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特許異議申立

2017-700095

彫刻刀

審判番号
2017-700095
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2011-236177外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年02月01日
審決日
2017年09月29日
公報発行日
2017年12月28日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.537-YA (B44B) / P1651.121-YA (B44B) / P1651.16 -YA (B44B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第29条の2、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5959824号発明「彫刻刀」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5959824号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8、10~13〕、14、16について訂正することを認める。 特許第5959824号の請求項〔1~8、10~13〕、14、16に係る特許を維持する。 特許第5959824号の請求項9、15、17に係る特許についての特許異議申立てを却下する。

理由

【理 由】 1.手続の経緯 特許第5959824号の請求項1~17に係る特許についての出願は、平成23年10月27日に特許出願され、平成28年7月1日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人大上直隆(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成29年3月27日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年5月25日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して、同年6月14日付けで訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年7月4日に手続補正書が提出され、異議申立人から同年8月22日に意見書が提出されたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。 (請求項1~13に係る訂正) ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1~4に「刃から退避する位置」と記截されているのを「刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置」に訂正する。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「本体部に沿って前後方向に移動可能」と記載されているのを「本体部に沿って前後方向にのみ移動可能」に訂正し、請求項2~4に「本体部に沿って移動可能」と記載されているのを「本体部に沿って前後方向にのみ移動可能」に訂正する。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項9を削除するとともに、特許請求の範囲の請求項10における引用先の「請求項1乃至9」のうち、請求項9への引用を削除する。 エ 訂正事項4 明細書の段落【0010】【0012】【0013】【0015】に「刃から退避する位置」と記載されているのを「刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置」に訂正する。 オ 訂正事項5 明細書の段落【0010】に「本体部に沿って前後方向に移動可能」と記載されているのを「本体部に沿って前後方向にのみ移動可能」に訂正し、明細書の段落【0012】【0013】【0015】に「本体部に沿って移動可能」と記載されているのを「本体部に沿って前後方向にのみ移動可能」に訂正する。 カ 訂正事項6 明細書の段落【0022】を削除する。 キ 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項12における引用先の「請求項3乃至5,10,11」のうち、請求項10、11への引用を外す。 ク 訂正事項8 明細書の段落【0027】に「請求項3乃至5,10,11」と記截されているのを「請求項3乃至5」と訂正する。 (請求項14に係る訂正) ケ 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項14に「刃から退避する位置」と記載されているのを、「刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置」に訂正する。 コ 訂正事項10 特許請求の範囲の請求項14に「本体部に沿って移動可能」と記載されているのを、「本体部に沿って前後方向にのみ移動可能」に訂正する。 サ 訂正事項11 明細書の段落【0031】に「刃から退避する位置」と記載されているのを「刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置」に訂正する。 シ 訂正事項12 明細書の段落【0031】に「本体部に沿って移動可能」と記載されているのを「本体部に沿って前後方向にのみ移動可能」に訂正する。 (請求項15に係る訂正) ス 訂正事項13 特許請求の範囲の請求項15を削除する。 セ 訂正事項14 明細書の段落【0032】を削除する。 (請求項16に係る訂正) ソ 訂正事項15 特許請求の範囲の請求項16に「刃から退避する位置」と記載されているのを、「刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置」に訂正する。 タ 訂正事項16 特許請求の範囲の請求項16に「本体部に沿って移動可能」と記載されているのを、「本体部に沿って前後方向にのみ移動可能」に訂正する。 チ 訂正事項17 明細書の段落【0033】に「刃から退避する位置」と記載されているのを「刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置」に訂正する。 ツ 訂正事項18 明細書の段落【0033】に「本体部に沿って移動可能」と記載されているのを「本体部に沿って前後方向にのみ移動可能」に訂正する。 (請求項17に係る訂正) テ 訂正事項19 特許請求の範囲の請求項17を削除する。 ト 訂正事項20 明細書の段落【0034】を削除する。 (2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 一群の請求項について 訂正事項1~8に係る訂正前の請求項1~13について、請求項5~13は請求項1~4を引用しているものであって、訂正事項1、2によって記載が訂正される請求項1~4に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~13に対応する訂正後の請求項1~8、10~13は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 イ 訂正事項が訂正要件に適合していることについて (ア)訂正事項1 a 訂正の目的について 訂正前の請求項1に係る発明は、保護部材の移動範囲について、「保護部材として機能する位置と、刃から退避する位置の間」を特定している。 これに対して、訂正後の請求項1は、「刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置」との記載により、訂正後の請求項1に係る発明における「刃から退避する位置」をより具体的に特定し、更に限定するものである。すなわち、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1は、「刃から退避する位置」という発明特定事項を、概念的により下位の「刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。 この「刃から退避する位置」に係る説明として、段落【0123】、【0124】には、「図21は、保護部材側係合部52と前側切欠部47の係合を解除して保護部材42を柄尻側へ移動させる途中の状態を示している。・・・(略)・・・すなわち、刃先4aはむき出し状態となっている。」との記載がなされていることから、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (イ)訂正事項2 a 訂正の目的について 訂正前の請求項1に係る発明は、保護部材の移動の仕方について「本体部に沿って前後方向に移動可能」を特定している。 これに対して、訂正後の請求項1は、「本体部に沿って前後方向にのみ移動可能」との記載により、訂正後の請求項1に係る発明における「本体部に沿って前後方向に移動可能」をより具体的に特定し、更に限定するものである。すなわち、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2は、「本体部に沿って前後方向に移動可能」という発明特定事項を、概念的により下位の「本体部に沿って前後方向にのみ移動可能」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2は、願書に添付した明細書の記載に基づいて導き出される構成である。 「本体部に沿って移動可能」に係る記載として、明細書の段落【0119】には、「その際、保護部材42の縁部55a,55bが、中子44と筐体43の図示しない接続部に接触しながら、保護部材42は本体部41の隙間46内を移動する。よって保護部材42は、本体部41に対して回動せず、前後方向にのみ移動が可能である。」との記載がなされていることから、当該訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (ウ)訂正事項3 a 訂正の目的について 訂正事項3は、請求項9を削除するとともに、特許請求の範囲の請求項10における引用先の「請求項1乃至9」のうち、請求項9への引用を削除するというものであるから、当該訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項3は、請求項9を削除するとともに、特許請求の範囲の請求項10における引用先の「請求項1乃至9」のうち、請求項9への引用を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (エ)訂正事項4 a 訂正の目的について 訂正事項4は、訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の段落【0010】、【0012】、【0013】、【0015】に「刃から退避する位置」と記載されているのを、「刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置」に訂正するものである。 よって、当該訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項4は、「刃から退避する位置」という記載を、概念的により下位の「刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項4は、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。 「刃から退避する位置」に係る説明として、段落【0123】、【0124】には「図21は、保護部材側係合部52と前側切欠部47の係合を解除して保護部材42を柄尻側へ移動させる途中の状態を示している。・・・(略)・・・すなわち、刃先4aはむき出し状態となっている。」との記載がなされていることから、当該訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (オ)訂正事項5 a 訂正の目的について 訂正事項5は、訂正事項2に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の段落【0010】の「本体部に沿って前後方向に移動可能」と記載されているのを、「本体部に沿って前後方向にのみ移動可能」に訂正するものであり、明細書の段落【0012】【0013】【0015】に「本体部に沿って移動可能」と記載されているのを「本体部に沿って前後方向にのみ移動可能」に訂正するものである。 よって、当該訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項5は、「本体部に沿って前後方向に移動可能」という記載や、「本体部に沿って移動可能」という記載を、概念的により下位の「本体部に沿って前後方向にのみ移動可能」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許鯖求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること. 