発明2が「カメラボディ」のサブコンビネーションの発明、本件発明3及び4が「交換レンズ」のサブコンビネーションの発明、本件発明5が「手ブレ補正ユニット」のサブコンビネーションの発明といえるところ、「交換レンズ」又は「手ブレ補正ユニット」のサブコンビネーションの発明である本件発明3ないし5のいずれにおいても、「中心保持信号」を受信していることが特定されている。そして、「中心保持信号」は、本件発明3ないし5が引用する本件発明1で特定されているように「カメラボディの電源ボタンが操作された後であって、カメラボディが交換レンズへの補正開始信号を送信する前に」送信されているものであり、本件発明3ないし5において、「カメラボディの電源ボタンが操作された後であって、カメラボディが交換レンズへの補正開始信号を送信する前に」受信する信号であることが特定されているといえるものであり、この点は上記(3)で検討したとおり、当業者が容易に想到できたものとはいえないのであるから、上記アで示した判断に変わりはない。また、本件発明2については、本件発明1と同様に、そもそも中心保持信号及び補正開始信号がカメラ本体からレンズ鏡筒へ独立して送信されていないのであるから、補正開始信号を送信する前に中心保持信号を送信するという構成に到らない。
第4 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700249