特許拒絶査定不服審判
2017-016468
手書き入力の自動変換システムおよび方法
- 審判番号
- 2017-016468
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-239729外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年11月06日
- 審決日
- 2018年08月27日
- 公報発行日
- 2019年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (G06K) / P18 .575-Z (G06K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-239729「手書き入力の自動変換システムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月12日出願公開、特開2016- 76250〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 経緯及び査定の概要
1 経緯
本件出願は、平成20年11月5日(パリ条約による優先権主張2007年11月5日、韓国)の出願である特願2008-284386号の一部を平成27年12月8日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、以下のとおりである。
平成28年12月20日:拒絶理由の通知
平成29年 4月 3日:手続補正
平成29年 6月26日:拒絶査定
平成29年 7月 4日:拒絶査定の謄本の送達
平成29年11月 6日:拒絶査定不服審判の請求
平成29年11月 6日:手続補正
2 査定の概要
原査定の理由は、概略、次のとおりである。
[査定の理由]
この出願の請求項1~12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特開平9-44596号公報
引用文献2:特表2003-517669号公報
引用文献3:特開昭60-112187号公報
第2 補正却下の決定
平成29年11月6日付けの手続補正について次のとおり決定する。
[補正却下の決定の結論]
平成29年11月6日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
平成29年11月6日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてする補正である。
本件補正は、
(補正前の請求項1~12)
「 【請求項1】
入力パッドにより入力される手書きを認識する認識部と、
メモリに保存されたフォントのうち前記入力された手書きに最も類似のフォントを抽出する抽出部、および
前記抽出部から抽出されたフォントと前記入力された手書きとを相互比較して、前記抽出されたフォントの形を前記入力された手書きに最も類似に自動変換する変換部と、を含み、
前記自動変換はリアルタイムで行われ、自動変換されたフォントがリアルタイムでディスプレーされ、
前記変換部は、前記抽出されたフォントの全体形を前記入力された手書きに最も類似に変換させる第1変換部を含み、
前記変換部は、前記抽出されたフォントの細部の形を前記入力された手書きに最も類似に変換させる第2変換部をさらに含み、
前記抽出されたフォントと前記入力された手書きとを比較した結果に応じて、前記第1変換部による変換の後で、前記第2変換部による変換を実行し、
変換が完了したフォントを保存して、フォントデータ化する、
ことを特徴とする手書き入力自動変換システム。
【請求項2】
前記認識部は、前記入力された手書きに対する重要基準点および画数のデータ情報に基づいて、前記入力された手書きを文字で認識する、請求項1に記載の手書き入力自動変換システム。
【請求項3】
前記重要基準点は、前記入力された手書きの開始点、終わり点、折れる点を含む、請求項2に記載の手書き入力自動変換システム。
【請求項4】
前記第1変換部は、前記抽出されたフォントの全体サイズおよび傾きを前記入力された手書きの全体サイズおよび傾きに最も類似に変換させる、請求項1に記載の手書き入力自動変換システム。
【請求項5】
前記第2変換部は、前記抽出されたフォントの細部の画の長さを前記入力された手書きの細部の画の長さに最も類似に変換させる、請求項1に記載の手書き入力自動変換システム。
【請求項6】
入力パッドにより入力される手書きを認識する段階と、
メモリに保存されたフォントのうち前記入力された手書きに最も類似のフォントを抽出する段階、および
前記抽出されたフォントと前記入力された手書きを相互比較して、前記抽出されたフォントの形を前記入力された手書きに最も類似に自動変換する段階と、を含み、
前記自動変換はリアルタイムで行われ、自動変換されたフォントがリアルタイムでディスプレーされ、
前記変換する段階は、前記抽出されたフォントの全体形を前記入力された手書きに最も類似に変換させる段階と、前記抽出されたフォントの細部の形を前記入力された手書きに最も類似に変換させる段階と、をさらに含み、
前記抽出されたフォントと前記入力された手書きとを比較した結果に応じて、抽出されたフォントの全体形を前記入力された手書きに最も類似に変換させる段階の後で、前記抽出されたフォントの細部の形を前記入力された手書きに最も類似に変換させる段階を実行し、
変換が完了したフォントを保存して、フォントデータ化する、
ことを特徴とする手書き入力自動変換方法。
【請求項7】
前記認識する段階は、前記入力された手書きに対する重要基準点および画数のデータ情報により文字で認識する、請求項6に記載の手書き入力自動変換方法。
【請求項8】
前記重要基準点は、前記入力された手書きの開始点、終わり点、折れる点を含む、請求項7に記載の手書き入力自動変換方法。
【請求項9】
前記抽出されたフォントの全体の形を前記入力された手書きに最も類似に変換させる段階は、
前記抽出されたフォントの全体サイズおよび傾きを前記入力された手書きの全体サイズおよび傾きに最も類似に変換させる段階を含む、請求項6に記載の手書き入力自動変換方法。
【請求項10】
前記抽出されたフォントの細部の形を前記入力された手書きに最も類似に変換させる段階は、
前記抽出されたフォントの細部の画の長さを前記入力された手書きの細部の画の長さに最も類似に変換させる段階を含む、請求項6に記載の手書き入力自動変換方法。