訂正事項5は、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。 「本体部に沿って前後方向に移動可能」に係る説明として、段落【0119】には「よって保護部材42は、本体部41に対して回動せず、前後方向にのみ移動が可能である。」との記載がなされていることから、当該訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (カ)訂正事項6 a 訂正の目的について 訂正事項6は、訂正事項3に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の段落【0022】を削除するものである。 よって、当該訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項6は、請求項9を削除することに伴って、明細書の段落【0022】の記載を削除するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項6は、願書に添付した明細書中の段落【0022】の記載を削除するものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (キ)訂正事項7 a 訂正の目的について 訂正事項7は、特許請求の範囲の請求項12における引用先の「請求項3乃至5,10,11」のうち、請求項10、11への引用を外すというものであるから、当該訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項7は、特許請求の範囲の請求項12における引用先の「請求項3乃至5,10,11」のうち、請求項10、11への引用を外すというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記截した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項7は、特許請求の範囲の請求項12における引用先の「請求項3乃至5,10,11」のうち、請求項10、11への引用を外すというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (ク)訂正事項8 a 訂正の目的について 訂正事項8は、訂正事項7に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るため、明細書の段落【0027】に「請求項3乃至5,10,11」と記截されているのを「請求項3乃至5」と訂正するものである。 よって、当該訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項8は、訂正事項7に係る訂正に伴って、明細書の段落【0027】に「請求項3乃至5,10,11」と記截されているのを「請求項3乃至5」と訂正するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項8は、願書に添付した明細書の段落【0027】に「請求項3乃至5,10,11」と記截されているのを「請求項3乃至5」と訂正するものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (ケ)訂正事項9 a 訂正の目的について 訂正前の請求項14に係る発明は、保護部材の移動範囲について、「保護部材として機能する位置と、刃から退避する位置の間」を特定している。 これに対して、訂正後の請求項14は、「刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置」との記載により、訂正後の請求項14に係る発明における「刃から退避する位置」をより具体的に特定し、更に限定するものである。すなわち、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項9は、「刃から退避する位置」という発明特定事項を、概念的により下位の「刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項9は、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。 この「刃から退避する位置」に係る説明として、段落【0123】、【0124】には、「図21は、保護部材側係合部52と前側切欠部47の係合を解除して保護部材42を柄尻側へ移動させる途中の状態を示している。・・・(略)・・・すなわち、刃先4aはむき出し状態となっている。」との記載がなされていることから、当該訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (コ)訂正事項10 a 訂正の目的について 訂正事項10は、訂正前の請求項14の前段部分の「本体部に沿って移動可能」との記載と、後段部分の「保護部材が前後方向にのみ移動可能に拘束され、」との記載の整合を図るため、上記前段部分の記載を「本体部に沿って前後方向にのみ移動可能」に訂正するものである。 よって、当該訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項10は、「本体部に沿って移動可能」という発明特定事項を、概念的により下位の「本体部に沿って前後方向にのみ移動可能」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項10は、願書に添付した明細書、及び特許請求の範囲の記載に基づいて導き出される構成である。 「本体部に沿って移動可能」に係る記載として、請求項14の後段部分には「保護部材が前後方向にのみ移動可能に拘束され、」との記載がなされていることから、当該訂正事項10は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (サ)訂正事項11 a 訂正の目的について 訂正事項11は、訂正事項9に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の段落【0031】に「刃から退避する位置」と記載されているのを、「刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置」に訂正するものである。 よって、当該訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項11は、「刃から退避する位置」という記載を、概念的により下位の「刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項11は、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。 「刃から退避する位置」に係る説明として、段落【0123】、【0124】には「図21は、保護部材側係合部52と前側切欠部47の係合を解除して保護部材42を柄尻側へ移動させる途中の状態を示している。・・・(略)・・・すなわち、刃先4aはむき出し状態となっている。」との記載がなされていることから、当該訂正事項11は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (シ)訂正事項12 a 訂正の目的について 訂正事項12は、訂正事項10に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の段落【0031】の「本体部に沿って移動可能」と記載されているのを、「本体部に沿って前後方向にのみ移動可能」に訂正するものである。 よって、当該訂正事項12は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項12は、「本体部に沿って移動可能」という記載を、概念的により下位の「本体部に沿って前後方向にのみ移動可能」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許鯖求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項12は、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。 「本体部に沿って移動可能」に係る説明として、請求項14の後段部分には「保護部材が前後方向にのみ移動可能に拘束され、」との記載がなされていることから、当該訂正事項12は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (ス)訂正事項13 a 訂正の目的について 訂正事項13は、請求項15を削除するというものであるから、当該訂正事項13は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項13は、請求項15を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許鯖求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項13は、請求項15を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (セ)訂正事項14 a 訂正の目的について 訂正事項14は、訂正事項13に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の段落【0032】を削除するものである。 よって、当該訂正事項14は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項14は、請求項15を削除することに伴って、明細書の段落【0032】の記載を削除するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許鯖求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項14は、願書に添付した明細書中の段落【0032】の記載を削除するものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (ソ)訂正事項15 a 訂正の目的について 訂正前の請求項16に係る発明は、保護部材の移動範囲について、「保護部材として機能する位置と、刃から退避する位置の間」を特定している。 これに対して、訂正後の請求項16は、「刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置」との記載により、訂正後の請求項16に係る発明における「刃から退避する位置」をより具体的に特定し、更に限定するものである。すなわち、訂正事項15は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項15、「刃から退避する位置」という発明特定事項を、概念的により下位の「刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項15は、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。 この「刃から退避する位置」に係る説明として、段落【0123】、【0124】には、「図21は、保護部材側係合部52と前側切欠部47の係合を解除して保護部材42を柄尻側へ移動させる途中の状態を示している。・・・(略)・・・すなわち、刃先4aはむき出し状態となっている。」との記載がなされていることから、当該訂正事項15は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (タ)訂正事項16 a 訂正の目的について 訂正前の請求項16に係る発明は、保護部材の移動の仕方について「本体部に沿って移動可能」を特定している。 これに対して、訂正後の請求項16は、「本体部に沿って前後方向にのみ移動可能」との記載により、訂正後の請求項16に係る発明における「本体部に沿って移動可能」をより具体的に特定し、更に限定するものである。すなわち、訂正事項16は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項16は、「本体部に沿って移動可能」という発明特定事項を、概念的により下位の「本体部に沿って前後方向にのみ移動可能」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項16は、願書に添付した明細書、及び特許請求の範囲の記載に基づいて導き出される構成である。 「本体部に沿って移動可能」に係る記載として、明細書の段落【0119】には、「その際、保護部材42の縁部55a,55bが、中子44と筐体43の図示しない接続部に接触しながら、保護部材42は本体部41の隙間46内を移動する。よって保護部材42は、本体部41に対して回動せず、前後方向にのみ移動が可能である。」との記載がなされていることから、当該訂正事項16は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (チ)訂正事項17 a 訂正の目的について 訂正事項17は、訂正事項15に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の段落【0033】に「刃から退避する位置」と記載されているのを、「刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置」に訂正するものである。