【請求項11】
前記変換されたフォントをメッセージ作成するとき、フォントの適用が可能なようにシステムのメモリにフォントデータに保存する段階をさらに含む、請求項6に記載の手書き入力自動変換方法。
【請求項12】
前記抽出されて変換されたフォントは、フォントデータとして前記メモリに保存される、請求項1に記載の手書き入力自動変換システム。」
を、次のとおり補正後の請求項1~8に補正するものである(下線は補正箇所である。)。
(補正後の請求項1~8)
「 【請求項1】
入力パッドにより入力された手書きを認識する認識部であり、前記入力された手書きについて、重要基準点および画数を含むデータ情報を収集する、認識部と、
メモリに保存されたフォントのうち前記入力された手書きに最も類似のフォントを前記データ情報に基づいて抽出する抽出部と、
前記抽出部から抽出されたフォントと前記入力された手書きとを相互比較して、前記抽出されたフォントの形を前記入力された手書きに最も類似に自動変換する変換部と、を含み、
前記重要基準点は、前記入力された手書きの前記入力パッドの座標上での開始点、終わり点、および、折れる点、を含み、
前記自動変換はリアルタイムで行われ、自動変換されたフォントがリアルタイムでディスプレーされ、
前記変換部は、前記抽出されたフォントの全体形を前記入力された手書きに最も類似に変換させる第1変換部を含み、
前記変換部は、前記抽出されたフォントの細部の形を前記入力された手書きに最も類似に変換させる第2変換部をさらに含み、
前記第1変換部は、前記抽出されたフォントの全体サイズおよび傾きを前記入力された手書きの全体サイズおよび傾きに最も類似に変換させ、かつ、前記第2変換部は、前記抽出されたフォントの細部の画の長さを前記入力された手書きの細部の画の長さに最も類似に変換させ、
前記抽出されたフォントと前記入力された手書きとを比較した結果に応じて、前記第1変換部による変換の後で、前記第2変換部による変換を実行し、
変換が完了したフォントを保存して、フォントデータ化する、
ことを特徴とする手書き入力自動変換システム。
【請求項2】
前記認識部は、前記入力された手書きに対する重要基準点および画数のデータ情報に基づいて、前記入力された手書きを文字で認識する、請求項1に記載の手書き入力自動変換システム。
【請求項3】
前記重要基準点は、前記入力された手書きの開始点、終わり点、折れる点を含む、請求項2に記載の手書き入力自動変換システム。
【請求項4】
入力パッドにより入力された手書きを認識する段階であり、前記入力された手書きについて、重要基準点および画数を含むデータ情報を収集する、段階と、
メモリに保存されたフォントのうち前記入力された手書きに最も類似のフォントを前記データ情報に基づいて抽出する段階と、
前記抽出されたフォントと前記入力された手書きを相互比較して、前記抽出されたフォントの形を前記入力された手書きに最も類似に自動変換する段階と、を含み、
前記重要基準点は、前記入力された手書きの前記入力パッドの座標上での開始点、終わり点、および、折れる点、を含み、
前記自動変換はリアルタイムで行われ、自動変換されたフォントがリアルタイムでディスプレーされ、
前記変換する段階は、前記抽出されたフォントの全体形を前記入力された手書きに最も類似に変換させる段階と、前記抽出されたフォントの細部の形を前記入力された手書きに最も類似に変換させる段階と、をさらに含み、
前記抽出されたフォントの全体形を前記入力された手書きに最も類似に変換させる段階は、前記抽出されたフォントの全体サイズおよび傾きを前記入力された手書きの全体サイズおよび傾きに最も類似に変換させる段階を含み、かつ、
前記抽出されたフォントの細部の形を前記入力された手書きに最も類似に変換させる段階は、前記抽出されたフォントの細部の画の長さを前記入力された手書きの細部の画の長さに最も類似に変換させる段階を含み、
前記抽出されたフォントと前記入力された手書きとを比較した結果に応じて、抽出されたフォントの全体形を前記入力された手書きに最も類似に変換させる段階の後で、前記抽出されたフォントの細部の形を前記入力された手書きに最も類似に変換させる段階を実行し、
変換が完了したフォントを保存して、フォントデータ化する、
ことを特徴とする手書き入力自動変換方法。
【請求項5】
前記認識する段階は、前記入力された手書きに対する重要基準点および画数のデータ情報により文字で認識する、請求項4に記載の手書き入力自動変換方法。
【請求項6】
前記重要基準点は、前記入力された手書きの開始点、終わり点、折れる点を含む、請求項5に記載の手書き入力自動変換方法。
【請求項7】
前記変換されたフォントをメッセージ作成するとき、フォントの適用が可能なようにシステムのメモリにフォントデータに保存する段階をさらに含む、請求項4に記載の手書き入力自動変換方法。
【請求項8】
前記抽出されて変換されたフォントは、フォントデータとして前記メモリに保存される、請求項1に記載の手書き入力自動変換システム。」
2 補正の適合性
(1)新規事項、発明の特別な技術的特徴の変更、補正の目的
ア 請求項1についての補正
本件補正のうち、請求項1についての補正は、以下のとおりである。
(ア)補正前の請求項1における「入力パッドにより入力される手書きを認識する認識部」を、「入力パッドにより入力された手書きを認識する認識部であり、前記入力された手書きについて、重要基準点および画数を含むデータ情報を収集する、認識部」と限定し、さらに、前記「重要基準点」を「前記入力された手書きの前記入力パッドの座標上での開始点、終わり点、および、折れる点、を含み」と限定する。
(イ)補正前の請求項1における「メモリに保存されたフォントのうち前記入力された手書きに最も類似のフォントを抽出する抽出部」を、「メモリに保存されたフォントのうち前記入力された手書きに最も類似のフォントを前記データ情報に基づいて抽出する抽出部」と限定する。
(ウ)補正前の請求項1における「第1変換部」、「第2変換部」を、さらに、「前記第1変換部は、前記抽出されたフォントの全体サイズおよび傾きを前記入力された手書きの全体サイズおよび傾きに最も類似に変換させ、かつ、前記第2変換部は、前記抽出されたフォントの細部の画の長さを前記入力された手書きの細部の画の長さに最も類似に変換させ、」と限定する。