よって、当該訂正事項17は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項17は、「刃から退避する位置」という記載を、概念的により下位の「刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項17は、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。 「刃から退避する位置」に係る説明として、段落【0123】、【0124】には「図21は、保護部材側係合部52と前側切欠部47の係合を解除して保護部材42を柄尻側へ移動させる途中の状態を示している。・・・(略)・・・すなわち、刃先4aはむき出し状態となっている。」との記載がなされていることから、当該訂正事項17は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (ツ)訂正事項18 a 訂正の目的について 訂正事項18は、訂正事項16に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の段落【0033】の「本体部に沿って移動可能」と記載されているのを、「本体部に沿って前後方向にのみ移動可能」に訂正するものである。 よって、当該訂正事項18は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項18は、「本体部に沿って移動可能」という記載を、概念的により下位の「本体部に沿って前後方向にのみ移動可能」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項18は、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。 「本体部に沿って移動可能」に係る説明として、段落【0119】には「よって保護部材42は、本体部41に対して回動せず、前後方向にのみ移動が可能である。」との記載がなされていることから、当該訂正事項18は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (テ)訂正事項19 a 訂正の目的について 訂正事項19は、請求項17を削除するというものであるから、当該訂正事項19は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項19は、請求項17を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許鯖求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項19は、請求項17を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (ト)訂正事項20 a 訂正の目的について 訂正事項20は、訂正事項19に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の段落【0034】を削除するものである。 よって、当該訂正事項20は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項20は、請求項17を削除することに伴って、明細書の段落【0034】の記載を削除するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許鯖求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項20は、願書に添付した明細書中の段落【0034】の記載を削除するものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~8、10~13〕、14、16について訂正を認める。 3.特許異議の申立てについて (1)本件特許発明 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1~17に係る発明(以下「本件特許発明1~17」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~17に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 請求項1「本体部と、本体部に固定される刃と、刃の周囲に配置可能な保護部材とを有する彫刻刀であって、 前記保護部材は、本体部に取付けられた状態で、保護部材として機能する位置と、刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置の間を、本体部に沿って前後方向にのみ移動可能であり、 前記本体部の先端部分には、彫刻作業時に作業者が指を添えて力を入れる押圧部が設けてあり、前記押圧部は本体部の刃先側の端部付近の部位であり、 前記押圧部は本体部の露出面であり、保護部材が保護部材として機能する位置に配置されているとき、及び刃から退避する位置に配置されているときに、前記押圧部が露出していることを特徴とする彫刻刀。」 請求項2「本体部と、本体部に固定される刃と、刃の周囲に配置可能な保護部材とを有する彫刻刀であって、 前記保護部材は、本体部に取付けられた状態で、保護部材として機能する位置と、刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置の間を、本体部に沿って前後方向にのみ移動可能であり、 本体部の彫刻作業時に上面となる部位であって、本体部の先端部分に、柄尻側から刃先側に行くほど上側に反り返つた押圧部があることを特徴とする彫刻刀。」 請求項3「本体部と、本体部に固定される刃と、刃の周囲に配置可能な保護部材とを有する彫刻刀であって、前記保護部材は、本体部に取付けられた状態で、保護部材として機能する位置と、刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置の間を、本体部に沿って前後方向にのみ移動可能であり、 保護部材には、本体部に対する保護部材の移動方向と直交する方向に突出する又は窪む保護部材側係合部が設けてあり、本体部には保護部材側係合部と係合する本体部側係合部が設けてあり、保護部材に作用する、保護部材側係合部と本体部側係合部の係合を解除する方向の力に抗する付勢手段があり、 本体部は、保護部材の一部又は全部を収容する内部空間と、当該内部空間と連通し且つ保護部材の移動方向に延びる長孔状の開口とを有しており、保護部材には前記開口から突出する操作部が設けてあり、前記付勢手段の付勢力は、開口側から内部空間側に向かって保護部材の操作部を押し込もうとする力に抗することを特徴とする彫刻刀。」 請求項4「本体部と、本体部に固定される刃と、刃の周囲に配置可能な保護部材とを有する彫刻刀であって、前記保護部材は、本体部に取付けられた状態で、保護部材として機能する位置と、刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置の間を、本体部に沿って前後方向にのみ移動可能であり、 保護部材には、本体部に対する保護部材の移動方向と直交する方向に突出する又は窪む保護部材側係合部が設けてあり、本体部には保護部材側係合部と係合する本体部側係合部が設けてあり、保護部材に作用する、保護部材側係合部と本体部側係合部の係合を解除する方向の力に抗する付勢手段があり、 本体部には保護部材の一部又は全部を収容する溝が設けてあり、前記溝は開口を有しており、前記開口の幅は溝内部の幅よりも狭く、保護部材には前記開口から突出する操作部が設けてあり、前記保護部材側係合部の幅は、前記溝内部の幅よりは小さく且つ開口の幅よりは大きく、前記開口の所定位置には保護部材側係合部よりも幅が広い溝である本体部側係合部が形成されており、前記付勢手段の付勢力は、開口側から溝内部側へ保護部材の操作部に作用する力に抗し、さらに付勢手段は、保護部材側係合部を本体部側係合部に係合させるように保護部材側係合部を付勢することを特徴とする彫刻刀。」 請求項5「前記開口は、溝内部と外部とを仕切る一対の平板状の部材が間隔を開けて配置されて構成されており、前記平板状の部材の溝側の面に本体部側係合部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の彫刻刀。」 請求項6「保護部材は保護部材本体部を有し、保護部材本体部の先に先端部があり、保護部材本体部が前後方向にのみ移動可能に拘束され、保護部材は本体部から抜け落ちないことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の彫刻刀。」 請求項7「前記保護部材を、保護部材として機能する位置で固定可能であり、前記保護部材を、刃から退避する位置でも固定可能であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の彫刻刀。」 請求項8「本体部の彫刻作業時に上面となる部位に弾性部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の彫刻刀。」 請求項9「(削除)」 請求項10「保護部材には、本体部に対する保護部材の移動方向と直交する方向に突出する又は窪む保護部材側係合部が設けてあり、 本体部には保護部材側係合部と係合する本体部側係合部が設けてあり、 保護部材に作用する、保護部材側係合部と本体部側係合部の係合を解除する方向の力に抗する付勢手段があることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の彫刻刀。」 請求項11「本体部側係合部は、保護部材が保護部材として機能する位置に配置された際に保護部材側係合部と係合する位置に設けてあることを特徴とする請求項3乃至5,10のいずれかに記載の彫刻刀。」 請求項12「本体部側係合部は、保護部材が保護部材として機能する位置に配置された際に保護部材側係合部と係合する位置に設けてあり、 保護部材には操作部と反対側に隆起する保護部材側隆起部が設けてあり、 本体部には、前記保護部材側隆起部と係合する本体部側隆起部が設けてあり、 保護部材が刃から退避した位置に移動する際に、保護部材側隆起部の最も隆起する部位が、本体部側隆起部の最も隆起する部位に押圧されながら通過して係合することを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の彫刻刀。」 請求項13「本体部側係合部は、保護部材が刃から退避した位置に配置された際に、保護部材側係合部と係合可能な位置に設けられていることを特徴とする請求項3乃至5,10乃至12のいずれかに記載の彫刻刀。」 請求項14「本体部と、本体部に固定される刃と、刃の周囲に配置可能な保護部材とを有する彫刻刀であって、 前記保護部材は、本体部に取付けられた状態で、保護部材として機能する位置と、刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置の間を、本体部に沿って前後方向にのみ移動可能であり、 前記保護部材は保護部材本体部を有し、保護部材本体部の先に先端部があり、 保護部材が前後方向にのみ移動可能に拘束され、保護部材は本体部から抜け落ちず、 使用者が操作して保護部材を移動させる操作部を有し、 前記操作部が柄尻側にあることを特徴とする彫刻刀。」 請求項15「(削除)」 請求項16「本体部と、本体部に固定される刃と、刃の周囲に配置可能な保護部材とを有する彫刻刀であって、 前記保護部材は、本体部に取付けられた状態で、保護部材として機能する位置と、刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置の間を、本体部に沿って前後方向にのみ移動可能であり、 前記保護部材を、保護部材として機能する位置で固定可能であり、前記保護部材を、刃から退避する位置でも固定可能であり、 使用者が操作して保護部材を移動させる操作部を有し、 前記操作部が柄尻側にあることを特徴とする彫刻刀。」 請求項17「(削除)」 (2)取消理由の概要 訂正前の請求項1~17に係る特許に対して平成29年3月27日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 ア 理由1 請求項15、17に係る発明は、甲第6号証:特願2011-17100号(特開2012-157982号)に記載された発明であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、請求項15、17に係る特許は、取り消されるべきものである。 イ 理由2 請求項1~17に係る特許は、同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 (3)判断 ア 取消理由通知に記載した取消理由について (ア)特許法第29条の2について 上記2.(2)イの「(ス)訂正事項13」及び「(テ)訂正事項19」のとおり、本件訂正においては、本件訂正前の請求項15、17を削除する訂正が認容される。 