上記(ア)、(イ)は、願書に最初添付した明細書の段落【0020】~【0022】に記載されており、上記(ウ)は、補正前の請求項4、5に記載された技術的事項に基づく限定であって、願書に最初添付した明細書の段落【0025】、【0027】に記載されており、請求項1についての補正は、願書に最初添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、新たな技術事項を導入するものでなく、特許請求の範囲を減縮を目的とするものである。
イ 請求項4についての補正
本件補正のうち、請求項4についての補正は、以下のとおりである。
(ア)補正前の請求項6における「入力パッドにより入力される手書きを認識する段階」を「入力パッドにより入力された手書きを認識する段階であり、前記入力された手書きについて、重要基準点および画数を含むデータ情報を収集する、段階」と限定し、さらに、前記「重要基準点」を「前記入力された手書きの前記入力パッドの座標上での開始点、終わり点、および、折れる点、を含み」と限定する。
(イ)補正前の請求項6における「メモリに保存されたフォントのうち前記入力された手書きに最も類似のフォントを抽出する段階」を、「メモリに保存されたフォントのうち前記入力された手書きに最も類似のフォントを前記データ情報に基づいて抽出する段階」と限定する。
(ウ)補正前の請求項6における「前記抽出されたフォントの全体形を前記入力された手書きに最も類似に変換させる段階」を、さらに、「前記抽出されたフォントの全体サイズおよび傾きを前記入力された手書きの全体サイズおよび傾きに最も類似に変換させる段階を含み」と限定し、「前記抽出されたフォントの細部の形を前記入力された手書きに最も類似に変換させる段階」を、さらに、「前記抽出されたフォントの細部の画の長さを前記入力された手書きの細部の画の長さに最も類似に変換させる段階を含み」と限定する。
上記(ア)、(イ)は、願書に最初添付した明細書の段落【0020】~【0022】に記載されており、上記(ウ)は、補正前の請求項9、10に記載された技術的事項に基づく限定であって、願書に最初添付した明細書の段落【0025】、【0027】に記載されており、請求項4についての補正は、願書に最初添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、新たな技術事項を導入するものでなく、特許請求の範囲を減縮を目的とするものである。
ウ 請求項5~7についての補正
当該補正は、補正前の請求項4、5、9、10を削除することに伴う補正であって、願書に最初添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、新たな技術事項を導入するものでなく、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
(2)独立特許要件
上記のとおり本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的としているので、本件補正後における発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かを、以下に検討する。
(3)補正発明
補正後の請求項1~8に係る発明のうち請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)は、次のとおりのものである。
(補正発明)
「(A)入力パッドにより入力された手書きを認識する認識部であり、前記入力された手書きについて、重要基準点および画数を含むデータ情報を収集する、認識部と、
(B)メモリに保存されたフォントのうち前記入力された手書きに最も類似のフォントを前記データ情報に基づいて抽出する抽出部と、
(C)前記抽出部から抽出されたフォントと前記入力された手書きとを相互比較して、前記抽出されたフォントの形を前記入力された手書きに最も類似に自動変換する変換部と、を含み、
(D)前記重要基準点は、前記入力された手書きの前記入力パッドの座標上での開始点、終わり点、および、折れる点、を含み、
(E)前記自動変換はリアルタイムで行われ、自動変換されたフォントがリアルタイムでディスプレーされ、
(F)前記変換部は、前記抽出されたフォントの全体形を前記入力された手書きに最も類似に変換させる第1変換部を含み、
(G)前記変換部は、前記抽出されたフォントの細部の形を前記入力された手書きに最も類似に変換させる第2変換部をさらに含み、
(H)前記第1変換部は、前記抽出されたフォントの全体サイズおよび傾きを前記入力された手書きの全体サイズおよび傾きに最も類似に変換させ、かつ、前記第2変換部は、前記抽出されたフォントの細部の画の長さを前記入力された手書きの細部の画の長さに最も類似に変換させ、
(I)前記抽出されたフォントと前記入力された手書きとを比較した結果に応じて、前記第1変換部による変換の後で、前記第2変換部による変換を実行し、
(J)変換が完了したフォントを保存して、フォントデータ化する、
(K)ことを特徴とする手書き入力自動変換システム。」
((A)~(K)は、当審で付与した。以下各構成要件を「構成要件A」~「構成要件K」という。)
(4)引用文献の記載及び引用文献に記載された発明
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、「文書作成装置及び同装置に用いられる文字認識方法」(発明の名称)に関し、次に掲げる事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
「【0013】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る文書作成装置の構成を示すブロック図である。本装置は、ペン入力可能な文書作成装置であり、ここではCPU11、記憶部(1)12、記憶部(2)13、入力制御部14、出力制御部15、ペン16、タブレット17、表示装置18を有する。
【0014】CPU11は、本装置全体の制御を行うものであり、文書作成処理の他、ここでは手書き文字の認識処理等を実行する。記憶部(1)12は、例えばROMからなり、CPU11の動作に必要な各種の情報を格納するための領域12a~12fを有する。
【0015】文字認識手段格納領域12aには、タブレット17に書かれた手書き文字を認識するための情報(プログラム)が格納されている。文字認識辞書格納領域12bには、手書き文字の認識時に用いられる文字認識辞書が格納されている。」