そうすると、取消理由のうち、特許法第29条の2に基づく取消理由については、対象となる請求項が存在しないこととなる。 (イ)特許法第36条第6項第2号について (a)「刃から退避する位置」について 本件訂正によって、請求項1~4、14、16の「刃から退避する位置」という記載は「刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置」と訂正された。 ここで、「刃先がむき出し状態となる」は、明細書の段落【0124】に記載されている。 これらの訂正によって保護部材の位置が、「刃から退避する位置」であって「刃先がむき出し状態となる位置」に限定されて、「刃から退避する位置」が明確に特定された。 また、請求項5~8、10~13は、訂正後の請求項1~4を直接又は間接的に引用している。 したがって、本件訂正により、「刃から退避する位置」についての取消理由は解消した。 (b)「本体部に沿って移動可能」又は「本体部に沿って前後方向に移動可能」について 本件訂正によって、請求項1の「前後方向に移動可能」という記載は「前後方向にのみ移動可能」と訂正され、請求項2~4、14、16の「本体部に沿って移動可能」という記載は「本体部に沿って前後方向にのみ移動可能」と訂正された。 ここで、「本体部に沿って前後方向にのみ移動可能」は、明細書の段落【0119】に記載されている。 これらの訂正によって、保護部材の移動方向が「前後方向にのみ」に明確に特定され、特許を受けようとする発明が明確となった。 また、請求項5~8、10~13は、訂正後の請求項1~4を直接又は間接的に引用している。 したがって、本件訂正により、「本体部に沿って移動可能」及び「本体部に沿って前後方向に移動可能」についての取消理由は解消した。 (c)「本体部の彫刻作業時に下方を向き刃先側から柄尻側にのびる傾斜面」について 上記2.(2)イの「(ウ)訂正事項3」のとおり、本件訂正においては、本件訂正前の請求項9を削除する訂正が認容される。 そうすると、この取消理由については、対象となる請求項が存在しないこととなる。 (d)「操作部と反対側に隆起する保護部材側隆起部」及び「本体部側隆起部」について 上記2.(2)イの「(キ)訂正事項7」のとおり、本件訂正においては、本件訂正前の請求項12のうち、請求項3又は請求項4を引用していない場合を削除し、請求項3又は請求項4を引用する場合のみとする訂正が認容される。 そうすると、この取消理由については、対象となる請求項が存在しないこととなる。 (ウ)特許異議申立人の意見について (a)「刃から退避する位置」について 特許異議申立人は、意見書において、以下のように主張している。 「取消理由通知では、保護部材のどのような位置まで「刃から退避する位置」に含まれるかが不明瞭であるとしている。 ここで、「位置」とは、通常、「ある人・物・事柄が、他との関係もしくは全体との関係で占める場所」(広辞苑第6版)という意義を有するため、保護部材の「刃から退避する位置」について明確性要件を満たすためには、保護部材が具体的にどのような場所にあるかを当業者が理解できる程度に表されていることを要するものというべきである。 これに対して本訂正事項のように“刃先がむき出し状態となる”位置と表現したとしても、甲第1号証~甲第6号証に示した彫刻刀又は同技術分野の発明のように、保護部材の形状や移動態様は種々存在する・・・ことが当業者において周知慣用であるため、保護部材がどのような位置にあるとき刃から退避する位置に相当するのか、当業者において明確に理解できない。 又、この不明確性は“刃先”の意味するところが不明瞭であることにも起因する。“刃”のうちのどの位置までが“刃先”であるか、当業者が本件特許明細書を参酌しても明確に理解できない。 以上のように、本訂正事項は、“刃から退避する位置”に機能的記載を付加しただけのものであって「保護部材の位置」を明確に表したものではないため、訂正後の特許請求の範囲の各請求項における“刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置”との記載は依然として不明瞭なものとなっており、特許法第36条第6項第2号規定の特許請求の範囲の明確性要件に違反している。」(意見書(2-1)A.明確性要件違反について、1~3頁) 「又、“刃先がむき出し状態となる刃から退避する位置”とは、その文言通り解釈すると、訂正後の本件特許明細書の段落【0123】及び図面の図21に示されたような、刃全体ではなく、刃先のみがむき出し状態である保護部材の移動の途中状態(【図面の簡単な説明】の図21についての記載、“保護部材を本体部に収納する途中の状態”)も含み得る。 しかしながら、訂正前の特許請求の範囲にはこのような保護部材の移動の途中状態に関する特定事項は存在しなかったため、保護部材の移動の途中状態も含むものとする本訂正は、特許法第120条の5第9項が準用する同法第126条第6項規定の実質上の特許請求の範囲の拡張・変更を禁止する訂正要件に違反している。」(意見書(2-1)B.訂正要件違反について、3頁) 「保護部材が“刃から退避する位置”にあるときには、熱練した使用者が使用し易くなるといった作用効果を奏するものと解される。 しかしながら、上述したように保護部材が移動の途中状態にあるときには、このような使用し易さといった作用効果を奏することができない。 したがって、訂正後の各請求項に係る本件特許発明にあっては、発明の作用効果を奏することができず当業者において課題を解決できると認識できない範囲のものが含まれているため、特許法第36条第6項第1号規定の特許請求の範囲のサポート要件に違反している。 更に、・・・“刃先がむき出し状態となる”との訂正事項が追加された各独立請求項と、請求項7、請求項13及び請求項l6との整合性を考慮すると、本体部内に完全に収納された位置であればまだしも、保護部材が途中状態で固定されては良好な使用感は得られず、これらの請求項に係る発明の作用効果は得られないため、訂正後の各請求項に係る特許発明はサポート要件に違反している。」(意見書(2-1)C.サポート要件違反について、3~5頁) しかしながら、(イ)(1)のとおり、本件訂正により、保護部材の位置が、「刃から退避する位置」であって「刃先がむき出し状態となる位置」、すなわち、刃先の一部のみが露出する途中状態を含まないことが明確に特定されたから、特許異議申立人による上記主張は、採用することができない。 (b)「本体部に沿って移動可能」又は「本体部に沿って前後方向に移動可能」について 特許異議申立人は、意見書において、以下のように主張している。 「「沿う」とは、通常、「線条的なもの、または線条的に移動するものに、近い距離を保って離れずにいる意。