「【0020】入力制御部14は、タブレット17を通じて入力される手書き文字の情報の入力制御を行う。出力制御部15は、表示装置18に対する手書き文字の表示や、認識結果として出力される認識文字の表示制御を行う。」
「【0040】(a)回転文字(拡大縮小含む)の認識と出力
図3は同実施形態における回転文字の認識処理および出力処理の動作を示すフローチャートである。
・・・
【0043】ペン16とタブレット17によって手書き文字が入力されると、CPU11はその入力文字を入力制御部14を介して文字認識用入力バッファ13aに格納する(ステップA12)。
【0044】次に、CPU11は文字認識手段(図1.12a)により、まず、文字認識用入力バッファ13aに格納された入力文字のサイズを正規化する(ステップA13)。
【0045】この正規化とは、入力文字のサイズを文字認識しやすい大きさに修正することである。正規化にあたっては、入力文字のビットマップデータ、ストローク情報、前の文字(後の文字でも良い)の大きさ、推移(例えば2倍ずつ文字が大きくなっているとか)を参考にする。
・・・
【0049】また、CPU11は判定した角度(図2.28a)に基づいて、上記正規化後の入力文字(ビットマップデータとストローク情報)を回転させる。すなわち、角度を持って手書き入力された文字を認識可能な形に変換(修正)する。この回転により得られた変換後の文字のビットマップデータとストローク情報は、図2の作業領域32における領域32a、32bにそれぞれ格納される。
【0050】 次に、CPU11は文字認識手段(図1.12a)と文字認識辞書(図1.12b)を用い、上記変換後の入力文字を文字認識し、その認識結果として得られた認識文字を文字認識用出力バッファ13bに格納する(ステップA15)。
・・・
【0056】なお、これはモードではなく、ユーザによるキーまたはペンタッチ等による何等かの指定でも良い。変形出力モードが「する」に設定されている場合には(ステップA20のYes)、CPU11は、まず、認識結果として得られた認識文字の大きさを、入力文字の大きさ(図2.28b)に合わせてフォント変換手段(図1.12c)により変換し、これを文字認識用出力バッファ13bに格納する(ステップA21)。
・・・
【0058】同様に、角度に関しても、CPU11は入力文字の角度(図2.28a)に合わせてフォント変換手段(図1.22c)により当該認識文字を変換し、これを文字認識用出力バッファ13bに格納する(ステップA22)。
・・・
【0060】このようにして、当該認識文字が入力文字に合わせて変換されると、CPU11はその変換後の認識文字を文字認識用出力バッファ13bから読み出し、これを認識結果として表示装置18に出力する(ステップA23)。
【0061】一方、上記ステップA20で、変形出力モードが「しない」に設定されていた場合には、CPU11は当該認識文字を通常のフォントのままで、認識結果として表示装置18に出力する(ステップA23)。出力後は、また新しい文字の入力待ちとなる(ステップA12)。」
「【0089】(c)直線以外の線種(ギザギザ,波線,スプリング,ストロークの先端が変形した字等)を有する文字の認識と出力
図5は同実施形態における直線以外の線種を有する文字の認識処理および出力処理の動作を示すフローチャートである。
・・・
【0092】ペン16とタブレット17によって手書き文字が入力されると、CPU11はその入力文字を入力制御部14を介して文字認識用入力バッファ13aに格納する(ステップC12)。
・・・
【0101】次に、CPU11は文字認識手段(図1.12a)と文字認識辞書(図1.12b)を用い、上記変換後の入力文字を文字認識し、その認識結果として得られた認識文字を文字認識用出力バッファ13bに格納する(ステップC16)。
・・・
【0112】なお、これはモードではなく、ユーザによるキーまたはペンタッチ等による何等かの指定でも良い。変形出力モードが「する」に設定されている場合には(ステップC21のYes)、CPU11は、まず、認識結果として得られた認識文字の大きさを、入力文字の大きさ(図2.28b)に合わせてフォント変換手段(図1.12c)により変換し、これを文字認識用出力バッファ13bに格納する(ステップC22)。
【0113】このとき、大きさに関する他の文字の情報(図2.22)も参考にした方が望ましい(但し、参考にしなくとも出力は可能である)。同様に、線種に関しても、CPU11は入力文字の線種(図2.28d)、波幅(図2.28e)、波の高さ(図2.28f)、先端の形状(図2.28g)の形状に合わせて当該認識文字を変換し、これを文字認識用出力バッファ13bに格納する(ステップC23)。
・・・
【0115】このようにして、当該認識文字が入力文字に合わせて変換されると、CPU11はその変換後の認識文字を文字認識用出力バッファ13bから読み出し、これを認識結果として表示装置18に出力する(ステップC24)。
【0116】一方、上記ステップC21で、変形出力モードが「しない」に設定されていた場合には、CPU11は当該認識文字を通常のフォントのままで、認識結果として表示装置18に出力する(ステップC24)。出力後は、また新しい文字の入力待ちとなる(ステップC12)。」
「【0117】最後に、認識文字の出力に際し、拡大(縮小),回転,変形,線種を復元するための方法について説明する。・・・
・・・
【0119】(4)線種については、変形の場合と同様に3つの方法が考えられる。なお、上記実施形態では、理解を容易にするため、(a)回転文字、(b)変形文字、(c)直線以外の線種を有する文字の3つの場合に分けて、それぞれの処理について説明したが、これらの処理は同時に行うことができるものである。」
(イ)引用文献1に記載された発明
a 文字認識処理装置
段落【0013】によると、引用文献1には、「ペン入力可能な文書作成装置」が記載されている。当該装置は、CPU、入力制御部、出力制御部、ペン、タブレット、表示装置を有する。
段落【0014】によると、CPUは、文書作成処理の他、手書き文字の認識処理を行うから、当該装置は、文字認識処理装置といえる。
b 入力文字の文字認識
段落【0015】、【0020】、【0043】~【0045】、【0049】~【0050】、【0092】、【0101】によると、 入力制御部、CPUは、タブレットによって手書き文字が入力され、入力された入力文字を文字認識し、認識文字を出力する。
c 認識文字の変換
(a)回転
段落【0056】によると、CPUは、認識文字の大きさを入力文字の大きさに変換する。段落【0061】によると、変形しない場合、認識文字を通常のフォントのままで出力するから、上記の認識文字の大きさは、認識文字のフォントの大きさである。
段落【0058】によると、CPUは、入力文字の角度に合わせてフォント変換手段により当該認識文字を変換する。段落【0058】に記載されたステップは、段落【0056】に記載されたステップの後のステップである。
そうすると、引用文献1には、「CPUは、認識文字のフォントの大きさを入力文字の大きさに変換し、その後、入力文字の角度に合わせて認識文字を変換する」ことが記載されている。
(b)線種、波幅、波の高さ、先端の形状
段落【0112】によると、CPUは、認識文字の大きさを入力文字の大きさに変換する。段落【0116】によると、変形しない場合、認識文字を通常のフォントのままで出力するから、上記の認識文字の大きさは、認識文字のフォントの大きさである。
段落【0113】によると、CPUは、入力文字の線種、波幅、波の高さ、先端の形状に合わせて認識文字を変換する。段落【0113】に記載されたステップは、段落【0112】に記載されたステップの後のステップである。
そうすると、引用文献1には、「CPUは、認識文字のフォントの大きさを入力文字の大きさに変換し、その後、入力文字の線種、波幅、波の高さ、先端の形状に合わせて認識文字を変換する」ことが記載されている。
(c)同時処理
段落【0119】によると、回転と、入力文字の線種、波幅、波の高さ、先端の形状とを同時に処理することが記載されているから、同時に処理するものを引用文献1に記載された発明として認定する。
d 認識文字の表示
段落【0020】、【0060】、【0115】によると、出力制御部、CPUは、変換後の認識文字を表示装置に表示する。
e 引用発明
以上によると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明)
(a)CPU、入力制御部、出力制御部、ペン、タブレット、表示装置を有する文字認識処理装置であって、
(b)入力制御部、CPUは、タブレットによって手書き文字が入力され、入力された入力文字を文字認識し、認識文字を出力し、
(c)CPUは、認識文字のフォントの大きさを入力文字の大きさに変換し、その後、入力文字の角度、入力文字の線種、波幅、波の高さ、先端の形状に合わせて認識文字を変換し、
(d)出力制御部、CPUは、変換後の認識文字を表示装置に出力する
(a)文字認識処理装置。
((a)~(d)は、引用発明の構成を区別するために付与した。以下各構成を「構成a」~「構成d」という。)
イ 引用文献2
(ア)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、「手書き入力を再現する装置及びシステム」(発明の名称)に関し、次に掲げる事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
「 【0016】
図1は、本発明による装置を概略的に示す図である。装置100は、筆跡を入力するための入力装置102を有する。入力装置は、ペンを用いて動作され、装置の表面上におけるペンの場所が検出される。このようにして、文字の線素を入力するペンの動きが入力装置によって検出される。装置は、入力装置102と一体形の表示装置104を有する。この表示装置は最初に、ペンが入力装置に触れた位置を示し、それにより、紙上でのインクペンで筆跡を模倣する。従って、ユーザは、入力装置上に現われる入力を見る。認識後、表示装置104は、認識された文字を示す。認識ユニット106は、入力装置上の書かれた入力を分析し、入力中の文字を認識することを試みる。選択ユニット108は、手書き入力文字に基づいてフォントを選択する。簡単な実施例では、フォント記憶装置110中の利用できる幾つかの所定のフォントの中からフォントが選択される。手書き入力を表示するに好適な所定のフォントの例としてCasual、Heyna,及び、Comic sans MS等がある。利用できるフォントの中で選択を行うためには、手書きのフォントにおける特徴的な文字が夫々のフォントにおける対応する文字と比較される。図5は、このような特徴的な文字の幾つかの例を示す。」
「 【0021】
本発明による装置の実施例において、表示されるべきメッセージを入力する追加のソースがあってもよい。この追加のソースは、幾つかの文字を入力するためのキーボードでもよい。この追加のソースからの文字は、選択されたフォントでまだ表示される。つまり、メッセージの一部がキーボードを介して入力された場合でも、メッセージ全体がユーザの筆跡に基づいて選択されるフォントで表示される。更に、所与のメッセージに対して選択され、且つ、可能性として新しく形成されたフォントが記憶され、後のメッセージのためにも使用され得る。このようにして、後のメッセージは、キーボードを介して完全に打ち込まれてもよいが、ユーザの筆跡に似ているフォントで表示される。本発明による装置は、記憶されたフォントがまだユーザの筆跡に十分に似ているか否かを時間をかけて確認してもよい。著しい差がある場合、装置は、記憶されたフォントを変化した筆跡に適合させてもよい。」
「 【0028】
図3は、新しいフォントの形成の第1の例を示す図である。最初に、利用できるフォントから、手書きの文字に最良に似ているフォントが選択される。次に、アルファベットの所与の記号に関して、手書きの文字がフォントの対応する文字と比較され、これら2つの平均である新しい文字が形成される。この処理は、アルファベットの全ての記号に対して、その記号が手書きのメッセージ中で1回以上現われるたびに繰り返される。文字302は、選択されたフォントからであり、線素304、306、308、及び、310から成る。文字312は、対応する手書きの文字であり、同様の線素314、316、318、及び、320に分解される。フォントの文字の各線素は、手書きの文字の対応する線素と組にされ、例えば、線素308は線素318と組にされ、これら2つの間の平均である新しい線素322が形成される。この平均の線素は、この新しい線素と夫々の他の線素との間の平方の距離を最小化することによって決定される。新しいフォントに対する文字324は、ここで、線素の各組に対して発生された新しい線素から成る。」
(イ)引用文献2に記載された技術