(1)側近く寄る。ぴったりとついている。(2)基準となるものから離れないようにする。」(広辞苑第6版)との意義を有し、「川に沿った道」のような用例があることからすると、本件訂正後の特許発明においては、保護部材が本体部と近い距離を保って線条的に移動する意味と解される。 しかしながら、本件特許明細書全体をみても、いずれの実施形態にあっても保護部材は本体部の内部空間に収納されるもののみが開示されている。 すると、「川に沿った道」が川の中に形成された道の意味合いを表さないのと同様に、本件において通常の意義における”本体部に沿って前後方向にのみ移動”する保護部材は本件特許明細書には開示されておらず、本体部の内部空間に収納される方向への移動のみが記載されているため、特許請求の範囲の記載が不明確であることが新たに露見したと共にサポート要件に違反している。」(意見書(2-2)、6~7頁) 「表面及び裏面の部分である「押圧部」が、訂正特許発明1のように”保護部材が保護部材として機能する位置に配置されているとき、及び刃から退避する位置に配置されているときに、前記押圧部(すべて)が露出している”というためには、保護部材はその移動の前後の位置において本体部の外側に備えられているもの(即ち、本体部に沿ったもの)であっては満たされることがないため、本体部の内部空間に収納されるものであることを要すると言うべきである。 しかしながら、このように保護部材が本体部の内部空間に収納されるものは、上述したように”本体部に沿って前後方向にのみ移動”との文言の一般的な意義とは異なるため、訂正特許発明1に接した当業者はその意義を明確に理解することができない。」(意見書(2-2)、7頁) しかしながら、「本体部に沿って移動可能」又は「本体部に沿って前後方向に移動可能」とは、保護部材の「移動」の方向が「本体部に沿って」いる意味であり、必ずしも保護部材が「本体部」に沿った形状であることを要しないことが、文脈から明らかである。 してみると、”本体部に沿って前後方向にのみ移動”との文言について、一般的な意義と異なるものとも、当業者がその意義を明確に理解することができないものとも言えないから、特許異議申立人による上記主張は、採用することができない。 イ 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (ア)特許法第29条第2項について 特許異議申立人は、特許異議申立書において、 「・請求項1-3、6、7、9-14、16について 本件特許発明1-3、6、7、9-14、16は、甲1発明及び甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・請求項4、5、15、17について 本件特許発明4、5、15、17は、甲1発明、甲2発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・請求項8について 本件特許発明8は、甲1発明、甲2発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。」(特許異議申立書3.(5)ア、73頁) 旨主張する。 しかしながら、甲第1号証:特開2001-347794号公報に記載された「彫刻刀カバー及び彫刻刀」に係る発明と、甲第2号証:特表2006-524113号公報に記載された「保護部材付き外科用メス」に係る発明は技術分野が全く異なり、前者の発明に後者の発明を適用する動機付けがあるものと認められない。 したがって、本件請求項〔1~8、10~13〕、14、16に係る発明が、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (イ)特許法第36条第6項第1号について 特許異議申立人は、特許異議申立書において、 「本件特許発明14、16には“操作部が柄尻側にある”との限定事項が存在するが、・・・例えば保護部材の先端部に対して後方側のすぐ近傍に操作部を設けた場合には、操作部が柄尻側にあると言えるものの、当業者において“使用時に使用者の手(指)が操作部に触れにくく”するという課題を解決できると認職できない。したがって、当該特許発明は発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。」(特許異議申立書(4-4)、73頁) 旨主張する。 しかしながら、「操作部に触れにくく」との課題は、本件特許明細書に記載がない。「操作部に触れにくく」との課題が、段落【0002】【0004】【0089】の「刃先部に触れにくく」との課題の誤記であるならば、その課題は保護部材を設けたことにより解決されている。 したがって、訂正後の本件特許発明〔1~8、10~13〕、14、16が、発明の詳細な説明に記載されたものでないとはいえない。 (ウ)特許法第29条の2のうち、請求項15、17以外について 特許異議申立人は、特許異議申立書において、 「・請求項1、2、6-17について 本件特許発明1、2、6-17は、甲第6発明と実質的に同一である。」(特許異議申立書3.(5)イ、73頁) 旨主張する。 しかしながら、甲第6号証:特願2011-17100号(特開2012-157982号)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明は、「本体部の先端部分」には「ガイド部16a」が存在し、押圧部が「本体部の先端部分」にないから、訂正前の請求項1、2、6~13に係る発明が、甲第6号証に記載された発明と実質的に同一であるといえない。 また、甲第6号証の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載の発明は、操作部が本体部の「柄尻側に」ないから、訂正前の請求項14、16に係る発明が、甲第6号証に記載された発明と実質的に同一であるといえない。 4.むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項〔1~8、10~13〕、14、16に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項〔1~8、10~13〕、14、16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、請求項9、15、17に係る特許は訂正により削除されたため、本件特許の請求項9、15、17に対して特許異議申立人がした特許異議申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-700095

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