a 段落【0016】によると、引用文献2には、「手書き入力文字に基づいて、記憶装置中のフォントの中からフォントを選択する技術」が記載されている。
b 段落【0028】、【0021】によると、引用文献2には、「手書き文字に似ているフォントが選択され、手書き文字とフォントから新しいフォントが形成され、当該フォントが記憶される技術」が記載されている。
ウ 引用文献3
(ア)引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、「オンライン手書き文字認識方式」(発明の名称)に関し、次に掲げる事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
「〔発明の実施例〕
第2図は、本発明の1実施例の機能ブロックダイヤグラムを示す。図中の符号1は文字情報入力装置、いわゆるタブレット、2は前処理部、3は特徴点抽出部、4はパターン間距離計算部、5は最小距離検出部、6は出力端子、7は標準パターン(標準文字)メモリ部である。
本発明の原理は次のようなものである。まず、文字情報入力装置1からの入力文字は、前処理部2において、入力文字の重心点が原点となるように各筆点の座標変換が行なわれる(以下、位置の正規化と称す)。また、各筆点と重心点との距離の平均値が一定値となるように、大きさが正規化される。さらに、前処理部2では入力文字のストローク数を検出する。このストローク数は、文字情報入力装置1より得られる各筆点のX軸,Y軸座標値および入力ペンが文字情報入力装置1の入力面に圧着しているか否かのZ軸情報のうち、Z軸情報をもとに、例えば圧着(Z=1)から離脱(Z=0)の変化を、1文字分にわたって計数することにより得る。このストローク数の情報201は、入力文字に対する候補文字選択情報となる。
この前処理後、特徴点抽出部3において、入力文字の各ストロークは、ストロークの始点,終点およびストロークに屈曲点が存在する場合には、そのうち1つの屈曲点を特徴点として抽出する。始点とは、ストロークの書き始めの点終点とは、ストロークの書き終りの点である。また屈曲点は、始点と終点を結ぶ直線とストローク内筆点との最大距離Hが、始点と終点との距離Lに対してH/Lが一定値以上となる筆点が存在するとき、最大距離Hを与える筆点に対応するものである。
よって、ほぼ直線のストロークは、始点,終点の2点,折れ曲りのあるストロークは、始点屈曲点,終点の3点を特徴点として抽出する。
この特徴点抽出部は、各ストロークの特徴点数情報301を入力文字に対する第2の候補文字選択情報として出力する。
パターン間距離計算部4では、前述の入力文字と、あらかじめ、入力文字と同様に前処理、特徴点抽出され標準パターンメモリ部に記憶されているパターンとについて、パターン間距離が計算される。なお、このとき、対象となる標準パターンは、前述したストローク数情報201、各ストロークの特徴点数情報301をもとに、入力文字と同じストローク数で、かつ、各ストロークの特徴点数が、入力文字の筆順的に対応する各ストロークの特徴点に等しいものを選択し、これを対象とする。
よって、認識対象カテゴリーをθで表わし、パターン間距離をdθとすれば、dθは、筆順的に対応する特徴点間の距離の緩和として求める。この特徴点間の距離は、例えば、入力文字の特徴点Aと対応する標準パターンの特徴点Bの間の遠近を表わす量であればよく、A,B間のユークリッド・ノルム,シティブロック距離などが用いられる。
このようにして計算されたパターン間距離dθのうちから最小距離検出部5により最小値が検出され、最小値を示すカテゴリθを入力文字として認識し、カテゴリθに対応するコードを出力端子6に出力する。」(3頁左上欄12行~右下欄15行)
(イ)引用文献3に記載された技術
上記(ア)によると、引用文献3には、「ストローク数、始点、屈曲点、終点を用いて文字認識する技術」が記載されている。
(5)対比
ア 補正発明と引用発明との対比
補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)構成要件A、Dと構成bとを対比する。
構成bの「タブレットによって入力された入力文字を文字認識」する入力制御部、CPUは、構成要件Aの「入力パッドにより入力された手書きを認識する認識部」として共通する。
しかしながら、構成bは、「前記入力された手書きについて、重要基準点および画数を含むデータ情報を収集する」と特定されていない点で構成要件Aと相違する。
さらに、前記「重要基準点」が、「前記入力された手書きの前記入力パッドの座標上での開始点、終わり点、および、折れる点、を含」む(構成要件D)と特定されていない点で、引用発明は補正発明と相違する。
(イ)構成要件Bについて
引用発明は、「メモリに保存されたフォントのうち前記入力された手書きに最も類似のフォントを前記データ情報に基づいて抽出する抽出部」を含んでおらず、補正発明と相違する。
(ウ)構成要件Cと構成cとを対比する。
構成cにおいては、「CPUは、認識文字のフォントの大きさを入力文字の大きさに変換し、その後、入力文字の角度、入力文字の線種、波幅、波の高さ、先端の形状に合わせて認識文字を変換」するから、構成cの「CPU」は、「フォントと前記入力された手書きとを相互比較して、前記フォントの形を前記入力された手書きに最も類似に自動変換する変換部」として、構成要件Cと共通する。
しかしながら、「フォント」が、補正発明においては、「前記抽出部から抽出された」ものであるのに対し、引用発明は、上記(イ)のとおり、「抽出部」を含んでおらず、「前記抽出部から抽出された」ものでない点で相違する。
(エ)構成要件Eと構成dとを対比する。
構成dにおいては、「変換後の認識文字を表示装置に出力する」のであるから、「自動変換されたフォントがディスプレーされる」として、構成要件Eと共通する。
しかしながら、補正発明においては、「前記自動変換はリアルタイムで行われ」、「リアルタイムに」ディスプレーされるのに対し、引用発明においては、「前記自動変換はリアルタイムで行われ」、「リアルタイムに」ディスプレーされると特定されていない点で相違する。
(オ)構成要件F、G、H、Iと構成cとを対比する。
a 構成要件Fと構成cとを対比する。
構成cの「CPU」は、「認識文字のフォントの大きさを入力文字の大きさに変換」するから、「前記フォントの全体形を前記入力された手書きに最も類似に変換させる」といえ、このような変換をする「CPU」は、「第1変換部」を含むといえ、構成要件Fと共通する。
しかしながら、「前記フォント」が、補正発明においては、上記(イ)の相違に伴い「抽出された」ものであるのに対し、引用発明においては、「抽出された」ものでない点で相違する。
b 構成要件Gと構成cとを対比する。
構成cの「CPU」は、「入力文字の角度、入力文字の線種、波幅、波の高さ、先端の形状に合わせて認識文字を変換」するから、「前記抽出されたフォントの細部の形を前記入力された手書きに最も類似に変換させる」といえ、このような変換をする「CPU」は、「第2変換部」をさらに含むといえ、構成要件Gと共通する。
しかしながら、「前記フォント」が、補正発明においては、上記(イ)の相違に伴い「抽出された」ものであるのに対し、引用発明においては、「抽出された」ものでない点で相違する。
c 構成要件Iと構成cとを対比する。
上記a、bを踏まえると、構成cは、「前記フォントと前記入力された手書きとを比較した結果に応じて、前記第1変換部による変換の後で、前記第2変換部による変換を実行」するとして、構成要件Iと共通する。
しかしながら、「前記フォント」が、補正発明においては、上記(イ)の相違に伴い「抽出された」ものであるのに対し、引用発明においては、「抽出された」ものでない点で相違する。
d 構成要件Hと構成cとを対比する。
(a)第1変換部
上記aのとおり、構成cの「CPU」は、「第1変換部」を含むといえ、「認識文字のフォントの大きさを入力文字の大きさに変換」するから、「前記フォントの全体サイズを前記入力された手書きの全体サイズに最も類似に変換させ」るといえる。
また、上記bのとおり、構成cの「CPU」は、「第2変換部」において、入力文字の角度、すなわち、傾きに合わせて認識文字を変換するから、「前記フォントの傾きを前記入力された手書きの傾きに最も類似に変換させ」るといえる。
そうすると、補正発明と引用発明とは、「前記第1変換部」が、「前記フォントの全体サイズを前記入力された手書きの全体サイズに最も類似に変換させ」る点で共通する。
しかしながら、「前記フォントの傾きを前記入力された手書きの傾きに最も類似に変換させ」るものが、補正発明においては、「第1変換部」であるのに対し、引用発明においては、「第2変換部」である点で相違し、さらに、「前記フォント」が、補正発明においては、上記(イ)の相違に伴い「抽出された」ものであるのに対し、引用発明においては、「抽出された」ものでない点で相違する。
(b)第2変換部
上記bのとおり、構成cの「CPU」は、「第2変換部」を含んでいる。
しかしながら、「第2変換部」が、補正発明においては、「前記抽出されたフォントの細部の画の長さを前記入力された手書きの細部の画の長さに最も類似に変換させ」るのに対し、引用発明においては、「入力文字の角度、入力文字の線種、波幅、波の高さ、先端の形状に合わせて認識文字を変換」するものである点で相違する。
(カ)構成Jについて
引用発明は、「変換が完了したフォントを保存して、フォントデータ化する」ものではなく、補正発明と相違する。
(キ)構成要件Kと構成a~dとを対比する。
引用発明は、構成a~dからなり、タブレットによって手書き文字が入力され、入力された入力文字を自動的に変換しているといえ、「装置」は「システム」ともいえる。
したがって、引用発明は、「手書き入力自動変換システム」として、補正発明と一致する。
イ 一致点、相違点
以上によると、一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
入力パッドにより入力された手書きを認識する認識部と、
フォントと前記入力された手書きとを相互比較して、前記フォントの形を前記入力された手書きに最も類似に自動変換する変換部と、を含み、
自動変換されたフォントがディスプレーされ、
前記変換部は、前記フォントの全体形を前記入力された手書きに最も類似に変換させる第1変換部を含み、
前記変換部は、前記フォントの細部の形を前記入力された手書きに最も類似に変換させる第2変換部をさらに含み、
前記第1変換部は、前記フォントの全体サイズを前記入力された手書きの全体サイズに最も類似に変換させ、
前記フォントと前記入力された手書きとを比較した結果に応じて、前記第1変換部による変換の後で、前記第2変換部による変換を実行する、
ことを特徴とする手書き入力自動変換システム。
(相違点1)
「認識部」が、補正発明においては、「前記入力された手書きについて、重要基準点および画数を含むデータ情報を収集する」ものであって、前記「重要基準点」が、「前記入力された手書きの前記入力パッドの座標上での開始点、終わり点、および、折れる点、を含」むのに対し、引用発明においては、「前記入力された手書きについて、重要基準点および画数を含むデータ情報を収集する」と特定されておらず、「重要基準点」についての特定もされていない点
(相違点2)
補正発明においては、「メモリに保存されたフォントのうち前記入力された手書きに最も類似のフォントを前記データ情報に基づいて抽出する抽出部」を含んでいるのに対し、引用発明においては、当該抽出部を含んでおらず、この相違に伴い、「変換部」における「フォント」が、補正発明においては、「前記抽出部から抽出された」ものであるのに対し、引用発明においては、「前記抽出部から抽出された」ものでなく、さらに、「前記フォント」が、補正発明においては、「抽出された」ものであるのに対し、引用発明においては、「抽出された」ものでない点
(相違点3)
「自動変換されたフォントがディスプレーされ」るに関し、補正発明が、「前記自動変換はリアルタイムで行われ」、「リアルタイムで」ディスプレーされると特定されているのに対し、引用発明が、「前記自動変換はリアルタイムで行われ」、「リアルタイムで」ディスプレーされると特定されていない点
(相違点4)
「前記フォントの傾きを前記入力された手書きの傾きに最も類似に変換させ」るものが、補正発明においては、「第1変換部」であるのに対し、引用発明においては、「第2変換部」である点
(相違点5)
「第2変換部」が、補正発明においては、「前記抽出されたフォントの細部の画の長さを前記入力された手書きの細部の画の長さに最も類似に変換させ」るのに対し、引用発明においては、「入力文字の角度、入力文字の線種、波幅、波の高さ、先端の形状に合わせて認識文字を変換」するものである点
(相違点6)
補正発明においては、「変換が完了したフォントを保存して、フォントデータ化する」ものであるのに対し、引用発明においては、「変換が完了したフォントを保存して、フォントデータ化する」ものでない点
(6)相違点の判断等
ア 相違点1について
文字認識をする際に、ストローク数(「画数」に相当)、始点、終点、屈曲点(「折れる点」に相当)を用いることは、引用文献3に示されているように周知の技術である。
したがって、引用発明に周知の技術を適用して、「前記入力された手書きについて、重要基準点および画数を含むデータ情報を収集する」ようにし、前記「重要基準点」が「前記入力された手書きの前記入力パッドの座標上での開始点、終わり点、および、折れる点、を含」むようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
イ 相違点2について
上記(4)イ(イ)aのとおり、引用文献2には、「手書き入力文字に基づいて、記憶装置中のフォントの中からフォントを選択する技術」が記載されている。
手書き文字を文字認識するという同じ技術分野の引用発明に引用文献2に記載された技術を適用して、引用発明において、「メモリに保存されたフォントのうち前記入力された手書きに最も類似のフォントを前記データ情報に基づいて抽出する抽出部」を含むようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
引用発明において当該抽出部を含むようにすることにより、「変換部」における「フォント」は、「前記抽出部から抽出された」ものとなり、「前記フォント」は、「前記抽出された」ものとなる。
ウ 相違点3について
手書き文字を認識して表示することをリアルタイムで行うようにすることは周知の技術と認められ、引用発明において、「前記自動変換はリアルタイムで行われ」、「リアルタイムで」ディスプレーされるようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
エ 相違点4について
引用発明は、第2変換部が傾きを類似するように変化させるものであって、文字の変形をさせるものである。
引用発明における第1変換部は、文字の全体のサイズを変化させるものであり、文字の変形をさせるものであるから、傾きを変化させることを第1変換部で行うようにすることは、装置を設計するに当たり当業者が適宜なし得ることである。
オ 相違点5について
引用発明は、「入力文字の線種、波幅、波の高さ、先端の形状に合わせて当該認識文字を変換」するものであり、入力文字の形状に合わせて認識文字を変換するものといえる。
文字の変形として、画の長さを長くしたり、短くすることは、普通に想定され、引用発明における入力文字の合わせる形状として、画の長さを採用することは、当業者が容易に想到することである。
したがって、引用発明において、「前記抽出されたフォントの細部の画の長さを前記入力された手書きの細部の画の長さに最も類似に変換させ」るようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
カ 相違点6について
上記(4)イ(イ)bのとおり、引用文献2には、「手書き文字に似ているフォントが選択され、手書き文字とフォントから新しいフォントが形成され、当該フォントが記憶される技術」が記載されている。
引用発明に当該技術を適用し、新たに作成した文字を記憶することにより、引用発明において、「変換が完了したフォントを保存して、フォントデータ化する」ようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、補正発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測し得る範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものでもない。
したがって、補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反している。
3 まとめ
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年11月6日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~12に係る発明は、平成29年4月3日付け手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1~12に記載した事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
(本願発明)
「入力パッドにより入力される手書きを認識する認識部と、
メモリに保存されたフォントのうち前記入力された手書きに最も類似のフォントを抽出する抽出部、および
前記抽出部から抽出されたフォントと前記入力された手書きとを相互比較して、前記抽出されたフォントの形を前記入力された手書きに最も類似に自動変換する変換部と、を含み、
前記自動変換はリアルタイムで行われ、自動変換されたフォントがリアルタイムでディスプレーされ、
前記変換部は、前記抽出されたフォントの全体形を前記入力された手書きに最も類似に変換させる第1変換部を含み、
前記変換部は、前記抽出されたフォントの細部の形を前記入力された手書きに最も類似に変換させる第2変換部をさらに含み、
前記抽出されたフォントと前記入力された手書きとを比較した結果に応じて、前記第1変換部による変換の後で、前記第2変換部による変換を実行し、
変換が完了したフォントを保存して、フォントデータ化する、
ことを特徴とする手書き入力自動変換システム。」
2 判断
本願発明は、補正発明の補正事項(上記第2の2(1)ア(ア)~(ウ))の限定を省いたものと認められ、補正発明が、引用発明、引用文献2に記載された発明及び周知の技術に基づいて容易に発明できたものであることは、上記第2のとおりであるから、同じ理由で、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された発明及び周知の技術に基づいて容易に発明できたものと認められる。
3 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明、引用文献2に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2~12に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-016468